JP3541697B2 - フレキシブル配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランドアクセス用開孔部が設けられたポリイミド絶縁層が、導体回路層の片面もしくは両面に設けられてなるフレキシブル配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フレキシブル配線板は、片面フレキシブル配線板と、それよりも高密度実装が可能となる両面フレキシブル配線板とに大きく二つに分けられる。
【0003】
一般に、片面フレキシブル配線板は、ランドアクセス用開孔部が設けられた絶縁層とそれに支持された導体回路層とからなる構造を有する。必要に応じて導体回路上に保護層が積層されている。この構造を有する配線板は、その片面から接続を確保しているのでシングルアクセス配線板と称されている。
【0004】
このような片面フレキシブル配線板は、通常、次に説明するように作製されている。即ち、ポリイミドサポートフィルムに銅箔が貼り合わされた片面銅張りフィルムの当該銅箔を、サブトラクト法によりパターニングして導体回路層を形成し、その導体回路層上にカバーレイを積層することにより作製されている。ここで、カバーレイの積層は、1)予め金型などを使用してランドアクセス用開孔部が形成された接着剤付きのカバーレイフィルムを貼り合わせることにより、2)エポキシ系レジストインクをランドアクセス用開孔部パターンに印刷することにより、あるいは3)ポリイミド樹脂フィルムを貼り合わせた後に、エッチング液処理やレーザー光照射処理によりポリイミド樹脂フィルムにランドアクセス用開孔部を形成することにより行われている。
【0005】
一方、両面フレキシブル配線板は、ランドアクセス用開孔部が設けられた一対のカバーレイが、上層導体回路層、絶縁層及び下層導体回路層とからなる積層体を挟持している構造を有する。この構造を有する配線板は、その両面から接続を確保しているのでダブルアクセス配線板と称されている。
【0006】
このような両面フレキシブル配線板は、通常、次に説明するように作製されている。即ち、ポリイミドフィルムの両面に銅箔が貼り合わされた両面銅張りフィルムにNCドリルで貫通孔を開け、ランドとなる領域以外をレジストフィルムで被覆した後に貫通孔内壁面に無電解銅メッキ薄膜を形成し、更に電解銅メッキで銅を厚付けしてスルーホールとする。次に、レジストフィルムを剥がした後、スルーホールの内壁を保護しつつ、両面の銅箔をサブトラクト法によりそれぞれパターニングして上層導体回路層と下層導体回路層とを形成し、次にそれらの表面に、シングルアクセスタイプの片面フレキシブル配線板の場合と同様にカバーレイを積層する。これによりダブルアクセスタイプの両面フレキシブル配線板が作製されている。
【0007】
また、最近、片面フレキシブル配線板をダブルアクセス配線板とすることも試みられており、次に説明するように作製されている。即ち、銅箔にポリアミック酸ワニスを塗布し乾燥してポリアミック酸層を形成し、当該ポリアミック酸層をフォトリソグラフ法によりパターニングしてランドアクセス用開孔部を設け、さらにイミド化してポリイミド絶縁層とし、その銅箔をサブトラクト法によりパターニングして導体回路層を形成し、その導体回路層上に、シングルアクセスタイプの片面フレキシブル配線板の場合と同様にカバーレイを積層する。これによりダブルアクセスタイプの片面フレキシブル配線板が作製されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のシングルアクセスタイプの片面フレキシブル配線板の製造において、予めランドアクセス用開孔部を設ける際に金型を使用したカバーレイフィルムを積層する場合、微細な配線パターニング加工が困難であり、位置精度も十分ではなく、しかも開孔部の形状が実質的に丸型に限定され、形状の自由度が低く、そのためにはんだ付け面積(ランド面積)の拡大が困難であるという問題がある。また、カバーレイフィルムを導体回路層上に積層するときに、接着剤がランドにはみ出し、ランドの導通信頼性を低下させるという問題がある。特に、微細ランドの場合にはランドが接着剤で完全に塞がれ、導通が確保できないという状況も生じうる。
【0009】
また、エポキシ系レジストインクをランドアクセス用開孔部パターンにスクリーン印刷することによりカバーレイを積層する場合、エポキシ系樹脂を主成分とするために、得られるフィルムの柔軟性が十分でないという問題がある。ポリイミド系レジストインクを使用することも考えられるが、吸湿性が高いために印刷作業性が低く、印刷厚さのコントロール性が不十分であるという問題がある。しかも、印刷では開孔部パターンを今まで以上に十分に微細化することは非常に困難であるという問題もある。
【0010】
また、カバーレイを積層するために、ポリイミド樹脂フィルムを貼り合わせた後にそのフィルムにランドアクセス用開孔部をエッチング液処理により形成する場合、エッチング液として高価な強塩基性の試薬(アルカリ系ヒドラジン水溶液)を使用する必要があり、エッチング廃液の処理も含めたエッチングコストを低減し難いという問題がある。また、レーザー光照射処理によりランドアクセス用開孔部を形成する場合、単孔処理であるため生産性が低く、また、ランドに焼成異物が付着しやすいために過マンガン酸カリ溶液処理を施す必要があり、生産コストが上昇するという問題もある。
【0011】
一方、ダブルアクセスタイプの両面フレキシブル配線板の製造において、両面銅張りフィルムにNCドリルで貫通孔を開ける場合、NCドリル装置の導入に大きな設備投資が必要となり、しかも貫通孔を一つずつ開孔するために生産性が低いという問題がある。しかも、貫通孔の開孔端表面にバリが発生し易く、開孔形状も一定しないという問題もある。更に、切削粉が貫通孔内壁に付着し、スルーホールの導通信頼性を低下させるという問題もある。更に、両面フレキシブル配線板の総厚が厚くなりすぎると言う問題もある。
【0012】
このため、ダブルアクセスタイプのフレキシブル配線板として、両面フレキシブル配線板を前述した片面フレキシブル配線板に置き換えることが試みられているが、ポリアミック酸層のイミド化後に銅箔をパターニングするので、銅箔のパターン除去に伴って導体回路層とポリイミド膜とからなる積層体にカールが生じるという問題がある。また、カバーレイを積層するに際し、上述のシングルアクセスタイプの片面フレキシブル配線板の場合と同様な問題がある。
【0013】
本発明は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、シングルアクセスタイプあるいはダブルアクセスタイプの片面のフレキシブル配線板を、低い生産コスト、微細配線パターンで且つ良好な位置精度でカールも抑制しながら製造できるようにし、しかも開孔部の形状の自由度を高めてはんだ付け面積(ランド面積)の拡大を可能にすると共に、ランドの導通信頼性を低下させずにカバーレイフィルムもしくはそれに相当する絶縁層を導体回路層上に形成できるようにすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、i)ポリアミック酸等のポリイミド前駆体が、安価なアルカリエッチング液を利用するフォトリソグラフ法により、低いコスト、微細配線パターン、良好な位置精度、高い自由度でパターニングできること、ii)ポリイミド前駆体が銅箔のパターニング条件に耐性を有すること、iii)従って、ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド膜をシングルアクセスもしくはダブルアクセスタイプの片面フレキシブル配線板の絶縁層として利用した場合、ポリイミド前駆体層のイミド化前に銅箔をパターニングでき、結果的にランドの導通信頼性を低下させずにカバーレイフィルムに相当するポリイミド絶縁層を導体回路層上に形成できることを見出し、上記の目的を達成する本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、ランドアクセス用開孔部が設けられたポリイミド絶縁層とそれに接する導体回路層とからなるフレキシブル配線板の製造方法において、以下の
工程(a)〜(d):
(a) 導体回路用金属箔の片面にポリイミド前駆体ワニスを塗布し、残存揮発分含有量が30〜50重量%の範囲に収まるように乾燥してポリイミド前駆体層を形成する工程;
(b) ポリイミド前駆体層にフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部を設ける工程;
(c) 導体回路用金属箔をサブトラクト法によりパターニングして導体回路層を形成する工程; 及び
(d) ポリイミド前駆体層をイミド化してポリイミド絶縁層を形成する工程
を含んでなることを特徴とする製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、ランドアクセス用開孔部がそれぞれ設けられた第1ポリイミド絶縁層及び第2ポリイミド絶縁層と、それらの間に挟持された導体回路層とからなるフレキシブル配線板の製造方法において、以下の工程(aa)〜(ff):
(aa) 導体回路用金属箔の片面にポリイミド前駆体ワニスを塗布し、乾燥後のポリイミド前駆体層のイミド化率が50%以下となるように乾燥して第1ポリイミド前駆体層を形成する工程;
(bb) ポリイミド前駆体層にフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部を設ける工程;
(cc) 導体回路用金属箔をサブトラクト法によりパターニングして導体回路層を形成する工程;
(dd) 導体回路層上にポリイミド前駆体層ワニスを塗布し、乾燥後のポリイミド前駆体層のイミド化率が50%以下となるように乾燥して第2ポリイミド前駆体層を形成する工程;
(ee) 第2ポリイミド前駆体層にフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部を設ける工程; 及び
(ff) 第1ポリイミド前駆体層及び第2ポリイミド前駆体層をイミド化してそれぞれ第1ポリイミド絶縁層及び第2ポリイミド絶縁層を形成する工程
を含んでなることを特徴とする製造方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、シングルアクセスタイプの本発明のフレキシブル配線板の製造方法について、図1を参照しながら工程毎に説明する。
【0018】
工程(a)
導体回路用金属箔1の片面にポリイミド前駆体ワニスを塗布し、乾燥してポリイミド前駆体層2を形成する(図1(a))。
【0019】
具体的には、導体回路用金属箔1の片面に、ポリイミド前駆体をN−メチル−2−ピロリドン等に溶解したポリイミド前駆体ワニスを、コンマコーター、ナイフコーター、ロールコーター、リップコーター、ダイコーター等により塗工し、層間密着強度の低下や後工程での発泡の発生を防止するために残存揮発分(溶剤、縮合により生ずる水など)含有量(ポリイミド前駆体膜中の全揮発成分の重量百分率(重量%))を30〜50重量%の範囲内に収まるように、加熱乾燥してポリイミド前駆体膜2を作製する。
【0020】
なお、この乾燥中に、ポリイミド前駆体の一部がイミド化するが、乾燥後のポリイミド前駆体層2のイミド化率が50%を超えないようにする。50%を超えると、アルカリエッチング液を利用するフォトリソグラフ法でポリイミド前駆体層2を、微細、高精度且つ低コストでパターニングすることが困難になる。
【0021】
ポリイミド前駆体層2の厚みは、薄すぎると機械的強度が弱くなり、厚すぎるとイミド化後のポリイミド絶縁層が硬くなり、フレキシブル配線板を所定の大きさのロール巻きにできなくなるので、好ましくは10〜75μmである。
【0022】
また、ポリイミド前駆体層2を構成するポリイミド前駆体としては、フレキシブル配線板のカールを防止するために、イミド化後のポリイミド絶縁膜の熱線膨張係数が、イミド化条件下でアニールされた導体回路用金属箔1の熱線膨張係数と略同一となるようなものを使用することが好ましい。
【0023】
ここで、ポリイミド前駆体としては、酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸類(特開昭60−157286号公報、特開昭60−243120号公報、特開昭63−239998号公報、特開平1−245586号公報、特開平3−123093号公報、特開平5−139027号公報参照)、過剰な酸二無水物とジアミンとから合成した末端が酸二無水物であるポリアミック酸プレポリマーとジイソシアネート化合物とから得られるイミド環を有するポリアミック酸類(ポリアミド樹脂ハンドブック,日刊工業新聞社発行(536頁,1988年);高分子討論集,47(6),1990参照)等を使用することができる。中でも、酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸類を好ましく使用することができる。
【0024】
ここで、酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)が好ましく挙げられる。また、ジアミンの例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、パラフェニレンジアミン(PDA)、4,4′−ジアミノベンズアニリド(DABA)、4,4′−ビス(p−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(BAPS)が好ましく挙げられる。
【0025】
導体回路用金属箔1としては、従来のフレキシブル配線板で用いられているものと同様のものを使用することができる、例えば、電解銅箔、SUS304箔、SUS430箔、アルミニウム箔、ベリリウム箔、リン青銅箔等を挙げることができる。
【0026】
なお、導体回路用金属箔1の厚みは、通常、8〜35μmである。
【0027】
工程(b)
次に、ポリイミド前駆体層2に、微細で且つ良好な位置精度でパターニングが可能なフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部3を設ける(図1(b))。
【0028】
具体的には、ポリイミド前駆体層2上に、ランドアクセス用開孔部パターンレジスト層を形成し、アルカリエッチング液でポリイミド前駆体層2をエッチングしてランドアクセス用開孔部3を設け、その後でランドアクセス用開孔部パターンレジスト層を剥離すればよい。
【0029】
工程(c)
次に、導体回路用金属箔1を、微細で且つ良好な位置精度でパターニングが可能なフォトリソグラフ技術を利用するサブストラクト法によりパターニングして導体回路層4を形成する(図1(c))。具体的には、ランドアクセス用開孔部3が設けられたポリイミド前駆体層2の表面を保護フィルム(好ましくは軽剥離性の弱粘着テープ)で被覆した後、導体回路用金属箔1上に導体回路パターンレジスト層を形成し、塩化第2銅水溶液等のエッチング液で導体回路用金属箔1をエッチングして導体回路層4を形成し、その後、導体回路パターンレジスト層と保護フィルムとを剥離すればよい。
【0030】
本発明において、ポリイミド前駆体層2のイミド化(後述する工程(d))の前に導体回路用金属箔1をパターニングする理由は、以下の通りである。
【0031】
即ち、ポリイミド前駆体層2のイミド化(後述する工程(d))後に導体回路用金属箔1をパターニングした場合には、導体回路用金属箔1のパターンレジスト層除去に伴って導体回路とポリイミド膜とからなる積層体にカールが生じる。しかし、ポリイミド前駆体層2をイミド化する前に導体回路用金属箔1をパターニングすることにより、導体回路用金属箔1のパターニングにより熱可塑性のポリイミド前駆体層2にストレスがかかっても、イミド化のための加熱処理時に先ずそのストレスが緩和されつつイミド化され、しかもポリイミド前駆体層2に接している導体回路層4の面積が相対的に小さくなり、その結果導体回路層4の熱膨張係数の影響も相対的に小さくなる。従って、そのようなカールの発生を防止もしくは大幅に抑制することができる。
【0032】
工程(d)
次に、ポリイミド前駆体層2をイミド化してポリイミド絶縁層5を形成する。一応、この段階の構造でダブルアクセス用配線板としても使用可能であるが、ポリイミド絶縁層5の形成後に、導体回路層上に公知の絶縁性保護層6を形成してシングルアクセス用配線板とすることが好ましい(図1(e))。
【0033】
このように、シングルアクセスタイプのフレキシブル配線板が、低い生産コストで、微細配線パターンで且つ良好な位置精度で製造できる。しかもランドアクセス用開孔部の形状の自由度が高く、そのためはんだ付け面積(ランド面積)の拡大が可能となる。結果的に、ランドの導通信頼性を低下させずにカバーレイフィルムに相当するポリイミド絶縁層を導体回路層上に形成できる。
【0034】
次に、ダブルアクセスタイプの本発明のフレキシブル配線板の製造方法について、図2を参照しながら工程毎に説明する。
【0035】
工程(aa)
図1(a)に示したシングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程(a)に準じ、導体回路用金属箔21の片面にポリイミド前駆体ワニスを塗布し、第1ポリイミド前駆体層22を形成する(図2(aa)。
【0036】
工程(bb)
図1(b)に示したシングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程(b)に準じ、第1ポリイミド前駆体層22に微細で且つ良好な位置精度でパターニングが可能なフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部23を設ける(図2(bb))。
【0037】
工程(cc)
図1(c)に示したシングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程(c)に準じ導体回路用金属箔を、微細で且つ良好な位置精度でパターニングが可能なフォトリソグラフ技術を利用するサブトラクト法によりパターニングして導体回路層24を形成する(図2(cc))。
【0038】
工程(dd)
図1(a)に示したシングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程(a)に準じ、導体回路層24上(第1ポリイミド前駆体層22が形成されている面とは反対側面)にポリイミド前駆体層ワニスを塗布して第2ポリイミド前駆体層25を形成する(図2(dd))。
【0039】
なお、第1ポリイミド前駆体層22及び第2ポリイミド前駆体層25のイミド化率は、それぞれ50%以下が好ましい。これにより、それらの間の密着強度を非常に高めることができ、配線板の信頼性も向上する。
【0040】
工程(ee)
図1(b)に示したシングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程(b)に準じ、第2ポリイミド前駆体層25に、微細で且つ良好な位置精度でパターニングが可能なフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部26を設ける(図2(ee))。
【0041】
工程(ff)
図1(d)に示したシングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程(d)に準じ、第1ポリイミド前駆体層22及び第2ポリイミド前駆体層25をイミド化してそれぞれ第1ポリイミド絶縁層27及び第2ポリイミド絶縁層28を形成する(図2(ff))。
【0042】
これにより、ダブルアクセスタイプのフレキシブル配線板が、低い生産コスト、微細配線パターンで且つ良好な位置精度で製造できる。しかも開孔部の形状の自由度が高く、そのためはんだ付け面積(ランド面積)の拡大が可能となる。結果的に、ランドの導通信頼性を低下させずにカバーレイフィルムを導体回路層上に積層できる。更に、導体回路層24の両側のポリイミド絶縁層の熱線膨張係数を略同一にすることにより、導体回路層24の熱線膨張係数の大きさによらず、配線板のカールの発生を防止もしくは大幅に抑制することができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0044】
参考例A1
温度コントロラーとジャケット付きの60リットルの反応釜に、パラフェニレンジアミン(PDA、三井化学社製)1.05kg(11.2モル)と、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DPE、和歌山精化社製)0.86kg(4.8モル)とを、窒素ガス雰囲気下で溶剤N−メチル−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)約45kgに溶解した。その後、50℃において、ピロメリット酸二無水物(PMDA、三菱瓦斯化学社製)3.523kg(16.14モル)を徐々に加えながら、3時間反応させた。これにより、固形分約12%、粘度25Pa・S(25℃)のポリアミック酸ワニスを調製した。
【0045】
得られたポリアミック酸ワニスを銅箔の上に塗布し、80〜170℃の連続炉で溶剤を飛散させた後、雰囲気温度を230〜350℃まで昇温し、350℃で30分間処理してイミド化した。そして銅箔を塩化第2銅水溶液でエッチング除去することにより25μm厚の単層ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの熱線膨張係数(使用測定装置:サーマルメカニカルアナライザー(TMA/SCC150CU、SII社製(引張法:使用荷重2.5g〜5g))は22×10-6/Kであった。
【0046】
参考例A2
パラフェニレンジアミン(PDA、三井化学社製)を5.175kg(7.2モル)使用し、且つ4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DPE、和歌山精化社製)を1.577kg(8.8モル)使用する以外は、参考例A1の操作を繰り返すことによりポリアミック酸ワニスを調整した。このポリアミック酸ワニスから得られる単層ポリイミドフィルムの熱線膨張係数は31×10-6/Kであった。
【0047】
実施例1
(シングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造)
18μm厚,540mm幅の電解銅箔(CF−T9−LP、福田金属社製)上に、参考例A1のポリアミック酸ワニスを乾燥厚25μmとなるように塗布し、230℃の連続炉中で加熱処理することにより乾燥し、ポリイミド前駆体層を形成した。このポリイミド前駆体層の残存揮発分含量は38.5%であり、赤外線スペクトル分析によるイミド化率は20.5%であった。
【0048】
次に、このポリイミド前駆体層上に、良好な耐アルカリ性のフォトレジスト(NR−41,ソニーケミカル社製)を、溶剤乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、ランドアクセス用開孔部パターンに対応したパターンに露光現像してエッチングレジスト層を形成し、10%水酸化カリウム水溶液と温水とで、ポリイミド前駆体層を銅箔が露出するまでエッチングし、種々の形状(円形、矩形等)のランドアクセス用開孔部を形成した。その後、常法によりエッチングレジスト層を除去した。
【0049】
なお、ランドアクセス用開孔部の底部の銅箔を光学顕微鏡で観察したところ、溶解しなかったポリアミック酸樹脂は存在しなかった。
【0050】
次に、ランドアクセス用開孔部が設けられたポリイミド前駆体層の表面を、保護フィルムとして軽剥離性の弱粘着テープ(PET8184、ソニーケミカル社製)で被覆した後、銅箔面にフォトレジストフィルム(SPG152、旭化成社製)をラミネートし、フォトリソグラフ法により導体回路パターンに対応したエッチングレジストパターンを形成し、塩化第2銅エッチング液で銅箔をパターニングし、エッチングレジストパターンを除去することにより、導体回路層を形成した。
【0051】
次に、ポリイミド前駆体層表面の保護フィルムを剥離し、参考例A1のポリアミック酸ワニスを導体回路層上に乾燥厚25μmとなるように塗布した。80〜170℃の連続炉中で加熱処理し、更に窒素雰囲気(酸素濃度0.1%以下)のバッチオーブン中に投入し、1時間かけて350℃まで昇温し、350℃で15分間保持することによりイミド化してポリイミド絶縁層を形成した。その後、窒素雰囲気下で200℃まで降温し大気中で冷却し、シングルアクセスタイプのフレキシブル配線板が得られた。この配線板にはカールの発生はなかった。
【0052】
得られたフレキシブル配線板を、ソフトエッチングによりランド表面の酸化膜を取り除いた後に、300℃のはんだ浴に浸漬したところ、フクレや収縮による変形異常は生じず、ランドへのはんだ付け性も良好であった。
【0053】
また、フレキシブル配線板のランドに無電解スズメッキ(60℃、15分、1μm厚)を行ったところ、良好な密着性でスズメッキ層を形成できた。このとき、ランド周辺のポリイミド絶縁層と導体回路層との界面へのメッキ液の浸入は認められなかった。
【0054】
なお、ポリイミド絶縁層と導体回路層との密着強度も実用上何ら問題のない強度であった。
【0055】
実施例2
(ダブルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造)
18μm厚,540mm幅の電解銅箔(CF−T9−LP、福田金属社製)上に、参考例A2のポリアミック酸ワニスを乾燥厚25μmとなるように塗布し、230℃の連続炉中で加熱処理することにより乾燥し、第1ポリイミド前駆体層を形成した。第1ポリイミド前駆体層の残存揮発分含量は34.0%であり、赤外線スペクトル分析によるイミド化率は18.5%であった。
【0056】
次に、第1ポリイミド前駆体層上に、良好な耐アルカリ性のフォトレジスト(NR−41,ソニーケミカル社製)を、溶剤乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、ランドアクセス用開孔部パターンに対応したパターンに露光現像してエッチングレジスト層を形成し、10%水酸化カリウム水溶液と温水とで、第1ポリイミド前駆体層を銅箔が露出するまでエッチングし、種々の形状(円形、矩形等)のランドアクセス用開孔部を形成した。その後、常法によりエッチングレジスト層を除去した。
【0057】
なお、第1ポリイミド前駆体層に設けられたランドアクセス用開孔部の底部の銅箔を光学顕微鏡で観察したところ、溶解しなかったポリアミック酸樹脂は存在しなかった。
【0058】
次に、ランドアクセス用開孔部が設けられた第1ポリイミド前駆体層の表面を、保護フィルムとして軽剥離性の弱粘着テープ(PET8184、ソニーケミカル社製)で被覆した後、銅箔面にフォトレジストフィルム(SPG152、旭化成社製)をラミネートし、フォトリソグラフ法により導体回路パターンに対応したエッチングレジストパターンを形成し、塩化第2銅エッチング液で銅箔をパターニングし、エッチングレジストパターンを除去することにより、導体回路層を形成した。
【0059】
次に、第1ポリイミド層形成面とは反対側の導体回路層上に、参考例A2のポリアミック酸ワニスを乾燥厚25μmとなるように塗布し、80〜170℃の連続炉中で加熱処理することにより乾燥し、第2ポリイミド前駆体層を形成した。赤外線スペクトル分析によるイミド化率は19.0%であった。
【0060】
次に、第2ポリイミド前駆体層上に、良好な耐アルカリ性のフォトレジスト(NR−41,ソニーケミカル社製)を溶剤乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、フォトレジストをランドアクセス用開孔部パターンに対応したパターンに露光現像してエッチングレジスト層を形成し、10%水酸化カリウム水溶液と温水とで、第2ポリイミド前駆体層を銅箔が露出するまでエッチングし、種々の形状(円形、矩形等)のランドアクセス用開孔部を形成した。その後、常法によりエッチングレジスト層を除去した。
【0061】
なお、第2ポリイミド前駆体層に設けられたランドアクセス用開孔部の底部の銅箔を光学顕微鏡で観察したところ、溶解しなかったポリアミック酸樹脂は存在しなかった。
【0062】
次に、第1ポリイミド前駆体層表面の保護フィルムを剥離し、窒素雰囲気(酸素濃度0.1%以下)のバッチオーブン中に投入し、1時間かけて350℃まで昇温し、350℃で15分間保持することによりイミド化して第1ポリイミド前駆体層及び第2ポリイミド前駆体層からそれぞれ第1ポリイミド絶縁層と第2ポリイミド絶縁層形成した。その後、窒素雰囲気下で200℃まで降温し、大気中で冷却した。これにより、ダブルアクセスタイプの片面フレキシブル配線板が得られた。この配線板にはカールの発生はなかった。
【0063】
得られたフレキシブル配線板を、ソフトエッチングによりランド表面の酸化膜を取り除いた後に、300℃のはんだ浴に浸漬したところ、フクレや収縮による変形異常は生じず、ランドへのはんだ付け性も良好であった。
【0064】
また、フレキシブル配線板のランドに無電解スズメッキ(60℃、15分、1μm厚)を行ったところ、良好な密着性でスズメッキ層を形成できた。このとき、ランド周辺のポリイミド絶縁層と導体回路層との界面のへのメッキ液の浸入は認められなかった。
【0065】
なお、ポリイミド絶縁層と導体回路層との密着強度も実用上何ら問題のない強度であった。
【0066】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、低い生産コスト、微細配線パターンで良好な位置精度で、カールが抑制されたシングルアクセスタイプもしくはダブルアクセスタイプのフレキシブル配線板が得られる。しかも開孔部の形状の自由度が高く、そのためはんだ付け面積(ランド面積)の拡大が可能であるので、ランドの導通信頼性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシングルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程図である。
【図2】本発明のダブルアクセスタイプのフレキシブル配線板の製造工程図である。
【符号の説明】
1 導体回路用金属箔、2 ポリイミド前駆体層、3 ランドアクセス用開孔部、4 導体回路層、5 ポリイミド絶縁層
Claims (3)
- ランドアクセス用開孔部が設けられたポリイミド絶縁層とそれに接する導体回路層とからなるフレキシブル配線板の製造方法において、以下の
工程(a)〜(d):
(a) 導体回路用金属箔の片面にポリイミド前駆体ワニスを塗布し、残存揮発分含有量が30〜50重量%の範囲に収まるように乾燥してポリイミド前駆体層を形成する工程;
(b) ポリイミド前駆体層にフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部を設ける工程;
(c) 導体回路用金属箔をサブトラクト法によりパターニングして導体回路層を形成する工程; 及び
(d) ポリイミド前駆体層をイミド化してポリイミド絶縁層を形成する工程
を含んでなることを特徴とする製造方法。 - 工程(a)において、乾燥後のポリイミド前駆体層のイミド化率が50%以下である請求項1記載の製造方法。
- ランドアクセス用開孔部がそれぞれ設けられた第1ポリイミド絶縁層及び第2ポリイミド絶縁層と、それらの間に挟持された導体回路層とからなるフレキシブル配線板の製造方法において、以下の工程(aa)〜(ff):
(aa) 導体回路用金属箔の片面にポリイミド前駆体ワニスを塗布し、乾燥後のポリイミド前駆体層のイミド化率が50%以下となるように乾燥して第1ポリイミド前駆体層を形成する工程;
(bb) ポリイミド前駆体層にフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部を設ける工程;
(cc) 導体回路用金属箔をサブトラクト法によりパターニングして導体回路層を形成する工程;
(dd) 導体回路層上にポリイミド前駆体層ワニスを塗布し、乾燥後のポリイミド前駆体層のイミド化率が50%以下となるように乾燥して第2ポリイミド前駆体層を形成する工程;
(ee) 第2ポリイミド前駆体層にフォトリソグラフ法によりランドアクセス用開孔部を設ける工程; 及び
(ff) 第1ポリイミド前駆体層及び第2ポリイミド前駆体層をイミド化してそれぞれ第1ポリイミド絶縁層及び第2ポリイミド絶縁層を形成する工程
を含んでなることを特徴とする製造方法。
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