JP7070228B2 - コークスの表面破壊強度の推定方法 - Google Patents
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Description
なお、表面破壊強度とは、ドラム強度の6mm指数(DI150 6)、すなわちドラムを150回転させた後の篩目6mmの篩でふるい分けた篩上(粒径6mm超)のコークス質量の全装入コークス質量に対する百分率である。以下では、表面破壊強度をDI150 6と表記することがある。
しかし、劣質炭の配合割合が増大すると、石炭の膨張比容積には加成性が成立しないため、特許文献1に開示の方法では、十分な正確性で表面破壊強度を推定できないことがあった。
しかし、特許文献2では、JIS M8801に来定された装置を用いて、3.0℃/分の昇温速度で昇温した時に膨張するような石炭を対象としており、全膨張率が0%の劣質炭を配合する場合のコークス強度の推定については開示されていない。
そこで、本発明は、全膨張率TDが0%の劣質炭のイナートファクター係数を、VMの値によらず、簡易な方法で推定し、その値を用いて、劣質炭が配合された配合炭のコークスの表面破壊強度を推定することを課題とする。
すなわち、劣質炭の高速昇温膨張比容積値とイナートファクター係数の相関線を、劣質炭のVMの大小(10<VM<30、30≦VM)によって2本導出し、その相関線を用いてそれぞれイナートファクター係数を推定することで、VMの値によらず劣質炭のイナートファクター係数が推定可能となることを見出した。
[1] 劣質炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定方法であって、
前記配合炭は、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と、全膨張率が0%である劣質炭から成り
実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度を推定するに際し、予め、下記の(A)~(B)の手順によって必要な関係を求めておき、
(A)種々の配合炭を用いて、実測した配合炭の膨張比容積SVと装入嵩密度BDとの積(SV×BD)で表される空隙充填度と、得られるコークスの表面破壊強度との関係(a1)を求めておき、
(B)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度S1で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)と、低VM劣質炭を前記昇温速度S1よりも高い所定の昇温速度S2で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(L)を膨張性指標としてそれぞれ測定し、
(B2)測定した低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(L)が閾値Tよりも大きい場合、当該膨張比容積SV’(L)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
(B3)測定した低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(L)が前記閾値T以下の場合、当該劣質炭の粘結力指数CIを膨張性指標として測定し、測定した粘結力指数CIと劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
(B4)測定した高VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b4)を求め、
次に、実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、(C)~(H)の手順を行うことを特徴とするコークスの表面破壊強度の推定方法。
(C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の空隙充填度を求め、
(D)用いる配合炭中の劣質炭の空隙充填度を求め、
(E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記高速昇温膨張比容積SV’(H)を求め、求められたSV’(H)と前記(b4)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、前記高速昇温膨張比容積SV’(L)を求め、求められたSV’(L)と前記閾値Tとの関係に応じて、以下のようにしてイナートファクター係数(f)を求め、
(F1)前記求められた高速昇温膨張比容積SV’(L)が前記閾値Tよりも大きい場合は、当該膨張比容積SV’と前記(b2)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(F2)前記求められた高速昇温膨張比容積SV’(L)が前記閾値T以下の場合は、当該膨張比容積SV’と前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(G)用いる劣質炭の高速昇温膨張比容積SV'に応じて、前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
(H)前記(G)で求めた高石炭化度炭の補正空隙充填度と、前記(D)で求めた劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均して、配合炭の空隙充填度を求め、前記(a1)の関係からコークスの表面破壊強度の推定値を求める。
IF=1.00-fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[-]、f:イナートファクター係数[-]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示す。
f=-b1SVL+b2 ・・・(b2)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SVL:低VM劣質炭の昇温速度80℃/分の膨張比容積[cm3/g]、b1、b2:実験的に求められる係数を示す。
f=-c1CI+c2 ・・・(b3)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、CI:低VM劣質炭のCI[-]、c1、c2:実験的に求められる係数を示す。
f=d1SV’4-d2SV’3+d3SV’2-d4SV’+d5 ・・・(b4)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SV’:12℃/分で測定した膨張比容積SV’(H)[cm3/g]である。d1~d5は定数であり、実験的に求められる。
(B’)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、予め、低VM劣質炭、高VM劣質炭及び低石炭化度炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度S1で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)と、低VM劣質炭を前記昇温速度S1よりも高い所定の昇温速度S2で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(L)を膨張性指標としてそれぞれ測定し、
(B2)測定した低VM劣質炭の膨張比容積SV’(L)が閾値Tよりも大きい場合、予め、当該膨張比容積SV’(L)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
(B3)測定した低VM劣質炭の膨張比容積SV’(L)が前記閾値T以下の場合、さらに当該劣質炭の粘結力指数CIを膨張性指標として測定し、予め、測定した粘結力指数CIと劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
(B4)測定した高VM劣質炭の膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b4)を求め、
(B5)低石炭化度炭イナートファクター係数(f)を0.0057として定め、
(G’)用いる劣質炭の膨張比容積に応じて前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)及び前記(B5)で定めた低石炭化度炭のイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭と低石炭化度炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
そこで、揮発分VMが30質量%未満の劣質炭について、12℃/分よりさらに早い昇温速度(80℃/分の速度)で昇温して膨張比容積(SV’)を測定したところ、測定値とイナートファクター係数との間に有意な相関関係が認められた。なお、「SV」は3℃/分の昇温速度で、「SV’」は3℃/分よりも高い昇温速度で測定した高速昇温膨張比容積を示している。
以下このような知見が得られた実験について説明する。
また低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積については、以下のようにした。
低VM劣質炭を1.5mm以下100質量%に粉砕後、嵩密度0.85g/cm3になるよう反応管に充填し、加熱炉にて昇温速度12℃/分で昇温させる、あるいは550℃に加熱した炉に入れて昇温させる(400℃~500℃間の平均昇温速度:80℃/分)ことで低VM劣質炭の膨張比容積を測定した。
また、G炭について、各配合割合でのイナートファクターを、以下の式を用いて計算して、図2に示す。
V=ΣIFXiVi
ここで、V:配合炭の膨張時最大比容積[cm3/g]、IF:イナートファクター、Xi:各石炭の配合率[%]、Vi:各石炭の膨張時最大比容積[cm3/g]を示す。また、高石炭化度炭以外はIFを1とする。
IF=1.00-fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[-]、f:イナートファクター係数[-]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示す。
y=-0.0113x+1
の関数関係にあることが認められ、その直線の傾きの絶対値から、イナートファクター係数として0.0113が得られた。
表2に、A~G炭について、昇温速度12℃/分で測定したSV’値(SV12℃/分)及びイナートファクター係数を示す。
なお、以下の表1、2では、特許文献3の表1、表2で示されたA炭~F炭の揮発分、灰分、全膨張率、SV12℃/分のデータを、H~M炭のデータとして引用した。
図3より、劣質炭は、高速昇温膨張比容積値が同じであるにも関わらず、VMの値により2通りのイナートファクター係数をとることが分かる。
VMが30質量%以上の高VM劣質炭では、SV12℃/分(SV’)とイナートファクター係数(f)との間に、以下の関係があることを確認した。
f=0.088SV’4-0.656SV’3+1.820SV’2-2.239SV’+1.036
そこで、さらに高速の80℃/分の昇温速度で測定することを試みた。
結果を表3及び図4、5に示す。
図7に、膨張比容積の測定の際、試料に挿入した熱電対の温度を測定した結果を示す。得られた昇温曲線から、炉の中央で測温した際、400~500℃の区間における平均昇温速度が83℃/分であったため、この手法を用いて測定した膨張比容積の値を、昇温速度80℃/分における膨張比容積(SV80℃/分)と表現することとする。
y=-0.0059x+0.0159
しかし、T以下の銘柄(□)では、膨張比容積に有意な差が得られなかった。
なお、粘結力指数CIとは、石炭利用技術用語辞典(社団法人燃料協会)P.252に示されているように、石炭1g(粒度0.25mm以下)に粉コークス9g(粒度0.25~0.30mm)を配合した試料を磁性るつぼ内に入れ900℃で7分間乾留してコークス化し、得られたコークスを0.42mmの篩にかけて、その篩上に溜まった質量を百分率で表した値である。
y=-0.05000x+0.07080
以下、このような本発明を構成する要件や好ましい要件について順次説明する。
石炭には、下記の種類のものがある。
・高石炭化度炭:全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である石炭
・低石炭化度炭:全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流れ動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃未満である石炭
・劣質炭:全膨張率が0%である石炭
本発明では、上記高石炭化度炭と劣質炭とを含む配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度の推定を対象とするが、上記低石炭化炭を更に含有する場合にも適用できる。
本発明では、予め、(A)配合炭の空隙充填度とコークス強度の関係、及び(B)低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張比容積と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を主として求めておく。
以下(A)~(B)について順次説明する。
配合炭の膨張比容積SVを実測して、膨張比容積SVと嵩密度BDの積から求められる空隙充填度SV×BDを求めるとともに、配合炭を試験コークス炉を用いて乾留して作製したコークスの表面破壊強度を実測し、配合炭の空隙充填度とコークスの表面破壊強度DI150 6との関係を予め求めておく。求めた関係を(a1)とする。図11にその一例を示す。ちなみに、ここで用いる配合炭の性状は特に規定されるものではなく、種々の石炭を用いることができる。また、図11の関係性を求める場合、空隙充填度SV×BDを変化させる必要がある。膨張比容積SVを変化させるには性状が相違する石炭を選択することで実施でき、嵩密度BDを変化させるには石炭粒度等を調整することで実施できる。
先ず、JIS M8801に規定された細管に、石炭を粉体のまま、所定の装入密度(0.90[dry、g/cm3])で高さ60mmに装入し、次に、細管内の配合炭の上にピストンを装入し、ピストンを装入した状態で細管を3.0±0.1℃/分の昇温速度で300℃から600℃まで加熱し、加熱終了した後の配合炭の高さを測定した。
なお、この調査においては、ピストンが石炭に及ぼす荷重は約110gとした。加熱終了後の配合炭高さをL[mm]とした。そして、以下の式から膨張比容積[cm3/g]を求めた。
膨張比容積=L/(60×0.8)
IF=1.00-fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[-]、f:イナートファクター係数[-]、x:劣質炭の配合割合[%]を示す。
また、劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVは、実測が不可能である場合は、嵩密度0.90の逆数を用いることとした。
まず、高石炭度化炭と劣質炭単味の膨張比容積を前述のように測定するとともに、高石炭度化炭に劣質炭を配合した配合炭の膨張比容積を前述のように測定し、配合炭の膨張比容積の加重平均値からのずれに基づいてイナートファクターを算出する(図1、2参照)。そして、劣質炭の配合割合とイナートファクターの間に上記式(1)で表される1次式の関係を見出し、その式からイナートファクター係数を求める。
図2に示す例では、一次式として、下式が、
y=-0.0113x+1
また、イナートファクター係数(f)として、0.0113が求められた例を示す。
3℃/分よりも高い所定の昇温速度S1としては、(B4)の「高VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係」を求めるために使用する複数の高VM劣質炭について、膨張性が発現する昇温速度以上に設定されるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、12℃/分以上の昇温速度が挙げられる。
また、昇温速度S2としては、前記の昇温速度S1よりも高い昇温速度であれば良いが、次の(B2)での「低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(L)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係」を複数の石炭で取得するためには、例えば、80℃/分以上が挙げられる。なお、昇温速度S2の上限は特に限定されないが、加熱した炉に石炭を入れて昇温させる方式での可能な昇温速度としては、例えば400℃/分程度が挙げられる。
まず、昇温速度S2で測定した低VM劣質炭の膨張比容積SV’(L)から、ほぼ膨れていないと判断できる膨張比容積値を閾値Tとして設定する。図4の例では、次の理由によりTを1.23cm3/gと設定した。
熱膨張による高さの変化=(熱膨張係数)×(温度)×(高温の金属ピストンの長さ)
=2.69mm
試料の質量=試料の高さ×試料の底面積×嵩密度×10-3
=2.56g
熱膨張後の比容積=(試料の高さ+熱膨張による高さの変化)×試料の底面積×10-3/試料の質量
=1.23cm3/g
ただし、ピストンに用いられるSUS310の熱膨張係数=16.3×10―6/℃、温度=550℃、高温になっている金属ピストンの長さ=300mm、試料の高さ=60 mm、試料の底面積=50mm2、とする。
以上の結果より閾値Tを1.23とおき、SV80℃/分が1.23以下である場合はSV80℃/分にて測定不可、SV80℃/分が1.23より大きい場合はSV80℃/分にて測定可とした。
f=-b1SVL+b2 ・・・(b2)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SVL:低VM劣質炭の昇温速度80℃/分の膨張比容積[cm3/g]、b1、b2:実験的に求められる係数を示す。
図5に、b1=0.0059、b2=0.0159 の例を示す。
f=-c1CI+c2 ・・・(b3)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、CI:低VM劣質炭のCI[-]、c1、c2:実験的に求められる係数を示す。
図6に、c1=0.005000、c2=0.07080 の例を示す。
3℃/分の昇温速度で測定したイナートファクター係数(f)と、12℃/分で測定した膨張比容積(SV’)との間には、下記式(b4)で表される相関があることが確認された。
高VM劣質炭について、12℃/分の昇温速度での膨張比容積(SV’)を測定すれば、イナートファクター係数(f)を得ることができる。
f=d1SV’4-d2SV’3+d3SV’2-d4SV’+d5 ・・・(b4)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SV’:12℃/分で測定した膨張比容積SV’(H)[cm3/g]である。d1~d5は実験的に求められる係数であり、図3では、d1=0.088、d2=0.656、d3=1.820、d4=2.239、d5=1.036である。
実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、下記(C)~(H)の手順により求める。
(C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の膨張比容積と装入嵩密度との積で表される空隙充填度を求める。
高石炭化炭が複数あるときは、高石炭化度炭のSVは加重平均値を用いる。
劣質炭が複数あるときは、劣質炭のSVは加重平均値を用いる。
(F2)前記求められた膨張比容積SV’(L)が前記閾値T以下の場合は、新たに測定したCIと前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求める。
その結果、石炭中の揮発分は酸素量と相関があり、酸素量が多い劣質炭は、高石炭化度炭に対する酸素の膨張性阻害効果が有り、酸素量が少ない劣質炭は、高石炭化度炭に対する酸素の膨張性阻害効果が小さく、VMの範囲よって、高速昇温膨張比容積とイナートファクター係数の関係が異なっていると考えられた。
この結果から、高VM劣質炭は、含有酸素量が7質量%以上の石炭であり、低VM劣質炭は、含有酸素量が2質量%以上7質量%未満の石炭であることが確認された。
このことから、酸素量から、低VM劣質炭と高VM劣質炭を区別できることも分かった。
高石炭化度炭と低VM劣質炭(表1のG炭を使用)の2種類を配合した場合の強度推定を行った。表5に低VM劣質炭の配合量を変えて作製したコークスのコークス強度の実測値を示す。高石炭化度炭は、全膨張率124%、再固化温度496℃、灰分11.0質量%、揮発分23.6質量%の性状の石炭を用いた。
推定に当たり、配合炭の空隙充填度(配合炭の実測SVと嵩密度の積)と表面破壊強度DI150 6の実測値の関係を予め求めることによって、図11に示す両者の関係を求めた。
次に、式(1)よりイナートファクターIFを求め、高石炭化度炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを2.15、低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.25とし、嵩密度0.80として、高石炭化度炭の空隙充填度(SV*BD*IF)と劣質炭の空隙充填度(SV*BD)を求めた。なお低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVは、実測が不可能であるため、嵩密度0.80の逆数を用いることとした。
そして、高石炭化度炭と劣質炭の配合比によって配合炭の空隙充填度の加重平均値を導出し、図11の相関を用いて、コークスの表面破壊強度を推定した。
それぞれの計算値と、図11から求められた配合炭のコークス表面破壊強度DI150 6の推定値を表6に示す。
また、比較例2として、特許文献3(特開2016-69469号公報)に開示の高VM劣質炭のイナートファクター係数推定法を低VM劣質炭に援用し、(f=0.088SV’4-0.656SV’3+1.820SV’2-2.239SV’+1.036)を低VM劣質炭にも適用させた際の、イナートファクター係数を用いてコークスの強度推定を行った結果を表8に示す。なお、G炭に対し(f=0.088SV’4-0.656SV’3+1.820SV’2-2.239SV’+1.036)を適用すると、イナートファクター係数は0.0239となる。
表7、8および図10より、本発明の推定方法を用いれば従来の推定方法である比較例1あるいは比較例2よりもコークスの表面破壊強度の推定精度が向上することが分かる。
高石炭化度炭と低石炭化度炭と劣質炭(表1のG炭を使用)の3種類を表9に示す割合で配合した場合の強度推定を行った。
高石炭化度炭は実施例1と同じ性状の石炭を用いた。また、低石炭化度炭は、全膨張率26%、再固化温度460℃、灰分8.8%、揮発分35.5%の性状の石炭を用いた。石炭の乾留は、実施例1と同様の方法で行った。
表9に作製したコークスのコークス表面破壊強度DI150 6の実測値を合わせて示す。
G炭はSV80℃/分=1.19で、閾値T(=1.23)未満であるから粘結力指数CIを用いてイナートファクター係数を推定する。表2よりG炭の粘結力指数CI=8であるから、予め求められていた図7の関係(b3)よりイナートファクター係数(f)=0.0113を求めた。
次に、式(1)よりイナートファクターIFを求め、高石炭化度炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.79、低石炭化度炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.30、低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVを1.25とし、嵩密度0.80として、高石炭化度炭の補正空間充填度(SV*BD*IF)と、低石炭化度炭と劣質炭の空間充填度(SV*BD)を求めた。なお低VM劣質炭の膨張比容積(昇温速度:3℃/分)SVは、実測が不可能であるため、嵩密度0.80の逆数を用いることとした。
そして、高石炭化度炭と低石炭化度炭と劣質炭の配合比によって配合炭の空間充填度の加重平均値を導出し、図11の相関を用いて、コーククスの表面破壊強度を推定した。
また、比較例2として、特許文献3(特開2016―69469号公報)に開示の高VM劣質炭のイナートファクター係数推定法を低VM劣質炭に援用し、式(f=0.088SV’4-0.656SV’3+1.820SV’2-2.239SV’+1.036)を低VM劣質炭にも適用させた際の、イナートファクター係数を用いてコークス強度の推定を行った。
なお、G炭に対し(f=0.088SV’4-0.656SV’3+1.820SV’2-2.239SV’+1.036)を適用すると、イナートファクター係数は0.0239となる。
表10および図12より、本発明の推定方法を用いれば従来の推定方法である比較例1あるいは比較例2よりもコークスの表面破壊強度の推定精度が向上することが分かる。
Claims (7)
- 劣質炭を配合炭の一部に用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定方法であって、
前記配合炭は、全膨張率が0%超であり、かつ、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃以上である高石炭化度炭と、全膨張率が0%である劣質炭から成り
実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造するコークスの表面破壊強度を推定するに際し、予め、下記の(A)~(B)の手順によって必要な関係を求めておき、
(A)種々の配合炭を用いて、実測した配合炭の膨張比容積SVと装入嵩密度BDとの積(SV×BD)で表される空隙充填度と、得られるコークスの表面破壊強度との関係(a1)を求めておき、
(B)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、低VM劣質炭および高VM劣質炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭を12℃/分以上の昇温速度S1で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)と、低VM劣質炭を前記昇温速度S1よりも高く、かつ、80℃/分以上400℃/分以下の昇温速度S2で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(L)を膨張性指標としてそれぞれ測定し、
(B2)測定した低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(L)が閾値Tよりも大きい場合、当該膨張比容積SV’(L)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
(B3)測定した低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(L)が前記閾値T以下の場合、当該劣質炭の粘結力指数CIを膨張性指標として測定し、測定した粘結力指数CIと劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
(B4)測定した高VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b4)を求め、
次に、実コークス炉で使用予定の配合炭を用いて製造する高炉用コークスの表面破壊強度の推定にあたり、(C)~(H)の手順を行うことを特徴とするコークスの表面破壊強度の推定方法。
(C)用いる配合炭中の高石炭化度炭の空隙充填度を求め、
(D)用いる配合炭中の劣質炭の空隙充填度を求め、
(E)用いる配合炭中の劣質炭が高VM劣質炭の場合は、前記高速昇温膨張比容積SV’(H)を求め、求められたSV’(H)と前記(b4)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(F)用いる配合炭中の劣質炭が低VM劣質炭の場合は、前記高速昇温膨張比容積SV’(L)を求め、求められたSV’(L)と前記閾値Tとの関係に応じて、以下のようにしてイナートファクター係数(f)を求め、
(F1)前記求められた高速昇温膨張比容積SV’(L)が前記閾値Tよりも大きい場合は、当該膨張比容積SV’と前記(b2)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(F2)前記求められた高速昇温膨張比容積SV’(L)が前記閾値T以下の場合は、当該膨張比容積SV’と前記(b3)の関係からイナートファクター係数(f)を求め、
(G)用いる劣質炭の高速昇温膨張比容積SV'に応じて、前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、
(H)前記(G)で求めた高石炭化度炭の補正空隙充填度と、前記(D)で求めた劣質炭の空隙充填度とを、用いる配合炭中の高石炭化度炭と劣質炭の配合率で加重平均して、配合炭の空隙充填度を求め、前記(a1)の関係からコークスの表面破壊強度の推定値を求める。
IF=1.00-fx ・・・(1)
ここで、IF:イナートファクター[-]、f:イナートファクター係数[-]、x:劣質炭の配合割合[質量%]を示す。 - 前記低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV'(L)が閾値Tより大きい場合において、前記イナートファクター係数(f)とSV’(L)との関係(b2)は、前記昇温速度S2として80℃/分で測定した膨張比容積を用いる場合には、下記の式(b2)で表されることを特徴とする請求項1に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
f=-b1SVL+b2 ・・・(b2)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SVL:低VM劣質炭の昇温速度80℃/分の膨張比容積[cm3/g]、b1、b2:実験的に求められる係数を示す。 - 前記低VM劣質炭の高速昇温膨張比容積SV'(L)が閾値T以下の場合において、前記イナートファクター係数(f)とCIとの関係(b3)は、下記の式(b3)で表されることを特徴とする請求項1に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
f=-c1CI+c2 ・・・(b3)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、CI:低VM劣質炭のCI[-]、c1、c2:実験的に求められる係数を示す。 - 前記閾値Tは1.23であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
- 前記イナートファクター係数(f)と高速昇温膨張比容積SV’(H)との関係(b4)は、高VM劣質炭で、12℃/分で測定した膨張比容積[cm3/g]を用いた場合に、下記の式(b4)で表されることを特徴とする請求項1に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
f=d1SV’4-d2SV’3+d3SV’2-d4SV’+d5 ・・・(b4)
ここで、f:イナートファクター係数[-]、SV’:12℃/分で測定した膨張比容積SV’(H)[cm3/g]である。d1~d5は定数であり、実験的に求められる。 - 配合炭に、全膨張率が0%超であり、JIS M8801の流動性試験方法により測定される石炭の再固化温度が470℃未満である低石炭化度炭をさらに含み、前記(B)を下記(B’)に置き換えるとともに、前記(G)を下記(G’)に置き換えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
(B’)全膨張率が0%の劣質炭を、揮発分VMが10質量%超30質量%未満の低VM劣質炭と、VMが30質量%以上の高VM劣質炭とに分類し、予め、低VM劣質炭、高VM劣質炭及び低石炭化度炭の膨張性指標と下記式(1)のイナートファクター(IF)の中のイナートファクター係数(f)との関係を以下のようにしてそれぞれ求めておき、
(B1)高VM劣質炭を3℃/分よりも高い所定の昇温速度S1で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(H)と、低VM劣質炭を前記昇温速度S1よりも高い所定の昇温速度S2で昇温したときの高速昇温膨張比容積SV’(L)を膨張性指標としてそれぞれ測定し、
(B2)測定した低VM劣質炭の膨張比容積SV’(L)が閾値Tよりも大きい場合、予め、当該膨張比容積SV’(L)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b2)を求め、
(B3)測定した低VM劣質炭の膨張比容積SV’(L)が前記閾値T以下の場合、さらに当該劣質炭の粘結力指数CIを膨張性指標として測定し、予め、測定した粘結力指数CIと劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b3)を求め、
(B4)測定した高VM劣質炭の膨張比容積SV’(H)と劣質炭イナートファクター係数(f)との関係(b4)を求め、
(B5)低石炭化度炭イナートファクター係数(f)を0.0057として定め、
(G’)用いる劣質炭の膨張比容積に応じて前記(E)および/または(F)で求めたイナートファクター係数(f)及び前記(B5)で定めた低石炭化度炭のイナートファクター係数(f)を用いて、劣質炭と低石炭化度炭の配合率に応じたイナートファクター(IF)を求め、上記(C)で求めた高石炭化度炭の空隙充填度とIFの積から高石炭化度炭の補正空隙充填度を求め、 - 前記低VM劣質炭の酸素量が、2質量%超7質量%未満であり、前記高VM劣質炭の酸素量が7質量%以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のコークスの表面破壊強度の推定方法。
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