JP6379934B2 - コークス強度の推定方法 - Google Patents
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そして、ドラム回転時に発生する篩目15mmの篩でふるい分けた篩下(粒径15mm以下)の粉には、表面破壊により生成する粉(表面破壊粉:粒径6mm以下)および体積破壊により生成する粉(体積破壊粉:粒径6mm-15mm)が混在していることも明らかにされており、それらを個々に求めることでDI150 15を推定する方法がこれまで開示されている。
ここで、イナート係数とは、膨張しない石炭が、配合炭の膨張を阻害する程度を表す指標であり、配合炭の乾留時における比容積にイナート係数を掛けることにより、精度の高い配合炭の比容積が推定できる。
この発明では、表面破壊強度は高石炭化度炭あるいは低石炭化度炭の膨張比容積と配合炭の装入嵩密度から求めるが、高石炭化度炭の膨張比容積を求めるにあたっては、低石炭化度炭の配合比率に応じた膨張阻害度合であるイナートファクター(上述の「イナート係数」と同義)を考慮する。
また、特許文献2は、コークスの表面強度は、石炭装入時の嵩密度に影響されることから、配合する各石炭の膨張比容積に装入嵩密度を乗じた空隙充填度を求め、この空隙充填度からコークスの表面破壊強度を推定する方法を開示している。
しかし、これらの特許文献1,2には、低石炭化度炭が高石炭化度炭の膨張を阻害する度合(イナートファクター)について言及されていない。
特許文献4では、コークス強度DI150 15は、表面破壊粉量と体積破壊粉量の和から求めることができること、表面破壊粉量は、配合する石炭の膨張比容積を配合割合で加重平均した値に、装入嵩密度と、低石炭化度炭が高石炭化度炭の膨張を阻害する度合(イナートファクター)を乗じた空隙充填度から求められることが開示されている。しかし、全膨張率が0%の低石炭化度炭が配合された場合に、コークス強度を簡便に推定することは、開示されていない。
引用文献5には、全膨張率が0%の高灰分炭と、全膨張率が0%の低灰分炭を含む配合炭の製造するコークスの表面破壊強度を、特許文献4と同様な方法で推定する。
コークスの表面破壊強度は、特許文献4、5に開示された石炭の膨張比容積と、装入嵩密度と、低石炭化度炭のイナートファクターを乗じた空隙充填度から推定できる。
本発明の目的は、コークス強度の推定に必要な低石炭化度炭のイナートファクター係数(f)の推定について、簡易な推定方法を提供し、さらに、低石炭化度炭のうち膨張性を示さないものを含む配合炭において、正確なコークス強度の推定方法を提供することである。
<1>揮発分が30質量%以上で全膨張率が0%の低石炭化度炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの強度の推定方法であって、
前記高炉用コークスの強度を、コークスの表面破壊により生成する粉コークス量(表面破壊粉コークス量)およびコークスの体積破壊により生成する粉コークス量(体積破壊粉コークス量)の和より求め、
前記表面破壊粉コークス量を、配合する高石炭化度炭の軟化時の膨張比容積と、配合炭の装入密度と、低石炭化度炭が高石炭化度炭の軟化時の膨張を阻害する程度を表す下記式(1)のイナートファクター(IF)から算出する高石炭化度炭の軟化時の充填度から求めるに際し、
前記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)と、JIS−M8801で規定された昇温速度である3℃/分を超える速度で測定した前記低石炭化度炭の膨張比容積(SV’)との関係性を、あらかじめ求めておき、配合を予定している全膨張率が0%の低石炭化度炭を3℃/分を超える昇温速度で測定した膨張比容積(SV’)値から、前記の関係性に基きイナートファクター係数(f)を求め、さらに下記式(1)により算出されるイナートファクター(IF)を用いて、コークス強度を推定することを特徴とする、コークスの強度推定方法。
IF =1.00−f・x・・・・・(1)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、x:低石炭化度炭の配合率[%]である。
<2>前記イナートファクター係数(f)と膨張比容積(SV’)との関係性が、下記の式(2)であることを特徴とする<1>に記載の高炉用コークスの強度推定方法。
f=-0.734SV’5 + 6.214 SV’4 - 20.921 SV’3 + 35.039 SV’2 - 29.2 SV’ + 9.696・・・(2)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SV’:12℃/minで測定した膨張比容積[cm3/g]である。
なお、以降「SV」は3℃/minの昇温速度で、「SV’」は12℃/minの昇温速度で測定した膨張比容積をしめす。
また、本願における低石炭化度炭は、揮発分が30質量%以上の石炭を意味している。
本発明は、揮発分が30質量%以上で全膨張率が0%の低石炭化度炭を、配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの強度の推定方法である。揮発分が30質量%以上で全膨張率が0%の低石炭化度炭を対象とするのは、石炭化度が低い、かかる石炭を配合炭に用いると、コークス強度の低下が大きく、正確な強度の推定が重要であるからである。
即ち、表面破壊コークス量は、乾留時の石炭粒子の接着程度によるものであり、石炭の乾留時の膨張比容積と、装入時の密度に関係する。しかし、低石炭化度炭は、乾留時に高石炭化度炭の膨張を抑制する。低石炭化度炭が、高石炭化度炭の膨張を抑制する阻害の度合いは、銘柄毎に異なる低石炭化度炭に固有の特性(イナートファクター係数)である。
乾留時の膨張比容積が抑制されるのは高石炭化度炭であるから、高石炭化度炭の表面破壊強度と、低石炭化度炭の表面破壊強度とは、別々に求められ、配合炭全体の表面破壊強度は、その両者の配合比率による加重平均値で求められる。
本発明は、低石炭化度炭のうち膨張性を有しないもののイナートファクター係数を、JIS−M8801で規定された昇温速度である3℃/分を超える速度であらかじめ測定した膨張比容積の関数として算出しておくことで、例えば、膨張性が0%の新たな銘柄の低石炭化度を配合する場合に、膨張比容積という簡便な方法を用いるだけで、コークス強度を精度良く推定できることに特徴がある。
体積破壊により生成する粉コークスとは、コークス強度試験において発生する粉コークスのうち6mm超15mm以下のものである。体積破壊により生成する粉コークス量を体積破壊強度(DI6−15)と記す。
体積破壊の原因となる大きな亀裂は、コークス全体の収縮の不均一さから発生する熱応力によって生成する亀裂が主要因であり、その生成量はコークス炉内の温度分布やコークス収縮係数(単位温度あたりの収縮量の大小)に影響される。そして、石炭の再固化温度と体積破壊により生成する粉コークス量の関係をあらかじめ調べておけば、体積破壊粉率(DI150 6-15)を推定することができる。
表面破壊により生成する粉コークスとは、コークス強度試験において生成する粉コークスのうち6mm以下のものである。6mm篩上のコークス塊残留率を表面破壊強度(DI150 6)と記す。
表面破壊は平均粒度1mm程度に粉砕された原料炭の軟化溶融・膨張が不十分なことに起因する。石炭粒子同士の不完全な接着や、装炭時の石炭粒子間空隙が十分に充填されずに欠陥としてコークス中に残存することが要因となり発生する。
乾留時の石炭粒子同士の接着に関する要素として、乾溜時の石炭膨張比容積[cm3/g]と、配合炭の装入密度[g/cm3]があり、これらを乗じた石炭軟化時の空隙充填度(以下、「空隙充填度」と記す。)]により、表面破壊により生成する粉コークス量を推定することができる。
ここで、石炭の膨張比容積[cm3/g]は、JIS M 8801の膨張性試験に用いるジラトメーター装置を用いた試験により測定した最大膨張時の石炭体積[cm3] を ジラトメーターへの石炭装入量[g]で除することにより求められる。
低石炭化度炭は、高石炭化度炭に比較して低い温度で軟化溶融を開始し再固化するため、高石炭化度炭が軟化溶融状態にあるときにはすでに再固化しており、イナートとして作用する。すると、高石炭化度炭は再固化した低石炭化度炭との粒子界面から熱分解ガスが抜けやすい状態となり、膨張が抑制されるため、高石炭化度炭の膨張比容積が小さくなると考えられる。
そこで、その効果を低石炭化度炭のイナートファクター(以下「IF」と記す。)として補正することで、高石炭化度炭の膨張比容積を精度良く推定する。ここで、IFは、下記の式(1)でもとめられる。
IF= 1.00 - f・x ・・・・・(1)
ただし、f:イナートファクター係数[-]、x:低石炭化度炭の配合率[%]である。即ち、イナートファクター(IF)は、低石炭化度炭が、高石炭化度炭の膨張を阻害する程度であり、イナートファクター係数(f)は、低石炭化度炭の配合1%あたりの阻害の度合である。
高石炭化度炭の空隙充填度=高石炭化度炭の膨張比容積の加重平均値×装入時嵩密度×IF・・・・・(3)
式(3)により求めた高石炭化度炭の空隙充填度から高石炭化度炭の表面破壊強度(DI150 6(H))を推定する方法は、あらかじめ求めておいた高石炭化度炭の空隙充填度と高石炭化度炭の表面破壊強度(DI150 6(H))の関係より求める。
ここで、(3)式で膨張比容積がIFにより阻害されるのは、高石炭化度炭の場合であり、低石炭化度炭の場合は、IFの影響はない。したがって、低石炭化度炭の空隙充填度は、下記の式(4)となる。
低石炭化度炭の空隙充填度=低石炭化度炭の膨張比容積の加重平均値×装入時嵩密度・・・・(4)
DI150 6=P×DI150 6(H)+Q×DI150 6(L)・・・・・(5)
ただし、Pは高石炭化度炭の配合割合、Qは低石炭化度炭の配合割合を示す。
イナートファクター係数(f)の測定方法は、以下の通りである。
イナートファクター係数(f)は、低石炭化度炭の銘柄毎に定まる固有の特性値である。高石炭化度炭に低石炭化度炭を配合した配合炭をJIS−M8801で規定された昇温速度である3℃/分で膨張比容積を測定する。高石炭化度炭の膨張比容積(測定実績)と上記配合炭の配合からの膨張比容積(計算)の比がIFである。低石炭化度炭の割合を横軸に、上記で求めたIFを縦軸にプロットした場合の例を図1に示す(特許文献1、図1)。上記の式(1)より、図1の直線の勾配がイナートファクター係数(f)であり、低石炭化度炭の配合1%あたりの膨張阻害の程度である。
イナートファクター係数(f)は、低石炭化度炭の銘柄毎に定まる固有の特性値である。
上記のイナートファクター係数(f)を求めるのは、図1に示す勾配であるから、低石炭化度炭の配合割合を変更した配合炭についての膨張比容積の測定が必要であり、手間とコストがかかる。
そこで、本発明者は、簡便で、かつ精度が高いイナートファクター係数(f)の推定方法について検討した。
具体的には、本発明者は、低石炭化度炭の全膨張率がイナートファクター係数(f)に影響していると着想し、低石炭化度炭の全膨張率からイナートファクター係数(f)を推定する方法を考えた。
しかし、JIS−M8801で規定された昇温速度である3℃/分の昇温速度では、表1に示すA炭〜F炭の6種類の低石炭化度炭の全膨張率(TD)はすべて0%であり、銘柄毎の差が出ない。尚、VM(%)は、揮発分である。
また、結果を表2に示すように、A炭〜F炭においては3℃/minであらかじめイナートファクター係数(f)を測定しておき、12℃/minで測定した膨張比容積(SV’)とイナートファクター係数(f)の関係を調べたところ、両者の間には図2に示すように良い相関が得られた。この関係に基づけば、イナートファクター係数(f)が未知のA炭〜F炭以外の、膨張性を有しない低石炭化度炭について、12℃/minの昇温速度での膨張比容積(SV‘)を測定すれば、イナートファクター係数(f)を得ることができる。
図2において、SV’とfとの関係は、下記の式(2)となる。
f=-0.734SV’5+ 6.214 SV’4 - 20.921 SV’3 + 35.039 SV’2 - 29.2 SV’ + 9.696・・・・(2)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SV’:12℃/minで測定した膨張比容積[cm3/g]である。
低石炭化度炭は、12℃/分の昇温条件で膨張比容積(SV’)を測定し、式(2)も用いて推定した。また、イナートファクター(IF)は、式(1)により求めた。
また、体積破壊粉率(DI6-15)は、石炭の再固化温度と体積破壊粉率(DI6-15)との関係をあらかじめ調べておき、石炭の再固化温度を測定することにより求めた値を表3に示している。
コークス強度(DI150 15)は、表面破壊強度(DI150 6) と体積破壊粉率(DI150 6-15)から求めた。
以上の通り、揮発分が30質量%以上で全膨張率が0%の低石炭化度炭を、配合割合を5%〜20%の間で変更した場合について、コークス強度を推定した。
本発明方法により推定されたコークス強度の精度を確認するために、同様の配合条件で得られたコークスの強度を実績として測定し、推定値と比較した。
その結果は、図4に示す通り、推定値は実績値とほぼ同じ値となっており、精度良く推定できることが確認できた。
Claims (2)
- 揮発分が30質量%以上で全膨張率が0%の低石炭化度炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの強度の推定方法であって、
前記高炉用コークスの強度を、コークスの表面破壊により生成する粉コークス量(表面破壊粉コークス量)およびコークスの体積破壊により生成する粉コークス量(体積破壊粉コークス量)の和より求め、
前記表面破壊粉コークス量を、配合する高石炭化度炭の軟化時の膨張比容積と、配合炭の装入密度と、低石炭化度炭が高石炭化度炭の軟化時の膨張を阻害する程度を表す下記式(1)のイナートファクター(IF)から算出する高石炭化度炭の軟化時の充填度から求めるに際し、
前記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)と、JIS−M8801で規定された昇温速度である3℃/分を超える速度で測定した前記全膨張率が0%の低石炭化度炭の膨張比容積(SV’)との関係性を、あらかじめ求めておき、配合を予定している全膨張率が0%の低石炭化度炭を3℃/分を超える昇温速度で測定した膨張比容積(SV’)の値から、前記の関係性に基きイナートファクター係数(f)を求め、さらに下記式(1)により算出されるイナートファクター(IF)を用いて、コークス強度を推定することを特徴とするコークス強度の推定方法。
IF =1.00−f・x・・・・・(1)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、x:低石炭化度炭の配合率[%]である。 - 前記イナートファクター係数(f)と膨張比容積(SV’)との関係性が、下記の式(2)であることを特徴とする請求項1に記載のコークス強度の推定方法。
f=-0.734SV’5 + 6.214 SV’4 - 20.921 SV’3 + 35.039 SV’2 - 29.2 SV’ + 9.696・・・(2)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SV’:12℃/minで測定した膨張比容積[cm3/g]である。
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