JP2016009532A - リチウムイオン電池 - Google Patents

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勇一 伊藤
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Abstract

【課題】リチウムイオン電池の熱的安定性をより向上する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池は、リチウムを吸蔵、放出する正極活物質を有する正極と、リチウムを吸蔵、放出する負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、溶媒と支持塩とLiPF424及びLiPF2(C242のうち少なくとも1以上の添加剤とを含み前記正極と前記負極との間に介在しリチウムを伝導する非水電解液と、を備えている。このリチウムイオン電池において、正極の単位面積あたりの正極空隙体積A(cm3)、セパレータの単位面積あたりのセパレータ空隙体積B(cm3)及び負極の単位面積あたりの負極空隙体積C(cm3)が、1.0≦(A+B)/C≦1.6を満たすものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン電池に関する。
従来、この種のリチウムイオン電池としては、リチウムと遷移金属とを含有する酸化物を正極活物質の主成分として含有する正極と、炭素材料を負極活物質として含有する負極と、有機溶媒に電解質を溶解してなる非水電解液とを有するものが知られている。このようなリチウムイオン電池において、非水電解液に、添加剤としてLiPF424やLiPF2(C242などが添加されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電池では、高温での充放電サイクル特性に優れたものを、低コストで簡単に作製することができる。
特開2005−32716号公報
しかしながら、上述の特許文献1のリチウムイオン電池では、充放電サイクル特性の向上については検討されていたが、熱的安定性の向上は、まだ十分に検討されていなかった。リチウムイオン電池は、自動車の駆動用など様々な分野に用いられるため、熱的安定性など、安全性をより高めることが望まれていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、熱的安定性をより向上することができるリチウムイオン電池を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、非水電解液に添加剤を添加し、正極、負極及びセパレータの空隙をより好適な範囲に構成するものとすると、熱的安定性をより向上することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のリチウムイオン電池は、
リチウムを吸蔵、放出する正極活物質を有する正極と、
リチウムを吸蔵、放出する負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、
溶媒と、支持塩と、LiPF424及びLiPF2(C242のうち少なくとも1以上の添加剤とを含み、前記正極と前記負極との間に介在しリチウムを伝導する非水電解液と、を備え、
前記正極の単位面積あたりの正極空隙体積A(cm3)、前記セパレータの単位面積あたりのセパレータ空隙体積B(cm3)及び前記負極の単位面積あたりの負極空隙体積C(cm3)が、1.0≦(A+B)/C≦1.6を満たすものである。
本発明のリチウムイオン電池は、リチウムイオン電池の熱的安定性をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、リチウムイオン電池では、初回充電時に負極で非水電解液の溶媒(エチレンカーボネート:ECなど)や支持塩(LiPF6など)、更には添加剤(LiPF424やLiPF2(C242など)が分解して負極上に被膜を形成することが知られている。この溶媒及び支持塩の分解と、添加剤の分解とは異なる電位で起き、初回充電時には、添加剤の分解が先に起きる。添加剤は、電解液に少量加えられるものであり、充電の初期に負極近傍にある添加剤が分解して被膜になったあと、正極やセパレータに存在する添加剤が負極に至って分解することが考えられる。このように、添加剤が負極に移動して分解する際には、充電が進んで負極の電位が低くなっており、添加剤は溶媒と共に分解し、有機質が多い分解物(被膜)が生成するものと推察される。添加剤が単独で分解した分解物は、有機質の少ない化合物となるため、熱安定性が高く短絡時などの発熱が小さいと考えられる。一方、添加剤が溶媒や支持塩と共に分解した分解物は、有機質を多く含むため熱安定性が低く、短絡時などの発熱が大きいものと推測される。本発明では、正極空隙体積A、セパレータ空隙体積B及び負極空隙体積Cが、1.0≦(A+B)/C≦1.6を満たすものとする。例えば、(A+B)/Cが1.0よりも小さいとき、負極の空隙体積が大きく、添加剤が単独で分解した分解物が多くなる。一方、(A+B)/Cが1.6よりも大きいとき、負極の空隙体積が小さく、添加剤と溶媒とが共に分解した分解物が多くなる。即ち、本発明では、添加剤が単独で分解した成分と、添加剤が溶媒などと共に分解した成分とのバランスを良好なものとすることにより、良好な被膜を得ることができ、例えば、短絡時など発熱が生じる際に、この被膜の効果により、その発熱をより抑制できるものと考えられる。
本発明のリチウムイオン電池10の一例を示す模式図。 釘刺し試験の説明図。
本発明のリチウムイオン電池は、リチウムを吸蔵、放出する正極活物質を有する正極と、リチウムを吸蔵、放出する負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、溶媒と支持塩とLiPF424及びLiPF2(C242のうち少なくとも1以上の添加剤とを含み正極と負極との間に介在しリチウムを伝導する非水電解液とを備えている。
本発明のリチウムイオン電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、正極活物質は、基本組成式Lia(NiXCoYMnZ)O2(但し、0<a≦1.2、0≦X≦1.0、0≦Y≦1.0、0≦Z≦1.0、X+Y+Z=1.0を満たす)としてもよい。このとき、正極活物質は、基本組成式をLi(1-x)Ni1/3Co1/3Mn1/32(−0.2≦x<1など、以下同じ)とするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物などを用いることができる。これらのうち、LiaNi1/3Co1/3Mn1/32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、構成する元素の比率がずれたものをも含み、更に他の元素を含んでもよい趣旨である。導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本発明のリチウムイオン電池の正極は、正極合材層の単位面積あたりの形成量としての正極目付けが3.0mg/cm2以上8.0mg/cm2以下であることが好ましく、4.3mg/cm2以上7.2mg/cm2以下であることがより好ましく、5.0mg/cm2以上6.0mg/cm2以下であることが更に好ましい。また、正極合材層の密度は、1.9g/cm3以上2.6g/cm3以下であることが好ましく、2.1g/cm3以上2.3g/cm3以下であることがより好ましい。
本発明のリチウムイオン電池の負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素質材料は、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり支持塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時における不可逆容量を少なくできるため、好ましい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。負極活物質としては、このうち、炭素質材料が安全性の面から見て好ましい。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤、増粘剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
本発明のリチウムイオン電池の負極は、負極合材層の単位面積あたりの形成量としての負極目付けが3.0mg/cm2以上6.0mg/cm2以下であることが好ましく、3.5mg/cm2以上4.8mg/cm2以下であることがより好ましく、4.0mg/cm2以上4.5mg/cm2以下であることが更に好ましい。また、負極合材層の密度は、0.9g/cm3以上1.3g/cm3以下であることが好ましく、1.05g/cm3以上1.2g/cm3以下であることがより好ましい。
本発明の非水電解液は、溶媒と、支持塩と、添加剤とを含んでいる。本発明の非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類を含むことが好ましく、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせがより好ましい。また、環状カーボネートのうち、例えば、エチレンカーボネートがより好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。また、LiPF6がより好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
添加剤は、化学式(1)に示すPF424 -(PTFO)及び化学式(2)に示すPF2(C242 -(PFO)のうち少なくとも1以上のアニオンを含む。これらのアニオンは、負極活物質の表面に安定な被膜を形成しやすく好ましい。この添加剤は、カチオンとしてリチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を含むものとしてもよく、カチオンがリチウムであるLiPF424(LPTFO)やLiPF2(C242(LPFO)とすることが好ましい。この添加剤は、非水電解液に0.01mol/L以上0.075mol/L以下の範囲で含まれることが好ましく、0.02mol/L以上0.06mol/L以下の範囲で含まれることがより好ましい。
Figure 2016009532
本発明のリチウムイオン電池は、正極の単位面積(1cm2)あたりの正極空隙体積A(cm3)、セパレータの単位面積(1cm2)あたりのセパレータ空隙体積B(cm3)及び負極の単位面積(1cm2)あたりの負極空隙体積C(cm3)が、1.0≦(A+B)/C≦1.6を満たすものである。この範囲では、リチウムイオン電池の熱安定性をより高めることができる。ここで、1.2≦(A+B)/Cを満たすことがより好ましく、(A+B)/C≦1.5を満たすことがより好ましい。単位面積あたりの正極空隙体積Aは、0.0009cm3以上0.0016cm3以下の範囲であることが好ましく、0.0010cm3以上0.0015cm3以下の範囲であることがより好ましい。単位面積あたりのセパレータ空隙体積Bは、0.001cm3以上0.0013cm3以下の範囲であることが好ましい。単位面積あたりの負極空隙体積Cは、0.0014cm3が以上0.0018cm3以下の範囲であることが好ましく、0.0010cm3以上0.0016cm3以下の範囲であることがより好ましい。
正極の単位面積あたりの正極空隙体積Aは、例えば、以下によって求めるものとする。ここでは、正極合材には、活物質、導電材、結着材が入っているものとする。なお、他の成分が含まれる場合は、その成分の正極合材中の質量比と真密度とを用いて、正極空孔率からその成分が占める割合を差し引けばよい。また、各パラメータを、正極合材の膜厚Hp(μm)、正極合材目付けIp(mg/cm2)、正極合材密度Jp(g/cm3)、正極空孔率Kp(−)、正極合材中の正極活物質の質量比Lp(%)、正極活物質の真密度Mp(g/cm3)、正極合材中の導電材の質量比Np(%)、導電材の真密度Op(g/cm3)、正極合材中の結着材の質量比Pp(%)、結着材の真密度Qp(g/cm3)とする。
膜厚Hp(μm)=Ip/Jp×10
正極空孔率Kp(−)=1−(Jp×Lp/100/Mp)−(Jp×Np/100/Op)−(Jp×Pp/100/Qp)
単位面積あたりの正極空隙体積A(cm3)=Hp×Kp/10000
負極の単位面積あたりの負極空隙体積Cは、例えば、以下によって求めるものとする。ここでは、負極合材には、活物質、結着材、増粘剤が入っているものとする。なお、他の成分が含まれる場合は、その成分の負極合材中の質量比と真密度とを用いて、負極空孔率からその成分が占める割合を差し引けばよい。また、各パラメータを、負極合材の膜厚Hn(μm)、負極合材目付けIn(mg/cm2)、負極合材密度Jn(g/cm3)、負極空孔率Kn(−)、負極合材中の負極活物質の質量比Ln(%)、負極活物質の真密度Mn(g/cm3)、負極合材中の増粘剤の質量比Nn(%)、増粘剤の真密度On(g/cm3)、負極合材中の結着材の質量比Pn(%)、結着材の真密度Qn(g/cm3)とする。
膜厚Hn(μm)=In/Jn×10
負極空孔率Kn(−)=1−(Jn×Ln/100/Mn)−(Jn×Nn/100/On)−(Jn×Pn/100/Qn)
単位面積あたりの負極空隙体積C(cm3)=Hn×Kn/10000
セパレータの単位面積あたりのセパレータ空隙体積Bは、例えば、以下によって求めるものとする。各パラメータを、セパレータの膜厚Hs(μm)、セパレータの空孔率Ks(−)とする。
単位面積あたりのセパレータ空隙体積B(cm3)=Hs×Ks/10000
本発明のリチウムイオン電池は、初回充電レートが1.5C以上10C以下であることが好ましい。初回充電レートがこの範囲であれば、例えば、添加物単独の分解物による被膜と、添加物と溶媒との分解物による被膜とが良好な範囲で負極活物質上に形成することができる。この初回充電レートは、8C以下であることがより好ましく、5C以下であることがより好ましい。
本発明のリチウムイオン電池は、負極と正極との間にセパレータを備えている。セパレータとしては、リチウムイオン電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明のリチウムイオン電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明のリチウムイオン電池10の一例を示す模式図である。このリチウムイオン電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。このリチウムイオン電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。
以上詳述した本発明のリチウムイオン電池では、リチウムイオン電池の熱的安定性をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、正極空隙体積A、セパレータ空隙体積B及び負極空隙体積Cが1.0≦(A+B)/C≦1.6を満たすため、初回充電時に形成される被膜が良好なものとなるからであると推察される。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には本発明のリチウムイオン電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。
[実験例1]
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/32を用いた。この正極活物質を90質量%、導電材としてカーボンブラックを8質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを2質量%混合し、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状正極合材とした。スラリー状正極合材を15μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に塗布、乾燥させた後、ロールプレスで高密度化し、所定の形状に切り出したものを正極シートとした。正極の片面の合材目付けは5mg/cm2、合材密度は2.1g/cm3に調整した。負極活物質としては、黒鉛を用いた。黒鉛を98質量%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を1質量%、結着材としてスチレンブタジエンゴム(SBR)を1質量%混合し、分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状負極合材とした。スラリー状負極合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に塗布、乾燥させた後、ロールプレスで高密度化し、所定の形状に切り出したものを負極シートとした。負極の片面の合材目付けは4mg/cm2、合材密度は1.1g/cm3に調整した。上記の正極シートを54mm幅、負極シートを56mm幅に切り出し、25μm厚(空孔率48%)のポリプロピレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状電極体を作製した.この電極体を18650型円筒ケースに挿入し,非水電解液を含侵させた後に密閉して円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。電池容量は約350mAhに設計した。非水電解液には,エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で3:4:3に混合した溶媒に、1.1mol/Lの濃度でLiPF6を、添加剤として0.05mol/Lの濃度でLiPF2(C242(LPFO)を溶解した電解液を用いた。作製した電池は、1.5C(525mA)の電流で上限4.1V、下限3.0Vとして充放電を5サイクル行った。同じ要領で負極合材目付けを3〜4.5mg/cm2に調整した電池を4種類作製した(電池D1〜D4)。
[実験例2]
1.0〜1.3g/cm3の範囲で異なる負極合材密度とし、それ以外は実験例1と同様の方法で4種類の電池を作製した(電池E1〜E4)。
[実験例3]
4〜7mg/cm2の範囲で異なる正極合材目付けとし、それ以外は実験例1と同様の方法で4種類の電池を作製した(電池F1〜F4)。
[実験例4]
1.9〜2.5g/cm3の範囲で異なる正極合材密度とし、それ以外は実験例1と同様の方法で4種類の電池を作製した(電池G1〜G4)。
(空隙体積計算方法)
正極の空隙体積は以下の数式(1)〜(3)により算出した。
片面膜厚(μm)=(合材目付けmg/cm2)/(合材密度g/cm3)×10…(1)
空孔率(−)=1−(合材密度×活物質質量比/100/活物質真密度)−(合材密度×導電材質量比/100/導電材真密度)−(合材密度×結着材質量比/100/結着材真密度)…(2)
単位面積(1cm2)あたり片面空隙体積(cm3)=空孔率(−)×片面膜厚(μm)/10000…(3)
負極の空隙体積は以下の数式(4)〜(6)により算出した。
片面膜厚(μm)=(合材目付けmg/cm2)/(合材密度g/cm3)×10…(4)
空孔率(−)=1−(合材密度×活物質質量比/100/活物質真密度)−(合材密度×増粘剤重量比/100/増粘剤真密度)−(合材密度×結着材質量比/100/結着材真密度)…(5)
単位面積(1cm2)あたり片面空隙体積(cm3)=空孔率(−)×片面膜厚(μm)/10000…(6)
セパレータの空隙体積は以下の数式(7)により算出した。
単位面積(1cm2)あたりセパレータ空隙体積(cm3)=空孔率(−)×膜厚(μm)/10000…(7)
(釘刺し試験)
上記作製した電池を3.9Vで定電流定電圧(CCCV)充電した。SUS304製、直径2mmの釘を用いた。図2は、釘刺し試験の説明図である。図2に示すように、円筒型電池の外壁に熱電対を等間隔に3点設置し、釘を刺す位置は電池缶の真ん中とし、5mm/sの速度で釘を差し込み、発煙、発火の有無および最高到達温度を測定した。
(結果と考察)
表1に実験例1(D1〜D4)の電池の詳細をまとめ、表2に実験例1の釘刺し試験の結果を示した。表3に実験例2(E1〜E4)の電池の詳細をまとめ、表4に実験例2の釘刺し試験の結果を示した。表5に実験例3(F1〜F4)の電池の詳細をまとめ、表6に実験例3の釘刺し試験の結果を示した。表7に実験例4(G1〜G4)の電池の詳細をまとめ、表8に実験例4の釘刺し試験の結果を示した。上記表に示すように、正極空隙体積A(cm3)、セパレータ空隙体積B(cm3)及び負極空隙体積C(cm3)としたとき、(A+B)/Cが1.0以上1.6以下の範囲に入るときに、釘刺し試験時の最高到達温度が低下し、発煙、発火の発生を抑制することがわかった。電池缶外壁の温度は、内部温度よりも相当に低い。このため、十数℃の差でも、電池内部ではもっと大きな温度差が発生していることが推定されるため、十分に優位な差が生じていると推察された。
このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。一般的なリチウム電池では初回充電時に負極で非水電解液の溶媒や支持塩(ECやLiPF6など)が分解して負極上に被膜を形成することが知られている。一般的にECの分解は、Li+/Li基準で0.6〜1.0Vである。非水電解液に添加された添加剤(PTFOやPFOなど)もまた、初回充電時に負極で分解され被膜を形成する。PTFO及びPFOの分解電位は、Li+/Li基準で約1.7〜2.1Vである。すなわち、初回充電時にECやPF6 -が分解するよりも高い電位で先に分解し、被膜を形成して、ECやPF6 -の分解を抑制すると考えられる。このような添加剤は、非水電解液に溶解して使用する。電池の構成要素である、正極、負極、セパレータ共に細孔構造を有している。非水電解液は、その細孔を満たしている。負極細孔内に存在する添加剤と、正極及びセパレータの細孔内に存在する添加剤とでは、分解されるタイミングが異なる。負極活物質近傍に存在する負極細孔内の添加剤は、分解されるべき活物質の近傍に存在しているため、初回充電時すぐに還元分解される。一方で、添加剤の濃度は、LiPF6の濃度に比べて非常に小さいため、添加剤が泳動で負極表面に供給されることはほとんど無く、セパレータ及び正極の細孔内に存在する添加剤は、負極の添加剤が消費された後に、その濃度差を駆動力として、拡散で負極に供給される。拡散によるイオンの移動は比較的遅いために、「負極細孔内の添加剤」と「セパレータ、正極細孔内の添加剤」とでは分解されるタイミングが異なる。ここで、充電レートがある程度高いと(1.5Cなど)、負極細孔内の添加剤が分解された後、残りの添加剤が拡散で届くのには時間がかかるため、正極とセパレータに存在する添加剤が負極に届く頃にはECの分解電位にまで電位が下がってしまう。そうすると、遅く分解される添加剤はECと同時に分解され、開環したECと添加剤の共重合体のような被膜が形成されると考えられる。すなわち、分解のタイミングが異なることで分解生成物が異なる。
本発明では、この分解のタイミングの違いを積極的に利用することで、釘刺し試験時の発熱を抑える効果が得られた。(A+B)/Cが1.0以上1.6以下の範囲を満たすとき、単独で分解した成分と、ECと共に分解した成分とのバランスが良くなる。単独で分解した成分は、有機質の少ない化合物となるため、熱安定性が高く釘刺し試験時の発熱が小さいと考えられる。一方、ECと共に分解した成分は、有機質を多く含むために熱安定性が低く、釘刺し試験時の発熱が大きいものと推測される。(A+B)/Cが1.0よりも小さいとき、ECと共に分解する被膜成分が少なくなり、発熱が小さくなる。一方、(A+B)/Cが1.6よりも多い時は、ECと共に分解する成分が多くなり、発熱が大きくなると考えられる。
また、一般的なリチウム電池の空隙体積比について以下に説明する。電池設計において正負極容量比は重要な因子である。この正負極容量比は、正極活物質の実用容量と負極活物質の実容量の比である。例えば、三元系正極と黒鉛負極を用いた場合、一例として三元系正極の実用容量を140mAh/g、黒鉛負極の実用容量を350mAh/gとする。正極の片面の固形分目付けが8mg/cm2、負極の片面の固形分目付けが4mg/cm2とすると、容量比は1.25となる。通常、負極上でのリチウム析出を避けるために正極容量を小さく、負極容量を大きく設計する。しかしながら、過剰な負極容量はバッファの役割なので、容量比を大きくしすぎると、エネルギー密度が小さくなる。そのため通常容量比は1以上1.4以下程度で設計する。しかしながら、このような設計では(A+B)/Cが1.6を超える。ここでは、正極は、正極固形分のうち活物質:導電助材(カーボン):結着材(PVdF)が90:8:2の質量比で、且つそれぞれ真密度を4.63g/cm3、1.31g/cm3、1.71g/cm3とした。また、負極は、負極固形分のうち活物質:増粘剤(CMC):結着材(SBR)が質量比で98:1:1とし、それぞれ真密度を2.23g/cm3、1.6g/cm3、0.95g/cm3として計算した。なお、特許文献1では、添加剤としてPFOを用いているが、通常の電池設計であり、(A+B)/Cが1.6を超え、釘刺し試験時の発熱は大きかった。これに対して、本発明では、(A+B)/Cが好適な範囲であり、短絡特性をより高めることができるのである。
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本発明は、電池分野に利用可能である。
10 リチウムイオン電池、11 集電体、12 正極活物質、13 正極シート、14 集電体、17 負極活物質、18 負極シート、19 セパレータ、20 非水系電解液、22 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子。

Claims (9)

  1. リチウムを吸蔵、放出する正極活物質を有する正極と、
    リチウムを吸蔵、放出する負極活物質を有する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、
    溶媒と、支持塩と、LiPF424及びLiPF2(C242のうち少なくとも1以上の添加剤とを含み、前記正極と前記負極との間に介在しリチウムを伝導する非水電解液と、を備え、
    前記正極の単位面積あたりの正極空隙体積A(cm3)、前記セパレータの単位面積あたりのセパレータ空隙体積B(cm3)及び前記負極の単位面積あたりの負極空隙体積C(cm3)が、1.0≦(A+B)/C≦1.6を満たす、リチウムイオン電池。
  2. 前記正極空隙体積A(cm3)、前記セパレータ空隙体積B(cm3)及び前記負極空隙体積C(cm3)が、1.2≦(A+B)/Cを満たす、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
  3. 前記正極空隙体積A(cm3)、前記セパレータ空隙体積B(cm3)及び前記負極空隙体積C(cm3)が、(A+B)/C≦1.5を満たす、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池。
  4. 前記正極空隙体積Aは0.0009cm3以上0.0016cm3以下の範囲であり、前記セパレータ空隙体積Bは0.001cm3以上0.0013cm3以下の範囲であり、前記負極空隙体積Cは0.0014cm3以上0.0018cm3以下の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
  5. 前記非水電解液は、前記溶媒として環状カーボネートを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
  6. 前記非水電解液は、前記添加剤を0.01mol/L以上0.075mol/L以下の範囲で含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
  7. 初回充電レートが1.5C以上10C以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
  8. 前記非水電解液は、前記支持塩としてLiPF6を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
  9. 前記正極は、前記正極活物質として基本組成式LiaNi1/3Co1/3Mn1/32(但し1.0≦a≦1.2)のリチウム複合酸化物を有し、
    前記負極は、前記負極活物質として炭素材料を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
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