JP2018048216A - コークス炉装入炭の嵩密度推定方法及び配合調整方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の嵩密度を高精度で推定する方法を提供する。また、同推定方法を用いて求められた装入炭の推定嵩密度に基づいて装入炭の配合を調整し、コークス強度を安定させる。【解決手段】粘結補填剤が添加され、100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の嵩密度を推定する方法では、装入炭の温度と粘結補填剤の添加率を説明変数、装入炭の嵩密度を目的変数とする重回帰式を構築し、操業時における装入炭の温度と粘結補填剤の添加率の各測定結果を前記重回帰式に代入して装入炭の嵩密度を推定する。【選択図】図5

Description

本発明は、粘結補填剤が添加され、100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の嵩密度推定方法及び配合調整方法に関する。
交互に配置された多数の炭化室と燃焼室とを備えるコークス炉では、炭化室に装入された石炭を高温で乾留することによりコークスが製造される。その際、コークス炉に装入する石炭(以下、「装入炭」と呼ぶ。)の嵩密度がコークスの生産性及びコークス強度などのコークス品質に大きく影響するため、装入炭の嵩密度管理が必要となる。
例えば、特許文献1には、コークス炉装入炭の目標嵩密度に応じて、装入炭の平均付着水分を調整することを特徴とするコークス炉装入炭の嵩密度管理方法が開示されている。装入炭の全含有水分は包蔵水分と付着水分の和となる。銘柄ごとに包蔵水分が異なるため、石炭配合の変動によって装入炭全体の平均包蔵水分は変動する。特許文献1記載の方法では、変動する平均包蔵水分に応じて、目標とする平均付着水分となるように、装入炭の全含有水分を調整する。
特開平8−81683号公報 特開平7−109465号公報
特許文献2記載の石炭の急速加熱法及び冶金用コークス製造方法では、石炭事前処理により装入炭を100℃以上に加熱した後、コークス炉に装入するため、装入炭の全含有水分はゼロ質量%となる。従って、特許文献2記載のプロセスでは、装入炭の付着水分は存在せず、特許文献1に記載されている方法によって装入炭の嵩密度を管理することは不可能である。
また、特許文献2記載のプロセスでは、装入炭の嵩密度に影響を与える要因が不明であるため、装入炭の嵩密度を推定することもできなかった。そのため、装入炭の嵩密度の影響を受けるコークス品質(コークス強度)の調整も従来のコークス製造方法(装入炭温度:10℃〜60℃程度、全含有水分:2質量%〜10質量%程度)に比べて困難であった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の嵩密度を高精度で推定する方法を提供することを目的とする。また、同推定方法を用いて求められた装入炭の推定嵩密度に基づいて装入炭の配合を調整し、コークス強度を安定させることを目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明は、粘結補填剤が添加され、100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の嵩密度を推定する方法であって、
前記装入炭の温度と前記粘結補填剤の添加率を説明変数、前記装入炭の嵩密度を目的変数とする重回帰式を構築し、
操業時における前記装入炭の温度と前記粘結補填剤の添加率の各測定結果を前記重回帰式に代入して前記装入炭の嵩密度を推定することを特徴としている。
100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭(以降、「高温装入炭」と呼ぶことがある。)の嵩密度は、後述するように、高温装入炭の温度及び粘結補填剤の添加率と高い相関性を有している。そこで、本発明では、高温装入炭の温度と粘結補填剤の添加率を説明変数、高温装入炭の嵩密度を目的変数とする重回帰式を用いることにより、高温装入炭の嵩密度を高精度で推定する。
また、第2の発明は、粘結補填剤が添加され、100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の配合を調整する方法であって、
前記粘結補填剤の添加率及び/又は前記装入炭の温度が変更された際に、第1の発明記載の重回帰式を用いて、変更後の前記装入炭の推定嵩密度を求め、変更前の前記装入炭の嵩密度に対する前記推定嵩密度の変動量を前記装入炭の嵩密度の変動量として、予め求めておいた、前記装入炭の嵩密度の変動量とそれに伴う非微粘結炭配合比(=前記装入炭に占める非微粘結炭の質量/前記装入炭の質量)の調整量との相関関係に適用し、非微粘結炭配合比の調整量を決定することを特徴としている。
本発明では、後述するように、高温装入炭の嵩密度とコークス強度との相関関係、並びにコークス強度と非微粘結炭配合比との相関関係を過去の操業実績から求め、これら二つの相関関係から、高温装入炭の嵩密度の変動量とそれに伴う非微粘結炭配合比の調整量との相関関係を求めておく。
そして、粘結補填剤の添加率及び/又は高温装入炭の温度が変更された際の高温装入炭の嵩密度を第1の発明記載の重回帰式を用いて推定し、変更前の高温装入炭の嵩密度に対する変更後の高温装入炭の推定嵩密度の変動量を、先に求めた前記相関関係における高温装入炭の嵩密度の変動量として非微粘結炭配合比の調整量を決定し、非微粘結炭配合比を変更する。
本方法により、コークス強度の低下を事前に察知することが可能となり、コークス強度が安定化する。
本発明では、高温装入炭の嵩密度と高い相関性を有する高温装入炭の温度及び粘結補填剤の添加率を説明変数、高温装入炭の嵩密度を目的変数とする重回帰式を用いることにより、高温装入炭の嵩密度を高精度で推定することができる。
また、同推定方法を用いて求めた高温装入炭の推定嵩密度に基づいてコークス強度の低下を事前に察知することが可能となり、非微粘結炭配合比を調整するのでコークス強度が安定化する。
本発明が対象とする高温装入炭の事前処理工程のフロー図である。 高温装入炭の嵩密度と粘結補填剤の添加率との相関性を示すグラフである。 高温装入炭の嵩密度と高温装入炭の温度との相関性を示すグラフである。 本発明の一実施の形態に係るコークス炉装入炭の嵩密度推定方法によって推定した高温装入炭の推定嵩密度と実績嵩密度との相関を示すグラフである。 上のグラフは、本実施の形態に係るコークス炉装入炭の嵩密度推定方法によって推定した高温装入炭の推定嵩密度及び実績嵩密度の時刻歴グラフ、下のグラフは高温装入炭の実績嵩密度に対する推定嵩密度の偏差の時刻歴グラフである。 高温装入炭の嵩密度とコークス強度との相関関係を示すグラフである。 コークス強度と非微粘結炭配合比との相関関係を示すグラフである。 高温装入炭の嵩密度の変動量とそれに伴う非微粘結炭配合比の調整量との関係を示すグラフである。 本発明の一実施の形態に係るコークス炉装入炭の配合調整方法のフロー図である。 従来の嵩密度管理方法を実施し、途中から本発明に係る嵩密度推定方法を用いて非微粘結炭配合比を調整した際に得られたコークスのコークス強度DIの時系列変動を示すグラフである。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
コークスの製造に用いられる装入炭は、設定したコークス強度となるように、粘結性を示す粘結炭と、粘結性を僅かに示す微粘結炭ないし粘結性を示さない非粘結炭からなる非微粘結炭を配合して用いられる。本発明では、石炭事前処理(例えば特許文献2参照)により100℃以上に加熱した装入炭(高温装入炭)を対象とする。
装入炭を100℃以上に加熱する高温炭操業では、昇温速度が速く、亀裂が入りやすくなるため、乾留後のコークス粒径が小さくなるが、粉コークスを添加すると、亀裂の進展が粉コークスによって止められるため、粉コークスを装入炭に添加してコークス粒径の拡大を図っている。一方、粉コークスは粘結性がないため、添加するとコークス品質(コークス強度)が低下する。そこで、粉コークス添加によるコークス品質(コークス強度)の低下を補うため、アスファルトピッチ(ASP)などの粘結補填剤が装入炭に添加される。
図1に高温装入炭の事前処理工程のフロー図を示す。
石炭配合槽16に貯えられている粘結炭及び非微粘結炭は、それぞれ必要な量が石炭配合槽16から切り出され、粉砕機15によって所定の粒度に粉砕された後、流動床乾燥分級機やサイクロンなどの分級機14に投入される。
分級機14に投入された原料炭は、150℃以上の粗粒炭と100℃以上の微粉炭に分級される。
分級機14によって分級された高温の微粉炭は、高温塊成機13に供給され、加圧成形されて塊成炭となる。一方、分級機14によって分級された高温の粗粒炭は、気流式の加熱塔12に送給され急速加熱処理される。
高温塊成機13から排出された塊成炭は、急速加熱処理された粗粒炭と混合された後、粘結補填剤と粉コークスが添加され、高温炭槽11に貯留される。
コークス炉10は、装入口から装入された装入炭を乾溜する炭化室と、燃料ガスを燃焼させる燃焼室とが炉幅方向に交互に配置されている。高温炭槽11に貯留されている高温装入炭は、コークス炉10の頂部に配置された装炭車(図示省略)により各炭化室に装入される。
装入炭の嵩密度は、コークスの生産性及びコークス強度などのコークス品質に大きく影響する。そのため、装炭車には、装入炭の重量を秤量するロードセル(図示省略)と、装入高さを測定する装入レベル計(図示省略)が搭載されており、装入炭の重量と装入高さから装入炭の嵩密度を算出し、次に装入する装入炭の粉砕粒度を調整して嵩密度を調整する嵩密度管理が行われている。
従来の嵩密度管理方法では、装入炭の嵩密度を把握してから対応をとるまで時間を要するが、予め装入炭の嵩密度を推定できれば、早めの対応をとることができる。
また、装入炭が高温である場合、嵩密度の変動量が大きく、装入炭の粉砕粒度の調整では装入炭の嵩密度を適正な範囲に調整することは困難であった。装入炭の嵩密度によらずコークス強度を調整するには、装入炭の配合、非微粘結炭配合比(=装入炭に占める非微粘結炭の質量/装入炭の質量)を調整する方法がある。
そこで、本発明では、高温装入炭の嵩密度を推定し、推定嵩密度に基づいて装入炭の配合調整を行う。
[本発明の一実施の形態に係るコークス炉装入炭の嵩密度推定方法]
高温装入炭の嵩密度は、高温装入炭の温度及び粘結補填剤の添加率と高い相関性を有している。高温装入炭の嵩密度と粘結補填剤の添加率との相関性を示すグラフを図2に、高温装入炭の嵩密度と高温装入炭の温度との相関性を示すグラフを図3に示す。なお、高温装入炭には粘結炭と非微粘結炭を配合したものを使用し、粘結補填剤にはアスファルトピッチ(ASP)を使用した。
高温装入炭の温度と粘結補填剤の添加率を説明変数、高温装入炭の嵩密度を目的変数として、過去の操業データに対して重回帰分析を行い、以下の重回帰式を得た。重相関係数Rは0.745であった。
高温装入炭の嵩密度(ton/m)=−0.0055×粘結補填剤の添加率(%)
−0.0000259×高温装入炭の温度(℃)
+0.8085(ton/m) (1)
操業時における高温装入炭の温度と粘結補填剤の添加率の各測定結果を(1)式に代入することにより、高温装入炭の嵩密度を推定することができる。なお、(1)式はあくまで一例であり、操業データ等によって係数は変化する。
高温装入炭の実績嵩密度と、上記(1)式によって推定した高温装入炭の推定嵩密度との相関を示すグラフを図4に、高温装入炭の実績嵩密度及び推定嵩密度の時刻歴グラフ、並びに高温装入炭の実績嵩密度に対する推定嵩密度の偏差の時刻歴グラフを図5に示す。なお、高温装入炭の実績嵩密度に対する推定嵩密度の偏差(%)は、(実績嵩密度−推定嵩密度)/実績嵩密度×100によって算出した。
高温装入炭の実績嵩密度に対する推定嵩密度の偏差は2%以下であり、これらのグラフから、高温装入炭の嵩密度を高い精度で推定できることがわかる。
[本発明の一実施の形態に係るコークス炉装入炭の配合調整方法]
上述した高温装入炭の嵩密度推定結果をもとに、コークス強度を確保するために装入炭の配合を調整する。その際、粘結補填剤の添加率や装入炭温度の調整は行わない。その理由は以下の通りである。
粘結補填剤はコークス強度向上のために添加するが、(1)式からわかるように、高温装入炭の推定嵩密度を向上させるには粘結補填剤の添加率を下げる方向のアクションとなり、コークス強度が低下することになる。
また、装入炭温度の調整を行わないのは、装入炭温度を変更すると、コークス炉での乾留時間が変わってしまうためである。(1)式からわかるように、高温装入炭の嵩密度を向上させるには装入炭温度を下げなければならないが、乾留時間が長くなりコークスの生産性が低下することになる。
過去の操業データより得られた、高温装入炭の嵩密度とコークス強度との相関関係を示すグラフを図6に、コークス強度と非微粘結炭配合比との相関関係を示すグラフを図7にそれぞれ示す。なお、コークス強度は、JIS K2151「コークス類−試験方法」に記載されているドラム強度指数(DI)であり、非微粘結炭配合比は、高温装入炭に占める非微粘結炭の質量/高温装入炭の質量である。また、図6の縦軸及び図7の横軸のコークス強度の差分は、高温装入炭の嵩密度が過去の操業実績の最小値である0.68(ton/m)のときのコークス強度に対する差分を示し、図7の縦軸の非微粘結炭配合比の差分は、高温装入炭の嵩密度が0.68(ton/m)のときの非微粘結炭配合比に対する差分を示している。
図6において、粘結補填剤の添加率及び/又は高温装入炭の温度が変更された際に、(1)式により推定した高温装入炭の推定嵩密度をBD1とすると、コークス強度の差分はDI1となる。また、図7においてコークス強度の差分DI1に対する非微粘結炭配合比の差分はMR1となる。
同様に、図6において、変更前の高温装入炭の嵩密度をBD2とすると、コークス強度の差分はDI2となり、図7においてコークス強度の差分DI2に対する非微粘結炭配合比の差分はMR2となる。
変更前の高温装入炭の嵩密度に対する変更後の高温装入炭の推定嵩密度の変動量は、BD2−BD1であるから、非微粘結炭配合比の調整量は、MR2−MR1となる。
過去の操業データに対して上記手順を適用することにより、高温装入炭の嵩密度の変動量とそれに伴う非微粘結炭配合比の調整量との関係を得ることができる。図8は、上記手順により得られた、高温装入炭の嵩密度の変動量とそれに伴う非微粘結炭配合比の調整量との関係を示したグラフの一例である。
なお、図6のグラフは高温装入炭の嵩密度に応じてグラフの勾配が異なっているため、図8のグラフでは、高温装入炭の嵩密度の範囲を3つの領域に分け、それぞれについて、高温装入炭の嵩密度の変動量とそれに伴う非微粘結炭配合比の調整量との関係を示している。
図9は、本実施の形態に係るコークス炉装入炭の配合調整方法のフローを示したものである。
[STEP1]
高温装入炭の温度が変更されたか否か判断する(ST1)。
[STEP2Y]
高温装入炭の温度が変更された場合は、(1)式により嵩密度の推定を行い(ST3)、変更前の嵩密度に対する変動量を算出する。そして、算出した嵩密度の変動量を図8の関係に適用して非微粘結炭配合比の調整量を決定し、非微粘結炭配合比を変更する(ST4)。
[STEP2N]
高温装入炭の温度が変更されない場合は、粘結補填剤の添加率が変更されたか否か判断する(ST2)。
[STEP3Y]
粘結補填剤の添加率が変更された場合は、(1)式により嵩密度の推定を行い(ST3)、変更前の嵩密度に対する変動量を算出する。そして、算出した嵩密度の変動量を図8の関係に適用して非微粘結炭配合比の調整量を決定し、非微粘結炭配合比を変更する(ST4)。
[STEP3N]
粘結補填剤の添加率が変更されない場合は、非微粘結炭配合比の変更を行わない。
嵩密度推定方法を用いず、装入炭重量と装入高さから装入炭の嵩密度を算出して嵩密度管理を行う従来の方法を実施し(従来例)、途中から本発明に係る嵩密度推定方法を用いて非微粘結炭配合比を調整した(実施例)ときに得られたコークスのコークス強度DIの時系列変動を図10に示す。従来例では、コークス強度DIが低下する方向へ大きくばらついていたが、実施例では、コークス強度DIの低下方向へのばらつきが小さくなっていることが同図よりわかる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
10:コークス炉、11:高温炭槽、12:加熱塔、13:高温塊成機、14:分級機、15:粉砕機、16:石炭配合槽

Claims (2)

  1. 粘結補填剤が添加され、100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の嵩密度を推定する方法であって、
    前記装入炭の温度と前記粘結補填剤の添加率を説明変数、前記装入炭の嵩密度を目的変数とする重回帰式を構築し、
    操業時における前記装入炭の温度と前記粘結補填剤の添加率の各測定結果を前記重回帰式に代入して前記装入炭の嵩密度を推定することを特徴とするコークス炉装入炭の嵩密度推定方法。
  2. 粘結補填剤が添加され、100℃以上の温度でコークス炉に装入される装入炭の配合を調整する方法であって、
    前記粘結補填剤の添加率及び/又は前記装入炭の温度が変更された際に、請求項1記載の重回帰式を用いて、変更後の前記装入炭の推定嵩密度を求め、変更前の前記装入炭の嵩密度に対する前記推定嵩密度の変動量を前記装入炭の嵩密度の変動量として、予め求めておいた、前記装入炭の嵩密度の変動量とそれに伴う非微粘結炭配合比(=前記装入炭に占める非微粘結炭の質量/前記装入炭の質量)の調整量との相関関係に適用し、非微粘結炭配合比の調整量を決定することを特徴とするコークス炉装入炭の配合調整方法。
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