JP3870752B2 - 空気通路開閉装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気通路を形成する通路部材の内側を移動する膜状部材(スライドドア)を有し、この膜状部材により空気通路を開閉する空気通路開閉装置に関するもので、車両用空調装置に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平8−2238号公報等において、膜状部材の移動によって空気通路の開閉を行う空気通路開閉装置が提案されている。この従来技術においては、膜状部材の両端を駆動軸および従動軸にそれぞれ連結し、巻き取る構成であるので、駆動軸と従動軸とを連動させる必要がある。このため、プーリー、ワイヤーといった連動機構が必要となり、装置全体として部品点数が増加するとともに、組付も煩雑となり、コスト高になるという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人においては、先に、特願2000−275306号の特許出願において、膜状部材の巻き取り機構を不要にして、構成を簡素化した空気通路開閉装置を提案している。この先願のものでは、空気通路を形成するケース内にガイド部材を設け、このガイド部材にて膜状部材の幅方向の両端部をガイドするとともに、膜状部材に駆動軸の駆動ギヤを噛み合わせている。これにより、駆動軸の回転により膜状部材をガイド部材に沿って往復動させ、膜状部材の移動によりケースの空気通路を開閉するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記先願のものについて実際に試作評価してみると、次のごとき不具合が生じることが分かった。すなわち、上記先願のものでは可撓性を有する膜状部材がガイド部材により案内されてケースの内壁面を摺動するのであるが、その際に、膜状部材の移動経路が曲線状である場合に、曲率半径が大きい(曲げ度合いが小さい)移動経路から曲率半径が小さい(曲げ度合いが大きい)移動経路へと移動していく際に、曲率半径が大きい移動経路において膜状部材の先端部の幅方向の中央部が自重により下方へ垂れ下がるように変形(図5(b)参照)すると、次に、膜状部材が曲率半径の小さい移動経路に前進した際に、膜状部材の先端部がケースの内壁面に沿って移動しようとする。
【0005】
このように自重による変形部を持った膜状部材の先端部がこの曲率半径の小さい移動経路に移動すると、膜状部材の先端部は曲げ力を受けながら移動するので、この移動過程においてやがて、曲げ力が自重による変形に対して打ち勝って、膜状部材の先端部がその移動方向のみに曲げられ、自重による幅方向の変形が解消される。
【0006】
上記のように、自重による変形が発生した状態(図5(b)参照)から自重による変形が解消される時に、膜状部材の先端部が急激な形状変化(形状変化の反転動作)を起こして、異音(ポコ音)を発生することが判明した。
【0007】
なお、本発明者の実験検討によると、膜状部材の先端部が自重による変形でなく、膜状部材の成形時の成形歪み等により幅方向に変形している場合にも、曲率半径が大きい移動経路から曲率半径が小さい移動経路へと移動する際に、上記と同様に、膜状部材の先端部が形状変化の反転動作を起こして、異音(ポコ音)を発生することが判明した。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、空気通路を開閉する、可撓性を有する膜状部材から異音が発生することを抑制することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気通路(15、16、19〜21)を形成する通路部材(11a、11b)と、
通路部材(11a、11b)の内側の移動経路に沿って変形可能となる可撓性を有し、通路部材(11a、11b)の内側を移動することにより空気通路(15、16、19〜21)を開閉する膜状部材(14、22)と、
膜状部材(14、22)にその移動のための駆動力を付与する駆動手段(26、27、32、33)とを備え、
膜状部材(14、22)は、その移動方向の両端部が自由端になっており、
移動経路は、経路曲げ形状の曲率半径が大きい第1領域(X)と、経路曲げ形状の曲率半径が小さい第2領域(Y1、Y2)とを包含しており、
第1領域(X)と第2領域(Y1、Y2)の境界手前に、膜状部材(14、22)の幅方向の変形を抑制する変形抑制部材(37)を配置することを特徴とする。
【0010】
これによると、膜状部材(14、22)が第1領域(X)から第2領域(Y1、Y2)へ進入する際に、変形抑制部材(37)により膜状部材(14、22)の幅方向の変形が抑制された状態で、膜状部材(14、22)が第2領域(Y1、Y2)へ進入する。そのため、膜状部材(14、22)の先端部が形状変化の反転動作を起すことを防止して、異音(ポコ音)の発生を防止できる。
【0011】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、第1領域(X)は、具体的には移動経路のうち、膜状部材(14、22)が略水平方向に移動する部位に形成され、第2領域(Y1、Y2)は、具体的には移動経路のうち、膜状部材(14、22)が略水平方向から上下方向に方向転換する部位に形成される。
【0012】
請求項3に記載の発明のように、請求項1または2において、変形抑制部材(37)は、具体的には膜状部材(14、22)の下方側に配置され、膜状部材(14、22)の自重による下方側への変形を抑制するものである。
【0013】
これによれば、膜状部材(14、22)の自重による下方側への変形に起因する異音(ポコ音)の発生を防止できる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、通路部材は、膜状部材(14、22)を収納するケース(11a、11b)であり、変形抑制部材(37)は、ケース(11a、11b)を成形する成形型の型抜き方向(d)に延びる形状であり、変形抑制部材(37)はケース(11a、11b)に一体成形されていることを特徴とする。
【0015】
このように変形抑制部材(37)をケース(11a、11b)に一体成形できることにより、変形抑制部材(37)を備えたケース(11a、11b)を低コストで製造できる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて具体的に説明する。図1は本発明の一実施形態を適用した車両用空調装置における室内ユニット部のうち、熱交換器部を収容している空調ユニット10を示す。この空調ユニット10は車室内前部の計器盤(図示せず)内側において、車両左右(幅)方向の略中央部に配置される。図1の上下前後の矢印は車両搭載状態における方向を示す。
【0018】
車両用空調装置の室内ユニット部は、上記略中央部の空調ユニット10と、計器盤内側において助手席側にオフセット配置される図示しない送風機ユニットとに大別される。
【0019】
送風機ユニットは、外気(車室外空気)または内気(車室内空気)を切替導入する内外気切替箱と、この内外気切替箱に導入された空気を送風する送風機とを備えている。この送風機ユニットの送風空気は、空調ユニット10のケース11内のうち、最下部の空気流入空間12に流入するようになっている。
【0020】
ケース11は、ポリプロピレンのような弾性を有し、機械的強度も高い樹脂にて成形されている。より具体的には、型割ラインLにて分割された下ケース11aと上ケース11b、11cに分割され、更に上ケースは上側左ケース11bと上側右ケース11cとに車両左右方向(図1の紙面垂直方向)において略対称に分割される。上側の左右両ケース11b、11cの分割構造は後述の図5に明示する。なお、下ケース11aを上ケース11b、11cから別体として分割する理由は、下記の蒸発器13で発生する凝縮水が型割面(結合面)からケース外へ洩れ出ることを防ぐためである。
【0021】
空調ユニット10のケース11内において空気流入空間12の上方には冷房用熱交換器をなす蒸発器13が小さな傾斜角度でもって略水平方向に配置されている。従って、送風機ユニットの送風空気は空気流入空間12に流入した後、この空間12から蒸発器13を下方から上方へと通過する。蒸発器13は周知のように車両空調用冷凍サイクルの膨張弁等の減圧装置により減圧された低圧冷媒が流入し、この低圧冷媒が送風空気から吸熱して蒸発するようになっている。
【0022】
そして、蒸発器13の上方(空気流れ下流側)には膜状部材からなるエアミックス用スライドドア14が配置され、さらに、このエアミックス用スライドドア14の上方(空気流れ下流側)に温水式ヒータコア15が配置されている。このヒータコア15は周知のように車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する暖房用熱交換器である。このヒータコア15も略水平方向に配置されているが、ヒータコア15はケース11内の通路断面積より小さい大きさに設計して、ケース11内のうち車両前方側に偏って配置してある。これにより、ヒータコア15の車両後方側(乗員座席寄りの部位)に、ヒータコア15をバイパスして空気が流れるバイパス通路16を形成している。
【0023】
エアミックス用スライドドア14は、蒸発器13とヒータコア15との間にて車両前後方向aに移動(往復動)して、ヒータコア15の通風路(温風通路)15aを通過する温風とバイパス通路16を通過する冷風との風量割合を調整するものであって、この冷温風の風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を調整することができる。従って、エアミックス用スライドドア14により車室内への吹出空気の温度調整手段が構成される。
【0024】
ヒータコア15を通過した温風は温風ガイド壁17により車両後方側へガイドされて空気混合部18に向かう。この空気混合部18にてバイパス通路16からの冷風とヒータコア通過後の温風が混合して所望温度となる。
【0025】
ケース11の上面部(空気下流端部)には、車両後方側から車両前方側へ向かって、複数の吹出開口部、すなわち、フェイス開口部19、デフロスタ開口部20、およびフット開口部21が順次開口している。フェイス開口部19は空気混合部18からの空調空気を乗員の上半身に向けて吹き出すためのもので、デフロスタ開口部20は空気混合部18からの空調空気を車両フロントガラス内面に向けて吹き出すためのもので、フット開口部21は空気混合部18からの空調空気を乗員の足元部に向けて吹き出すためのものである。これらの複数の吹出開口部19、20、21は、1枚の膜状部材からなる吹出モード用スライドドア22が車両前後方向bに移動(往復動)して開閉される。
【0026】
ところで、上記したエアミックス用スライドドア14および吹出モード用スライドドア22はいずれも図1に示すようにケース11内側の曲折した経路を往復動するので、この曲折した移動経路に沿って変形し得るように可撓性を有する樹脂製フィルム材、すなわち、膜状部材から構成されている。この両ドア14、22の具体的材質、ドア駆動機構等は基本的には同一でよい。従って、以下エアミックス用スライドドア14について詳述する。
【0027】
図2はエアミックス用スライドドア14の平面図であり、ドア14は長方形の薄膜状樹脂製フィルム材からなり、その具体的材質としては可撓性を有し、かつ、摩擦抵抗が小さい樹脂材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好適である。
【0028】
エアミックス用スライドドア14の幅方向の両端部近傍には後述の駆動ギヤ27の歯がかみ合うギヤ穴部23、24が開けてある。このギヤ穴部23、24はスライドドア14の移動方向aのほぼ全長にわたって所定間隔で連続形成されている。ここで、ドア14の幅方向とはドア移動方向(ドア長手方向)aと直交する方向である。また、スライドドア14の移動方向aの中央部には、空調空気を通過させる開口部25が複数に分割して開口している。
【0029】
なお、吹出モード用スライドドア22にもギヤ穴部23、24と同様のギヤかみ合い用のギヤ穴部(図示せず)および開口部25と同様の空気通過用の開口部(図示せず)が開口している。但し、吹出モード用スライドドア22の空気通過用開口部の開口位置や数はエアミックス用スライドドア14とは異なる。
【0030】
図1に示すように、ケース11内において、エアミックス用スライドドア14の移動方向(車両前後方向)aの1箇所のみに駆動軸26を配置し、この駆動軸26の駆動ギヤ27から伝達される駆動力によりエアミックス用スライドドア14を往復動させるようになっている。その結果、スライドドア14の移動方向aの両端部は巻き取り機構に連結されず、自由端となっている。
【0031】
このような駆動方式であるため、エアミックス用スライドドア14のうち、駆動軸26よりも移動方向aの後方側部位では駆動軸26からの引っ張り力が作用し、移動方向aの前方側部位では駆動軸26からの押し出し力が作用してスライドドア14が移動することになる。
【0032】
そこで、ケース11の内壁面に図3に示すようにガイド部材28、29を一体成形により設けている。このガイド部材28、29はケース11の内壁面から所定高さhだけ平行に突き出して溝空間を形成するものであって、ガイド部材28、29の溝空間内にスライドドア14の幅方向の両端部を挿入してガイドするようにしてある。
【0033】
ガイド部材28、29に沿ってスライドドア14が押し出し力で移動(前進)するためにスライドドア14は所定の剛性を持つ必要がある。そのため、スライドドア14の材質、板厚等を必要な剛性が得られるように選定する。因みに、膜状部材からなるスライドドア14、22の板厚は例えば、188μm程度であり上下のケース11a、11b、11cの板厚(通常、1〜2mm程度)に比較して十分小さい微小寸法である。
【0034】
ガイド部材28、29は、駆動軸26の配置部位を除いて、スライドドア14の往復動経路の全長にわたって形成してある。但し、風下側のガイド部材28は、ヒータコア通風路(温風通路)15aの形成部位とバイパス通路16の形成部位では、図3のようにケース11の内壁面から突出する形状になるが、この両通路15a、16が形成されていない部位では後述の図5(a)に示すようにケース11の内壁面自体が風下側のガイド部材28となる。従って、図3のような突出形状の風下側ガイド部材28は、上記両通路15a、16の形成部位のみに形成される。
【0035】
エアミックス用スライドドア14の幅方向両端部のギヤ穴部23、24の周辺部は図3に示すようにガイド部材28、29の溝空間内に位置して風下側のガイド部材28表面に密着するので、ギヤ穴部23、24からの風洩れは生じない。また、バイパス通路16の形成部位では、スライドドア14の風下側にスライドドア14の風圧による変形を防ぐために格子部材30がケース11の内壁面に一体成形等により設けてある。
【0036】
なお、図3はバイパス通路16の開口部構成について説明したが、ヒータコア通風路15aの開口部構成、および吹出開口部19、20、21の構成もバイパス通路16の開口部構成と同様であり、格子部材30と同様の格子部材が設けられている。
【0037】
図4は駆動軸26の軸方向端部付近のB−B断面図であり、駆動軸26の軸方向の両端部はケース11の壁面の軸受け穴31に回動可能に支持される。駆動軸26は樹脂製であり、その軸方向の両端部近傍に駆動ギヤ27が一体成形にて設けてある。駆動軸26と一体の駆動ギヤ27の歯がスライドドア14の幅方向両端部のギヤ穴部23、24にかみ合って、スライドドア14に移動方向aの駆動力を伝達する。
【0038】
なお、駆動軸26の軸方向の一端部は、空調ケース11の外部において図示しない駆動用モータ(例えば、ステップモータ等)の出力軸に連結され、この駆動用モータよって駆動軸26が正逆両方向に回転駆動されるようになっている。
【0039】
吹出モード用スライドドア22に対しても、図1に示すように駆動軸32、駆動ギヤ33を設定して上記エアミックス用スライドドア14と同一機構で往復動させるようになっている。
【0040】
なお、蒸発器13の車両前方側および車両後方側の部位ではエアミックス用スライドドア14の収納空間34、35を形成して、エアミックス用スライドドア14の移動方向aの両端部を収納空間34、35内に収納できるようになっている。また、吹出モード用スライドドア22側においても、蒸発器13の車両前方側の部位では収納空間36を形成して、吹出モード用スライドドア22の移動方向bの一端部を収納空間36内に収納できるようになっている。
【0041】
ところで、図1に示すように、エアミックス用スライドドア14の移動方向aの途中の風下側にヒータコア15の通風路(温風通路)15aの開口部15bおよびバイパス通路16の開口部16aが配置されているので、エアミックス用スライドドア14は風圧により押されて、この両開口部15b,16a上を移動するようになっている。そして、この両開口部15b,16aの周縁部には、エアミックス用スライドドア14が風圧により圧着する周縁シール部15c、16bが形成されている。
【0042】
同様に、吹出モード用スライドドア22の移動方向bの途中の風下側にフェイス開口部19、デフロスタ開口部20、およびフット開口部21が配置されているので、吹出モード用スライドドア22は風圧により押されて、これらの開口部19〜21上を移動するようになっている。そして、これらの開口部19〜21の周縁部には、吹出モード用スライドドア22が風圧により圧着する周縁シール部19a、20a、21aが形成されている。
【0043】
図1に示すように、吹出モード用スライドドア22の移動経路において、車両前後方向の中央部付近には吹出モード用スライドドア22が略水平方向に移動する第1領域Xが形成される。この第1領域Xでは、移動経路の曲率半径が大きくなっており、従って、移動経路の曲げ度合いは小さくなっている。
【0044】
これに対し、吹出モード用スライドドア22の移動経路において、第1領域Xの前後両側には、吹出モード用スライドドア22が略水平方向から上下方向に方向転換する第2領域Y1、Y2が形成され、この第2領域Y1、Y2では、第1領域Xに比較して移動経路の曲率半径が小さくなっており、従って、移動経路の曲げ度合いは大きくなっている。
【0045】
次に、図5(a)は本実施形態の要部を示すもので、図1のC−C断面図である。図1のC−C断面位置は、吹出モード用スライドドア22の移動経路において、駆動軸32、駆動ギヤ33の配置部位付近であり、この配置部位付近は、上記した第1領域Xの車両後方側の端部付近である。
【0046】
本実施形態では、図5(a)に示すように、スライドドア22の移動経路のうち第1領域Xと車両後方側の第2領域Y2との境界手前の部位において、風上側のガイド部材29の先端部から更にケース内側方向に突出するように、スライドドア22の変形抑制用のピン部材37を形成している。
【0047】
ここで、第1領域Xと第2領域Y2との境界手前とは、スライドドア22が第1領域Xから第2領域Y2へ向かって移動する際の、第2領域Y2の手前側の部位、つまり、第1領域Xの終端部位のことをいう。
【0048】
ピン部材37の形成部位についてより具体的に説明すると、上側左ケース11bと上側右ケース11cとの結合面(型割り面)11dが吹出モード用スライドドア22の幅方向の略中央部に位置している。従って、結合面11dはドア移動方向bと平行に延びることになり、そして、左右の両ケース11b、11cを成形型により成形する際に、成形型の型抜き方向dはスライドドア22の幅方向となる。
【0049】
図5(a)から分かるように、ピン部材37は風上側ガイド部材29の先端部から型抜き方向dに延びるから、上側左ケース11bと上側右ケース11cを型成形する際に、ピン部材37は風上側ガイド部材29とともに左右の両ケース11b、11cに簡単に一体成形できる。
【0050】
なお、ピン部材37は風上側ガイド部材29の先端部から円柱状の形状にて風上側ガイド部材29の突出量と同程度、突出しており、ピン部材37と風上側ガイド部材29の合計突出量(ケース11b、11cの内壁面からの突出量)は例えば、20〜50mm程度である。また、図5(a)の図示例では、ピン部材37の円柱形状の径寸法を風上側ガイド部材29の板厚と同一寸法にしているが、ピン部材37の円柱形状の径寸法を風上側ガイド部材29の板厚より小さくしても、型成形上の不都合は生じない。また、ピン部材37の断面形状も円形に限らず、略三角形、矩形状等の他の形状にしてもよい。このピン部材37は本発明の変形抑制部材を構成する。
【0051】
次に、本実施形態による車両用空調装置の作動を説明すると、エアミックス用スライドドア14が車両前後方向aに往復動することにより、スライドドア14の開口部25とヒータコア15の通風路15aの開口部15bおよびバイパス通路16の開口部16aとの連通面積が変化して、冷風バイパス通路16からの冷風とヒータコア15を通過した温風とを所定の風量割合で混合して所望の吹出温度を得ることができる。
【0052】
また、最大冷房状態では、エアミックス用スライドドア14の開口部のないドア面(フィルム面)がヒータコア15の通風路15aの開口部15bを全閉し、スライドドア14の開口部25がバイパス通路16の開口部16aを全開する。また、最大暖房状態では、エアミックス用スライドドア14の開口部25がヒータコア15の通風路15aの開口部15bを全開し、スライドドア14の開口部のないドア面(フィルム面)がバイパス通路16の開口部16aを全閉する。
【0053】
一方、吹出モード用スライドドア22においては車両前後方向bに往復動することにより、フェイス開口部19、デフロスタ開口部20、およびフット開口部21を切替開閉し、これにより、周知の複数の吹出モード、すなわち、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモード等を切り替える。
【0054】
膜状部材からなる両スライドドア14、22はその移動方向a、bの両端部を自由端にして、両スライドドア14、22の長手方向(ドア移動方向a、b)の途中部位に設けられた駆動軸26、32から与えられる駆動力で往復動するため、両スライドドア14、22の巻き取り機構が不要となる。
【0055】
次に、本実施形態の特徴部分の作用を比較例と比較して説明すると、図5(b)は、スライドドア22の変形防止用のピン部材37を持たない比較例であり、この比較例によると、吹出モード用スライドドア22の下面側(風上側)のうち、ドア幅方向の左右両端部の小領域が風上側ガイド部材29により支持されるだけである。
【0056】
従って、吹出モード用スライドドア22が図1の位置にあって、図示しない送風機が停止していると(空調停止状態)、スライドドア22には上方への風圧が作用しないので、スライドドア22の先端部は自重により下方へ垂れ下がるように大きく湾曲状に変形する。図5(b)はこの自重による下方側への湾曲状の変形部を示す。
【0057】
そして、スライドドア22が図1の位置から矢印Dのように車両後方側へ移動すると、スライドドア22の移動経路の前方には、上ケース11b、11cの内壁面によって、第1領域Xに比較して曲率半径が小さい(曲げ度合いが大きい)第2領域Y2が形成されているので、スライドドア22の先端部が上ケース11b、11cの内壁面に当たり、上ケース11b、11cの内壁面に沿って移動しようとする。
【0058】
この際、スライドドア22の先端部が、上ケース11b、11の内壁面に沿うようにケース内壁面から曲げ力を受けながら移動するので、この移動過程においてやがて、曲げ力が自重による変形に対して打ち勝って、スライドドア22の先端部がその移動方向のみに曲げられ、自重による変形が解消される。
【0059】
上記のように、図5(b)に示す自重による変形が発生した状態から自重による幅方向の変形が解消される過程にて、スライドドア22の先端部が急激な形状変化(形状変化の反転動作)を起こして、異音(ポコ音)を発生する。
【0060】
これに対し、本実施形態によると、スライドドア22の移動経路のうち、第1領域Xと第2領域Y2との境界手前において、スライドドア22の下側に位置する風上側ガイド部材29の先端部から更にケース内側方向に突出するようにピン部材37を形成しているから、スライドドア22の先端部が自重により下方へ湾曲状に変形することをピン部材37により抑制できる。図5(a)はスライドドア22の下方への変形をピン部材37により僅少量に抑制している状態を示す。
【0061】
このようにスライドドア22先端部の自重による変形量が僅少であるため、スライドドア22が図1の位置から矢印Dのように車両後方側へ移動して、曲率半径が小さい(曲げ度合いが大きい)第2領域Y2に進入しても、ケース内壁面から受ける曲げ力でスライドドア22先端部の幅方向の形状は僅かに変化するのみである。その結果、スライドドア22の先端部に急激な形状変化が発生せず、スライドドア22からの異音(ポコ音)発生を防止できる。
【0062】
図5(c)は別の比較例であり、スライドドア22の下方側(風上側)に、スライドドア22の自重による変形を防止する格子状のピン部材38を設けるものである。このピン部材38は、上側の左右両ケース11b、11cの結合面(型割り面)11d付近に配置され、成形型の型抜き方向(ドア幅方向)dと直交する方向に延びる。
【0063】
このピン部材38によりスライドドア22の幅方向中央部を下側から支持するので、スライドドア22先端部の自重による変形を防止できる。しかし、この図5(c)の比較例によると、ピン部材38が成形型の型抜き方向dと直交する方向に延びるので、成形型の型抜きを阻害することになる。従って、左右の両ケース11b、11cを成形型により成形する際に、ピン部材38を一体成形することができない。その結果、別体で形成したピン部材38を左右の両ケース11b、11cのいずれかに接着等の手段により固定する必要が生じ、ケース製造のコストアップを招く。これに対して、本実施形態によるピン部材37は、成形型の型抜き方向dに延びる形状であるから、左右の両ケース11b、11cに一体成形でき、ケース製造コストの低減に有利である。
【0064】
なお、以上の説明では、吹出モード用スライドドア22の移動経路のうち、車両前後方向の中央部に位置する第1領域Xと、車両後方側の第2領域Y2との境界手前に配置した、スライドドア変形抑制用のピン部材37について説明しているが、吹出モード用スライドドア22の移動経路のうち、第1領域Xと車両前方側の第2領域Y1との境界手前にも、スライドドア変形抑制用のピン部材37を配置すれば、スライドドア22の先端部が自重により変形することをピン部材37により抑制し、これにより、スライドドア22が第1領域Xから車両前方側の第2領域Y1に進入する際の異音(ポコ音)発生を防止できる。
【0065】
同様に、吹出モード用スライドドア22の移動経路だけでなく、エアミックス用スライドドア14の移動経路においても、車両前後方向の中央部に位置する第1領域Xと、この第1領域Xの前後両側に位置する第2領域Y1、Y2が含まれているので、エアミックス用スライドドア14の移動経路における第1領域Xと第2領域Y1、Y2との境界手前に、ピン部材37と同様の変形抑制用ピン部材を配置することにより、エアミックス用スライドドア14の膜状部材から異音(ポコ音)が発生することを防止できる。
【0066】
ところで、以上の説明では、エアミックス用スライドドア14および吹出モード用スライドドア22の幅方向の両端部近傍に設けられるギヤ穴部23、24と、駆動ギヤ27、33の歯との具体的寸法関係について言及していないが、スライドドア14、22および駆動ギヤ27、33の製造上の寸法バラツキ、スライドドア14、22の熱膨張による寸法変化等を考慮して、ギヤ穴部23、24のスライドドア幅方向寸法は駆動ギヤ27の歯のスライドドア幅方向寸法より所定量だけ大きく設計してある。
【0067】
これにより、駆動ギヤ27、33の歯がギヤ穴部23、24に対してスライドドア幅方向に対して、ある程度の隙間(遊び)を介在して嵌合することになり、スライドドア14、22が幅方向に弛みを持つので、スライドドア14、22の先端部が自重により変形することになる。
【0068】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態では、スライドドア(膜状部材)14、22の先端部が自重により変形することをピン部材37により抑制するため、ピン部材37はスライドドア(膜状部材)14、22の下方側に配置しているが、本発明はこのようにピン部材37をスライドドア14、22の下方側に配置するものだけに限定されない。
【0069】
すなわち、解決課題の欄にて既述したように、スライドドア14、22の先端部が、膜状部材の成形時の成形歪み等により幅方向に変形している場合もあり、このような自重によらない変形でも、曲率半径が大きい移動経路(第1領域X)から曲率半径が小さい移動経路(第2領域Y)へと移動する際に、膜状部材の先端部が形状変化の反転動作を起こして、異音(ポコ音)を発生することがある。従って、このような成形歪み等による変形に起因する異音(ポコ音)防止のためには、ピン部材37をスライドドア14、22の下方側に限らず、スライドドア14、22に対して上方側等種々な配置としてよい。
【0070】
また、上記の実施形態では、通路部材をなすケース11を構成する上下の分割ケース(分割通路部材)11a、11b、11cのみで、空気通路を形成しているが、上下の分割ケース(分割通路部材)11a、11b、11cに対して別体で構成された枠体を組み合わせて空気通路を形成するようにしてもよい。
【0071】
すなわち、本発明における通路部材とは、複数の分割ケースだけに限定されるものではなく、分割ケースに組み合わせる別体の枠体等をも含むものである。
【0072】
また、本発明は、車両用空調装置における空気通路の開閉に限らず、種々な用途の空気通路の開閉に対して広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す空調ユニット部の断面図である。
【図2】第1実施形態で用いるエアミックス用スライドドアの平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】(a)は図1のC−C断面図である。(b)(c)は本発明の比較例を示すものであり、それぞれ図1のC−C断面に相当する断面図である。
【符号の説明】
11b、11c…上ケース(通路部材)、11d…結合面、
14、22…スライドドア(膜状部材)、
15a…ヒータコア通風路(空気通路)、16…バイパス通路(空気通路)、
19〜21…吹出開口部(空気通路)、37…ピン部材(変形抑制部材)
X…ドア移動経路の第1領域、Y1、Y2…ドア移動経路の第2領域。
Claims (4)
- 空気通路(15、16、19〜21)を形成する通路部材(11a、11b)と、
前記通路部材(11a、11b)の内側の移動経路に沿って変形可能となる可撓性を有し、前記通路部材(11a、11b)の内側を移動することにより前記空気通路(15、16、19〜21)を開閉する膜状部材(14、22)と、
前記膜状部材(14、22)にその移動のための駆動力を付与する駆動手段(26、27、32、33)とを備え、
前記膜状部材(14、22)は、その移動方向の両端部が自由端になっており、
前記移動経路は、経路曲げ形状の曲率半径が大きい第1領域(X)と、経路曲げ形状の曲率半径が小さい第2領域(Y1、Y2)とを包含しており、
前記第1領域(X)と前記第2領域(Y1、Y2)の境界手前に、前記膜状部材(14、22)の幅方向の変形を抑制する変形抑制部材(37)を配置することを特徴とする空気通路開閉装置。 - 前記第1領域(X)は、前記移動経路のうち、前記膜状部材(14、22)が略水平方向に移動する部位に形成され、
前記第2領域(Y1、Y2)は、前記移動経路のうち、前記膜状部材(14、22)が略水平方向から上下方向に方向転換する部位に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気通路開閉装置。 - 前記変形抑制部材(37)は、前記膜状部材(14、22)の下方側に配置され、前記膜状部材(14、22)の自重による下方側への変形を抑制するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の空気通路開閉装置。
- 前記通路部材は、前記膜状部材(14、22)を収納するケース(11a、11b)であり、
前記変形抑制部材(37)は、前記ケース(11a、11b)を成形する成形型の型抜き方向(d)に延びる形状であり、
前記変形抑制部材(37)は前記ケース(11a、11b)に一体成形されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の空気通路開閉装置。
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