JP5833473B2 - コークス製造用原料の作製方法および該作製方法により作製されたコークス製造用原料 - Google Patents
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Description
(i)特許文献1の方法は、粘結炭を主体とした原料炭に流動性のない低品位炭を配合した場合、配合する低品位炭のlogMFは検出できないため、配合炭のMFあるいはlogMFは原料炭のMFあるいはlogMFと差異がないこととなり、原料炭に低品位炭を配合した配合炭のMFあるいはlogMFの推定方法として適用することができず、所望のMFあるいはlogMFを有する配合炭の作製が困難であった。
(ii)一方、従前のような各石炭単味のMFあるいはlogMFの加重平均での推定値では、実際の配合炭のMFあるいはlogMFの推定値と大きなズレが生じることがあり、推定方法として適用することができず、所望のMFあるいはlogMFを有する配合炭の作製が困難であった。
(iii)特に、同じ原料炭を用いて、同じ比率で低品位炭との配合を行なった場合であっても、低品位炭の銘柄によって、その各石炭単味のMFあるいはlogMFの加重平均での推定値とのズレが大きくなることがあった。
(iv)また、特許文献2の方法によって、粘結材を原料炭に低品位炭および流動性の高い粘結材等を配合させる場合にあっては、配合される低品位炭に対して所定の特性を有する炭種に限定され、原料炭/低品位炭および低品位炭/粘結材の配合比率が制限され、低品位炭の増量要請に十分応えることができなかった。また、原料炭の炭種が異なれば流動度が相違することから、これに応じた低品位炭の配合比率も制限され、適用範囲の拡大が困難であった。さらに、原料炭に低品位炭が配合された配合炭の流動性は、個別に実測する以外になく、上記(i)〜(iii)の課題を解消するものではなかった。
予め原料炭の1または2以上の炭種を基準炭として選択し、該基準炭の適正流動度の範囲と、該基準炭の温度に対する流動度特性曲線と、該流動度特性曲線に基づく前記基準炭の最高流動度を求め、さらに、配合される1または2以上の低品位炭について、該低品位炭の配合比率に対する前記基準炭の最高流動度の変化に基づく該低品位炭に係る流動度低下勾配を求め、
実際に使用される前記原料炭の最高流動度と、実際に配合される前記低品位炭に係る流動度低下勾配に基づき、該原料炭に配合される該低品位炭の配合比率から、該原料炭に該低品位炭が配合された1次配合炭の最高流動度を推定するとともに、
予め前記原料炭よりも高い流動性を有する高流動度炭または高流動度材料の最高流動度を求め、
前記1次配合炭の最高流動度と所望のコークス製造用原料の最高流動度との差異を補填するように、前記高流動度炭または高流動度材料の配合率zを設定し、前記1次配合炭に配合して、2次配合炭を作製することを特徴とする。
(a)低品位炭の配合に伴う流動度低下勾配は、原料炭(基準炭)の炭種や特性に依存しない。
(b)低品位炭が配合された流動度低下勾配は、低品位炭の銘柄固有で、配合の都度求める必要はない。
具体的には、使用される1または2以上の低品位炭を、基準炭(予めMFを求めておく)と配合し、予め各低品位炭に係る流動度低下勾配を求めておく。実際に使用される原料炭のMFと配合される低品位炭の配合比率と流動度低下勾配から、簡便な手法によって、効率的に1次配合炭のMFを推定することが可能となった。従って、こうして得られる精度の高い1次配合炭のMFの推定値および高流動度炭または高流動度材料の最高流動度を基に、過剰量の低品位炭の配合によって生じた所望のコークス製造用原料の最高流動度との差異を、精度よく補填することが可能となり、粘結性あるいは流動性に優れたコークス製造用原料を作製することができるコークス製造用原料の作製方法を提供することが可能となった。
z=f(Y2,Y1,Yo,T,α) …式1
ここで、Y2:所望の2次配合炭の最高流動度
Y1:1次配合炭の最高流動度
Yo:低品位炭の最高流動度
T :高流動度炭または高流動度材料の最高流動度
α :低品位炭の流動度低下勾配
上記のように、低品位炭の流動度低下勾配に基づき、1次配合炭のMFを精度高く推定できることは、さらに高流動度炭または高流動度材料を配合して作製されるコークス製造用原料を、所望のMFに、適正に調整することができることを意味する。本発明は、2次配合炭,1次配合炭,低品位炭,高流動度材のMFあるいは低品位炭の流動度低下勾配を指標とする関数を基に、高流動度材の配合率zを上式1のように設定することによって、過剰量の低品位炭の配合によって生じた所望のコークス製造用原料のMFとの差異を、精度よく補填することが可能となり、適正範囲の流動度を有し、粘結性あるいは流動性に優れたコークス製造用原料を作製することが可能となった。なお、配合率zの設定につき、上式1における具体的な関数は後述する。
上記検証の結果において、1次配合炭のMFは、配合される低品位炭の銘柄に依存することの知見とともに、配合された低品位炭の酸素合有量が多いほど流動性が低くなる傾向を示すとの知見を得た。こうした傾向は、低品位炭の流動度低下勾配に影響を与えることから、配合される低品位炭の酸素含有率(一般に販売される石炭の特性表に明示される)を基に補正することによって、より正確に1次配合炭のMFを推定することが可能となった。
上記検証の結果においては、1次配合炭のMFは、配合された低品位炭の酸素合有量以外に、低品位炭の揮発分が多いほど流動性が低くなる傾向を示すとの知見を得た。こうした傾向は、酸素合有量同様、低品位炭の流動度低下勾配に影響を与えることから、配合される低品位炭の揮発分(同様に石炭の特性表に明示される)を基に補正することによって、より正確に1次配合炭のMFを推定することが可能となった。
上記作製方法によって作製された配合炭(2次配合炭)は、優れた粘結性あるいは流動性を有している。こうした特性は、コークス製造用原料としての適性を確保するに十分であり、こうして作製された配合炭(2次配合炭)をコークス製造用原料として用いることが有用である。
冶金用コークスの製造工程を、図1により簡単に説明する。岸壁に接岸した石炭運搬船1から石炭が陸上げされ、貯炭場2において、石炭の性状(銘柄)ごとに貯蔵される。貯炭場2に貯蔵されている石炭(原料炭および低品位炭を含む)は、銘柄ごとに必要な分量がリクレーマーで払い出され、ベルトコンベアにより配合槽3へと送り出される。配合槽3は複数槽を有しており、1つの配合槽に1つの銘柄の石炭が貯蔵される。石炭は、その性状によりコストの高低があり、品質のよいコークスを安価なコストで製造するために、複数の配合槽から性状の異なる石炭を最適な配合比率で切り出すとともに(1次配合炭)、適量の高流動度材7を配合し、コークス製造用原料(2次配合炭)としての配合が完了する。すなわち、コークス製造には、種々の種類(銘柄)の石炭を海外から輸入し、銘柄ごとに貯炭場2に貯蔵する。これは、各炭鉱で採掘される石炭は、炭鉱ごとに性状が異なり、性状が異なれば製造されるコークスの性状も異なるため、複数の石炭および適量の高流動度材を配合することで、最も安価なコストでユーザーから要求されるコークス性状(品質)を満足することが必要となるためである。
通常石炭の品質は、物理的性質として粘結性あるいは流動性等によって、化学的性質として4つの工業分析値(水分,灰分,揮発分,固定炭素)等によって評価される。本作製方法においては、こうした特性のうち、特に流動性によってコークス製造用原料としての適正を評価した。また、石炭の強度(コークス強度)を、ドラム強度(DI15)および熱間強度(RSI)によって評価した。
石炭および高流動度材の流動度は、JIS−M8801で規格化されたギーセラープラストメータ測定法によって測定される。具体的には、図2(A)に例示するように、温度を指標として、評価対象となる石炭の軟化溶融状態下での流動度の変動を追跡して、流動度特性曲線(ギースラー流動度曲線)が求められ、その最大値である最高流動度(MF)をもって当該石炭の流動性が評価される。なお、実際の評価においては、一般に、MF値ではなく、その常用対数logMFとして対比される。ギーセラープラストメータ測定法は、測定対象である石炭あるいは高流動度材が、攪拌棒を備えたるつぼに装填され、金属浴(はんだ浴)中で、例えば昇温速度3.0±0.1℃/分で昇温される。概念的には温度上昇に伴い石炭あるいは高流動度材の軟化が始まり、これに伴って攪拌棒が回転し始める(流動性の現出)。そして、石炭あるいは高流動度材が固有の温度で最高回転数を示した後(MFに相当)、石炭あるいは高流動度材の再固化が始まり、次第に回転数は低下して所定の温度で攪拌棒の回転が完全に停止する。こうした流動度特性曲線は、石炭あるいは高流動度材の種類で異なる。
図2(B)は、原料炭に低品位炭を配合したときの、原料炭,低品位炭,配合炭(1次配合炭)のそれぞれの流動度曲線を示す。原料炭の最高流動度MFoが、低品位炭(MF=0とする)の配合により作製された1次配合炭の最高流動度MFmに変化(低下)した状態を示す。このとき、このMFmを常用対数に換算して得られたlogMFm値と、単純に原料炭のlogMFoと低品位炭のlogMF(=0)を加重平均して推定するlogMFm値と対比した場合、両者に大きなズレが生じる場合があることが判った。と同時に、後述するようないくつかの知見から、1次配合炭のMFmを精度よく推定することが可能であることが判った。本作製方法は、こうした知見に基づく推定を利用することを特徴の1つとする。ここで、「logMF」は、最高流動度(MF)の常用対数値を示し、実際の評価において使用される。
原料炭あるいは作製された石炭を、小型試験炉(幅430mm、横380mm、350mm)に730kg/m3で充填し、炉温1070℃で乾留し、中心温度が1030℃到達後に窒素雰囲気で冷却処理し、得られたコークスについて、以下の測定方法によりドラム強度(DI15)および熱間強度(RSI)を測定してコークス強度を評価した。
(iii−1)ドラム強度測定方法
上記処理により得られたコークスについて、JIS−K2151で規格化された落下強度試験法に準拠したシャッター試験を2回施した試料から25mm篩上のコークス塊を採取し、これらを用いてJIS−K2151に準拠したドラム強度指数(DI15)を測定した。
(iii−2)熱間強度測定方法
上記処理により得られたコークスを平均粒径19〜21mmに整粒し、この試料より19mm篩上から21mm篩以下のコークス塊200gを用い、1100℃で2時間CO2(5L/min)と反応させる。反応後、反応残試料を、内径132mm、高さ700mmの筒状のI型ドラム試験機(長谷川製作所製)に入れ、20回転/分で30分間回転させた。その後、9.56mmの篩で篩い分け、篩上に残った試料重量を測定し、反応残試料に対する篩上の残存試料割合を熱間強度(RSI)とした。
本作製方法の基本的な作製プロセスの概要を、図3に例示する。コークス製造用原料として用いられる2次配合炭に対する所望の流動度(例えばlogMFが2〜3の範囲)が設定された場合、以下の工程(1)〜(7)の作製プロセスによって、2次配合炭が作製される。
(1)原料炭,低品位炭および高流動度材の選定
(2)1次配合炭のMFの推定
(3)1次配合炭の作製:原料炭と低品位炭との配合
(4)1次配合炭のMFと所望のMFとの差異の確認
(5)高流動度材の配合量の算出
(6)2次配合炭の作製:1次配合炭と高流動度材との配合
(7)2次配合炭のMFの確認:所望のMFの範囲内の確認
種々の原料炭や低品位炭を用いた場合、特に過剰量の低品位炭を用いた場合であっても、1次配合炭のMFを精度高く推定できるとともに、既知のMFを有する高流動度材を用いて補填することによって、2次配合炭のMFを適正に調整することができる。以下、上記工程(1)〜(7)の詳細を説明する。なお、工程(2)1次配合炭のMFの推定については、後述する別項において、詳述する。
所望のコークス製造用原料(2次配合炭)を作製するために、原料炭,低品位炭および高流動度材が選定される。通常、既知あるいは実測のMFを有する原料炭および低品位炭が選定され、各々の配合量が設定される。例えば、所望の2次配合炭のMFがlogMF=3[logddpm]である場合、原料炭としてlogMF=2〜4[logddpm]の高流動度を有する粘結炭を選定し、低品位炭としてlogMF=0.1〜1[logddpm]の低流動度の褐炭を選定し、予め実際に配合される各石炭の流動度に係る情報を検証あるいは実測する。具体的には、上記図2(A)に示すような流動度特性曲線を入手あるいは実測する。また、同時に、選定された原料炭と低品位炭との配合性の優れた高流動度材としてタールピッチを選定し、その流動度に係る情報を検証あるいは実測する。なお、予め原料炭と低品位炭の流動度に係る情報が入手可能で、かかる情報を基に、任意の配合比率における1次配合炭のMFが推定可能な場合には、これらの配合比率を指標とし1次配合炭を構成する原料炭と低品位炭および配合比率を選定することができる。このとき、各々の石炭は1つの炭種に限定されず、複数の炭種が配合された石炭を用いることができる。
上記(1)で得られた原料炭と低品位炭の流動度特性曲線に基づき、原料炭と低品位炭ついての図2(A)に示すような最高流動度(MF)を設定する。また、選定された原料炭と同種あるいは異種の類似した流動度を有する基準炭を設定し、該基準炭の流動度特性曲線を入手あるいは実測する。原料炭,低品位炭および基準炭のMFを基に、複数の配合比率における1次配合炭のMFを推定する。推定方法の詳細は、後述する。
上記(1)で選定された原料炭と低品位炭を、選定された配合比率によって配合し、1次配合炭を作製する。このとき、原料炭と低品位炭を均一に分散させて配合するのではなく、後述するように、2次配合炭を作製するステップにおいて、低品位炭と高流動度材を近接して配合した後に、原料炭と均一に配合する方法が好ましい。また、作製された1次配合炭(抜き取り)のMFを実測し、上記(2)で推定された1次配合炭のMFと比較することが好ましい。両者の相違が、同時に使用される同一の炭種における所定範囲のMF(以下「許容範囲」ということがある)であれば、推定された1次配合炭のMFを採用することによって、抜き取り誤差を少なくすることができる。両者の相違が、該許容範囲を超える場合には、作製された1次配合炭のうちから再度抜き取られた石炭を実測し,原料炭のMFのばらつき,上記(2)で推定に用いられた基準炭のMFとの相違等を検証し、実測された1次配合炭のMFを基準に、各要素を補正して1次配合炭のMFを確定する。確定された1次配合炭のMFが、上記(2)で推定された1次配合炭のMFと許容範囲を超えて異なる場合には、再度、上記(1)での「1次配合炭の配合比率の見直し」を含む上記(1)〜(3)の作製ステップを行う。
作製された1次配合炭のMFと所望の(2次配合炭の)MFとの差異を確認する。つまり、上記(3)で確定した1次配合炭のMFによって、原料炭への過剰量の低品位炭の配合によって生じた所望のMFとの差異を確認させ、補填に必要な高流動度材の配合量を確定させる。
作製された1次配合炭のMFと所望のMFとの差異を補填すべく、高流動度材の配合量が算出される。1次配合炭への高流動度材の配合率zは、下式1のように、所望の2次配合炭の最高流動度(MFあるいはlogMF)を基に、1次配合炭の最高流動度(MFあるいはlogMF),配合される低品位炭の最高流動度(MFあるいはlogMF),高流動度材の最高流動度(MFあるいはlogMF),低品位炭の流動度低下勾配のいずれか,あるいはそのいくつかを指標として設定される。具体的には、後述に例示するような下式2−1や2−2に基づき設定することができる。
z=f(Y2,Y1,Yo,T) …式1
ここで、Y2:所望の2次配合炭の最高流動度
Y1:1次配合炭の最高流動度
Yo:低品位炭の最高流動度
T :高流動度炭または高流動度材料の最高流動度
α :低品位炭の流動度低下勾配
z=(Y2−Y1)/T …式2−1
ここで、Y2:所望の2次配合炭のlogMF
Y1:1次配合炭のlogMF
T :高流動度炭または高流動度材料のlogMF
過剰量の低品位炭の配合によって生じた所望のMFとの差異を、高流動度材を適量配合することによって精度よく補填することが可能となり、適正範囲の流動度を有する2次配合炭を作製することできる。
z=α×Yo/T …式2−2
ここで、α :低品位炭の流動度低下勾配(△logMF)
Yo:低品位炭のlogMF
T :高流動度炭または高流動度材料のlogMF
低品位炭の配合によって生じた原料炭のMFとの差異を、低品位炭の特性から推定された適量の高流動度材を配合することによって精度よく補填することが可能となり、適正範囲の流動度を有する原料炭と同等の品位および強度を有する2次配合炭を作製することできる。ここで、「△logMF」は、最高流動度(MF)の常用対数値logMFの勾配(流動度低下勾配)を示し、実際の評価において使用される。
1次配合炭に、上記(1)で選定された高流動度材を、上記(5)で設定された配合率zによって配合し、2次配合炭を作製する。このとき、原料炭,低品位炭,高流動度材を単純に均一に配合するよりも、低品位炭と高流動度材を近接して配合した後に、原料炭と均一に配合する方法が好ましい。低品位炭に高流動度材を近接させることによって、加熱時に低品位炭と高流動度材が近接して軟化溶融し、その後再固化して低品位炭のコークス強度を上げることができるとともに、見かけの流動性が高い低品位炭が配合された状態を形成することができる。つまり、コークス製造用原料として使用される粒状あるいは粉状の石炭は、個々の各粒子あるいは粉状体として機能するものであり、各粒子あるいは粉状体が高品位な特性を有することによって、高品位炭と同等の機能を確保することが可能であると推定される。
作製された2次配合炭(抜き取り)のMFを実測し、所望のMFの許容範囲内であることを確認する。該許容範囲を超える場合には、作製された2次配合炭のうちから再度抜き取られた石炭を実測し,1次配合炭や高流動度材のMFのばらつき,上記(2)で推定された1次配合炭のMFとの相違等を検証し、実測された2次配合炭のMFを基準に、各要素を補正して1次配合炭のMFを確定する。確定された2次配合炭のMFが、所望のMFの許容範囲を超えて異なる場合には、再度、上記(4)〜(6)の作製ステップを行う。なお、所望のMFの許容範囲を超えて異なる場合には、再度、上記(1)〜(6)の作製ステップを行う。所望のMFの許容範囲内にある2次配合炭を、コークス製造用原料として使用する。
本作製方法の基本的な作製プロセスは、上記(1)〜(7)の各ステップを有するが、これに限定されるものではない。例えば、上記(6)で挙げた低品位炭と高流動度材を近接して配合した後に、原料炭と均一に配合する方法を適用する場合には、図4に例示するように、以下の各ステップから構成することが可能である。
(1)原料炭,低品位炭および高流動度材を選定するステップ
(2)1次配合炭のMFを推定するステップ
(3’)高流動度材の配合量を算出するステップ
(4’)1次配合炭,2次配合炭を作製するステップ
初めに低品位炭と高流動度材を近接して配合した後に、原料炭と均一に配合することによって、実質的に上記(3)〜(6)と同様、1次配合炭と2次配合炭が重複した工程を介して作製されることとなる。
(5’)2次配合炭のMFの確認を確認するステップ
また、本作製方法によって作製された2次配合炭は、優れた粘結性あるいは流動性を有し、コークス製造用原料として用いられる。低品位炭が増配された1次配合炭のMFを正確に推定し、高流動度材によって所望の流動性を有する2次配合炭とすることによって、高価な高品位の石炭の消費量を低減し、余剰品として少量しか使用できなかった低品位炭の使用範囲を拡大し消費量の増大を図ることが可能となった。図5は、原料炭が所望の流動性を有する石炭,これを超える流動性を有する石炭,およびそれ以下の流動性を有する石炭の場合の、原料炭への低品位炭の配合による1次配合炭のMFの変化および1次配合炭への高流動度材の配合による2次配合炭のMFの変化を模式的に示す。過剰の低品位炭の配合によって所望のMFを下回る1次配合炭が作製され、これに高流動度材を配合することによって、所望のMFを有する2次配合炭が作製される。
上記作製プロセスの工程(2)に係る1次配合炭のMFの推定方法(以下「本推定方法」という)は、原料炭の1または2以上の炭種を基準炭として選択し、予め該基準炭の特性と、配合される1または2以上の低品位炭に対する基準炭のMFの変化に基づく該低品位炭に係る流動度低下勾配を求めるとともに、実際に使用される前記原料炭のMFと、実際に配合される低品位炭に係る流動度低下勾配に基づき、該原料炭に配合される該低品位炭の配合比率から、該原料炭に該低品位炭が配合された1次配合炭のMFを推定する。つまり、本推定方法は、次のような知見を基に、予め基準炭によって得られた後述する「本推定方法の手順」によって、簡便かつ効率的に1次配合炭のMFを高い精度で推定することができる。
(a)低品位炭の配合に伴う流動度低下勾配(以下「△logMF」ということがある)は、原料炭(基準炭)の炭種や特性への依存性が低い。つまり、異なる原料炭(基準炭)に対して、同一の低品位炭を配合させた場合の△logMFが、原料炭(基準炭)の炭種やMF等の特性に依存しない。従って、同一の低品位炭について、共通の推定値を設定することができる。
(b)低品位炭の△logMFは、低品位炭の銘柄固有である。つまり、同一原料炭(基準炭)に対して、異なる低品位炭を配合させた場合の△logMFは、配合される低品位炭の銘柄によって決定される。従って、異なる低品位炭を配合することによって、同一の原料炭(基準炭)について異なる推定値の設定することができる。
以下、その知見を得た検証過程を詳述する。
本推定方法は、基本的に、以下の5つのステップから構成される。
(i−1)予め準備された基準炭の流動度特性曲線(例えば図2(A)に例示する特性)を実測するステップ
(i−2)上記(1)で得られた流動度特性曲線に基づき、基準炭のMFを設定するステップ
(i−3)予め準備された低品位炭を基準炭に配合し、1次配合炭の流動度特性曲線からMFを実測するステップ
(i−4)実測された1次配合炭のMFから、各低品位炭についての△logMFを設定するステップ
(i−5)実際に使用される1次配合炭のMFを推定するステップ
実際に使用される原料炭のMFと、実際に配合される(予定の)低品位炭について設定された△logMFを用い、1次配合炭のMF(logMF)を推定する。低品位炭の配合に伴う1次配合炭の流動度は、一般式として、下式3によって表すことができる。
Y=S+α×X …式3
ここで、Yは1次配合炭のlogMF
Sは原料炭のlogMF
αは低品位炭の△logMF[1/%]
Xは低品位炭配合比率[%]
なお、予め1次配合炭のMF(logMF)の範囲が設定されている場合には、実際に配合される(予定の)低品位炭の配合比率を設定することによって、所望の1次配合炭のMF(logMF)を推定することができる。また、配合する予定の低品位炭では所望の1次配合炭のMF(logMF)の設定が難しい場合には、上記(4)で△logMFが設定された他の低品位炭のうちから、適正な△logMFが設定された低品位炭を選定し、1次配合炭のMF(logMF)を推定する。さらに、低品位炭の選定が難しい場合には、原料炭に使用されている粘結炭の一部を流動性の異なる粘結炭に振り替えて低品位炭配合時のlogMFを適正範囲に設定することも可能である。
(ii−1)検証に使用した石炭
本推定方法の検証に用いた原料炭(基準炭),低品位炭および1次配合炭の特性を、下表1に示す。以下、実施例を含む本推定方法の検証に用いた。
上表1の原料炭(基準炭),低品位炭および1次配合炭を用いて、その流動度特性曲線を求め、原料炭(基準炭)および低品位炭のMFおよびlogMFを設定した。下表2に、原料炭Jまたは原料炭Kに、低品位炭Aまたは低品位炭Bを配合したときの流動度測定結果を例示するとともに、図6および図7に図示する。下表2( )内は低品位炭のlogMF=0として加重平均した値を示す。
(a)図6および図7に示すように、異なる原料炭(基準炭)J,L,Kに対して、低品位炭Aを配合させた場合の△logMFが、原料炭(基準炭)の炭種やMF等の特性に依存しないといえる。また、MFが949[ddpm](logMF2.98),226[ddpm](logMF2.35)を有する異なる原料炭(基準炭)L,Kに対して、低品位炭Bを配合させた場合の△logMFが、それぞれ−0.130,−0.128であり、同様の結果が得られた。同一の低品位炭について、共通の推定値を設定することができる。
(b)図6に示すように、同一原料炭(基準炭)に対して、低品位炭Aを配合させた場合の△logMFが−0.099に対して、低品位炭Bを配合させた場合の△logMFが−0.128とあり、△logMFは、配合される低品位炭の銘柄によって決定される。異なる低品位炭を配合することによって、同一の原料炭(基準炭)について異なる推定値の設定することができる。
上記のような方法によって、従前にない簡便な手法によって、効率的に1次配合炭のMFを推定することが可能となった。一方、1次配合炭のMFは、配合される低品位炭の銘柄に依存することの知見とともに、配合された低品位炭のその特性によって推定値と実測値とのズレが生じることがわかった。具体的には、下表3に示すような5種類の低品位炭A〜Eを原料炭(基準炭)に配合し、1次配合炭の△logMFを実証したところ、同表に示す推定値および実測値が得られた。
上表3に示す実証結果から、1次配合炭の流動性は、配合される低品位炭の銘柄に依存するとともに、低品位炭の酸素合有率が高いほど流動性が低くなる傾向を示すことが判る。具体的には、図8に例示するように、低品位炭の酸素合有量が多いほど、1次配合炭の流動性の推定プロセスの最終段階に近い低品位炭に係る△logMFの設定に影響を与えている。このとき、実際の補正曲線としては、図9に例示するように、特性線が所定の幅(図中0.046)を有する曲線が用いられる。下表4に、低品位炭の配合比率10〜30%時の中央値,上限値および下限値を例示する。炭種によって、異なる所定の幅が設定される。酸素合有率が異なる場合、各低品位炭は同一銘柄といえない場合があるためである。つまり、特定の低品位炭によっては、酸素合有率が異なることから、銘柄の相違に伴う△logMFの変動の要因の1つとなる可能性がある。
具体的には、酸素含有率aの場合、下式4に基づき、△logMFを算出し、上式3に挿入し、補正される。
△logMF=−0.0061×a+0.0135 …式4
ここで、酸素合有率は、通常石炭の特性表に明示されることから、特に実測が要求されることはなく、補正に伴う煩雑さを招くことはない。また、上記のような工業分析値として石炭の品質表記がある場合には、下式5によって酸素含有率を算出することができる。
酸素含有率[%]=100−元素C,H,N,S[%] …式5
揮発分は、既述のように石炭の品質を化学的に評価する上において重要な要素である。上表3に示す実証結果から、低品位炭の揮発分が多いほど1次配合炭の流動性が低くなる傾向を示すことが判る。本推定方法においても、こうした傾向は、低品位炭は配合された1次配合炭の△logMFに影響を与えることが判った。具体的には、図10に例示するように、低品位炭の揮発分が多いほど、1次配合炭の△logMFに影響を与えている。本推定方法は、図10に示す揮発分に対する△logMFの変動を求め、予め銘柄によって設定された低品位炭に係る△logMFを補正することによって、後述する実施例のように、より正確に1次配合炭のMFを推定することが可能となった。なお、配合される低品位炭の揮発分は、通常石炭の特性表に明示されることから、特に実測が要求されることはなく、補正に伴う煩雑さを招くことはない。
具体的には、図10において、揮発分b[%]の場合、下式6に基づき、△logMFを算出し、上式3に挿入し、補正される。
△logMF=−0.000313×b2+0.0216×b−0.413 …式6
以上の本作製方法の有効性について、以下の内容について実証試験を行なった。
(i)実験条件
〔実施例1−1〕
実測値logMF:2.1である原料炭Nに対して、ΔlogMF:−0.14[logddpm]である低品位炭Fを配合比率2.5〜5%の条件で配合した1次配合炭(1次配合炭a,b)、および、1次配合炭にこれと同量の推定logMF:13,6の高流動度材である粘結材P,Qを配合した2次配合炭(1次配合炭ap,aq,bp,bq,bpq)を作製し、logMFおよびコークス強度を実測し、推定値と比較した。
〔実施例1−2〕
実測値logMF:2.4である配合炭(ハ)に対して、ΔlogMF:−0.04[logddpm]である低品位炭Dを配合比率10〜20%の条件で配合した1次配合炭(1次配合炭c,d,e)、および、1次配合炭に推定logMF:6の高流動度材である粘結材Qを配合した2次配合炭(2次配合炭cq,dq,eq)を作製し、logMFおよびコークス強度を実測し、推定値と比較した。
(ii)実験結果
下表5−1および5−2に示すように、〔実施例1−1〕および〔実施例1−2〕の条件においても、低品位炭の配合によって低下した1次配合炭のlogMFが、粘結材を配合することによって、原料炭および配合炭に近い2次配合炭のlogMFを得ることができることが判った。本作製方法の優れた機能が証明された。
以上の本推定方法の有効性について、以下の内容について実証試験を行なった。
〔実施例2−1〕原料炭のlogMFを高めに設定した場合の1次配合炭の流動度の推定
〔実施例2−2〕原料炭のlogMFを低めに設定した場合の1次配合炭の流動度の推定
〔実施例2−3〕流動性のない炭材を配合した場合の1次配合炭の流動度の推定
〔実施例2−4〕△logMFを用いた低品位炭配合焼成試験
原料炭のlogMFを高めに設定した場合の1次配合炭の流動度の推定を行なった。
(i)実験条件
logMF:2.98である原料炭Lに対して、低品位炭A,BおよびCを配合比率5〜10%の条件で、原料炭のlogMFおよび△logMFを実測、設定し、推定値と比較した。
(ii)実験結果
下表6に示すように、1次配合炭のlogMFについて、推定値と実測値が非常に一致し、相関性が高いことが判った。本推定方法の優れた機能が証明された。
原料炭のlogMFを低めに設定した場合の1次配合炭の流動度の推定を、上記実施例2−1と同様の方法にて行った
(i)実験条件
logMFの低い(2.00前後)原料炭Mおよび原料炭Nを用い、低品位炭の炭種を低品位炭D,低品位炭Eおよび低品位炭Fとして,配合比率1〜10%の条件で、原料炭のlogMFおよび△logMFを実測、設定し、推定値と比較した。
(ii)実験結果
下表7に示すように、原料炭のlogMFを低く設定した場合においても、1次配合炭のlogMFについて、推定値は実測値と合致している。
上記実施例2−1,2−2における低品位炭に代え、原料炭に流動性のない炭材を配合した場合の1次配合炭の流動度の推定を行なった
(i)実験条件
logMFの低い(2.00前後)原料炭Mおよび原料炭Nを用い、流動性のない炭材の炭種として低品位炭Gおよび低品位炭Hを用い,配合比率10%の条件で、原料炭のlogMFおよび△logMFを実測、設定し、推定値と比較した。
(ii)実験結果
下表8に示すように、無煙炭など石炭化度が進み軟化溶融しない低品位炭Gおよび低品位炭H等の炭材を用いても、1次配合炭のlogMFについて、推定値と実測値が非常に一致し、1次配合炭の流動度の推定は可能であることが判った。
△logMFを用い、低品位炭が配合された1次配合炭の焼成試験を行い、コークス強度を検証した。
(i)実験条件
原料炭として配合粘結炭(イ)およびその一部を粘結補填材に置き換えた配合粘結炭(ロ)を用い、低品位炭の炭種を低品位炭Fとして,配合比率0〜10%の条件で、配合粘結炭(イ)および配合粘結炭(ロ)のlogMFおよび△logMFを実測、設定し、推定値と比較した。また、このときのコークス強度を比較した。
ここで、低品位炭Fの流動度低下勾配は、△logMF=−0.12[logddpm/%]であった。また、配合粘結炭(ロ)は、予め低品位炭Fの配合によるlogMFの低下分を、既述のlogMF推定式(式3)を用いて算出し、低品位炭Fの配合時のlogMFが2.0(コークス強度の安定領域とされる)となるように、高流動性石炭の配合比率を増加させた高流動性配合炭で、実測のlogMF=2.66であった。
(ii)実験結果
下表9に示すように、△logMFを用いた1次配合炭のlogMFについて、推定値は、実測値を良くあっている。この推定値を、ベース並みに流動度調整すると、コークス強度が回復する。
2 貯炭場
3 配合槽
4 粉砕設備
6 コークス炉
6a コールビン
6b 装入車
6c 押出機
7 高流動度材
Claims (4)
- 原料炭に低品位炭が配合された配合炭を主成分とするコークス製造用原料を作製する場合に、
予め原料炭の1または2以上の炭種を基準炭として選択し、該基準炭の適正流動度の範囲と、該基準炭の温度に対する流動度特性曲線と、該流動度特性曲線に基づく前記基準炭の最高流動度を求め、さらに、配合される1または2以上の低品位炭について、該低品位炭の配合比率に対する前記基準炭の最高流動度の変化に基づく該低品位炭に係る流動度低下勾配を求め、
実際に使用される前記原料炭の最高流動度と、実際に配合される前記低品位炭に係る流動度低下勾配に基づき、該原料炭に配合される該低品位炭の配合比率から、該原料炭に該低品位炭が配合された1次配合炭の最高流動度を推定するとともに、
予め前記原料炭よりも高い流動性を有する高流動度炭または高流動度材料の最高流動度を求め、
前記1次配合炭の最高流動度と所望のコークス製造用原料の最高流動度との差異を補填するように、前記高流動度炭または高流動度材料の配合率zを設定し、前記1次配合炭に配合して、2次配合炭を作製するコークス製造用原料の作製方法であり、
前記配合率zを、下式2−1に基づき設定することを特徴とするコークス製造用原料の作製方法。
z=(Y2−Y1)/T …式2−1
ここで、Y2:所望の2次配合炭の最高流動度の常用対数値(logMF)
Y1:1次配合炭の最高流動度の常用対数値(logMF)
T :高流動度炭または高流動度材料の最高流動度の常用対数値(logMF) - 原料炭に低品位炭が配合された配合炭を主成分とするコークス製造用原料を作製する場合に、
予め原料炭の1または2以上の炭種を基準炭として選択し、該基準炭の適正流動度の範囲と、該基準炭の温度に対する流動度特性曲線と、該流動度特性曲線に基づく前記基準炭の最高流動度を求め、さらに、配合される1または2以上の低品位炭について、該低品位炭の配合比率に対する前記基準炭の最高流動度の変化に基づく該低品位炭に係る流動度低下勾配を求め、
実際に使用される前記原料炭の最高流動度と、実際に配合される前記低品位炭に係る流動度低下勾配に基づき、該原料炭に配合される該低品位炭の配合比率から、該原料炭に該低品位炭が配合された1次配合炭の最高流動度を推定するとともに、
予め前記原料炭よりも高い流動性を有する高流動度炭または高流動度材料の最高流動度を求め、
前記1次配合炭の最高流動度と所望のコークス製造用原料の最高流動度との差異を補填するように、前記高流動度炭または高流動度材料の配合率zを設定し、前記1次配合炭に配合して、2次配合炭を作製するコークス製造用原料の作製方法であり、
前記配合率zを、下式2−2に基づき設定することを特徴とするコークス製造用原料の作製方法。
z=α×Yo/T …式2−2
ここで、α :低品位炭の流動度低下勾配(△logMF)
Yo:低品位炭の最高流動度の常用対数値(logMF)
T :高流動度炭または高流動度材料の最高流動度の常用対数値(logMF) - 配合される前記低品位炭の酸素含有率に対する前記流動度低下勾配の変動を求め、使用する低品位炭に係る前記流動度低下勾配を、該低品位炭の酸素含有率によって補正することを特徴とする請求項1または2記載のコークス製造用原料の作製方法。
- 配合される前記低品位炭の揮発分に対する前記流動度低下勾配の変動を求め、使用する低品位炭に係る前記流動度低下勾配を、該低品位炭の揮発分によって補正することを特徴とする請求項1〜3にいずれかに記載のコークス製造用原料の作製方法。
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