図1は、本発明の第1の実施例に用いられる孔版印刷装置の要部を示している。同図において、回転自在に支持され、図示しない版胴駆動手段で回転駆動される版胴1は、インキパイプ2、インキローラ3、ドクターローラ4をその内部に有している。
版胴1は、図2に示すように、開孔部1aを有する多孔性支持板1bと、多孔性支持板1bの外表面に巻装されたインキ保持層15とから構成されている。インキ保持層15は、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維またはステンレス繊維等を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーンからなり、インキを通過させるためのインキ通路を有し、インキの拡散、保持、押し出し等の働きをする。このインキ保持層15は、複数層設けても、1層だけ設けるように構成してもよく、また設けなくてもよい。
版胴1の支軸を兼ねたインキパイプ2は図示しない筐体側板に固着されており、その表面には版胴1の内部にインキを供給するための複数の小さな孔が穿設されている。インキパイプ2は、版胴1の外部に配設された図示しないインキパック内から図示しないポンプによって汲上げられたインキを版胴1の内部に供給する。
インキパイプ2の下方には、インキローラ3とドクターローラ4とが配設されている。版胴1内の図示しない側板に回転自在に支持されたインキローラ3は、その外周面が版胴1の内周面と近接するように設置されており、インキパイプ2より供給されたインキを版胴1に供給する。インキローラ3は、図示しないギヤあるいはベルト等の駆動力伝達手段によって版胴駆動手段からの回転力を伝達され、版胴1と同期して図の時計回り方向に回転駆動される。
インキローラ3の近傍には、回転自在なドクターローラ4が配設されている。ドクターローラ4は、その外周面とインキローラ3の外周面との間に僅かな間隙が生じるように配設されており、インキローラ3の外周面との近接部において楔状のインキ溜まり5を形成している。
インキパイプ2よりインキ溜まり5へと供給されたインキは、インキローラ3とドクターローラ4との間隙を通過することにより均一な層状となりつつインキローラ3の表面に供給される。
版胴1の非開孔部表面には、軸方向に延在するステージ部6が設けられている。磁性体で形成されたステージ部6上には、ステージ部6に対して接離自在に枢着されたマグネットを有するクランパ7が配設されており、クランパ7は図示しない開閉手段によって回動される。
版胴1の左上方には、マスタ8をロール状に巻成してなるマスタロール9と、サーマルヘッド10及びプラテンローラ11と、マスタ搬送ローラ対12と、切断手段13と、マスタガイド板14とが配設されている。
この第1の実施例に用いられるマスタ8は、図3に示すように、和紙繊維等の天然繊維、あるいはテトロン(商標名)、ナイロン等の合成樹脂繊維8aでインキを通過させるためのインキ通路を形成した不織布からなる多孔性支持体8cと、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム8bとを接着等によって貼り合わせた構造となっている。なお、多孔性支持体8cは、楮、三椏、マニラ麻、亜麻等の天然繊維からなる多孔性薄葉紙や、レーヨン、ビニロン、フッ素樹脂、ポリエステル等の合成樹脂繊維からなる不織布、あるいは天然繊維と合成樹脂繊維とを混抄してなる不織布より構成してもよい。
多孔性支持体8cは、密度が高い方が好ましく、例えば、天然繊維あるいは合成樹脂繊維で構成されている場合、密度は0.1〜0.6g/cm3、より好ましくは0.2〜0.6g/cm3程度である。また、多孔性支持体8cが金属系の繊維で構成されている場合であって、ステンレス、鉄の場合の密度は0.7〜3.0g/cm3、より好ましくは0.9〜3.0g/cm3程度であり、チタンの場合の密度は0.4〜1.7g/cm3、より好ましくは0.5〜1.7g/cm3、アルミニウムの場合の密度は0.2〜1.0g/cm3、より好ましくは0.3〜1.0g/cm3程度である。
マスタロール9は、その芯部9aを図示しないホルダー手段に回転可能に支持されている。
サーマルヘッド10とプラテンローラ11とは、図示しない孔版印刷装置の側板に取り付けられている。多数の発熱素子を有するサーマルヘッド10は、図示しない付勢手段によってプラテンローラ11に付勢されている。プラテンローラ11は回転自在に設けられており、図示しないステッピングモータによって、図において時計回り方向に回転駆動される。マスタ8は、その熱可塑性樹脂フィルム8bをサーマルヘッド10に押圧され、サーマルヘッド10によって熱溶融穿孔製版されつつプラテンローラ11の回転によってマスタロール9より繰り出される。
サーマルヘッド10とプラテンローラ11とが配設された位置よりもマスタ搬送方向下流側には、マスタ搬送ローラ対12が配設されている。図示しない孔版印刷装置の側板に回転自在に支持されたマスタ搬送ローラ対12は、図示しない駆動手段によってプラテンローラ11の周速度よりも僅かに速い周速度で回転駆動される。また、マスタ搬送ローラ対12には図示しないトルクリミッタが取り付けられており、プラテンローラ11とマスタ搬送ローラ対12との間で搬送されるマスタ8に対して、予め設定された張力が一定に作用するように構成されている。
マスタ搬送ローラ対12の配設位置よりもマスタ搬送方向下流側には、可動刃13aと固定刃13bとからなる切断手段13及びマスタガイド板14が配設されている。切断手段13は可動刃13aが固定刃13bに対して回転移動または上下動してマスタ8を切断する周知の構成である。マスタガイド板14は図示しない孔版印刷装置の側板に固着されており、搬送されるマスタ8をガイドする。
版胴1の下方には、押圧手段としてのプレスローラ16が配設されている。回転自在に支持されたプレスローラ16は、図示しない揺動手段によって、その外周面が版胴1の外周面より離間する位置と版胴1の外周面と当接する位置とに選択的に揺動される。
プレスローラ16の右方には、レジストローラ対17が配設されている。レジストローラ対17は、図示しない給紙手段より給送される印刷用紙18の先端を啣え込み、プレスローラ16が版胴1と当接するタイミングと同期して、印刷用紙18を版胴1とプレスローラ16との間に向けて給送する。なお、プレスローラ16の代わりに、版胴1とほぼ同径の圧胴を設けてもよい。
上記構成に基づき、以下に動作を説明する。
図示しない原稿読取部に原稿がセットされ図示しない製版スタートキーが押されると、版胴1が回転して図示しない排版装置によって版胴1の外周面に巻装されている使用済みマスタが剥離・廃棄され、版胴1はクランパ7がほぼ真上に位置する給版待機位置で停止する。版胴1の回転が停止すると、図示しない開閉手段が作動してクランパ7が開放され、版胴1は図1に示す給版待機状態となる。
排版動作が完了すると、これに続いて製版動作が行われる。読み取られた原稿画像は、原稿読取部のCCD等で電気信号に変換され、A/D変換器を経由して製版制御装置に画像データとして送られる。製版制御装置は、送られた画像データに基づいてサーマルヘッド10の発熱素子に対してパルス状の通電を行い、サーマルヘッド10はマスタ8の熱可塑性樹脂フィルム8bに対して熱溶融穿孔製版を行う。サーマルヘッド10の作動に先立って、プラテンローラ11が図示しないステッピングモータによって回転駆動され、マスタロール9よりマスタ8が引き出される。
製版画像を形成されたマスタ8は、マスタガイド板14にガイドされつつマスタ搬送ローラ対12によってクランパ7へと搬送される。プラテンローラ11を駆動するステッピングモータのステップ数より、マスタ8の先端がクランパ7とステージ部6との間の所定位置まで達したと判断されると、図示しない開閉手段が作動してクランパ7を反時計回り方向に回動させ、ステージ部6とクランパ7とでマスタ8の先端を挟持した後、版胴1がマスタ搬送速度とほぼ同じ周速度で時計回り方向に回転を開始し、マスタ8の版胴1への巻装が開始される。
そして、プラテンローラ11を駆動するステッピングモータのステップ数より、1版分の製版が完了したと判断されるとプラテンローラ11とマスタ搬送ローラ対12の回転動作がそれぞれ停止され、切断手段13によってマスタ8が切断される。切断されたマスタ8は、版胴1の回転によって引き出されて巻装動作が完了する。
巻装動作に引き続き、版付動作が行われる。
図示しない給紙手段より給送された印刷用紙18はレジストローラ対17に啣え込まれる。レジストローラ対17は、低速で回転している版胴1に巻装されたマスタ8の画像領域がプレスローラ16と対応する位置に達するタイミングで、印刷用紙18を版胴1とプレスローラ16との間に向けて給送する。給送された印刷用紙18は、プレスローラ16によって版胴1に巻装されたマスタ8に押圧される。この押圧動作により、プレスローラ16と印刷用紙18とマスタ8と版胴1の外周面とが圧接し、インキローラ3によって版胴1の内周面に供給されたインキが、開孔部1aとインキ保持層15のオープンエリアより滲出し、インキ保持層15のオープンエリアとマスタ8を構成する多孔性支持体8cの空隙部8eとに充填された後、熱可塑性樹脂フィルム8bの穿孔部を通過して印刷用紙18に転移される。
インキを転移された印刷用紙18は、図示しない剥離爪によって版胴1の外周面より剥離され、図示しない排紙手段によって機外に排出されて版付動作が完了する。
版付動作完了後、図示しない印刷スタートキーが押されると、図示しない給紙手段より印刷用紙18が連続的に給送され、版胴1が高速で回転駆動されて印刷動作が行われる。
上述の版付動作または印刷動作中において、版胴1の表面から印刷用紙18が剥離されるときに、図4、図5及び図6に示すように、マスタ8の表面のインキと印刷用紙18との接着力によって熱可塑性樹脂フィルム8bの穿孔部8dよりインキ19が引き出されるが、インキ19が引き出される量は多孔性支持体8cの構造と関係があり、多孔性支持体8cの表面の凹凸L(表面粗さ)が大きければ大きいほど穿孔部8dの上方の空隙8e内のインキ層が厚くなり、引き出されるインキ量、すなわちインキ転移高さlが増加する。
図4及び図5に示すように、表面の凹凸Lが大きくなればなるほど、インキが存在する穿孔部8dの上方の空隙8eが大きくなり、これにより穿孔部8dを介して多孔性支持体8cからインキ19が多量に引き出されてしまう。そこで、図6に示すように、合成樹脂繊維8aの繊維径を細くすればするほど凹凸Lが小さくなり、引き出されるインキ量(インキ転移高さl)も低減されるが、凹凸Lをあまり小さくしすぎると引き出されるインキ量が少なくなりすぎて満足な画像が得られない。そこで、厚さ100μm、密度0.4g/cm3の多孔性支持体8cにおいて、合成樹脂繊維8aの繊維径を変化させることにより凹凸Lを調整して印刷を行い、そのときの裏移りを調査した。
実験は、デジタル孔版印刷機プリポートVT3820((株)リコー製)を用いて印刷を行い、表面粗さ計SEF−30D((株)小坂研究所製)を用いて多孔性支持体8cの凹凸L(表面粗さ)を測定した。表面粗さの測定は、半径7μmのヘッドを使用して送り速度0.1mm/sec、測定長さ0.8mmで測定し、この範囲での十点平均粗さを求め、これを10箇所測定してその平均より凹凸L(表面粗さRz)を算出した。なお、表面粗さの測定は、多孔性支持体8cと熱可塑性樹脂フィルム8bとを貼り合わせる前に、多孔性支持体8cの熱可塑性樹脂フィルム8bと接する側の面について行い、その後、多孔性支持体8cのその面に薄く接着剤を塗布し、熱可塑性樹脂フィルム8bを貼り合わせてマスタ8を得ている。この表面粗さの測定は、後述する第2ないし第6の実施例においても同様に行っている。また、熱可塑性樹脂フィルム8bの厚さは1.5μmである。実験の結果を表1に示す。
表1より明らかなように、表面粗さを45μmRz以下にすると、表に三角印で示すように裏移りが少なくなり、35μmRz以下にすると、表に丸印で示すように裏移りがほとんど無くなり、25μmRz以下にすると、表に星印で示すように裏移りが発生しないという結果が得られた。また、表面粗さを5μmRz未満とすると満足する画像が得られないことも判明した。
さらに、合成樹脂繊維8aの繊維径を20μm以下とすると、表に三角印で示すように裏移りが少なくなり、15μm以下とすると、表に丸印で示すように裏移りがほとんど無くなり、8μm以下とすると、表に星印で示すように裏移りが発生しないという結果が得られた。また、繊維径を1μm未満とすると満足する画像が得られないことも判明した。
以上のことから、多孔性支持体8cは、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面粗さを5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzに設定される。また、多孔性支持体8cは、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面の繊維径を1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下に設定される。
また、多孔性支持体8cの密度が低いと繊維間の空隙8eが広くなり、細い繊維等を使用しても凹凸Lが大きくなり、裏移りがひどくなる。さらに、密度が高すぎると繊維間の空隙8eが狭くなり、繊維が数多く交差する部分ではインキが通過しにくくなって画像に白抜け(繊維塊跡)が見られ、満足な画像が得られなくなる。そこで、多孔性支持体8cの密度と裏移りとの関係を調査した。
その結果、多孔性支持体8cが、天然または合成樹脂系の繊維で構成されている場合の密度は0.1g/cm3〜0.6g/cm3、より好ましくは0.2g/cm3〜0.6g/cm3、金属系の繊維で構成されている場合であって、ステンレス、鉄の場合の密度は0.7g/cm3〜3.0g/cm3、より好ましくは0.9g/cm3〜3.0g/cm3、チタンの場合の密度は0.4g/cm3〜1.7g/cm3、より好ましくは0.5g/cm3〜1.7g/cm3、アルミニウムの場合の密度は0.2g/cm3〜1.0g/cm3、より好ましくは0.3g/cm3〜1.0g/cm3となった。
以上のことから、多孔性支持体8cの好ましい密度範囲Dwは、以下の式で示される。
Dw=0.09ρ〜0.38ρ(g/cm3)
ρ:物質の密度(g/cm3)
なお、上記式は、後述する第2ないし第15の実施例における各多孔性支持体またはインキ保持部材の密度についても適用され得るものである。
上記実施例では、多孔性支持体8cは不織布からなるものとしたが、マニラ麻や亜麻等の天然繊維、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維、もしくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維、ステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン繊維等からなる不織布、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート、ポリビニルアセタール系またはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるものとしてもよい。
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート、各種の多孔質弾性体等の多孔性支持体において、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムと当接する側の表面に金属や樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着し、これにより多孔性支持体の表面粗さを小さくするようにしてもよい。
図7は、本発明の第2の実施例に用いられるマスタ20を、図8は、第2の実施例の変形例に用いられるマスタ21をそれぞれ示している。この第2の実施例及び変形例は、第1の実施例と比較するとマスタ8に代えてマスタ20またはマスタ21を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
マスタ20は、ステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維20aの焼結シートからなる多孔性支持体20bに熱可塑性樹脂フィルム8bを貼り合わせて構成されている。マスタ21は、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維21aの表面にステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属21bをコーティングした焼結シートからなる多孔性支持体21cに熱可塑性樹脂フィルム8bを貼り合わせて構成されている。多孔性支持体20b,21cは、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面粗さを、それぞれ5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzに設定されている。
また、多孔性支持体20b,21cは、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面の繊維径をそれぞれ1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の同一径に設定されている。なお、多孔性支持体20b,21cは金属繊維20aからなる不織布、または表面に金属21bをコーティングした合成樹脂繊維21aからなる不織布をそれぞれ焼結することにより得られる。
このように、金属繊維20aの焼結シートからなる多孔性支持体20bまたは金属21bを合成樹脂繊維21aの表面にコーティングした焼結シートからなる多孔性支持体21cを有するマスタ20またはマスタ21を用いることにより、高エネルギー表面であり、ぬれ性のよい金属部材からなる多孔性支持体20b,21cはインキとの接着力が高くなり、インキが多孔性支持体20b,21cの内部から引き出されにくくなって、裏移りの発生を防止することができる。
また、多孔性支持体20b,21cが天然繊維部材や合成樹脂部材から構成される多孔性支持体に比べて高弾性であるので、プレスローラ等の押圧部材による加圧時において多孔性支持体20b,21cが圧縮されてインキを吐出し、圧が解除されたときには多孔性支持体20b,21cが復元することにより多孔性支持体20b,21c内にインキを吸い戻す効果が得られ、余分なインキの印刷用紙への転移が防止されて、裏移りの少ない良好な画像を得ることができる。
さらに、多孔性支持体20b,21cが天然繊維部材や合成樹脂部材から構成される多孔性支持体に比べて強度が高いので、長時間使用することによるへたりが少なく、マスタ20,21としては、耐久性が良く大量印刷に適したものを提供することができる。
上記実施例及び変形例では、金属繊維20aからなる焼結シート、あるいは合成樹脂繊維21aの表面に金属21bをコーティングしたものからなる焼結シートによって多孔性支持体20b,21cを構成したが、多孔性支持体を構成するものとしてはこの限りではなく、金属繊維からなる不織布、合成樹脂繊維の表面に金属をコーティングしたものからなる不織布、金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、金属の微粉末を焼結した多孔質体等、少なくともその表面が金属で構成され、インキが通過する通路を有するものであれば何でもよい。なお、焼結シートは不織布に比べて引張強度が高く、またメッシュスクリーンに比べて低コストであるので、多孔性支持体として用いるには特に好適である。
図9は、本発明の第3の実施例に用いられるマスタ22を、図10は、第3の実施例の変形例に用いられるマスタ23をそれぞれ示している。この第3の実施例及び変形例は、第1の実施例と比較するとマスタ8に代えてマスタ22またはマスタ23を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
マスタ22では、それぞれ繊維径の異なる2種の合成樹脂繊維22a,22bからなり、合成樹脂繊維22b間に合成樹脂繊維22aを2列ずつ配置した不織布で、またマスタ23では、それぞれ繊維径の異なる2種の合成樹脂繊維23a,23bからなり、合成樹脂繊維23b間に合成樹脂繊維23aを1列ずつ配置した不織布で多孔性支持体22c,23cをそれぞれ構成しており、各多孔性支持体22c,23cをそれぞれ熱可塑性樹脂フィルム8bと貼り合わせることによりマスタ22及びマスタ23が構成されている。
この実施例及び変形例では、合成樹脂繊維22a,23aの繊維径をそれぞれ4μmに、また、合成樹脂繊維22b,23bの繊維径をそれぞれ8μmに設定しており、用いられる合成樹脂繊維の繊維径及び混抄比は、マスタ22,23において、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の多孔性支持体22c,23cの表面粗さを5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzの範囲内に設定し得るものより選択される。
また、用いられる合成樹脂繊維としては、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面の繊維径が1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の範囲内のものより選択される。この実施例及び変形例では、組み合わされる合成樹脂繊維を2種類としたが、3種類以上であってもよい。
上述のマスタ22またはマスタ23を用いることにより、太い繊維の間を細い繊維で埋めることができ、多孔性支持体22c,23c表面の凹凸L(表面粗さRz )を小さくすることができる。
上記実施例及び変形例では、合成樹脂繊維22a,22bからなる不織布によって多孔性支持体22cを、また、合成樹脂繊維23a,23bからなる不織布によって多孔性支持体23cを構成したが、各合成樹脂繊維22a,22b,23a,23bからなる不織布に代えて、第2の実施例で示した金属繊維からなる焼結シート、合成樹脂繊維の表面に金属をコーティングしたものからなる焼結シート、金属繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、表面に金属をコーティングした合成樹脂繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、あるいは、これらの焼結シート、不織布、メッシュスクリーンの金属繊維、金属表面繊維間に金属や樹脂等の微粉末を分散させ、溶着または接着させてなるもの等を用いてもよい。
さらに、上記実施例の他の変形例として、図31に示すように、太い合成樹脂繊維56aと細い合成樹脂繊維56bとを千鳥状に配置した不織布からなる多孔性支持体56cと、熱可塑性樹脂フィルム8bとを貼り合わせたマスタ56を用いてもよい。
図11、図12は、本発明の第4の実施例に用いられるマスタ24と、本発明の第5の実施例に用いられるマスタ25とをそれぞれ示している。この第4及び第5の実施例は、第1の実施例と比較するとマスタ8に代えてマスタ24またはマスタ25を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
マスタ24は、同一の合成樹脂繊維24aを複数層重ね合わせた不織布で多孔性支持体24bを構成し、この多孔性支持体24bを熱可塑性樹脂フィルム8bと貼り合わせることにより構成されている。多孔性支持体24bは、複数層形成された合成樹脂繊維24aの層が、熱可塑性樹脂フィルム8bと接着される最外殻層から内層に向かうに従い、合成樹脂繊維24aの密度が低くなるように形成されている。
マスタ25は、それぞれ繊維径の異なる合成樹脂繊維25a,25b,25cを層状に重ね合わせて多孔性支持体25dを構成し、この多孔性支持体25dを熱可塑性樹脂フィルム8bと貼り合わせることにより構成されている。多孔性支持体25dは、熱可塑性樹脂フィルム8bと接着される最外殻層が最も繊維径の小さい合成樹脂繊維25aの層から構成され、内層に向かうに従い合成樹脂繊維25bの層、合成樹脂繊維25cの層と徐々に繊維径が大きい合成樹脂繊維の層となるように構成されている。
すなわち、多孔性支持体24b,25dは、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接しない側から熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側に向かうに連れて、空隙が小さくなるように構成されている。
上述の第4の実施例及び第5の実施例に用いられるマスタ24,25において、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の多孔性支持体24b,25dの表面粗さは、5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzの範囲内のものが用いられる。
また、各合成樹脂繊維24a,25aとしては、少なくとも熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面の繊維径が、1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の範囲内のものが用いられる。
また、上記各実施例では、各多孔性支持体24b,25dを構成する各合成樹脂繊維24a,25a,25b,25cの層を3層としたが、2層以上であれば何層でもよい。
上述のマスタ24またはマスタ25を用いることにより、インキの流路に沿って最初は空隙が大きくインキの供給・拡散が良好であり、最終では空隙が小さく凹凸Lの少ない多孔性支持体24b,25bとすることができる。
上記各実施例では、合成樹脂繊維24aからなる不織布によって多孔性支持体24bを、また、合成樹脂繊維25a,25b,25cからなる不織布によって多孔性支持体25dを構成したが、各合成樹脂繊維24a,25a,25b,25cからなる不織布に代えて、第2の実施例で示した金属繊維からなる焼結シート、合成樹脂繊維の表面に金属をコーティングしたものからなる焼結シート、金属繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、表面に金属をコーティングした合成樹脂繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、これらの焼結シート、不織布、メッシュスクリーンの金属繊維、金属表面繊維間に金属や樹脂等の微粉末を分散させ、溶着または接着させてなるもの、金属の微粉末を焼結した多孔質体等、その表面が少なくとも金属で構成された多孔性支持体を用いてもよい。また、多孔性支持体としては、第1の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体や、液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
図13は、本発明の第6の実施例に用いられるマスタ36を示している。この第6の実施例は、第1の実施例と比較するとマスタ8に代えてマスタ36を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
マスタ36を構成する不織布からなる多孔性支持体36aは、繊維部材36fより主に構成されており、この多孔性支持体36aには、インキ流入側の孔36bから流入したインキが、熱可塑性樹脂フィルム8bの多孔性支持体36aとの当接面に対する垂線Sから少なくとも1回ずれた後に、インキ流出側の孔36cから流出するインキ通路36dが形成されている。
インキ通路36dは、インキ流入側の孔36bから流入したインキの実質的に全量が、垂線S上に存在する繊維部材36fにより流下を妨げられ、垂線Sに沿って流下しないように構成されている。換言すると、インキ通路36dは、インキ流入側の孔36bから流入したインキの実質的に全量が、繊維部材36fによってその流下を妨げられることにより、一旦インキ流入側の孔36bの垂直下方より外方へ流出し、その後、インキ流出側の孔36cへ向かって流下するように構成されている。
印刷用紙18がマスタ36の表面から引き剥がされるときに、孔36cの天井部36eとインキ19との間にはインキ19の粘着力が働き、多孔性支持体36aから引き出されるインキ19の量が低減される。
ここで、上述したインキ通路36dが多孔性支持体36aに形成されたかどうかを判断する方法について述べる。
先ず、図14に示すように、多孔性支持体36aの裏面に多孔性支持体36aとは異なる色の用紙37を貼り付ける。次に、多孔性支持体36a側から光を照射しながら顕微鏡によって50倍の倍率で観察し、繊維部材36f間から用紙37が見えなければインキ通路36dが形成されていると判断できる。
また、図15に示すように、多孔性支持体36aの一方の面から多孔性支持体36aに対して垂直な平行光線54を照射し、多孔性支持体36aの他方の面に到達する光55を光量計(例えば(株)キーエンス製レーザー式判別センサーLX2−100)で測定しても判断できる。照射された平行光線54はインキ通路36d内で反射するので他方の面に到達しなくなる。従って、光量計で光55が測定されなければ上述のインキ通路36dが形成されていると判断できる。
上記実施例の変形例として、図16に示すように、マスタ36に代えて繊維部材36fと同様の繊維部材39bを3層以上積み重ねた多孔性支持体39aを有するマスタ39を用いてもよい。
上記実施例及び変形例において、多孔性支持体36a,39aは、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面粗さを5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzに設定されている。また、繊維部材36f,39bとしては、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側の表面の繊維径が、1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の範囲内であるものが用いられる。また、上記実施例及び変形例において、繊維部材36f,39bに代えて2種類以上の繊維径の異なる繊維部材を用いてもよい。
さらに、上記実施例及び変形例において、第4の実施例または第5の実施例と同様に、多孔性支持体36a,39aの密度、あるいは繊維部材36f,39bの繊維径を変化させて、熱可塑性樹脂フィルム8bと当接する側に向かうに連れて多孔性支持体36a,39aの空隙を小さくしたマスタ36,39を構成してもよく、多孔性支持体36a,39aに代えて、金属からなる繊維部材や金属をコーティングした繊維部材からなる多孔性支持体、金属の微粉末を焼結した多孔質体等、その表面が少なくとも金属で構成された多孔性支持体を用いてもよい。また、多孔性支持体としては、第1の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体や液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
図17は、本発明の第7の実施例に用いられる版胴43と熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27とをそれぞれ示している。この第7の実施例は第1の実施例と比較すると、版胴1及びマスタ8に代えて版胴43及びマスタ27を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。版胴43は、開口部1aを有する多孔性支持板1bとインキ保持部材26とから主に構成されている。
インキ保持部材26は、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維26aでインキを通過させるためのインキ通路を形成した不織布によって構成されている。
インキ保持部材26は密度が高い方が好ましく、第1の実施例で述べた理由と同様の理由により、例えばインキ保持部材26が合成樹脂繊維あるいは天然繊維で構成されている場合の密度は0.1〜0.6g/cm3、より好ましくは0.2〜0.6g/cm3程度、またインキ保持部材26が金属系の繊維で構成されている場合であって、ステンレス、鉄の場合の密度は0.7〜3.0g/cm3、より好ましくは0.9〜3.0g/cm3程度、チタンの場合の密度は、0.4〜1.7g/cm3、より好ましくは0.5〜1.7g/cm3程度、アルミニウムの場合の密度は、0.2〜1.0g/cm3、より好ましくは0.3〜1.0g/cm3程度である。
本実施例においても、第1の実施例と同様に、インキ保持部材26の好ましい密度範囲Dwは、次の式で示される。
Dw=0.09ρ〜0.38ρ(g/cm3)
ρ:物質の密度(g/cm3)
この実施例では、使用されるマスタ27が多孔性支持体を有していないので、第1の実施例における多孔性支持体8cの代わりにインキ保持部材26によって余分なインキが引き出されることを防止している。しかし、インキ保持部材26の表面には、図18(a)に示す凹みによる凹凸L1や、図18(b)に示すうねりによる凹凸L2、さらには図18(c)に示す合成樹脂繊維26aの繊維径に起因する凹凸L3等の凹凸Lが存在する。
そこで、第1の実施例と同様に、厚さ100μm、密度0.4g/cm3のインキ保持部材26において、合成樹脂繊維26aの繊維径を変化させることによりインキ保持部材26の凹凸Lを調整して印刷を行い、そのときの裏移りを調査した。
実験は、第1の実施例と同様に、デジタル孔版印刷機プリポートVT3820((株)リコー製)を用いて印刷を行い、表面粗さ計SEF−30D((株)小坂研究所製)を用いてインキ保持部材26の凹凸L(表面粗さ)を測定した。表面粗さの測定は、半径7μmのヘッドを使用して送り速度0.1mm/sec、測定長さ0.8mmで測定し、この範囲での十点平均粗さを求め、これを10箇所測定してその平均より凹凸L(表面粗さRz)を算出した。なお、マスタ27の厚さは1.5μmである。実験の結果を表2に示す。
表2より明らかなように、表面粗さを45μmRz以下にすると、表に三角印で示すように裏移りが少なくなり、35μmRz以下にすると、表に丸印で示すように裏移りがほとんど無くなり、25μmRz以下にすると表に星印で示すように裏移りが発生しないという結果が得られた。また、表面粗さを5μmRz未満とすると満足する画像が得られないことも判明した。
さらに、合成樹脂繊維26aの繊維径を20μm以下とすると、表に三角印で示すように裏移りが少なくなり、15μm以下とすると、表に丸印で示すように裏移りがほとんど無くなり、8μm以下とすると、表に星印で示すように裏移りが発生しないという結果が得られた。また、繊維径を1μm未満とすると満足する画像が得られないことも判明した。
以上のことから、インキ保持部材26は、マスタ27を巻装する外表面の表面粗さを5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzに設定される。また、インキ保持部材26は、マスタ27を巻装する外表面の繊維径を1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下に設定される。
この第7の実施例では、インキ保持部材26を不織布によって構成したが、インキ保持部材26をマニラ麻や亜麻等の天然繊維、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維、もしくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維、ステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン繊維等からなる不織布、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート、ポリビニルアセタール系またはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるもの等によって構成してもよい。
また、上述したメッシュスクリーン、不織布、焼結シート、各種の多孔質弾性体等のインキ保持部材において、少なくともマスタを巻装する外表面に金属や樹脂等の微粉末を分散させ、溶着あるいは接着し、これによりインキ保持部材の表面粗さを小さくするようにしてもよい。
図19は、本発明の第8の実施例に用いられる版胴45を、図20は、第8の実施例の変形例に用いられる版胴46をそれぞれ示している。この第8の実施例及び変形例は、第7の実施例と比較すると版胴43に代えて版胴45または版胴46を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴45は、多孔性支持板1bとインキ保持部材28とから主に構成され、インキ保持部材28は、ステンレス、鉄、銅、ニッケル、チタン、アルミニウム等の金属繊維28aの焼結シートから構成されている。版胴46は、多孔性支持板1bとインキ保持部材29とから主に構成され、インキ保持部材29は、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維29aの表面にステンレス、鉄、銅、ニッケル、チタン、アルミニウム等の金属29bをコーティングして構成される焼結シートからなる。各インキ保持部材28,29は、マスタを巻装される外表面の表面粗さを、それぞれ5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzに設定されている。
また、各インキ保持部材28,29は、マスタ27を巻装される外表面の繊維径を、それぞれ1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の同一径に設定されている。なお、インキ保持部材28,29は、金属繊維28aからなる不織布、または表面に金属29bをコーティングした合成樹脂繊維29aからなる不織布をそれぞれ焼結することにより得られる。
このように、金属繊維28aの焼結シートからなるインキ保持部材28または金属29bを合成樹脂繊維29aの表面にコーティングして構成される焼結シートからなるインキ保持部材29を用いることにより、高エネルギー表面である金属部材から構成されるインキ保持部材28,29は、ぬれ性がよくインキとの接着力が高くなり、インキがインキ保持部材28,29の内部から引き出されにくくなって裏移りの発生を防止することができる。
また、インキ保持部材28,29が天然繊維部材や合成樹脂部材から構成されるインキ保持部材に比べて高弾性であるので、プレスローラ等の押圧部材による加圧時においてインキ保持部材28,29が圧縮されてインキを吐出し、圧が解除されたときにはインキ保持部材28,29が復元することにより、インキ保持部材28,29の内部にインキを吸い戻す効果が得られ、余分なインキの印刷用紙への転移が防止されて、裏移りの少ない良好な画像を得ることができる。
さらに、インキ保持部材28,29が天然繊維部材や合成樹脂部材から構成されるインキ保持部材に比べて強度が高いので、長時間使用することによるへたりが少なく、耐久性が良く大量印刷に適した孔版印刷装置を提供することができる。
上記実施例では、金属繊維28aからなる焼結シート、あるいは合成樹脂繊維29aの表面に金属29bをコーティングしたものからなる焼結シートによってインキ保持部材28,29を構成したが、インキ保持部材を構成するものとしてはこの限りではなく、金属繊維からなる不織布、合成樹脂繊維の表面に金属をコーティングしたものからなる不織布、金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、金属の微粉末を焼結した多孔質体等、少なくともその表面が金属で構成されインキが通過する通路を有するものであれば何でもよい。
なお、焼結シートは不織布に比べて引張強度が高く、また、メッシュスクリーンに比べて低コストであるので、インキ保持部材として用いるには特に好適である。
図21は、本発明の第9の実施例に用いられる版胴47を、図22は、第9の実施例の変形例に用いられる版胴48をそれぞれ示している。この第9の実施例及び変形例は、第7の実施例と比較すると版胴43に代えて版胴47または版胴48を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴47は、多孔性支持板1bとインキ保持部材30とから主に構成されており、版胴48は、多孔性支持板1bとインキ保持部材31とから主に構成されている。
インキ保持部材30は、それぞれ繊維径の異なる2種の合成樹脂繊維30a,30bからなり、合成樹脂繊維30b間に合成樹脂繊維30aを2列ずつ配置した不織布により、また、インキ保持部材31は、それぞれ繊維径の異なる2種の合成樹脂繊維31a,31bからなり、合成樹脂繊維31b間に合成樹脂繊維31aを1列ずつ配置した不織布によりそれぞれ構成されている。この実施例及び変形例では、合成樹脂繊維30a,31aの繊維径をそれぞれ4μmに、また、合成樹脂繊維30b,31bの繊維径をそれぞれ8μmに設定しており、用いられる合成樹脂繊維の繊維径及び混抄比は、マスタ27を巻装されるインキ保持部材30,31の外表面の表面粗さを5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzの範囲内に設定し得るものより選択される。
また、用いられる合成樹脂繊維としては、マスタ27を巻装されるインキ保持部材30,31の外表面の繊維径が、1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の範囲内のものより選択される。この実施例及び変形例では、組み合わされる合成樹脂繊維を2種類としたが、3種類以上であってもよい。
上述のインキ保持部材30またはインキ保持部材31を用いることにより太い繊維の間を細い繊維で埋めることができ、版胴47,48の表面の凹凸L(表面粗さRz)を小さくすることができる。
上記実施例及び変形例では、合成樹脂繊維30a,30bからなる不織布によってインキ保持部材30を、また、合成樹脂繊維31a,31bからなる不織布によってインキ保持部材31を構成したが、各合成樹脂繊維30a,30b,31a,31bからなる不織布に代えて、第8の実施例で示した金属繊維からなる焼結シート、合成樹脂繊維の表面に金属をコーティングしたものからなる焼結シート、金属繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、表面に金属をコーティングした合成樹脂繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、あるいは、これらの焼結シート、不織布、メッシュスクリーンの金属繊維、金属表面繊維間に金属や樹脂等の微粉末を分散させ、溶着または接着させてなるもの等を用いてもよい。
さらに、上記実施例の他の変形例として、図32に示すように、太い合成樹脂繊維57aと細い合成樹脂繊維57bとを千鳥状に配置した不織布からなるインキ保持部材57と、多孔性支持板1bとから主に構成される版胴58を用いてもよい。
図23、図24は、本発明の第10の実施例に用いられる版胴49と、本発明の第11の実施例に用いられる版胴50とをそれぞれ示している。この第10及び第11の実施例は、第7の実施例と比較すると版胴43に代えて版胴49または版胴50を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴49は、多孔性支持板1bとインキ保持部材34とから主に構成されており、インキ保持部材34は、同一の合成樹脂繊維34aを複数層重ね合わせた不織布で構成されている。
インキ保持部材34は、複数層形成された合成樹脂繊維34aの層が、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27側から多孔性支持板1b側に向かうに従い合成樹脂繊維34aの密度が低くなるように形成されている。
版胴50は、多孔性支持板1bとインキ保持部材35とから主に構成されており、インキ保持部材35はそれぞれ繊維径の異なる合成樹脂繊維35a,35b,35cを層状に重ね合わせた不織布で構成されている。
インキ保持部材35は、マスタ27側が最も繊維径の小さい合成樹脂繊維35aの層から構成され、内側に向かうに従い合成樹脂繊維35bの層、合成樹脂繊維35cの層と徐々に繊維径が大きい合成樹脂繊維の層となるように構成されている。すなわちインキ保持部材34,35は、マスタ27を巻装される外表面に向かうに連れて、空隙が小さくなるように構成されている。
上述の第10の実施例及び第11の実施例に用いられるインキ保持部材34,35は、マスタ27を巻装される側の各外表面の表面粗さが5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzの範囲内のものが用いられる。
また、用いられる各合成樹脂繊維34a,35aとしては、少なくともマスタ27を巻装されるインキ保持部材34,35の外表面の繊維径が、1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の範囲内のものが用いられる。
上記各実施例では、各インキ保持部材34,35を構成する各合成樹脂繊維34a,35a,35b,35cの層を3層としたが、2層以上であれば何層でもよい。また、各インキ保持部材34,35をそれぞれ構成する各合成樹脂繊維34a,35a,35b,35cの各層は、一体構造または積層構造(個々を重ね合わせた構造)でもよい。このように、それぞれ異なる大きさの空隙を有するインキ保持部材を複数用意し、これらを版胴の外周面に向かうに連れて空隙が小さくなるように積層配置して、これをインキ保持部材とすることができる。
上述のインキ保持部材34またはインキ保持部材35を用いることにより、インキの流路に沿って、最初は空隙が大きくインキの供給・拡散が良好であり最終では空隙が小さく凹凸Lの少ないインキ保持部材34,35とすることができる。
上記各実施例では、合成樹脂繊維34aからなる不織布によってインキ保持部材34を、また、合成樹脂繊維35a,35b,35cからなる不織布によってインキ保持部材35を構成したが、各合成樹脂繊維34a,35a,35b,35cからなる不織布に代えて、第8の実施例で示した金属繊維からなる焼結シート、合成樹脂繊維の表面に金属をコーティングしたものからなる焼結シート、金属繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、表面に金属をコーティングした合成樹脂繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、これらの焼結シート、不織布、メッシュスクリーンの金属繊維、金属表面繊維間に金属や樹脂等の微粉末を分散させ、溶着または接着させてなるもの、金属の微粉末を焼結した多孔質体等、その表面が少なくとも金属で構成された多孔性支持体を用いてもよい。また、多孔性支持体としては、第1の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体や液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
図25は、本発明の第12の実施例に用いられる版胴53を示している。この第12の実施例は、第7の実施例と比較すると版胴43に代えて版胴53を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴53は、多孔性支持板1bとインキ保持部材38とから主に構成されており、インキ保持部材38は繊維部材38cより主に構成されている。インキ保持部材38には、インキ流入側の孔38a及びインキ流出側の孔38bと、インキ流入側の孔38aから流入したインキ19が、版胴53の外周面に対する垂線S、すなわちインキ流出側の孔38bの開口を有する面に対する垂線Sから少なくとも1回ずれた後に、インキ流出側の孔38bから流出するインキ通路38dが形成されている。
インキ通路38dは、インキ流入側の孔38aから流入したインキの実質的に全量が、垂線S上に存在する繊維部材38cにより流下を妨げられ、垂線Sに沿って流下しないように構成されている。換言すると、インキ通路38dは、インキ流入側の孔38aから流入したインキの実質的に全量が、繊維部材38cによってその流下を妨げられることにより、一旦インキ流入側の孔38aの垂直下方より外方へ流出し、その後インキ流出側の孔38bへ向かって流下するように構成されている。
印刷用紙18がマスタ27の表面から引き剥がされるときに、孔38bの天井部38eとインキ19との間にはインキ19の粘着力が働き、インキ保持部材38から引き出されるインキ19の量が低減される。
ここで、上述したインキ通路38dがインキ保持部材38に形成されたかどうかを判断する方法について述べる。
先ず、図26に示すように、インキ保持部材38の裏面にインキ保持部材38とは異なる色の用紙37を貼り付ける。次に、インキ保持部材38側から光を照射しながら顕微鏡によって50倍の倍率で観察し、繊維部材38c間から用紙37が見えなければインキ通路38dが形成されていると判断できる。
また、第6の実施例における多孔性支持体36aと同様に、インキ保持部材38の一方の面からインキ保持部材38に対して垂直な平行光線を照射し、インキ保持部材38の他方の面に到達する光を光量計で測定しても判断することができる。
上記実施例の変形例として、図27に示すように、インキ保持部材38に代えて繊維部材38cと同様の繊維部材42aを3層以上有するインキ保持部材42を用いてもよい。
上記実施例及び変形例において、インキ保持部材38,42は、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27を巻装される側の外表面の表面粗さを5〜45μmRz、好ましくは5〜35μmRz、より好ましくは5〜25μmRzに設定されている。また、繊維部材38c,42aとしては、マスタ27を巻装されるインキ保持部材38,42の外表面の繊維径が1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の範囲内であるものが用いられる。また、上記実施例及び変形例において、繊維部材38c,42aに代えて2種類以上の繊維径の異なる繊維部材を用いてもよい。
さらに、上記実施例及び変形例において、第10の実施例または第11の実施例と同様に、インキ保持部材38,42の密度、あるいは繊維部材38c,42aの繊維径を変化させ、マスタ27を巻装される外表面に向かうに連れてインキ保持部材38,42の空隙を小さくしてもよく、また、金属からなる繊維部材や金属をコーティングした繊維部材からなる不織布、焼結シート及びメッシュスクリーン、あるいは金属の微粉末を焼結した多孔質体等、その表面が少なくとも金属で形成されたインキ保持部材を用いてもよい。また、インキ保持部材としては、第1の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体や、液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
図28は、本発明の第13の実施例に用いられる版胴44とマスタ41とをそれぞれ示している。この第13の実施例は、第7の実施例と比較すると、マスタ27に代えて多孔性支持体41aと熱可塑性樹脂フィルム41bとからなるマスタ41を用いた点と、版胴43に代えて版胴44を用いた点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴44は、多孔性支持板1bとインキ保持部材40とから主に構成されており、インキ保持部材40は、インキ保持部材26と同様に、不織布、メッシュスクリーン、焼結シート、多孔質弾性体等によって構成されている。
この実施例に用いられるマスタ41は、テトロン(商標名)、ナイロン、レーヨン、ビニロン、ポリエステル等の合成樹脂繊維41cからなる不織布で形成した多孔性支持体41aと、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム41bとを接着等によって貼り合わせた構成となっている。なお、多孔性支持体41aは、楮、三椏、マニラ麻、亜麻等の天然繊維からなる多孔性薄葉紙、天然繊維と合成樹脂繊維とを混抄してなる不織布、テトロン(商標名)やナイロン等の合成樹脂繊維からなるメッシュスクリーン、あるいは合成樹脂繊維や金属繊維からなる焼結シート等から構成してもよい。
裏移りを防止することは、第7の実施例よりインキ保持部材の表面粗さに関係することがわかる。これから、インキ保持部材40と熱可塑性樹脂フィルム41bとの間に多孔性支持体41aが介在する場合であって、後述するように多孔性支持体41aにインキの流動方向を変化させずにストレートに流出させる部分が多く存在し、さらにそのストレートに流出させる部分の開孔径41dの大きさが熱可塑性樹脂フィルム41bに形成される穿孔部8d(図4参照)よりも大きい場合には、インキ保持部材40の表面粗さは熱可塑性樹脂フィルム41bの内面からインキ保持部材40の外表面凹部までの距離L’と考えることができる。従って裏移りを防止するには、距離L’を5μm以上45μm以下とする必要がある。
この実施例では、熱可塑性樹脂フィルム41bとインキ保持部材40との間に多孔性支持体41aが介在する。従って裏移りの発生を防止するには、多孔性支持体41aの厚さとインキ保持部材40の表面粗さとの和が、5μm以上45μm以下となるように構成する必要がある。例えば、多孔性支持体41aの厚さが20μmであったら、インキ保持部材40の表面粗さは25μmRz以下となる。なお、多孔性支持体41aの厚さとインキ保持部材40の表面粗さとの和は、好ましくは5μm以上35μm以下、より好ましくは5μm以上25μm以下の範囲内である。
本実施例における多孔性支持体41aと第1の実施例における多孔性支持体8cとを比較すると、多孔性支持体41aには、インキの流動方向を変化させずにストレートに流出させる部分が多く存在し、さらに、ストレートに流出させる部分の開孔径41dの大きさが熱可塑性樹脂フィルム41bに形成される穿孔部8dよりも大きいため、インキが多孔性支持体41aの内部を通過し易くなり、インキはインキ保持部材40の表面で切れるのに対し、多孔性支持体8cはインキの流動方向を変化させる流路が多いため、インキが多孔性支持体8cの表面で切れる。従って第1の実施例では裏移りの発生は多孔性支持体8cの表面粗さに関係するが、本実施例では裏移りの発生は多孔性支持体41aの厚さとインキ保持部材40の表面粗さとの和に関係するのである。
上記実施例において、インキ保持部材40に代えて、2種類以上の繊維径の異なる繊維部材からなる不織布によって構成されたインキ保持部材を用いてもよい。また、インキ保持部材40の密度、あるいはインキ保持部材40を構成する繊維部材の繊維径を変化させ、マスタ41を巻装される外周面に向かうに連れてインキ保持部材40の空隙を小さくしてもよく、インキ保持部材40に代えて、金属からなる繊維部材や金属をコーティングした繊維部材からなる不織布、焼結シート及びメッシュスクリーン、あるいは金属の微粉末を焼結した多孔質体等、その表面が少なくとも金属で形成されたインキ保持部材を用いてもよい。さらにインキ保持部材40に代えて、第12の実施例及びその変形例に示したインキ保持部材38,42と同様のインキ通路を有するインキ保持部材を用いてもよい。インキ保持部材としては、第1の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体や液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
図29、図30は、本発明の第14の実施例に用いられる版胴51と、本発明の第15の実施例に用いられる版胴52とをそれぞれ示している。この第14及び第15の実施例は、第7の実施例と比較すると版胴43に代えて版胴51または版胴52を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴51は、多孔性支持板1bとインキ保持部材32とから主に構成されており、インキ保持部材32は、同一の合成樹脂繊維32aを複数層重ね合わせた不織布からなるインキ保持部材32bを2層重ね合わせることにより構成されている。
インキ保持部材32bは、複数層形成された合成樹脂繊維32aの層が、マスタ27側から多孔性支持板1b側に向かうに従い合成樹脂繊維32aの密度が低くなるように形成されている。
版胴52は、多孔性支持板1bとインキ保持部材33とから主に構成されており、インキ保持部材33は、それぞれ繊維径の異なる合成樹脂繊維33a,33b,33cを層状に重ね合わせて不織布であるインキ保持部材33dを構成し、このインキ保持部材33dを2層重ね合わせることにより構成されている。
インキ保持部材33dは、マスタ27側が最も繊維径の小さい合成樹脂繊維33aの層から構成され、内側に向かうに従い合成樹脂繊維33bの層、合成樹脂繊維33cの層と徐々に繊維径が大きい合成樹脂繊維の層となるように構成されている。すなわちインキ保持部材32b,33dは、マスタ27を巻装される外表面に向かうに連れて空隙が小さくなるように構成されている。
上述の第14、第15の実施例に用いられるインキ保持部材32b,33dを構成する各合成樹脂繊維32a,33aとしては、少なくともマスタ27を巻装されるインキ保持部材32b,33dの外表面の繊維径が、1μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下の範囲内であるものが用いられる。
上記実施例では、各インキ保持部材32b,33dを構成する各合成樹脂繊維32a,33a,33b,33cの層を3層としたが、2層以上であれば何層でもよい。上記各実施例では、各インキ保持部材32b,33dをそれぞれ2層ずつ重ね合わせてインキ保持部材32,33を構成したが、各インキ保持部材32b,33dを2層以上であれば何層重ね合わせてインキ保持部材32,33を構成してもよい。
また、インキ保持部材32,33において、第12の実施例と同様に、インキ流入側の孔から流入したインキが、版胴51,52の外周面に対する垂線から少なくとも1回ずれた後に、インキ流出側の孔から流出するインキ通路を形成させてもよい。
上述のインキ保持部材32またはインキ保持部材33を用いることにより、インキの流路に沿って、最初は空隙が大きくインキの供給・拡散が良好な層であり最終では空隙が小さく凹凸Lの少ないインキ保持部材32,33とすることができる。
上記各実施例では、合成樹脂繊維32aからなる不織布によってインキ保持部材32を、合成樹脂繊維33a,33b,33cからなる不織布によってインキ保持部材33をそれぞれ構成したが、各合成樹脂繊維32a,33a,33b,33cからなる不織布に代えて、第8の実施例で示した金属繊維からなる焼結シート、合成樹脂繊維の表面に金属をコーティングしたものからなる焼結シート、金属繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、表面に金属をコーティングした合成樹脂繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、これらの焼結シート、不織布、メッシュスクリーンの金属繊維、金属表面繊維間に金属や樹脂等の微粉末を分散させ溶着または接着させてなるもの、金属の微粉末を焼結した多孔質体等、その表面が少なくとも金属で構成された多孔性支持体を用いてもよい。また、多孔性支持体としては、第1の実施例中で述べた連続気泡を有する多孔質弾性体や、液状焼結による多孔質弾性体等を用いてもよい。
第7ないし第15の実施例で用いた各版胴は、それぞれ多孔性支持板1bと各インキ保持部材とから構成されているが、例えば特開平1−204781号公報、あるいは特開昭59−218889号公報に開示されているように、多孔性支持板1bを省略して円筒状に形成されたインキ保持部材のみを具備してなるものであってもよい。この場合、円筒状に形成され孔版印刷装置の内部に収められているものを版胴と呼び、シート状のものをインキ保持部材という。
さらに、第7ないし第15の実施例において、各版胴の多孔性支持体1bとインキ保持部材との間にメッシュスクリーンや不織布等のインキ保持層を介在させてもよい。
なお、上記各実施例において用いられる熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタとは、マスタが熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものの他、熱可塑性樹脂フィルムに帯電防止剤等の微量成分を含有させてなるもの、さらには熱可塑性樹脂フィルムの表面及び裏面のうちの少なくとも一方に、オーバーコート層等の薄膜層を1層または複数層形成してなるものを含む。