JP2971004B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents

孔版印刷装置

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JP2971004B2
JP2971004B2 JP7009148A JP914895A JP2971004B2 JP 2971004 B2 JP2971004 B2 JP 2971004B2 JP 7009148 A JP7009148 A JP 7009148A JP 914895 A JP914895 A JP 914895A JP 2971004 B2 JP2971004 B2 JP 2971004B2
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道夫 倉茂
弘修 高澤
富也 森
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Tohoku Ricoh Co Ltd
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    • B41LAPPARATUS OR DEVICES FOR MANIFOLDING, DUPLICATING OR PRINTING FOR OFFICE OR OTHER COMMERCIAL PURPOSES; ADDRESSING MACHINES OR LIKE SERIES-PRINTING MACHINES
    • B41L13/00Stencilling apparatus for office or other commercial use
    • B41L13/04Stencilling apparatus for office or other commercial use with curved or rotary stencil carriers
    • B41L13/06Stencilling apparatus for office or other commercial use with curved or rotary stencil carriers with a single cylinder carrying the stencil
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    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41LAPPARATUS OR DEVICES FOR MANIFOLDING, DUPLICATING OR PRINTING FOR OFFICE OR OTHER COMMERCIAL PURPOSES; ADDRESSING MACHINES OR LIKE SERIES-PRINTING MACHINES
    • B41L13/00Stencilling apparatus for office or other commercial use
    • B41L13/18Inking units

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、サーマルヘッド等で穿
孔した孔版用のマスタを印刷ドラムに巻装し、印刷を行
孔版印刷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】孔版印刷方法とは、穿孔画像を形成され
た孔版用のマスタの一方の面にインキを供給し、このイ
ンキをマスタの開孔部から通過させ、反対側にある印刷
用紙に転移させて画像を形成する方法である。孔版印刷
方法が適用される代表的なものとして、謄写版、簡易孔
版印刷装置、謄写印刷装置、デジタル製版印刷装置など
がある。
【0003】デジタル製版印刷装置の要部の構成を図9
を用いて簡単に説明する。デジタル製版印刷装置の印刷
ドラム100の構成は、その内側から円筒状の多孔性支
持体層1、インキ保持層としての多孔質弾性体層2の順
になっている。デジタル製版印刷装置では、印刷ドラム
100の外周面に製版されたマスタ3を巻装し、印刷ド
ラム100の内部に配置されたインキ供給装置によりイ
ンキを印刷ドラム100の内周面に供給し、印刷ドラム
100の外周面近傍に配置された押圧部材としてのプレ
スローラ7により印刷用紙8をマスタ3を介して印刷ド
ラム100に押し付けて印刷を行っている。
【0004】インキ供給装置は、印刷ドラム100の内
周面にインキを供給するインキローラ4と、インキロー
ラ4と所定の間隙を持って配置されていて、インキロー
ラ4との間にインキ溜り6を形成するドクターローラ5
とから主に構成されている。インキは、インキローラ4
とドクターローラ5との間隙で計量され印刷ドラム10
0の内周面に供給される。なお、印刷ドラム100の内
周面を構成する多孔性支持体層1とインキローラ4の外
周面との間にはインキを介して間隙h0が形成されてい
る。
【0005】多孔性支持体層1は、ステンレス鋼や鉄、
あるいはニッケル電鋳法により得られた薄板から円筒状
に形成され、画像部に対応する領域には、インキが通過
する多数の小さな孔が穿たれている。
【0006】多孔質弾性体層2は、主に、ステンレス繊
維などの金属繊維や、ナイロン、ポリエステル繊維など
の化学繊維を織ったスクリーンメッシュを使用するが、
他に周知である連続気泡を有するスポンジゴム、フェル
ト、化学繊維の不織布、金属繊維の不織布、ポリビニル
アセタール系又はポリビニルアルコール系の連続気泡を
有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気
泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や
金属または無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポ
リウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、などを少
なくとも1層、多孔性支持体層1の外周面に巻装して形
成されている。
【0007】多孔性支持体層1の孔の径やピッチをでき
るだけ小さくするのが望ましいが、多孔性支持体層1の
強度や加工コストの関係から、多孔性支持体層1の孔の
径やピッチは、ある程度の大きさとピッチに決定されて
いる。よって、多孔性支持体層1の孔の径やピッチは、
多孔質弾性体層2のそれらに比べて粗く設定されてい
る。多孔質弾性体層2は、多孔性支持体層1から出てき
たインキを均一に拡散し印刷画像にムラが生じないため
に設けられている。
【0008】プレスローラ7は、回転可能で、かつ印刷
ドラム100に対して接離可能に支持されている。他の
押圧部材としては、印刷ドラム100と同じ直径で、印
刷ドラム100と同期して回転する圧胴などがある。プ
レスローラ7は、ゴムで形成され、その直径が印刷ドラ
ム100の直径よりも小さく設定されている。
【0009】マスタ3は、楮、三椏、マニラ麻、亜麻な
どの天然繊維の多孔性薄葉紙や、レーヨン、ビニロン、
ポリエステルなどの化学繊維の不織布、または天然繊
維、化学繊維を混抄した不織布からなる多孔性支持体の
表面にポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂フィルム
を張り合わせた積層構造でできている。最近、マスタ3
として、多孔性支持体を用いずに、薄い延伸ポリエステ
ルフィルムなどに必要に応じて帯電防止剤層や、サーマ
ルヘッドの発熱体とのスティックを防止するスティック
防止剤層などを形成した実質的に熱可塑性樹脂フィルム
のみからなるマスタの使用が考えられている。このマス
タの場合、多孔性支持体がないため、印刷ドラム100
の最外層の多孔質弾性体層2の選択が重要となる。
【0010】図9に示すデジタル製版印刷装置では、イ
ンキローラ4と印刷ドラム100の多孔性支持体層1の
内周面との間で生じるインキのくさび効果により、イン
キに圧力が加わり多孔性支持体層1の開孔部を通して多
孔質弾性体層2へインキを滲出させている。同図におい
て符号60は、くさび効果によって多孔性支持体層1と
インキローラ4との間で発生するインキの圧力分布を表
している。
【0011】以下くさび効果について述べる。くさび効
果によるインキの圧力分布60は、一次元のレイノルズ
方程式を解くことで求められる。
【0012】半径R0の多孔性支持体層1と半径R’の
インキローラ4とがインキを介して接触し、各々の回転
周速度U0、U’で回転しているものとする。
【0013】くさび効果とは、弾性流体潤滑理論による
効果で、傾斜した2平面の移動によって、2平面の間隙
が狭くなることで、間に満たされた流体が押圧され、流
体に2平面を支える程大きな圧力が発生するという効果
である。
【0014】インキの圧力分布60を求めるために、次
式で定義される半径R及び回転周速度Uを持つ等価な円
筒を考える。(図10参照)すなわち、RとUは次のよ
うに与えられる。
【0015】
【数1】
【0016】この等価円筒において、より現実的なイン
キの出口条件としてSS条件(レイノルズの出口条件)
を使用すると、インキの圧力分布は次のようになる。こ
こで、Xは原点を多孔性支持体層の回転中心とインキロ
ーラの回転中心とを結ぶ線と、多孔性支持体層の内周面
との交点に置き、多孔性支持体層の回転方向を正に取る
ことと等価である。
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
【数4】
【0020】式2、式4より
【0021】
【数5】
【0022】くさび効果により式5の様なインキの圧力
分布60が得られる。(図10参照)ここで、X0の値
は多孔性支持体層の回転中心とインキローラの回転中心
とを結ぶ線からインキ圧力のピーク点52のインキロー
ラの回転方向の上流側へのズレ量に等しい。また、pm
はインキの最大圧力である。η0はインキの粘度であ
る。h0は、インキローラの外周面と多孔性支持体層と
の間隙である。
【0023】上記の解析は、多孔性支持体層を用いたも
のであったが、特開平1−204781号公報に示され
ているように、多孔性支持体層を用いず直接、インキロ
ーラと多孔質弾性体層とがインキを介して接触する構造
であっても同様に当てはまる。
【0024】このように、デジタル製版印刷装置では、
インキローラと多孔性支持体層の内周面との間で生じる
くさび効果により、インキに圧力を加えて多孔性支持体
層と多孔質弾性体層にインキを供給し、マスタの穿孔部
よりインキを滲出して印刷を行っている。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】上述の印刷装置に使用
されるインキは、蒸発しにくい油性インキとか、油中水
滴型(水分をオイル分で囲んだタイプ)のエマルジョン
インキが一般に用いられている。これは、印刷装置を長
時間放置した後とか途中で印刷を停止した後に、再度印
刷を再開した場合などにインキの揮発分が蒸発して、ヤ
レ紙を大量に発生させないためである。
【0026】これらのインキは、蒸発しにくいため、印
刷用紙に転移し、印刷用紙の繊維に浸透して乾燥した状
態になるまでに、ある程度の浸透時間が必要であった。
【0027】上述の印刷装置では、くさび効果の作用に
よってインキがマスタより滲出(吐出)している部位か
ら印刷用紙を剥がし始めると、印刷用紙の表面にインキ
が大量に転移する。このようにインキが大量に転移した
印刷用紙が連続的に、排紙トレイに排出積載された時
に、前の印刷用紙の画像インキが、次に排紙された印刷
用紙の裏面に付着して汚してしまう、裏移りと言われる
問題が上述の印刷装置にはあった。
【0028】また、図11、図12、図13に示すよう
に、くさび効果の作用によってインキがマスタ3の表面
から滲出(吐出)した部位9に印刷用紙8を押しつける
と、その吐出したインキが、印刷用紙8の表面によって
押しつぶされ、印刷用紙8の繊維に浸透して、印刷画像
ににじみが発生すると言う問題もあった。
【0029】本発明はにじみや裏移りの少ない印刷を行
うことができる孔版印刷装置を提供することを目的とす
る。
【0030】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
印刷ドラムの外周面に製版されたマスタを巻装し、上記
印刷ドラムの内周面からインキローラでインキを供給
し、上記マスタに押圧部材で印刷用紙を押し付け、上記
インキローラと上記印刷ドラムの内周面との間で生じる
くさび効果によってインキを上記マスタから滲出させて
印刷する孔版印刷装置において、上記くさび効果により
インキが上記マスタから滲出する滲出部より上記印刷ド
ラムの回転方向の下流側の部位に、上記押圧部材による
加圧範囲の上記印刷ドラムの回転方向の下流側端が位置
するように上記押圧部材を配置し、上記くさび効果によ
りインキが上記マスタから滲出する上記滲出部より上記
印刷ドラムの回転方向の上流側の部位に、上記押圧部材
による加圧範囲の上記印刷ドラムの回転方向の上流側端
が位置するように上記押圧部材を配置した。
【0031】請求項2記載の発明は、印刷ドラムの外周
面に製版されたマスタを巻装し、上記印刷ドラムの内周
面からインキローラでインキを供給し、上記マスタに押
圧部材で印刷用紙を押し付け、上記インキローラと上記
印刷ドラムの内周面との間で生じるくさび効果によって
インキを上記マスタから滲出させて印刷する孔版印刷装
置において、上記くさび効果によりインキが上記マスタ
から滲出する滲出部より上記印刷ドラムの回転方向の下
流側の部位に、上記押圧部材による加圧範囲の上記印刷
ドラムの回転方向の下流側端が位置するように上記押圧
部材を配置し、上記くさび効果によりインキが上記マス
タから滲出する上記滲出部より上記印刷ドラムの回転方
向の上流側の部位に、上記押圧部材による加圧範囲の上
記印刷ドラムの回転方向の上流側端が位置するように上
記押圧部材を配置し、上記くさび効果によりインキが上
記マスタから滲出する上記滲出部より、上記印刷ドラム
の回転方向の下流側に、上記印刷用紙を上記マスタから
剥離する剥離手段を配置し、上記印刷用紙が上記マスタ
より剥離される剥離位置を、上記滲出部より上記印刷ド
ラムの回転方向の下流側に定めた。
【0032】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記
載の孔版印刷装置において、上記印刷ドラムが円筒状の
多孔性弾性体層を有する。
【0033】請求項4記載の発明は、請求項1又は2記
載の孔版印刷装置において、上記印刷ドラムが実質的に
剛体からなる円筒状の多孔性支持体層と、この多孔性支
持体層の外周面に巻かれた多孔性弾性体層とを有する。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【作用】請求項1記載の発明では、インキローラと印刷
ドラムの内周面との間で生じるくさび効果によってイン
キを、印刷ドラムの内周面から外周面に、さらにマスタ
から滲出させる。押圧部材による加圧範囲を、滲出部の
上流側から下流側までの範囲に設定し、印刷用紙が滲出
部の上流側の実質的にインキの滲出の無い、インキを滲
出させるに至るのに充分なインキ圧力が作用していない
部位から滲出部の下流側のインキの滲出の無い、インキ
圧力が作用していない部位に渡った範囲で押し付けられ
て印刷される。
【0039】請求項2記載の発明では、インキローラと
印刷ドラムの内周面との間で生じるくさび効果によって
インキを、印刷ドラムの内周面から外周面に、さらにマ
スタから滲出させる。押圧部材による加圧範囲を、滲出
部の上流側から下流側までの範囲に設定し、印刷用紙が
滲出部の上流側の実質的にインキの滲出の無い、インキ
を滲出させるに至るのに充分なインキ圧力が作用してい
ない部位から滲出部の下流側のインキの滲出の無い、イ
ンキ圧力が作用していない部位に渡った範囲で押し付け
られて印刷される。また、インキローラと印刷ドラムの
内周面との間で生じるくさび効果と、押圧部材の加圧と
によってインキを、印刷ドラムの内周面から外周面、さ
らにマスタから滲出させて印刷用紙に印刷を行い、印刷
用紙を、くさび効果によりインキが滲出する滲出部より
も印刷ドラムの回転方向の下流側のインキの滲出の無
い、インキ圧力の作用していない部位から剥離する。
【0040】請求項3記載の発明では、多孔性支持体層
が不要になり、印刷ドラムの構成が簡素化する。また、
多孔質弾性体層においてインキは均一に拡散される。
【0041】請求項4記載の発明では、印刷ドラムの実
質的に剛体からなる多孔性支持体層は、押圧部材による
印圧が加わった際に変形が無く、印刷ドラム内周面とイ
ンキローラ外周面とが形成するくさび状空隙及び隙間が
安定し、インキの滲出部の幅が安定する。また、多孔性
支持体層から出てくるインキは多孔質弾性体層により均
一に拡散される。
【0042】
【0043】
【0044】
【実施例】以下、本発明の第1の実施例について図面を
参照して説明する。
【0045】図1に示す孔版印刷装置は、符号400で
示す画像形成部と、この画像形成部400の略中央に位
置する印刷ドラム100と、印刷ドラム100の右上方
に配設された製版装置500と、印刷ドラム100の右
下方に配設された給紙装置600と、印刷ドラム100
の左上方に配設された排版装置700と、印刷ドラム1
00の左下方に配設された排紙装置800と、印刷ドラ
ム100の下方に配設された押圧部材としてのプレスロ
ーラ7と、剥離手段としての剥し爪29と、画像形成部
400の上方に配設された原稿読取部200とを具備す
る。
【0046】原稿読取部200は、原稿11を載置位置
から読み取り位置へ搬送するオートドキュメントフィー
ダー40(以下ADFという)と、ADF40の下部に
配設され、原稿11の表面からの反射光を折り返し反射
する走査ミラー32、走査ミラー32の1/2の速度で
移動する光路折り返しミラー対33、結像レンズ34、
結像レンズ34を通過した画像の反射光を順次画像信号
へ変換するCCD31、及び原稿11の表面に光を照射
する蛍光灯35を有する原稿走査用光学系36とを具備
する。
【0047】印刷ドラム100は、内周面を形成する多
孔性で円筒状の多孔性支持体層1とその外周面に巻装さ
れたインキ保持層としての多孔質弾性体層2とを有し、
後述するインキ供給軸23の回りに回転可能に支持され
ていて、図示しないモータにより回転される。印刷ドラ
ム100の外周面にはマスタ3をクランプするクランプ
手段が設けられている。
【0048】多孔性支持体層1は、ステンレスなどの金
属により円筒状に形成され、図2に示すように、上述の
クランプ手段とその周辺部とを除く他の部分、すなわち
画像領域に、インキを通過させるために多数の開孔1a
が穿孔されている。
【0049】多孔質弾性体層2には、テトロン、ナイロ
ン、ポリエステル等の化学繊維又はステンレス等の金属
繊維等の繊維状の素材を網目状に交差させたスクリーン
メッシュが用いられ、インキを通過させるために多数の
オープンエリアが形成されている。その他多孔質弾性体
層2として、連続気泡を有するスポンジゴム、フェル
ト、化学繊維又は金属繊維の不織布、ポリビニルアセタ
ール系又はポリビニルアルコール系の連続気泡を有する
多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有
する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や金属ま
たは無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレ
タン等の液状焼結による多孔質弾性体等が挙げられる。
【0050】本例において、多孔質弾性体層2は、図2
に示すように2層2A、2B設けられている。なお他の
図には、図が煩雑になるのを防ぐために多孔質弾性体層
2が1層だけ図示されている。
【0051】製版装置500は、マスタ3をロール状に
巻いたマスタロール3cを繰り出し自在に支持するマス
タ支持軸3sと、マスタ3をマスタロール3cから引出
しつつ画像情報に応じて加熱穿孔する、サーマルヘッド
13とプラテンローラ12とから主になる製版手段と、
プラテンローラ12の下流側に配置され、マスタ3を所
定の長さに切断する可動刃と固定刃とを備えた、ギロチ
ン式の切断手段14とから主に構成されている。
【0052】プラテンローラ12は、その軸12sを孔
版印刷装置の図示しない側板に回転自在に支持されてお
り、同側板に固設された図示しないステッピングモータ
により回転駆動される。
【0053】サーマルヘッド13は、プラテンローラ1
2の軸12sと平行に延在して設けられており、図示し
ない接離機構によってプラテンローラ12に対してマス
タ3を介して接離自在となっている。サーマルヘッド1
3は、上述の原稿読取部200のCCD31及び図示し
ない画像処理回路で処理されて送出されるデジタル画像
信号に基づきマスタ3を選択的に加熱溶融し穿孔する周
知の機能を有する。
【0054】可動刃は、図示しない、可動刃が固設され
たラックと、孔版印刷装置の側板に回転自在に支持され
ていて、ラックと噛合するピニオンと、孔版印刷装置の
側板に固設されていて、ピニオンの一端に回転伝達部材
を介して連結された昇降モータとを備えた周知の昇降機
構によって、固定刃に対して昇降自在となっている。
【0055】切断手段14の下流側には、テンションロ
ーラ対15、給版ローラ対16が配置されていて、製版
手段で穿孔製版されたマスタ3を印刷ドラム100のク
ランプ手段へ向けて搬送する。
【0056】マスタ3は、図2に示すように、非常に薄
いポリエステル等の熱可塑性樹脂の孔版用のマスタフィ
ルム3aと、このマスタフィルム3aを支持する多孔性
支持体3bとを貼り合わせたラミネート構造となってい
る。多孔性支持体3bは、楮、三椏、マニラ麻、亜麻な
どの天然繊維の多孔性薄葉紙や、レーヨン、ビニロン、
ポリエステルなどの化学繊維の不織布、または天然繊
維、化学繊維を混抄した不織布からなる多孔質弾性体と
なっていて、それらの空隙によりインキの保持、拡散を
行う。
【0057】クランプ手段は、印刷ドラム100の外周
面の母線に沿って設けられたステージと、このステージ
に対向する部位に配置され、クランパ軸17により回動
可能に支持されたクランパ18とにより構成されてい
る。
【0058】印刷ドラム100の内部には、印刷ドラム
100の内周面にインキを供給するインキローラ4と、
インキローラ4と僅かな間隙Aを置いて平行に配置さ
れ、インキローラ4との間にインキ溜り6を形成するド
クターローラ5と、インキ溜り6へインキを供給するイ
ンキ供給軸23とが配置されている。インキは、適宜の
位置に配置されたインキパックからインキポンプにより
圧送され、インキ供給軸23を介してインキ溜り6へ供
給される。インキ溜り6に供給されるインキは、その量
を図示しないインキ量測定手段により測定され、インキ
ポンプによるインキ圧送量をコントロールされる。な
お、本例においても、図9に示した印刷装置と同様に印
刷ドラム100の内周面を構成する多孔性支持体層1と
インキローラ4の外周面との間には、インキを介して間
隙が形成されている。
【0059】インキローラ4は、アルミなどの金属また
はゴムなどにより形成され、図示しないギアにより、印
刷ドラム100と共に時計回り方向に回転する。インキ
ローラ4と印刷ドラム100との周速度の比は、所定の
値に設定されている。ドクターローラ5は、鉄やステン
レスなどの金属で形成され、反時計回り方向に回転す
る。ドクターローラ5と印刷ドラム100との周速度の
比も所定の値に設定されている。
【0060】印刷ドラム100の下方近傍には、給紙装
置600から搬送された印刷用紙8を印刷ドラム100
の外周面に押圧するプレスローラ7が配設されている。
【0061】プレスローラ7は、ゴムにより構成され、
アーム対47の一端に回転自在に支持されている。アー
ム対47は、図示しない搖動手段により、その他端に設
けられた軸47aを中心として搖動され、プレスローラ
7を印刷用紙8を介して印刷ドラム100に接触した位
置と離間した位置とに搖動させる。プレスローラ7は、
印刷ドラム100に接触した位置を占めたときには、印
刷ドラム100と同一周速度で従動回転する。
【0062】ここで、図3a、図3bを用いて、くさび
効果によりインキがマスタ3から滲出(吐出)する滲出
部Yについて説明する。発明者らは、孔版印刷装置(プ
リポートVT−3500(株)リコー製)を用いて次の
ような実験を行なった。プレスローラ7による加圧範囲
53の印刷ドラム100の回転方向の下流側端53b
を、くさび効果によるインキの圧力がゼロになる点(イ
ンキの滲出のない点)Oに対応した位置(図10のX0
の位置。X0は式3より求められる。)に定めると共
に、プレスローラ7の外径を小さいものから大きいもの
7’へ変えることにより、加圧範囲53の印刷ドラム1
00の回転方向の上流側端53aを変化させて印刷を行
った。
【0063】そして、印刷用紙8の転移した印刷画像の
インキのにじみの様子を調べて、図3bに示すように、
にじみが無いときの加圧範囲53の印刷ドラム100の
回転方向の上流側端53aを求め、その時の加圧範囲の
幅Waに対応した領域を滲出部Yとした。なお、図3b
において破線矢印は、インキ滲出(吐出)の方向及び大
きさを表す。また同図には、くさび効果によるインキの
圧力分布60とインキ滲出(吐出)の方向、大きさとの
関係を簡明に説明するため、インキローラ4、印刷用紙
8、プレスローラ7などの図示を省略している。
【0064】剥し爪29は、図1、図4に示すように、
上述の滲出部Yより、印刷ドラム100の回転方向の下
流側に配置されている。よって、印刷用紙8は、マスタ
3より剥離される剥離位置を、滲出部Yより印刷ドラム
100の回転方向の下流側に定められている。なお、こ
の場合、印刷用紙8がマスタ3より剥離される剥離位置
は、滲出部Yの印刷ドラム100の回転方向の下流側
端、すなわち、くさび効果によるインキの圧力がゼロに
なる点Oに一致させるようにしてもよい。
【0065】剥し爪29の先端からは、印刷用紙8のマ
スタ3からの剥離を容易にするために、図示しないポン
プから空気が高速で吐出されていて、印刷用紙8の先端
部へ空気が吹き付けられる。
【0066】給紙装置600は、給紙トレイ24、給紙
ローラ25、分離ローラ対26、レジストローラ対27
等から主に構成されている。給紙トレイ24は、その上
に印刷用紙8を積載され、給紙装置本体に上下動自在に
支持されている。給紙トレイ24は、印刷用紙8の増減
と連動して上下動される。給紙ローラ25と分離ローラ
対26とは、最上位の印刷用紙8と当接するように設け
られており、各ローラは図示しない駆動手段で回転駆動
される。分離ローラ対26の印刷用紙搬送方向下流側に
は、レジストローラ対27が配設されている。レジスト
ローラ対27は、搬送された印刷用紙8の先端をくわえ
込み、タイミングをとって印刷ドラム100の外周面と
プレスローラ7との間に搬送する。
【0067】排紙装置800は、従動ローラ37、駆動
ローラ38、ベルト39、ファン28、排紙トレイ30
等から主に構成されている。従動ローラ37と駆動ロー
ラ38とは排紙装置本体の側板に回転自在に支持されて
おり、各ローラ間には、表面に複数の開孔を有するベル
ト39が掛け渡されている。駆動ローラ38は図示しな
い駆動手段で回転駆動され、この回転力はベルト39を
介して従動ローラ37に伝達される。各ローラ37,3
8の間の下部には、ファン28が配設されている。ファ
ン28は、その回転により図において下向きの空気流を
発生させ、ベルト39の表面に印刷用紙8を吸引する。
駆動ローラ38の印刷用紙搬送方向下流側には、印刷用
紙8を積載する排紙トレイ30が設けられている。
【0068】排版装置700は、上部排版部材42、下
部排版部材43、排版ボックス22、圧縮板21等から
主に構成されている。上部排版部材42は、図示しない
駆動手段で回転駆動される駆動ローラ19と従動ローラ
20、及び各ローラ間に掛け渡されたゴムベルト41か
ら構成されている。下部排版部材43は、図示しない駆
動手段で回転駆動される駆動ローラ45と従動ローラ4
4、及び各ローラ間に掛け渡されたゴムベルト46から
構成されている。また、下部排版部材43は、駆動ロー
ラ19の中心軸を中心に左右方向に移動自在となってお
り、図示しない移動手段で移動される。下部排版部材4
3の移動により、駆動ローラ45の外周面は印刷ドラム
100の外周面と接離自在となっている。排版ボックス
22の上方には、図示しない昇降手段によって上下動さ
れる圧縮板21が配設されている。
【0069】次に、この孔版印刷装置の動作について説
明する。先ず、オペレーターは、ADF40上に原稿1
1を載置する。その後、オペレーターが製版スタートボ
タンを押すと、先ず排版装置700では、前版のマスタ
3の排版が行われる。
【0070】外周面に前版のマスタ3を巻装している印
刷ドラム100は、上述した印刷ドラム100のモータ
により反時計回り方向に回転を開始する。そして印刷ド
ラム100が、その外周面に巻装した前版のマスタ3の
後端が駆動ローラ45と対向する所定の排版位置に到達
すると、図示しない移動手段と駆動手段とが作動し、駆
動ローラ45を回転させると共に下部排版部材43を印
刷ドラム100側に移動させる。
【0071】駆動ローラ45の外周面が印刷ドラム10
0の外周面に当接したとき、印刷ドラム100は反時計
回り方向に回転し続けており、駆動ローラ45は、マス
タ3の後端をすくい上げる。すくい上げられたマスタ3
は、下部排版部材43と上部排版部材42とで挟持さ
れ、印刷ドラム100の外周面より剥離される。剥離さ
れたマスタ3は下部排版部材43と上部排版部材42と
で搬送され、排版ボックス22の内部に廃棄された後、
圧縮板21によって圧縮される。
【0072】印刷ドラム100の外周面より前版のマス
タ3が全て剥離されると、印刷ドラム100はさらに回
転し、クランパ18が給版ローラ対16の近傍の給版位
置で停止する。印刷ドラム100が給版位置に停止する
と、図示しない開閉手段が作動してクランパ18を時計
回り方向に回動させ、給版待機状態となり、排版動作が
完了する。
【0073】上記の排版動作の開始後まもなく以下のよ
うに製版動作が行われる。原稿11がADF40により
載置位置から読み取り位置へ搬送され、読み取り位置に
て、原稿11の表面に蛍光灯35からの光が照射され、
その光が原稿11の表面で反射され、さらに走査ミラー
32、光路折り返しミラー対33で反射された後、結像
レンズ34を通りCCD31に入射して、原稿11の画
像の読み取りが行われる。そして、CCD31により光
電変換された電気信号が図示しない画像処理回路に入力
される。
【0074】原稿読取部200で読み取られた原稿11
は、原稿トレイ上に排出される。
【0075】一方、原稿11の画像の読み取りと並行し
て、画像処理回路において処理された後に送出されるデ
ジタル画像信号に応じて、サーマルヘッド13に設けら
れた複数の発熱素子が選択的に発熱すると共に、プラテ
ンローラ12、テンションローラ対15、給版ローラ対
16がそれぞれ図示しない駆動手段で回転駆動される。
マスタ3は、プラテンローラ12で搬送されつつ、サー
マルヘッド13で穿孔製版されてテンションローラ対1
5、給版ローラ対16で印刷ドラム100の外周面へ向
けて搬送される。
【0076】製版装置500で穿孔製版されたマスタ3
は、プラテンローラ12、テンションローラ対15、給
版ローラ対16の回転により搬送され、マスタ3の先端
部が、給版待機状態で拡開しているクランパ18に送出
される。ステッピングモータのステップ数がある設定値
に達すると、クランパ18とステージとの間に製版済み
のマスタ3の先端部が届いたと判断され、クランパ18
が図示しない開閉手段により閉じられる。
【0077】このクランプ動作と同時に印刷ドラム10
0が時計回り方向に回転され、印刷ドラム100の外周
面にマスタ3が巻装されていく。
【0078】印刷ドラム100の外周面にマスタ3が所
定長さ巻装されると、印刷ドラム100、テンションロ
ーラ対15、プラテンローラ12、給版ローラ対16の
回転が停止する。この停止動作と同時に、可動刃が図示
しない昇降機構によって下降され、マスタ3が固定刃と
の間で切断される。そして印刷ドラム100が再び時計
回り方向に回転され、切断されたマスタ3の後端が、製
版装置500から抜き出され、印刷ドラム100の外周
面に製版済のマスタ3が完全に巻き取られ、給版工程が
終了する。
【0079】給版工程終了後印刷ドラム100は、モー
タによって時計回り方向に回転駆動される。そして、給
紙トレイ24上の印刷用紙8が、給紙ローラ25により
給紙され、分離ローラ対26で一枚ずつに分離されて給
送される。その後、印刷用紙8は、ガイド板に案内され
て給送され、レジストローラ対27によりタイミングを
とられた後、プレスローラ7と印刷ドラム100の外周
面との間に給送される。
【0080】プレスローラ7は、図示しない搖動手段に
より搖動されて、インキローラ4との間で、印刷ドラム
100とマスタ3と印刷用紙8とを押圧する。このと
き、インキは、インキローラ4とドクタローラ5との間
隙Aで計量され、多孔性支持体層1の内周面に供給され
る。多孔性支持体層1の内周面に供給されたインキは、
インキローラ4及び多孔性支持体層1の回転力によりイ
ンキローラ4と多孔性支持体層1の内周面にて作用する
くさび効果によって、多孔質弾性体層2、さらに、マス
タ3の多孔性支持体3bへ滲出し、マスタフィルム3a
の穿孔部を通過し印刷用紙8に転移し、画像が形成され
る。
【0081】画像が形成された印刷用紙8は、滲出部Y
より印刷ドラム100の回転方向の下流側から、剥し爪
29でマスタ3より剥離され、下方に位置するベルト3
9上に排出される。ベルト39上の印刷済みの印刷用紙
8は、ファン28でベルト39上に吸引されつつ駆動ロ
ーラ38の回転によって搬送され、排紙トレイ30上に
排出される。製版済みマスタ3は、プレスローラ7の押
圧によって印刷ドラム100の外周面に密着されて、版
付工程が完了する。その後、印刷枚数等の印刷条件を設
定した後に印刷開始スイッチを押すことにより、モータ
によって印刷ドラム100が回転駆動され、印刷用紙8
が連続して給送されて印刷が行われる。
【0082】本実施例によれば、画像を形成された印刷
用紙8をくさび効果によりインキが滲出する滲出部Yよ
りも印刷ドラム100の回転方向の下流側のインキの滲
出の無い、インキ圧力の作用していない部位から剥離す
るので、印刷用紙8の表面には余剰のインキが付着せず
裏移りを防止できる。
【0083】図5に本発明の第2の実施例を示す。この
実施例に示す孔版印刷装置は、第1の実施例に対して、
滲出部Yに加圧範囲53の印刷ドラム100の回転方向
の上流側端53aが位置し、かつ、滲出部Yより印刷ド
ラム100の回転方向の下流側の部位に加圧範囲53の
印刷ドラム100の回転方向の下流側端53bが位置す
るようにプレスローラ71を配置し、剥し爪29に代え
て、マスタ3より印刷用紙8を剥離する剥離手段として
の送風機50を配置した点のみが相違する。
【0084】送風機50は、マスタ3より印刷用紙8を
剥離する剥離手段であり、滲出部Yより、印刷ドラム1
00の回転方向の下流側に配置され、印刷ドラム100
と印刷用紙8との間(剥離位置)に向けて送風する。印
刷用紙8は、第1の実施例と同様に、マスタ3より剥離
される剥離位置を、滲出部Yより印刷ドラム100の回
転方向の下流側に定められている。
【0085】この実施例によれば、印刷用紙8はプレス
ローラ71で、くさび効果によるインキの滲出部Yの一
部でマスタ3に押し付けられ、滲出部Yより印刷ドラム
100の回転方向の下流側のインキの滲出のない部分ま
でプレスローラ7によって押圧され、インキの滲出のな
い部分にて剥離される。また本実施例によれば、画像を
形成された印刷用紙8をくさび効果によりインキが滲出
する滲出部Yよりも印刷ドラム100の回転方向の下流
側のインキの滲出の無い、インキ圧力の作用していない
部位から剥離するので、印刷用紙8の表面に余剰のイン
キが付着せず裏移りを防止できる。
【0086】なお、印刷用紙8のマスタ3からの剥離を
確実にするため送風機50を設けたが、インキの滲出の
ない部分に印刷用紙8の剥離位置を定めているので、印
刷用紙8が厚紙であるなど自身の腰によりマスタ3から
剥がれる場合には送風機50を削除しても良い。
【0087】なお、加圧範囲53の印刷ドラム100の
回転方向の下流側端53bを滲出部Yの印刷ドラム10
0の回転方向の下流側に位置させ、印刷ドラム100の
回転方向の上流側端53aを滲出部Yの印刷ドラム10
0の回転方向の上流側端に一致させるようにしても良
い。また、加圧範囲53の印刷ドラム100の回転方向
の下流側端53bを滲出部Yの印刷ドラム100の回転
方向の下流側端に一致させるようにしても良い。また、
印刷用紙8がマスタ3より剥離される剥離位置は、滲出
部Yの印刷ドラム100の回転方向の下流側端、すなわ
ち、くさび効果によるインキ圧力がゼロになる点Oに一
致させるようにしても良い。
【0088】図6に第2の実施例の変形例を示す。この
変形例に示す孔版印刷装置は、第2の実施例に対して、
プレスローラ71に代えて押圧部材として圧胴70を用
いた点のみが相違する。
【0089】圧胴70は、その直径を印刷ドラム100
の直径と同じ大きさに形成され、図示しない手段で、同
図において上下に搖動される。圧胴70の外周面には、
印刷用紙8の先端部を係止する用紙クランパ91と、印
刷用紙8の両端の非印刷画像領域を押さえ付ける一対の
排紙コロ92とが設けられている。用紙クランパ91
は、滲出部Yより、印刷ドラム100の回転方向の下流
側で印刷用紙8の先端を図示しない手段で開放する。
【0090】排紙コロ92はバネ等により圧胴70に押
圧され、圧胴70の回転により従動回転する。印刷時
に、印刷用紙8の先端は用紙クランパ91で挾持されて
いるので、印刷ドラム100に巻き上がらずにマスタ3
から剥離される。しかしその後、印刷用紙8の先端が用
紙クランパ91から開放された時に、まだ印刷中の部分
があると、その部分が印刷ドラム100に貼り付いて適
正な位置から剥離できなくなる虞がある。このように排
紙コロ92で印刷用紙8を押さえ付けて搬送すると、適
正な位置から印刷用紙8を剥離できる。
【0091】圧胴70は、滲出部Yに加圧範囲53の印
刷ドラム100の回転方向の上流側端53aが位置し、
かつ滲出部Yより印刷ドラム100の回転方向の下流側
の部位に、圧胴70による加圧範囲53の印刷ドラム1
00の回転方向の下流側端53bが位置するように配置
されている。
【0092】この変形例によれば、印刷用紙8は圧胴7
0で、くさび効果によるインキの滲出部Yの部分内でマ
スタ3に押し付けられ、滲出部Yより印刷ドラム100
の回転方向の下流側のインキの滲出のない部分にて剥離
される。またこの変形例によれば、インキがマスタ3か
ら滲出する滲出部Yより、印刷ドラム100の回転方向
の下流側のインキの滲出の無い、インキ圧力が作用して
いない部位まで、圧胴70により印刷用紙8が押し付け
られて印刷されるので、印刷用紙8の表面には余剰のイ
ンキが付着せず裏移りを防止できる。
【0093】なお、上記第1及び第2の実施例、並びに
第2の実施例の変形例において、加圧範囲53の印刷ド
ラム100の回転方向の上流側端53aは、加圧範囲5
3の幅Wに対応して決められる上流側位置におのずから
設定される。
【0094】図7に本発明の第3の実施例を示す。ここ
で、図3aを参照して、加圧範囲53と印刷画像のにじ
みとの関係について説明する。発明者らは、孔版印刷装
置(プリポートVT−3500(株)リコー製)を用い
て次のような実験を行なった。プレスローラ7による加
圧範囲53の印刷ドラム100の回転方向の下流側端5
3bを、くさび効果によるインキの圧力がゼロになる点
(インキの滲出の無い点)Oに対応した位置(図10の
0の位置。X0は式3より求められる。)に定めると共
に、プレスローラ7の外径を小さいものから大きいもの
7’へ変えることにより、加圧範囲53の印刷ドラム1
00の回転方向の上流側端53aを変化させて印刷を行
った。
【0095】加圧範囲53の幅をW(mm)とし、幅W
(mm)とその時のにじみの様子を観察した。その実験
結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】この実験結果から、幅Wが5、11、12
mmであるとにじみが少なく、さらに幅Wが6〜10m
mであるとにじみが無いことが分かる。ところが、幅W
が13mm以上の所では、加圧範囲53の幅Wが印刷ド
ラム100の回転方向の上流側に広くなり過ぎる。とい
うのも、幅Wが13mm以上の領域とは、インキを滲出
させるのに充分なインキ圧力が作用していない領域であ
るにも関わらず、印刷用紙8とマスタ3とが接触してい
るので、マスタ3の多孔性支持体3bに含まれているイ
ンキが印刷用紙8の繊維の毛細管力の作用によって印刷
用紙8内に吸収される。さらに、印刷用紙8が滲出部Y
を通過する際に、インキがマスタ3から滲出し、必要以
上の量のインキが転移することになる。必要以上の量の
インキは、印刷用紙8の厚さ方向へ浸透し、終いには印
刷用紙8の裏面の近傍にまで至り、いわゆるインキの裏
抜け現象を起こす。インキの裏抜け現象は両面印刷時な
どにおいて不都合が生じるので好ましくない。
【0098】以上の実験結果から加圧範囲53の印刷ド
ラム100の回転方向の上流側端53aが、くさび効果
によるインキの圧力がゼロになる点Oから5mm印刷ド
ラム100の回転方向の上流側に位置するとき、インキ
の滲出が実質的に無いことが分かり、滲出部Yの印刷ド
ラム100の回転方向の上流側端はその位置(点Oから
5mm印刷ドラム100の回転方向の上流側の位置)で
あることになる。よって、好ましい加圧範囲53の幅W
は5mm以上13mm未満である。より好ましくは6m
m以上11mm未満である。
【0099】この実施例に示す孔版印刷装置は、第1の
実施例に対して、滲出部Yに加圧範囲53の印刷ドラム
100の回転方向の下流側端53bが位置し、かつ、滲
出部Yより印刷ドラム100の回転方向の上流側の部位
に加圧範囲53の印刷ドラム100の回転方向の上流側
端53aが位置するようにプレスローラ72を配置した
点のみが相違する。
【0100】この実施例によれば、印刷用紙8がプレス
ローラ72で、くさび効果によるインキの滲出部Yより
も印刷ドラム100の回転方向の上流側の実質的にイン
キの滲出の無い部分からマスタ3に押し付けられ、滲出
部Yにてインキが直ぐに印刷用紙8の厚さ方向に浸透す
るので、にじみの無い印刷物が得られる。
【0101】なお、加圧範囲53の印刷ドラム100の
回転方向の上流側端53aを滲出部Yより印刷ドラム1
00の回転方向の上流側に位置させ、加圧範囲53の印
刷ドラム100の回転方向の下流側端53bを滲出部Y
の印刷ドラム100の回転方向の下流側端に一致させる
ようにしても良い。また、加圧範囲53の印刷ドラム1
00の回転方向の上流側端53aを滲出部Yの印刷ドラ
ム100の回転方向の上流側端に一致させるようにして
も良い。なお、上記第3の実施例においては、加圧範囲
53の印刷ドラム100の回転方向の下流側端53b
は、加圧範囲53の幅Wに対応して決められる下流側位
置におのずから設定される。
【0102】図8に本発明の第4の実施例を示す。この
実施例に示す孔版印刷装置は、第1の実施例に対して、
滲出部Yが加圧範囲53に全て含まれるようにプレスロ
ーラ73を配置した点、及び剥し爪29を省略した点の
みが相違する。
【0103】この実施例によれば、印刷用紙8はプレス
ローラ73で、くさび効果によるインキの滲出部Yより
も印刷ドラム100の回転方向の上流側の実質的にイン
キの滲出の無い部分から、滲出部Yの印刷ドラム100
の回転方向の下流側のインキの滲出の無い部分までマス
タ3に押し付けられ、加圧範囲53の印刷ドラム100
の回転方向の下流側端53bのさらに下流側で剥離され
るので、にじみの無い印刷物を得られると共に、裏移り
を防止でき、さらに、くさび効果が作用している間、印
刷用紙8を押圧しているので、くさび効果の作用による
インキの滲出を最大限に利用でき、高濃度の画像が得ら
れる。
【0104】なお、この場合、加圧範囲53の印刷ドラ
ム100の回転方向の上流側端53aを滲出部Yの印刷
ドラム100の回転方向の上流側端に、その下流側端5
3bを滲出部Yの印刷ドラム100の回転方向の下流側
端にそれぞれ一致させるようにしても良く、さらに、印
刷用紙8がマスタ3より剥離される剥離位置を滲出部Y
の印刷ドラム100の回転方向の下流側端、すなわち、
くさび効果によるインキの圧力がゼロになる点Oに一致
させても良い。
【0105】なお、上記第4の実施例ではインキの滲出
のない部分に印刷用紙8の剥離位置を定め、印刷用紙8
の腰により印刷用紙8をマスタ3から剥がすため剥離手
段を設けていない。しかし印刷用紙8の剥離を確実にす
るために剥し爪29や送風機50を設けても良い。
【0106】図3〜図9において、多孔性支持体層1の
半径R0は、多孔性支持体層1、多孔質弾性体層2、及
びマスタ3の厚さに対して十分大きいので、くさび効果
によるインキの圧力分布、インキの滲出部Y及び加圧範
囲53は同一直線上でその位置関係を表現しても良い
が、解りやすいようにそれぞれ関連する位置、すなわ
ち、くさび効果によるインキの圧力分布は印刷ドラム1
00の内周面に沿った位置、インキの滲出部Y及び加圧
範囲53はマスタ3の外周面に沿った位置に示してあ
る。
【0107】上記各実施例及び変形例において、印刷ド
ラム100は多孔性支持体層1と多孔質弾性体層2とを
有したが、例えば上述した特開平1−204781号公
報や特開昭59−218889号公報に記載されている
ように、多孔性支持体層1を省略し円筒状に形成された
多孔質弾性体層2を具備してなるものであっても良い。
【0108】上記各実施例及び変形例において、マスタ
3は熱可塑性樹脂の孔版用のマスタフィルム3aと多孔
質弾性体としての多孔性支持体3bとを貼り合わせた積
層構造のものであったが、マスタは実質的に熱可塑性樹
脂フィルムのみからなるマスタであってもよい。ここ
で、実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ
とは、マスタが熱可塑性樹脂フィルムのみからなるもの
の他、熱可塑性樹脂フィルムに帯電防止剤等の微量成分
を含有してなるものや、熱可塑性樹脂フィルムの表面及
び裏面のうち少なくとも一方の面にスティック防止層等
の薄膜層を1層又は複数層形成したものを含む。
【0109】また多孔質弾性体としての多孔性支持体3
bを具備しているマスタを用いる場合、多孔質弾性体層
2を有しない印刷ドラムを用い、この印刷ドラムの多孔
性支持体層1の外周面に、多孔性支持体3b側を当接さ
せるように直接マスタ3を巻き付けて印刷を行うように
しても良い。さらに、多孔性支持体層1の孔の径やピッ
チを十分に小さくした場合、多孔質弾性体層2を有しな
い印刷ドラムを用い、マスタフィルム3aと多孔性支持
体3bとを貼り合わせた積層構造のマスタ3あるいは実
質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタを、そ
の印刷ドラムの多孔性支持体層1の外周面に巻き付けて
印刷を行うようにしてもよい。
【0110】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、インキロ
ーラと印刷ドラムの内周面との間で生じるくさび効果に
よってインキを、印刷ドラムの内周面から外周面に、さ
らにマスタから滲出させる。押圧部材による加圧範囲
を、滲出部の上流側から下流側までの範囲に設定し、印
刷用紙が滲出部の上流側の実質的にインキの滲出の無
い、インキを滲出させるに至るのに十分なインキ圧力が
作用していない部位から滲出部の下流側のインキの滲出
の無い、インキ圧力が作用していない部位に渡った範囲
で押し付けられて印刷されるので、にじみの無い印刷物
を得られると共に、裏移りを防止できる。また、くさび
効果が作用している間、印刷用紙を押圧しているので、
くさび効果の作用によるインキの滲出を最大限に利用で
き、高濃度の画像を得ることもできる。
【0111】請求項2記載の発明によれば、インキロー
ラと印刷ドラムの内周面との間で生じるくさび効果によ
ってインキを、印刷ドラムの内周面から外周面に、さら
にマスタから滲出させる。押圧部材による加圧範囲を、
滲出部の上流側から下流側までの範囲に設定し、印刷用
紙が滲出部の上流側の実質的にインキの滲出の無い、イ
ンキを滲出させるに至るのに十分なインキ圧力が作用し
ていない部位から滲出部の下流側のインキの滲出の無
い、インキ圧力が作用していない部位に渡った範囲で押
し付けられて印刷されるので、にじみの無い印刷物を得
られると共に、裏移りを防止できる。また、くさび効果
が作用している間、印刷用紙を押圧しているので、くさ
び効果の作用によるインキの滲出を最大限に利用でき、
高濃度の画像を得ることもできる。さらに、インキロー
ラと印刷ドラムの内周面との間で生じるくさび効果と、
押圧部材の加圧とによってインキを、印刷ドラムの内周
面から外周面に、さらにマスタから滲出させて印刷用紙
に印刷を行ない、印刷用紙を、くさび効果によりインキ
が滲出する滲出部よりも印刷ドラムの回転方向の下流側
のインキの滲出の無い、インキ圧力の作用していない部
位から剥離するので、印刷用紙の表面には余剰のインキ
が付着せず裏移りを防止できる。
【0112】請求項3記載の発明では、多孔性支持体層
が不要になり、印刷ドラムの構成が簡素化し、印刷ドラ
ムのコストダウンを図れると同時に、多孔質弾性体層に
おいてインキを均一に拡散でき、印刷画像にムラが生じ
るのを防止できる。
【0113】請求項4に記載の発明では、実質的に剛体
からなる多孔性支持体層を有するので、押圧部材による
印圧が加わった際に印刷ドラムに変形が無く、印刷ドラ
ム内周面とインキローラ外周面とが形成するくさび状空
隙及び隙間が安定し、十分なくさび効果が得られる。す
なわち、インキの滲出部の幅が安定し、裏移りやにじみ
の低減のための加圧範囲を特定しやすい。また、多孔質
弾性体層を有することにより、多孔性支持体層から出て
くるインキを均一に拡散し印刷画像にムラが生じるのを
防止している。
【0114】
【0115】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す孔版印刷装置の概
略側面図である。
【図2】図1に示す印刷ドラムとマスタとを示す拡大断
面図である。
【図3】aはくさび効果によりインキが滲出する滲出部
と、加圧範囲を説明する図、bはくさび効果によるイン
キの圧力分布と、インキ滲出の方向及び大きさとの関係
を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施例を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施例を説明する図である。
【図6】図5に示す実施例の変形例を説明する図であ
る。
【図7】本発明の第3の実施例を説明する図である。
【図8】本発明の第4の実施例を説明する図である。
【図9】従来の孔版印刷装置の一例を説明する図であ
る。
【図10】くさび効果によるインキの圧力分布を示すグ
ラフである。
【図11】図9に示す孔版印刷装置によるにじみの発生
を説明する図である。
【図12】図11のB部分の拡大断面図である。
【図13】図11のC部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 多孔性支持体層 2、2A、2B 多孔質弾性体層 3 マスタ 4 インキローラ 5 ドクタローラ 7、71、72、73 押圧部材として
のプレスローラ 8 印刷用紙 53 押圧部材の加圧範囲 70 押圧部材としての圧胴 100 印刷ドラム 200 原稿読取部 400 画像形成部 500 製版装置 600 給紙装置 700 排版装置 800 排紙装置 Y 滲出部
フロントページの続き (72)発明者 森 富也 宮城県柴田郡柴田町大字中名生字神明堂 3番地の1・東北リコー株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−198489(JP,A) 特開 平3−49980(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B41L 13/04 B41L 13/18

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】印刷ドラムの外周面に製版されたマスタを
    巻装し、上記印刷ドラムの内周面からインキローラでイ
    ンキを供給し、上記マスタに押圧部材で印刷用紙を押し
    付け、上記インキローラと上記印刷ドラムの内周面との
    間で生じるくさび効果によってインキを上記マスタから
    滲出させて印刷する孔版印刷装置において、 上記くさび効果によりインキが上記マスタから滲出する
    滲出部より上記印刷ドラムの回転方向の下流側の部位
    に、上記押圧部材による加圧範囲の上記印刷ドラムの回
    転方向の下流側端が位置するように上記押圧部材を配置
    し、 上記くさび効果によりインキが上記マスタから滲出する
    上記滲出部より上記印刷ドラムの回転方向の上流側の部
    位に、上記押圧部材による加圧範囲の上記印刷ドラムの
    回転方向の上流側端が位置するように上記押圧部材を配
    置した孔版印刷装置。
  2. 【請求項2】印刷ドラムの外周面に製版されたマスタを
    巻装し、上記印刷ドラムの内周面からインキローラでイ
    ンキを供給し、上記マスタに押圧部材で印刷用紙を押し
    付け、上記インキローラと上記印刷ドラムの内周面との
    間で生じるくさび効果によってインキを上記マスタから
    滲出させて印刷する孔版印刷装置において、 上記くさび効果によりインキが上記マスタから滲出する
    滲出部より上記印刷ドラムの回転方向の下流側の部位
    に、上記押圧部材による加圧範囲の上記印刷ドラムの回
    転方向の下流側端が位置するように上記押圧部材を配置
    し、 上記くさび効果によりインキが上記マスタから滲出する
    上記滲出部より上記印刷ドラムの回転方向の上流側の部
    位に、上記押圧部材による加圧範囲の上記印刷ドラムの
    回転方向の上流側端が位置するように上記押圧部材を配
    置し、 上記くさび効果によりインキが上記マスタから滲出する
    上記滲出部より、上記印刷ドラムの回転方向の下流側
    に、上記印刷用紙を上記マスタから剥離する剥離手段を
    配置し、上記印刷用紙が上記マスタより剥離される剥離
    位置を、上記滲出部より上記印刷ドラムの回転方向の下
    流側に定めた孔版印刷装置。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の孔版印刷装置におい
    て、 上記印刷ドラムが円筒状の多孔性弾性体層を有する孔版
    印刷装置。
  4. 【請求項4】請求項1又は2記載の孔版印刷装置におい
    て、 上記印刷ドラムが実質的に剛体からなる円筒状の多孔性
    支持体層と、この多孔性支持体層の外周面に巻かれた多
    孔性弾性体層とを有する孔版印刷装置。
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