JP2021173804A - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な方法で微細に制御された皺を均一に付与する感光体の粗面化方法を提供すること。【解決手段】感光層を形成する工程及び保護層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法であって、該感光層を形成する工程が、該感光層中の第一の溶剤の残留溶剤量が、該感光層の全質量に対して0.05質量%以上2.50質量%以下であり、該感光層中の第二の溶剤の残留溶剤量が、該感光層の全質量に対して0.50質量%以上2.50質量%以下である該感光層を形成する。該保護層を形成する工程が、1.5μm以下の硬化膜を形成する(A)の工程と、該硬化膜をさらに加熱して、表面上に皺形状を有する該保護層を形成する(B)の工程と、を有し、該(A)の工程において、該第一の溶剤の沸点より低い加熱温度で該照射塗布膜を加熱し、該(B)の工程において、該第一の溶剤の沸点より高い加熱温度で該硬化膜を加熱することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は電子写真感光体の製造方法に関する。
プロセスカートリッジ及び電子写真装置に搭載される電子写真感光体として、有機光導電性物質(電荷発生物質)を含有する電子写真感光体が用いられている。近年、より長寿命な電子写真装置が求められており、そのため、画質、耐摩耗性(機械的耐久性)の向上や電位変動を抑制できる電子写真感光体の提供が望まれている。
電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する。)の耐摩耗性を向上させる方法として、感光体の表面にラジカル重合性の樹脂を用い、感光体の表面層を硬化層とすることにより、表面層の機械的強度を高めるという技術が提案されている。
電子写真感光体は、一般的には、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程からなる電子写真画像形成プロセスに用いられる。その中で転写工程後の電子写真感光体上の残存トナーを除去するクリーニング工程は、鮮明な画像を得る上で重要な工程である。このクリーニングの方法としては、ゴム状のクリーニングブレードを電子写真感光体に圧接し、トナーを掻き取る方法が一般的である。
しかしながら、上記のクリーニング方法だと、クリーニングブレードと電子写真感光体との摩擦力が大きいため、クリーニングブレードのビビリやメクレが起こりやすい。さらには、クリーニングブレードのエッジ部のえぐれや欠けによるクリーニング不良も起こりやすい。ここで、クリーニングブレードのビビリとは、クリーニングブレードと電子写真感光体の周面との摩擦抵抗が大きくなることでクリーニングブレードが振動することによって生じる現象である。また、クリーニングブレードのメクレとは、電子写真感光体の移動方向にクリーニングブレードが反転してしまう現象である。
これらクリーニングブレードの問題は、電子写真感光体の表面層の機械的強度が高くなるほど、つまりは、電子写真感光体の周面が摩耗しにくいほど顕著になる。すなわち、この問題は、上記のように電子写真感光体の表面層を硬化層とし、表面層の機械的強度を高めることで生じるのである。また、有機電子写真感光体の表面層は一般的に浸漬塗布法により形成されることが多いが、浸漬塗布法により形成された表面層の表面(すなわち電子写真感光体の周面)は非常に平滑になる。よって、クリーニングブレードと電子写真感光体の周面との接触面積が大きくなり、クリーニングブレードと電子写真感光体の周面との摩擦抵抗が増大し、上記問題が顕著になる。
上述した問題点を克服する方法として、感光体表面を適度に粗面化することにより、感光体表面とクリーニングブレードとの接触面積を減少させ、摩擦力を低減する方法が提案されている。
特許文献1には、フィルム状研磨材で感光体表面を研磨する技術が記載されている。又、特許文献2には、表面層に金属酸化物微粒子を含有する技術が記載されている。
特開平2−150850号公報 特開2014−178425公報
特許文献1では、フィルムの巻き取り装置により、フィルム状研磨材で研磨することで粗面化している。しかし、フィルム状研磨材は消耗品であり高コストである。また、フィルム状研磨材自体のムラによって感光体への形状ムラが発生する場合がある。さらに、機械的に破壊することによる感光層の削れ粉や、フィルム由来の研磨材が問題となる場合があり、そのような問題が起こらないように装置の調整や研磨条件の設定が必要である。このような機械的な加工は、基本的には特殊な設備投資や消耗品による高コスト化、加工ムラや機械的破壊による問題の対策が必要であり煩雑である。特許文献2では金属酸化物微粒子を表面層に含有させることで凹凸形状を付与している。しかし、このような微粒子を含有した塗布液を作成するには、通常、微粒子に機械的な力を加えて塗布液中に分散する工程が必要である。また微粒子の分散のバラつきや凝集などによる粒径のバラつきによる凹凸のムラが発生する場合がある。さらに添加量によっては感光体特性へ悪影響を与える場合があるため、添加の自由度はあまり大きくない。
すなわち、従来技術の粗面化方法では、工数がかかって高コストであり、形状の不均一な部分が発生する場合があったため、より簡便な方法で微細に制御された形状を均一に付与する粗面化方法が求められていた。
したがって、本発明の目的は、より簡便な方法で微細に制御された形状を均一に付与する感光体の粗面化方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかる電子写真感光体の製造方法は、
支持体と感光層と保護層をこの順に有し、該保護層の外表面が、皺を有する電子写真感光体の製造方法であって、
(i)該支持体上に該感光層を形成する工程と、
(ii)該感光層上に該保護層を形成する工程と
を有し、
該(i)の工程が、
第一の溶剤と、該第一の溶剤よりも沸点が高い第二の溶剤と、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有する感光層用塗布液によって得られる感光層用塗布膜を形成した後に、該感光層用塗布膜を加熱することで該感光層中の該第一の溶剤の残留溶剤量が、該感光層の全質量に対して0.05質量%以上2.50質量%以下であり、該感光層中の該第二の溶剤の残留溶剤量が、該感光層中の全質量に対して0.50質量%以上2.50質量%以下である該感光層を形成する工程であり、
該(ii)の工程が、
(A)連鎖重合性官能基を有する化合物を含有する保護層用塗布液によって得られる保護層用塗布膜を形成し、該保護層用塗布膜へ放射線を照射し、加熱して膜厚が、1.5μm以下の硬化膜を形成する工程と、
(B)該硬化膜をさらに加熱して、該保護層を形成する工程と
を有し、
該(A)の工程における加熱温度が、該第一の溶剤の沸点より低い温度であり、
該(B)の工程における加熱温度が、該第一の溶剤の沸点より高い温度であることを特徴とする。
本発明によれば、より簡便な方法で微細に制御された皺を均一に付与する感光体の外表面の粗面化方法を提供することができる。更に、本発明によれば、クリーニングブレードとの摩擦力を低減する感光体の製造方法を提供することができる。
電子写真感光体の表面を上視した場合の皺の模式図である。 電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成図である。 電子写真感光体の表面を研磨する装置の概略構成図である。
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明は、支持体と感光層と保護層をこの順に有し、保護層の外表面が、皺を有する電子写真感光体の製造方法であって、(i)該支持体上に該感光層を形成する工程と、(ii)該感光層上に該保護層を形成する工程とを有する電子写真感光体の製造方法に関する。
本発明の製造方法及び本発明によって得られる保護層の外表面が有する皺の形状(以下、「皺形状」ともいう。)との関係について説明する。
(ii)の工程において硬化膜である保護層を形成する際に、保護層の表面が、皺状に変化してしまう現象は、一般的に塗膜欠陥として認識されている。
しかし、本発明者らは鋭意検討の結果、簡便に皺形状の変化の発生を制御し、皺形状を微細で均―なものにする方法を見いだした。すなわち、電子写真装置で使用した場合に、電子写真感光体の周面とクリーニングブレードとの摩擦抵抗(以下、「トルク」とも呼ぶ。)を低減した皺形状を有する感光体の簡便な製造方法を見いだした。
本発明の製造方法で保護層の外表面(感光体の外表面)に形成される皺形状とは、図1に示すような感光体の表面を上面視した場合に観察できるストライプ状の凹凸形状((黒部が凹、白部が凸)である。そのストライプ形状は一方向ではなくて曲線部分、途切れた部分、分岐した部分などランダム性があり等方性がある形状である。本発明によればこの皺形状が微細でかつ均―に形成される。
皺形状の発生メカニズムとしては、(ii)における、(A)の工程で感光層の上に硬化膜を形成した後に、更に、硬化膜を(B)の工程で加熱した場合、硬化膜と感光層との間に変形量に違いが生じる。その結果、表面方向に圧縮応力がかかり、座屈することで硬化膜の表面に皺形状が発生するものであると考えられる。
この皺形状が微細で均―に形成できる理由について下記のように推測している。
本発明の製造方法によると保護層を形成する(ii)の工程で、(B)の工程で加熱を行うとき、感光層には沸点の異なる第一の溶剤と第二の溶剤がそれぞれ均―に分布して存在している。このとき第一の溶剤の沸点よりも高い温度で加熱することで、第二の溶剤に比べて第一の溶剤が急速に蒸発していくために、その部分が圧縮応力による座屈の起点となりやすく、この起点が表面全体に均等にできる。その後、第二の溶剤が徐々に蒸発していくことで皺形状が微細で均一に形成されると考えている。又、(A)の工程における加熱温度は、第一の溶剤の沸点より低い温度で行うことで、急速な溶剤蒸発が抑制されている。そのため、感光層中の残留溶剤量を適度に維持した状態で、硬化膜の形成が可能となる。その結果、上述の(B)の工程における感光層と硬化膜の適度な変形が確保されて微細で均一な皺形状の形成を可能としている。
本発明の感光層用塗布液は、第一の溶剤と、第一の溶剤よりも沸点の高い第二の溶剤と電荷輸送物質と樹脂とを含有する。
感光層は、この感光層用塗布液を塗布して感光層用塗布膜を形成し、その膜を加熱し、乾燥することで形成される。
この場合、(ii)の工程における保護層の形成において、表面上に微細で均一な皺形状を有する保護層を形成するには、(i)の工程後の感光層中の残留溶剤量を規定する必要がある。感光層中の第一の溶剤の残留溶剤量は、0.05質量%以上2.50質量%以下である必要がある。0.05質量%未満だと座屈の起点が少なくなり均―な皺形状ができにくい。2.50質量%を超えると座屈が大きくなり皺形状が大きくなる場合、又は皺形状の均一性が低下する場合がある。感光層中の第二の溶剤の残留溶剤量は0.50質量%以上2.50質量%以下である必要がある。0.50質量%未満だと微細な皺形状ができにくい。2.50質量%を超えると座屈が大きくなり皺形状が大きくなる場合、又は均一性が低下する場合がある。
又、第一の溶剤の残留溶剤量に対する第二の溶剤の残留溶剤量の比は、1.00以上15.00以下である場合が好ましい。この範囲であると、第一の溶剤と第二の溶剤のバランスが良く、第一の溶剤の蒸発による座屈の起点が表面全体に細かく均一に入り、皺形状がより微細で均一になりやすい。
残留溶剤量の調製方法は、塗布液を調製する際の第一の溶剤と第二の溶剤の配合比や塗布膜形成時の乾燥温度と時間により適宜調整ができる。また、乾燥を行う空間の体積や溶剤蒸気の排気風量によっても溶剤揮発の速度は異なるので実際の設備に合わせた乾燥条件の設定が必要である。
残留溶剤量の測定は、公知の方法が使用でき、例えばガスクロマトグラフィーが使用できる。残留溶剤量は、感光層の全質量に対する第一の溶剤の質量比率、又は第二の溶剤の質量比率である。
溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。具体的には、第一の溶剤として、トルエン、キシレン(o−キシレン、m−キシレン及びp−キシレンの群から選ばれる少なくとも一種を含む)が挙げられる。又、第二の溶剤として安息香酸メチル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタートが、挙げられる。第一の溶剤及び第二の溶剤以外の溶剤としてその他の溶剤も併用することができる。具体的には、その他の溶剤として、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタンが挙げられる。
第一の溶剤の沸点が、90℃以上150℃以下であり、第二の溶剤の沸点が、153℃以上230℃以下の場合が、好ましい。又、第一の溶剤及び第二の溶剤の組み合わせは、その沸点の差が、40℃以上100℃以下の場合が、好ましい。又、その他の溶剤の沸点は、40℃以上70℃以下のものが好ましく用いられる。
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましく、下記の構造のものが好適に用いられる。
Figure 2021173804
(式(1)中、R〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表す。)
式(1)で示される構造の例を式(1−1)〜(1−10)に示す。この中でも、式(1−1)〜(1−6)で示される構造がより好ましい。
Figure 2021173804
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樹脂としては、熱可塑性樹脂が用いられ、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
本発明の保護層用塗布液は、連鎖重合性官能基を有した化合物を含有する。
保護層は、この保護層用塗布液を塗布して、連鎖重合性官能基を有した化合物を重合することで硬化した膜として形成される。
本発明では、保護層用塗布液で塗布膜を形成し、塗布膜へ放射線を照射し、その後第一の溶剤の沸点より低い加熱温度で加熱する(A)の工程により硬化膜を形成している。その後、第一の溶剤の沸点より高い加熱温度で硬化膜を加熱する(B)の工程を行うことで表面上に皺形状を有する保護層を形成する。
連鎖重合性官能基を有した化合物を重合させる手段としては、一般的には熱、光、放射線を用いる手段が挙げられるが、本発明では、放射線及び熱を併用する。熱のみで重合させて硬化した膜を形成しようとすると、一般に高熱で長時間処理する必要があり、保護層用塗布膜の重合と感光層中の残留溶剤の急速な蒸発が同時に進行するため、所望の皺形状が得られにくい。また、光や放射線によって重合させる場合も、短時間で十分に重合を進め硬化した膜を形成するためにはある程度高温にすることが必要である。放射線は光よりエネルギーが高く、重合性官能基を効率的に活性化できるので、光に比べて加熱温度を低く、かつ加熱時間を短くすることができ、感光層中の残留溶剤量を適度に維持した状態で、保護層の形成が可能となる。
放射線としては、特に制限はなく、例えば電子線が挙げられる。
電子線の照射は重合性官能基のラジカル化の失活を防ぐために、低酸素雰囲気下で行うことが好ましい。また、(A)の工程もラジカル化の失活を防ぎ速やかに重合させるために、低酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
(B)の工程は、第一の溶剤の沸点より高い加熱温度で硬化膜を加熱する必要がある。第一の溶剤の沸点より低いと皺形状が発生しにくい。また、(B)の工程は、第二の溶剤の沸点より低い温度で行われる方が、第一の溶剤が速やかに蒸発し、それよりも遅く第二の溶剤が蒸発するので、皺形状が細かく均一に形成されるため好ましい。
使用する溶剤の沸点に拠るが、(A)の工程における加熱温度は、90℃以上130℃以下であり、(B)の工程における加熱温度は、140℃以上230℃以下である。ここで、加熱温度は、感光体製造時の雰囲気温度をいう。
本発明に係る保護層の膜厚は、1.5μm以下であり、本発明に係る硬化膜の膜厚と同等といえる。本発明において規定する膜厚は、(A)の工程で形成される硬化膜の膜厚を指す。硬化膜の膜厚が、1.5μmを超える場合、皺形状が大きく不均―になりやすい。硬化膜の膜厚が、1.0μm以下の場合、皺形状がより微細で均―になるため好ましい。
連鎖重合性官能基を有した化合物は、連鎖重合性官能基と同時に電荷輸送性を発揮する分子構造を有していてもよい。電荷輸送性を発揮する分子構造としてはトリアリールアミン構造が好ましい。連鎖重合性官能基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。連鎖重合性官能基を有する化合物の官能基の数は一つ、又は複数であっても良い。中でも、複数の官能基を有した化合物と一つの官能基を有した化合物を併用して硬化膜を形成すると、複数の官能基同士の重合で生じたひずみが解消されやすいため、特に好ましい。
上記一つの官能基を有した化合物の例を式(2−1)〜(2−6)に示す。
Figure 2021173804
Figure 2021173804
Figure 2021173804
Figure 2021173804
Figure 2021173804
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上記複数の官能基を有した化合物の例を式(3−1)〜(3−7)に示す。
Figure 2021173804
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[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、支持体と、感光層と、保護層とを有する。
本発明の電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
以下、各層について説明する。
<支持体>
本発明において、電子写真感光体は、支持体を有する。本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
<導電層>
本発明において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などを更に含有してもよい。
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
導電層は、上述の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
<下引き層>
本発明において、支持体又は導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素−炭素二重結合基などが挙げられる。
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
また、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。本発明は、積層型感光層を有する感光体の製造に好ましく用いられる。
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
(1−1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
(1−2)電荷輸送層
本発明が、積層型感光層の場合は、本発明に係る(i)の工程が、支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する感光層を形成する工程である。
電荷輸送層は、第一の溶剤と、第一の溶剤よりも沸点が高い第二の溶剤と、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有する電荷輸送層用塗布液によって得られる電荷輸送層用塗布膜の形成を経て行われる。電荷輸送層用塗布膜を加熱することで、電荷輸送層中の第一の溶剤の残留溶剤量が0.05質量%以上2.50質量%以下であり、電荷輸送層中の第二の溶剤の残留溶剤量が0.50質量%以上2.50質量%以下とする必要がある。又、残留溶剤量は、電荷輸送層の全質量に対する第一の溶剤の質量比率、又は第二の溶剤の質量比率である。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10〜20:10が好ましく、5:10〜12:10がより好ましい。
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
(2)単層型感光層
本発明が、単層型感光層の場合は、(i)の工程が、第一の溶剤と、第一の溶剤よりも沸点が高い第二の溶剤と、電荷発生物質と、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有する感光層用塗布液によって得られる感光層用塗布膜の形成を経て行われる。感光層用塗布膜を加熱することで、感光層中の第一の溶剤の残留溶剤量が0.05質量%以上2.50質量%以下であり、感光層中の第二の溶剤の残留溶剤量が0.50質量%以上2.50質量%以下とする必要がある。
電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
<保護層>
本発明において、感光層の上に、(ii)の工程により保護層を設ける。保護層は、重合性官能基を有する化合物を含有する組成物を重合することで硬化膜として形成する。
保護層は、導電性粒子及び/又は電荷輸送物質と、樹脂とを、更に含有することが好ましい。
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
保護層は、上述の各材料及び溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
また、本発明の電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする。
図2に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。尚、図においては、ローラ型帯電部材によるローラ帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジを電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、及び、これらの複合機などに用いることができる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
<電子写真感光体の製造>
〔実施例1〕
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
次に、以下の材料を用意した。
・金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(平均一次粒子径230nm)214部
・結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)132部
・溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部
これらを、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。得られた分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を添加した。シリコーン樹脂粒子の添加量は、ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%となるようにした。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加した。次に、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%になるように、メタノールと1−メトキシ−2−プロパノールの混合溶剤(質量比1:1)を分散液に添加した。その後、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを140℃で1時間加熱することによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
次に、以下の材料を用意した。
・電子輸送物質(式E−1)4部
・ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBN−70D、旭化成ケミカルズ(株)製)5.5部
・ポリビニルブチラール樹脂(エスレックKS−5Z、積水化学工業(株)製)0.3部
・触媒としてのヘキサン酸亜鉛(II)(三津和化学薬品(株)製)0.05部
これらを、テトラヒドロフラン50部と1−メトキシ−2−プロパノール50部の混合溶剤に溶解して下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを170℃で30分間加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
Figure 2021173804
次に、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°及び28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業社製)5部を用意した。これらをシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散した。これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部を更に加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。
なお、X線回折の測定は、次の条件で行ったものである。
[粉末X線回折測定]
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT−TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
次に、以下の材料を用意した。
・上記構造式(1−1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)5部
・上記構造式(1−3)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)5部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部
・下記構造式(C−4)と下記構造式(C−5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量=20000)
これらを、トルエン60部/安息香酸メチル2.3部/テトラヒドロフラン12.8部の混合溶剤(第一の溶剤:トルエン、沸点110.6℃、第二の溶剤:安息香酸メチル、沸点199.6℃)に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して電荷輸送層用塗布膜を形成し、この塗膜を100℃で20分間乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 2021173804
Figure 2021173804
電荷輸送層の残留溶剤量は、ヘッドスペースサンプラーを装備したガスクロマトグラフィー−質量分析装置(Hewlett Packard社製:HP6890/HP5973)により測定を行った。ガスクロマトグラフィー−質量分析の測定条件としては、ヘッドスペースサンプラーを用い、電子写真感光体から電荷輸送層を剥離して、150℃で30分加熱し、発生したガスをガスクロマトグラフィー−質量分析装置(Hewlett Packard社製:HP6890/HP5973)、キャピラリーカラム(Hewlett Packard社製:HP−5MS:5%−Diphenyl 95%−Dimethylpolysiloxane共重合体、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)、キャリアガス(He:1ml/min)を用い、40℃で3分ホールド、1段目の昇温:40℃から2℃/minの昇温速度で70℃までカラムを昇温、2段目の昇温:70℃から5℃/minの昇温速度で150℃までカラムを昇温、3段目の昇温:150℃から10℃/minの昇温速度で300℃までカラムを昇温して測定した。電荷輸送層で使用する溶剤を検量線用基準物質として検量線を作成して電荷輸送層中の残留溶剤量を求めた。結果を表1に示す。
次に、以下の材料を用意した。
・上記構造式(2−1)で示される化合物8部
・上記構造式(3−1)で示される化合物16部
・シロキサン変性アクリル化合物0.1部(サイマックUS270、東亜合成(株)製)
これらを、シクロヘキサン58部と1−プロパノール25部に混合し、撹拌した。このようにして、保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して保護層用塗布膜を形成し、得られた塗膜を5分間40℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を300rpmの速度で回転させながら、1.6秒間電子線を塗膜に照射した。最表面層位置の線量は15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、25℃から100℃まで20秒かけて昇温させて加熱を行い、膜厚1.5μmの硬化膜を形成した(工程(A))。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は10ppm以下であった。次に、大気中で、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、大気中で220℃で15分間の加熱を行い、表面上に皺形状を有する保護層を形成した(工程(B))。このようにして、実施例1の保護層を有する円筒状(ドラム状)の電子写真感光体を作製した。
〔実施例2〜20〕
電荷輸送層の形成における各化合物の種類及び量、電荷輸送層の形成における溶剤の種類及び量並びに電荷輸送層の形成における乾燥条件を表1に示すように変更した以外、実施例1と同様にして電荷輸送層を形成した。更に、保護層の形成における各化合物の種類及び量、硬化膜の膜厚、並びに加熱温度条件を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして保護層を形成して電子写真感光体を作製した。
〔実施例21〕
実施例1において、電荷輸送層の形成を下記のようにし、保護層の各化合物の種類、製造条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
・上記構造式(1−1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)5部
・上記構造式(1−2)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)5部
・下記式(16−1)で示される繰り返し構造単位と、下記式(16−2)で示される繰り返し構造単位を5/5の割合で有し、質量平均分子量(Mw)が100000であるポリアリレート樹脂10部
Figure 2021173804


・上記構造式(C−4)と上記構造式(C−5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量=20000)
これらを、トルエン45部/安息香酸メチル15部/テトラヒドロフラン15部の混合溶剤(第一の溶剤:トルエン、沸点110.6℃、第二の溶剤:安息香酸メチル、沸点199.6℃)に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を100℃、30分間で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 2021173804
Figure 2021173804
〔比較例1〜3、5及び7〕
実施例1において、各化合物の量及び種類等を表1、表2、に示すように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
〔比較例4〕
電荷輸送層の形成における各種の条件は、表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして行った。保護層を形成する工程は、放射線を照射後、(A)の工程における加熱は行なわなかった。その後、大気中において、160℃で15分間の(B)の工程における加熱を行って膜厚1.5μmの保護層を形成した。それ以外の保護層を形成する(ii)の工程における各種の条件は、実施例1と同様にして行った。
〔比較例6〕
電荷輸送層の形成における各種の条件は、表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして行った。保護層を形成する工程は、放射線を照射した後の最表面層位置の線量は15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、25℃から230℃まで20秒かけて昇温させて(A)の工程における加熱を行い、膜厚1.5μmの硬化膜を形成した。電子線照射から、その後の(A)の工程終了までの酸素濃度は10ppm以下であった。
(B)の工程は行わずこの硬化膜を保護層とした。それ以外の保護層を形成する工程における各種の条件は、実施例1と同様にして行った。
<評価>
実施例1〜21で作製した感光体と比較例1〜7で作製した感光体を使用して、以下の条件で評価した。
・形成した形状の観察
電子写真感光体の表面形状をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製VK−X200)で拡大観察し、図1に示すような皺形状が形成されているか確認した。結果を表3に示す。
・皺形状の皺のピッチ計測
皺のピッチの計測として、表面粗さ計を用いて、以下の条件にて断面曲線を測定し、全ての隣り合う凸部の間隔の平均値を求めた。任意の10か所で同様に測定し、10か所の平均値を各感光体における皺形状のピッチとした。また、各10点ピッチ平均値の最大値と最小値の差を求め、平均ピッチのバラつきとした。結果を表3に示す。
粗さ計装置名:SE3500(株式会社 小坂研究所製)
カットオフ値:0.08mm
予備長さ:カットオフ×1
フィルター特性:2CR
評価長さ:1.0mm
縦倍率:10000
横倍率:50
送り長さ:0.1mm/sec
レベリング:直線(全域)
JISB0601−1982に準拠
評価長さ全長から処理:間隔評価長さ8000等分
λsフィルター:なし
極性:normal
・トルクの相対値評価及び画像評価
実施例1〜21で作製した感光体と比較例1〜7で作製した感光体を使用して、以下の条件で評価した。
電子写真装置としてヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンター、商品名HP LaserJet Enterprise Color M553dnの改造機を使用した。改造点としては、感光体の回転モーターの駆動電流量を測定できるようにした。また、帯電ローラへの印加電圧の調節及び測定、像露光光量の調節及び測定ができるように改造した。
実施例及び比較例の感光体を画像形成装置のシアン色のカートリッジに装着した。
A4サイズの普通紙に対し、印字比率5%のテストチャートによる画像出力を100枚出力した。帯電条件としては、暗部電位が−500V、露光条件としては、像露光光量を0.25μJ/cmに調整した。100枚出力時の駆動電流値(電流値A)を読み取った。得られた電流値が大きいほど、電子写真感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が大きいことを表す。
さらに、以下の方法でトルク相対値の対照となる電子写真感光体を作製した。実施例1の電子写真感光体の(B)の工程を実施しないで皺形状を形成させずに作製し、これを対照用電子写真感光体とした。作製された対照用電子写真感光体を用いて、実施例1と同様に電子写真感光体の回転モーターの駆動電流値(電流値B)を測定した。
このようにして得られた電子写真感光体の回転モーターの駆動電流値(電流値A)と、駆動電流値(電流値B)との比を算出した。得られた(電流値A)/(電流値B)の数値を、トルクの相対値として比較した。相対値が小さいほど電子写真感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が低減されていることを表す。
評価結果を表3に示す。
〔参考例1〕
実施例1の電子写真感光体の(B)の工程を実施しないで皺形状を形成させずに作製した感光体を用意した。この感光体を図3に示す研磨機を用いて、下記条件で感光体表面の研磨を行った。
研磨シートの送りスピード:400mm/min
感光体の回転数:240rpm
研磨砥粒:炭化珪素
研磨砥粒の平均粒径:3μm
研磨時間:20秒
研磨方法は、シート状基材上に研磨砥粒が結着樹脂中に分散された層を設けてなる研磨シート1−1を矢印方向に送りながら、電子写真感光体1−7を矢印方向に回転させながら20秒間押付けて粗面化処理をした。粗面化後の感光体の表面粗さRaを皺のピッチ計測と同条件で評価したところ0.018μmであった。この感光体を用いてトルク相対値を求めると0.67であった。ここで、図3中の1−2〜1−5はガイドローラ、1−6はバックアップローラ、1−8は送り出しローラ、1−9は巻き取りローラである。
Figure 2021173804
Figure 2021173804
Figure 2021173804
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段

Claims (6)

  1. 支持体と感光層と保護層をこの順に有し、該保護層の外表面が、皺を有する電子写真感光体の製造方法であって、
    (i)該支持体上に該感光層を形成する工程と、
    (ii)該感光層上に該保護層を形成する工程と
    を有し、
    該(i)の工程が、
    第一の溶剤と、該第一の溶剤よりも沸点が高い第二の溶剤と、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有する感光層用塗布液によって得られる感光層用塗布膜を形成した後に、該感光層用塗布膜を加熱することで該感光層中の該第一の溶剤の残留溶剤量が、該感光層の全質量に対して0.05質量%以上2.50質量%以下であり、該感光層中の該第二の溶剤の残留溶剤量が、該感光層の全質量に対して0.50質量%以上2.50質量%以下である該感光層を形成する工程であり、
    該(ii)の工程が、
    (A)連鎖重合性官能基を有する化合物を含有する保護層用塗布液によって得られる保護層用塗布膜を形成し、該保護層用塗布膜へ放射線を照射し、加熱して膜厚が、1.5μm以下の硬化膜を形成する工程と、
    (B)該硬化膜をさらに加熱して、該保護層を形成する工程と
    を有し、
    該(A)の工程における加熱温度が、該第一の溶剤の沸点より低い温度であり、
    該(B)の工程における加熱温度が、該第一の溶剤の沸点より高い温度であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記感光層中の前記第一の溶剤の残留溶剤量に対する前記第二の溶剤の残留溶剤量の比が、1.00以上15.00以下である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記(B)の工程における加熱温度が、前記第一の溶剤の沸点より高くかつ前記第二の溶剤の沸点より低い請求項1又は2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記第一の溶剤の沸点が、90℃以上150℃以下であり、前記第二の溶剤の沸点が、153℃以上230℃以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記第二の溶剤の沸点と前記第一の溶剤の沸点との差が、40℃以上100℃以下である請求項4に記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記(i)の工程が、前記支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する感光層を形成する工程であって、
    前記(i)の工程が、
    前記第一の溶剤と、前記第一の溶剤よりも沸点が高い前記第二の溶剤と、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有する電荷輸送層用塗布液によって得られる電荷輸送層用塗布膜を形成した後に、該電荷輸送層用塗布膜を加熱することで該電荷輸送層中の該第一の溶剤の残留溶剤量が、該電荷輸送層の全質量に対して0.05質量%以上2.50質量%以下であり、該電荷輸送層中の該第二の溶剤の残留溶剤量が、該電荷輸送層の全質量に対して0.50質量%以上2.50質量%以下である該電荷輸送層を形成する工程を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
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