JP2017174648A - 蓄電デバイス - Google Patents

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真人 塩澤
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厳 佐々木
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Yuichi Ito
勇一 伊藤
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Abstract

【課題】内部抵抗の増加をより抑制する。【解決手段】リチウム二次電池10は、正極シート15と、負極シート18と、正極シート15と負極シート18との間に介在する非水電解液22と、正極シート15と負極シート18との間に介在するセパレータ21と、を備え、正極シート15、負極シート18、非水電解液22及びセパレータ21のうちの少なくとも1つには負の熱膨張係数を有する熱収縮材料が分散している。【選択図】図1

Description

本発明は、蓄電デバイスに関する。
従来、正極シートとセパレータと負極シートとが捲回された捲回コア部において、単位体積あたりの電解液保持量が軸回転方向の中央部では端部側よりも多くなるように構成されたリチウムイオン二次電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電池では、高い電流が流れる(ハイレート)放電に対する耐久性をより効果的に改善することができるとしている。また、発電要素の最外層集電体の外側に集電板が設けられ、集電板のさらに外側に、発電要素が膨張した際にそれを吸収するために収縮する収縮層(例えば負の熱膨張係数を有する材料)を備えた二次電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この電池では、二次電池の充放電に伴う発電要素の膨張に追従して、発電要素内部の圧力を適正に保つことができるとしている。
特開2012−238512号公報 特開2010−92662号公報
しかしながら、上述の特許文献1の電池では、中央部の電解液量を増やして抵抗上昇の速度を遅くすることにより、ハイレート放電に対する耐久性を高めることができるが、まだ十分でないことがあった。また、上述の特許文献2の電池では、充放電に伴う発電要素の膨張に追従して、発電要素の内部の圧力を適正に保つことができるが、ハイレート充放電時に内部抵抗が上昇してしまうことがあった。このため、ハイレート充放電に対する耐久性などをより一層改善することが望まれていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、内部抵抗の増加をより抑制できる蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、蓄電デバイスの正極、負極、非水電解液、セパレータのうちの1以上に負の熱膨張係数を有する熱収縮材料を分散させて蓄電デバイスを作製したところ、内部抵抗の増加をより抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の蓄電デバイスは、
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する非水電解液と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、を備え、
前記正極、前記負極、前記非水電解液及び前記セパレータのうちの少なくとも1つには負の熱膨張係数を有する熱収縮材料が分散しているものである。
本発明の蓄電デバイスでは、内部抵抗の増加をより抑制できる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、正極内と負極内とにおける電解液の流通のしやすさや電解液の保持力などの違いによって、セル内での塩濃度の偏りが大きくなり、抵抗が増加することがある。塩濃度の偏りは、特に、ハイレート放電によるセル内部の温度上昇により促進されると考えられる。しかし、正極、負極、非水電解液及びセパレータのうちの少なくとも1つに熱収縮材料を分散させることで、ハイレート充放電による温度上昇時の正極内や負極内における電解液の流入出が調整され、それによりリチウムイオン濃度の偏りを抑制できると推察される。
リチウム二次電池10の一例を示す模式図。 リチウム二次電池10の一例を示す部分断面図。 リチウム二次電池30の一例を示す模式図。
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。本発明の蓄電デバイスは、正極と、負極と、正極と負極との間に介在する非水電解液と、正極と負極との間に介在するセパレータとを備えている。本発明の蓄電デバイスの種類は特に限定されず、二次電池としてもよいし、キャパシタとしてもよいし、電池とキャパシタとを組み合わせたハイブリッドキャパシタとしてもよい。また、二次電池やハイブリッドキャパシタにおいて電池反応をする電極は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びオニウムを吸蔵・放出するものとしてもよい。本発明の蓄電デバイスは、このうち、二次電池であることが好ましく、正極及び負極がアルカリ金属を吸蔵・放出し非水電解液がアルカリ金属イオンを伝導するアルカリ金属電池であることが好ましく、正極及び負極がリチウムを吸蔵・放出し非水電解液がリチウムイオンを伝導するリチウム二次電池であることがより好ましい。以下には、本発明の蓄電デバイスがリチウム二次電池である場合について主に説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるリチウム二次電池10の一例を示す模式図である。図2は、リチウム二次電池10の一例を示す部分断面図である。本実施形態のリチウム二次電池10は、図1、2に示すように、例えば、集電体13に正極合材層14を形成した正極シート15と、集電体16の表面に負極合材層17を形成した負極シート18と、正極シート15と負極シート18との間に設けられセパレータ21と、正極シート15と負極シート18の間を満たす非水電解液22と、を備えている。このリチウム二次電池10では、正極シート15と負極シート18との間にセパレータ21を挟み、これらを捲回して円筒ケース23に挿入し、正極シート15に接続された正極端子24と負極シート18に接続された負極端子26とを配設して形成されている。
このリチウム二次電池10では、正極シート15、負極シート18、非水電解液22及びセパレータ21のうちの少なくとも1つに、負の熱膨張係数を有する熱収縮材料が分散している。より詳しくは後述するが、正極シート15、負極シート18、非水電解液22及びセパレータ21のうちの少なくとも1つには、その構成100質量部(熱収縮材料を含まない、以下同じ)に対して1質量部以上50質量部以下の範囲で、熱収縮材料が分散していることがより好ましい。熱収縮材料は、正極シート15のみに分散されていていもよいし、負極シート18のみに分散されていてもよいし、非水電解液22のみに分散されていてもよいし、セパレータ21のみに分散されていてもよいし、これらのうちの2つ以上に分散されていてもよい。このうち、負極シート18及び非水電解液22のうちの少なくとも一方に分散されていることが好ましい。
熱収縮材料は、熱膨張係数(線熱膨張係数)が0K-1未満であればよいが、−1×10-6-1以下が好ましく、−5×10-6-1以下がより好ましい。熱膨張係数の下限は特に限定されないが、例えば、−1×10-3-1以上や−1×10-4-1以上などとすることができる。熱収縮材料としては、例えば、タングステン酸ジルコニウムやシリコン酸化物、マンガン窒化物などが挙げられる。熱収縮材料は、レーザー回折法による粒度分布測定によって求めたメディアン径D50が100μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。100μm以下であれば、熱収縮材料をより均一に分散させることができる。この粒子径の下限は特に限定されないが、例えば、0.05μm以上としてもよいし、0.1μm以上としてもよいし、0.5μm以上としてもよい。なお、複数の部材に熱収縮材料が含まれている場合、各部材に含まれる熱収縮材料は、熱膨張係数や材質、粒子径などが同じであっても異なっていてもよい。
正極シート15には、図2に示すように、正極活物質を含む正極合材層14がその両面に形成されている。なお、正極合材層14は、採用する構造に応じて、正極シート15の片面に形成されていてもよい。
正極シート15に熱収縮材料が分散している場合、正極シート15全体に熱収縮材料が分散していてもよいし、正極合材層14のみに熱収縮材料が分散していてもよい。正極シート15全体に熱収縮材料が分散している場合には、正極シート15全体の構成100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲で熱収縮材料が分散していることが好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、6質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。正極合材層14のみに熱収縮材料が分散している場合には、正極合材層14の構成100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲で熱収縮材料が分散していることが好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、5質量部以上13質量部以下がさらに好ましい。
正極シート15は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、さらに必要に応じて熱収縮材料を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体13の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。
正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(但し0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1を満たす)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、各元素の組成にずれがあってもよいし、他の元素を含んでもよい趣旨である。
導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。
結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
正極活物質、導電材、結着材、熱収縮材料を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。
集電体13としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体13の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体13の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
負極シート18には、負極活物質を含む負極合材層17がその両面に形成されている。なお、負極合材層17は、採用する構造に応じて、負極シート18の片面に形成されていてもよい。
負極シート18に熱収縮材料が分散している場合、負極シート18全体に熱収縮材料が分散していてもよいし、負極合材層17のみに熱収縮材料が分散していてもよい。負極シート18全体に熱収縮材料が分散している場合には、負極シート18全体の構成100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲で熱収縮材料が分散していることが好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、6質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。負極合材層17のみに熱収縮材料が分散している場合には、負極合材層17の構成100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲で熱収縮材料が分散していることが好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、5質量部以上13質量部以下がさらに好ましい。
負極シート18は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、さらに必要に応じて熱収縮材料を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体16の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素質材料は、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり支持塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時おける不可逆容量を少なくできるため、好ましい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。負極活物質としては、このうち、炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。また、負極シート18に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極シート15で例示したものを用いることができる。負極シート18の集電体16には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体16の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
セパレータ21は、リチウム二次電池10の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。
セパレータ21に熱収縮材料が分散している場合には、セパレータ21の構成100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲で熱収縮材料が分散していることが好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、5質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。こうしたセパレータは、例えば、熱収縮材料を加えたセパレータ原料を用いて不織布や微多孔膜などに加工して得られたものとしてもよい。
リチウム二次電池10の非水電解液22としては、支持塩を溶媒に溶解した非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。
非水電解液22に熱収縮材料が分散している場合には、非水電解液22の構成100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲で熱収縮材料が分散していることが好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましく、5質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
以上詳述した本実施形態のリチウム二次電池10では、正極シート15、負極シート18、非水電解液22及びセパレータ21のうちの少なくとも1つに、熱収縮材料が分散している。この熱収縮材料によって、ハイレート充放電時の温度上昇時の、正極シート15内や負極シート18内における非水電解液22の流入出が調整されて、リチウムイオン濃度の偏りを抑制できると推察される。このため、ハイレート充放電時の抵抗増加をより抑制できると考えられる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば上述した実施形態では、正極シート15、負極シート18及びセパレータ21を積層して捲回した捲回型蓄電デバイスとして説明したが、特にこれに限定されず、例えば、捲回しない蓄電デバイスとしてもよい。また、上述した実施形態では、蓄電デバイスの形状は円筒型としたが、特にこれに限定されず、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
図3は、本発明の他の実施形態のリチウム二次電池30の一例を示す模式図である。図3に示すように、コイン型のリチウム二次電池30は、カップ形状の電池ケース33と、正極活物質を有しこの電池ケース33の内部に設けられた正極合材層34と、負極活物質を有し正極合材層34に対してセパレータ41を介して対向する位置に設けられた負極合材層37と、絶縁材により形成されたガスケット43と、電池ケース33の開口部に配設されガスケット43を介して電池ケース33を密封する封口板36と、を備えている。このリチウム二次電池30は、電池ケース33内にリチウムイオンを伝導する非水電解液42を収容する。このリチウム二次電池30においても、リチウム二次電池10と同様に、正極シート35、負極シート38、非水電解液42及びセパレータ41のうちの少なくとも1つに、熱収縮材料が分散している。
以下には、本発明の電池を具体的に作製した例について、実施例として説明する。ここでは、正極活物質にニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系材料を、負極活物質に黒鉛を、電解液に非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池を作製した。
[実施例1]
(熱収縮材料の合成)
負の熱膨張係数を有する熱収縮材料は、Science 272(1996)90、Solid State Communications 116(2000)129-132、特開2003-342075等の文献を参照して合成した。具体的には、まず、酸化ジルコニウム(純度99.9%)と酸化タングステン(純度99.9%)を、ジルコニウムとタングステンのモル比がZr:W=1:2となるように秤量し、これを十分混合した後、石英ガラス管に入れ、真空封管を行った。これを1050℃で加熱処理した後、白色粉末を取り出し、粉砕を行った。次に、白金坩堝で大気中において1200℃に加熱を行った後、室温まで急冷し、負の熱膨張係数を有するタングステン酸ジルコニウム(ZrW28)を合成した。この材料の熱膨張係数は、−8×10-6-1であった。また、レーザー回折式粒度分布測定器(日機装株式会社製マイクロトラックMT3300EX)によって求めたメディアン径D50は2.7μmであった。
(電池の作製)
正極活物質としてNCM系材料物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)を91質量部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業HS100)を6質量部、結着材としてポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業製KFポリマ)を3質量部用い、混合して正極合材を作製した。得られた正極合材をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてペーストとし、このペーストを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗工して乾燥させ、ロールプレスして正極シート電極を得た。正極シート電極は54mm×450mmとした。
負極活物質として黒鉛を98質量部、増粘材としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を1質量部、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を1質量部、上述のように得られた熱収縮材料を10質量部用い、混合して負極合材を作製した。得られた負極合材を水に分散させてペーストとし、このペーストを厚さ10μm銅箔の両面に塗工して乾燥させ、ロールプレスして負極シート電極を得た。負極シート電極は56mm×500mmとした。
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比でEC:DMC:EMC=30:40:30の割合となるように混合した非水溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1mol/Lになるように加えて、電解液を得た。
上記の正・負極シート電極を、湿式法で作製されたポリエチレン製で厚さ25μm、幅5mmのセパレータを介してロール状に捲回し、試験用18650型電池缶に挿入し、上記の電解液を注入した後に、トップキャップをかしめて密閉した。
(充放電試験)
作製した電池は、最初に活性化用充放電サイクル(コンディショニング)を実施し、その後、ハイレート劣化耐久試験を行い、ハイレート劣化の耐久性能を評価した。ハイレート劣化耐久試験の試験条件は以下のとおりである。評価はすべて20℃環境下で実施した。先ず電池をSOC60%に調整した。そして10Cのレートで10秒間放電して5秒間休止した。続いて2.5Cのレートで40秒間充電することによりSOCを60%に戻した後、5秒間の休止を入れた。この充放電サイクルを13000回行った。
(抵抗測定)
抵抗は、I−V抵抗で評価した。I−V抵抗の測定は、20℃の温度環境で、評価セルをSOC60%に調整し、10分間休止後、セルを30Cの定電流で10秒間放電した(CC放電)。ここで放電時の下限電圧は3.0Vとした。ここからV=IRの傾き(R=V/I)をI−V抵抗とした。この抵抗測定を上述したハイレート劣化耐久試験前後に行い、ハイレート劣化耐久試験前の内部抵抗R0[V]及びハイレート劣化耐久試験後の内部抵抗R[V]を導出し、R×100/R0 で表される内部抵抗上昇率を導出した。
[実施例2]
実施例2では、負極合材ではなく電解液が熱収縮材料を備えたものとした。具体的には、以下の2点以外は実施例1と同様とした。負極活物質として黒鉛を98質量部、増粘材としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を1質量部、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を1質量部用い、混合して負極合材を作製した点。実施例1の電解液100質量部に対して、さらに、熱収縮材料を10質量部混合して電解液を作製した点。
なお、実施例2で用いた熱収縮材料は、実施例1と同じタングステン酸ジルコニウム(ZrW28)であり、熱膨張係数は、−8×10-6-1であった。この実施例2の熱収縮材料は、粉砕により微粒子化し、レーザー回折法による粒度分布測定によって求めたメディアン径D50は0.8μm以下であった。
[比較例1]
比較例1では、熱収縮材料を用いなかった。具体的には、以下の1点以外は実施例1と同様とした。負極活物質として黒鉛を98質量部、増粘材としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を1質量部、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を1質量部用い、混合して負極合材を作製した点。
[実験結果]
負の膨張係数を有する材料を負極に備えた実施例1では、抵抗上昇率は121%であった。また、熱収縮材料を電解液に備えた実施例2では、抵抗上昇率は134%であった。一方、熱収縮材料を用いなかった比較例1では、抵抗上昇率は218%と非常に高かった。以上より、熱収縮材料を用いることで、抵抗上昇率をより抑制できる、すなわち、内部抵抗の増加をより抑制できることがわかった。
こうした効果が得られた理由は、以下のように推察された。比較例1では、正極、負極の電極設計の違いから生じる細孔径分布の違い等により、正極/負極内の電解液の流れ易さ(透過係数)に違いが生じ、負極の方が正極よりも電解液がより流れ易い傾向になっていたと考えられる。そのため、ハイレート充放電時の発熱に伴って電極から電解液が流出する場合、負極から流出する電解液が正極から流出する電解液よりも多くなる傾向となったと考えられる。ハイレート放電時においては電解液の流れやすい負極側から、具体的には捲回軸方向の端部(以下単に端部と称する)から、塩濃度の濃い電解液が多く流出し、結果として負極内の平均塩濃度の低下と、負極面内方向での塩濃度分布(中央部で塩濃度が低下し、端部で上昇)を引き起こしたと考えられる。逆にハイレート放電時においては電解液の流れやすい負極側の端部から、塩濃度の薄い電解液が多く流出し、結果として負極内の平均塩濃度の上昇と、負極の電極面内方向での塩濃度分布(中央部で塩濃度が上昇し、端部で低下)を引き起こしたと考えられる。この平均塩濃度の変化と塩濃度分布の形成により、内部抵抗が上昇したと考えられる。これに対して、実施例1,2では、電極内や電解液内に熱収縮材料を含有させることにより、温度上昇時の電解液の押し出しを緩和し、ハイレート充放電時の内部抵抗増加を抑制することができたと推察された。
なお、負極や電解液に熱収縮材料を用いることで内部抵抗の増加を抑制できたことから、正極やセパレータに熱収縮材料を用いた場合にも同様の効果が得られると推察された。
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本発明は、電池産業の分野等に利用可能である。
10 リチウム二次電池、13 集電体、14 正極合材層、15 正極シート、16 集電体、17 負極合材層、18 負極シート、21 セパレータ、22 非水電解液、23 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子、30 リチウム二次電池、33 電池ケース、34 正極合材層、35 正極、36 封口板、37 負極合材層、38 負極、41 セパレータ、42 非水電解液、43 ガスケット。

Claims (6)

  1. 正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する非水電解液と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、を備え、
    前記正極、前記負極、前記非水電解液及び前記セパレータのうちの少なくとも1つには負の熱膨張係数を有する熱収縮材料が分散している、
    蓄電デバイス。
  2. 前記正極、前記負極、前記非水電解液及び前記セパレータのうちの少なくとも1つには、その構成100質量部に対して1質量部以上50質量部以下の範囲で前記熱収縮材料が分散している、請求項1に記載の蓄電デバイス。
  3. 前記熱収縮材料は、レーザー回折法による粒度分布測定によって求めたメディアン径D50が0.05μm以上100μm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
  4. 前記熱収縮材料は、熱膨張係数が、−1×10--3-1以上−1×10-6-1以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  5. 前記熱収縮材料はタングステン酸ジルコニウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  6. リチウム二次電池である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
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