JP5775280B2 - カーボン付着量評価装置およびカーボン付着量評価方法 - Google Patents
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ここで「カーボン付着量の評価」とは、コークス炉炭化室に装入される石炭の性状や炭化室の炉壁温度等の指標に基づき、カーボン付着速度を推定し、コークス炉炭化室内のカーボン付着状況を検証することをいい、こうした評価結果を基に、装入される石炭の性状やコークス炉の操業条件を管理し制御する要素として用いることができる。
カーボン歩留=0.0965VM−11.52・O/C−1.03 …式1
VM:揮発分,O/C:酸素/炭素原子数比
なお、図6中、101は石炭乾留炉、102はタール分解炉、103は石炭乾留ルツボ、104はタール分解ルツボ、105は氷冷タールポット、106はタール回収系、107はフィルター、108は乾式ガスメータ、109はテドラーバックを示す。
D=64.5exp(−7950/T)・VM・(1−0.00476W) …式2
T:付着表面温度,VM:揮発分,W:水分
図7は当該方法を実験するための乾留炉を示し、電熱による両面加熱方式で,この中に内容積13.5L,石炭装入量8kgのレトルトを設置する。レトルトを900℃に加熱した後,レトルト上部の装入口より石炭を装入して乾留する。発生したガスは上部立上り部を経て外部に排出されるが,立上り部に外部加熱によって所定の温度に加熱した珪石レンガ製の試験片を設置し,熱分解カーボンが付着するようになっている。試験片を立上り部に設置したのは,試験片の表面温度を正確にコントロールするためである。乾留は約2時間で終了するがこの間カーボンは一定の速度で成長するものとした。付着量は乾留終了後ただちに試験片を取り出し,水冷,乾燥後秤量して求めた。
(i)特許文献1の方法に関しては、温度が1220℃の場合でしか適用できず、カーボン付着温度の影響が考慮されていない。
(ii)揮発分が指標となる推定式を用いて検証した場合、同じ揮発分でもカーボンの付着量は異なるものがあり、汎用的に適用することが難しい。具体的には、後述するように、本発明の検証過程において、メタン比が異なればカーボンの付着量は異なることを見出した。
(iii)従来の装置は大きく、例えば図7の装置であれば、試験に要する時間も長く、試験に要する作業も負荷の大きいものとなるという課題があった。
(a)前記試料部に石炭試料を設置するステップ、
(b)前記採取部を乾留温度まで加熱するステップ、
(c)前記試料部を非加熱状態から前記乾留温度まで昇温するステップ、
(d)前記採取部に付着採取されたカーボン量を測定するステップ、
を有し、予め(a)〜(d)のステップによって、該試料に係るカーボン量のデータを得、カーボン付着量の推定に必要となる推定式の係数を確定することを特徴とする。
図1は、本発明に係る装置(以下「本装置」という)の基本的な構成(第1構成例)を例示した概略図である。本装置は、下段部に試料Sを設置する試料部1と、上段部にカーボン付着材Pを設置する採取部2と、各々の外周を被覆する断熱材3とを有する。試料部1と採取部2の中間には断熱部3aが設けられ、これを境にして別々に加熱される。前者を第1加熱部Ha、後者を第2加熱部Hbとし、断熱材3および断熱部3aを含め加熱部Hを構成する。ここで、簡易的には試料部1と採取部2は、試験管のような円筒部材を用いて内底部を試料部1とし、上部開口部から煉瓦片(カーボン付着材)Pを針金等で吊るして採取部2を構成することができる。その外周部に、断熱部3aを挟持するように第1加熱部Ha用と第2加熱部Hbを配設するとともに、これら全体を上下面および側面から断熱材3によって被覆することによって、高温の乾留条件を形成することができる。
kcd=Aexp(−Ea/RT) …式4
A:頻度因子
Ea:活性化エネルギー[J/mol]
R:気体定数8.31[J/mol・K]
T:絶対温度[K]
ここで、試料Sの加熱時減量をHWL、下式7で算出するイナート補正を行った加熱時減量をHWLi、トータルイナート量をTIとすると、下式5〜8が成り立つ。
Ea=f(HWLi,メタン比) …式5
lnA=f(HWLi) …式6
HWLi=HWL/(100−TI)×100 …式7
メタン比[−]=CH4/(CH4+CO+CO2) …式8
活性化エネルギーEaおよび頻度因子Aに係る関数は、後述する検証を基に設定され、近似式として数次の多項式を用いることも可能である。なお「イナート補正した加熱時減量」とは、石炭中に含まれる不活性成分(イナート)を除いた活性成分中の加熱時減量を式7より求めたものである。「トータルイナート量」とは、石炭中に含まれる不活性成分の総量をいい、後述の方法により求めることができる。
加熱時減量HWLは、試料Sを乾留温度まで加熱したときの乾留前後の試料Sの重量を測定することによって得ることができる。
メタン比は、試料Sを乾留温度まで加熱したときに発生するガス中のメタン(CH4)、CO、CO2の発生量を測定し、その発生量比を式8で算出することによって得ることができる。
トータルイナート量TIは、下式9,10を用い、予め下記に示す測定法によって確定された試料Sの性状を表わす指標値から算出し得ることができる。
TI=(100−MM)×[補正イナーチニット]/100+MM …式9
[補正イナーチニット]=[イナーチニット]−[セミフジニット]/3 …式10
ここで「イナーチニット」とは、主として植物の木質部および菌類に由来する石炭微細組織成分部の一種をいい、不溶融成分である。また、セミフジニット:イナーチニットのうち、植物の木質部に由来する微細組織成分をいう。[補正イナーチニット]は、JISM8816に準拠して、石炭微細組織成分の分析を行い求められた「イナーチニット」の割合および「セミフジニット」の割合から算出される。また、指数MMは、鉱物質量のことであり、Parrの式とよばれている下式11を用いて、AshとTSの質量%から容量%に換算した値である。
MM={100(1.08Ash+0.55TS)/2.8}/[{100−(1.08Ash+0.55TS)}/1.35+(1.08Ash+0.55TS)/2.8] …式11
ここで「Ash」は、石炭中の灰分を示し、JISM8812に基づき測定され、「TS」は、石炭中の全硫黄分を示し、JISM8813に基づき測定される。
(i)本装置を用いてカーボン付着量を推定することにより、少量で短時間に複数種類の試料を評価することができる。
(ii)比較的コンパクトな本装置の特徴を生かし、実装現場でのカーボン付着量の推定を、安価な設備コストで簡便に行うことができる。
本装置の他の構成例(第2構成例)の概要を、図2に示す。同一条件の複数の試料部11〜15、採取部21〜25および加熱部Ha,Hbを有し、各試料部11〜15に設置され乾留された異なる石炭試料S1〜S5から生成するカーボンを採取し、採取されたカーボン量のデータから石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量を評価することを特微とする。例えば、試料部11〜15を同時に昇温し、所定時間後に採取部21〜25からカーボン付着材P1〜P5を取り出し、その重量を測定することによって、一つの工程により異なる石炭試料S1〜S5からのカーボン付着量を測定することができる。カーボン付着量については、1回の乾留でも可能であるが、組成のばらつきが大きい石炭試料を測定する場合、この操作を繰り返し行い、測定回数に対するカーボン付着量の平均的な増加速度を評価することで、試料のサンプリング誤差や試験の測定誤差を小さくできる。
次に、図1に例示した本装置を用い、上式4〜8に基づくカーボン付着量評価方法について述べる。具体的には、
(a)試料部1に石炭試料Sを設置するステップ、
(b)採取部2を乾留温度まで加熱するステップ、
(c)試料部1を非加熱状態から乾留温度まで昇温するステップ、
(d)採取部2に付着採取されたカーボン量を測定するステップ、
を有し、この(a)〜(d)のステップによって、予め標準となる石炭試料Soに係るカーボン量のデータを得、カーボン付着量の推定に必要となる推定式の係数を確定し、この推定式を用いて評価対象となる石炭試料Saの加熱減量と発生ガス組成比から石炭試料Saのカーボン付着量を推定し、評価する。
1次処理ステップとして、評価対象となる石炭と等価な石炭の標準試料を試料Soとして用い、予め(a)〜(d)のステップによって試料Soに係るカーボン量のデータを得てカーボン付着量の推定に必要となる指標と推定式を確定する。つまり、予め石炭性状とカーボン付着速度(kcd)との関係を、本装置を用いて試験により求めておく。
石炭試料Soが、所定の大きさ(例えば粒径0.5mm以下)に粉砕された状態で、所定量試料部1(例えば内径15mmの試験管の下部)に充填される。このとき、試料部1は非加熱状態あるいは予め加温(例えば50〜300℃)し、不活性ガス(例えば窒素)によってパージしておくことによって、カーボンの燃焼を防止することができる。また、試料Soの性状に係るデータは予め入手しておくことが好ましい。
第2加熱部Hbにおいて、カーボン付着材Pがセットされた採取部2を乾留温度(例えば850℃)まで加熱し、略定温状態となるようにする。
第1加熱部Haによって試料部1の温度を非加熱状態から乾留温度まで昇温する。
採取部2に設けられたカーボン付着材Pを取り出し、その重量を測定する。乾留前に予め測定した重量との差が付着採取されたカーボン量となる。
試料Soの性状を表わす指標を確定する。つまり、試料Soについてのトータルイナート量TI,加熱時減量HWL、メタン比を予め入手しておき、これらとカーボン付着量との関係から推定式の係数を決定する。
2次処理ステップとして、評価対象となる石炭を試料Saに代え、加熱時減量と発生ガス組成比のデータを用い、上記ステップ(e)において確定した推定式に導入することによって、石炭試料Saのカーボン付着量を推定し評価する。こうした方法を用いることによって、以下のような従前にはない技術的効果を得ることができる。
(i)実装条件に対応した、カーボン付着速度を精度よく推定することができる。
(ii)カーボン付着速度の推定から、例えば窯出時の押出電力制御等コークス炉の運転制御に役立てることができる。
本検証では、コークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量の推定を目的に、種々の石炭試料を用いて、カーボン付着量に対する石炭性状および温度の影響の定量化試験を行った。
(1−1)試料
本実験に使用した試料の主な性状を表1に示す。試料として8種の石炭と1種の石油系ピッチ(ASP)を用いた。各試料の加熱時減量(TG)と発生ガス量については島津製熱天秤とGCを組み合わせた装置を用い、800℃までの加熱で減少する重量変化と発生するCO,CO2,CH4の量を定量した。
図1に示す本装置を用い、試料部1と採取部2を構成する内径15mmの試験管に0.5mm以下に粉砕した石炭試料Sを充填嵩密度(B.D.)が約0.73g/cm3で充填し、その上部に硅石煉瓦片Pを吊り下げた。下段を300℃、上段を750,850,900および950℃のいずれかの設定温度に保持した炉にこの試験管を装填し、上段の煉瓦片Pの温度が設定温度に達した後、試料部1である下段の温度を850℃まで60℃/minで昇温させ10分間乾留後取出した。窒素気流中室温まで自然放冷させ、煉瓦片Pを取り出し、重量の測定を行った。この操作を5回繰り返し行い、煉瓦片Pの1回毎の重量変化を記録した。
上段の温度900℃で行った試験での6種の石炭(Coal A〜F)およびASPの乾留回数と煉瓦片単位面積あたりのカーボン付着量との関係を図3に示す。乾留回数の増加とともにカーボン付着量は直線的に増加するが、試料によりその量は異なることが確認できる。この近似直線の傾きから、乾留1回あたりの煉瓦片単位面積に付着するカーボン量を求め、カーボン付着速度kcdとする。
図4に温度の逆数と、その温度での各試料(Coal A〜FおよびASP)のkcdの対数値とをプロットしたものを示す。ASPを含むほとんどの試料で直線性を示しており、カーボン付着速度はアレニウスの式で表せることが確認できる。この直線の傾きと切片から各試料の活性化エネルギーEaと頻度因子Aを求めることができる。石炭の種類に依らずカーボン付着の活性化エネルギーはほぼ一定となるとする報告もあるが、今回の実験結果では、石炭の種類により活性化エネルギーは異なっていることが確認できる。
この活性化エネルギーおよび頻度因子と試料性状との関係を調べたところ、それぞれイナート補正した加熱時減量(HWLi)と上式8で算出する発生ガス組成比(Rg)を用いて整理できることがわかった(上式5,6)。そこで、これらの試料性状値と炉温からなるカーボン付着速度推定式を作成した。
一例としてこの推定式を使用して求めた、Coal G,Hの推定カーボン付着速度と実測のカーボン付着速度を図5に示す。両試料(Coal G,H)とも、推定値と実測値はよく一致していることが確認できる。
上記の推定方法の検証試験より、カーボン付着速度は石炭の加熱時減量、発生ガス組成比およびレンガ温度の関数で推定できることを確認した。
2 採取部
3 断熱材
3a 断熱部
H 加熱部
Ha 第1加熱部
Hb 第2加熱部
P 煉瓦片(カーボン付着材)
S 試料(石炭試料)
Claims (3)
- 石炭試料を設置する試料部、該試料を加熱し乾留する加熱部、乾留された試料からのカーボンを付着採取する採取部を有する石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量評価装置であって、
前記加熱部が、前記試料部を加熱する第1加熱部と前記採取部を加熱する第2加熱部および両者の中間に設けられた断熱部から構成され、第2加熱部を乾留温度に加熱した状態で、第1加熱部を非加熱状態から前記乾留温度まで昇温し、付着採取されたカーボン量のデータから石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量の推定に必要となる推定式の係数を確定し、係数の確定された推定式を用いて、カーボン付着量を推算するカーボン付着量評価装置であり、
前記試料部、加熱部および採取部を複数有し、各試料部に設置され乾留された複数の石炭試料からのカーボン付着量を同時に、かつ、同一乾留条件で評価することを特徴とするカーボン付着量評価装置。 - 前記採取部を前記試料部の上空間に配設し、前記試料の直上空間部に珪石煉瓦を配設してカーボンの付着採取を行なうとともに、該カーボンの付着量を測定することを特徴とする請求項1記載のカーボン付着量評価装置。
- 試料部に設置された石炭試料を加熱し、乾留された該試料からのカーボンを採取部で付着採取し、付着採取されたカーボン量のデータから、石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量を評価するカーボン付着量評価方法であって、
(a)前記試料部に石炭試料を設置するステップ、
(b)前記採取部を乾留温度まで加熱するステップ、
(c)前記試料部を非加熱状態から前記乾留温度まで昇温するステップ、
(d)前記採取部に付着採取されたカーボン量を測定するステップ、
を有し、予め(a)〜(d)のステップによって、該試料に係るカーボン量のデータを得、カーボン付着量の推定に必要となる推定式の係数を確定する方法であり、
前記推定式の指標を加熱時の試料減量、発生ガス組成比および乾留温度とし、前記推定式の関数を該指標に基づくアレニウスの式とすることを特徴とするカーボン付着量評価方法。
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