JP3795585B2 - 孔版印刷装置の版胴及びインキ保持部材及びインキ保持部材の製造方法 - Google Patents

孔版印刷装置の版胴及びインキ保持部材及びインキ保持部材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、孔版印刷装置の版胴及びインキ保持部材及びインキ保持部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来使用されている孔版印刷用のマスタは、薄い熱可塑性樹脂フィルム(厚み1〜2μm程度)に和紙繊維や合成繊維、あるいは和紙繊維と合成繊維とを混抄したものからなる多孔性支持体(厚み40〜50μm程度)を貼り合わせたラミネート構造となっている。また、近年熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタも提唱されている。このマスタの熱可塑性樹脂フィルム面を加熱穿孔製版し、多孔性の支持円筒体に樹脂繊維あるいは金属繊維から構成されたメッシュスクリーンからなるインキ保持層を有する回転自在な版胴に、製版されたマスタを巻装して、版胴内部に設けられたインキ供給手段よりインキを供給し、プレスローラー等の押圧手段で印刷用紙を連続的に押圧して、版胴開口部及びマスタ穿孔部よりインキを滲出させて印刷を行う感熱デジタル孔版印刷装置がよく知られている。
【0003】
また、上記インキ保持層として金属繊維の焼結シートを用いることが提案されている。なお焼結シートの製造方法としては、特開平7−138606号公報、特開平7−138607号公報等に開示されている。この技術は、前駆体シート(金属繊維高配合シート)の作成にあり、湿式抄紙法を採用し、この前駆体シートの焼結処理にあたっては、真空、水素または不活性ガス雰囲気の下で、金属繊維の融点を越えない温度にて繊維間を焼結する製造方法である。焼結処理は、前駆体シートの上下に多孔質の可撓性セラミックシートからなるセパレータを配置し、3層構成として行う。この後セパレータより焼結シートを剥離し、更にその後焼結シートをカレンダー処理して、焼結シートの厚さ、密度、平滑性の調整を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に前述の孔版印刷装置においては、印刷装置を一定時間放置した後や印刷を停止した後に再度印刷を再開した場合等に、インキが蒸発することに起因して発生する印刷不良の不具合を防止するため、蒸発しにくい油性インキや油中水型エマルジョンインキが使用されている。
【0005】
しかし、このインキは乾燥しにくいため、印刷時において、印刷用紙に転移したインキが印刷用紙内へ浸透して指等で擦っても汚れが発生しない、所謂、浸透乾燥した状態となるまでにはある程度の時間を必要とする。
【0006】
孔版印刷装置では、印刷済みの印刷用紙は連続的に排紙トレイ上に排出積載されるが、このときに前の印刷用紙上に次の印刷用紙がすぐに積載されると、インキの乾燥時間が短く前の印刷用紙の画像インキが次の印刷用紙の裏面に付着して汚してしまう、所謂、裏写りという不具合を発生してしまう。この裏写りは、インキ転移量の多い画像、とりわけ印刷用紙表面に転移したときのインキ層の厚さの厚い(インキ転移高さの高い)画像の印刷時において発生し易い。
【0007】
さらに、従来の孔版印刷装置に用いられているマスタや版胴ではインキの切れが悪く、印刷動作中において、版胴の表面から印刷用紙が剥離されるときに、マスタ表面のインキと印刷用紙との接着力により、支持円筒体を構成する多孔性支持板、インキ保持層、マスタの多孔性支持体等のそれぞれの空隙内に充填されているインキがマスタの穿孔部よりずるずると引き出され、必要以上のインキを印刷用紙に転移させてしまい、この必要以上転移するインキ量を減少させて裏写りを防止するという効果はほとんど期待できなかった。
【0008】
上記焼結シートの製造技術では前駆体シートの両面にセパレータを配置して焼結処理を行うので、焼結シートの表面にセパレータの網目模様が発生し、この網目模様により、インキ保持層内のインキ通過性にムラが生じて印刷用紙へのインキ転移量にも網目状のムラが生じ、画像濃度や埋まりなどにムラが生じて良好な画像が得られないという不具合がある。更に、上記焼結シートには、引張強度が不足して印刷中にインキ保持層に伸びや切れが発生すると言う不具合もある。
【0009】
本発明は、裏写りの発生を効果的に防止することができ、画像濃度、埋まりにムラのない良好な画像が得られ、さらに耐久性のある孔版印刷装置の版胴、インキ保持部材及びインキ保持部材の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、外周面にインキ保持部材を有し、上記インキ保持部材上にマスタが巻装される孔版印刷装置の版胴であって、上記インキ保持部材が金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、上記インキ保持部材が繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、外周面にインキ保持部材を有し、上記インキ保持部材上にマスタが巻装される孔版印刷装置の版胴であって、上記インキ保持部材が金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、上記インキ保持部材は、焼結処理時に繊維密度の範囲が11〜35本/25mmであるセパレータを用いて製造されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の孔版印刷装置の版胴において、上記インキ保持部材は外表面に向かうに連れて上記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1、2または請求項3記載の孔版印刷装置の版胴において、上記インキ保持部材は湿式抄紙法により抄紙した金属繊維高配合シートからなり、上記金属繊維高配合シートは還元あるいは非酸化雰囲気中で、金属繊維の融点以下の温度で焼結処理されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1、2、3または請求項4記載の孔版印刷装置の版胴において、上記インキ保持部材は、カレンダー処理された後に焼結処理されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、版胴の外周面を構成するインキ保持部材であって、金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、版胴の外周面を構成するインキ保持部材であって、金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、焼結処理時に、繊維密度の範囲が11〜35本/25mmであるセパレータを用いて製造されたことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項6または請求項7記載のインキ保持部材において、外表面に向かうに連れて上記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項6、7または請求項8記載のインキ保持部材において、湿式抄紙法により抄紙した金属繊維高配合シートからなり、上記金属繊維高配合シートは還元あるいは非酸化雰囲気中で、金属繊維の融点以下の温度で焼結処理されていることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、請求項6、7、8または請求項9記載のインキ保持部材において、カレンダー処理された後に焼結処理されていることを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の発明は、金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、版胴の外周面を構成するインキ保持部材の製造方法であって、湿式抄紙法により抄紙した金属繊維高配合シートを、還元あるいは非酸化雰囲気中で、金属繊維の融点以下の温度で焼結処理し、上記焼結処理時に繊維密度の範囲が11〜35本/25mmであるセパレータを用いて製造されたことを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の発明は、請求項11記載のインキ保持部材の製造方法において、カレンダー処理した後に上記焼結処理したことを特徴とする。
【0025】
【実施例】
図1は、本発明の第1の実施例に用いられる孔版印刷装置の要部を示している。同図において、回転自在に支持され、図示しない版胴駆動手段で回転駆動される版胴1は、インキパイプ2、インキローラー3、ドクターローラー4をその内部に有している。
【0026】
版胴1は、図2に示すように、開口部1aを有する多孔性支持板1bと、多孔性支持板1bの外表面に巻装されたインキ保持部材15とから構成されている。
【0027】
この第1の実施例に用いられるインキ保持部材15は、ステンレス、鉄、銅、ニッケル、チタン、アルミニウム等の金属繊維15aからなる不織布の焼結シートからなり、インキを通過させるためのインキ通路を有し、インキの拡散、保持、押し出し等の働きをする。
【0028】
版胴1の支軸を兼ねたインキパイプ2は図示しない筐体側板に固着されており、その表面には、版胴1の内部にインキを供給するための複数の小さな孔が穿設されている。インキパイプ2は、版胴1の外部に配設された図示しないインキパック内から図示しないポンプによって汲上げられたインキを、版胴1の内部に供給する。
【0029】
インキパイプ2の下方には、インキローラー3とドクターローラー4とが配設されている。版胴1内の図示しない側板に回転自在に支持されたインキローラー3は、その外周面が版胴1の内周面と近接するように設置されており、インキパイプ2より供給されたインキを版胴1に供給する。インキローラー3は、図示しないギヤあるいはベルト等の駆動力伝達手段によって版胴駆動手段からの回転力を伝達され、版胴1と同期して図の時計回り方向に回転駆動される。
【0030】
インキローラー3の近傍には、回転自在なドクターローラー4が配設されている。ドクターローラー4は、その外周面とインキローラー3の外周面との間に僅かな間隙が生じるように配設されており、インキローラー3の外周面との近接部において楔状のインキ溜まり5を形成している。
【0031】
インキパイプ2よりインキ溜まり5へと供給されたインキは、インキローラー3とドクターローラー4との間隙を通過することにより均一な層状となりつつインキローラー3の表面に供給される。
【0032】
版胴1の非開口部表面には、軸方向に延在するステージ部6が設けられている。磁性体で形成されたステージ部6上には、ステージ部6に対して接離自在に枢着されたマグネットを有するクランパー7が配設されており、クランパー7は図示しない開閉手段によって回動される。
【0033】
版胴1の左上方には、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27をロール状に巻成してなるマスタロール9と、サーマルヘッド10及びプラテンローラー11と、マスタ搬送ローラー対12と、切断手段13と、マスタガイド板14とが配設されている。マスタロール9は、その芯部9aを図示しないホルダー手段に回転可能に支持されている。
【0034】
サーマルヘッド10とプラテンローラー11とは、図示しない孔版印刷装置の側板に取り付けられている。多数の発熱素子を有するサーマルヘッド10は、図示しない付勢手段によってプラテンローラー11に付勢されている。プラテンローラー11は回転自在に設けられており、図示しないステッピングモーターによって、図において時計回り方向に回転駆動される。熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27はサーマルヘッド10に押圧され、サーマルヘッド10によって熱溶融穿孔製版されつつプラテンローラー11の回転によってマスタロール9より繰り出される。
【0035】
サーマルヘッド10とプラテンローラー11とが配設された位置よりもマスタ搬送方向下流側には、マスタ搬送ローラー対12が配設されている。図示しない孔版印刷装置の側板に回転自在に支持されたマスタ搬送ローラー対12は、図示しない駆動手段によってプラテンローラー11の周速度よりも僅かに速い周速度で回転駆動される。また、マスタ搬送ローラー対12には図示しないトルクリミッターが取り付けられており、プラテンローラー11とマスタ搬送ローラー対12との間で搬送されるマスタ27に対して、予め設定された張力が一定に作用するように構成されている。
【0036】
マスタ搬送ローラー対12の配設位置よりもマスタ搬送方向下流側には、可動刃13aと固定刃13bとからなる切断手段13及びマスタガイド板14が配設されている。切断手段13は、可動刃13aが固定刃13bに対して回転移動または上下動してマスタ27を切断する周知の構成である。マスタガイド板14は図示しない孔版印刷装置の側板に固着されており、搬送されるマスタ27をガイドする。
【0037】
版胴1の下方には、押圧手段としてのプレスローラー16が配設されている。回転自在に支持されたプレスローラー16は、図示しない揺動手段によって、その外周面が版胴1の外周面より離間する位置と版胴1の外周面と当接する位置とに選択的に揺動される。
【0038】
プレスローラー16の右方には、レジストローラー対17が配設されている。レジストローラー対17は、図示しない給紙手段より給送される印刷用紙18の先端を啣え込み、プレスローラー16が版胴1と当接するタイミングと同期して、印刷用紙18を版胴1とプレスローラー16との間に向けて給送する。なお、プレスローラー16の代わりに、版胴1と略同径の圧胴を設けてもよい。
【0039】
上記構成に基づき、以下に動作を説明する。
図示しない原稿読取部に原稿がセットされ、図示しない製版スタートキーが押されると、版胴1が回転し、図示しない排版装置によって版胴1の外周面に巻装されている使用済みマスタが剥離・廃棄され、版胴1はクランパー7が略真上に位置する給版待機位置で停止する。版胴1の回転が停止すると、図示しない開閉手段が作動してクランパー7が開放され、版胴1は図1に示す給版待機状態となる。
【0040】
排版動作が完了すると、これに続いて製版動作が行われる。読み取られた原稿画像は、原稿読取部のCCD等で電気信号に変換され、A/D変換器を経由して製版制御装置に画像データとして送られる。製版制御装置は、送られた画像データに基づいてサーマルヘッド10の発熱素子に対してパルス状の通電を行い、サーマルヘッド10はマスタ27に対して熱溶融穿孔製版を行う。サーマルヘッド10の作動に先立って、プラテンローラー11が図示しないステッピングモーターによって回転駆動され、マスタロール9よりマスタ27が引き出される。
【0041】
製版画像を形成されたマスタ27は、マスタガイド板14にガイドされつつマスタ搬送ローラー対12によってクランパー7へと搬送される。プラテンローラー11を駆動するステッピングモーターのステップ数より、マスタ27の先端がクランパー7とステージ部6との間の所定位置まで達したと判断されると、図示しない開閉手段が作動してクランパー7を反時計回り方向に回動させ、ステージ部6とクランパー7とでマスタ27の先端を挟持した後、版胴1がマスタ搬送速度と略同じ周速度で時計回り方向に回転を開始し、マスタ27の版胴1への巻装が開始される。
【0042】
そして、プラテンローラー11を駆動するステッピングモーターのステップ数より、1版分の製版が完了したと判断されるとプラテンローラー11とマスタ搬送ローラー対12の回転動作がそれぞれ停止され、切断手段13によってマスタ27が切断される。切断されたマスタ27は、版胴1の回転によって引き出されて巻装動作が完了する。
【0043】
巻装動作に引き続き、版付動作が行われる。
図示しない給紙手段より給送された印刷用紙18はレジストローラー対17に啣え込まれる。レジストローラー対17は、低速で回転している版胴1に巻装されたマスタ27の画像領域がプレスローラー16と対応する位置に達するタイミングで、印刷用紙18を版胴1とプレスローラー16との間に向けて給送する。給送された印刷用紙18は、プレスローラー16によって版胴1に巻装されたマスタ27に押圧される。この押圧動作により、プレスローラー16と印刷用紙18とマスタ27と版胴1の外周面とが圧接し、インキローラー3によって版胴1の内周面に供給されたインキが、開口部1aとインキ保持部材15のオープンエリアより滲出し、インキ保持部材15のオープンエリアに充填された後、マスタ27の穿孔部を通過して印刷用紙18に転移される。インキを転移された印刷用紙18は、図示しない剥離爪によって版胴1の外周面より剥離され、図示しない排紙手段によって機外に排出されて版付動作が完了する。
【0044】
版付動作完了後、図示しない印刷スタートキーが押されると、図示しない給紙手段より印刷用紙18が連続的に給送され、版胴1が高速で回転駆動されて印刷動作が行われる。
【0045】
上述の版付動作または印刷動作中において、版胴1の表面から印刷用紙18が剥離されるときに、図3、図4に示すように、マスタ27の表面のインキと印刷用紙18との接着力によってマスタ27の穿孔部27dよりインキ19が引き出されるが、インキ19が引き出される量はインキ保持部材15の構造と関係がある。
【0046】
インキ保持部材15の空隙が大きく、インキ流路が広くてインキの通過性が良い状態、即ち流体の圧力損失が小さい場合、その圧力損失が小さければ小さいほど図3に示すように、インキ保持部材15内でのインキ19の通過性が良好となるためにインキ19の切れが悪化し、これにより穿孔部27dを介してインキ保持部材15内から引き出されるインキ19の量、すなわちインキ転移高さlが増加する。一方、図4に示すように、インキ保持部材15の空隙を小さくしてインキ保持部材15の内部における流体の圧力損失を大きくすればするほど、インキ保持部材15内でのインキ19の通過性が悪化してインキの切れがよくなり、引き出されるインキ19の量(インキ転移高さl)が低減されるが、圧力損失をあまり大きくし過ぎると引き出されるインキ19の量が少なくなりすぎて満足する画像を得ることができない。
【0047】
なお、上述の圧力損失は、インキ保持部材15の繊維の密度と関係があり、繊維の密度が高ければ高いほど圧力損失が大きくなる。従って、坪量が一定のインキ保持部材15を用いた場合には、繊維径が細く厚さが薄いものほど空隙が減少し、圧力損失が大きくなるのである。
【0048】
そこで、インキ保持部材15として、米坪量が100g/m2のステンレス繊維焼結シートを用いて、その繊維径と厚み(カレンダ処理量)とを変えることにより、インキ保持部材15の内部における流体の圧力損失を調整しつつ印刷を行い、そのときの裏写りを調査した。実験では、デジタル孔版印刷機プリポートVT3820((株)リコー製)を用いて、その時の印圧を常用されている9.8N/cm2、印刷速度を60枚/分として印刷を行った。使用するインキはW/O型エマルジョンインキで、オイルの種類を変えて粘度調整を行ったものを使用した。インキの粘度は、コンプレート型粘度計(CV2 HAAKE製)を用いて、気温20℃、シェアレート100 1/Sの条件で測定した。
【0049】
図5に示す圧力損失測定装置を用いてインキ保持部材15の内部における空気の圧力損失を測定した。圧力損失測定装置は、測定用の空気を清浄するプレフィルタがセットされるプレフィルタホルダー60と、試料(テストフィルタ)をセットするテストフィルタホルダー61と、テストフィルタの前後の圧力差を測定する微差圧計62と、空気流量を測定する流量計63と、空気流量を調整するバルブ64と、空気を吸引する吸引ポンプ65と、デジタル表示器66と、圧力損失測定装置の配管内の圧力を測定する圧力計67とから構成されている。テストフィルタホルダー61には、テストフィルタとして直径44mmの円形状のシートがセットされる。
【0050】
吸引ポンプ65によって発生する負圧により、プレフィルタホルダー60の吸入口から空気が装置内に流入してテストフィルタを通過する。このとき、テストフィルタの前後の圧力差を微差圧計62で測定し、この微差圧計62からの出力信号をデジタル表示機66で読み取って圧力損失を求める。
【0051】
微差圧計62として、柴田科学器械工業株式会社製精密微差圧計ISP−6−200D型を用いた。なお、測定時の空気流量は1.25l/cm2・minである。この圧力損失の測定は、後述する第2〜第4の実施例においても同様に行われる。また、マスタ27として厚さ1.5μmのものを用いた。実験の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003795585
【0053】
表1より明らかなように、圧力損失を5.0mmAq以上にすると、表に三角印で示すように裏写りが少なくなり、圧力損失を7.9mmAq以上にすると、表に丸印で示すように裏写りがほとんどなくなるという結果が得られた。また、圧力損失を24.7mmAq以上とすると満足する画像が得られないことも判明した。以上のことから、インキ保持部材15は、その内部における空気の圧力損失を5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqに設定される。
【0054】
本実施例で使用されるインキは、その粘度が高いと流動性が悪く、インキがインキ保持部材15内に供給されにくくなり、特に印刷速度が低い場合やインキ保持部材15の圧力損失が大きい場合では、インキ保持部材15内でインキが流れにくくなるため、インキ保持部材15へのインキの供給量が減少し、インキ転移量も減少して画像濃度が低下する。このため、インキ粘度としては低い方が好ましいが、粘度が低すぎると画像に滲みや裏抜けが多くなる。従って、本実施例に用いられるインキの粘度としては、0.5Pa・s以上5Pa・s以下(コンプレート型粘度計(CV2 HAAKE製)、気温20℃、シェアレート100 1/Sの条件で測定)であることが好ましい。
【0055】
本例によれば、インキ保持部材15を金属繊維からなる、ぬれ性のよい焼結シートで構成したので、インキ保持部材15の表面が高エネルギー表面となり、インキとの接着力が高くなり、インキ保持部材15でのインキの切れがよくなり、インキ保持部材15の内部からインキが引き出されにくくなって、裏写りの発生を防止することができる。さらに、焼結シートは不織布に比べて引張強度が高く、さらにメッシュスクリーンに比べて低コストであるので、インキ保持部材15としては特に好適である。
【0056】
さらに、インキ保持部材15を金属繊維からなる焼結シートで構成したので、天然繊維部材や合成樹脂部材から構成されるインキ保持部材に比べて、高弾性となる。よってインキ保持部材15は、プレスローラー16の加圧時に圧縮されてインキを吐出し、加圧の解除時に、復元してインキ保持部材15内にインキを吸い戻すので、余分なインキの印刷用紙18への転移が防止されて、裏写りの少ない良好な画像を得ることができる。
【0057】
さらに、インキ保持部材15を金属繊維からなる焼結シートで構成したので、各繊維が熱溶融結合され、天然繊維部材や合成樹脂部材から構成されるインキ保持部材に比べて、引張強度が高くなり、伸びや切れ、長時間使用することによるへたりが少なく、耐久性が良く大量印刷に適する。
【0058】
また、インキ保持部材15に湿式抄紙法により抄紙した金属繊維高配合シートから得られる焼結シートを採用すると、この焼結シートの繊維の配向、配置が不規則なので、多孔性支持板1bとマスタ27の規則正しく整列されている開口部1a、穿孔部27bとの干渉で発生するモアレ模様を、焼結シートの繊維の不規則な並びにより効果的に防止することができる。更に、焼結シートは、その繊維の不規則な配置により、インキの拡散が良くなり、均一で良好な埋まりの画像を得るのに役立つ。
【0059】
次に、インキ保持部材15として使用される金属繊維からなる焼結シートの製造方法を以下に示す。
焼結前の前駆体シート(金属繊維高配合シート)の作成にあたっては湿式抄紙法を採用する。具体的な工程を順次説明する。
1.金属繊維の配合率が70重量%以上に調整されたスラリーを金属ワイヤーメッシュ又は、プラスチックワイヤーメッシュ上に抄紙し、これを脱水・プレス・加熱乾燥して金属繊維高配合シートを作成する。湿式抄紙の際、配合するバインダーとしては、例えば(株)クラレ社製のクラレビニロンフィブリボンド(商品名)として知られているような水中溶解温度40〜100℃の易溶解性ポリビニルアルコール繊維が好適に用いられる。
【0060】
2.上記工程にて作成された金属繊維高配合シートをカレンダー処理し、厚さ、密度、平滑性の調整を行う。
3.カレンダー処理された金属繊維高配合シートを真空中、水素雰囲気または不活性ガス雰囲気等の非酸化雰囲気で金属繊維の融点を越えない温度に加熱し、各繊維間を焼結する。
この加熱により金属繊維高配合シート中に含まれるバインダー等は、熱分解され、金属繊維が100重量%の多孔性焼結シートが得られる。なお、焼結処理には多孔質の可撓性セラミックシートが介在シート(セパレータ)として使用され、これら可撓性セラミックシートは金属繊維高配合シートの上下に配置され、焼結後に金属繊維高配合シートから剥離される。
【0061】
多孔質の可撓性セラミックシートとしては、繊維を網目状に編んだメッシュ状シートでアルミナ製のものが用いられる。アルミナシートは、Al23を70〜99重量%及びSiO2を1〜30重量%で構成され、例えば(株)ニチビ社製のアルミナシート(商品名デンカアルセン長繊維クロス)、三井鉱産(株)社製のアルミナシート(商品名アルマックスクロス)等が好適である。
【0062】
4.焼結されて溶融接合した金属繊維焼結シートを上下のセパレータより剥離する。
本発明で用いられる金属繊維としては、繊維径が1〜50μm、好ましくは1〜12μm、繊維長1〜30mm、好ましくは1〜6mmのステンレス、チタン、真鍮、銅、アルミニウム等の繊維が挙げられる。これらの中で、ステンレス繊維は細線にする線引き加工が容易でしかも耐熱性、耐腐食性に優れているので最も好ましい。
【0063】
カレンダー処理量としては厚さ方向で20〜50%潰した方が好ましく、50%よりも多くカレンダー処理すると、繊維の溶融接合箇所が多くなり過ぎ、インキ通過性が悪くなる。
【0064】
ところで図6に示すように、セパレータ50の繊維密度が9本/25mm以下のシートを用いて焼結した製造方法から得られた金属繊維焼結シート(インキ保持部材15)の表面には、セパレータ50の開口部50aに起因して網目模様が発生し、これによりインキ保持部材15内のインキの通過性にムラが生じ、印刷用紙18へのインキ転移量にも網目状のムラが生じ、画像濃度や埋まりなどの良好な画像が得られなくなる。よって、図7に示すように、セパレータ50のメッシュ値(繊維密度)を大きくして、開口部50aの間隔を狭くすると、金属繊維焼結シート(インキ保持部材15)の表面に生じる網目模様が少なくなり、これに起因するインキ転移量のムラが少なくなる。
【0065】
そこで、金属繊維高配合シートを焼結処理する際に、セパレータ50の繊維密度を変化させて、繊維径が2μm、米坪量が100g/m2、密度が1.3g/cm3のステンレス繊維焼結シートを製造し、これをインキ保持部材15として、印刷を行い、そのときの印刷画像に見られるセパレータ50の模様(セパレータ目)を調査した。実験では、デジタル孔版印刷機プリポートVT3820((株)リコー製)を用いて、その時の印圧を常用されている9.8N/cm2、印刷速度を60枚/分として印刷を行った。使用するインキはW/O型エマルジョンインキで、粘度を3Pa・sのものを使用した。実験結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
Figure 0003795585
【0067】
表2より明らかなように、セパレータ50の繊維密度を26本/25mm以上にすると、表に丸印で示すように、画像にセパレータ目が見えなくなり、繊維密度11本/25mm以下にすると、表に三角印で示すように、画像にセパレータ模様がやや見られ、繊維密度を9本/25mm以下にすると、表に×印で示すように、画像にセパレータ模様が見える事が分かった。また、繊維密度を40本/25mm以上にすると、表に×印で示すように、焼結時に、セパレータ50の重みで収縮が妨げられて、ステンレス繊維焼結シートに歪(シワ)が発生した。
【0068】
以上のことから、金属繊維焼結シートの製造時に使用されるセパレータ50の繊維密度は11〜35本/25mm、好ましくは26〜35本/25mmと設定される。
【0069】
本例では、カレンダー処理して繊維の交絡部分を多くした後に、この交絡部を焼結処理して、溶融結合させて金属繊維焼結シートを得るので、繊維との溶融結合部分が、従来の製造方法で製造された焼結シートよりも多くなり、さらに引張り強度を強くする事ができるので、印刷によるインク保持部材の伸びや切れを防止する事ができる。
【0070】
次に実施例と比較例とを挙げてカレンダー処理について詳しく説明する。
実施例1
繊維径2μm、繊維長1mmのステンレス繊維(材料:SUS316L、東京製網社製(商品名サスミック))95重量%と、水中溶解温度70℃であるポリビニルアルコール繊維((株)クラレ社製(商品名VPB105−1))5重量%とからなるスラリーを湿式抄紙法にて脱水・プレス・加熱乾燥して米坪量105g/m2のステンレス繊維高配合シートを得た。
【0071】
次に、ステンレス繊維高配合シートを、厚さ方向に30%圧縮するカレンダー処理を行った。セパレータとして用いるアルミナシート(ニチビ社製(商品名 デンカアルセン長繊維クロス 2626P))をステンレス繊維高配合シートの上下に配置し、水素ガス雰囲気の連続式焼結炉(メッシュベルト付きロウ付け炉)へ投入した。なお、前記アルミナシートは、繊維密度26本/25mm、原糸織度130tex、280g/m2 のものである。この時の条件は、加熱温度1050℃、メッシュベルト速度0.15m/minで焼結処理を行い、ステンレス繊維焼結シートを得た。
【0072】
比較例1
繊維径2μm、繊維長1mmのステンレス繊維(材料:SUS316L、東京製網社製 (商品名サスミック))95重量%と水中溶解温度70℃であるポリビニルアルコール繊維((株)クラレ社製 商品名VPB105−1)5重量%とからなるスラリーを湿式抄紙法にて脱水・プレス・加熱乾燥して米坪量105g/m2のステンレス繊維高配合シートを得た。
【0073】
次に、セパレータとして用いるアルミナシート(ニチビ社製 (商品名 デンカアルセン長繊維クロス 1111P))をステンレス繊維高配合シートの上下に配置し、水素ガス雰囲気の連続式焼結炉(メッシュベルト付きロウ付け炉)へ投入した。なお、前記アルミナシートは、繊維密度11本/25mm、原糸織度600tex、500g/m2 のものである。この時の条件は、加熱温度1050℃、メッシュベルト速度0.15m/minで焼結処理を行い、ステンレス繊維焼結シートを得た。
【0074】
カレンダー処理後に焼結処理を行った実施例1の製造方法にて得られるステンレス繊維焼結シートの引張り強度が2.2kgf/15mmとなり、このステンレス繊維焼結シートを用いて印刷を行っても、インク保持部材の伸びや、切れ及びセパレータ目の見られない良好な画像が得られた。
【0075】
一方、焼結処理前にカレンダー処理を行なわない比較例1の製造方法にて得られるステンレス繊維焼結シートの引張り強度が1.5kgf/15mmとなり、このステンレス繊維焼結シートを用いて印刷を行った所、インク保持部材の伸びや、画像にセパレータ目が見られた。
【0076】
湿式抄紙法で製造した金属繊維焼結シートは、乾式法で製造したシートや紡績により得られるシート(織物)に比べ、地合い、孔径の均一性、極細孔径化に優れる。さらに、湿式抄紙法で製造した金属繊維焼結シートをインク保持部材15として用いた場合、ベタ埋まりが均一で、裏写りの少ない印刷物を得ることができる。
【0077】
図8は、本発明の第2の実施例に用いられる版胴21を示している。この第2の実施例は第1の実施例に対して、版胴1に代えて版胴21を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴21は、開口部1aを有する多孔性支持板1bとインキ保持部材30とから主に構成されている。インキ保持部材30は、それぞれ繊維径の異なる2種の金属繊維30a,30bからなり、湿式抄紙法により得られた金属繊維焼結シートにより構成されている。この実施例では、金属繊維30a,30bの繊維径をそれぞれ8μm、4μmに設定しており、用いられる金属繊維の繊維径及び混抄比は、インキ保持部材30の内部における空気の圧力損失を5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqの範囲内に設定し得るものより選択される。
【0078】
また、この実施例では、組み合わされる金属繊維の繊維径を2種類としたが、3種類以上であってもよい。
このようなインキ保持部材30を用いることにより、太い繊維30aの間を細い繊維30bで埋めることができ、細い繊維30bのみからなるインキ保持部材を用いて版胴を構成した場合に比べて引張り強度が高い版胴21を得ることができる。
【0079】
本実施例においても金属繊維焼結シートの製造時に使用されるセパレータ50の繊維密度を11〜35本/25mm、好ましくは26〜35本/25mmに設定することで、金属繊維焼結シートの繊維ムラを防止する事ができる。さらに、第1の実施例と同様に湿式抄紙法で製造した金属繊維焼結シートは、乾式法で製造したシートや紡績にて得られるシート(織物)に比べ、地合い、孔径の均一性、極細孔径化に優れ、異径繊維との混抄が容易になるとともに、米坪量が軽くなる。金属繊維焼結シートをインキ保持部材30として用いた場合、ベタ埋まりが均一で、裏写りの少ない印刷物を得ることができる。また、カレンダー処理後に焼結処理を行って金属繊維焼結シートを製造することで、繊維との溶融結合部分が、従来の製造方法で製造された焼結シートよりも多くなり、引張り強度が強くなるので、印刷によるインキ保持部材の伸びや切れを防止する事ができる。
【0080】
図9、図10は、本発明の第3の実施例に用いられる版胴23と、本発明の第4の実施例に用いられる版胴26とをそれぞれ示している。この第3及び第4の実施例は、第1の実施例と比較すると版胴1に代えて版胴23または版胴26を用いる点においてのみ相違し、他の構成は同一である。
版胴23は、開口部1aを有する多孔性支持板1bとインキ保持部材34とから主に構成されており、インキ保持部材34は、同一の繊維径を有する金属繊維34aを複数層重ね合わせた不織布の金属繊維焼結シートで構成されている。
【0081】
インキ保持部材34は、複数層形成された金属繊維34aの層が、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ27側から多孔性支持板1b側に向かうに従い、金属繊維34aの密度が低くなるように形成されている。
版胴26は、多孔性支持板1bとインキ保持部材35とから主に構成されており、インキ保持部材35は、それぞれ繊維径の異なる金属繊維35a,35b,35cを層状に重ね合わせた不織布の金属繊維焼結シートで構成されている。
【0082】
インキ保持部材35は、マスタ27側が最も径の小さい金属繊維35aの層から構成され、内側に向かうに従い金属繊維35bの層、金属繊維35cの層と徐々に空隙と繊維径が大きい金属繊維の層となるように構成されている。
すなわち、インキ保持部材34,35は、マスタ27を巻装される外表面に向かうに連れて、その内部の各層間における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成されている。
【0083】
上述の第3及び第4の実施例に示したインキ保持部材34,35としては、少なくともマスタ27を巻装される最外層において、その内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqの範囲内のものが用いられる。
【0084】
上記各実施例では、各インキ保持部材34,35を構成する各金属繊維34a,35a,35b,35cの層を3層としたが、2層以上であれば何層でもよい。また、各インキ保持部材34,35をそれぞれ構成する各金属繊維34a,35a,35b,35cの各層は、一体構造または積層構造(個々を重ね合わせた構造)でもよい。このように、内部における流体の圧力損失がそれぞれ異なる大きさのインキ保持部材を複数用意し、これらを版胴の外周面に向かうに連れて、順次圧力損失が大きくなるように積層配置してこれをインキ保持部材とすることができる。
【0085】
上述のインキ保持部材34またはインキ保持部材35を用いることにより、インキの通路に沿って、最初は圧力損失が小さくインキの供給・拡散が良好な層を有し、最終では圧力損失が大きく、インキの切れがよい層を有するインキ保持部材34,35とすることができる。さらに、湿式抄紙法により金属繊維焼結シートを製造すると、傾斜構成が容易にできるとともに、米坪量の軽いシートの製造が可能になる。
【0086】
本実施例においても金属繊維焼結シートの製造時に使用されるセパレータ50の繊維密度を11〜35本/25mm、好ましくは26〜35本/25mmに設定することで、金属繊維焼結シートの繊維ムラを防止することができる。さらに、第1の実施例と同様に湿式抄紙法で製造した金属繊維焼結シートは、乾式法で製造したシートや紡績にて得られるシート(織物)に比べ、地合い、孔径の均一性、極細孔径化に優れ、異径繊維との混抄が容易になるとともに、米坪量が軽くなる。金属繊維焼結シートをインキ保持部材34、35として用いた場合、ベタ埋まりが均一で、裏写りの少ない印刷物を得ることができる。また、カレンダー処理後に焼結処理を行って金属繊維焼結シートを製造することで、繊維との溶融結合部分が、従来の製造方法で製造された焼結シートよりも多くなり、引張り強度が強くなるので、印刷によるインキ保持部材の伸びや切れを防止する事ができる。
【0087】
第1ないし第4の実施例で用いた各版胴は、それぞれ多孔性支持板1bと各インキ保持部材とから構成されているが、例えば特開平1−204781号公報、あるいは特開昭59−218889号公報に開示されているように、多孔性支持板1bを省略して円筒状に形成されたインキ保持部材のみを具備してなるものであってもよい。この場合、円筒状に形成され、孔版印刷装置の内部に収められているものを版胴と呼び、シート状のものをインキ保持部材という。
【0088】
さらに、第1ないし第4の実施例において、各版胴の多孔性支持板1bとインキ保持部材との間に、メッシュスクリーンや不織布等のインキ保持層を介在させてもよい。
【0089】
なお、上記各実施例において用いられる熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタとは、マスタが熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものの他、熱可塑性樹脂フィルムに帯電防止剤等の微量成分を含有させてなるもの、さらには熱可塑性樹脂フィルムの表面及び裏面のうちの少なくとも一方に、オーバーコート層等の薄膜層を1層または複数層形成してなるものを含む。
【0090】
また、マスタとしては、楮、三椏、マニラ麻、亜麻等の天然繊維からなる多孔性薄葉紙やレーヨン、ビニロン、フッ素樹脂、ポリエステル、テトロン、ナイロン等の合成樹脂繊維からなる不織布やメッシュスクリーン、若しくはステンレス、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属繊維を網目状に交差させて形成したメッシュスクリーン、テトロンやナイロン等の合成樹脂繊維を焼結させて作成した焼結シート、ポリビニルアセタール系若しくはポリビニルアルコール系の連続気泡を有する多孔質弾性体、硬質粒子とゴムの混和した連続気泡を有する多孔質弾性体、ポリエチレン等の合成樹脂や無機物の微粉末を焼結した多孔質弾性体、ポリウレタン等の液状焼結による多孔質弾性体、または多孔質ゴム等の多孔質弾性体からなるもの等によって構成された多孔性支持体と熱可塑性樹脂フィルムとをラミネート構造としたものを用いてもよい。
【0091】
多孔性支持体はその厚さが薄い程、フィルム面と、インキが流出することを抑制する役割を有するインキ保持部材15,30,34,35との間(つまり多孔性支持体内)に存在するインキが少なくなり、マスタ穿孔部上に存在するインキ量が少なく、多孔性支持体内から引き出されるインキ量が少なくなるので、裏写り防止のためには多孔性支持体を用いない方が好ましい。しかし、マスタの耐久性を重視する点からは、多孔性支持体を用いる方が好ましく、そのときの厚さは、上記理由より裏写りのことを考慮すると、10〜30μm程度が好ましい。
【0092】
【発明の効果】
請求項1、6記載の発明によれば、金属繊維からなる焼結シートでその内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAq、好ましくは7.9〜23.2mmAqとなるように構成されたインキ保持部材を用いることにより、インキ保持部材の表面が高エネルギー表面となり、インキとの接着力が高くなり、インキ保持部材でのインキの切れがよくなり、インキ保持部材の内部からインキが引き出されにくなり、インキ量が低減される。これにより、印刷時において熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介してインキ保持部材の内部より引き出されるインキ量が適正な量となり、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。特に、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタを用いて印刷を行う場合に、より効果的に裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【0093】
さらに、インキ保持部材は天然繊維部材や合成樹脂部材から構成されるインキ保持部材に比べて高弾性となり、押圧部材による加圧時に圧縮されてインキを吐出し、加圧の解除時に、復元してインキ保持部材内にインキを吸い戻すので、余分なインキの印刷用紙への転移が防止されて、裏写りの少ない良好な画像を得ることができる。インキ保持部材を金属繊維からなる焼結シートで構成したので、各繊維が熱溶融結合され、天然繊維部材や合成樹脂部材から構成されるインキ保持部材に比べて、引張強度が高くなり、伸びや切れ、長時間使用することによるへたりが少なく、インキによる腐食がなく、耐久性が良く大量印刷に適した、孔版印刷装置の版胴及びインキ保持部材を提供できる。
【0094】
また、インキ保持部材に湿式抄紙法による金属繊維高配合シートから得られる焼結シートを採用すると、焼結シートの繊維の配向、配置が不規則なので、モアレ模様を効果的に防止することができ、さらに、メッシュスクリーンに比べて低コストになる。焼結シートは、その繊維の不規則な配置により、インキの拡散が良くなり、均一で良好な埋まりの画像を得ることができる。
【0095】
請求項1、6記載の発明によれば、繊維径の異なる2種類以上の繊維を組み合わせて構成されたインキ保持部材を用いることにより、太い繊維間を細い繊維で埋めることによってインキ保持部材の内部における流体の圧力損失を大きくすることができ、印刷時において熱可塑性樹脂フィルムの穿孔部を介してインキ保持部材の内部より引き出されるインキ量が適正な量となり、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。特に、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタを用いて印刷を行う場合に、より効果的に裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。また、太い繊維と細い繊維とを混在させることにより、コストアップすることなく版胴及びインキ保持部材の耐久性を向上させることができる。
【0096】
請求項3、記載の発明によれば、外表面に向かうに連れて、その内部における流体の圧力損失が順次大きくなるように構成されたインキ保持部材を用いることにより、インキ通路に沿って最初はインキの供給・拡散を良好に行い、最終では引き出されるインキ量を適正化することができ、インキの浸透乾燥に要する時間が短縮され、裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。特に、熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタを用いて印刷を行う場合に、より効果的に裏写りの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【0097】
請求項4、9、11記載の発明によれば、湿式抄紙法で製造した金属繊維焼結シートからなるインキ保持部材を用いることにより、乾式法で製造したシートや紡績にて得られるシートを用いる場合に比べ、地合い、孔径の均一性、極細孔径化に優れ、異径繊維との混抄や傾斜構成が容易になるとともに、米坪量が軽くなり、ベタ埋まりが均一で、裏写りの少ない印刷物を得ることができる。
【0098】
請求項2、7、11記載の発明によれば、焼結処理時に繊維密度の範囲が11〜35本/25mm、好ましくは26〜35本/25mmであるセパレータを用いて製造したインキ保持部材を用いることにより、インキ保持部材の繊維密度を均一化でき、画像濃度ムラがなく、ベタ埋まりの良好な画像を得ることができる。
【0099】
請求項5、10、12記載の発明によれば、カレンダー処理後に焼結処理を行ったインキ保持部材を用いることにより、繊維との溶融結合部分が、従来の製造方法で製造された焼結シートよりも多くなり、引張り強度が強くなるので、印刷によるインキ保持部材の伸びや切れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を採用した孔版印刷装置要部の概略側面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例における印刷用紙へのインキの転移状態を説明する版胴及びインキ保持部材の部分側断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例における印刷用紙へのインキの転移状態を説明する版胴及びインキ保持部材の部分側断面図である。
【図5】本発明に用いられる圧力損失測定装置を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施例におけるインキ保持部材の製造時に用いられるセパレータによる網目模様を説明するためのインキ保持部材とセパレータとを示す部分側断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例におけるインキ保持部材の製造時に用いられるセパレータによる網目模様を説明するためのインキ保持部材とセパレータとを示す部分側断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図9】本発明の第3の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【図10】本発明の第4の実施例に用いられる版胴及びインキ保持部材を示す部分側断面図である。
【符号の説明】
1,21,23,26 版胴
15,30,34,35 インキ保持部材
15a、30a、30b、34a、35a、35b、35c 金属繊維
27 熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ
50 セパレータ

Claims (12)

  1. 外周面にインキ保持部材を有し、上記インキ保持部材上にマスタが巻装される孔版印刷装置の版胴であって、
    上記インキ保持部材が金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、
    上記インキ保持部材が繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とする孔版印刷装置の版胴。
  2. 外周面にインキ保持部材を有し、上記インキ保持部材上にマスタが巻装される孔版印刷装置の版胴であって、
    上記インキ保持部材が金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、
    上記インキ保持部材は、焼結処理時に繊維密度の範囲が11〜35本/25mmであるセパレータを用いて製造されたことを特徴とする孔版印刷装置の版胴。
  3. 上記インキ保持部材は外表面に向かうに連れて上記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の孔版印刷装置の版胴。
  4. 上記インキ保持部材は湿式抄紙法により抄紙した金属繊維高配合シートからなり、上記金属繊維高配合シートは還元あるいは非酸化雰囲気中で、金属繊維の融点以下の温度で焼結処理されていることを特徴とする請求項1、2または請求項3記載の孔版印刷装置の版胴。
  5. 上記インキ保持部材は、カレンダー処理された後に焼結処理されていることを特徴とする請求項1、2、3または請求項4記載の孔版印刷装置の版胴。
  6. 版胴の外周面を構成するインキ保持部材であって、
    金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、
    繊維径の異なる2種類以上の繊維から構成されていることを特徴とするインキ保持部材。
  7. 版胴の外周面を構成するインキ保持部材であって、
    金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失が5.0〜23.2mmAqであり、
    焼結処理時に、繊維密度の範囲が11〜35本/25mmであるセパレータを用いて製造されたことを特徴とするインキ保持部材。
  8. 外表面に向かうに連れて上記圧力損失が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項6または請求項7記載のインキ保持部材。
  9. 湿式抄紙法により抄紙した金属繊維高配合シートからなり、上記金属繊維高配合シートは還元あるいは非酸化雰囲気中で、金属繊維の融点以下の温度で焼結処理されていることを特徴とする請求項6、7または請求項8記載のインキ保持部材。
  10. カレンダー処理された後に焼結処理されていることを特徴とする請求項6、7、8または請求項9記載のインキ保持部材。
  11. 金属繊維からなる焼結シートで構成され、該焼結シートの内部における空気の圧力損失 が5.0〜23.2mmAqであり、版胴の外周面を構成するインキ保持部材の製造方法であって、
    湿式抄紙法により抄紙した金属繊維高配合シートを、還元あるいは非酸化雰囲気中で、金属繊維の融点以下の温度で焼結処理し、
    上記焼結処理時に繊維密度の範囲が11〜35本/25mmであるセパレータを用いて製造されたことを特徴とするインキ保持部材の製造方法。
  12. カレンダー処理した後に上記焼結処理したことを特徴とする請求項11記載のインキ保持部材の製造方法。
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