JP2019075261A - リチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温耐久後の内部抵抗の上昇をより抑制するリチウム二次電池を提供する。【解決手段】リチウム二次電池は、リチウムと遷移金属とを有する化合物を正極活物質として有する正極と、炭素質材料を負極活物質として有しPO43-アニオンを含有する負極と、正極と負極との間に介在してリチウムイオンを伝導しPO2F2-アニオンを含有するイオン伝導媒体と、を備えたものである。【選択図】図1
Description
本明細書は、リチウム二次電池を開示する。
従来、リチウム二次電池としては、例えば、耐久性と信頼性の向上を目的として、LiPO2F2を含む非水電解液を使用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このリチウム二次電池では、製造時のコンディショニング条件を工夫することで、正極表面にPO2F2 -イオンを含む被膜を形成することができるとしている。また、リチウム二次電池としては、Li3PO4を添加剤として負極に加えたリチウム二次電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このリチウム二次電池では、正極活物質であるLiMn2O4から溶出したMnイオンの負極上での析出を防ぐことができるとしている。
しかしながら、特許文献1では、LiPO2F2を含む非水電解液を用いることにより耐久性と信頼性の向上を図っているが、まだ十分ではなかった。また、特許文献2では、安全性と高温貯蔵特性に優れたものとしているが、まだ十分ではなかった。特に、特許文献1では、過充電時の内圧上昇を検討し、特許文献2では、高温貯蔵後の容量回復率について検討しているが、内部抵抗の上昇については検討されていなかった。リチウム二次電池の高温耐久特性として、内部抵抗の上昇をより抑制することが求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、高温耐久後の内部抵抗の上昇をより抑制することができるリチウム二次電池を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、非水電解液にPO2F2 -イオンを添加すると共に負極にPO4 3-を添加すると、高温耐久後の内部抵抗の上昇をより抑制することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示するリチウム二次電池は、
リチウムと遷移金属とを有する化合物を正極活物質として有する正極と、
炭素質材料を負極活物質として有し、PO4 3-アニオンを含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在してリチウムイオンを伝導し、PO2F2 -アニオンを含有するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
リチウムと遷移金属とを有する化合物を正極活物質として有する正極と、
炭素質材料を負極活物質として有し、PO4 3-アニオンを含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在してリチウムイオンを伝導し、PO2F2 -アニオンを含有するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本開示では、高温耐久後の内部抵抗の上昇をより抑制することができるリチウム二次電池を提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。リチウム二次電池のイオン伝導媒体にPO2F2 -アニオンを添加し、負極にPO4 3-アニオンを添加して充放電を行うと、PO2F2 -アニオンおよびPO4 3-アニオンの双方を含む被膜が負極上に形成され、この形成された被膜によって充放電に伴うイオン伝導媒体(例えば支持塩及び溶媒)の分解をより抑制し、電池の高温耐久後の内部抵抗増加を抑制することができるものと推察される。
本開示のリチウム二次電池の好適な実施形態について以下に説明する。本実施形態のリチウム二次電池は、リチウムと遷移金属とを有する化合物を正極活物質として有する正極と、炭素質材料を負極活物質として有する負極と、リチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体とを備えている。
正極は、正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に含まれる正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物が好ましい。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMncO4(但し0<a<1、0<b<1、0<c<2、a+b+c=2を満たす)や、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMncO2(但し0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1を満たす)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、各元素の組成にずれがあってもよいし、他の元素(例えば、AlやMgなど)を含んでもよい趣旨である。
正極に含まれる導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。正極に含まれる結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
負極は、負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定するものではないが、炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。炭素質材料としては、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり電解質塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時における不可逆容量を少なくできるため、好ましい。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
負極は、PO4 3-アニオンを含有している。この負極は、例えば、アルカリ金属リン酸塩が含まれているものとしてもよい。リン酸塩は特に限定されないが、例えばリン酸リチウムやリン酸ナトリウムなどが挙げられ、このうちリン酸リチウムが好ましい。この負極は、負極活物質を含む負極合材の質量全体に対してPO4 3-アニオンを0.05質量%以上0.4質量%以下の範囲で含有することが好ましく、0.05質量%以上0.3質量%以下の範囲で含有することがより好ましい。この含有量が0.05質量%以上0.4質量%以下の範囲では、アニオンの添加効果をより効果的に発揮でき好ましい。
また、この負極は、その表面上にPO2F2 -アニオンに基づく成分とPO4 3-アニオンに基づく成分とを含む被膜が形成されているものとしてもよい。このような被膜が形成されていると、高温耐久後の内部抵抗の上昇をより抑制することができる。また、この負極は、PO2F2 -アニオンに基づく成分とPO4 3-アニオンに基づく成分と、更にB(C2O4)2 - に基づく成分を含む被膜が形成されているものとしてもよい。このような被膜が形成されていると、高温耐久後の内部抵抗の上昇を更に抑制することができる。PO2F2 -アニオンに基づく成分としては、LiPO2F2などが挙げられる。PO4 3-アニオンに基づく成分としては、Li3PO4などが挙げられる。B(C2O4)2 - に基づく成分としては、LiB(C2O4)2などが挙げられる。
イオン伝導媒体は、支持塩と有機溶媒とを含む非水電解液としてもよい。有機溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、エチレンカーボネート(EC)や、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類;ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類;スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類;1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、ECと鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましく、ECとDMCとEMCとの組合せがより好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。
支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。特に、LiPF6が好ましい。支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩の濃度が0.1mol/L以上では十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では電解液をより安定させることができる。
イオン伝導媒体は、PO2F2 -アニオンを含有している。このイオン伝導媒体は、例えば、フルオロリン酸塩を添加剤として含有していることが好ましい。フルオロリン酸塩としては、例えば、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)が挙げられる。このイオン伝導媒体は、イオン伝導媒体の質量全体に対してPO2F2 -アニオンを0.6質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有していることが好ましく、0.8質量%以上1.2質量%以下の範囲で含有していることがより好ましい。この含有量が0.6〜1.5質量%の範囲では、フルオロリン酸塩の添加効果を十分発揮でき好ましい。
高温耐久後の抵抗上昇率を顕著に抑制するためには、イオン伝導媒体に、ホウ素原子を有するオキサラト錯体化合物を添加するのが好ましい。こうしたオキサラト錯体化合物を添加することにより、被膜の構造がより最適化されると考えられる。オキサラト錯体化合物としては、LiB(C2O4)2,LiBF2(C2O4)などが挙げられるが、このうちLiB(C2O4)2が好ましい。オキサラト錯体化合物は、イオン伝導媒体の質量全体に対して0.6質量%以上1.5質量%の範囲で添加することが好ましく、0.7〜1.2質量%添加することがより好ましい。
本実施形態のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、こうしたリチウム二次電池を複数直列に接続して電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本実施形態のリチウム二次電池10の一例を示す模式図である。このリチウム二次電池10は、集電体11に正極合材12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極合材17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18との間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。このリチウム二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シート18に接続された負極端子26とを配設して形成されている。
以上詳述した本実施形態のリチウム二次電池では、高温耐久後の内部抵抗の上昇をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、リチウム二次電池のイオン伝導媒体にPO2F2 -アニオンを添加し、負極にPO4 3-アニオンを添加して充放電を行うと、PO2F2 -アニオンおよびPO4 3-アニオンの双方を含む被膜が負極上に形成される。この形成された被膜が、各アニオンを単独で含むものから作製した被膜に比して好適な特性を有しており、この被膜によって充放電に伴うイオン伝導媒体(例えば支持塩及び溶媒)の分解をより抑制し、電池の高温耐久後の内部抵抗増加を抑制することができるものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本開示の電極及びリチウム二次電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例1が比較例に相当し、実験例2〜11が実施例に相当する。
(実験例1)
正極活物質としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を用い、活物質を85質量%、導電材としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状の正極合材とした。この正極合材を15μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、52mm幅×450mm長の形状に切り出して正極電極とした。負極活物質として天然黒鉛を用い、活物質を95質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、正極と同様にスラリー状の負極合材とした。この負極合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、54mm幅×500mm長の形状に切り出して負極電極とした。上記の正極シートと負極シートを56mm幅で25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状電極体を作製した。この電極体を18650型円筒ケースに挿入し、非水電解液を含侵させた後に密閉して円筒型リチウム二次電池を作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
正極活物質としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を用い、活物質を85質量%、導電材としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状の正極合材とした。この正極合材を15μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、52mm幅×450mm長の形状に切り出して正極電極とした。負極活物質として天然黒鉛を用い、活物質を95質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、正極と同様にスラリー状の負極合材とした。この負極合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、54mm幅×500mm長の形状に切り出して負極電極とした。上記の正極シートと負極シートを56mm幅で25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状電極体を作製した。この電極体を18650型円筒ケースに挿入し、非水電解液を含侵させた後に密閉して円筒型リチウム二次電池を作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
作製したリチウム二次電池の活性化およびエージング処理を実施した。電池活性化処理は25℃の温度下、まず電流密度0.2mA/cm2の定電流で電池電圧4.1Vまで充電を行い、さらにその電池電圧で2時間定電圧充電を行い、次いで電流密度0.2mA/cm2の定電流で電池電圧3.0Vまで放電を行うものを1サイクルとして合計3サイクル行った。活性化処理後の電池を電流密度0.2mA/cm2の定電流で3.9Vまで充電し、この充電状態の電池を端子から外して60℃の環境下40時間エージング処理を施した。エージング処理後、電池を0.2mA/cm2の定電流で電池電圧3.0Vまで放電し、評価用電池とした。この評価用電池を複数本作製し、以下の検討を行った。
(電池の高温(60℃)充放電動作試験、内部抵抗増加率の評価)
評価用電池を60℃の温度条件下で、電流密度2mA/cm2の定電流で充電上限電圧4.1Vまで充電を行い、次いで電流密度2mA/cm2の定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし、このサイクルを合計500サイクル行った。充放電後の評価用電池を電池容量の60%の充電状態(SOC=60%)に調整した後に、測定温度25℃において0.5A、1A、2A、3A、5Aの電流を流し、10秒後の電池電圧を測定した。流した電流と電圧を直線近似し、その傾きからIV抵抗、すなわち、電池内部抵抗を求めた。内部抵抗増加率は、{(500サイクル後の抵抗―初期抵抗)/初期抵抗×100%}という式を用いて計算した。
評価用電池を60℃の温度条件下で、電流密度2mA/cm2の定電流で充電上限電圧4.1Vまで充電を行い、次いで電流密度2mA/cm2の定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクルとし、このサイクルを合計500サイクル行った。充放電後の評価用電池を電池容量の60%の充電状態(SOC=60%)に調整した後に、測定温度25℃において0.5A、1A、2A、3A、5Aの電流を流し、10秒後の電池電圧を測定した。流した電流と電圧を直線近似し、その傾きからIV抵抗、すなわち、電池内部抵抗を求めた。内部抵抗増加率は、{(500サイクル後の抵抗―初期抵抗)/初期抵抗×100%}という式を用いて計算した。
(実験例2〜9)
非水電解液に溶媒と電解質との質量全体に対してLiPO2F2を0.6質量%加え、負極に活物質と結着剤との混合物(負極合材)の質量全体に対してLi3PO4を0.05質量%加えた以外は実験例1と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例2とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を0.8質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例3とした。また、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.1質量%加えた以外は実験例3と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例4とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.0質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.2質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例5とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.2質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.3質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例6とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.5質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.3質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例7とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.2質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.35質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例8とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.5質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.4質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例9とした。
非水電解液に溶媒と電解質との質量全体に対してLiPO2F2を0.6質量%加え、負極に活物質と結着剤との混合物(負極合材)の質量全体に対してLi3PO4を0.05質量%加えた以外は実験例1と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例2とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を0.8質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例3とした。また、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.1質量%加えた以外は実験例3と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例4とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.0質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.2質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例5とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.2質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.3質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例6とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.5質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.3質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例7とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.2質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.35質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例8とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.5質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.4質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例9とした。
(実験例10、11)
非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.0質量%加え、更に非水電解液の質量全体に対してLiB(C2O4)2を0.7質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.2質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例10とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.0質量%加え、更に非水電解液の質量全体に対してLiB(C2O4)2を1.2質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.2質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例11とした。
非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.0質量%加え、更に非水電解液の質量全体に対してLiB(C2O4)2を0.7質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.2質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例10とした。また、非水電解液の質量全体に対してLiPO2F2を1.0質量%加え、更に非水電解液の質量全体に対してLiB(C2O4)2を1.2質量%加え、負極合材の質量全体に対してLi3PO4を0.2質量%加えた以外は実験例2と同様の工程を経て得られた試験用電池を実験例11とした。
(結果と考察)
表1に、電解液へのLiPO2F2及びLiB(C2O4)2の添加量(質量%)、負極へのLi3PO4の添加量(質量%)、高温耐久後の各評価用電池の内部抵抗増加率(%)を示した。表1に示すように、実験例2〜11のリチウムイオン電池、即ち、非水電解液中にLiPO2F2を添加し、且つ負極中にLi3PO4をそれぞれ添加することにより、これらを添加しない実験例1に比べて高温耐久後の内部抵抗増加が抑制されることが明らかとなった。また、実験例2及び実験例7〜9と実験例3〜6とを比較すると、非水電解液の質量全体に対して0.6〜1.5質量%の範囲のPO2F2 -が含まれるときに内部抵抗増加率が低くなり、0.8〜1.2質量%の範囲では更に内部抵抗増加率が低下することがわかった。同様に、負極合材の質量全体に対して0.05〜0.4質量%の範囲のPO4 3-が含まれるときに内部抵抗増加率が低くなり、0.05〜0.3質量%の範囲では更に内部抵抗増加率が低下することがわかった。この理由は、例えば、充放電に伴いPO2F2 -アニオンおよびPO4 3-アニオンが黒鉛負極上に被膜を形成することで充放電に伴う電解液(電解質及び溶媒)の分解を抑制し、電池の高温耐久後の内部抵抗増加を抑制するのではないかと推察された。また、非水電解液中にLiB(C2O4)2を添加することにより、さらに優れた特性を示すことが分かった。特に、非水電解液に添加剤としてLiB(C2O4)2を非水電解液の質量に対して0.6〜1.2質量%添加した場合に性能向上効果が特に顕著に現れた。これは、 LiB(C2O4)2と上記被膜を備えた黒鉛負極とが効果的に反応し、電解液(電解質及び溶媒)の分解抑制に好ましい被膜を形成するためであると推察された。
表1に、電解液へのLiPO2F2及びLiB(C2O4)2の添加量(質量%)、負極へのLi3PO4の添加量(質量%)、高温耐久後の各評価用電池の内部抵抗増加率(%)を示した。表1に示すように、実験例2〜11のリチウムイオン電池、即ち、非水電解液中にLiPO2F2を添加し、且つ負極中にLi3PO4をそれぞれ添加することにより、これらを添加しない実験例1に比べて高温耐久後の内部抵抗増加が抑制されることが明らかとなった。また、実験例2及び実験例7〜9と実験例3〜6とを比較すると、非水電解液の質量全体に対して0.6〜1.5質量%の範囲のPO2F2 -が含まれるときに内部抵抗増加率が低くなり、0.8〜1.2質量%の範囲では更に内部抵抗増加率が低下することがわかった。同様に、負極合材の質量全体に対して0.05〜0.4質量%の範囲のPO4 3-が含まれるときに内部抵抗増加率が低くなり、0.05〜0.3質量%の範囲では更に内部抵抗増加率が低下することがわかった。この理由は、例えば、充放電に伴いPO2F2 -アニオンおよびPO4 3-アニオンが黒鉛負極上に被膜を形成することで充放電に伴う電解液(電解質及び溶媒)の分解を抑制し、電池の高温耐久後の内部抵抗増加を抑制するのではないかと推察された。また、非水電解液中にLiB(C2O4)2を添加することにより、さらに優れた特性を示すことが分かった。特に、非水電解液に添加剤としてLiB(C2O4)2を非水電解液の質量に対して0.6〜1.2質量%添加した場合に性能向上効果が特に顕著に現れた。これは、 LiB(C2O4)2と上記被膜を備えた黒鉛負極とが効果的に反応し、電解液(電解質及び溶媒)の分解抑制に好ましい被膜を形成するためであると推察された。
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本明細書で開示したリチウム二次電池は、二次電池の技術分野に利用可能である。
20 リチウム二次電池、21 集電体、22 正極合材層、23 正極シート、24 集電体、27 負極合材層、28 負極シート、29 セパレータ、30 イオン伝導媒体、32 円筒ケース、34 正極端子、36 負極端子。
Claims (6)
- リチウムと遷移金属とを有する化合物を正極活物質として有する正極と、
炭素質材料を負極活物質として有し、PO4 3-アニオンを含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在してリチウムイオンを伝導し、PO2F2 -アニオンを含有するイオン伝導媒体と、
を備えたリチウム二次電池。 - 前記イオン伝導媒体は、該イオン伝導媒体の質量全体に対して前記PO2F2 -アニオンを0.6質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有している、請求項1に記載のリチウム二次電池。
- 前記イオン伝導媒体は、該イオン伝導媒体の質量全体に対して前記PO2F2 -アニオンを0.8質量%以上1.2質量%以下の範囲で含有している、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
- 前記負極は、前記負極活物質を含む負極合材の質量全体に対して前記PO4 3-アニオンを0.05質量%以上0.4質量%以下の範囲で含有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
- 前記負極は、前記負極活物質を含む負極合材の質量全体に対して前記PO4 3-アニオンを0.05質量%以上0.3質量%以下の範囲で含有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
- 前記イオン伝導媒体は、該イオン伝導媒体の質量全体に対してLiB(C2O4)2を0.6質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
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