JP2018197319A - コークス強度の推定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような低石炭化度炭の粗大粒子は、再固化後の収縮過程で微小なクラックを生成しやすいため、粉砕して用いられている。粉砕することにより、発生するクラックのサイズが小さくなり、亀裂生成に起因するコークス強度の低下が抑制できると考えられる。このため粉砕粒度を小さくすることが望ましいが、粉砕粒度を更に小さくすると、膨張性が低下することが知られている。
従って、膨張性の低下によるコークス強度の低下を引き起こさずに、粉砕によるコークス強度の向上効果を享受することが望まれている。
特許文献1には、高石炭化度炭と低石炭化度炭とを配合し、配合する各石炭について乾留前に測定した石炭性状に基づいて、表面破壊粉コークス量および体積破壊粉コークス量を推定し、これらの量の合計に基づいて乾留後のコークス強度を推定するコークス強度の推定方法において、配合する高石炭化度炭の平均反射率及び低石炭化度炭の配合率、さらに配合炭の嵩密度とコークス炉温の両方の影響に基づいて体積破壊粉コークス量を推定するコークス強度の推定方法が開示されている。しかし、粉砕された石炭の粒度によるコークス強度への影響は考慮されていない。
その結果、低石炭化度炭におけるサイズが3mm以上(+3mm)の粗大なビトリニット組織(以降、本明細書では便宜上、粗大低石炭化度ビトリニットと記載する)が、コークス強度を低下させる要因になることを知見した。さらに、3mm以上の低石炭化度ビトリニット組織について、サイズによってコークス強度への悪影響の度合いが異なることも知見した。
[1] 配合炭として、ビトリニット反射率Roが0.9以下である低石炭化度炭を粉砕して用い、かつ、Roが0.9を超える高石炭化度炭であって粗大イナート高含有炭を3mm以下90%以上に粉砕して用いてコークスを製造する場合に、低石炭化度炭の粉砕粒度が基準粒度から変化した際のコークス強度DI150 6の推定方法であって、
(A)石炭の膨張比容積への影響について、
(A1)予め、基準粒度1に粉砕した低石炭化度炭を用いて、低石炭化度炭の膨張比容積SVと嵩密度BDの積SV×BDで表される空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a1)と、基準粒度2に粉砕したビトリニット反射率Roが0.9を超える高石炭化度炭を用いて、高石炭化度炭の膨張比容積SVと嵩密度BDの積SV×BDで表される空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a2)をそれぞれ求めておき、
(A2)実施予定粒度1における低石炭化度炭自身の膨張比容積を求め、予め求めておいた低石炭化度炭の前記空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a1)から、低石炭化度炭の実施予定粒度1における低石炭化度炭に関するコークス強度DI150 6(a1)を推定し、
(A3)前記低石炭化度炭が実施予定粒度1における、高石炭化度炭の膨張比容積を求め、予め求めておいた高石炭化度炭の前記空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a2)から、低石炭化度炭の実施予定粒度1における高石炭化度炭に関するコークス強度DI150 6(a2)を推定し、
(A4)前記DI150 6(a1)に配合炭中の低石炭化度炭比率を掛け、前記DI150 6(a2)に配合炭中の高石炭化度炭比率を掛け、それぞれを足し合わせることで、低石炭化度炭の実施予定粒度1における膨張性を反映したコークス強度DI150 6(a)を求め、
(B)低石炭化度のイナート組織のサイズおよび低石炭化度のビトリニット組織のサイズのコークス強度DI150 6への影響について、
(B1)イナート組織のサイズ区分別に、イナート組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度をあらかじめ定めておき、基準粒度1および実施予定粒度1におけるイナート組織のサイズ別含有量から、粉砕によるイナート組織のサイズ変化に伴うコークス表面破壊粉率DI150 -6の変化量ΔDI150 -6(b1)を推定し、
(B2)低石炭化度炭のビトリニット組織サイズの粒度区分別に、ビトリニット組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度をあらかじめ定めておき、基準粒度1および実施予定粒度1におけるビトリニット組織のサイズ別含有量から、粉砕によるビトリニットサイズ変化に伴うコークス表面破壊粉率DI150 -6の変化量ΔDI150 -6(b2)を推定し、
(C)低石炭化度炭の粉砕粒度を変化させた際のコークス強度DI150 6を、次の式、
コークス強度DI150 6=コークス強度DI150 6(a)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b1)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b2)、
により推定することを特徴とするコークス強度DI150 6の推定方法。
ここで、基準粒度1は、前記(a1)の関係を求める際の基準となる粒度であり、3mm以下が70%以上の粒度、基準粒度2は前記(a2)の関係を求める際の基準となる粒度であり、3mm以下が90%以上の粒度を意味している。
また、粗大イナート高含有炭は、3mm以下が70〜85%に粉砕された石炭中に、最大長さが1.5mm以上のイナート組織を5%以上含有する石炭を意味している。
また、実施予定粒度1は、低石炭化度炭について実施を予定している粒度である。
コークス強度DI150 6=コークス強度DI150 6(a)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b1)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b2)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(d)、
により推定することを特徴とする上記[1]に記載のコークス強度DI150 6の推定方法。
ここで、粗大イナート低含有炭は、3mm以下が70〜85%に粉砕された石炭中に、最大長さが1.5mm以上のイナート組織を5%未満含有する石炭を意味している。
すなわち、次の(A)〜(C)の過程によりコークス強度を評価する。
(A1)予め、基準粒度1に粉砕した低石炭化度炭を用いて、低石炭化度炭の膨張比容積SVと嵩密度BDの積SV×BDで表される空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a1)と、基準粒度2に粉砕したビトリニット反射率Roが0.9を超える高石炭化度炭を用いて、高石炭化度炭の膨張比容積SVと嵩密度BDの積SV×BDで表される空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a2)をそれぞれ求めておき、
(A2)実施予定粒度1における低石炭化度炭自身の膨張比容積を求め、予め求めておいた低石炭化度炭の前記空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a1)から、低石炭化度炭の実施予定粒度1における低石炭化度炭に関するコークス強度DI150 6(a1)を推定し、
(A3)前記低石炭化度炭が実施予定粒度1における、高石炭化度炭の膨張比容積を求め、予め求めておいた高石炭化度炭の前記空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a2)から、低石炭化度炭の実施予定粒度1における高石炭化度炭に関するコークス強度DI150 6(a2)を推定し、
(A4)前記DI150 6(a1)に配合炭中の低石炭化度炭比率を掛け、前記DI150 6(a2)に配合炭中の高石炭化度炭比率を掛け、それぞれを足し合わせることで、低石炭化度炭の実施予定粒度1における膨張性を反映したコークス強度DI150 6(a)を求め、
(B1)イナート組織のサイズ区分別に、イナート組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度をあらかじめ定めておき、基準粒度1および実施予定粒度1におけるイナート組織のサイズ別含有量から、粉砕によるイナート組織のサイズ変化に伴うコークス表面破壊粉率DI150 -6の変化量ΔDI150 -6(b1)を推定し、
(B2)低石炭化度炭のビトリニット組織のサイズの区分別に、ビトリニット組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度をあらかじめ定めておき、基準粒度1および実施予定粒度1におけるビトリニット組織のサイズ別含有量から、粉砕によるビトリニット組織のサイズ変化に伴うコークス表面破壊粉率DI150 -6の変化量ΔDI150 -6(b2)を推定し、
コークス強度DI150 6=コークス強度DI150 6(a)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b1)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b2)、
により推定することを特徴とするコークス強度DI150 6の推定方法。
また、本発明を実施する際には、高石炭化度の粗大イナート高含有炭は、3mm以下が90%以上に細粒化されている必要がある。ここで、本発明において粗大イナートは最大長さが1.5mm以上のものをいい、粗大イナート高含有炭とは、3mm以下70〜85%に粉砕した際の粗大イナート量が5%以上の石炭のこととする。3mm以下90%以上に細粒化する理由は、特開2013―6958号公報に記載されている通り、配合炭中に粗大イナートが多く存在する条件では、粗大イナートがコークス強度を低下させる影響の方が大きいことから、低石炭化度ビトリニットの粗大粒子を細粒化してもコークス強度の向上があまり発揮されないためと考えられる。
(A1)空隙充填度とコークス強度の関係を求める。
図1に一例を示すが、特開2005−194358号公報に示されるように、石炭の銘柄(単味炭または複数銘柄の混合炭)・嵩密度の一方または両方を種々変更して乾留し、石炭の膨張比容積SVと嵩密度BDから求められる空隙充填度SV×BDと、得られたコークスのコークス表面破壊強度DI150 6の関係を求める。低石炭化度炭と高石炭化度炭それぞれに分けて前記関係を求める。低石炭化度炭について前記関係を求めたものを(a1)とし、高石炭化度炭での関係を(a2)とする。なお、膨張比容積SVの求め方は、後述の段落[0026]、[0027]にて説明する。
このときの基準粒度は、基本思想として、mmオーダーの粗大イナートや粗大低石炭化度ビトリニットは、コークス強度低下要因となるため、その含有量によりコークス強度が変化するため、様々な石炭種を用いて関係を求める場合、粗大イナートや粗大低石炭化度ビトリニットの含有量が、石炭種間で同程度となるような粉砕粒度を基準粒度とすることが望ましい。
なお、本発明は、高石炭化度炭が粗大イナート高含有炭でなくて粗大イナート低含有炭(3mm以下70〜85%に粉砕した際の粗大イナート量が5%未満の石炭)である場合にも当然に適用できるが、その場合の粗大イナート低含有炭の基準粒度については、特に制限するものはなく、粗大イナートが多くならないよう、3mm以下が70%以上としても良い。
なお、低石炭化度炭であっても粗大イナート高含有炭を用いる際には、基準粒度を3mm以下90%以上とし、別途(a1)の関係を求めることがより好ましい。
膨張比容積の測定では、先ず、JIS M8801に規定された細管に、石炭を粉体のまま、所定の装入密度(0.85[dry、g/cm3])で高さ60mmに装入し、次に、細管内の配合炭の上にピストンを装入し、ピストンを装入した状態で細管を3.0±0.1℃/minの昇温速度で300℃から600℃まで加熱し、加熱終了した後の配合炭の高さを測定した。
なお、この調査においては、ピストンが石炭に及ぼす荷重は約110gとした。加熱終了後の配合炭高さをL[mm]とした。そして、以下の式(1)から膨張比容積[cm3/g]を求めた。
膨張比容積=L/(60×0.85) ・・・(1)
3mmを超える粒子を1mm〜3mm程度に粉砕して膨張比容積を測定して良い理由は、3mmを超える粒子と1mm〜3mm程度の粒子の比表面積は大差がないため、石炭中の熱分解ガスの粒子外への拡散に大差はなく、膨張性を同等として扱ってよいと推察されるためである。
また、後述するIFCを算出するために膨張比容積を測定する場合、低石炭化度炭が1mm未満になると、IFCが増加してしまう可能性があるので、この観点からも1〜3mmに粉砕することが好ましい。
石炭は、一般的に粒度が細かくなると石炭自身の膨張性が低下することが知られている。そこで、低石炭化度炭の粉砕粒度を変化させたときのコークス表面破壊強度DI150 6を以下の手順(A2-1)、(A2-2)で算出する。なお、以降では、実施を予定している粒度を、実施予定粒度と呼ぶ場合がある。また、低石炭化度炭の場合を実施予定粒度1、高石炭化度炭の場合を実施予定粒度2と記載する場合がある。
すなわち、SV1’は、実施予定粒度1での粉砕の都度、前述の方法で実験により求めるか、予め、粉砕粒度と低石炭化度炭自身のSVの関係を求めておき、その関係から求める。
なお、どちらの方法においても、低石炭化度炭を複数銘柄配合する場合には、低石炭化度炭中の各低石炭化度炭銘柄の構成比に応じて、それぞれの銘柄の加重平均値とすればよい。
低石炭化度炭は、高石炭化度炭に比較して再固化温度が低いため、高石炭化度炭と配合した際に、高石炭化度炭の膨張を阻害し、高石炭化度炭の膨張性を低下させることが知られている。
そのため、低石炭化度炭の粉砕粒度によって、高石炭化度炭に対する膨張阻害影響の度合いは変化する。
先ず、低石炭化度炭単味、高石炭化度炭単味、および低石炭化度炭と高石炭化度炭とを配合した配合炭の膨張比容積をそれぞれ実験にて求める。低石炭化度炭を配合したことによる高石炭化度炭に対する膨張阻害影響をΦとして、以下の式(2)から求める。
SV(配合炭実測値)=SVL×α/100+Φ×SVH×(1−α/100)
・・・(2)
ここで、SVLおよびSVHは、それぞれ低石炭化度炭単味および高石炭化度炭単味の膨張比容積(cm3/g)、αは低石炭化度炭の配合率(%)、Φは低石炭化度炭による高石炭化度炭に対する膨張阻害影響(−)である。
膨張阻害影響がない場合、Φ=1となり、膨張阻害影響が大きいほど、Φは1より小さくなる。
このΦについて、低石炭化度炭の配合率1%当りの影響度として、膨張阻害係数IFCを定め、以下の式(3)より求める。
Φ=1―IFC×α ・・・(3)
1つ目の方法は、IFCを用いずに求める方法であって、実際に、低石炭化度炭の実施予定粒度(実施予定粒度1)に粉砕した低石炭化度炭と、高石炭化度炭の実施予定粒度(実施予定粒度2)に粉砕した高石炭化度炭を、実施する際の配合比率で混合して膨張比容積の実験結果より求める方法である。
なお、複数銘柄を配合する際には、低石炭化度炭および高石炭化度炭それぞれにおいて、複数銘柄配合したSV1およびSV0’をそれぞれ測定して用いればよい。
(A3-1) 所定の粉砕粒度に粉砕した低石炭化度炭を配合した場合のIFCを、式(2)、(3)を用いた前述の方法にて求める。
IFCを求める方法は、実際に配合する際と同じ低石炭化度炭を、実際の低石炭化度炭の構成比で配合した配合炭でのIFCを実験にて求めてもよいし、事前に配合する銘柄毎に所定の粒度でのIFCを求めておき、各低石炭化度炭のIFCおよび配合構成比の加重平均値から、低石炭化度炭によるIFCを求めてもよい。ここでの低石炭化度炭の所定の粒度とは、特に規定されるものではなく、任意の粒度でよい。
また、IFCを求めるときに配合する高石炭化度炭は、膨張性を有していること、また、実際に実施されるときに想定される高石炭化度炭の石炭化度と同程度の石炭を用いることが好ましい。
1〜3mmの粒子を用いてIFC0とした理由は、図3(a)に示すように、粘結性の異なる低石炭化度炭を用いても、1〜3mm粒子では、銘柄によってIFCに大差がないことから、1〜3mmの粒子で粗大粒子を代表させられると考えられるためである。
このように、予め実験して低石炭化度炭の各粒度区分のIFCiを求めておけば、都度実施粉砕粒度1にて実験してIFCを求めなくても、膨張阻害影響を評価することができる。
例えば、低石炭化度炭の所定粒度を3mm篩下75質量%とし、95%の粒度まで細粒化した場合、それぞれの粉砕粒度において、粒度区分をいくつかに分けて、低石炭化度炭の全量を1としたときの各粉砕粒度iにおける質量比率をWiとして求め、3mm篩下75質量%におけるWiから3mm篩下95質量%におけるWiへの増加分をΔWiとする。
この膨張阻害係数の変化を求めることで、低石炭化度炭の粉砕粒度を変化させた際の高石炭化度炭の膨張比容積の変化を予測できる。
なお、複数銘柄の低石炭化度炭を用いる際には、各銘柄についてΔIFCを求めておき、低石炭化度炭全体における各銘柄の配合構成比に応じて、それぞれの銘柄のΔIFCの加重平均値とすればよい。
SV2’=SV0×{1−(IFC')×α} ・・・(4)
=SV0×{1−(IFC+ΔIFC)×α} ・・・(4’)
ここで、SV0は基準粒度2に粉砕した高石炭化度炭のみの場合の膨張比容積であり、IFCは(A3-1)で求めた、低石炭化度炭が所定粒度でのIFCである。また、αは低石炭化度炭の配合率(%)である。
以上により、低石炭化度炭の粉砕粒度の変化による膨張性の変化を反映したコークス表面破壊強度DI150 6を求めることができる。
(B1)イナート組織のサイズ変化によるコークス表面破壊粉率の変化量の推定 石炭中の粗大イナート組織はコークス強度を低下させるが、細粒化によりコークス強度の低下を抑制することが知られている。ここでは、イナート組織のサイズとコークス表面破壊粉率の関係について検討を行った。
定量化に当たっては、特許文献2に記載された方法を使用することができる。
基準粒度1および実施予定粒度1に粉砕した低石炭化度炭において、それぞれの粒度の低石炭化度炭を単味炭で乾留し、得られたそれぞれのコークスについて、特許文献2に記載のように、乾留後のコークスの切断面に樹脂を埋め込み、その切断面を研磨した後、顕微鏡で写真撮影し、写真中のイナート組織をマーキングして画像解析にて求めることができる。また、コークス試料をX線CTを用いて、一定の見かけ密度以上の領域をイナートとして判別して画像解析してもよい(例えば、特開2011-162724参照)。
また、コークス中のイナートサイズ分布を測定するが、これは、石炭中のイナート組織の存在態様は、コークス化してもほとんど変化せず同じ存在態様で残存するので、コークス中のイナート組織のサイズおよび体積率を石炭中のイナート組織として用いることができる。さらに、通常、2次元断面における面積比は、3次元空間における体積比と扱うことができるので、求めたイナートの面積比をイナートの体積比として扱うことができる。
なお、特許文献2では、配合炭の石炭軟化時の空隙充填度SV×BD(SV:配合炭の石炭軟化時の比容積、BD:石炭装入時の嵩密度)によって場合分けをして詳細に求めているが、実操業相当でのSV×BD条件で実施すればよい。
また、特許文献2において、最大長さ0.6mm以上のイナート組織を対象として、イナート組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度を求めている。これは通常、実施される空隙充填度(SV×BD)の範囲では、最大長さ0.6mm未満のイナート組織はコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度がないためである。
従って、本発明においても、以下の通り、最大長さ0.6mm以上のイナート組織を対象として、表面破壊粉率DI150 −6へ与える影響度を求めている。
ここで、イナート組織だけを石炭から分離するのは実際には困難であるため、イナート組織が濃縮された石炭(以降、「イナート濃縮炭」と記載する場合がある)を用いて、検討を行った。イナート濃縮炭の作成方法としては、例えば、高石炭化度炭の原炭を粉砕し、6mmの篩で篩分けて6mm以上の粒子を得る。粉砕後の粒度の大きな石炭にはイナート組織が濃縮されやすいため、この6mm以上の粒子にはイナートが濃縮されている。
なお、石炭粒子やイナート濃縮炭や後述するビトリニット濃縮炭を、所定の粒度範囲に区分した場合は、粒度区分と記載し、イナートやビトリニットを画像解析により求めたサイズに応じて、所定のサイズ範囲に区分する場合は、サイズ区分と記載する。
(i) 粒度が0.6mm以上のイナート濃縮炭を、粒度区分1〜m(自然数)の粒度区分に区分する。
(ii) 粒度区分iが異なるイナート濃縮炭を含有する配合炭を調製し、これらの配合炭を乾留した後、粒度区分iごとにDI150 −6を測定し、各粒度区分iのイナート組織がDI150 −6に与える影響を調べる。
なお、サイズ区分iのイナート組織がコークス表面破壊粉率DI150 −6へ与える影響度Aiは、サイズ区分iに存在するイナート組織体積1%当りの値である。
DI150 -6−DI150 -6(基準)=Σi=1〜mAi×Ibi,j ・・・(式5)
また、DI150 −6(基準)は、それぞれ、イナート組織の影響がない場合のコークス表面破壊強度であり、イナート組織がコークス表面破壊強度に影響を与えないようにイナート濃縮炭の粒度が0.6mm未満となるように粉砕して配合した配合炭を用いて製造したコークスの表面破壊強度を測定して得られた値を用いる。
変化量ΔDI150 -6(b1)は、銘柄jの粉砕粒度変化に伴うサイズ区分iのイナート組織の含有量変化ΔIbi,j(体積%)の測定値、サイズ区分iのイナート組織がコークス表面破壊粉率DI150 -6へ与える影響度Ai(-/体積%)を基にして、下記の(式6)により求めることができる。
ΔDI150 -6(b1)=Σi=1〜mAi×ΔIbi,j×Xj ・・・(式6)
低石炭化度炭が複数銘柄の場合は、各銘柄についてΔDI150 -6(b1)を求め、それらを足し合わせれば良い。
コークス炉内では、炉壁側と炭中側で温度勾配が生じており、粗大粒子の高温側と低温側では収縮係数が異なる。特に、低石炭化度炭ビトリニットは、再固化直後での温度に対する収縮係数の変化が大きいため、温度勾配によって熱応力が発生する。この熱応力によって低石炭化度炭ビトリニットの粗大粒子の内部にはクラックが生成する。
本発明者ら、水分量を0〜4%程度に低減させた乾燥石炭の乾留において、低石炭化度炭ビトリニットは、3mm以上のサイズでクラックが生成することを実験的にて知見した。
クラック生成の有無にとって低石炭化度炭ビトリニットのサイズが重要であるので、最初に、石炭粉砕粒度とビトリニットサイズ分布の関係を以下のようにして調べた。
ある粉砕粒度(例えば3mm以下比率75%)に粉砕した低石炭化度炭において、3mm以上の粒子について、いくつかの粒度区分に分けた。粒度区分としては、3つの粒度区分(3mm以上5mm未満、5mm以上10mm未満、10mm以上)に分けることが例示される。
撮影した画像に対し、粒子中の気孔構造を有する部分をビトリニットとして判別してサイズおよび粒子中での面積比の測定を行う。ここでは、ビトリニットとして判別された粒子の円相当径をビトリニットサイズとした。また、通常、2次元断面における面積比は、3次元空間における体積比と扱うことができるので、求めたビトリニットの面積比をビトリニットの体積比として扱うことができる。
測定して得られた各粒度区分におけるビトリニット組織のサイズ分布に、各粉砕粒度における粒度区分の質量比(−)を掛け、全ての粒度区分を足し合わせることで、ある粉砕粒度の低石炭化度炭中でのビトリニット組織のサイズ分布を求めることができる。
なお、このX線CTにより撮像した画像を解析する方法は、簡便で精度良く測定できるので好ましいが、粒度分布測定はこの方法に限られるものではない。
影響を調べる方法には、2通りの方法がある。
粒度区分としては、3つの粒度区分(3mm以上5mm未満、5mm以上10mm未満、10mm以上)に分けることが例示される。
なお、サイズ区分iのビトリニットがコークス表面破壊粉率DI150 −6へ与える影響度Biは、サイズ区分iに存在するビトリニット体積1%当りの値である。
DI150 -6−DI150 -6(基準)=Σi=1〜mBi×Vbi,j ・・・(式7)
DI150 −6’= DI150 −6− Σi=1〜mAi×Ibi,j ・・・(式8)
なお、サイズ区分iのビトリニットがコークス表面破壊粉率DI150 −6へ与える影響度Biは、サイズ区分iに存在するビトリニット体積1%当りの値である。
DI150 -6’−DI150 -6’(基準)=Σi=1〜mBi×Vbi,j ・・・(式9)
ここで、Vbi,jは、銘柄jにおけるサイズ区分i(=1〜m)のビトリニット組織の含有量(体積%)である。
ΔDI(b2)=Σi=1〜mBi×ΔVbi,j ×Xj ・・・(式10)
ここで、Xjは、低石炭化度炭である銘柄jの配合比(−)である。
また、低石炭化度炭が複数銘柄の場合は、各銘柄についてΔDI150 -6(b2)を求め、それらを足し合わせればよい。
また、二つ目の方法では、イナート組織による影響度Aiの測定条件と揃えるため、配合炭のSV×BDはAiを求めるときと同等にすることが好ましい。さらに、第2の方法では、低石炭化度炭中に灰分が多いと、ビトリニット中に細かく灰分が分散する可能性があるため、灰分が8%程度までの方が好ましい。さらに、可能な限りビトリニット粒子のみのほうが好ましいため、極力低イナート炭である低石炭化度炭を用いた方が好ましい。なお、上記のようにして求めたBiは、銘柄毎に求める必要はなく、一度求めておけばよい。
前記(A)の過程で求められた低石炭化度炭の粉砕粒度を変化させた際の膨張性変化によるコークス表面破壊強度DI150 6(a)から、前記(B)の過程で求められた低石炭化度炭中の粗大イナートのサイズ変化に伴うΔDI150 -6(b1)と、同じく低石炭化度炭中の粗大ビトリニットのサイズ変化に伴うΔDI150 -6(b2)を減じること、すなわち以下の式(10)により、基準粒度から実施予定粒度1に粉砕粒度を変化させた際のコークス表面破壊強度DI150 6を求めることができる。
コークス強度DI150 6=コークス強度DI150 6(a)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b1)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b2) ・・・(式10)
コークス強度DI150 6=コークス強度DI150 6(a)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b1)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b2)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(d) ・・・(式11)
記載内容に何ら制限されるものではない。
高石炭化度炭の粉砕粒度は3mm以下90%とした。低石炭化度炭C炭およびD炭の粉砕粒度を3mm以下75%を基準粒度1とし、実施予定粒度1としては、85%,95%の2ケースについて変化させた。
配合した配合炭は、水分を2.5%とし、それぞれ嵩密度0.82t/m3にて装炭し、実機を模擬した試験コークス炉にて18.5時間乾留した。得られたコークスをドラム試験に供し、コークス表面破壊強度DI150 6を測定した。
なお、以下において、粉砕粒度の3mm以下比率を表記する際に、−3mmと記載することがある。
C炭およびD炭の単味での膨張比容積の値および、配合炭IおよびIIそれぞれの低石炭化度炭の配合比より、低石炭化度炭のSV1およびSV1’を求め、それに伴うSV×BDおよび、低石炭化度炭の空隙充填度とコークス表面破壊強度との関係(a1)を用いてコークス強度DI150 6を求めた。結果を表3に示す。なお、配合炭IIのSVは、C炭のSV×(0.4/0.6)+D炭のSV×(0.2/0.6)として、各粉砕粒度にてSVを求めた。
(A3−1) 基準粒度1である3mm以下75%に粉砕したC炭またはD炭を、それぞれA炭に内数で30%の割合で配合し、膨張比容積の結果からIFCを求めたところ、C炭は0.004、D炭は0.005であった。
これより、配合炭Iおよび配合炭IIにおける、低石炭化度炭によるIFCは、0.004および0.0042(=0.004×0.4/0.6+0.005×0.2/0.6)と求められた。
次に、低石炭化度炭C炭またはD炭を3mm以下75%に粉砕したときの1〜3mmを、C炭およびD炭それぞれを1.5mm以下に粉砕した高石炭化度炭Aに30%の割合で配合して、膨張比容積を測定し、IFC0を求めた。さらに1〜3mmの石炭を1mm以下に粉砕して、各粒度区分の単味膨張比容積および同様に高石炭化度炭Aと混合した配合炭膨張比容積を測定して、1mm以下の各粒度区分iのIFCiを求めた。それらの結果を表4に示す。合わせて、IFC0からの増加分ΔIFCiを示す。
また、低石炭化度炭C炭またはD炭を3mm以下75%、85%、95%に粉砕し、篩分けによって各粉砕粒度における粒度区分iの割合Wiを求めた。その値を表5、表6に示す。合わせて、基準粒度1である3mm以下75%からのWiの増加分ΔWiを示す。
表4に示したΔIFCiおよびΔWiより、C炭およびD炭それぞれについて求めたΔIFC(=ΣΔIFCi×ΔWi)を表7に示す。また、配合炭IおよびIIにおけるC炭とD炭の配合比より、各配合炭でのΔIFCを求めた。その結果を表8に示す。
(A3−1)で求めたIFCおよび、(A3−6)で求めたΔIFCより、配合炭I、IIそれぞれでの高石炭化度炭のSV2およびSV2’を求めた。その結果を表9に示す。合わせて、それに伴うSV×BDおよび、低石炭化度炭の空隙充填度とコークス表面破壊強度との関係(a1)を用いて求めたコークス強度DI150 6も示す。
DI150 6(a1)およびDI150 6(a2)、高石炭化度炭および低石炭化度炭の配合比より、DI150 6(a)を求めた。その値を表10に示す。低石炭化度炭C炭の粉砕粒度が3mm以下75%(基準粒度1)でのDIも、関係a1およびa2から求めたものを併記する。
事前に、低石炭化炭C炭およびD炭を3mm以下75%、85%、95%にそれぞれ粉砕し、低石炭化炭C炭は単独で乾留し、低石炭化炭D炭は0.6mm以下に粉砕した高石炭化度炭A炭と等量(すなわち内数でそれぞれ50質量%)に混合して乾留して得られたコークスを、樹脂埋め研磨し、画像解析によりイナート組織のサイズ分布を求めた。求めたイナート組織のサイズ分布を、表11に示す。合わせて、基準粒度1の3mm以下75%から3mm以下85%、95%に変化したときの各サイズ区分のイナート含有量の変化量ΔIbiも示す。
低石炭度化炭C炭およびD炭を3mm以下75%、85%、95%にそれぞれ粉砕し、石炭粒子を3〜5mm、5〜10mm、+10mmの3つの粒度区分に分けて、それぞれを粉コークス中で乾留した。乾留後の粒子をX線CTにて観察して画像解析により、ビトリニット組織のサイズ分布を求めた。求めたビトリニット組織のサイズ分布を、表14に示す。合わせて、基準粒度1の3mm以下75%から3mm以下85%、95%に変化したときの各サイズ区分のビトリニット含有量の変化量ΔVbiも示す。
配合炭Iおよび配合炭IIにおいて、低石炭化度炭C炭およびD炭の粉砕粒度変化によるコークス表面破壊強度の変化をまとめると、表17および表18の通りである。
なお、3mm以下75%での推定値は、いずれの場合においても空隙充填度とコークス表面破壊強度DI150 6の関係(a1)および(a2)から推定した値である。
低石炭化度炭の粉砕粒度変化に伴う影響を考慮して推定することで、より実測値に近い値を推定することができた。
高石炭化度炭A炭の粒度変化に伴うDI150 6の変化を推定することで、より実測値に近い値を推定することができた。
Claims (3)
- 配合炭として、ビトリニット反射率Roが0.9以下である低石炭化度炭を粉砕して用い、かつ、Roが0.9を超える高石炭化度炭であって粗大イナート高含有炭を3mm以下90%質量以上に粉砕して用いてコークスを製造する場合に、低石炭化度炭の粉砕粒度が基準粒度から変化した際のコークス強度DI150 6の推定方法であって、
(A)石炭の膨張比容積への影響について、
(A1)予め、基準粒度1に粉砕した低石炭化度炭を用いて、低石炭化度炭の膨張比容積SVと嵩密度BDの積SV×BDで表される空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a1)と、基準粒度2に粉砕したビトリニット反射率Roが0.9を超える高石炭化度炭を用いて、高石炭化度炭の膨張比容積SVと嵩密度BDの積SV×BDで表される空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a2)をそれぞれ求めておき、
(A2)実施予定粒度1における低石炭化度炭自身の膨張比容積を求め、予め求めておいた低石炭化度炭の前記空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a1)から、低石炭化度炭の実施予定粒度1における低石炭化度炭に関するコークス強度DI150 6(a1)を推定し、
(A3)前記低石炭化度炭が実施予定粒度1における、高石炭化度炭の膨張比容積を求め、予め求めておいた高石炭化度炭の前記空隙充填度とコークス強度DI150 6との関係(a2)から、低石炭化度炭の実施予定粒度1における高石炭化度炭に関するコークス強度DI150 6(a2)を推定し、
(A4)前記DI150 6(a1)に配合炭中の低石炭化度炭比率を掛け、前記DI150 6(a2)に配合炭中の高石炭化度炭比率を掛け、それぞれを足し合わせることで、低石炭化度炭の実施予定粒度1における膨張性を反映したコークス強度DI150 6(a)を求め、
(B)低石炭化度のイナート組織のサイズおよび低石炭化度のビトリニット組織のサイズのコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響について、
(B1)イナート組織のサイズ区分別に、イナート組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度をあらかじめ定めておき、基準粒度1および実施予定粒度1におけるイナート組織のサイズ別含有量から、粉砕によるイナート組織のサイズ変化に伴うコークス表面破壊粉率DI150 -6の変化量ΔDI150 -6(b1)を推定し、
(B2)低石炭化度炭のビトリニット組織サイズの区分別に、ビトリニット組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度をあらかじめ定めておき、基準粒度1および実施予定粒度1におけるビトリニット組織のサイズ別含有量から、粉砕によるビトリニット組織のサイズ変化に伴うコークス表面破壊粉率DI150 -6の変化量ΔDI150 -6(b2)を推定し、
(C)低石炭化度炭の粉砕粒度を変化させた際のコークス強度DI150 6を、次の式、
コークス強度DI150 6=コークス強度DI150 6(a)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b1)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b2)、
により推定することを特徴とするコークス強度DI150 6の推定方法。
ここで、基準粒度1は、前記(a1)の関係を求める際の基準となる粒度であり、3mm以下が70質量%以上の粒度、基準粒度2は前記(a2)の関係を求める際の基準となる粒度であり、3mm以下が90質量%以上の粒度を意味している。
また、粗大イナート高含有炭は、3mm以下が70〜85質量%に粉砕された石炭中に、最大長さが1.5mm以上のイナート組織を5体積%以上含有する石炭を意味している。
また、実施予定粒度1は、低石炭化度炭について実施を予定している粒度である。
- 前記の関係(a2)を求める際に用いた高石炭化度炭の基準粒度2と、高石炭化度炭について実施を予定している粒度である実施予定粒度2が異なる場合、高石炭化度炭のイナート組織のサイズ区分別に、該イナート組織のコークス表面破壊粉率DI150 -6への影響度をあらかじめ定めておき、基準粒度2および実施予定粒度2におけるイナート組織のサイズ別含有量から、粉砕によるイナート組織のサイズ変化に伴うコークス表面破壊粉率DI150 -6の変化量ΔDI150 -6(d)を推定し、前記の(C)の過程で、次の式、
コークス強度DI150 6=コークス強度DI150 6(a)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b1)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(b2)−コークス表面破壊粉率の変化量ΔDI150 -6(d)、
により推定することを特徴とする請求項1に記載のコークス強度DI150 6の推定方法。
- 前記のRoが0.9を超える高石炭化度炭が粗大イナート低含有炭の場合、前記の基準粒度2は3mm以下が70質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のコークス強度DI150 6の推定方法。
ここで、粗大イナート低含有炭は、3mm以下が70〜85質量%に粉砕された石炭中に、最大長さが1.5mm以上のイナート組織を5体積%未満含有する石炭を意味している。
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