JP2017101143A - コークス収縮率の推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭種によらずに、より簡便に、かつ精度良くコークス収縮率を推定することができる方法を提供する。【解決手段】石炭を再固化温度以上の温度Tまで加熱したときのコークス収縮率を推定する方法であって、予め、温度Tにおけるコークス収縮率が既知の複数の試験用石炭について、熱重量分析により重量減少曲線を測定し、また、JISM8801に規定のギーセラープラストメータ法により再固化温度を測定して、試験用石炭ごとに再固化温度から温度Tまでの重量減少率を前記重量減少曲線から求めて、各試験用石炭の温度Tにおけるコークス収縮率と前記重量減少率との相関式を得ておき、温度Tにおけるコークス収縮率が未知の石炭について、再固化温度から温度Tまでの重量減少率に基づき、得られた相関式からコークス収縮率を推定することを特徴とするコークス収縮率の推定方法である。【選択図】図4

Description

この発明は、石炭を所定の条件で乾留する際のコークス収縮率を推定する方法に関するものであり、詳しくは、例えば、石炭を乾留して得られるコークスの粒径を予測したり、コークスの強度を予測する場合等で用いられるコークス収縮率を推定する方法に関する。
高炉操業の更なる効率化を図るために、石炭を乾留して得られるコークスの強度や粒径が安定していること、すなわち目標の強度や粒径を有するコークスが製造できるようにすることが求められている。また、コークスの製造コストを削減するために、非微粘結炭等の安価低品位炭をできるだけ多く使用する必要が生じているが、原料炭におけるこれらの石炭の割合が増すことにより、コークス粒径の低下や体積破壊粉率が増加してしまうことから、得られるコークスの粒径や強度を事前に予測することがより重要になっている。
このうち、コークスの強度を推定するにあたり、コークス強度の指標のひとつであるドラム強度指数DI150 15は、次のように表記できることが知られている(例えば特許文献1参照)。
DI150 15=DI150 6 − DI150 6-15
すなわち、この特許文献1では、高石炭化度炭と低石炭化度炭とを配合した配合炭からコークスを得る際に、そのドラム強度指数DI150 15を表面破壊強度DI150 6と体積破壊粉率DI150 6-15とに分けて推定する方法を開示しており、体積破壊粉率の推定には、配合する高石炭化度炭のビトリニット平均反射率Roと低石炭化度炭の配合割合を用いている。ここで、ドラム強度指数DI150 15は、JISK2151に規定される衝撃後の15mm以上の塊割合を示すものである。
また、配合炭の固化温度から体積破壊粉率DI150 6-15を推定し、配合炭を構成する各石炭の膨張率又は比容積を配合割合で加重平均した値から表面破壊強度DI150 6を推定して、これらに基づきコークスの強度を推定する方法(特許文献2参照)等も知られている。
一方、コークスの粒径に関しては、例えば、下記の式に基づき推定できることが知られている(特許文献3参照)。
配合炭のコークス粒径=a+b×配合炭のコークス収縮率
特許文献3では、この式について、種々の配合における配合炭を用いてコークスを製造してそのコークス粒径を測定し、また、配合炭に含まれる石炭毎にコークス収縮率を測定して、それぞれの配合炭におけるコークス収縮率を各石炭の配合割合に応じて加重平均して算出しており、こうして得られた各配合炭のコークス粒径実測値とコークス収縮率計算値に基づき、回帰分析等の手法により係数a、bを定めるとする。
ここで、コークスの粒径や体積破壊粉率は、コークス塊内のcmオーダーのマクロ亀裂に起因して決定される。一般に、石炭を乾留すると、有機高分子構造の熱分解や熱重合反応が起こり、それに伴って様々な物理現象が発現する。すなわち、400℃前後から石炭が軟化溶融して、粒子が接着して多孔質の塊が形成され、500℃前後で再固化し、それ以降は収縮してより緻密な構造を有するコークスになる。このとき、炭化室室幅方向に温度分布があるため、収縮の歪により熱応力を生じ,マクロ亀裂が形成されると考えられることから、コークスの強度や粒径を精度良く推定する上で、石炭の再固化後の収縮過程におけるコークス収縮率を把握することが必要になる。
このコークス収縮率について、先の特許文献3ではその測定方法を開示している。すなわち、特許文献3においては、石炭の再固化温度以上の温度T(℃)まで加熱し、再固化温度と温度Tとにおける内容物の容積差又は長さの差を再固化温度における容積又は長さで除した値を、その石炭から生成したコークスの温度Tにおけるコークス収縮率と定義している。具体的には、複数の通気孔が設けられた内部細管と外部細管との二重構造を有した試料管の内部細管に石炭を装入し、その上にピストンを載せて所定の昇温速度で加熱して、加熱温度に対するピストンの上下変位を計測し、再固化温度でのピストン高さと温度Tでのピストン高さに基づき、コークス収縮率を求めている。
このような方法によれば、体積破壊やコークス粒径を支配する亀裂の発生原因であるコークス収縮率を直接測定することができる。ところが、この方法では、石炭の種類によっては溶融した石炭やタールによりピストンが固着してしまうことがあり、測定できない場合がある。また、装置自体が特殊であるため、コークス収縮率を随時測定することができないといった問題もある。
一方で、石炭の性状とコークス収縮率との関係に着目した報告がある(非特許文献1参照)。この非特許文献1では、上記特許文献3に記載の方法によりコークス収縮率を求めて、コークス収縮率とコークスの粒径とが相関性を有することを確認している。また、このコークス収縮率と石炭の揮発分(VM)や石炭化度との関係を調べているが、いずれも有意な結果は認められず、石炭の揮発分や石炭化度だけではコークス収縮率は決まらないとしている。参考までに、非特許文献1に記載されたコークス収縮率(1000℃)とコークスの粒径との関係を図5に示す(非特許文献1のFig.9を掲載)。また、石炭の揮発分とコークス収縮率(1000℃)との関係を図6に示す(同Fig.6を掲載)。
ところで、コークスの収縮に関しては、着目する物理量が異なり定義されているものがいくつか存在し、例えば、特開2013−216813号公報(特許文献4)では、乾留後のコークスとコークス炉の炉壁レンガとの間に形成される隙間(クリアランス)をコークスの収縮量としている。なお、この収縮は、上記で述べたコークス収縮率のほかに、少なくとも温度分布や膨張圧等の様々な因子の影響を受けるものであり、本発明で対象とするコークス収縮率とは別のものである。
特開2005−194358号公報 特開平9−263764号公報 特開2005−232349号公報 特開2013−216813号公報
Seiji Nomura and Takashi Arima (2013). Effect of coke contraction on mean coke size. Fuel, 105, 176-183.
上述したように、コークスの強度や粒径の推定精度を更に向上させる上で、石炭の再固化後の収縮過程におけるコークス収縮率を把握することが極めて重要である。上記特許文献3に記載される方法によれば、コークス収縮率を直接測定することができるが、特殊な装置を用いなければならず、また、炭種によっては測定が困難な場合がある。一方で、工業分析による石炭の性状等からコークス収縮率を推定する技術は、未だ確立されていない。
そこで、本発明者らは、これらの課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、石炭の再固化温度以上である温度Tでのコークス収縮率は、当該石炭の再固化温度から温度Tまでの重量減少率との間に相関性を有することを新たに見出した。そして、この相関性を利用すれば、精度良くコークス収縮率を推定することができることから、本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、炭種によらずに、より簡便に、かつ精度良くコークス収縮率を推定することができる方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)石炭を容器内に入れて石炭の再固化温度以上の温度Tまで加熱し、再固化温度と温度Tとにおける内容物の容積差又は長さ差を再固化温度における容積又は長さで除した値で表される、その石炭から生成したコークスの温度Tにおけるコークス収縮率を推定する方法であって、
予め、温度Tにおけるコークス収縮率が既知の複数の試験用石炭について、熱重量分析により重量減少曲線を測定し、また、JISM8801に規定のギーセラープラストメータ法により再固化温度を測定して、試験用石炭ごとに再固化温度から温度Tまでの重量減少率を前記重量減少曲線から求めて、各試験用石炭の温度Tにおけるコークス収縮率と前記重量減少率との相関式を得ておき、
温度Tにおけるコークス収縮率が未知の石炭について、再固化温度から温度Tまでの重量減少率に基づき、得られた相関式からコークス収縮率を推定することを特徴とするコークス収縮率の推定方法。
(2)前記コークス収縮率は、石炭を入れる容器として、複数の通気孔が設けられた内部細管と外部細管との二重構造を有した試料管を用いて測定されるものであり、該試料管に石炭を装入し、ピストンを載せて所定の昇温速度で加熱しながら、加熱温度に対するピストンの上下変位を計測して、石炭の再固化温度でのピストン高さと温度Tでのピストン高さとに基づき算出されるものである(1)に記載のコークス収縮率の推定方法。
(3)前記温度Tは800℃以上1300℃以下である(1)又は(2)に記載のコークス収縮率の推定方法。
本発明によれば、いかなる石炭であっても、より簡便に、かつ精度良くコークス収縮率を推定することができる。このようにコークス収縮率の推定方法を確立することで、石炭を乾留して得られるコークスの粒径や強度の予測精度をより高めることができ、非微粘結炭等の比較的安価な石炭の使用が増加している高炉用コークスの製造において、極めて有用なものである。
図1(a)は、コークス収縮率の測定を行う装置(高温ジラトメータ)の全体概要説明図であり、図1(b)は、試料管に試料(石炭)を装入した様子を示す説明図であり、図1(c)は内部細管の平面断面図である。 図2は、熱天秤で測定した各種石炭(石炭C、D、H、O)の重量減少曲線を示す。 図3は、実施例で使用した石炭のギーセラープラストメータを用いた測定例を示す〔(a)は石炭H、(b)は石炭O〕。 図4は、実施例で得られた相関式であって、石炭の再固化温度から1000℃までの重量減少率と1000℃におけるコークス収縮率との関係を示すグラフである。 図5は、コークス収縮率とコークスの粒径との関係を示すグラフである(非特許文献1のFig.9を引用)。 図6は、石炭の揮発分とコークス収縮率との関係を示すグラフである(非特許文献1のFig.6を引用)。
以下、本発明について詳しく説明する。
先ず、本発明で対象とするコークス収縮率とは、特許文献3で記載する方法によって測定されるものであり、石炭を容器内に入れて石炭の再固化温度以上の温度Tまで加熱し、再固化温度と温度Tとにおける内容物の容積差又は長さ差を再固化温度における容積又は長さで除した値で表される。詳しくは、図1に示した装置(高温ジラトメータ)を用いて、下記のようにしてコークス収縮率を測定することができる。
この装置は、石炭の膨張性を試験する通常のジラトメータ(550℃まで昇温)よりも高い温度まで昇温が可能であり(1300℃まで昇温)、また、石炭を入れる容器として、内部細管2と外部細管3との二重構造を有した試料管4を用いたものである。すなわち、ここで用いる装置(高温ジラトメータ)は、この試料管4と、試料管4に装入した石炭1の上に載せるピストン6と、試料管4内の石炭を所定の昇温速度で加熱することができるヒーター7を有した電気炉8と、ピストンの上下変位を計測するレーザー変位計9とを備えている。このうち、内部細管2は、その表面に複数の通気孔5を有しており、石炭が発生するガスを内部細管2の外に逃がすことができるようになっている。これは、石炭が軟化溶融時に熱分解ガスを発生して大きく膨張すると、ピストン6と内部細管2との隙間に溶融石炭やタールが入り込み、再固化後にピストンの移動が拘束されてしまうことから、内部細管2に通気孔5を設けることで、軟化溶融時のガスを排出して膨張を抑制し、再固化後の収縮を計測できるようにしている。また、外部配管3の上端には蓋10が被せられて、ピストン6の軸ずれを防止するガイドとして作用する。
石炭1を試料管4に装入する際には、熱分解ガスが通過可能な紙等の薄シート11を内部細管2の内側に沿うようにして入れて、所定の粒度に粉砕した石炭を装入し、内部細管2の通気孔5から石炭がこぼれないようにし、試料管4内の石炭を所定の昇温速度で加熱する。そして、加熱温度に対するピストンの上下変位を計測しながら、再固化温度でのピストン高さhと温度Tでのピストン高さh’とから、下記の式(1)により、コークス収縮率R(−)を求めることができる。この際、昇温に起因するピストン6の熱膨張を考慮して、事前にピストン膨張の影響をブランクでの実績値をもとに温度の関数として求めておき、式(1)によるコークス収縮率の算出時に補正を加えるようにしてもよい。
R=(h−h’)/h ・・・(1)
ここで、この測定により石炭を加熱した際の再固化温度を特定するにあたっては、特許文献3で示されているように、温度上昇に伴いピストン変位の挙動が大きく変わり、ピストン高さが急激に低下する温度を再固化温度とすることができる。詳しくは、上記の装置を用いて、ピストン6の位置に基づいて昇温中の石炭1の長さを連続的に計測し、昇温中において、単位温度変化あたりの石炭長さの変化を算出して長さ変化率として、温度との関係を観察すると、温度400〜550℃の領域において、長さ変化率が減少しその後急激に増大する温度が見出せることから、この温度を石炭の再固化温度とすればよい。また、単位温度変化あたりの収縮率の変化を収縮係数(-/K)と定義して、収縮係数と温度との関係を観察すると、石炭の再固化温度直前の温度領域において収縮係数が減少し、再固化温度直後の温度領域で収縮係数が急激に増大することから、収縮係数の変化を観察して、収縮係数が急増した温度を石炭の再固化温度として特定してもよい。
一方、温度Tについては、再固化温度以上の温度であれば任意に設定することができるが、求められたコークス収縮率をコークスの粒径や強度の推定等に利用することを勘案して、石炭からコークスを得る際の乾留温度とするのがよく、好ましくは800℃以上1300℃以下、最も好ましくは1000℃である。
本発明は、このようなコークス収縮率について、図1に示したような装置を使わずに求める(推定する)ようにしたものである。すなわち、本発明者らは、コークスの収縮現象が軟化溶融した石炭の再固化後に生じ、しかも、加熱により再固化した後にセミコークスの一部がガスとして脱離することにより起こるものとして、石炭の再固化温度をJISM8801に規定のギーセラープラストメータにより測定し、また、当該石炭の再固化後のガスの離脱を熱重量分析による重量減少曲線から求めて、コークス収縮率の推定を可能にした。
詳しくは、予め、温度Tにおけるコークス収縮率が既知の複数の試験用石炭について、熱重量分析による重量減少曲線の測定と、JISM8801に規定のギーセラープラストメータ法による再固化温度の測定とを行うようにする。ここで、熱重量分析により石炭の重量減少曲線を測定するにあたっては、コークス炉での操業状態を模した条件となるようにするのがよく、例えば、熱天秤により石炭を窒素雰囲気中で加熱して、その際の昇温速度を1〜10℃/minにし、また、到達温度は800〜1300℃にして、重量減少曲線を測定する。一例として、図2には、後述する実施例で使用した石炭C、D、H、及びOの重量減少曲線が示されている。
また、再固化温度の測定は、上記のとおりJISM8801に規定のギーセラープラストメータ法により行い、かき混ぜ棒の動きが遅くなって止まったときの温度である固化温度を求める。本発明では、この固化温度を再固化温度と呼ぶ。同様に、図3には、実施例で使用した石炭H〔図3(a)〕及び石炭O〔図3(b)〕のギーセラープラストメータを用いた測定例が示されている。
そして、試験用石炭ごとに、再固化温度から温度Tまでの重量減少率を上記で求めた重量減少曲線から算出し、各試験用石炭のコークス収縮率とこの重量減少率との相関式を得ればよい。図4には、後述する実施例で求めた試験用石炭のコークス収縮率とこの重量減少率との関係が示されており、良好な相関性を示すことが分かる。そのため、温度Tにおけるコークス収縮率が未知の石炭について、試験用石炭の場合と同様にして重量減少曲線を測定し、再固化温度を求めて、再固化温度から温度Tまでの重量減少率を算出すれば、得られた相関式からコークス収縮率を推定することが可能になる。その際に使用する熱重量分析やギーセラープラストメータによる測定はいずれも汎用的であり、本発明によれば、特殊な装置を用いることなく、簡便にコークス収縮率を推定でき、また、いかなる炭種に対しても本発明の推定方法を適用することができる。
このような相関式を得るにあたって用意する温度Tでのコークス収縮率が既知の試験用石炭については、産地や銘柄が違い、コークス収縮率が異なるものを複数用意するようにすればよく、好ましくは5個以上、より好ましくは10個以上用意するのがよい。その際、一般にコークス収縮率は10〜18%程度であることから、この数値範囲の上限側と下限側のものを含めるようにするのがよい。
また、本発明の方法により配合に用いる各単味炭のコークス収縮率を求めて、得られた各単味炭のコークス収縮率を配合割合に応じて加重平均することで配合炭のコークス収縮率を推定することができる。そのため、このようにして求めた配合炭のコークス収縮率をもとに、例えば、先に述べた特許文献3に記載の方法によりコークスの粒径を推定したり、コークスの強度を公知の手法により推定すれば、より精度の高い推定値を得ることができるようになる。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
(実施例1)
表1に示す性状を有した石炭A〜Oを用意した。ここで、Ash(% d.b.)は、JIS M8812の工業分析法に規定される条件で加熱灰化したときに残留する灰の量の質量分率(すなわち灰分)であり、VM(% d.b.)は、同じくJIS M8812の工業分析法に規定される揮発分であり、log(MF/ddpm)は、JIS M8801のギーセラープラストメータ法により求められる最高流動度であり、TD(%)は、JIS M8812に規定のジラトメータ法により求めた全膨張率であり、Ro(%)は、JIS M8816の石炭の微細組織成分及び反射率測定方法記載の方法で測定されるビトリニットの平均最大反射率を表す。
Figure 2017101143
先ず、図1に示した装置を用いて、これら石炭A〜Oについて、それぞれ温度T=1000℃でのコークス収縮率を以下のようにして測定した。
測定に使用した装置の内部細管2は内径8mm、外径14.5mmのSUS製の円筒形容器からなり、直径1mmの孔5が円周方向8箇所、高さ方向に2mm間隔で合計368個設けられている。外部細管3は内部細管2と同心円状に配置されて、外部細管3の材質はSUS、内径は16mm、外径は24mmである。内部細管内には上方からピストン6が装入可能であり、ピストン6の下端部は直径7.5mmを有して、内部細管2に装入された石炭1の上端に接するように配置される。また、ピストン6の上下方向位置はレーザー変位計9により計測することができ、更に、外部細管3の外側にはヒーター7を備えた電気炉により、内部細管2の中に装入した石炭1の温度を1300℃まで加熱可能である。
そして、内部細管2の内周に沿うように厚み約50μmの紙(薄シート)11を装入し、その中に−3mm(3mm以下)に粉砕した石炭を1.25g装入し、ピストン6を載せた上で、ヒーター7により3℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温した。その際、ピストン6の位置に基づいて昇温中の石炭1の長さを連続的に計測した。また、昇温中に、単位温度変化あたりの石炭長さの変化を算出して長さ変化率とし、温度との関係を観察したところ、温度400〜550℃の領域において、長さ変化率が減少しその後急激に増大する温度を見出して、この温度を石炭の再固化温度とした。このような測定を各石炭A〜Oについて行い、それぞれ、先の式(1)に基づいて、1000℃におけるコークス収縮率を求めた。結果は表2に示したとおりである。
また、石炭A〜Oについて、以下のようにしてそれぞれ熱重量分析により重量減少曲線を測定した。測定には熱天秤(島津製作所社製TGA51H)を用いて、150μm以下に粉砕した石炭20mgを流量200mL/minの窒素雰囲気中において昇温条件3℃/minで昇温し、到達温度を1000℃として質量変化を測定した。このうち、石炭C、D、H、及びOの重量減少曲線を図2に示す。
更には、石炭A〜Oについて、それぞれJISM8801に規定のギーセラープラストメータ法により再固化温度を測定した。結果は表2に示したとおりである。このうち、石炭Hの軟化溶融特性を図3(a)に示し、石炭Oの軟化溶融特性を図3(b)に示す。そして、石炭A〜Oごとに、再固化温度から温度T=1000℃までの重量減少率を上記で求めた重量減少曲線から算出した。結果を表2に示す。
Figure 2017101143
ここで、上記で得られた石炭A〜Oの1000℃におけるコークス収縮率と、各石炭の再固化温度から1000℃までの重量減少率との関係をグラフにすると図4に示したとおりになる。図4から分かるように、これらは良好な相関性を有しており、再固化温度から1000℃までの重量減少率をxとし、1000℃におけるコークス収縮率をyとすると、y=0.4403x+7.7141の相関式で表すことができる(R2=0.7145)。
そこで、下記表4に示した性状を有して、1000℃におけるコークス収縮率が未知の石炭Pについて、上記と同様にして重量減少曲線を測定すると共に、再固化温度を測定した。その結果、この石炭Pの再固化温度は487℃であり、重量減少曲線から求められる再固化温度(487℃)から1000℃までの重量減少率は14.2%であることから、石炭A〜Oを試験用石炭として求められた先の相関式を用いると、この石炭Pの1000℃におけるコークス収縮率は14.0%であると推定された。
Figure 2017101143
そして、石炭A〜Oのコークス収縮率を測定した先の装置を用いてこの石炭Pのコークス収縮率を実際に測定したところ14.1%であった。また、表3に示したQ炭及びR炭についても同様に確認したところ、これらの1000℃におけるコークス収縮率の実測値が12.4%及び15.4%であるに対して、本発明でのコークス収縮率の推定値は12.9%及び15.6%であった。すなわち、本発明によって実測値に極めて近いコークス収縮率を推定できることが分かった。なお、図6に示した揮発分(VM)をxとし、1000℃におけるコークス収縮率をyとした近似式、y=0.1127x+11.169の相関式(R2=0.4225)を用いた1000℃におけるコークス収縮率は、P炭では14.0%であり、Q炭では13.5%であり、R炭では15.1%であった。本発明を用いたコークス収縮率の方が、精度が高いことが分かる。
1:石炭、2:内部細管、3:外部細管、4:試料管、5:通気孔、6:ピストン、7:ヒーター、8:電気炉、9:レーザー変位計、10:蓋、11:薄シート。

Claims (3)

  1. 石炭を容器内に入れて石炭の再固化温度以上の温度Tまで加熱し、再固化温度と温度Tとにおける内容物の容積差又は長さ差を再固化温度における容積又は長さで除した値で表される、その石炭から生成したコークスの温度Tにおけるコークス収縮率を推定する方法であって、
    予め、温度Tにおけるコークス収縮率が既知の複数の試験用石炭について、熱重量分析により重量減少曲線を測定し、また、JISM8801に規定のギーセラープラストメータ法により再固化温度を測定して、試験用石炭ごとに再固化温度から温度Tまでの重量減少率を前記重量減少曲線から求めて、各試験用石炭の温度Tにおけるコークス収縮率と前記重量減少率との相関式を得ておき、
    温度Tにおけるコークス収縮率が未知の石炭について、再固化温度から温度Tまでの重量減少率に基づき、得られた相関式からコークス収縮率を推定することを特徴とするコークス収縮率の推定方法。
  2. 前記コークス収縮率は、石炭を入れる容器として、複数の通気孔が設けられた内部細管と外部細管との二重構造を有した試料管を用いて測定されるものであり、該試料管に石炭を装入し、ピストンを載せて所定の昇温速度で加熱しながら、加熱温度に対するピストンの上下変位を計測して、石炭の再固化温度でのピストン高さと温度Tでのピストン高さとに基づき算出されるものである請求項1に記載のコークス収縮率の推定方法。
  3. 前記温度Tは800℃以上1300℃以下である請求項1又は2に記載のコークス収縮率の推定方法。
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