JP3571455B2 - マスタ及び孔版印刷装置の版胴及びインキ保持部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、孔版印刷装置に使用されるマスタ及び孔版印刷装置の版胴及びインキ保持部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来使用されている孔版印刷用のマスタは、薄い熱可塑性樹脂フィルム(厚み1〜2μm程度)に和紙繊維や合成繊維、あるいは和紙繊維と合成繊維とを混抄したものからなる多孔性支持体(厚み40〜50μm程度)を貼り合わせたラミネート構造となっている。また、近年熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタも提唱されている。このマスタの熱可塑性樹脂フィルム面を加熱穿孔製版し、多孔性の支持円筒体に樹脂繊維あるいは金属繊維から構成されたメッシュスクリーンからなるインキ保持層を有する回転自在な版胴に、製版されたマスタを巻装して、版胴内部に設けられたインキ供給手段よりインキを供給し、プレスローラー等の押圧手段で印刷用紙を連続的に押圧して、版胴開口部及びマスタ穿孔部よりインキを滲出させて印刷を行う感熱デジタル孔版印刷装置がよく知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に前述の孔版印刷装置においては、印刷装置を一定時間放置した後や印刷を停止した後に再度印刷を再開した場合等に、インキが蒸発することに起因して発生する印刷不良の不具合を防止するため、蒸発しにくい油性インキや油中水型エマルジョンインキが使用されている。
【0004】
しかし、このインキは乾燥しにくいため、印刷時において、印刷用紙に転移したインキが印刷用紙内へ浸透して指等で擦っても汚れが発生しない、所謂、浸透乾燥した状態となるまでにはある程度の時間を必要とする。
【0005】
孔版印刷装置では、印刷済みの印刷用紙は連続的に排紙トレイ上に排出積載されるが、このときに前の印刷用紙上に次の印刷用紙がすぐに積載されると、インキの乾燥時間が短く前の印刷用紙の画像インキが次の印刷用紙の裏面に付着して汚してしまう、所謂、裏写りという不具合を発生してしまう。この裏写りは、インキ転移量の多い画像、とりわけ印刷用紙表面に転移したときのインキ層の厚さの厚い(インキ転移高さの高い)画像の印刷時において発生し易い。
【0006】
さらに、従来の孔版印刷装置に用いられているマスタや版胴ではインキの切れが悪く、印刷動作中において、版胴の表面から印刷用紙が剥離されるときに、マスタ表面のインキと印刷用紙との接着力により、インキ保持層、多孔性支持体、支持円筒体を構成する多孔性支持板等のそれぞれの空隙内に充填されているインキがマスタの穿孔部よりずるずると引き出され、必要以上のインキを印刷用紙に転移させてしまい、転移するインキ量を減少させて裏写りを防止するという効果はほとんど期待できなかった。
【0007】
また、従来の多孔性支持体やインキ保持層では、流入するインキの流動方向を変化させずに流出させてしまう部分が多く存在し、この部分においてインキの流出量が大きくなって裏写りを引き起こしてしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、裏写りの発生を効果的に防止することができるマスタ及び孔版印刷装置の版胴及びインキ保持部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせてなる孔版印刷用のマスタにおいて、前記多孔性支持体はインキ流入側の孔とインキ流出側の孔とを有し、前記多孔性支持体はその内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであると共に、前記インキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量が前記インキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後に前記インキ流出側の孔へ向かって流下することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のマスタにおいて、さらに、前記多孔性支持体が繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載のマスタにおいて、さらに、前記多孔性支持体は、その厚み方向の、前記熱可塑性樹脂フィルムと当接しない側から前記熱可塑性樹脂フィルムと当接する側に向かうに連れて、前記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、外周面にインキ保持部材を有し、前記インキ保持部材上にマスタを巻装する孔版印刷装置の版胴であって、前記インキ保持部材はインキ流入側の孔とインキ流出側の孔とを有し、前記インキ保持部材はその内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであると共に、前記インキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量が前記インキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後に前記インキ流出側の孔へ向かって流下することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の孔版印刷装置の版胴において、さらに、前記インキ保持部材が繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項4または請求項5記載の孔版印刷装置の版胴において、さらに、前記インキ保持部材は外表面に向かうに連れて前記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、版胴の外周面を構成するインキ保持部材であって、
インキ流入側の孔とインキ流出側の孔とを有し、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであると共に、前記インキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量が前記インキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後に前記インキ流出側の孔へ向かって流下することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のインキ保持部材において、さらに、繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項7または請求項8記載のインキ保持部材において、さらに、外表面に向かうに連れて前記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
【実施例】
図1は、本発明の第1の実施例に用いられる孔版印刷装置の要部を示している。同図において、回転自在に支持され、図示しない版胴駆動手段で回転駆動される版胴1は、インキパイプ2、インキローラー3、ドクターローラー4をその内部に有している。
【0022】
版胴1は、図2に示すように、開口部1aを有する多孔性支持板1bと、多孔性支持板1bの外表面に巻装されたインキ保持部材15とから構成されている。
【0023】
この第1の実施例に用いられるインキ保持部材15は、テトロン、ナイロン等の合成樹脂繊維15aの不織布からなり、インキを通過させるためのインキ通路を有し、インキの拡散、保持、押し出し等の働きをする。
【0024】
なお、インキ保持部材15は、マニラ麻や亜麻等の天然繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート、ポリビニルアセタール系若しくはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるもの等によって構成してもよい。
【0025】
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート、各種の多孔質弾性体等のインキ保持部材に樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着し、これにより内部における流体の圧力損失が大きくなるように構成したインキ保持部材を用いてもよい。
【0026】
版胴1の支軸を兼ねたインキパイプ2は図示しない筐体側板に固着されており、その表面には、版胴1の内部にインキを供給するための複数の小さな孔が穿設されている。インキパイプ2は、版胴1の外部に配設された図示しないインキパック内から図示しないポンプによって汲上げられたインキを版胴1の内部に供給する。
【0027】
インキパイプ2の下方には、インキローラー3とドクターローラー4とが配設されている。版胴1内の図示しない側板に回転自在に支持されたインキローラー3は、その外周面が版胴1の内周面と近接するように設置されており、インキパイプ2より供給されたインキを版胴1に供給する。インキローラー3は、図示しないギヤあるいはベルト等の駆動力伝達手段によって版胴駆動手段からの回転力を伝達され、版胴1と同期して図の時計回り方向に回転駆動される。
【0028】
インキローラー3の近傍には、回転自在なドクターローラー4が配設されている。ドクターローラー4は、その外周面とインキローラー3の外周面との間に僅かな間隙が生じるように配設されており、インキローラー3の外周面との近接部において楔状のインキ溜まり5を形成している。
【0029】
インキパイプ2よりインキ溜まり5へと供給されたインキは、インキローラー3とドクターローラー4との間隙を通過することにより均一な層状となりつつインキローラー3の表面に供給される。
【0030】
版胴1の非開口部表面には、軸方向に延在するステージ部6が設けられている。磁性体で形成されたステージ部6上には、ステージ部6に対して接離自在に枢着されたマグネットを有するクランパー7が配設されており、クランパー7は図示しない開閉手段によって回動される。
【0031】
版胴1の左上方には、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27をロール状に巻成してなるマスタロール9と、サーマルヘッド10及びプラテンローラー11と、マスタ搬送ローラー対12と、切断手段13と、マスタガイド板14とが配設されている。マスタロール9は、その芯部9aを図示しないホルダー手段に回転可能に支持されている。
【0032】
サーマルヘッド10とプラテンローラー11とは、図示しない孔版印刷装置の側板に取り付けられている。多数の発熱素子を有するサーマルヘッド10は、図示しない付勢手段によってプラテンローラー11に付勢されている。プラテンローラー11は回転自在に設けられており、図示しないステッピングモーターによって、図において時計回り方向に回転駆動される。熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27はサーマルヘッド10に押圧され、サーマルヘッド10によって熱溶融穿孔製版されつつプラテンローラー11の回転によってマスタロール9より繰り出される。
【0033】
サーマルヘッド10とプラテンローラー11とが配設された位置よりもマスタ搬送方向下流側には、マスタ搬送ローラー対12が配設されている。図示しない孔版印刷装置の側板に回転自在に支持されたマスタ搬送ローラー対12は、図示しない駆動手段によってプラテンローラー11の周速度よりも僅かに速い周速度で回転駆動される。また、マスタ搬送ローラー対12には図示しないトルクリミッターが取り付けられており、プラテンローラー11とマスタ搬送ローラー対12との間で搬送されるマスタ27に対して、予め設定された張力が一定に作用するように構成されている。
【0034】
マスタ搬送ローラー対12の配設位置よりもマスタ搬送方向下流側には、可動刃13aと固定刃13bとからなる切断手段13及びマスタガイド板14が配設されている。切断手段13は、可動刃13aが固定刃13bに対して回転移動または上下動してマスタ27を切断する周知の構成である。マスタガイド板14は図示しない孔版印刷装置の側板に固着されており、搬送されるマスタ27をガイドする。
【0035】
版胴1の下方には、押圧手段としてのプレスローラー16が配設されている。回転自在に支持されたプレスローラー16は、図示しない揺動手段によって、その外周面が版胴1の外周面より離間する位置と版胴1の外周面と当接する位置とに選択的に揺動される。
【0036】
プレスローラー16の右方には、レジストローラー対17が配設されている。レジストローラー対17は、図示しない給紙手段より給送される印刷用紙18の先端を啣え込み、プレスローラー16が版胴1と当接するタイミングと同期して、印刷用紙18を版胴1とプレスローラー16との間に向けて給送する。なお、プレスローラー16の代わりに、版胴1と略同径の圧胴を設けてもよい。
【0037】
上記構成に基づき、以下に動作を説明する。
図示しない原稿読取部に原稿がセットされ、図示しない製版スタートキーが押されると、版胴1が回転し、図示しない排版装置によって版胴1の外周面に巻装されている使用済みマスタが剥離・廃棄され、版胴1はクランパー7が略真上に位置する給版待機位置で停止する。版胴1の回転が停止すると、図示しない開閉手段が作動してクランパー7が開放され、版胴1は図1に示す給版待機状態となる。
【0038】
排版動作が完了すると、これに続いて製版動作が行われる。読み取られた原稿画像は、原稿読取部のCCD等で電気信号に変換され、A/D変換器を経由して製版制御装置に画像データとして送られる。製版制御装置は、送られた画像データに基づいてサーマルヘッド10の発熱素子に対してパルス状の通電を行い、サーマルヘッド10はマスタ27に対して熱溶融穿孔製版を行う。サーマルヘッド10の作動に先立って、プラテンローラー11が図示しないステッピングモーターによって回転駆動され、マスタロール9よりマスタ27が引き出される。
【0039】
製版画像を形成されたマスタ27は、マスタガイド板14にガイドされつつマスタ搬送ローラー対12によってクランパー7へと搬送される。プラテンローラー11を駆動するステッピングモーターのステップ数より、マスタ27の先端がクランパー7とステージ部6との間の所定位置まで達したと判断されると、図示しない開閉手段が作動してクランパー7を反時計回り方向に回動させ、ステージ部6とクランパー7とでマスタ27の先端を挟持した後、版胴1がマスタ搬送速度と略同じ周速度で時計回り方向に回転を開始し、マスタ27の版胴1への巻装が開始される。
【0040】
そして、プラテンローラー11を駆動するステッピングモーターのステップ数より、1版分の製版が完了したと判断されるとプラテンローラー11とマスタ搬送ローラー対12の回転動作がそれぞれ停止され、切断手段13によってマスタ27が切断される。切断されたマスタ27は、版胴1の回転によって引き出されて巻装動作が完了する。
【0041】
巻装動作に引き続き、版付動作が行われる。
図示しない給紙手段より給送された印刷用紙18はレジストローラー対17に啣え込まれる。レジストローラー対17は、低速で回転している版胴1に巻装されたマスタ27の画像領域がプレスローラー16と対応する位置に達するタイミングで、印刷用紙18を版胴1とプレスローラー16との間に向けて給送する。給送された印刷用紙18は、プレスローラー16によって版胴1に巻装されたマスタ27に押圧される。この押圧動作により、プレスローラー16と印刷用紙18とマスタ27と版胴1の外周面とが圧接し、インキローラー3によって版胴1の内周面に供給されたインキが、開口部1aとインキ保持部材15のオープンエリアより滲出し、インキ保持部材15のオープンエリアに充填された後、マスタ27の穿孔部を通過して印刷用紙18に転移される。
【0042】
インキを転移された印刷用紙18は、図示しない剥離爪によって版胴1の外周面より剥離され、図示しない排紙手段によって機外に排出されて版付動作が完了する。
【0043】
版付動作完了後、図示しない印刷スタートキーが押されると、図示しない給紙手段より印刷用紙18が連続的に給送され、版胴1が高速で回転駆動されて印刷動作が行われる。
【0044】
上述の版付動作または印刷動作中において、版胴1の表面から印刷用紙18が剥離されるときに、図3、図4に示すように、マスタ27の表面のインキと印刷用紙18との接着力によってマスタ27の穿孔部27dよりインキ19が引き出されるが、インキ19が引き出される量はインキ保持部材15の構造と関係があり、インキ保持部材15の内部における流体の圧力損失が小さければ小さいほどインキ保持部材15内でのインキの通過性がよくインキの切れが悪くなり、引き出されるインキ19の量、すなわちインキ転移高さlが増加する。
【0045】
上述の圧力損失とは、インキ保持部材15(後述する多孔性支持体も同様)の繊維の密度と関係があり、繊維の密度が高ければ高いほど圧力損失が大きくなる。従って、坪量が一定のインキ保持部材15を用いた場合には、繊維径が細く厚さが薄いものほど空隙が減少し、圧力損失が大きくなるのである。
【0046】
図3に示すように、合成樹脂繊維15a間の空隙が大きくインキ保持部材15における流体の圧力損失が小さくなればなるほど、インキ保持部材15内でのインキ19の通過性が良好となるためにインキ19の切れが悪化し、これにより穿孔部27dを介してインキ保持部材15内からインキ19が大量に引き出されてしまう。そこで、図4に示すように、合成樹脂繊維15a間の空隙を小さくしてインキ保持部材15の内部における流体の圧力損失を大きくすればするほど、インキ保持部材15内でのインキ19の通過性が悪化してインキの切れがよくなり、引き出されるインキ19の量(インキ転移高さl)が低減されるが、圧力損失をあまり大きくし過ぎると引き出されるインキ19の量が少なくなりすぎて満足する画像を得ることができない。
【0047】
そこで、坪量が一定であるインキ保持部材15の繊維径と厚みとを変えることにより密度を変化させ、インキ保持部材15の内部における流体の圧力損失を調整しつつ印刷を行い、そのときの裏写りを調査した。なお、インキ保持部材15の坪量は100g/m2 である。
【0048】
実験では、デジタル孔版印刷機プリポートVT3820((株)リコー製)を用いて印刷を行い、図19に示す圧力損失測定装置を用いてインキ保持部材15の内部における空気の圧力損失を測定した。
【0049】
圧力損失測定装置は、測定用の空気を清浄するプレフィルタがセットされるプレフィルタホルダー60と、試料(テストフィルタ)をセットするテストフィルタホルダー61と、テストフィルタの前後の圧力差を測定する微差圧計62と、空気流量を測定する流量計63と、空気流量を調整するバルブ64と、空気を吸引する吸引ポンプ65と、デジタル表示器66と、圧力損失測定装置の配管内の圧力を測定する圧力計67とから構成されている。テストフィルタホルダー61には、テストフィルタとして直径44mmの円形状のシートがセットされる。
【0050】
吸引ポンプ65によって発生する負圧により、プレフィルタホルダー60の吸入口から空気が装置内に流入してテストフィルタを通過する。このとき、テストフィルタの前後の圧力差を微差圧計62で測定し、この微差圧計62からの出力信号をデジタル表示機66で読み取って圧力損失を求める。
【0051】
微差圧計62として、柴田科学器械工業株式会社製精密微差圧計ISP−6−200D型を用いた。なお、測定時の空気流量は1.25l/cm2 ・minである。また、マスタ27として厚さ1.5μmのものを用いた。実験の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1より明らかなように、圧力損失を5.0mmAq以上にすると、表に三角印で示すように裏写りが少なくなり、圧力損失を7.9mmAq以上にすると、表に丸印で示すように裏写りがほとんどなくなるという結果が得られた。また、圧力損失を24.7mmAq以上とすると満足する画像が得られないことも判明した。以上のことから、インキ保持部材15は、その内部における空気の圧力損失を5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqに設定される。
【0054】
本実施例で使用されるインキは、その粘度が高いと流動性が悪く、インキがインキ保持部材15内に供給されにくくなり、特に印刷速度が低い場合やインキ保持部材15の圧力損失が大きい場合では、インキ保持部材15内でインキが流れにくくなるため、インキ保持部材15へのインキの供給量が減少し、インキ転移量も減少して画像濃度が低下する。このため、インキ粘度としては低い方が好ましいが、粘度が低すぎると画像に滲みや裏抜けが多くなる。従って、本実施例に用いられるインキの粘度としては、0.5Pa・s以上5Pa・s以下(コンプレート型粘度計(CV2 HAAKE製)、気温20℃、シェアレート100 1/Sの条件で測定)であることが好ましい。なお、このインキ粘度の条件は、後述する第2ないし第5の実施例及び変形例においても適用される。
【0055】
図5は、本発明の第2の実施例に用いられる版胴21を示している。この第2の実施例は、第1の実施例と比較すると版胴1に代えて版胴21を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0056】
版胴21は、開口部1aを有する多孔性支持板1bとインキ保持部材30とから主に構成されている。インキ保持部材30は、それぞれ繊維径の異なる2種の合成樹脂繊維30a,30bからなる不織布により構成されている。
【0057】
この実施例では、合成樹脂繊維30a,30bの繊維径をそれぞれ8μm、4μmに設定しており、用いられる合成樹脂繊維の繊維径及び混抄比は、インキ保持部材30の内部における空気の圧力損失を5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqの範囲内に設定し得るものより選択される。
また、この実施例では、組み合わされる合成樹脂繊維を2種類としたが、3種類以上であってもよい。
【0058】
上述のインキ保持部材30を用いることにより、太い繊維30aの間を細い繊維30bで埋めることができ、細い繊維30bのみからなるインキ保持部材を用いて版胴を構成した場合に比べて引張り強度が高く、その内部における流体の圧力損失が大きい版胴21を得ることができる。
【0059】
上記実施例では、合成樹脂繊維30a,30bからなる不織布によってインキ保持部材30を構成したが、インキ保持部材を、マニラ麻や亜麻等の天然繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート等によって構成し、これらのインキ保持部材を繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されるようにしてもよい。
【0060】
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート等のインキ保持部材に樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着させてなるものを用い、これらのインキ保持部材を繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成してもよい。
【0061】
図6、図7は、本発明の第3の実施例に用いられる版胴23と、本発明の第4の実施例に用いられる版胴26とをそれぞれ示している。この第3及び第4の実施例は、第1の実施例と比較すると版胴1に代えて版胴23または版胴26を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0062】
版胴23は、開口部1aを有する多孔性支持板1bとインキ保持部材34とから主に構成されており、インキ保持部材34は、同一の繊維径を有する合成樹脂繊維34aを複数層重ね合わせた不織布で構成されている。
【0063】
インキ保持部材34は、複数層形成された合成樹脂繊維34aの層が、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27側から多孔性支持板1b側に向かうに従い、合成樹脂繊維34aの密度が低くなるように形成されている。
【0064】
版胴26は、多孔性支持板1bとインキ保持部材35とから主に構成されており、インキ保持部材35は、それぞれ繊維径の異なる合成樹脂繊維35a,35b,35cを層状に重ね合わせた不織布で構成されている。
【0065】
インキ保持部材35は、マスタ27側が最も径の小さい合成樹脂繊維35aの層から構成され、内側に向かうに従い合成樹脂繊維35bの層、合成樹脂繊維35cの層と徐々に空隙と径が大きい合成樹脂繊維の層となるように構成されている。
【0066】
すなわち、インキ保持部材34,35は、マスタ27を巻装される外表面に向かうに連れて、その内部の各層間における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成されている。
【0067】
上述の第3及び第4の実施例に示したインキ保持部材34,35としては、少なくともその最外殻層において、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqの範囲内のものが用いられる。
【0068】
上記各実施例では、各インキ保持部材34,35を構成する各合成樹脂繊維34a,35a,35b,35cの層を3層としたが、2層以上であれば何層でもよい。
【0069】
また、各インキ保持部材34,35をそれぞれ構成する各合成樹脂繊維34a,35a,35b,35cの各層は、一体構造または積層構造(個々を重ね合わせた構造)でもよい。内部における流体の圧力損失がそれぞれ異なる大きさとなるインキ保持部材を複数用意し、これらを版胴の外周面に向かうに連れて、順次圧力損失が大きくなるように積層配置して、これをインキ保持部材とすることもできる。
【0070】
上述のインキ保持部材34またはインキ保持部材35を用いることにより、インキの通路に沿って、最初は圧力損失が小さくインキの供給・拡散が良好な層を有し、最終では圧力損失が大きくインキの切れがよい層を有するインキ保持部材34,35とすることができる。
【0071】
上記各実施例では、合成樹脂繊維34aからなる不織布によってインキ保持部材34を、また、合成樹脂繊維35a,35b,35cからなる不織布によってインキ保持部材35をそれぞれ構成したが、各合成樹脂繊維34a,35a,35b,35cからなる不織布に代えて、マニラ麻や亜麻等の天然繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート、ポリビニルアセタール系若しくはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるもの等によって構成し、マスタ27を巻装される外表面に向けて、インキ保持部材の内部における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成してもよい。
【0072】
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート、各種の多孔質弾性体等のインキ保持部材に樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着させてなるものを用い、これらのインキ保持部材を、マスタを巻装される外表面に向けてその内部における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成してもよい。
【0073】
図8は、本発明の第5の実施例に用いられる版胴28を示している。この第5の実施例は、第1の実施例と比較すると版胴1に代えて版胴28を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0074】
版胴28は、開口部1aを有する多孔性支持板1bとインキ保持部材38とから主に構成されており、インキ保持部材38は、繊維部材38cより主に構成されている。インキ保持部材38には、インキ流入側の孔38a及びインキ流出側の孔38bと、インキ流入側の孔38aから流入したインキ19が、版胴28の外周面に対する垂線S、すなわちインキ流出側の孔38bの開口を有する面に対する垂線Sから少なくとも1回ずれた後に、インキ流出側の孔38bから流出するインキ通路38dが形成されている。
【0075】
インキ通路38dは、インキ流入側の孔38aから流入したインキの実質的に全量が、垂線S上に存在する繊維部材38cにより流下を妨げられ、垂線Sに沿って流下しないように構成されている。換言すると、インキ通路38dは、インキ流入側の孔38aから流入したインキの実質的に全量が、繊維部材38cによってその流下を妨げられることにより、一旦インキ流入側の孔38aの垂直下方より外方へ流出し、その後、インキ流出側の孔38bへ向かって流下するように構成されている。
【0076】
印刷用紙18がマスタ27の表面から引き剥がされるときに、孔38bの天井部38eとインキ19との間にはインキ19の粘着力が働き、インキ保持部材38から引き出されるインキ19の量が低減される。
【0077】
ここで、上述の如きインキ通路38dがインキ保持部材38に形成されたかどうかを判断する方法について述べる。
先ず、図9に示すように、インキ保持部材38の裏面にインキ保持部材38とは異なる色の用紙37を貼り付ける。次に、インキ保持部材38側から光を照射しながら顕微鏡によって50倍の倍率で観察し、繊維部材38c間から用紙37が見えなければ、インキ通路38dが形成されていると判断できる。
【0078】
また、図10に示すように、インキ保持部材38の一方の面からインキ保持部材38に対して垂直な平行光線41を照射し、インキ保持部材38の他方の面に到達する光42を光量計(例えば(株)キーエンス製レーザー式判別センサーLX2−100)で測定しても判断できる。照射された平行光線41はインキ通路38d内で反射するので、他方の面に到達しなくなる。従って、光量計で光42が測定されなければ、上述のインキ通路38dが形成されていると判断できる。
【0079】
上記実施例の変形例として、図11に示すように、インキ保持部材38に代えて、繊維部材38cと同様の繊維部材40aを3層以上有するインキ保持部材40を用いてもよい。
【0080】
上記実施例及び変形例において、インキ保持部材38,40は、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqに設定されている。
【0081】
また、上記実施例及び変形例において、繊維部材38c,40aに代えて2種類以上の繊維径の異なる繊維部材を用いてもよい。
【0082】
さらに、上記実施例及び変形例において、第3の実施例または第4の実施例と同様に、インキ保持部材38,40の密度、あるいは繊維部材38c,40aの繊維径及び繊維部材38c,40a間の空隙を変化させ、マスタ27を巻装される外表面に向かうに連れてインキ保持部材38,40の内部における流体の圧力損失が大きくなるように構成してもよい。また、第1の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体、液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
【0083】
第1ないし第5の実施例及び変形例で用いた各版胴は、それぞれ多孔性支持板1bと各インキ保持部材とから構成されているが、例えば特開平1−204781号公報、あるいは特開昭59−218889号公報に開示されているように、多孔性支持板1bを省略して円筒状に形成されたインキ保持部材のみを具備してなるものであってもよい。この場合、円筒状に形成され、孔版印刷装置の内部に収められているものを版胴と呼び、シート状のものをインキ保持部材という。
【0084】
さらに、第1ないし第5の実施例及び変形例において、各版胴の多孔性支持板1bとインキ保持部材との間に、メッシュスクリーンや不織布等のインキ保持層を介在させてもよい。
【0085】
なお、上記各実施例及び変形例において用いられる熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタとは、マスタが熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものの他、熱可塑性樹脂フィルムに帯電防止剤等の微量成分を含有させてなるもの、さらには熱可塑性樹脂フィルムの表面及び裏面のうちの少なくとも一方に、オーバーコート層等の薄膜層を1層または複数層形成してなるものを含む。
【0086】
また、マスタとしては、楮、三椏、マニラ麻、亜麻等の天然繊維からなる多孔性薄葉紙やレーヨン、ビニロン、フッ素樹脂、ポリエステル等の合成繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、合成繊維を焼結させて作成した焼結シート、ポリビニルアセタール系若しくはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるもの等によって構成された多孔性支持体と熱可塑性樹脂フィルムとをラミネート構造としたものを用いてもよい。
【0087】
多孔性支持体は、その厚さが薄い程、フィルム面とインキが流出することを抑制する役割を有するインキ保持部材15,30,34,35,38,40との間(つまり多孔性支持体内)に存在するインキが少なくなり、マスタ開口部上に存在するインキ量が少なく、多孔性支持体内から引き出されるインキ量が少なくなるので、裏写り防止のためには多孔性支持体を用いない方が好ましい。しかし、マスタの耐久性を重視するには多孔性支持体を用いる方が好ましく、そのときの厚さは、上記理由より裏写りのことを考慮すると、10〜30μm程度が好ましい。
【0088】
図12は、本発明の第6の実施例に用いられる版胴29とマスタ8とをそれぞれ示している。この第6の実施例は、第1の実施例と比較すると版胴1及びマスタ27に代えて版胴29及びマスタ8を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0089】
版胴29は、開口部1aを有する多孔性支持板1bと、多孔性支持板1bの外表面に巻装されたインキ保持層20とから構成されている。インキ保持層20は、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維またはステンレス繊維等を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーンからなり、インキを通過させるためのインキ通路を有し、インキの拡散、保持、押し出し等の働きをする。このインキ保持層20は、複数層設けても1層だけ設けるように構成してもよく、また設けなくてもよい。
【0090】
この第6の実施例に用いられるマスタ8は、和紙繊維等の天然繊維、あるいはテトロン、ナイロン等の合成樹脂繊維8aでインキを通過させるためのインキ通路を形成した不織布からなる多孔性支持体8cと、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム8bとを接着等によって貼り合わせた構造となっている。なお、多孔性支持体8cは、楮、三椏、マニラ麻、亜麻等の天然繊維からなる多孔性薄葉紙や、レーヨン、ビニロン、フッ素樹脂、ポリエステル等の合成樹脂繊維からなる不織布、あるいは天然繊維と合成樹脂繊維とを混抄してなる不織布より構成してもよい。
【0091】
この実施例では、使用されるマスタ8が多孔性支持体8cを有しているため、第1の実施例における熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27とインキ保持部材15との間に多孔性支持体が介在するような例に相当する。従って、裏写りの発生を防止するために、第1の実施例におけるインキ保持部材15に代えて多孔性支持体8cの内部における流体の圧力損失を調整する必要がある。圧力損失を変化させて第1の実施例と同様の実験を行った結果、第1の実施例と同様の結果が得られた。なお、圧力損失の測定は、多孔性支持体8cを熱可塑性樹脂フィルム8bに接着する前に行った。
【0092】
以上のことから、マスタ8の多孔性支持体8cは、その内部における空気の圧力損失を5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqに設定される。
【0093】
本実施例で使用されるインキは、その粘度が高いと流動性が悪く、インキが多孔性支持体8c内に供給されにくくなり、特に印刷速度が低い場合や多孔性支持体8cの圧力損失が大きい場合では、多孔性支持体8c内でインキが流れにくくなるため、多孔性支持体8cへのインキの供給量が減少し、インキ転移量も減少して画像濃度が低下する。このため、インキ粘度としては低い方が好ましいが、粘度が低すぎると画像に滲みや裏抜けが多くなる。従って、本実施例に用いられるインキの粘度としては、0.5Pa・s以上5Pa・s以下(コンプレート型粘度計(CV2 HAAKE製)、気温20℃、シェアレート100 1/Sの条件で測定)であることが好ましい。なお、このインキ粘度の条件は、後述する第7ないし第10の実施例及び変形例においても適用される。
【0094】
上記実施例では、多孔性支持体8cを不織布から構成したが、マニラ麻や亜麻等の天然繊維、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて形成した焼結シート、ポリビニルアセタール系若しくはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるもの等によって構成してもよい。
【0095】
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート、各種の多孔質弾性体等の多孔性支持体に樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着し、これにより多孔性支持体の内部における流体の圧力損失が大きくなるように構成してもよい。
【0096】
図13は、本発明の第7の実施例に用いられるマスタ22を示している。この第7の実施例は、第6の実施例と比較するとマスタ8に代えてマスタ22を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0097】
マスタ22は、それぞれ繊維径の異なる2種類の合成樹脂繊維22a,22bからなる不織布である多孔性支持体22cと、熱可塑性樹脂フィルム8bとを貼り合わせて構成されている。
【0098】
この実施例では、合成樹脂繊維22a,22bの繊維径をそれぞれ4μm、8μmに設定しており、用いられる合成樹脂繊維の繊維径及び混抄比は、マスタ22の多孔性支持体22cの内部における空気の圧力損失を5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqの範囲内に設定し得るものより選択される。
また、この実施例では、組み合わされる合成樹脂繊維を2種類としたが、3種類以上であってもよい。
【0099】
上述のマスタ22を用いることにより、太い繊維22bの間を細い繊維22aで埋めることができ、細い繊維22aのみからなる多孔性支持体を用いてマスタを構成した場合に比べて引張り強度が高く、その内部における流体の圧力損失が大きい多孔性支持体22cを得ることができる。
【0100】
上記実施例では、合成樹脂繊維22a,22bからなる不織布によって多孔性支持体22cを構成したが、多孔性支持体を、マニラ麻や亜麻等の天然繊維、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート等から構成し、これらの多孔性支持体を繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されるようにしてもよい。
【0101】
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート等の多孔性支持体に樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着させてなるものを用い、これらの多孔性支持体を繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成してもよい。
【0102】
図14、図15は、本発明の第8の実施例に用いられるマスタ24と、本発明の第9の実施例に用いられるマスタ25とをそれぞれ示している。この第8及び第9の実施例は、第6の実施例と比較するとマスタ8に代えてマスタ24またはマスタ25を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0103】
マスタ24は、同一の繊維径を有する合成樹脂繊維24aを複数層重ね合わせた不織布で多孔性支持体24bを構成し、この多孔性支持体24bを熱可塑性樹脂フィルム8bと貼り合わせることにより構成されている。多孔性支持体24bは、複数層形成された合成樹脂繊維24aの層が、熱可塑性樹脂フィルム8bと接着される最外殻層から内層に向かうに従い、合成樹脂繊維24aの密度が低くなるように形成されている。
【0104】
マスタ25は、それぞれ繊維径の異なる合成樹脂繊維25a,25b,25cを層状に重ね合わせた不織布で多孔性支持体25dを構成し、この多孔性支持体25dを熱可塑性樹脂フィルム8bと貼り合わせることにより構成されている。多孔性支持体25dは、熱可塑性樹脂フィルム8bと接着される最外殻層が最も径の小さい合成樹脂繊維25aの層から構成され、内層に向かうに従い合成樹脂繊維25bの層、合成樹脂繊維25cの層と徐々に空隙と径が大きい合成樹脂繊維の層となるように構成されている。
【0105】
すなわち、多孔性支持体24b,25dは、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接しない側から熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側に向かうに連れて、その内部の各層間における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成されている。
【0106】
上述の第8及び第9の実施例に示した多孔性支持体24b,25dとしては、少なくともその最外殻層において、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqの範囲内のものが用いられる。
【0107】
また、上記各実施例では、各多孔性支持体24b,25dを構成する合成樹脂繊維24a,25a,25b,25cの層を3層としたが、2層以上であれば何層でもよい。
【0108】
上述のマスタ24またはマスタ25を用いることにより、インキの通路に沿って、最初は圧力損失が小さくインキの供給・拡散が良好な層を有し、最終では圧力損失が大きくインキの切れがよい層を有する多孔性支持体24b,25bとすることができる。
【0109】
上記各実施例では、合成樹脂繊維24aからなる不織布によって多孔性支持体24bを、また、合成樹脂繊維25a,25b,25cからなる不織布によって多孔性支持体25dをそれぞれ構成したが、合成樹脂繊維24a,25a,25b,25cからなる不織布に代えて、マニラ麻や亜麻等の天然繊維、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート、ポリビニルアセタール系若しくはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるもの等によって構成し、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接しない側から熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側に向かうに連れて、多孔性支持体の内部における流体の圧力損失が大きくなるように構成してもよい。
【0110】
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート、各種の多孔質弾性体等の多孔性支持体に樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着させてなるものを用い、これらの多孔性支持体が、熱可塑性樹脂フィルムと当接しない側から熱可塑性樹脂フィルムと当接する側に向かうに連れてその内部における流体の圧力損失が大きくなるように構成してもよい。
【0111】
図16は、本発明の第10の実施例に用いられるマスタ31を示している。この第10の実施例は、第6の実施例と比較するとマスタ8に代えてマスタ31を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
【0112】
マスタ31を構成する不織布からなる多孔性支持体31aは繊維部材31fより主に構成されており、この多孔性支持体31aには、インキ流入側の孔31bから流入したインキが、熱可塑性樹脂フィルム8bの多孔性支持体31aとの当接面に対する垂線Sから少なくとも1回ずれた後に、インキ流出側の孔31cから流出するインキ通路31dが形成されている。
【0113】
インキ通路31dは、インキ流入側の孔31bから流入したインキの実質的に全量が、垂線S上に存在する繊維部材31fにより流下を妨げられ、垂線Sに沿って流下しないように構成されている。換言すると、インキ通路31dは、インキ流入側の孔31bから流入したインキの実質的に全量が、繊維部材31fによってその流下を妨げられることにより、一旦インキ流入側の孔31bの垂直下方より外方へ流出し、その後、インキ流出側の孔31cへ向かって流下するように構成されている。
【0114】
印刷用紙18がマスタ31の表面から引き剥がされるときに、孔31cの天井部31eとインキ19との間にはインキ19の粘着力が働き、多孔性支持体31aから引き出されるインキ19の量が低減される。なお、図16において符号8dは熱可塑性樹脂フィルム8bに形成された穿孔部を示す。
【0115】
ここで、上述の如きインキ通路31dが多孔性支持体31aに形成されたかどうかを判断する方法について述べる。
先ず、図17に示すように、多孔性支持体31aの裏面に多孔性支持体31aとは異なる色の用紙32を貼り付ける。次に、多孔性支持体31a側から光を照射しながら顕微鏡によって50倍の倍率で観察し、繊維部材31f間から用紙32が見えなければ、インキ通路31dが形成されていると判断できる。
【0116】
また、第5の実施例におけるインキ保持部材15と同様に、多孔性支持体31aの一方の面から多孔性支持体31aに対して垂直な平行光線を照射し、多孔性支持体31aの他方の面に到達する光を光量計で測定しても判断することができる。
【0117】
上記実施例の変形例として、図18に示すように、マスタ31に代えて、繊維部材31fと同様の繊維部材39bを3層以上積み重ねた多孔性支持体39aを有するマスタ39を用いてもよい。
【0118】
上記実施例及び変形例において、多孔性支持体31a,39aは、その内部における空気の圧力損失を5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqに設定されている。
【0119】
また、上記実施例及び変形例において、繊維部材31f,39bに代えて2種類以上の繊維径の異なる繊維部材を用いてもよい。
【0120】
さらに、上記実施例及び変形例において、第8の実施例または第9の実施例と同様に、多孔性支持体31a,39aの密度、あるいは繊維部材31f,39bの繊維径及び繊維部材31f,39b間の空隙を変化させることにより、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側に向かうに連れて多孔性支持体31a,39aの内部における流体の圧力損失が順次大きくなるようにマスタ31,39を構成してもよく、また、多孔性支持体としては、第6の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体、あるいは液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
【0121】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqであると共にインキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量がインキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後にインキ流出側の孔へ向かって流下する多孔性支持体を有するマスタを用いることにより、多孔性支持体でのインキの切れを向上させ熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介して多孔性支持体の内部より引き出されるインキ量が少量となり、印刷時において印刷用紙に転移したインキの浸透乾燥が短時間で行われることにより裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【0122】
請求項2記載の発明によれば、繊維径の異なる2種類以上の繊維を組み合わせて構成された多孔性支持体を有するマスタを用いることにより、太い繊維間を細い繊維で埋めることで多孔性支持体の内部における流体の圧力損失を大きくすることができ、印刷時において熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介して多孔性支持体の内部より引き出されるインキ量が適正な量となり、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。また、太い繊維径を有する多孔性支持体を使用できるので、マスタの強度が向上して切れや伸びの発生を防止し、マスタの耐刷性を向上させることができる。
【0123】
請求項3記載の発明によれば、熱可塑性樹脂フィルムと当接しない側から熱可塑性樹脂フィルムと当接する側に向かうに連れて、その内部における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成された多孔性支持体を有するマスタを用いることにより、インキ通路に沿って最初はインキの供給・拡散を良好に行い、最終では引き出されるインキ量を適正化することができ、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮されるため、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。また、このように構成された多孔性支持体を有するマスタを用いることにより、通常版胴の外周面に巻装されているインキ保持層の役割を多孔性支持体が担うため、インキ保持層を用いなくとも良好な画像を得ることができ、コストダウンを図ることができる。
【0124】
請求項4記載の発明によれば、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqであると共にインキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量がインキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後にインキ流出側の孔へ向かって流下するインキ保持部材を有する版胴を用いることにより、インキ保持部材でのインキの切れを向上させ熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介してインキ保持部材の内部より引き出されるインキ量が少量となり、印刷時において印刷用紙に転移したインキの浸透乾燥が短時間で行われることにより裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【0125】
請求項5記載の発明によれば、繊維径の異なる2種類以上の繊維を組み合わせて構成されたインキ保持部材を有する版胴を用いることにより、太い繊維間を細い繊維で埋めることによってインキ保持部材内部における流体の圧力損失を大きくすることができ、印刷時において熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介してインキ保持部材内部より引き出されるインキ量が適正な量となり、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。また、太い繊維と細い繊維とを混在させることにより、コストアップすることなく版胴の耐久性を向上させることができる。
【0126】
請求項6記載の発明によれば、外表面に向かうに連れてその内部における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成されたインキ保持部材を有する版胴を用いることにより、インキ通路に沿って最初はインキの供給・拡散を良好に行い、最終では引き出されるインキ量を適正化することができ、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【0127】
請求項7記載の発明によれば、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqであると共にインキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量がインキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後にインキ流出側の孔へ向かって流下するインキ保持部材を用いることにより、インキ保持部材でのインキの切れを向上させ熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介してインキ保持部材の内部より引き出されるインキ量が少量となり、印刷時において印刷用紙に転移したインキの浸透乾燥が短時間で行われることにより裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【0128】
請求項8記載の発明によれば、繊維径の異なる2種類以上の繊維を組み合わせて構成されたインキ保持部材を用いることにより、太い繊維間を細い繊維で埋めることでインキ保持部材の内部における流体の圧力損失を大きくすることができ、印刷時において熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介してインキ保持部材の内部より引き出されるインキ量が適正な量となり、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。また、太い繊維と細い繊維とを混在させることにより、コストアップすることなくインキ保持部材の耐久性を向上させることができる。
【0129】
請求項9記載の発明によれば、外表面に向かうに連れてその内部における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成されたインキ保持部材を用いることにより、インキ通路に沿って最初はインキの供給・拡散を良好に行い、最終では引き出されるインキ量を適正化することができ、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を採用した孔版印刷装置要部の概略側面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例における印刷用紙へのインキの転移状態を説明する版胴及びインキ保持部材の部分側断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例における印刷用紙へのインキの転移状態を説明する版胴及びインキ保持部材の部分側断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図7】本発明の第4の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図8】本発明の第5の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図9】本発明の第5の実施例を説明する図である。
【図10】本発明の第5の実施例を説明する図である。
【図11】本発明の第5の実施例の変形例に用いられるインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図12】本発明の第6の実施例に用いられる版胴及びマスタを示す部分側断面図である。
【図13】本発明の第7の実施例に用いられるマスタを示す部分側断面図である。
【図14】本発明の第8の実施例に用いられるマスタを示す部分側断面図である。
【図15】本発明の第9の実施例に用いられるマスタを示す部分側断面図である。
【図16】本発明の第10の実施例に用いられるマスタを示す部分側断面図である。
【図17】本発明の第10の実施例を説明する図である。
【図18】本発明の第10の実施例の変形例に用いられるマスタを示す部分側断面図である。
【図19】本発明に用いられる圧力損失測定装置を示す図である。
【符号の説明】
1,21,23,26,28,29 版胴
8,22,24,25,31,39 マスタ
8b 熱可塑性樹脂フィルム
8c,22c,24b,25d,31a,39a 多孔性支持体
15,30,34,35,38,40 インキ保持部材
27 熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ
31b,38a インキ流入側の孔
31c,38b インキ流出側の孔
31d,38d インキ通路
S 垂線
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせてなる孔版印刷用のマスタにおいて、
前記多孔性支持体はインキ流入側の孔とインキ流出側の孔とを有し、前記多孔性支持体はその内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであると共に、前記インキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量が前記インキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後に前記インキ流出側の孔へ向かって流下することを特徴とするマスタ。 - 前記多孔性支持体が繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする請求項1記載のマスタ。
- 前記多孔性支持体は、その厚み方向の、前記熱可塑性樹脂フィルムと当接しない側から前記熱可塑性樹脂フィルムと当接する側に向かうに連れて、前記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のマスタ。
- 外周面にインキ保持部材を有し、前記インキ保持部材上にマスタを巻装する孔版印刷装置の版胴であって、
前記インキ保持部材はインキ流入側の孔とインキ流出側の孔とを有し、前記インキ保持部材はその内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであると共に、前記インキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量が前記インキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後に前記インキ流出側の孔へ向かって流下することを特徴とする孔版印刷装置の版胴。 - 前記インキ保持部材が繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする請求項4記載の孔版印刷装置の版胴。
- 前記インキ保持部材は外表面に向かうに連れて前記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項4または請求項5記載の孔版印刷装置の版胴。
- 版胴の外周面を構成するインキ保持部材であって、
インキ流入側の孔とインキ流出側の孔とを有し、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであると共に、前記インキ流入側の孔から流入したインキの実質的に全量が前記インキ流入側の孔の垂直下方より外方へ流出した後に前記インキ流出側の孔へ向かって流下することを特徴とするインキ保持部材。 - 繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする請求項7記載のインキ保持部材。
- 外表面に向かうに連れて前記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項7または請求項8記載のインキ保持部材。
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