JP2009144001A - 石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置及びその通気抵抗測定方法 - Google Patents

石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置及びその通気抵抗測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大型可動壁型乾留炉に比べて測定時間が短く、かつ、大型可動壁型乾留炉と同等以上の精度で膨張圧を推定・評価することが可能な石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】装置本体における長手方向の中央内部に石炭試料室を設けた外管と、該外管内の石炭試料室の上下に配置された上下一対のメッシュ板と、該一対のメッシュ板を外管内の上下から押さえて固定するための上下一対のメッシュ板固定管と、上記石炭試料室にガスを流通するためのガス導入口及びガス排出口を備えるとともに、上下の外管及びメッシュ板固定管の端部をパッキンを介して密封しつつ外管外周から固定するための上下一対のキャップとで構成され、上記石炭試料室の直径13mm以下であり、上記メッシュ板の孔径が0.3mm以下である石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、コークス製造用原料炭の評価試験装置に関し、詳しくは、コークス炉操業において発生する膨張圧を推定するために用いられる、石炭軟化溶融層の通気抵抗の測定装置及びその測定方法に関するものである。
コークス炉は、複数の炭化室と燃焼室が交互に配置されることで構成され、コークス炉操業は、各炭化室に所定の順番で原料炭を装入し、石炭を所定時間乾留し、その後、得られたコークスケーキを押し出し、所定粒度に粉砕することにより行われる。
炭化室内の石炭は、炉壁を隔てて隣接する燃焼室からの熱伝達により、先ず、炉壁近傍の石炭が加熱されて、石炭軟化溶融層が形成され、熱伝達により、軟化溶融層が炭化室中心部に徐々に移行することで、石炭の乾留が進行する。石炭の軟化溶融層は、流動性を有するとともに、石炭中の揮発成分や軽質成分の一部のガス化による内圧で膨張状態となる。
さらに加熱すると、石炭の軟化溶融層から発生ガスが抜け出るともに、石炭が再固化し、コークス層が形成される。この石炭の再固化後、コークスの押し出しを開始するまでの間、コークス層は収縮する。
石炭の乾留過程にある炭化室においては、石炭軟化溶融層の膨張により、炭化室の炉壁面に垂直な方向に圧力(以下、この圧力を膨張圧という。)が負荷される。この膨張圧は、燃焼室を介して周辺の炭化室の炉壁に伝達し、周辺の炭化室の炉壁を変形させ、コークスの押出性を悪化させるという問題を引き起こす。
炭化室内の膨張圧の増加、及び、それにともなうコークス押出負荷の増大は、コークス炉の炉壁煉瓦の損傷、脱落などを引き起こし、最悪時には、コークス炉の操業が不能になる。したがって、コークス炉操業における膨張圧を許容限界値以下に制御することは、コークスの安定炉操業及び炉体の健全性維持の観点から、重要な課題である。
特に、近年、老朽化したコークス炉が多くなり、炉体の強度が低下して、膨張圧の許容限界値が低下するとともに、調湿炭法などの石炭事前処理技術の導入により、炭化室内の石炭の装入嵩密度が上昇し、コークス炉操業時の発生膨張圧は増加する傾向にある。それ故、コークス炉操業における膨張圧の管理・制御は、近年、ますます重要な課題となっている。
コークス炉操業において発生する膨張圧は、主として、石炭の軟化溶融過程で発生するガスの内圧に起因して生じ、その膨張圧の大きさは、原料炭の性状、粒度、水分量、予熱温度、さらには、装入密度や、乾留速度などの操業条件で決まるものと考えられている(例えば、非特許文献1、参照)。
従来の実炉操業における膨張圧を評価する方法としては、(i)実炉操業において、石炭装入口又は炉蓋から、先端にスリットを設けた内径数mmの金属管を挿入して、石炭軟化溶融層内のガス圧を測定する方法(例えば、非特許文献2、特許文献1及び2、参照)や、(ii)実炉に近い大きさの大型可動壁型乾留炉(炭化室内容積が0.1〜0.5m3)を用いて、石炭乾留過程で炉壁面に負荷される膨張圧を測定し、評価する方法(例えば、非特許文献3、特許文献3、参照)がある。
しかし、実コークス炉操業において、石炭軟化溶融層内に金属管を挿入する方法は、(a)金属管を、目的とする挿入位置に固定することができない、(b)挿入過程で、金属管内に、軟化溶融状態の石炭が詰まる、(c)ガス圧が測定可能な軟化溶融層の厚み領域は、金属管の外径により制限される等の欠点があり、再現性のある石炭軟化溶融層内のガス圧測定値を得ることは難しく、精度の高い膨張圧の推定はできないのが実情である。
また、大型可動壁型乾留炉は、各条件での石炭乾留過程において発生する膨張圧を直接測定することが可能なものであるが、実コークス炉並みの大きな内容積を有するため、石炭装入から、乾留を経てコークス排出までに要する時間は、実コークス炉と同じ程度(18〜24時間)であり、各条件での石炭乾留過程の膨張圧を、迅速に測定・評価できないという欠点がある。
また、実コークス炉や大型可動壁型乾留炉に比べて簡易な方法及び装置を用いて石炭乾留過程の膨張圧を測定・評価する方法も提案されている(例えば、特許文献4及び5、及び、非特許文献4、5、6及び7、参照)。
例えば、簡便な膨張圧測定装置として、Nedelmann式底面加熱型膨張圧測定装置がある(例えば、非特許文献6、特許文献4、参照)が、この膨張圧測定装置により求めた膨張圧は、上記大型可動壁型乾留炉で直接測定した膨張圧と相関がないことが知られている(例えば、非特許文献7、参照)。
また、簡易型乾留炉を用いて、圧力測定用の金属管により、石炭軟化溶融層内の圧力、又は、石炭軟化溶融層内の圧力及び層厚を測定し、この圧力測定値から、石炭の軟化溶融層内の通気抵抗を推算し、膨張圧を評価する方法が知られている(例えば、特許文献5及び6、参照)。
これらの装置及び方法は、外部から石炭軟化溶融層内にイナートガスを流通させて、その圧力損失を測定し、これを基に、直接的に通気抵抗を求めるものではなく、圧力測定用の金属管により、石炭の軟化溶融層で発生したガスの圧力を測定し、これから、間接的に通気抵抗を推算する方法である。
本発明者らの検討によると、この方法及び装置で測定した圧力に基づいて推算した通気抵抗は、ばらつきが大きく、大型可動壁型乾留炉で直接測定した膨張圧に比べて、膨張圧に、石炭種などの操業条件による差が大きくあらわれないという問題点があることが判明した。
また、これらの方法は、圧力測定用の金属管をセットする準備に時間がかかるため、より簡便で迅速に石炭軟化溶融層の通気抵抗を測定し、膨張圧を評価できる方法が期待されている。
一方、外部から、石炭軟化溶融層内に、任意のガスを所定の流速で流通させた時の圧力損失ΔPを測定し、これに基づき通気抵抗を求め、この通気抵抗を基に、膨張圧を評価する方法及び装置も知られている(例えば、非特許文献7及び8、参照)。
しかし、本発明者らの検討によれば、この装置では、石炭試料の厚み方向と垂直な断面における温度分布に起因する石炭軟化溶融層の圧力損失ΔPの測定値が大きくばらつき、精度の高い通気抵抗の測定は難しく、大型可動壁型乾留炉で直接測定された膨張圧に比べて、膨張圧に、石炭種などの操業条件による差が大きくあらわれないことが判明した。
この簡易型乾留炉により、外部から、石炭軟化溶融層内に、任意のガスを所定の流速で流通させた時の圧力損失ΔPを測定し、この測定値から通気抵抗を求め、膨張圧を評価する装置は、大型可動壁型乾留炉に比べて、短時間で、各操業条件に応じた膨張圧を推定できる。それ故、高精度で通気抵抗を測定できる簡易型乾留炉及び測定方法の開発が望まれている。
特開平6−264068号公報 特開平7−207271号公報 特開平5−255670号公報 特開平6−74659号公報 特開平5−43880号公報 特開平5−180748号公報 C.C.Russell et al., Pro. Blast Furnace Coke Oven and Raw Materials, AIME12(1935),197} Latshawら(G.M.Latshaw et al.,Ironmaking Conference Proceedings,AIME,43(1984),p.373) JohnTucker and Geoffrey Everitt : British Coal Corporation Cool Research Establishment, AIME 48th Ironmaking Conference 1989,4.2 ~5 Chicago,U.S.A.) 西岡ら:燃料協会誌、68.3(1989) 馬伏ら:燃料協会第78回コークス特別会、P3(1985) 燃料分析試験法、p.105 COKE Quality and Production, R.Loison et al., Butterworths (1989), p.1356 三浦ら:コークス・サーキュラー、第40巻2号(1991), p.103 M.D.Casalら:Fuel, 85(2006), p.281
本発明は、コークス炉操業の条件に応じた炭化室の膨張圧を推定評価する際に、大型可動壁型乾留炉に比べて測定時間が短く、かつ、大型可動壁型乾留炉と同等以上の精度で膨張圧を推定・評価することが可能な、石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するものであり、その発明の要旨は以下のとおりである。
(1)装置本体、加熱炉、温度計、圧力計、及び、マスフローコントローラーを主要な構成とする石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置において、該装置本体は、長手方向の中央内部に石炭試料室を設けた外管と、該外管内の石炭試料室の上下に配置された上下一対のメッシュ板と、該一対のメッシュ板を外管内の上下から押さえて固定するための上下一対のメッシュ板固定管と、上記石炭試料室にガスを流通するためのガス導入口及びガス排出口を備えるとともに、上下の外管及びメッシュ板固定管の端部をパッキンを介して密封しつつ外管外周から固定するための上下一対のキャップとで構成され、上記石炭試料室の直径が13mm以下であり、上記メッシュ板の孔径が0.3mm以下であることを特徴とする石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置。
(2)前記石炭試料室の高さが13mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置。
(3)前記石炭試料室の半径方向中央部と外周部との温度差が±2℃以内であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置を用いて、石炭試料室に石炭試料を装入し、該石炭試料にマスフローコントローラーを用いて不活性ガスを流通させるとともに、加熱炉により石炭試料を加熱しながら、温度計と圧力計を用いて石炭試料層の温度と圧力損失を測定し、石炭軟化溶融温度における圧力損失の測定値に基づいて石炭軟化溶融層の通気抵抗を求める方法であって、上記石炭試料層に流通させる不活性ガスの流量を25cc/min以下とすることを特徴とする石炭軟化溶融層の通気抵抗測定方法。
(5)前記石炭試料は、石炭を粉砕した後、該石炭の粒度分布を測定し、その後、粉砕後の石炭の粒度分布となるように、各粒度区分毎の存在割合を調整したものであることを特徴とする前記(4)に記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定方法。
本発明によれば、通気抵抗を測定する装置において、従来に比べて、石炭試料の厚み方向と垂直な断面における温度分布に応じた溶融状態の違いに起因する圧力損失ΔPのばらつきを抑制することができるので、コークス炉操業の条件に応じた炭化室の膨張圧を推定評価する際、圧力損失ΔP及びこれから求められる通気抵抗を基に、大型可動壁型乾留炉によりも短い測定時間で、かつ、型可動壁型乾留炉と同等以上の高精度で、膨張圧を推定・評価することができる。
先ず、石炭軟化溶融層の通気抵抗測定方法の原理について説明する。
一般に、炭化室の膨張圧は、石炭軟化溶融層内における(a)通気抵抗、(b)ガス発生量、及び、(c)層厚みで決まる層内のガス圧が、発生原因とされているが、通常のコークス炉操業において、(b)及び(c)は大きく変化しないので、膨張圧は、(a)の通気抵抗により支配されていると考えられる。したがって、石炭軟化溶融層の通気抵抗を高精度で測定することができれば、この測定値から、コークス炉操業時の条件での炭化室の膨張圧を推定評価することが可能となる。
石炭の軟化溶融層の通気抵抗は、ガス透過係数K(m2)の逆数として定義され、石炭軟化溶融層をガスが通過する際の、石炭軟化溶融層の層厚L(m)、ガス粘度μ(Pa・s)、ガス流速u(m/s)、及び、圧力損失ΔP(Pa)から、下記(1)式で求められる。
通気抵抗=1/K=ΔP/(μ・L・u) ・・・(1)
通気抵抗は、上記(1)式によれば、所定の層厚Lの石炭試料層を加熱し、かつ、外部から所定のガス流速uでガス粘度μのガスを流通させ、この際に生じる圧力損失ΔPを測定することにより求められる。
なお、層厚L、ガス流速u、及び、ガス粘度μを一定と仮定すると、通気抵抗は、圧力損失ΔPとほぼ同等に扱うことができるので、以下の説明では、通気抵抗を、実際に測定する圧力損失ΔPと同じ意味で用いることとする。
従来から、上記の原理に従い石炭軟化溶融層の通気抵抗を測定するための装置及びその測定方法が提案されている(例えば、非特許文献7及び8、参照)。
しかし、本発明者らの検討によれば、従来の通気抵抗測定装置及びその測定方法は、下記(t)〜(w)の事項が原因で、圧力損失ΔPの測定値のばらつきが大きくなり、大型可動壁型乾留炉で直接測定された膨張圧に比べて、膨張圧に、石炭種などの操業条件による差が大きくあらわれないことが判明した。
(t)加熱過程で、石炭層の層厚に垂直な方向の温度分布が大きく、石炭の溶融状態に差異が生じる。
(u)膨張状態の石炭軟化溶融層を、所定の容積内に拘束することが困難であり、石炭軟化溶融層の嵩密度が変化する。
(v)石炭試料層厚が厚い場合には、石炭層の層厚に垂直な断面におけるガス流速のばらつきが大きくなる。
(w)ガス流量が大きい場合には、石炭層の層厚に垂直な断面におけるガス流速のばらつきが大きくなる。
本発明は、従来の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置及び測定方法の問題点を踏まえて、
(x)石炭試料の層厚に垂直な断面における温度差を可能な限り小さくし、それに起因する石炭の溶融状態を均一にすること、
(y)膨張状態の石炭軟化溶融層を所定の容積内に拘束し、石炭軟化溶融層の嵩密度の変化を抑制すること、及び、
(z)石炭軟化溶融層の層厚に垂直な断面におけるガス流速を均一に維持すること、
を実現する石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置及び測定方法を提供するものである。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1に、本発明の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置(以下、本発明装置という場合もある)の一態様を示す。なお、(A)は、測定装置の全体を示し、(B)は、装置本体部分の詳細を示す。
本発明装置は、装置本体15、加熱炉1、温度計16、圧力計2、及び、マスフローコントローラー3を主要な構成とする。
装置本体は、長手方向の中央内部に石炭試料室12を設けた外管4と、この外管4内の石炭試料室12の上下に配置された上下一対のメッシュ板5と、この一対のメッシュ板5を外管4内の上下から押さえて固定するための上下一対のメッシュ板固定管6と、石炭試料室12にガスを流通するためのガス導入口13a及びガス排出口13bを備えるとともに、上下の外管4及びメッシュ板固定管6の端部をパッキン9を介して密封しつつ外管4外周から固定するための上下一対のキャップ8とで構成される。
上下一対のキャップ8を用いて、外管4及びメッシュ板固定管6の端部を、パッキン9を介して密封しつつ外管4の外周から固定するための手段として、キャップ8の内周に雌ネジ10aを形成するとともに、外管4の上下の外周に雄ネジ10bを形成し、これらの雌ネジ10aと雄ネジ10bを螺合して固定することができる。
通気抵抗測定の試験終了後に、メッシュ板固定管6を外管4内から引き抜くための手段として、メッシュ板固定管6の内面に雌ネジ11を形成し、先端に雄ネジ加工した引出用丸棒(図示せず)をメッシュ板固定管6の雌ネジ11に取り付け、この引出用丸棒を用いてメッシュ板固定管6を引き抜くことができる。
この引き抜き法により、石炭の乾留で生成したタール等によりメッシュ板固定管6が外管4が固着した場合でも、メッシュ板固定管6を引き出し、石炭試料室12内の石炭試料7を排出することが容易になる。
加熱炉1は、上記装置本体の少なくとも長手方向の石炭試料室12の範囲を含み、外管4の外周を包囲するように配置され、石炭試料室12内の少なくとも半径方向の中心と外周を含む複数個所に配置した熱電対などの温度計により測定された平均温度が温度設定値になるように制御される。
圧力計2及びマスフローコントローラー3は、上記装置本体のガス導入口13aに接続されたガス配管14に設けられる。圧力計2は、ガス導入口13a側の圧力を測定し、この圧力測定値P1から、排出口13b側の圧力を大気圧P0とした時の圧力損失ΔP(=P1−P0)が求められる。マスフローコントローラー3は、ガスボンベ(図示せず)から供給される不活性ガスの流量を、設定流量に基づき制御する。
本発明装置を用いた石炭軟化溶融層の通気抵抗の測定は、以下のように行われる。
先ず、装置本体における外管4内の石炭試料室12の下部に、メッシュ板5を、メッシュ板固定管6で仮固定した後、外管4及びメッシュ板固定管6の端面を、パッキン9を介して、外管4の外周の雄ネジ10bとキャップ8の内周の雌ネジ10aを用いて固定する。
次に、石炭を所定粒度に粉砕し、この所定粒度の石炭から石炭試料を所定量採取して、石炭試料室12内に装入する。その後、石炭試料室12の上部に、メッシュ板5を、メッシュ板固定管6で仮固定した後、外管4及びメッシュ板固定管6の端面を、パッキン9を介して、外管4の外周の雄ネジ10bとキャップ8の内周の雌ネジ10aを用いて固定する。
最後に、石炭試料室12内に石炭試料7を装入した外管4のガス導入口13aの、キャップ8とガス配管14をワンタッチジョイントで接続し、その後、装置本体を、加熱炉1内の所定位置に固定する。
石炭試料室12内の石炭試料7に、ガスボンベ(図示せず)から、マスフローコントローラー3を用いて、一定流量の窒素ガスなどの不活性ガスを流通させるとともに、加熱炉1を用いて設定温度まで加熱し、石炭試料室12内の少なくとも半径方向の中心と外周を含む複数個所に配置した熱電対などの温度計により温度を測定する。
なお、温度計の設置による石炭試料室12内の通気抵抗への影響を考慮し、加熱炉内に、装置本体を、2台、並列に配置して、一方に温度計を設け、他方に圧力計を設け、それぞれが、石炭試料の温度と圧力損失を測定することが好ましい。
石炭試料7が加熱される過程における各温度の通気抵抗(1/K)は、ガス導入口13a側に設けられた圧力計2により、ガス導入口13a側の圧力を測定し、この圧力測定値P1から、排出口13b側の圧力を大気圧P0とした時の圧力損失ΔP(=P1−P0)を求め、このΔPを、基に上記(1)式から求められる。
一般に、石炭は、およそ400〜500℃の温度で軟化溶融し、450〜550℃の温度で再固化する。この石炭の軟化溶融温度及び再固化温度は、石炭銘柄及び性状によって異なるため、JISで規定された方法により、予め、石炭試料の軟化溶融温度を測定することが好ましい。
以上のように、本発明装置を用いることにより、軟化溶融温度における石炭試料層(石炭軟化溶融層)の通気抵抗を測定することができる。
前述したように、実コークス炉操業時においては、炭化室内の石炭は、炉壁を隔てて隣接する燃焼室からの熱伝達により、先ず、炉壁近傍の石炭が加熱されて、石炭軟化溶融層が形成され、熱伝達により、軟化溶融層が、炭化室中心部に徐々に移行することで、石炭の乾留が進行する。
このため、実コークス炉操業時の石炭の乾留途中での炭化室内には、炉壁から中心部までの炉幅方向範囲で、コークス層(再固化層)、軟化溶融層、石炭層(未乾留層)が共存する状態が生じる。この際、石炭の軟化溶融層は、流動性を有するとともに、石炭中の揮発成分や軽質成分の一部のガス化による内圧で膨張状態となる。
また、石炭軟化溶融層の周囲には、コークス層(再固化層)と石炭層(未乾留層)が存在するが、コークス層は、加熱により層内のガスが抜け出ることで、収縮状態となり、石炭層は、石炭軟化溶融層の膨張により圧密化されるため、石炭軟化溶融層は、周囲からの拘束が緩和される。
このため、石炭軟化溶融層の嵩密度BD[kg/m3]は、コークス層の収縮と未乾留石炭層の圧密によって生じた空隙分だけ、石炭装入時の充填嵩密度BD0[kg/m3]に比べて、低くなる。
一方、本発明装置を用いて測定される石炭軟化溶融層の通気抵抗は、石炭試料室12に装入された石炭試料7の半径方向の温度差を小さくし、石炭試料7の周囲が壁で拘束された状態で測定されたものであるから、実コークス炉操業時のような石炭軟化溶融層の嵩密度の低下の影響はない。
石炭軟化溶融層の通気抵抗は、嵩密度により当然影響を受けるものであるから、実コークス炉操業における石炭軟化溶融層の通気抵抗を評価するためには、本発明装置を用いて測定される石炭軟化溶融層の通気抵抗を、実コークス炉における石炭軟化溶融層の密度(BD)との関係で補正する必要がある。
本発明測定装置で測定した石炭軟化溶融層の通気抵抗から、実コークス炉における石炭軟化溶融層の通気抵抗を推算する方法について、以下に説明する。
実コークス炉における石炭軟化溶融層の嵩密度BD[kg/m3]は、石炭装入時の充填嵩密度BD0[kg/m3]、コークス層の収縮度合い(体積変化)、及び、石炭層の圧密度合いから求められるが、これらのうち、石炭層の圧密度合いは、通常のコークス炉操業での石炭充填嵩密度条件では、大きな差異がないため、実質は、石炭装入時の充填嵩密度(BD0)とコークス層の収縮度合い(体積変化)によって決められる。
コークス層の収縮度合い(体積変化)は、例えば、以下のような石炭乾留試験における石炭の再固化温度以上の温度におけるコークス収縮率を測定することにより求められる。
石炭の再固化温度以上の温度とコークス収縮率の関係は、例えば、粉砕した石炭を管状容器内に充填し、この石炭を、再固化温度TR(℃)以上の炉温T(℃)まで加熱した場合において、再固化温度TR(℃)での石炭の長さLTRと、再固化温度TR以上、炉温T以下の範囲内での温度T1(℃)での石炭の長さLT1を測定し、これらから、下記(2)式により、再固化温度以上の温度T1(℃)でのコークス収縮率RT1(%)を求めることにより、得ることができる。
T1(%)=(LTR−LT1)/LTR×100 ・・・(2)
なお、複数銘柄の石炭が、所定の配合割合で配合された配合炭の収縮率は、上記の方法により直接測定することもできるが、各銘柄の石炭それぞれのコークス収縮率を測定し、各銘柄の石炭の配合率を考慮した荷重平均を計算することにより求めることができる。
実コークス炉における石炭軟化溶融層の嵩密度BD[kg/m3]は、配合炭Iの石炭装入時の充填嵩密度BD0[kg/m3]と、上記のように測定された配合炭Iのコークス収縮率CIとから下記(3)式により求めることができる。
BD=k・BD0・(100/CI) ・・・(3)
なお、上記kは、コークス炉のサイズ及び加熱条件により、0.05〜0.15の範囲から選択される定数であり、本発明実施形態では、k=0.1が用いられる。
また、上記コークスの収縮率の測定方法より簡便な方法として、JIS M8801で規定する方法により、石炭中のVMを測定し、石炭中のVMからコークス収縮率を推定することもできる。
コークス収縮率は、石炭中のVM(揮発成分量)と相関関係があり、石炭中のVMが高いほど、コークス収縮率は大きくなる。
したがって、予め2種類以上の異なる配合炭Iiの揮発分VMIi[%]とコークス収縮率CIi[%]を測定し、下記(4)式に示すような配合炭Iiの揮発分VMIi[%]とコークス収縮率CIi[%]の関係式を求めることにより、石炭中のVM測定値から、下記(4)式により、コークス収縮率を推定することが可能となる。
I=L1・VMI+L2 ・・・(4)
なお、本実施形態では、2種類の配合炭から求めた一次関数を用いたが、配合炭Iiの揮発分VMIi[%]とコークス収縮率CIi[%]の関係式は、これに限られず、3種類以上の配合炭を用いて、単調増加関数となるような二次又は三次関数としてもよい。
以上から、実コークス炉における石炭軟化溶融層の嵩密度BD[kg/m3]は、石炭装入時の充填嵩密度BD0[kg/m3]と、コークス収縮率[%]又は石炭中のVM[%]によって求めることができる。
したがって、実コークス炉における石炭装入時の充填嵩密度BD0[kg/m3]の条件での石炭軟化溶融層の通気抵抗値を評価する場合は、石炭試料装入時の充填嵩密度が、上記(3)式により求められた石炭軟化溶融層の嵩密度BDとなるように石炭試料を調整して、本発明測定装置により、圧力損失ΔP[kPa]を測定し、通気抵抗値1/Kを求める必要がある。
通気抵抗値は、本発明測定装置により測定された圧力損失ΔPから、上記(1)式により求められるが、上記(1)式において、層厚L、ガス流速u、ガス粘度μを一定と仮定すると、通気抵抗は、圧力損失ΔPとほぼ同等に扱うことができる。
したがって、石炭軟化溶融層の膨張圧の評価は、例えば、本発明測定装置により測定された圧力損失ΔP[kPa]を基準圧力P0[kPa]で除した相対値P[−]を、膨張圧指数として用いることができる。
本発明の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置は、装置本体における石炭試料室12の直径が13mm以下、メッシュ板5の孔径が0.3mm以下とし、好ましくは、石炭試料室12の高さが13mm以下とする点に特徴がある。
この構成により、石炭試料室12内の石炭試料層の半径方向中心部から外周部までの温度差を±2℃以下に小さくすることができ、石炭試料層の層厚と垂直な断面における溶融状態の違い、及び、これに起因する圧力損失ΔPのばらつきを抑制することができる。
以下に、本発明装置及び方法の特徴とする石炭試料室12の直径及び高さ、さらに、メッシュ板5の孔径、ガス流量、試料粒度分布の限定理由について説明する。
(石炭試料室の直径:13mm以下)
本発明者らの検討によれば、例えば、非特許文献7及び8に記載の従来の装置本体における石炭試料室の大きさは、直径20mm、高さ10mm程度であり、表1に示すように、石炭試料の半径方向での温度差は8〜10℃程度と大きいことを確認した。
Figure 2009144001
石炭試料層の半径方向に大きな温度差が生じる場合には、各部位での溶融状態の違いが大きくなり、軟化溶融部に比べて通気抵抗が小さく、温度上昇が遅い未溶融部や、温度上昇が早い再固化部に集中して通気がなされるため、見掛け上、通気抵抗が、真値(前記温度分布が小さい場合の測定値)より低く測定されることが予想される。
本発明者らは、従来の測定装置を用いて測定された石炭軟化溶融層の通気抵抗がばらつく主な原因が、石炭試料層の半径方向に生じる温度差によるものと考え、装置本体の石炭試料室の半径と、石炭試料層の半径方向に生じる温度差の関係について検討した。
図2に、石炭試料室の高さは10mm一定で、直径が異なる装置本体を用いて石炭軟化溶融層の温度を測定した場合における、石炭試料室の直径と、石炭試料室内の石炭試料層の半径方向中央部の温度が450℃に到達した時点での、この中央部と外周部の温度差との関係を示す。
図2から、石炭試料室12の直径を13mm以下にすることにより、石炭試料層の半径方向の温度差を2℃以下にできることが解る。
以上の知見を基に、本発明では、石炭試料層の半径方向中心部から外周部までの温度差を±2℃以下に小さくし、石炭試料層の層厚と垂直な断面における溶融状態の違いに起因する圧力損失ΔPのばらつきを抑制するために、装置本体における外管4内の石炭試料室12の直径を13mm以下とする。
(メッシュ板の孔径:0.3mm以下)
表2に、ガス流量は10cc/min一定とし、メッシュ板の孔径が異なる装置本体を用いて、石炭軟化溶融層の圧力損失ΔPを測定した場合における、メッシュ板の孔径と、圧力損失ΔPのばらつきとの関係を示す。圧力損失ΔPのばらつきは、相対標準偏差、つまり、圧力損失ΔPの平均値に対する圧力損失ΔPの標準偏差値で示した。
Figure 2009144001
表2から、メッシュ板の孔径を0.30mm以下にすることにより、圧力損失ΔPのばらつきを、相対標準偏差で0.30に低減できることが解る。
上記知見によれば、メッシュ板5の孔径が大きくなると、石炭試料室12に装入された石炭試料7が軟化溶融し、膨張する際に、メッシュ板5の孔から軟化溶融状態の石炭が流出し、一定容積に拘束することができなくなり、見かけ上通気抵抗が、真値(前記温度分布が小さい場合の測定値)より低く測定されるので、本発明では、メッシュ板5の孔径を0.3mm以下とする。
なお、メッシュ板5の孔径の下限は、特に限定する必要はなく、従来の装置で用いられているメッシュ板と同様に、流通するガスの通気に対して抵抗とならない孔径以上に設定されるものである。
(石炭試料室の高さ:13mm以下)
表3に、石炭試料室の直径は10mm一定で、高さが異なる装置本体を用いて石炭軟化溶融層の圧力損失ΔPを測定した場合における、石炭試料室の高さと、圧力損失ΔPのばらつきとの関係を示す。圧力損失ΔPのばらつきは、相対標準偏差、つまり、圧力損失ΔPの平均値に対する圧力損失ΔPの標準偏差値で示した。
Figure 2009144001
表3から、石炭試料室の高さを13mm以下にすることにより、圧力損失ΔPのばらつきは相対標準偏差で0.3に低減できることが解る。
以上の知見によれば、外管4内の石炭試料室12の高さが高くなると、上記の溶融状態の違いに起因した石炭軟化溶融層の通気抵抗のばらつきが顕著になる傾向になり、見かけ上通気抵抗が、真値(前記温度分布が小さい場合の測定値)より低く測定されるので、本発明では、外管4内の石炭試料室12の高さを13mm以下とするのが好ましい。
(ガス流量:25cc/min以下)
表4に、メッシュ板の孔径が0.15mmの装置本体を用いて、ガス流量を変えて、石炭軟化溶融層の圧力損失ΔPを測定した場合における、ガス流量と、圧力損失ΔPのばらつきとの関係を示す。圧力損失ΔPのばらつきは、相対標準偏差、つまり、圧力損失ΔPの平均値に対する圧力損失ΔPの標準偏差値で示した。
Figure 2009144001
表4から、ガス流量を25cc/min以下にすることにより、圧力損失ΔPのばらつきは相対標準偏差で0.3に低減できることが解る。これは、本発明装置は、従来に比べて、石炭試料室12の直径及び高さが小さいため、ガス流量が25cc/minより大きいと、石炭軟化溶融層を大きく乱し、弱い部分で吹き抜けをおこし易くなるためと考えられる。
以上の知見を基に、本発明では、石炭軟化溶融層の通気抵抗のばらつきを抑制するために、ガス流量は、25cc/min以下とするのが好ましい。
(石炭試料の粒度分布)
本発明装置においては、石炭試料室の直径及び高さが小さく、石炭試料の装入量も少なくなるので、石炭を所定粒度に粉砕した後における、所定量の石炭試料の採取の仕方によっては、石炭試料の粒度が、粉砕時の粒度と異なり、これが、石炭軟化溶融層の通気抵抗の測定値のばらつきの原因となることが解った。
表5に、石炭を、3mm以下が100%の粒度に粉砕した後、そのまま、所定量を採取した場合(条件1)と、3mm以下が100%の粒度の石炭中の3〜1mm、1〜0.6mm、0.6〜0.3mm、及び、0.3mm以下の各粒度区分の存在割合を維持するように所定量の石炭試料を採取した場合(条件2)において、石炭軟化溶融層の通気抵抗を測定し、この測定値のばらつきを求めた結果を示す。圧力損失ΔPのばらつきは、相対標準偏差、つまり、圧力損失ΔPの平均値に対する圧力損失ΔPの標準偏差値で示した。
Figure 2009144001
条件2の石炭試料は、前記の3mm以下が100%の粒度の石炭を、1mm、0.6mm、及び、0.3mmの篩目の篩を用いて、3−1mm、1−0.6mm、0.6−0.3mm、及び、−0.3mmの各粒度区分に篩い分けて、各粒度区分の存在割合(粒度分布)を測定し、所定装入量になるように、各粒度区分毎に、その存在割合の石炭を採取して作製したものである。
なお、ガス流量は10cc/min、メッシュ板の孔径は0.15mmとした。
表5から、石炭を所定粒度に粉砕した後、各粒度区分の存在割合を維持するように所定量の石炭試料を採取することにより、試験2の方が、ばらつきは低減し、結局、ばらつき低減のためには、粉砕後石炭試料を所定の粒度区分に篩い分けた後、目標の粒度分布になるように、各粒度区分毎の試料を組み合わせることが、より好ましいことが解る。
したがって、本発明装置を用いて石炭軟化溶融層の通気抵抗を測定する場合には、粉砕後石炭試料を、所定の粒度区分に篩い分けた後、目標の粒度分布になるように、各粒度区分毎の試料を組み合わせることがより好ましい。
本発明の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置によれば、圧力損失ΔP及び通気抵抗の測定値から、膨張圧指数(圧力損失ΔPを基準圧力P0で除した相対値P)を、0.5〜2時間程度で測定できるので、大型可動壁型乾留炉で直接膨張圧を測定する場合に比べて、迅速に、膨張圧を評価することができる。
したがって、実コークス炉の操業において、配合前の石炭、又は、配合後の石炭をサンプリングし、本発明装置により、石炭軟化溶融層の圧力損失ΔP及び通気抵抗を測定し、膨張圧指数を求めることにより、膨張圧指数を基に、コークス押出負荷を許容限界値以下に管理する操業が可能となる。
具体的には、予め、本発明装置により求められた膨張圧指数と、実コークス炉でのコークス押出負荷との関係を求めておき、例えば、膨張圧指数が高い場合には、(a)石炭をより細かく粉砕する、(b)膨張圧が高い石炭の配合比率を下げる、(c)膨張圧抑制効果がある石炭の配合比率を増加する等の手段により、膨張圧指数を基に、コークス押出負荷を許容限界値以下にするように、石炭の粉砕条件、配合条件、装入条件、及び、乾留条件を調整する。
以下に、実施例を用いて本発明の効果を実証するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表6に、発明例として、数種類の配合炭(配合炭1〜配合炭5)を用いて、本発明装置により、石炭軟化溶融層の圧力損失ΔPを測定し、膨張圧指数Pを求めた結果を示す。なお、膨張圧指数P[−]は、圧力損失の測定値ΔP[kPa]を基準圧力P0[kPa]で除して求められる相対値である。
Figure 2009144001
また、比較例として、石炭試料室の半径及びメッシュ板の孔径が本発明の規定範囲から外れた、非特許文献9に記載の従来装置及び測定方法を用いて、同様に、圧力損失よりΔPを測定し、膨張圧指数Pを求め、発明例と比較した。
なお、膨張圧指数Pの測定精度は、大型可動壁型乾留炉を用いて直接測定した膨張圧との相関係数を求め、相関係数により評価した。
表6から、石炭試料室の半径及びメッシュ板の孔径が本発明の規定範囲内を満足した本発明装置を用いて求めた発明例1〜3の膨張圧指数Pは、いずれも、石炭試料室の半径及びメッシュ板の孔径が本発明の規定範囲から外れた比較例1及び2の膨張圧指数Pに比べて、大型可動壁型乾留炉を用いて直接測定した膨張圧と非常に高い相関性を有し、膨張圧の推定精度が高い(測定ばらつきが小さい)ことが解る。
図3(B)及び表7に、本発明例1の測定における圧力損失ΔP測定時の石炭試料室の半径方向の中心部温度、外周部温度、これらの平均温度、中心部と外周部との温度差、平均温度と設定温度との温度差を示す。図3及び表7から、石炭試料室の半径方向中心部と外周部温度の差は±2℃以下と極めて小さいことが解る。なお図3(A)に、石炭試料室における温度測定位置を示す。
Figure 2009144001
図4に、発明例1及び比較例1の測定における、石炭試料の平均温度とガス導入口側で測定した圧力の関係を示す。なお、圧力損失ΔPは、ガス排出側の圧力を大気圧とした時にこのガス導入口側の圧力測定値を基に求められるため、ガス導入口側の圧力の温度依存性は圧力損失ΔPの温度依存性に対応して評価できる。
図4から、発明例1のガス導入口側の圧力は、石炭試料の温度が約400℃以上で、圧力が上昇し始め、軟化溶融温度に相当する約450℃で圧力の最大値(0.12MPa)を示すことが解る。一方、比較例1のガス導入口側の圧力は、発明例1に比較して低温側から上昇を開始し、圧力の最大値は本発明例1よりかなり低下していることが解る。
両者の比較から、発明例1は、比較例1に比べて圧力損失ΔPの測定精度を向上できるとともに、軟化溶融温度:約450℃の石炭試料の石炭軟化溶融層における通気抵抗を高い再現性で測定できるものと考えられる。
(実施例2)
図5に、25日間の実炉操業において、期間1(1〜12日)は、通常の操業を行い、期間2(13日以降)から、発明例1の測定装置及び測定条件で石炭軟化溶融層の圧力損失ΔPを測定し、膨張圧指数Pを求め、この膨張圧指数Pに基づいて、石炭の粉砕条件、配合条件、及び、操業条件の諸条件を調整した場合における、コークス押出時の相対押出負荷の推移を示す。
なお、相対押出負荷とは、コークス押出機の押出電流値の管理基準値に対する押出負荷電流測定の比を意味する。
図5から、期間1においては、相対押出負荷が1を超える(管理基準値を超える)場合があり、そのばらつきも大きいが、本発明を適用した期間2においては、相対押出負荷は1以下(管理基準値以下)に維持され、膨張圧指数のばらつきも低減している。
例えば、期間1の13日目の膨張圧指数Pは9.4であり、相対押出負荷は1.04とコークス押出負荷は管理基準値を超えていた。このため、膨張圧指数Pが8になるように、石炭粉砕粒度及びコークス炉操業条件(炉温及び石炭嵩密度)は変えずに、石炭配合条件を変更し、配合炭中の膨張圧が高い石炭の配合比率を低下させたところ、14日目に、相対押出負荷は0.9(この時の膨張圧指数Pは8.6)に低下した。
さらに、石炭配合を変更し、配合炭中の膨張圧抑制効果がある石炭の配合比率を増加したところ、15日目には、相対押出負荷は、0.86(この時の膨張圧指数Pは7.9)まで低下した。
図5に示す結果から、本発明の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置及び測定方法をコークス炉の操業に適用することにより、炭化室内における配合炭の膨張圧を抑制し、コークス押出時の押出負荷を管理値以下に制御することができ、コークス押出トラブルのない、安定的なコークス炉操業とともに、コークス炉の寿命延長を実現することが可能であることが解る。
前述したように、本発明によれば、膨張圧を抑制して安定的なコークスの押出が可能となり、押し出しトラブルによる生産減を回避してコークス炉の生産効率を向上させることが可能となるとともに、押し出しトラブルにより誘発されるコークス炉炉壁損傷を回避して、コークス炉の炉寿命延長を実現することができる。
したがって、本発明は、コークス製造産業において利用可能性が大きいものである。
本発明の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置の構成図であり、(A)は、測定装置の全体を示し、(B)は、装置本体部分の詳細を示す。 本発明装置本体における石炭試料室の直径と石炭試料室内の石炭試料層の半径方向中央部と外周部の温度差との関係を示す図である。 発明例1における石炭試料室の半径方向中心部温度、外周部温度、平均温度及び設定温度の温度曲線であり、(A)は、温度測定位置を示し、(B)は、温度曲線を示す。 発明例1及び比較例1における石炭試料の平均温度とガス導入口側で測定した圧力の関係を示す図である。 本発明を実コークス炉操業に適用する前後におけるコークス押出時の相対押出負荷の推移を示す図である。
符号の説明
1 加熱炉
2 圧力計
3 マスフローコントローラー
4 外管
5 メッシュ板
6 メッシュ板固定管
7 石炭試料
8 キャップ
9 パッキン
10a 雌ネジ
10b 雄ネジ
11 メッシュ板固定管内面雌ネジ
12 石炭試料室
13a ガス導入口
13b ガス排出口
14 ガス配管
15 装置本体
16 温度計(熱電対)

Claims (5)

  1. 装置本体、加熱炉、温度計、圧力計、及び、マスフローコントローラーを主要な構成とする石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置において、該装置本体は、長手方向の中央内部に石炭試料室を設けた外管と、該外管内の石炭試料室の上下に配置された上下一対のメッシュ板と、該一対のメッシュ板を外管内の上下から押さえて固定するための上下一対のメッシュ板固定管と、上記石炭試料室にガスを流通するためのガス導入口及びガス排出口を備えるとともに、上下の外管及びメッシュ板固定管の端部をパッキンを介して密封しつつ外管外周から固定するための上下一対のキャップとで構成され、上記石炭試料室の直径が13mm以下であり、上記メッシュ板の孔径が0.3mm以下であることを特徴とする石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置。
  2. 前記石炭試料室の高さが13mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置。
  3. 前記石炭試料室の半径方向中央部と外周部との温度差が±2℃以内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定装置を用いて、石炭試料室に石炭試料を装入し、該石炭試料にマスフローコントローラーを用いて不活性ガスを流通させるとともに、加熱炉により石炭試料を加熱しながら、温度計と圧力計を用いて石炭試料層の温度と圧力損失を測定し、石炭軟化溶融温度における圧力損失の測定値に基づいて石炭軟化溶融層の通気抵抗を求める方法であって、上記石炭試料層に流通させる不活性ガスの流量を25cc/min以下とすることを特徴とする石炭軟化溶融層の通気抵抗測定方法。
  5. 前記石炭試料は、石炭を粉砕した後、該石炭の粒度分布を測定し、その後、粉砕後の石炭の粒度分布となるように、各粒度区分毎の存在割合を調整したものであることを特徴とする請求項4に記載の石炭軟化溶融層の通気抵抗測定方法。
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