JP2021042378A - 石炭のイナートファクター係数推定方法及びコークス表面破壊強度の推定方法 - Google Patents

石炭のイナートファクター係数推定方法及びコークス表面破壊強度の推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高石炭化度炭と全膨張率が0%である劣質炭を用いてコークスを製造する場合のコークス強度の推定方法を提供する。【解決手段】劣質炭をVMが30質量%以上の高VM劣質炭とそれ未満の低VM劣質炭に分類し、高VM劣質炭では、3℃/分を超える昇温速度S1で測定した膨張比容積からイナートファクター係数fを求め、低VM劣質炭では、溶媒抽出率α測定して、fを求め、求められたfを用いて配合する劣質炭の銘柄や配合率に応じたイナートファクターIFを求め、予め求めておいた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、この補正空隙充填度と劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均して配合炭の空隙充填度を求め、予め求めておいた空隙充填度と表面破壊強度の関係から表面破壊強度の推定値を求めるようにする。【選択図】図4

Description

本発明は、石炭のイナートファクター係数推定方法及び配合炭の一部に劣質炭を使用する場合のコークス強度の推定方法に関する。
高炉の通気性を確保し、安定的に操業するために、高炉で用いられるコークスには高強度な品質が求められている。このようなコークス製造用の石炭において、良質な石炭は、資源的に枯渇状態にあるのに対して、劣質な石炭は、埋蔵量が豊富である。そのため、安価な劣質炭の配合率を高くすることが望まれている。
劣質炭の配合率を高くすると、石炭粒子の膨張および結合が不十分となりコークス強度の低下を招くことから、劣質炭を配合した場合のコークス強度を事前に精度よく予測することが重要となっている。
代表的なコークス強度の推定方法として、特許文献1には、石炭軟化時の膨張比容積SVと装入嵩密度BDから石炭軟化溶融時の空隙充填度を求め、この空隙充填度からコークスの表面破壊強度を推定する方法が開示されている。
なお、表面破壊強度とは、ドラム強度の6mm指数(DI150 6)、すなわちドラムを150回転させた後の篩目6mmの篩でふるい分けた篩上(粒径6mm超)のコークス質量の全装入コークス質量に対する百分率である。以下では、表面破壊強度をDI150 6と表記することがある。
石炭は、全膨張率によって、全膨張率が0%超の石炭と、全膨張率が0%の劣質炭の2つに大きく分類され、全膨張率が0%超の石炭は、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と470℃未満である低石炭化度炭の二つに分類される。
劣質炭が配合された配合炭のコークスの表面破壊強度を空隙充填度に基づいて推定する際に、膨張比容積は、配合炭中の各石炭の実測値の加重平均値を用いる。
しかし、劣質炭の配合割合が増大すると、石炭の膨張比容積には加成性が成立しないため、特許文献1に開示の方法では、十分な正確性で表面破壊強度を推定できないことがあった。
これらの石炭を配合した配合炭を乾留した際のコークスの強度を推定するためには、高石炭化度炭に対する低石炭化度炭あるいは劣質炭の膨張性阻害という概念が重要であり、この膨張性阻害はイナートファクター(イナート係数)という指標によって定量化できることが特許文献2などで明らかになっている。
しかし、特許文献2では、JIS M8801に規定された装置を用いて、3.0℃/分の昇温速度で昇温した時に膨張するような石炭を対象としており、全膨張率が0%の劣質炭を配合する場合のコークス強度の推定については開示されていない。
これに対し、全膨張率が0%の劣質炭を配合炭の一部に用いて製造するコークスの表面破壊強度の推定をするにあたり、3℃/分以上の昇温速度で測定した劣質炭の高速昇温膨張比容積の値を用いて高石炭化度炭の表面破壊強度に関するイナートファクターを求め、これを用いて劣質炭の高速昇温膨張比容積値とイナートファクター係数の相関線を実験的に求めて高石炭化度炭の表面破壊強度の推定値を算出し、この推定値と劣質炭の表面破壊強度の推定値を用いて、配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合割合で加重平均することにより、コークスの表面破壊強度を推定する方法が特許文献3に開示されている。
特許第3971563号公報 特開平9−255965号公報 特開2016−69469号公報
特許文献3では、揮発分が30質量%以上の劣質炭のイナートファクター係数の推定は可能だが、揮発分が30質量%未満の劣質炭のイナートファクター係数の推定は開示されていない。 そこで、本発明は、全膨張率TDが0%の劣質炭のイナートファクター係数を、揮発分VMが30質量%未満の劣質炭を含む場合であっても、簡易な方法で推定すること、及び、その値を用いて、劣質炭が配合された配合炭のコークスの表面破壊強度を推定することを課題とする。
劣質炭の溶媒抽出率とイナートファクター係数との間に一定の相関があることを見出した。
そのような知見に基づいてなされた本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
[1] 所定の重量の石炭を溶媒抽出し、前記石炭の重量に対する溶媒抽出量の比である溶媒抽出率(α)を求める溶媒抽出率測定工程と、
前記溶媒抽出率測定工程を複数の異なる石炭について行い、石炭の溶媒抽出率(αi)と石炭のイナートファクター係数(fi)との関係(αi−fi相関)を求めるαi−fi相関取得工程と、
未知の石炭について前記溶媒抽出率測定工程を実施して、未知の石炭の溶媒抽出率(α’)を測定し、α’と前記αi−fi相関を用いて、未知の石炭のイナートファクター係数f’を求める、イナートファクター係数推定工程、
とを含む、石炭のイナートファクター係数推定方法。
[2] 前記石炭は、全膨張率が0%である劣質炭であり、
前記イナートファクター係数は、前記劣質炭を、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭または、全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される再固化温度が470℃未満である低石炭化度炭に配合してなる配合炭におけるイナートファクター係数である、[1]に記載の石炭のイナートファクター係数推定方法。
[3] 前記溶媒は、二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンを混ぜ合わせた混合溶媒であることを特徴とする[1]または[2]に記載の石炭のイナートファクター係数の推定方法。
[4] 劣質炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定方法であって、
前記配合炭は、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と、全膨張率が0%である劣質炭から成り
実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度を推定するに際し、予め、下記の(A)〜(B)の手順によって必要な関係を求めておき、
(A)種々の配合炭を用いて、実測した配合炭の膨張比容積SVと装入嵩密度BDとの積(SV×BD)で表される空隙充填度と、得られるコークスの表面破壊強度との関係(a1)を求めておき、
(B)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度Sで昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)を膨張性指標として測定し、
(B2)測定した高VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
(B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
次に、実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、(C)〜(H)の手順を行い、
(C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の空隙充填度を求め、
(D)用いる配合炭中の劣質炭の空隙充填度を求め、
(E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記高速昇温膨張比容積SV’(E)を測定し、得られたSV’(E)と前記(b2)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(G)劣質炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
(H)前記(G)で求めた高石炭化度炭の補正空隙充填度と、前記(D)で求めた劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均して、配合炭の空隙充填度を求め、前記(a1)の関係からコークスの表面破壊強度の推定値を求め、ここで、
IF=1.00−fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[−]、f:イナートファクター係数[−]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示すことを特徴とするコークスの表面破壊強度の推定方法。
[5] 劣質炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定方法であって、
前記配合炭は、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と、全膨張率が0%である劣質炭から成り
実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度を推定するに際し、予め、下記の(A)〜(B)の手順によって必要な関係を求めておき、
(A)種々の配合炭を用いて、実測した配合炭の膨張比容積SVと装入嵩密度BDとの積(SV×BD)で表される空隙充填度と、得られるコークスの表面破壊強度との関係(a1)を求めておき、
(B)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B2)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2’)を求め、
(B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
次に、実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、(C)〜(H)の手順を行い、
(C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の空隙充填度を求め、
(D)用いる配合炭中の劣質炭の空隙充填度を求め、
(E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b2’)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(G)劣質炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
(H)前記(G)で求めた高石炭化度炭の補正空隙充填度と、前記(D)で求めた劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均して、配合炭の空隙充填度を求め、前記(a1)の関係からコークスの表面破壊強度の推定値を求め、ここで、
IF=1.00−fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[−]、f:イナートファクター係数[−]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示すことを特徴とするコークスの表面破壊強度の推定方法。
[6] 前記高VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と高速昇温膨張比容積SV’(E)との関係(b2)は、高VM劣質炭で、12℃/分で測定した膨張比容積[cm/g]を用いた場合に、下記の式(b2)で表され、前記低VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記低VM劣質炭の溶媒抽出率(α)との関係(b3)は、下記の式(b3)で表され、
f=dSV’−dSV’+dSV’−dSV’+d ・・・(b2)
f=aα+aα+a ・・・(b3)
ここで、f:イナートファクター係数[−]、SV’:12℃/分で測定した膨張比容積SV’(H)[cm/g]、 α:溶媒抽出率[%]であり、d〜d及びa〜aは定数であり実験的に求められることを特徴とする[4]に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
[7] 前記高VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記高VM劣質炭の溶媒抽出率(α)との関係(b2’)は、下記の式(b2’)で表され、前記低VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記溶媒抽出率(α)との関係(b3)は、下記の式(b3)で表され、
f=a1’α+a2’α+a3’ ・・・(b2’)
f=aα+aα+a ・・・(b3)
ここで、f:イナートファクター係数[−]、α:溶媒抽出率[%]であり、a1’〜a3’及びa〜aは定数であり実験的に求められることを特徴とする[5]に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
[8] 配合炭に、全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃未満である低石炭化度炭をさらに含み、前記(B)を下記(B’)に置き換えるとともに、前記(G)を下記(G’)に置き換えて、
(B’)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、予め、低VM劣質炭、高VM劣質炭及び低石炭化度炭の膨張性指標と前記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度Sで昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)を膨張性指標としてそれぞれ測定し、
(B2)測定した高VM劣質炭の膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
(B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
(B5)低石炭化度炭イナートファクター係数(f)を0.0057として定め、
(G’)用いる劣質炭の膨張比容積に応じて前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)及び前記(B5)で定めた低石炭化度炭のイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭と低石炭化度炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
とすることを特徴とする[4]または[6]に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
[9] 配合炭に、全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃未満である低石炭化度炭をさらに含み、前記(B)を下記(B’)に置き換えるとともに、前記(G)を下記(G’)に置き換えて、
(B’)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、予め、低VM劣質炭、高VM劣質炭及び低石炭化度炭の膨張性指標と前記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B2)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2’)を求め、
(B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
(B5)低石炭化度炭イナートファクター係数(f)を0.0057として定め、
(G’)用いる劣質炭の膨張比容積に応じて前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)及び前記(B5)で定めた低石炭化度炭のイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭と低石炭化度炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
とすることを特徴とする[5]または[7]に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
[10] 前記溶媒は、二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンを混ぜ合わせた混合溶媒であることを特徴とする[4]〜[9]のいずれか1項に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
[11] 前記低VM劣質炭の酸素量が、2質量%超7質量%未満であり、前記高VM劣質炭の酸素量が7質量%以上であることを特徴とする[4]〜[10]のいずれか1項に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
本発明によれば、揮発分VMが30質量%未満の劣質炭が高石炭化度炭および/または低石炭化度炭の膨張性を阻害するイナートファクター係数を溶媒抽出という簡易な方法で推定し、その値を用いてコークスの表面破壊強度を推定することができる。
イナートファクター係数を導出するための基礎となる劣質炭配合割合と得られる膨張比容積との関係を示す図である。 イナートファクター係数を導出するための基礎となる劣質炭配合割合と図1から得られるイナートファクターとの関係を示す図である。 劣質炭の昇温速度12℃/分で測定したSV値とイナートファクター係数の関係の一例を示す図である。 低VM劣質炭の溶媒抽出率と、当該低VM劣質炭と高石炭化度炭を配合した配合炭におけるイナートファクター係数との関係の一例を示す図である。 本発明による補正空隙充填度と表面破壊強度の関係の一例を示す図である。 劣質炭の酸素量と揮発分の量の関係の一例を示す図である。 実施例1について、劣質炭配合割合に対する表面破壊強度の推定値と実測値を比較するための図である。 実施例2について、表面破壊強度の推定値と実測値を比較するための図である。 低VM劣質炭の溶媒抽出率と、当該低VM劣質炭と低石炭化度炭を配合した配合炭におけるイナートファクター係数との関係の一例を示す図である。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態は、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と、全膨張率が0%である劣質炭とを含む配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度を、配合する高石炭化度炭の膨張比容積SV、装入嵩密度BD及びイナートファクター(IF)の積(SV×BD×IF)から算出する高石炭化度炭の軟化時の空隙充填度と、劣質炭の空隙充填度との加重平均値から、あらかじめ実測した配合炭膨張比容積値から求めた空隙充填度と表面破壊強度の関係に基づいて推定するに際し、全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、予め、高VM劣質炭の膨張性指標とイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係および低VM劣質炭の溶媒抽出率とイナートファクター係数との関係をそれぞれ求めておき、推定しようとする配合炭の配合に応じて、低VM劣質炭および/または高VM劣質炭のイナートファクター係数(f)を用いて、コークスの表面破壊強度を推定するものである。
本発明者らは、全膨張率TDが0%で揮発分VMが30質量%未満の劣質炭が高石炭度化炭の膨張に及ぼす影響を検討した結果、揮発分VMが30質量%未満の劣質炭では、特許文献3のように、JIS M8801で規定された昇温速度(3℃/分)より早い12℃/分の速度で昇温して測定した膨張比容積(SV’)とイナートファクター係数との間に特定の相関関係が認められなかった。
そこで、揮発分VMが30質量%未満の劣質炭(a、b、c、d)について、二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンを同体積で混ぜ合わせた混合溶媒で抽出率を測定したところ、測定値とイナートファクター係数との間に有意な相関関係が認められた。
以下このような知見が得られた実験について説明する。
まず、特許文献3と同様に高石炭化度炭に低VM劣質炭を配合した配合炭の膨張比容積を前記の昇温速度(3℃/分)で測定し、その結果から配合割合ごとにイナートファクターを求め、配合割合とイナートファクターの関係から低VM劣質炭の銘柄ごとのイナート係数を求めた。
表1に示す性状の揮発分VMが30質量%未満の低VM劣質炭A〜Gと高石炭度化炭を用い、それらを1.5mm以下100質量%に粉砕後、高石炭化度炭に対し、低VM劣質炭を0〜40質量%配合し、嵩密度0.90 g/cmになるよう反応管に充填し、加熱炉にて昇温速度3℃/分で昇温させることで高石炭度化炭及び配合炭の膨張比容積を測定した。
また低VM劣質炭の二硫化炭素/N−メチル−2−ピロリドン混合溶媒抽出については、以下のようにした。
低VM劣質炭を0.15mm以下100質量%に粉砕後、0.5g採取し、二硫化炭素/N−メチル−2−ピロリドン混合溶媒50mLと混合し、超音波振動を与えた。その後、遠心分離とろ過により固液分離して、抽出残渣をアセトンで洗浄した後に80℃、12時間の条件で減圧乾燥させて得られた固体粉末の重量を測定し、抽出操作前の重量0.5gとの差分から低VM劣質炭の溶媒抽出率を測定した。上記の石炭粒径、石炭重量、溶媒量、抽出残渣の乾燥条件を含む石炭の溶媒抽出の条件は、最適な条件の一例であるが、本発明のイナートファクター推定のための石炭の溶媒抽出の条件は、上記に制限されるものではない。各石炭の溶媒抽出率の測定において、同一の溶媒抽出の条件で行えばよい。二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンの混合比(体積比)は、4:6〜6:4の範囲が好ましい。他の溶媒として、イオン液体であるジメチルアンモニウム−ジメチルカルバメート、トルエンとN−メチル−2ピロリドン混合溶媒、1−メチルナフタレン等を用いてもよい。
G炭について、G炭の配合割合の異なる配合炭について測定された膨張比容積とG炭の配合割合との関係を図1に示す。図1の通り、実測値は加重平均線を下回るため、劣質炭が高石炭化度炭の膨張を阻害していることが分かる。
また、G炭について、各配合割合でのイナートファクターを、高石炭化度炭の膨張比容積(測定実績)と加重平均による膨張比容積(計算値)との比(測定実績/計算値)として求めた結果を、図2に示す。
イナートファクター(IF)は、下記(1)式で定義される。
IF=1.00−fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[-]、f:イナートファクター係数[-]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示す。
G炭について、図2に示すように、劣質炭の配合割合とイナートファクターの間には、
y=−0.0113x+1
の関数関係にあることが認められ、その直線の傾きの絶対値から、イナートファクター係数として0.0113が得られた。
他のA〜F炭についても、同様にイナートファクター係数を求めた。
表2に、A〜G炭について、昇温速度12℃/分で測定したSV’値(SV12℃/分)及びイナートファクター係数を示す。
なお、以下の表1、2では、特許文献3の表1、表2で示されたA炭〜F炭の揮発分、灰分、全膨張率、SV12℃/分のデータを、H〜M炭のデータとして引用した。
Figure 2021042378
Figure 2021042378
劣質炭の昇温速度12℃/分で測定した膨張比容積SV’と前記のようにして求めたイナートファクター係数との関係を図3に示す。
図3より、劣質炭は、高速昇温膨張比容積値が同じであるにも関わらず、VMの値により2通りのイナートファクター係数をとることが分かる。
VMが30質量%以上の高VM劣質炭では、SV12℃/分(SV’)とイナートファクター係数(f)との間に、以下の関係があることを確認した。
f=0.088SV’−0.656SV’3+1.820SV’2−2.239SV’+1.036
これに対し、VMが10〜30質量%未満の低VM劣質炭では、12℃/分で測定した場合でも、膨張比容積が小さい領域では、SV12℃/分(SV’)とイナートファクター係数(f)との間に、有意な相関が得られなかった。
そこで、二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンを同体積で混ぜ合わせた混合溶媒で抽出率の測定を試みた。
結果を表3及び図4に示す。

Figure 2021042378
図4より、溶媒抽出率αとイナートファクター係数との間に次の二次式で表される明瞭な関係性が認められた。
f=−0.000013344α−0.000211935α+0.013162819 ・・・(2)
本発明では、以上の検討結果を踏まえ、劣質炭をVMが30質量%以上の高VM劣質炭と10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭に分類し、高VM劣質炭では、3℃/分を超える昇温速度Sで測定した膨張比容積からイナートファクター係数を求め、低VM劣質炭では、溶媒抽出率を測定して、イナートファクター係数を求め、求められたイナートファクター係数を用いて配合する劣質炭の銘柄や配合率に応じたイナートファクターIFを求め、このIFと高石炭化度炭の空隙充填度との積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、この補正空隙充填度と劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均し、あらかじめ求めておいた空隙充填度と表面破壊強度の関係から推定値を求めるようにする。
以下、このような本発明を構成する要件や好ましい要件について順次説明する。
(対象とする配合炭)
石炭には、下記の種類のものがある。
・高石炭化度炭:全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である石炭
・低石炭化度炭:全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流れ動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃未満である石炭
・劣質炭:全膨張率が0%である石炭
本発明では、上記高石炭化度炭と劣質炭とを含む配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度の推定を対象とするが、上記低石炭化度炭を更に含有する場合にも適用できる。
(事前の準備)
本発明では、予め、(A)配合炭の空隙充填度とコークス強度の関係、及び(B)低VM劣質炭の溶媒抽出率および高VM劣質炭の膨張比容積と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との各関係を主として求めておく。
以下(A)〜(B)について順次説明する。
(A)空隙充填度とコークス強度の関係を求める。
配合炭の膨張比容積SVを実測して、膨張比容積SVと嵩密度BDの積から求められる空隙充填度SV×BDを求めるとともに、配合炭を試験コークス炉を用いて乾留して作製したコークスの表面破壊強度を実測し、配合炭の空隙充填度とコークスの表面破壊強度DI150 との関係を予め求めておく。求めた関係を(a1)とする。図5にその一例を示す。ちなみに、ここで用いる配合炭の性状は特に規定されるものではなく、種々の石炭を用いることができる。また、図5の関係性を求める場合、空隙充填度SV×BDを変化させる必要がある。膨張比容積SVを変化させるには性状が相違する石炭を選択することで実施でき、嵩密度BDを変化させるには石炭粒度等を調整することで実施できる。
なお、膨張比容積SVは以下のようにして測定する。
先ず、JIS M8801に規定された細管に、石炭を粉体のまま、所定の装入密度(0.80[dry、g/cm])で高さ60mmに装入し、次に、細管内の配合炭の上にピストンを装入し、ピストンを装入した状態で細管を3.0±0.1℃/分の昇温速度で300℃から600℃まで加熱し、加熱終了した後の配合炭の高さを測定した。
なお、この調査においては、ピストンが石炭に及ぼす荷重は約110gとした。加熱終了後の配合炭高さをL[mm]とした。そして、以下の式から膨張比容積[cm/g]を求めた。
膨張比容積=L/(60×0.8)
(B)次に、全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を次の(B1)〜(B3)の手順によってそれぞれ求める。
IF=1.00−fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[-]、f:イナートファクター係数[-]、x:劣質炭の配合割合[%]を示す。
また、劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVは、実測が不可能である場合は、嵩密度0.80の逆数を用いることとした。
なお、イナートファクター及びイナートファクター係数は、以下のようにして求める。
まず、高石炭度化炭と劣質炭単味の膨張比容積を前述のように測定するとともに、高石炭度化炭に劣質炭を配合した配合炭の膨張比容積を前述のように測定し、配合炭の膨張比容積の加重平均値からのずれに基づいてイナートファクターを算出する(図1、2参照)。そして、劣質炭の配合割合とイナートファクターの間に上記式(1)で表される1次式の関係を見出し、その式からイナートファクター係数を求める。
図2に示す例では、一次式として、下式が、
y=−0.0113x+1
また、イナートファクター係数(f)として、0.0113が求められた例を示す。
(B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度Sで昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)と、低VM劣質炭を前記昇温速度Sよりも高い所定の昇温速度Sで昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(L)を膨張性指標としてそれぞれ測定する。
3℃/分よりも高い所定の昇温速度S1としては、(B2)の「高VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係」を求めるために使用する複数の高VM劣質炭について、膨張性が発現する昇温速度以上に設定されるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、12℃/分以上の昇温速度が挙げられる。
(B2)測定した各高VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(H)とイナートファクター係数(f)との関係(b2)を求める。
3℃/分の昇温速度で測定したイナートファクター係数(f)と、12℃/分の昇温速度で測定した膨張比容積(SV’)との間には、下記式(b2)で表される相関があることが確認された。
高VM劣質炭について、12℃/分の昇温速度での膨張比容積(SV’)を測定すれば、イナートファクター係数(f)との関係式を得ることができる。
f=dSV’−dSV’+dSV’−dSV’+d ・・・(b2)
ここで、f:イナートファクター係数[−]、SV’:12℃/分の昇温速度で測定した膨張比容積SV’(H)[cm/g]である。d〜dは実験的に求められる係数であり、図3では、d=0.088、d=0.656、d=1.820、d=2.239、d=1.036である。
(B3)低VM劣質炭の溶媒抽出率を求める。
(B4)次に、溶媒抽出率(α)とイナートファクター係数(f)の関係(b3)を求める。
低VM劣質炭について、二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンを同体積で混ぜ合わせた混合溶媒で抽出率(α)を測定すれば、イナートファクター係数(f)との関係式を得ることができる。
f=aα+aα+a ・・・(b3)
ここで、f:イナートファクター係数[−]、α:溶媒抽出率(%)である。a〜aは実験的に求められる係数であり、図4の例では、a=0.000013344、a=−0.000211935、a=0.013162819である。
(表面破壊強度の推定)
実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、下記(C)〜(H)の手順により求める。
(C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の膨張比容積と装入嵩密度との積で表される空隙充填度を求める。
高石炭化炭が複数あるときは、高石炭化度炭のSVは加重平均値を用いる。
(D)用いる配合炭中の劣質炭の膨張比容積と装入嵩密度との積で表される劣質炭の空隙充填度を求める。
劣質炭が複数あるときは、劣質炭のSVは加重平均値を用いる。
(E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記膨張比容積SV’(H)を求め、求められたSV’(H)と前記(b4)の関係からイナートファクター係数(f)を求める。
(F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、溶媒抽出率(α)を求め、求められた溶媒抽出率(α)と前記イナートファクター係数(f)との関係に応じて、イナートファクター係数(f)を求める。
(G)劣質炭の膨張比容積SV’(H)および/または溶媒抽出率(α)に応じて、前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求める。配合する劣質炭が複数ある場合は、配合する全劣質炭の配合量を基準とした加重平均として求められたIFを用いる。
(H)前記(G)で求めた高石炭化度炭の補正空隙充填度と、前記(D)で求めた劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均し、前記(a1)の関係からコークスの表面破壊強度の推定値を求める。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態によるコークス表面破壊強度の推定方法が第1の実施形態と異なる点を以下に説明する。
本実施形態では、低VM劣質炭のみならず高VM劣質炭のイナートファクター係数も各石炭の溶媒抽出率によって推定する。すなわち、第1の実施形態の(B1)〜(B2)は、下記のように置き換えられる。
(B1)高VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B2)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2’)を求め、
(B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
(B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
ここで、溶媒抽出率の測定方法は、前述したとおりである。
また、高VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記高VM劣質炭の溶媒抽出率(α)との関係(b2’)は、下記の式(b2’)で表され、前記低VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記溶媒抽出率(α)との関係(b3)は、下記の式(b3)で表される。
f=a1’α+a2’α+a3’ ・・・(b2’)
f=aα+aα+a ・・・(b3)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、α:溶媒抽出率[%]である。a1’〜a3’及びa〜aは定数であり実験的に求められる。
さらに、第1の実施形態の(E)と(F)は、下記のように置き換えられる。
(E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b2’)の関係からイナートファクター係数(f)を求める。
(F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求める。
本実施形態のその他の手順は、第1の実施形態と同様である。
本発明は、以上の手順によって、高石炭化度炭に劣質炭などを配合した配合炭の表面破壊強度を精度よく推定できるものであるが、本発明者は、劣質炭の高速昇温比容積とイナートファクター係数の相関関係がVM値によって異なる原因についてさらに検討した。
その結果、石炭中の揮発分は酸素量と相関があり、酸素量が多い劣質炭は、高石炭化度炭に対する酸素の膨張性阻害効果が有り、酸素量が少ない劣質炭は、高石炭化度炭に対する酸素の膨張性阻害効果が小さく、VMの範囲よって、高速昇温膨張比容積とイナートファクター係数の関係が異なっていると考えられた。
そこで、低VM劣質炭として前記A〜F炭の酸素量を測定し、VM値との関係を調べた。また高VM劣質炭については、特許4691212号公報に開示されている酸素量とVM値のデータを用いた。図6に得られた結果を示す。
この結果から、高VM劣質炭は、含有酸素量が7質量%以上の石炭であり、低VM劣質炭は、含有酸素量が2質量%以上7質量%未満の石炭であることが確認された。
このことから、酸素量から、低VM劣質炭と高VM劣質炭を区別できることも分かった。
また、高石炭化度炭に劣質炭を配合した時のイナートファクター係数が、劣質炭の溶媒抽出率から求められるのと同様に、低石炭化度炭に劣質炭を配合した時のイナートファクター係数もまた、劣質炭の溶媒抽出率から求めることができる。すなわち、低石炭度化炭と劣質炭単味の膨張比容積を前述のように測定するとともに、低石炭化度炭に劣質炭を配合した配合炭の膨張比容積を前述のように測定し、配合炭の膨張比容積の加重平均値からのずれに基づいてイナートファクターを算出する。より具体的には、各配合割合でのイナートファクターを、配合炭の膨張比容積(測定実績)と加重平均による膨張比容積(計算値)との比(測定実績/計算値)として求める。そして、劣質炭の配合割合とイナートファクターの間に上記式(1)で表される1次式の関係を見出し、その式からイナートファクター係数を求める。複数の異なる劣質炭に対して、上記の方法に従って、イナートファクター係数を求める。
次に、上述した方法に従って、各劣質炭に対して、溶媒抽出率(α)を測定する。そして、溶媒抽出率とイナートファクター係数との相関を求める。ここで、劣質炭としては、低VMおよび高VMのもののいずれであってもよい。このようにして、溶媒抽出率とイナートファクター係数との間には、図4あるいは式(b3)のような関係が得られるので、測定対象の劣質炭の溶媒抽出率を測定すれば、この劣質炭の低石炭化度炭との配合におけるイナートファクター係数を推定することができる。
図9に、表3に掲げた劣質炭a〜dについて得られた溶媒抽出率と、低石炭化度炭との配合におけるイナートファクター係数の関係を示す。低石炭化度炭は、全膨張率60体積%、再固化温度462℃、灰分8.7質量%、揮発分37.6質量%の性状の石炭を用いた。図9より、溶媒抽出率αとイナートファクター係数との間に次の二次式で表される明瞭な関係性が認められた。
f=−0.00002425α+0.00008552α+0.01379491
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
(実施例1)
高石炭化度炭と低VM劣質炭(表1のG炭を使用)の2種類を配合した場合の強度推定を行った。表5に低VM劣質炭の配合量を変えて作製したコークスのコークス強度の実測値を示す。高石炭化度炭は、全膨張率124体積%、再固化温度496℃、灰分11.0質量%、揮発分23.6質量%の性状の石炭を用いた。
推定に当たり、配合炭の空隙充填度(配合炭の実測SVと嵩密度の積)と表面破壊強度DI150 6の実測値の関係を予め求めることによって、図5に示す両者の関係を求めた。
石炭は、3.0mm以下90質量%に粉砕した石炭を表5の通り配合し、実機装入炭嵩密度0.80g/cm相当の嵩密度にて充填した後、実機の炉温1250℃相当の炉温である試験コークス炉(Nomura et al. ,2004 Fuel 38 1771-1776)を用いて、乾留した。
Figure 2021042378
G炭はVM<30の低VM劣質炭であるため、溶媒抽出を用いてイナートファクター係数を推定する。G炭は抽出率=6.3%であるため、予め求められていた図4の関係(b2)よりイナートファクター係数(f)=0.0113を求めた。
次に、式(1)よりイナートファクターIFを求め、高石炭化度炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを2.15、低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.25とし、嵩密度0.80として、高石炭化度炭の空隙充填度(SV*BD*IF)と劣質炭の空隙充填度(SV*BD)を求めた。なお低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVは、実測が不可能であるため、嵩密度0.80の逆数を用いることとした。
そして、高石炭化度炭と劣質炭の配合比によって配合炭の空隙充填度の加重平均値を導出し、図5の相関を用いて、コークスの表面破壊強度を推定した。
それぞれの計算値と、図5から求められた配合炭のコークス表面破壊強度DI150 の推定値を表6に示す。表5と表6の比較から、本発明の方法によれば、劣質炭の配合割合が0体積%から30体積%まで、精度よく推定できていることがわかる。
Figure 2021042378
次に、比較例1として、特許文献2(特開平9−255965号公報)に開示の方法を援用し、全ての低VM劣質炭のイナートファクター係数を一定とし、コークス強度の推定を行った結果を表7と図7に示す。なお、イナートファクター係数は0.0057とした。表5と表7の比較から、比較例1では、劣質炭の配合割合が30体積%では、コークスの表面破壊強度を過大評価していることがわかる。
また、比較例2として、特許文献3(特開2016−69469号公報)に開示の高VM劣質炭のイナートファクター係数推定法を低VM劣質炭に援用し、(f=0.088SV’−0.656SV’3+1.820SV’2−2.239SV’+1.036)を低VM劣質炭にも適用させた際の、イナートファクター係数を用いてコークスの強度推定を行った結果を表8に示す。なお、G炭に対し(f=0.088SV’−0.656SV’3+1.820SV’2−2.239SV’+1.036)を適用すると、イナートファクター係数は0.0239となる。表5と表8の比較から、比較例2では、劣質炭の配合割合が30体積%では、コークスの表面破壊強度を過小評価していることがわかる。
表7、8および図7より、本発明の推定方法を用いれば従来の推定方法である比較例1あるいは比較例2よりもコークスの表面破壊強度の推定精度が向上することが分かる。
Figure 2021042378
Figure 2021042378
(実施例2)
高石炭化度炭と低石炭化度炭と劣質炭(表1のG炭を使用)の3種類を表9に示す割合で配合した場合の強度推定を行った。
高石炭化度炭は実施例1と同じ性状の石炭を用いた。また、低石炭化度炭は、全膨張率26体積%、再固化温度460℃、灰分8.8質量%、揮発分35.5質量%の性状の石炭を用いた。石炭の乾留は、実施例1と同様の方法で行った。
表9に作製したコークスのコークス表面破壊強度DI150 の実測値を合わせて示す。
Figure 2021042378
G炭はVM<30の低VM劣質炭であるため、溶媒抽出を用いてイナートファクター係数を推定する。G炭は抽出率=6.3%であるため、予め求められていた図4の関係(b2)よりイナートファクター係数(f)=0.0113を求めた。
次に、式(1)よりイナートファクターIFを求め、高石炭化度炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.79、低石炭化度炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.30、低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.25とし、嵩密度0.80として、高石炭化度炭の補正空間充填度(SV*BD*IF)と、低石炭化度炭と劣質炭の空間充填度(SV*BD)を求めた。なお低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVは、実測が不可能であるため、嵩密度0.80の逆数を用いることとした。
そして、高石炭化度炭と低石炭化度炭と劣質炭の配合比によって配合炭の空間充填度の加重平均値を導出し、図5の相関を用いて、コーククスの表面破壊強度を推定した。
次に、比較例3として、特許文献2(特開平9−255965号公報)に開示の方法を援用し、全ての低VM劣質炭のイナートファクター係数を一定とし、コークス強度の推定を行った。なお、イナートファクター係数は0.0057とした。
また、比較例4として、特許文献3(特開2016―69469号公報)に開示の高VM劣質炭のイナートファクター係数推定法を低VM劣質炭に援用し、式(f=0.088SV’−0.656SV’3+1.820SV’2−2.239SV’+1.036)を低VM劣質炭にも適用させた際の、イナートファクター係数を用いてコークス強度の推定を行った。
なお、G炭に対し(f=0.088SV’−0.656SV’3+1.820SV’2−2.239SV’+1.036)を適用すると、イナートファクター係数は0.0239となる。
本発明及び比較例について、それぞれの推定途中の計算値と図5から求められた配合炭のコークス表面破壊強度DI150 の推定値を表10に示す。また、実測値とそれぞれの推定値をまとめて図8に示す。
表10および図8より、本発明の推定方法を用いれば従来の推定方法である比較例3あるいは比較例4よりもコークスの表面破壊強度の推定精度が向上することが分かる。
Figure 2021042378

Claims (11)

  1. 所定の重量の石炭を溶媒抽出し、前記石炭の重量に対する溶媒抽出量の比である溶媒抽出率(α)を求める溶媒抽出率測定工程と、
    前記溶媒抽出率測定工程を複数の異なる石炭について行い、石炭の溶媒抽出率(αi)と石炭のイナートファクター係数(fi)との関係(αi−fi相関)を求めるαi−fi相関取得工程と、
    未知の石炭について前記溶媒抽出率測定工程を実施して、未知の石炭の溶媒抽出率(α’)を測定し、α’と前記αi−fi相関を用いて、未知の石炭のイナートファクター係数f’を求める、イナートファクター係数推定工程、
    とを含む、石炭のイナートファクター係数推定方法。
  2. 前記石炭は、全膨張率が0%である劣質炭であり、
    前記イナートファクター係数は、前記劣質炭を、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭または、全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される再固化温度が470℃未満である低石炭化度炭に配合してなる配合炭におけるイナートファクター係数である、請求項1に記載の石炭のイナートファクター係数推定方法。
  3. 前記溶媒は、二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンを混ぜ合わせた混合溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の石炭のイナートファクター係数の推定方法。
  4. 劣質炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定方法であって、
    前記配合炭は、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と、全膨張率が0%である劣質炭から成り
    実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度を推定するに際し、予め、下記の(A)〜(B)の手順によって必要な関係を求めておき、
    (A)種々の配合炭を用いて、実測した配合炭の膨張比容積SVと装入嵩密度BDとの積(SV×BD)で表される空隙充填度と、得られるコークスの表面破壊強度との関係(a1)を求めておき、
    (B)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
    (B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度Sで昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)を膨張性指標として測定し、
    (B2)測定した高VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
    (B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
    (B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
    次に、実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、(C)〜(H)の手順を行い、
    (C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の空隙充填度を求め、
    (D)用いる配合炭中の劣質炭の空隙充填度を求め、
    (E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記高速昇温膨張比容積SV’(E)を測定し、得られたSV’(E)と前記(b2)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
    (F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
    (G)劣質炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
    (H)前記(G)で求めた高石炭化度炭の補正空隙充填度と、前記(D)で求めた劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均して、配合炭の空隙充填度を求め、前記(a1)の関係からコークスの表面破壊強度の推定値を求め、ここで、
    IF=1.00−fx ・・・(1)
    ここで、IF:イナートファクター[−]、f:イナートファクター係数[−]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示すことを特徴とするコークスの表面破壊強度の推定方法。
  5. 劣質炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定方法であって、
    前記配合炭は、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と、全膨張率が0%である劣質炭から成り
    実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度を推定するに際し、予め、下記の(A)〜(B)の手順によって必要な関係を求めておき、
    (A)種々の配合炭を用いて、実測した配合炭の膨張比容積SVと装入嵩密度BDとの積(SV×BD)で表される空隙充填度と、得られるコークスの表面破壊強度との関係(a1)を求めておき、
    (B)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
    (B1)高VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
    (B2)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2’)を求め、
    (B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
    (B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
    次に、実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、(C)〜(H)の手順を行い、
    (C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の空隙充填度を求め、
    (D)用いる配合炭中の劣質炭の空隙充填度を求め、
    (E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b2’)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
    (F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、前記溶媒抽出率(α)を測定し、得られた溶媒抽出率(α)と前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
    (G)劣質炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
    (H)前記(G)で求めた高石炭化度炭の補正空隙充填度と、前記(D)で求めた劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均して、配合炭の空隙充填度を求め、前記(a1)の関係からコークスの表面破壊強度の推定値を求め、ここで、
    IF=1.00−fx ・・・(1)
    ここで、IF:イナートファクター[−]、f:イナートファクター係数[−]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示すことを特徴とするコークスの表面破壊強度の推定方法。
  6. 前記高VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と高速昇温膨張比容積SV’(E)との関係(b2)は、高VM劣質炭で、12℃/分で測定した膨張比容積[cm/g]を用いた場合に、下記の式(b2)で表され、前記低VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記低VM劣質炭の溶媒抽出率(α)との関係(b3)は、下記の式(b3)で表され、
    f=dSV’−dSV’+dSV’−dSV’+d ・・・(b2)
    f=aα+aα+a ・・・(b3)
    ここで、f:イナートファクター係数[−]、SV’:12℃/分で測定した膨張比容積SV’(H)[cm/g]、 α:溶媒抽出率[%]であり、d〜d及びa〜aは定数であり実験的に求められることを特徴とする請求項4に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
  7. 前記高VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記高VM劣質炭の溶媒抽出率(α)との関係(b2’)は、下記の式(b2’)で表され、前記低VM劣質炭のイナートファクター係数(f)と前記溶媒抽出率(α)との関係(b3)は、下記の式(b3)で表され、
    f=a1’α+a2’α+a3’ ・・・(b2’)
    f=aα+aα+a ・・・(b3)
    ここで、f:イナートファクター係数[−]、α:溶媒抽出率[%]であり、a1’〜a3’及びa〜aは定数であり実験的に求められることを特徴とする請求項5に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
  8. 配合炭に、全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃未満である低石炭化度炭をさらに含み、前記(B)を下記(B’)に置き換えるとともに、前記(G)を下記(G’)に置き換えて、
    (B’)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、予め、低VM劣質炭、高VM劣質炭及び低石炭化度炭の膨張性指標と前記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
    (B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度Sで昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)を膨張性指標としてそれぞれ測定し、
    (B2)測定した高VM劣質炭の膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
    (B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
    (B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
    (B5)低石炭化度炭イナートファクター係数(f)を0.0057として定め、
    (G’)用いる劣質炭の膨張比容積に応じて前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)及び前記(B5)で定めた低石炭化度炭のイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭と低石炭化度炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
    とすることを特徴とする請求項4または6に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
  9. 配合炭に、全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃未満である低石炭化度炭をさらに含み、前記(B)を下記(B’)に置き換えるとともに、前記(G)を下記(G’)に置き換えて、
    (B’)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、予め、低VM劣質炭、高VM劣質炭及び低石炭化度炭の膨張性指標と前記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
    (B1)高VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
    (B2)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2’)を求め、
    (B3)低VM劣質炭の溶媒による溶媒抽出率(α)を測定し、
    (B4)測定した溶媒抽出率(α)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
    (B5)低石炭化度炭イナートファクター係数(f)を0.0057として定め、
    (G’)用いる劣質炭の膨張比容積に応じて前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)及び前記(B5)で定めた低石炭化度炭のイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭と低石炭化度炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
    とすることを特徴とする請求項5または7に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
  10. 前記溶媒は、二硫化炭素とN−メチル−2−ピロリドンを混ぜ合わせた混合溶媒であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
  11. 前記低VM劣質炭の酸素量が、2質量%超7質量%未満であり、前記高VM劣質炭の酸素量が7質量%以上であることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
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