JP2018085213A - リチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウム二次電池の低温出力特性を向上する。【解決手段】リチウム二次電池10は、正極シート13と、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料の負極活物質とカルボン酸アルカリ塩とを含む負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解液20とを備えたものである。【選択図】図1
Description
本発明は、リチウム二次電池に関する。
従来、リチウム二次電池としては、炭素質材料を負極活物質とし、非水電解液に難溶であるホウ素化合物を負極に含むものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このリチウム二次電池では、負極活物質での発熱反応をより抑制することができる。また、リチウム二次電池としては、有機酸のリチウム塩であるギ酸リチウムや酢酸リチウムを電解質に用いたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このリチウム二次電池では、充放電の繰り返しによる容量劣化を阻止することができるとしている。
しかしながら、上述の特許文献1の電池では、負極における発熱性は考慮されているが、例えば−30℃などの低温での出力特性については、十分考慮はされていなかった。また、上述の特許文献2の電池では、三フッ化ホウ素や三フッ化ホウ素錯体を用いて、有機酸リチウム塩を溶解させることにより電解質に用いることは考慮されているが、低温での出力特性については十分考慮されていなかった。
本明細書で開示する発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、低温出力特性を高めることができるリチウム二次電池を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、固体であるカルボン酸アルカリ塩を炭素質材料を負極活物質とする負極に入れ込むと、低温出力特性をより高めることができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示するリチウム二次電池は、
正極と、
リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料の負極活物質とカルボン酸アルカリ塩とを含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解液と、
を備えたものである。
正極と、
リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料の負極活物質とカルボン酸アルカリ塩とを含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解液と、
を備えたものである。
このリチウム二次電池では、低温出力特性を高めることができる。このような効果が得られる理由は、例えば、充放電に伴い負極でカルボン酸アルカリ塩が分解被膜を形成するためであると推察される。
本実施形態で説明するリチウム二次電池は、正極と、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料の負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解液とを備えている。
この正極は、リチウムイオンを吸蔵放出しうる正極活物質を含むものとしてもよい。この正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMncO2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiV2O3などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
正極合材を集電体に塗布する塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
このリチウム二次電池の負極は、例えば炭素質材料である負極活物質と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。炭素質材料としては、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり支持塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時における不可逆容量を少なくできるため、好ましい。また、負極に用いられる結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
このリチウム二次電池の負極には、カルボン酸アルカリ塩が含まれている。このカルボン酸アルカリ塩は、例えば、リチウム二次電池の作動温度範囲(50℃以下など)において固体であるものが挙げられる。また、このカルボン酸アルカリ塩は、非水電解液の有機溶媒に難溶性を示すものが挙げられる。ここで、「非水電解液に対して難溶である」とは、非水電解液1mLに対して、0.05mmolを溶解させたときに、この化合物が溶け残ることをいうものとする。また、このカルボン酸アルカリ塩は、炭素数6以下のカルボン酸塩としてもよい。また、アルカリカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。このようなカルボン酸アルカリ塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、ギ酸ナトリウム及びギ酸カリウムのうち1以上などが挙げられる。このカルボン酸アルカリ塩は、複数種を用いることがより好ましい。この複数種のカルボン酸アルカリ塩としては、例えば、カルボン酸が異種でありアルカリカチオンが同種であるものや、カルボン酸が同種でありアルカリカチオンが異種であるもの、カルボン酸及びアルカリカチオンが共に異種であるものなどが挙げられる。このうち、カルボン酸が異種でありアルカリカチオンが同種であるものとしてもよい。例えば、酢酸リチウムとプロピオン酸リチウムとの組み合わせが良好である。
このカルボン酸アルカリ塩の配合量は、負極活物質及びカルボン酸アルカリ塩の全体に対するカルボン酸アルカリ塩の質量割合が0.05質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましい。この範囲では、低温出力特性をより好適に向上することができる。このカルボン酸アルカリ塩の質量割合は、0.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。また、カルボン酸アルカリ塩の質量割合は、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが更に好ましい。
このリチウム二次電池の非水電解液は、有機系溶媒に支持塩を含むものとしてもよい。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
この非水電解液に含まれている支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。
この非水電解液には、添加化合物が含まれているものとしてもよい。この添加化合物は、例えば、負極表面に被膜を形成するものとしてもよい。この添加化合物は、例えば、シュウ酸イオンがホウ素に結合したオキサラト構造を有するホウ素化合物であるものとしてもよい。このホウ素化合物が非水電解液に含まれていると、例えば、負極の表面上に好適な被膜が形成され、カルボン酸アルカリ塩との相乗効果によって、低温出力特性を更に向上することができる。この添加化合物は、例えば、式(1)、(2)に示すBFO及びBOBから選ばれる1種以上をアニオンとして含むホウ素化合物であるものとしてもよい。このホウ素化合物のカチオンは、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられるが、リチウムであることが好ましい。このホウ素化合物は、リチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)であることが好ましい。この非水電解液は、添加化合物を0.4質量%以上1.2質量%以下の範囲で含むことが好ましく、0.5質量%以上1.0質量%以下の範囲で含むことがより好ましい。添加化合物がこのような範囲で含まれると、低温出力特性を相乗的に向上することができる。
このリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
このリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本明細書で開示するリチウム二次電池10の一例を示す模式図である。このリチウム二次電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。このリチウム二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。このリチウム二次電池10において、負極シート18には、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料の負極活物質とカルボン酸アルカリ塩とが含まれている。
以上詳述したリチウム二次電池では、負極に含まれるカルボン酸アルカリ塩の効果により、低温出力特性を向上することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、負極に含まれるカルボン酸アルカリ塩によって負極表面に好適な被膜が形成され、その比較による効果により、例えば、−30℃などの低温における出力特性が向上するものと推察される。このカルボン酸アルカリ塩は、非水電解液に難溶であることもあり、負極に直接混合することによって、低温出力特性の向上効果が得られるものと推察される。
なお、本明細書で開示する発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本明細書で開示する発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば上述した実施形態では、正極は、リチウムイオンを吸蔵放出するリチウムイオン二次電池を主として説明したが、正極は特にこれに限られない。負極に含まれるカルボン酸アルカリ塩は、正極に影響せず、負極に作用するためである。したがって、このリチウム二次電池は、リチウムイオン二次電池のほか、電気二重層キャパシタ、電気化学キャパシタなど、各種蓄電デバイスなどとすることができる。
以下には、本明細書で開示するリチウム二次電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例2〜23、25、26、28、29、31、32、34、35が実施例に相当し、実験例1、21、24、27、30、33、36が比較例に相当する。
[実験例1]
正極活物質としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を用い、活物質を85質量%、導電材としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状の正極合材とした。この正極合材を20μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて正極シートとした。この正極シートをロールプレスに通して高密度化させ、52mm幅×450mm長さの形状に切り出して正極電極とした。負極活物質として天然黒鉛を用い、活物質を95質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、正極と同様にスラリー状の負極合材とした。この負極合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて負極シートとした。この負極シートをロールプレスに通して高密度化させ、54mm幅×500mm長さの形状に切り出して負極電極とした。上記の正極シートと負極シートとを56m幅で25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状電極体を作製した。この電極体を18650型円筒ケースに挿入し、非水電解液を含侵させたのちに密閉して円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。得られたセルを実験例1とした。
正極活物質としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を用い、活物質を85質量%、導電材としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状の正極合材とした。この正極合材を20μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて正極シートとした。この正極シートをロールプレスに通して高密度化させ、52mm幅×450mm長さの形状に切り出して正極電極とした。負極活物質として天然黒鉛を用い、活物質を95質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、正極と同様にスラリー状の負極合材とした。この負極合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて負極シートとした。この負極シートをロールプレスに通して高密度化させ、54mm幅×500mm長さの形状に切り出して負極電極とした。上記の正極シートと負極シートとを56m幅で25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状電極体を作製した。この電極体を18650型円筒ケースに挿入し、非水電解液を含侵させたのちに密閉して円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30/40/30の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。得られたセルを実験例1とした。
[実験例2〜8]
実験例1で作製したセルの負極中に含まれる活物質と結着材の混合物の質量全体に対して、カルボン酸アルカリ塩として2質量%の酢酸リチウムをスラリー状の負極合材に添加して電極、電池を作製した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例2とした。実験例2における酢酸リチウムの添加量を10質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例3とした。実験例2における酢酸リチウムの添加量を15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例4とした。
同じである。実験例2における酢酸リチウムを酢酸ナトリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例5、6とした。実験例2における酢酸リチウムを酢酸カリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例7、8とした。なお、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムは、セルの使用温度範囲(40℃以下)で固体であり、有機溶媒に難溶である。
実験例1で作製したセルの負極中に含まれる活物質と結着材の混合物の質量全体に対して、カルボン酸アルカリ塩として2質量%の酢酸リチウムをスラリー状の負極合材に添加して電極、電池を作製した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例2とした。実験例2における酢酸リチウムの添加量を10質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例3とした。実験例2における酢酸リチウムの添加量を15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例4とした。
同じである。実験例2における酢酸リチウムを酢酸ナトリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例5、6とした。実験例2における酢酸リチウムを酢酸カリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例7、8とした。なお、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムは、セルの使用温度範囲(40℃以下)で固体であり、有機溶媒に難溶である。
[実験例9〜15]
実験例2における酢酸リチウムをプロピオン酸リチウムとし、その添加量を2質量%、10質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例9〜11とした。実験例2における酢酸リチウムをプロピオン酸ナトリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例12、13とした。実験例2における酢酸リチウムをプロピオン酸カリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例14、15とした。なお、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム及びプロピオン酸カリウムは、セルの使用温度範囲(40℃以下)で固体であり、有機溶媒に難溶である。
実験例2における酢酸リチウムをプロピオン酸リチウムとし、その添加量を2質量%、10質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例9〜11とした。実験例2における酢酸リチウムをプロピオン酸ナトリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例12、13とした。実験例2における酢酸リチウムをプロピオン酸カリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例14、15とした。なお、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム及びプロピオン酸カリウムは、セルの使用温度範囲(40℃以下)で固体であり、有機溶媒に難溶である。
[実験例16〜19]
実験例2における酢酸リチウムをギ酸ナトリウムとし、その添加量を2質量%、10質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例16、17とした。実験例2における酢酸リチウムをギ酸カリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例18、19とした。なお、ギ酸ナトリウム及びギ酸カリウムは、セルの使用温度範囲(40℃以下)で固体であり、有機溶媒に難溶である。
実験例2における酢酸リチウムをギ酸ナトリウムとし、その添加量を2質量%、10質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例16、17とした。実験例2における酢酸リチウムをギ酸カリウムとし、その添加量を2質量%、15質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例18、19とした。なお、ギ酸ナトリウム及びギ酸カリウムは、セルの使用温度範囲(40℃以下)で固体であり、有機溶媒に難溶である。
[実験例20]
実験例2における酢酸リチウムの2質量%を、酢酸リチウムの5質量%とプロピオン酸リチウムの5質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例20とした。
実験例2における酢酸リチウムの2質量%を、酢酸リチウムの5質量%とプロピオン酸リチウムの5質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例20とした。
[実験例21〜23]
実験例3で作製したセルの非水電解液に化合物(1)に示すアニオンを含むリチウムビスオキサラトボレート(LiBOB;LiBC4O8)を0.5質量%、1.0質量%を添加した以外は実験例3と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例21、22とした。実験例10で作製したセルの非水電解液にLiBOBを0.5質量%を添加した以外は実験例10と同様の工程を経て得られたセルを実験例23とした。
実験例3で作製したセルの非水電解液に化合物(1)に示すアニオンを含むリチウムビスオキサラトボレート(LiBOB;LiBC4O8)を0.5質量%、1.0質量%を添加した以外は実験例3と同様の工程を経て得られたセルをそれぞれ実験例21、22とした。実験例10で作製したセルの非水電解液にLiBOBを0.5質量%を添加した以外は実験例10と同様の工程を経て得られたセルを実験例23とした。
[実験例24〜26]
実験例1で作製したセルの負極活物質に人造黒鉛を用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例24とした。実験例2で作製したセルの負極活物質に人造黒鉛を用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例25とした。実験例4で作製したセルの負極活物質に人造黒鉛を用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例26とした。
実験例1で作製したセルの負極活物質に人造黒鉛を用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例24とした。実験例2で作製したセルの負極活物質に人造黒鉛を用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例25とした。実験例4で作製したセルの負極活物質に人造黒鉛を用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例26とした。
[実験例27〜29]
実験例1で作製したセルの負極活物質にソフトカーボンを用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例27とした。実験例2で作製したセルの負極活物質にソフトカーボンを用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例28とした。実験例4で作製したセルの負極活物質にソフトカーボンを用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例29とした。
実験例1で作製したセルの負極活物質にソフトカーボンを用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例27とした。実験例2で作製したセルの負極活物質にソフトカーボンを用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例28とした。実験例4で作製したセルの負極活物質にソフトカーボンを用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例29とした。
[実験例30〜32]
実験例1で作製したセルの正極活物質にLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例30とした。実験例2で作製したセルの正極活物質にLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例31とした。実験例4で作製したセルの正極活物質にLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例32とした。
実験例1で作製したセルの正極活物質にLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例30とした。実験例2で作製したセルの正極活物質にLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例31とした。実験例4で作製したセルの正極活物質にLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例32とした。
[実験例33〜35]
実験例1で作製したセルの正極活物質にLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例33とした。実験例2で作製したセルの正極活物質にLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例34とした。実験例4で作製したセルの正極活物質にLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例35とした。
実験例1で作製したセルの正極活物質にLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例33とした。実験例2で作製したセルの正極活物質にLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いた以外の条件は実験例2と同様の工程を経て得られたセルを実験例34とした。実験例4で作製したセルの正極活物質にLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を用いた以外の条件は実験例4と同様の工程を経て得られたセルを実験例35とした。
[実験例36]
実験例1で作製したセルの非水電解液にLiBOBを1.0質量%を添加した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例36とした。
実験例1で作製したセルの非水電解液にLiBOBを1.0質量%を添加した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセルを実験例36とした。
(セル低温出力評価)
低温出力評価は、上記作製した実験例1〜36に対して、以下の条件で行った。セルを25℃にて電池容量の60%(SOC=60%)に調整したあと、温度を−30℃に調整し、種々の電流値で電流を流したときの2秒後の電池電圧を測定した。流した電流と電圧を直線補間し、2秒後の電圧が3.0Vになるときの電流値を求め、その電流と電圧の積を出力特性とした。低温出力特性は、各実験例において、カルボン酸アルカリ塩を添加しないセル(実験例1、24、27、30、33)の測定結果を「1.00」に規格化した値を求め、これにより評価した。
低温出力評価は、上記作製した実験例1〜36に対して、以下の条件で行った。セルを25℃にて電池容量の60%(SOC=60%)に調整したあと、温度を−30℃に調整し、種々の電流値で電流を流したときの2秒後の電池電圧を測定した。流した電流と電圧を直線補間し、2秒後の電圧が3.0Vになるときの電流値を求め、その電流と電圧の積を出力特性とした。低温出力特性は、各実験例において、カルボン酸アルカリ塩を添加しないセル(実験例1、24、27、30、33)の測定結果を「1.00」に規格化した値を求め、これにより評価した。
(結果と考察)
表1に実験例1〜20の負極組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表1に示すように、実験例1に比べて、負極にカルボン酸アルカリ塩を添加することで低温出力特性が向上することがわかった。酢酸塩、プロピオン酸塩の添加が好ましく、特にリチウム塩の低温出力特性が比較的高いことが分かった。また、実験例20に示すように、カルボン酸アルカリ塩として酢酸リチウムとプロピオン酸リチウムの2種類添加することで、さらに優れた特性を示すことが分かった。
表1に実験例1〜20の負極組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表1に示すように、実験例1に比べて、負極にカルボン酸アルカリ塩を添加することで低温出力特性が向上することがわかった。酢酸塩、プロピオン酸塩の添加が好ましく、特にリチウム塩の低温出力特性が比較的高いことが分かった。また、実験例20に示すように、カルボン酸アルカリ塩として酢酸リチウムとプロピオン酸リチウムの2種類添加することで、さらに優れた特性を示すことが分かった。
表2に実験例21〜23の負極組成、電解液組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表2に示すように、負極にカルボン酸アルカリ塩を添加した電池に対して、更に添加化合物(LiBOB)を非水電解液へ添加することにより、低温出力特性が更に向上することが分かった。非水電解液に添加化合物(LiBOB)が0.4質量%〜1.2質量%の範囲で含まれることによって、低温出力特性の向上効果が相乗的に現れるものと推察された。
表3に実験例24〜26の負極組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表4に実験例27〜29の負極組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表3、4に示すように、負極活物質が人造黒鉛やソフトカーボンの場合であっても、上記と同様に、負極にカルボン酸アルカリ塩を添加することで低温出力特性が向上することがわかった。即ち、負極へのカルボン酸アルカリ塩の添加効果は、負極活物質が炭素質材料であるときに有効であることが分かった。
表5に実験例30〜32の正極組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表6に実験例33〜35の正極組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表5、6に示すように、正極活物質がLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2やLiNi0.8Co0.15Al0.05O2の場合であっても、上記と同様に、負極にカルボン酸アルカリ塩を添加することで低温出力特性が向上することがわかった。即ち、負極へのカルボン酸アルカリ塩の添加効果は、正極活物質の種類に影響されないことが分かった。
表7に実験例36の負極組成及び低温出力特性の測定結果をまとめた。表7に示すように、負極にカルボン酸アルカリ塩を添加していないセルに対して添加化合物(LiBOB)を添加した場合、低温出力特性は向上するものの、その特性向上は限定的であることが分かった。負極にカルボン酸アルカリ塩を添加したセルの非水電解液に対して添加化合物(LiBOB)を添加することにより、低温出力特性の向上効果が顕著に現れることがわかった。
なお、本明細書で開示する発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本明細書で開示する発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本明細書で開示する発明は、二次電池の技術分野に利用可能である。
10 リチウム二次電池、11 集電体、12 正極活物質、13 正極シート、14 集電体、17 負極活物質、18 負極シート、19 セパレータ、20 非水電解液、22 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子。
Claims (5)
- 正極と、
リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質材料の負極活物質とカルボン酸アルカリ塩とを含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解液と、
を備えたリチウム二次電池。 - 前記負極は、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、ギ酸ナトリウム及びギ酸カリウムのうち1以上を前記カルボン酸アルカリ塩として含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
- 前記負極は、前記負極活物質及び前記カルボン酸アルカリ塩の全体に対する前記カルボン酸アルカリ塩の質量割合が、0.05質量%以上20質量%以下の範囲である、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
- 前記非水電解液は、式(1)、(2)に示すBFO及びBOBから選ばれる1種以上をアニオンとして含む添加化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
- 前記非水電解液は、前記添加化合物を0.4質量%以上1.2質量%以下の範囲で含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
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-
2016
- 2016-11-22 JP JP2016227149A patent/JP2018085213A/ja active Pending
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