JP4063081B2 - 空気通路開閉装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性を有した膜状部材を往復動させて空気通路の連通面積を変化させる空気通路開閉装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、可撓性を有した膜状部材を往復動させて、空気通路の連通面積を変化させる空気通路開閉装置を適用した空調ユニットが知られている。このような空調ユニットを実際に試作検討し、その作動特性について実際の使用条件にて評価してみると、膜状部材から耳障りな異音(ポコ音)が発生することが判明した。そこで、この異音の発生メカニズムについて詳細に実験検討したところ、次の2つの理由により異音が発生していることが分かった。
【0003】
上記異音が発生する理由の1つとして、空調ユニットのケースの型割面の状態と風圧の大きさとにより膜状部材の変形が起こるという現象がある。具体的に説明すると、空調ユニットのケースは樹脂の成形品で構成しており、その樹脂成形の型抜きの必要性、およびケース内へドア等の機器組み付け上の必要性等から複数の分割ケース体(分割通路部材)を一体に結合して構成している。このような分割ケース体には製造上の寸法交差、組付誤差等により、複数の分割ケースの結合面に位置ずれによる段差部が形成されることがある。例えば、図1のC−C断面を示す断面図である図6(a)、(b)のように、複数の分割ケース体11a、11bの紙面垂直方向の結合面11cに位置ずれによる段差部11dが形成された状態である。
【0004】
空気通路開閉装置の作動特性の評価では、膜状部材141bが下方からの風によりケース壁面に圧接され、段差部11dの部位で変形(図6(a))したとき、或いは、この変形した膜状部材141bの復原力が風の圧力より大きくなり、変形した形状から元の形状に戻る(図6(b))ときに異音が発生するというものである。
【0005】
一方、上記異音が発生するもう1つの理由として、膜状部材141bの移動方向が曲線状である場合に、曲率半径が大きい(曲げ度合いが小さいXの範囲)移動経路から曲率半径が小さい(曲げ度合いが大きいY1、Y2の範囲)移動経路へと移動していく際に、曲率半径が大きい移動経路において膜状部材141bの先端部の幅方向の中央部が自重により下方へ垂れ下がるように変形(図7参照)すると、次に、膜状部材141bが曲率半径の小さい移動経路に前進した際に、膜状部材141bの先端部がケースの内壁面に沿って移動しようとする。なお、図7は図1のD−D断面図であるが、スライドドア14の位置は図1に示される位置ではなく、車両前後方向において前方側に位置し、そして、膜状部材141bの先端部は曲率半径が小さいY2の位置に進入したときを示している。
【0006】
このように、自重による変形部を持った膜状部材141bの先端部がこの曲率半径の小さいY2の位置に進入すると、膜状部材141bの先端部は曲げ力を受けながら移動するので、この移動過程においてやがて、曲げ力が自重による変形に対して打ち勝って、膜状部材141bの先端部がその移動方向のみに曲げられ、自重による幅方向の変形が解消される。
【0007】
上記のように、膜状部材141bの自重による変形が発生した状態(図7参照)から自重による変形が解消される時に、先端部が急激な形状変化(形状変化の反転動作)を起こして、異音が発生するというものである。
【0008】
上記2つの不具合に対して、板厚全体の厚みを増加して剛性を高めた場合、膜状部材141bの移動方向が水平な形状の場合はスライドドア14の操作力が増大しないのでよい。しかしながら、空調ユニット10の省スペース化のため膜状部材141bの移動方向が曲線状になったケース11に膜状部材141bの板厚全体の厚みを増加したスライドドアを適用すると、スライドドア14の操作力が必然的に増大するという不具合が発生する。
【0009】
ところで、不具合解決には、不具合を発生させる物理的な要素を取り除くことが適切である。上記2つの不具合の発生に共通する物理的な要素の一つに、膜状部材141bの作動方向と垂直な方向の剛性の低さがある。このことに着目し、図に示すように、膜状部材141bに補強部141cを膜状部材141bの移動方向と垂直な方向(駆動軸25の軸方向)に帯状に延びる厚肉部分を形成し、膜状部材141bを補強するようにした(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1に記載の発明は、送風空気の風圧により膜状部材141bが風下側へ撓むことを抑制するとともに、膜状部材141bを円滑に移動させることを目的にしており、異音の発生を抑制することを目的としたものではない。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−79819号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術のように厚肉部分による補強部141cを形成するには、膜状部材141bの移動方向と垂直な方向に厚肉部分と薄肉部分とを交互に配置しなければならない。このような補強部141cを形成するには、膜状部材141bの厚肉部分と薄肉部分とを一体成型する方法や接着手段により補強部を接着する方法などの種々の加工方法があるが、何れの方法を用いても膜状部材141bの加工コストが非常に高くなり、空気通路開閉装置の製造コスト上昇を招くという問題があった。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、膜状部材に厚肉部分の補強部を形成することなく、作動方向と垂直な方向の剛性を高めることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気通路(15a、16、19〜21)を形成するケース(11)内にスライドドア(14、22)を移動可能に配置し、スライドドア(14、22)は一定の板厚により成形された可撓性を有する膜状部材(141b、221)を有する構成であって、スライドドア(14、22)の移動により空気通路(15a、16、19〜21)を開閉するようになっており、空気通路(15a、16、19〜21)の周縁部に形成されたシール面(29、35)に膜状部材(141b、221)を風圧により圧接して空気通路(15a、16、19〜21)を閉じるようになっており、シール面(29、35)はスライドドア(14、22)の移動方向に沿って曲線状になっており、膜状部材(141b、221)を折り曲げることによって、膜状部材(141b、221)にスライドドア(14、22)の移動方向と略垂直な方向に延びる折曲部(141f、221f)が成形されていることを特徴とする。
【0014】
これによると、スライドドア(14、22)の移動方向にケース(11)の歪みによる段差があっても、一定の板厚により成形された膜状部材(141b、221)に折曲部(141f、221f)を形成しているので、膜状部材(141b、221)の変形を抑制できる。これにより、膜状部材(141b、221)に厚肉部分の補強部を形成することなく、作動方向と垂直な方向の剛性を高めることができる。このため、膜状部材(141b、221)の変形に起因する異音(ポコ音)の発生を抑制できる。
【0015】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、ケース(11)は複数の分割ケース体(11a、11b)を一体に結合して構成され、複数の分割ケース体(11a、11b)の結合面(11c)はスライドドア(14、22)の幅方向の略中央に形成されている。
【0016】
請求項3に記載の発明のように、請求項1または2において、スライドドア(14、22)の移動方向は曲線状の曲率半径が大きい第1領域(X)と、曲線状の曲率半径が小さい第2領域(Y1、Y2)とを包含しており、膜状部材(141b、221)の形状は第1領域(X)に沿う形状に成形されていることを特徴とする。
【0017】
これにより、膜状部材(141b、221)の移動方向と垂直な方向の変形が折曲部(141f、221f)により抑制され、かつ、膜状部材(141b、221)の形状が第1領域(X)に沿った形状になる。このため、膜状部材(141b、221)が第1領域(X)から第2領域(Y1、Y2)へ進入するときに膜状部材(141b、221)の形状を容易に曲率半径の小さい形状にできる。そのため、膜状部材(141b、221)の反転動作は防止されるので、異音(ポコ音)の発生を防止できる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、膜状部材(141b、221)の移動方向に折曲部(141f、221f)が所定の間隔で配置されている。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態を適用した車両用空調装置における室内ユニット部のうち、熱交換器部を収容している空調ユニット10を示す。この空調ユニット10は車室内前部の計器盤(図示せず)内側において、車両左右(幅)方向の略中央部に配置される。図1の上下前後の矢印は車両搭載状態における方向を示す。車両用空調装置の室内ユニット部は、上記略中央部の空調ユニット10と、計器盤内側において助手席側にオフセット配置される図示しない送風機ユニットとに大別される。
【0021】
送風機ユニットは、外気(車室外空気)または内気(車室内空気)を切替導入する内外気切替箱と、この内外気切替箱に導入された空気を送風する送風機とを備えている。この送風機ユニットの送風空気は、空調ユニット10のケース11内のうち、最下部の空気流入空間12に流入するようになっている。
【0022】
ケース11は、ポリプロピレンのような弾性を有し、機械的強度も高い樹脂にて成形されている。ケース11は、成形上の型抜きの都合、ケース内への空調機器の組付上の理由等から具体的には複数の分割ケース体に分割して成形した後に、この複数の分割ケース体を一体に締結する構成になっている。
【0023】
空調ユニット10のケース11内において空気流入空間12の上方には冷房用熱交換器をなす蒸発器13が小さな傾斜角度でもって略水平方向に配置されている。従って、送風機ユニットの送風空気は空気流入空間12に流入した後、この空間12から蒸発器13を下方から上方へと通過する。蒸発器13は周知のように車両空調用冷凍サイクルの膨張弁等の減圧装置により減圧された低圧冷媒が流入し、この低圧冷媒が送風空気から吸熱して蒸発するようになっている。
【0024】
そして、蒸発器13の上方(空気流れ下流側)には膜状部材141b、141bからなるエアミックス用スライドドア14が配置され、さらに、このエアミックス用スライドドア14の上方(空気流れ下流側)に温水式ヒータコア15が配置されている。このヒータコア15は周知のように車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する暖房用熱交換器である。
【0025】
このヒータコア15も略水平方向に配置されているが、ヒータコア15はケース11内の通路断面積より小さくして、ケース11内のうち車両前方側に偏って配置してある。これにより、ヒータコア15の車両後方側(乗員座席寄りの部位)に、ヒータコア15をバイパスして空気が流れるバイパス通路16を形成している。
【0026】
エアミックス用スライドドア14は、蒸発器13とヒータコア15との間にて車両前後方向aに移動(往復動)して、ヒータコア15の通風路(温風通路)15aを通過する温風とバイパス通路16を通過する冷風との風量割合を調整するものであって、この冷温風の風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を調整することができる。従って、エアミックス用スライドドア14により車室内への吹出空気の温度調整手段が構成される。
【0027】
ヒータコア15を通過した温風は温風ガイド壁17により車両後方側へガイドされて空気混合部18に向かう。この空気混合部18にてバイパス通路16からの冷風とヒータコア15通過後の温風が混合して所望温度となる。
【0028】
ケース11の上面部(空気下流端部)には、車両後方側から車両前方側へ向かって、複数の吹出開口部、すなわち、フェイス開口部19、デフロスタ開口部20、およびフット開口部21が順次開口している。フェイス開口部19は空気混合部18からの空調空気を乗員の上半身に向けて吹き出すためのもので、デフロスタ開口部20は空気混合部18からの空調空気を車両フロントガラス内面に向けて吹き出すためのもので、フット開口部21は空気混合部18からの空調空気を乗員の足元部に向けて空調空気を吹き出すためのものである。これらの複数の吹出開口部19、20、21は、1枚の膜状部材221からなる吹出モード用スライドドア22が車両前後方向bに移動(往復動)して開閉される。これらの複数の吹出開口部の入り口(風上側)の部位にはシール面35が形成されており、膜状部材221の面が圧接するようになっている。
【0029】
ところで、上記したエアミックス用スライドドア14および吹出モード用スライドドア22はいずれも図1に示すようにケース11内の曲折した経路を往復動するので、この曲折した経路に沿って変形し得るように可撓性を有する膜状部材(樹脂製フィルム材)141b、221を用いて構成されている。なお、この曲折した経路にはスライドドア14、22の移動方向と平行な方向にケース11の型割面があり、この型割面を組み合わせてケース11は構成されている。そして、膜状部材141b、221にはスライドドア14、22の移動方向と垂直な方向に延びる折曲部141f、221fが備えられている。なお、折曲部は例えば、V字状、円弧形状、U字状の凹凸形状をしたプレス機により圧力を与えて成形する。この折曲部141f、221fの折り曲げ方向はケース11内の略円弧状の曲折した経路の凸となる方向と同じ方向に向けて形成され、所定の間隔(例えば1〜20mm程度)で配置される。このように折曲部141f、221fを配置することにより、膜状部材141b、221の形状はケース11内の経路曲げ形状の曲率半径が大きい第1領域Xに近い形状になる。また、折曲部141f、221fの頂点を円弧形状に成型してもよい。
【0030】
膜状部材141b、221の具体的材質としては可撓性を有し、かつ、摩擦抵抗が小さい樹脂材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好適である。なお、一定の板厚により成形された膜状部材141b、221の板厚は例えば、100〜250μm程度の微小寸法である。このような範囲にフィルムの板厚を設定することにより、スライドドア14、22の送り出しに必要な剛性を確保しつつ、往復動経路の曲げ部ではその曲げ形状に沿ってフィルムが容易に変形する。また、折曲部141f、221fを配置する膜状部材141b、221のより好ましい板厚は150〜200μm程度である。このような板厚の範囲に折曲部141f、221fを配置することにより、膜状部材141b、221が容易に変形するだけでなく、異音の発生を抑制する適度な剛性を持たせることができる。このため、スライドドア14、22の著しい操作力の増大を抑制するとともに、膜状部材141b、221が変形することに起因する異音の発生頻度を減少させることができる。
【0031】
次に、エアミックス用スライドドア14について詳述する。図2はエアミックス用スライドドア14単体の具体的構成を例示するものであり、ドア14の移動方向aの中央部領域に空気が流通可能な矩形状の枠体からなる支持部材143を配置し、この支持部材143のドア移動方向aへの前後両側の端部にそれぞれ膜状部材141bを結合している。膜状部材141bの全域には前述した折曲部141fが所定の間隔で複数設けられている。この複数の折曲部141fが設けられた膜状部材141bの断面形状は図3に示すように略弓形の形状となる。なお、図3は図2におけるA−A断面図である。
【0032】
また、支持部材143はポリプロピレン等の樹脂成形品からなる剛体であり、ドア移動方向aと直交方向に延びる枠部143a、143bが所定間隔で平行に配置され、この枠部143a、143bの長手方向の両端部付近をドア移動方向aに延びる枠部143c、143dにより結合している。従って、これらの枠部143a〜143dにより矩形状の枠体を構成している。
【0033】
また、2本の枠部143a、143bの長手方向の中間部位にはドア移動方向aに延びる2本の補強リブ143e、143fを配置している。これらの枠部143a〜143dおよび補強リブ143e、143fは樹脂により一体成形されている。
【0034】
ドア移動方向aと直交方向に延びる枠部143a、143bにおいて長手方向の両端部に円柱状のガイドピン148を形成している。このガイドピン148は図1に示すケース側の右側ガイド部27、28および図示しない左側ガイド部内に摺動可能に嵌合する。
【0035】
また、枠部143a、143bにはその長手方向に沿って複数(図2の例では6個)の係止ピン143gが所定間隔にて一体成形されている。この係止ピン143gは枠部143a、143bにおいて開口部142に面する部位に配置されており、膜状部材141bを配置可能な形状になっている。
【0036】
また、膜状部材141bの端部付近には長穴形状の係止穴およびスリットが形成されており、ドア移動方向aに対してある程度移動可能な状態で支持部材143に結合されている。
【0037】
一方、空調ユニット10のケース11において、ヒータコア15の通風路(温風通路)15aおよびバイパス通路16よりも下方の内壁面の左側に、ドア移動方向aと平行に延びる水平方向の右側ガイド部27、28(図1、図4参照)が設けられ、この右側ガイド部27、28内にガイドピン148を摺動可能に嵌入する。同様に、この右側ガイド部27、28の反対側(運転席側)においても図示しないガイド部が設けられており、ガイドピン148を摺動可能に嵌入するようになっている。これにより、膜状部材141bと支持部材143とを含むスライドドア14全体はガイドピン148と右側ガイド部27、28および図示しない左側ガイド部との嵌合部により車両前後方向aに摺動可能にケース11の左右両側の内壁面に保持される。なお、図4は図1のB−B断面に相当する断面図であり、図1のB−B断面位置にはスライドドア14の支持部材143が位置しており、膜状部材141bおよび補強部141cおよびガイドピン148は位置していない。また、空気通路15a側には格子34を設けており、膜状部材141bが空気圧により変形することを抑制している。
【0038】
図1に示すように、ケース11内において、スライドドア14の直ぐ下方の部位で、ヒータコア15の通風路15aとバイパス通路16との中間部位(ケース11内部の車両前後方向の中間部位)にドア駆動軸25がドア移動方向aと直交する方向(車両左右方向)に配置されている。この駆動軸25の軸方向の両端部はケース11の壁面の軸受け穴(図示せず)により回転自在に支持されている。この駆動軸25のうち、上記円弧形状ギヤ149a、149bと対応する部位(軸方向の両側部位)にそれぞれ円形駆動ギヤ(ピニオン)26を樹脂により一体成形で設けて、この駆動ギヤ26を円弧形状ギヤ149a、149bとかみ合わせるようになっている。
【0039】
また、駆動軸25の軸方向の一端部はケース11の外部へ突出し、この駆動軸25の突出端部をドア駆動装置を構成するサーボモータ(図示せず)の出力軸に適宜の連結機構を介して連結している。これにより、サーボモータの回転が駆動軸25に伝達され、さらに、駆動軸25の回転は、駆動ギヤ26と円弧形状ギヤ149a、149bとのかみ合いによりスライドドア14の往復動運動に変換される。
【0040】
図1の配置レイアウトから理解されるように、ケース11の曲折した経路をスライドドア14の往復動運動に伴って、膜状部材141bは車両前後方向に移動する。そして、膜状部材141bの幅方向(図1の紙面垂直方向)の右側部の右側ガイド部27、28および左側部の図示しない左側ガイド部の溝空間内に摺動自在に挿入して、膜部分141bの移動をガイドするようになっている。両ガイド部のうち風下側のガイド部、例えば、右側ガイド部27、28のうち上側のガイド部28の風上側の壁面は温風通路15aおよびバイパス通路16の入り口周縁部のシール面29と共通の役割を果たしている。
【0041】
一方、スライドドア14がケース11内に組付られた状態(図4)においては、支持部材143が風上側に位置し、そして、膜状部材141bが風下側に位置する。膜状部材141bは支持部材143に対してドア移動方向aで係止され、空気流れ方向W(図4)には拘束されていないので、膜状部材141bが風圧を受けると、風下側に移動して、膜状部材141bの面がケース11に形成されたシール面29に圧接するようになっている。つまり、膜状部材141bは支持部材143とケース側のシール面29との間で微小寸法だけ変位可能に保持されている。また、支持部材143の枠部143a、143bに弾性部材143jを接着等により固定している。この弾性部材143jは自身の弾性反力により膜状部材141bをケース11側のシール面29に押圧して、膜状部材141bのシール効果を向上させるものである。なお、図4は右側ガイド部27、28の代表例として、バイパス通路16の車両右側部分のみを図示しているが、右側ガイド部27、28はバイパス通路16の車両左側部分、温風通路の開口部15aの車両左側部分および車両右側部分においても同一構成となっている。
【0042】
次に、吹出モード用スライドドア22の具体例を図5により説明する。なお、図5は吹出モード用スライドドア22の平面図である。
【0043】
吹出モード用スライドドア22の膜状部材221にも移動方向bの中央部に空気流通用の開口部222が複数に分割して開口している。膜状部材221において中央部の開口部周辺部221aの前後両側に空気流通用開口部のない膜部分221bを形成している。そして、開口部周辺部221aの剛性増加手段として、膜状部材221と別体の補強膜状部材223を膜状部材221に一体に貼り付けて固定(接着)している。
【0044】
この補強膜状部材223には膜状部材221の開口部222と同一形状の開口部224が開けてあるので、この両開口部222、224を通過して空気が流通する。
【0045】
膜状部材221の開口部周辺部221aおよび補強膜状部材223の幅方向の両端部近傍には、この両部材を貫通するギヤかみ合い用の穴部225、226が開けてある。一方、ケース11の上面部に位置するフェイス開口部19とデフロスタ開口部20との中間部位で、かつ、吹出モード用スライドドア22の上方部に駆動軸30がドア移動方向bと直交する方向(車両左右方向)に配置されている。
【0046】
この駆動軸30の軸方向の両端部は、ケース11の壁面の軸受け穴(図示せず)により回転自在に支持されている。この駆動軸30のうち、上記穴部225、226と対応する部位(軸方向の両側部位)にそれぞれ駆動ギヤ31を樹脂により一体成形で設けている。この駆動ギヤ30の歯が膜状部材221の穴部225、226にかみ合うようになっている。
【0047】
また、駆動軸30の軸方向の一端部はケース11の外部へ突出し、この駆動軸30の突出端部をドア駆動装置を構成するサーボモータ(図示せず)の出力軸に適宜の連結機構を介して連結している。これにより、サーボモータの回転が駆動軸30に伝達され、さらに、駆動軸30の回転は、駆動ギヤ31と穴部225、226とのかみ合いによりスライドドア22の往復動運動に変換される。
【0048】
膜状部材221、223をケース11内の曲折した経路に沿って往復動させるために、ケース11の内壁面にガイド部32、33を一体成形等により設けている。このガイド部32、33の溝空間内に膜状部材221、223の幅方向の両端部を挿入してガイドするようにしてある。ガイド部32、33は、駆動軸30の配置部位を除いて、スライドドア22(膜状部材221)の往復動経路の全長にわたって形成してある。
【0049】
なお、図1に示すように、吹出モード用スライドドア22の移動経路において、車両前後方向の中央部付近には吹出モード用スライドドア22が略水平方向に移動する第1領域Xが形成される。この第1領域Xでは、移動経路の曲率半径が大きくなっており、従って、移動経路の曲げ度合いは小さくなっている。
【0050】
これに対し、吹出モード用スライドドア22の移動経路において、第1領域Xの前後両側には、吹出モード用スライドドア22が略水平方向から上下方向に方向転換する第2領域Y1、Y2が形成され、この第2領域Y1、Y2では、第1領域Xに比較して移動経路の曲率半径が小さくなっており、従って、移動経路の曲げ度合いは大きくなっている。
【0051】
次に、本発明の一実施形態による車両用空調装置の作動を説明すると、エアミックス用スライドドア14が車両前後方向aに往復動することにより、冷風バイパス通路16からの冷風とヒータコア15を通過した温風とを所定の風量割合で混合して所望の吹出温度を得ることができる。
【0052】
また、最大冷房状態では、エアミックス用スライドドア14の膜状部材141bのうち、開口部のない膜部分141bがヒータコア15の通風路15aを全閉し、スライドドア14の膜状部材141bの開口部142がバイパス通路16を全開する。また、最大暖房状態では、エアミックス用スライドドア14の膜状部材141bの開口部142がヒータコア15の通風路15aを全開し、スライドドア14の膜状部材141bのうち、開口部のない膜部分141bがバイパス通路16を全閉する。
【0053】
一方、吹出モード用スライドドア22においても、膜状部材221が車両前後方向bに往復動することにより、フェイス開口部19、デフロスタ開口部20、およびフット開口部21を切替開閉し、これにより、周知の複数の吹出モード、すなわち、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモード等を切り替えることができる。
【0054】
ところで、図1に示すように、ケース11内において、エアミックス用、吹出モード用の両スライドドア14、22の移動方向(車両前後方向)a、bの1箇所のみに駆動軸25、30を配置し、この駆動軸25、30の駆動ギヤ26、31から伝達される駆動力により両スライドドア14、22が往復動する。その結果、スライドドア14の膜状部材141bおよびスライドドア22の膜状部材221の移動方向a、bの両端部は巻き取り機構に連結されず、自由端となっている。
【0055】
このような駆動方式であるため、両スライドドア14、22の膜状部材141b、221のうち、駆動軸25、30よりも移動方向a、bの後方側部位では駆動軸25、30からの引っ張り力が作用し、移動方向a、bの前方側部位では駆動軸25、30からの押し出し力が作用して膜状部材141b、221が移動することになる。
【0056】
それ故、右側ガイド部27、28および図示しない左側ガイド部またはガイド部32、33に沿って膜状部材141b、221が押し出し力で移動(前進)するために、膜状部材141b、221は所定の剛性を持つ必要がある。
【0057】
また、膜状部材141b、221はケース11の空気通路15a、16、19〜21の周縁部に形成されたシール面29、35に圧接されてシール性を確保している。
【0058】
また、膜状部材141b、221に形成された折曲部141f、221fによりスライドドア14、22の移動方向と垂直な方向の剛性を高めることができるので、スライドドアの移動経路にケース11のスライドドア14、22の移動方向の型割面の接合位置のずれ、ケース11の歪み等による段差部があったとしても、この段差部による膜状部材141b、221の変形を抑制できる。これにより、膜状部材141bが下方からの風によりケース壁面に圧接され、段差部の部位で変形したときに発生する異音、或いは、この変形した膜状部材141b、221の復原力が風の圧力より大きくなり、変形した形状から元の形状に戻るときの異音の発生を抑制できる。
【0059】
さらに、折曲部141f、221fにより、膜状部材141b、221の自重による変形を抑制するとともに、スライドドア14、22の移動方向に膜状部材141b、221を容易に曲げることができる。このため、膜状部材141b、221の自重による変形を防止できるので、曲率半径が大きい第1領域Xから曲率半径が小さい第2領域Y1、Y2に移動するときでも滑らかに膜状部材141bが移動するので、異音の発生を防止できる。
【0060】
また、膜状部材141b、221の形状はケース11内の経路曲げ形状の曲率半径が大きい第1領域Xに近い形状になっており、ケース11の移動経路に配置されたシール面29、35に沿うようになっている。このため、折曲部141f、221fにより、シール面29、35と膜状部材141b、221とのシール性を確保した状態で、かつ、スライドドア14、22の移動時における操作力の増大を抑制することができる。
【0061】
(他の実施形態)
▲1▼本発明の一実施形態において、スライドドア14、22の移動方向と垂直な方向に延びる形状で折曲部141f、221fを形成したが、折曲部141f、221fを略垂直な方向に延びる円弧形状となるように配置してもよい。
【0062】
▲2▼本発明の一実施形態において、スライドドア14、22の移動方向と垂直な方向に延びる形状で折曲部141f、221fを形成したが、折曲部141f、221fを略垂直な方向に延びる形状で移動方向に交点のあるくの字状となるように形成してもよい。また、くの字状と移動方向において対象となるように折曲部141f、221fを配置してもよい。
【0063】
▲3▼本発明の一実施形態において、スライドドア14、22の移動方向と垂直な方向に延びる折曲部141f、221fを形成したが、折曲部141f、221fを略垂直な方向に所定の形状のエンボスを配置して形成してもよい。
【0064】
▲4▼本発明の一実施形態において、スライドドア14、22の移動方向と垂直な方向に延びる折曲部141f、221fを形成したが、折曲部141f、221fを略垂直な方向に延びる形状でかつ、蛇行させて配置してもよい。
【0065】
▲5▼本発明の一実施形態において、ギヤ駆動式のスライドドア14、22について説明したが、膜状部材141b、221の移動方向の両端部に巻き取り機構を設け、膜状部材141b、221を直接巻き取る、巻き取り式のスライドドアにおいても本発明の一実施形態を適用してもよい。
【0066】
▲6▼本発明の一実施形態において、スライドドア14、22の移動方向と垂直な方向に延びる折曲部141f、221fを形成したが、折曲部141f、221fを膜状部材141b、221のうちシール面29、35と膜状部材141b、221とが圧接される範囲を除く部位に配置するようにしてもよい。このようにすることにより、折曲部141f、221fと折曲部141f、221fとの間の水平な部位と空気通路15a、16、19〜21の周縁部に形成されたシール面29、35との間に隙間がなくなる。これにより、シール面29、35と膜状部材141b、221シール性を高めることができる。
【0067】
▲7▼本発明の一実施形態において、膜状部材141b、221と空気流通用の開口部142、222とを有したスライドドア14、22により空気通路15a、16、19〜21を開閉させたが、本実施形態では膜状部材により空気通路15a、16、19〜21を開閉するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態及び従来技術を適用した空調ユニット部の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態のエアミックス用スライドドア単体の斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の吹出モード用スライドドア単体の平面図である。
【図6】(a)は図1の膜状部材の変形した状態を示すC−C断面図であり、(b)は図1の膜状部材の変形が無い状態を示すC−C断面図である。
【図7】図1のD−D断面図である。
【図8】従来技術における膜状部材の平面図である。
【符号の説明】
11…ケース、14…エアミックス用スライドドア、
22…吹出モード用スライドドア、15a…ヒータコア通風路(空気通路)、
16…バイパス通路(空気通路)、19〜21…吹出開口部(空気通路)、
29…シール面、141b、221…膜状部材、
141c、221c…補強部、141f、221f…折曲部、
142、222…開口部、143…支持部材、223…補強膜状部材
X…ドア移動経路の第1領域、Y1、Y2…ドア移動経路の第2領域。

Claims (4)

  1. 空気通路(15a、16、19〜21)を形成するケース(11)内にスライドドア(14、22)を移動可能に配置し、
    前記スライドドア(14、22)は一定の板厚により成形された可撓性を有する膜状部材(141b、221)を有する構成であって、
    前記スライドドア(14、22)の移動により前記空気通路(15a、16、19〜21)を開閉するようになっており、
    前記空気通路(15a、16、19〜21)の周縁部に形成されたシール面(29、35)に前記膜状部材(141b、221)を風圧により圧接して前記空気通路(15a、16、19〜21)を閉じるようになっており、
    前記シール面(29、35)は前記スライドドア(14、22)の移動方向に沿って曲線状になっており、
    前記膜状部材(141b、221)を折り曲げることによって、前記膜状部材(141b、221)に前記スライドドア(14、22)の移動方向と略垂直な方向に延びる折曲部(141f、221f)が成形されていることを特徴とする空気通路開閉装置。
  2. 前記ケース(11)は複数の分割ケース体(11a、11b)を一体に結合して構成され、
    前記複数の分割ケース体(11a、11b)の結合面(11c)は前記スライドドア(14、22)の幅方向の略中央に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気通路開閉装置。
  3. 前記スライドドア(14、22)の移動方向は曲線状の曲率半径が大きい第1領域(X)と、曲線状の曲率半径が小さい第2領域(Y1、Y2)とを包含しており、
    前記膜状部材(141b、221)の形状は前記第1領域(X)に沿う形状に成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気通路開閉装置。
  4. 前記膜状部材(141b、221)の移動方向に前記折曲部(141f、221f)が所定の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の空気通路開閉装置。
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