(5.詳細な説明)
一態様において、本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルスの保存されたHAステムドメインに対する交差防御免疫応答を誘導するキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドである。本明細書に提供されるキメラインフルエンザHAポリペプチドは、安定なHAステムドメイン及び該ステムドメインと異種である球状HAヘッドドメインを含む(すなわち、該ヘッドドメイン及びステムドメインは、インフルエンザウイルスの異なる株及び/又は亜型に由来する)。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を含む組成物(例えば、本明細書に記載の可溶性キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含むウイルス、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするように改変されたゲノムを含むウイルス、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む発現ベクター、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするように改変されたゲノムを含む発現ベクター、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードする核酸などを含む組成物)である。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を含むワクチン製剤である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つを含む一価ワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの2つ(すなわち、2つの異なるキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む二価ワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの3つ(すなわち、3つの異なるキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む三価ワクチンである。本明細書に提供されるワクチン製剤は、例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を含むサブユニットワクチン(例えば、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、例えば、可溶性キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む組成物);本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を発現する生インフルエンザウイルス(例えば、弱毒化された生インフルエンザウイルス);本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数をコードするゲノムを含む生インフルエンザウイルス(例えば、弱毒化された生インフルエンザウイルス);本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を発現する死滅インフルエンザウイルス;本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数をコードするゲノムを含む死滅インフルエンザウイルス;本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を含有するウイルス/ウイルス様粒子(「VLP」);スプリットウイルスワクチン(ここで、該ウイルスは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つもしくは複数を発現し、及び/又は本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つもしくは複数をコードするゲノムを含む);本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を発現するウイルス発現ベクター(例えば、非インフルエンザウイルス発現ベクター);並びに本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又は複数を発現する細菌発現ベクターを含むことができる。
本明細書に記載のワクチン製剤は、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのHAステムドメインに対する極めて強力でかつ広域中和性の抗体を誘発することができる。そのような「普遍的な」ワクチンを用いて、インフルエンザウイルス亜型にわたる交差防御免疫応答を誘導及び/又は増強することができる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、対象をインフルエンザウイルス疾患又は感染に対して免疫する方法であって、該対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのうちの1つもしくは複数又は本明細書に記載のワクチン製剤を含む組成物を投与することを含む、方法である。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのうちの1つもしくは複数又は本明細書に記載のワクチン製剤を含むキットである。本明細書に提供されるキットは、1以上のさらなる構成要素、例えば、該キット中に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのうちの1つ又は複数に特異的に結合する抗体をさらに含むことができる。
(5.1 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)
本明細書に提供されるのは、インフルエンザウイルス血球凝集素球状ヘッドドメインポリペプチド及びインフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドを含むか又はこれらからなるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドであり、ここで、該インフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドは、該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である(例えば、該インフルエンザウイルス血球凝集素球状ヘッドドメインポリペプチド及び該インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、異なるインフルエンザウイルス血球凝集素亜型に由来する)。キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのステムドメイン及び球状ヘッドドメインは、A型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメイン及び球状ヘッドドメイン(例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、15、H16、H17、及びH18)並びに/又はB型インフルエンザウイルス血球凝集素ステムドメイン及び球状ヘッドドメインに基づくことができる。
全長インフルエンザ血球凝集素は、通常、HA1ドメイン及びHA2ドメインを含む。ステムドメインは、HA1ドメインの2つのセグメント及びHA2ドメインの大部分又は全てによって形成される。該HA1ドメインの2つのセグメントは、一次配列中で、球状ヘッドドメイン(例えば、図1でAp及びAqとして表記されている残基間のアミノ酸残基参照)によって隔てられている。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、そのような構造を維持している。すなわち、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、HA1ドメイン及びHA2ドメインから構成される安定なステム構造、並びに(一次配列中で)HA1ドメインの2つのセグメントを隔てる球状ヘッドドメインを含み、ここで、該球状ヘッドドメインは、HA1ドメイン及びHA2ドメインの他のセグメントによって形成されるステムドメインと異種である。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、(i)H1亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素のステムドメイン及び(ii)H5亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素の球状ヘッドドメインを含む(本明細書では「cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」と呼ばれることもある)。具体的な実施態様において、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1) HAのステムドメイン(又はA/カリフォルニア/4/2009様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)である。別の具体的な実施態様において、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1) HAのステムドメイン(又はA/カリフォルニア/4/2009様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)であり、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1) HAのステムドメイン(又はA/カリフォルニア/4/2009様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)であり、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1) HAのステムドメイン(又はA/カリフォルニア/4/2009様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)であり、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1) HAのステムドメイン(又はA/カリフォルニア/4/2009様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)であり、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1) HAのステムドメイン(又はA/カリフォルニア/4/2009様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)であり、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/カリフォルニア/4/2009(H1N1) HAのステムドメイン(又はA/カリフォルニア/4/2009様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)であり、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、(i)H3亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素のステムドメイン及び(ii)H5亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素の球状ヘッドドメインを含む(本明細書では「cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」と呼ばれることもある)。具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインを含まない。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、A/パース/16/2009(H3) HAのステムドメインを含まない。
別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、(i)H3亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素のステムドメイン及び(ii)H7亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素の球状ヘッドドメインを含む(本明細書では「cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」と呼ばれることもある)。具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ビクトリア/361/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/ゼニガタアザラシ/マサチューセッツ/1/2011(H3N8) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/インディアナ/10/2011(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/2009(H3N2) HAのステムドメインであり、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインを含まない。別の具体的な実施態様において、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、A/パース/16/2009(H3) HAのステムドメインを含まない。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、(i)B型インフルエンザウイルス由来の血球凝集素のステムドメイン及び(ii)H5亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素の球状ヘッドドメインを含む(本明細書では「cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」と呼ばれることもある)。具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006のステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ベトナム/1203/2004(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドネシア/5/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/安徽/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/インドガン/青海/1A/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/オオハクチョウ/モンゴル/244/2005(H5) HAの球状ヘッドドメインである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、(i)B型インフルエンザウイルス由来の血球凝集素のステムドメイン及び(ii)H7亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素の球状ヘッドドメインを含む(本明細書では「cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」と呼ばれることもある)。具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ネーデルラント/219/03(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/504/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/カナダ/444/04(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/ニワトリ/ハリスコ/CPA1/2012(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/レア/NC/39482/93(H7) HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/マガモ/ネーデルラント/12/2000(H7) HAの球状ヘッドドメインである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、(i)B型インフルエンザウイルス由来の血球凝集素のステムドメイン及び(ii)異なるB型インフルエンザウイルス株由来の血球凝集素の球状ヘッドドメインを含む(本明細書では「cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」と呼ばれることもある)。具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/リー/1940 HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/マレーシア/2506/2004 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/アザラシ/ネーデルラント/1/99 HA(又はB/アザラシ/ネーデルラント/1/99様インフルエンザウイルス)の球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/リー/1940 HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/フロリダ/4/2006 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/アザラシ/ネーデルラント/1/99 HA(又はB/アザラシ/ネーデルラント/1/99様インフルエンザウイルス)の球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/リー/1940 HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ウィスコンシン/1/2010 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/アザラシ/ネーデルラント/1/99 HA(又はB/アザラシ/ネーデルラント/1/99様インフルエンザウイルス)の球状ヘッドドメインである。
別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/リー/1940 HAの球状ヘッドドメインである。別の具体的な実施態様において、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、B/ブリスベン/60/2008 HAのステムドメインであり、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B/アザラシ/ネーデルラント/1/99 HA(又はB/アザラシ/ネーデルラント/1/99様インフルエンザウイルス)の球状ヘッドドメインである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、(i)H3亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素のステムドメイン及び(ii)H4亜型のインフルエンザウイルス由来の血球凝集素の球状ヘッドドメインを含む(本明細書では「cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド」と呼ばれることもある)。具体的な実施態様において、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/09 HAのステムドメイン(又はA/パース/16/09様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)である。別の具体的な実施態様において、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのステムドメインは、A/パース/16/09 HAのステムドメイン(又はA/パース/16/09様インフルエンザウイルスHAのステムドメイン)であり、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、A/アヒル/チェコ/56の球状ヘッドドメイン(又はA/アヒル/チェコ/56様インフルエンザウイルスHAの球状ヘッドドメイン)である。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは単量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは多量体である。ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは三量体である。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。通常、シグナルペプチドは、ポリペプチド発現及び翻訳の間又はその後に切断されて、成熟キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを生じる。ある実施態様において、同じく本明細書に提供されるのは、シグナルペプチドを欠く成熟キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドがシグナルペプチドを含む実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に公知の任意のインフルエンザウイルスシグナルペプチドに基づくことができる。ある実施態様において、シグナルペプチドは、A型インフルエンザシグナルペプチドに基づく。ある実施態様において、シグナルペプチドは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、及びH18からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素のシグナルペプチドに基づく(例えば、A型インフルエンザウイルス血球凝集素H18の例については、Tongらの文献、2013. PLoS Path. 9(10): e1003657. Doi:10.1371/journal.ppat.1003657を参照されたい)。ある実施態様において、シグナルペプチドは、当業者に有用であると考えられる任意のシグナルペプチドであることができる。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、内腔ドメインを含む。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが内腔ドメインを含む実施態様において、内腔ドメインは、当業者に公知の任意のインフルエンザ内腔ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、内腔ドメインは、A型インフルエンザ内腔ドメインに基づく。ある実施態様において、内腔ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、及びH18からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素の内腔ドメインに基づく。ある実施態様において、内腔ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の内腔ドメインであることができる。ある実施態様において、内腔ドメインは、ステムドメインと同じ血球凝集素由来のものである。ある実施態様において、内腔ドメインは、ステムドメインHA2サブユニットのようなインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、膜貫通ドメインを含む。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが膜貫通ドメインを含む実施態様において、膜貫通ドメインは、当業者に公知の任意のインフルエンザ膜貫通ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、A型インフルエンザ膜貫通ドメインに基づく。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、及びH18からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素の膜貫通ドメインに基づく。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の膜貫通ドメインであることができる。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、ステムドメインと同じ血球凝集素由来のものである。ある実施態様において、膜貫通ドメインは、ステムドメインHA2サブユニットのようなインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、細胞質ドメインを含む。本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが細胞質ドメインを含む実施態様において、細胞質ドメインは、当業者に公知の任意のインフルエンザ細胞質ドメインに基づくことができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、A型インフルエンザ細胞質ドメインに基づく。ある実施態様において、細胞質ドメインは、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、及びH18からなる群から選択されるA型インフルエンザ血球凝集素の細胞質ドメインに基づく。ある実施態様において、細胞質ドメインは、当業者に有用であると考えられる任意の細胞質ドメインであることができる。ある実施態様において、細胞質ドメインは、ステムドメインと同じ血球凝集素由来のものである。ある実施態様において、細胞質ドメインは、ステムドメインHA2サブユニットのようなインフルエンザウイルス株又は亜型由来のものである。
ある実施態様において、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、1以上のポリペプチドドメインをさらに含む。有用なポリペプチドドメインは、ポリペプチドの部分の精製、フォールディング、及び切断を容易にするドメインを含む。例えば、Hisタグ (His-His-His-His-His-His, 配列番号:17)、FLAGエピトープ、又は他の精製タグは、本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの精製を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、Hisタグは、配列(His)
nを有し、ここで、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれより大きい。バクテリオファージT4フィブリチン由来のフォルドンドメイン、又は三量体化ドメインは、本明細書に提供されるポリペプチドの三量体化を容易にすることができる。いくつかの実施態様において、三量体化ドメインは、三量体又は四量体コイルドコイルの形成を可能にする野生型GCN4pII三量体化ヘプタッド反復又は修飾されたGCN4pII三量体化ヘプタッド反復を含む。例えば、Weldonらの文献、2010, PLoSONE 5(9): e12466を参照されたい。フォルドンドメインは、当業者に公知の任意のフォルドン配列を有することができる(例えば、その内容が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Papanikolopoulouらの文献、2004, J. Biol. Chem. 279(10):8991-8998参照)。例としては、
が挙げられる。フォルドンドメインは、本明細書に提供される可溶性ポリペプチドの三量体化を容易にするのに有用であることができる。切断部位を用いて、ポリペプチドの一部の切断、例えば、精製タグもしくはフォルドンドメイン又は両方の切断を容易にすることができる。有用な切断部位としては、トロンビン切断部位、例えば、配列
を有するものが挙げられる。ある実施態様において、切断部位は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼによって認識される切断部位(例えば、アミノ酸配列Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-(Gly/Ser)(配列番号20))である。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのインフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドは、図1でAp及びAqとしてインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されているシステイン残基を維持している、すなわち、図1でAp及びAqとしてインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド中で特定されているシステイン残基は、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド中で維持されている。したがって、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの一次配列中:(i)インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントは、図1でApとして特定されているシステイン残基で終わり、(ii)インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのC末端セグメントは、図1でAqとして特定されているシステイン残基から始まり;及び(iii)インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間にある。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys52)で正確に終わるのではなく、配列上及び構造上Apに近い残基で終わる。例えば、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap-1、Ap-2、Ap-3、Ap-4、Ap-5、Ap-6、Ap-7、Ap-8、Ap-9、Ap-10で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap-1〜Ap-3、Ap-3〜Ap-5、Ap-5〜Ap-8、Ap-8〜Ap-10の範囲で終わる。例えば、Ap-10で終わるHA1のN末端ステムセグメントは、H3血球凝集素のLys42で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap+1、Ap+2、Ap+3、Ap+4、Ap+5、Ap+6、Ap+7、Ap+8、Ap+9、Ap+10で終わる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、Ap+1〜Ap+5、Ap+5〜Ap+10の範囲で終わる。HA1のN末端ステムセグメントの終点は、得られるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが、野生型インフルエンザ血球凝集素と類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端ステムセグメント及びインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドの終点との関連で選択されるべきである。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq(例えば、H3血球凝集素由来のHA1サブユニットのCys277)から正確に始まるのではなく、配列上及び構造上Aqに近い残基から始まる。例えば、ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq-1、Aq-2、Aq-3、Aq-4、Aq-5、Aq-6、Aq-7、Aq-8、Aq-9、Aq-10周辺から始まる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq-1〜Aq-5、Aq-5〜Aq-10の範囲から始まる。例えば、Aq-10で終わるHA1のC末端ステムセグメントは、H3血球凝集素のイソロイシン262から始まる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq+1、Aq+2、Aq+3、Aq+4、Aq+5、Aq+6、Aq+7、Aq+8、Aq+9、Aq+10から始まる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、Aq+1〜Aq+3、Aq+3〜Aq+5、Aq+5〜Aq+8、Aq+8〜Aq+10の範囲から始まる。HA1のN末端ステムセグメントの終点は、得られるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが、野生型インフルエンザ血球凝集素と類似した三次元構造を形成することができるように、HA1のC末端ステムセグメント及びインフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチドの始点との関連で選択されるべきである。そのような実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ヘッドドメインポリペプチド(これは、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドと異種である)は、一次配列中、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインポリペプチドのN末端セグメントとC末端セグメントの間に位置する。
一例において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメントは、血球凝集素アミノ酸位置45〜48(H3付番を使用)のうちのいずれか1つで終わることができ、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのHA1のC末端ステムセグメントは、血球凝集素アミノ酸位置282〜287(H3付番を使用)うちのいずれか1つから始まることができ;及び異種ヘッドドメインは、アミノ酸位置46〜49のうちのいずれか1つから始まり、かつアミノ酸位置284〜289(H3付番を使用)のうちのいずれか1つで終わることができる。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのステムドメインがB型インフルエンザウイルスに由来する場合、HA1のN末端ステムセグメントは、例えば、HAのアミノ酸35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50(一次アミノ酸配列中)で終わることができ、HA1のC末端ステムセグメントは、例えば、HAのアミノ酸280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、又は300(一次アミノ酸配列中)から始まることができる。したがって、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、B型インフルエンザウイルスステムドメインのHA1のN末端ステムセグメントとHA1のC末端ステムセグメントの間に挿入される。例えば、インフルエンザウイルスB/香港/8/73(PDB:2RFT: GenBank:M10298.1)のHAにおいて、HA1のN末端ステムセグメントは、「D」を位置1として、アミノ酸DRICT(配列番号22)から始まり、かつアミノ酸位置42(一次配列中)で終わり;及びHA1のC末端ステムセグメントは、アミノ酸位置288(一次配列中)から始まり、かつHAのC末端の最後まで続く。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、熱ショックタンパク質(例えば、Hsp10、Hsp20、Hsp30、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp90、もしくはHsp100)とともに、又はそれなしで、異種タンパク質、例えば、主要組織適合性複合体(MHC)にコンジュゲートさせることができる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、免疫調節分子、例えば、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを免疫細胞にターゲッティングするタンパク質、例えば、B細胞にターゲッティングするタンパク質(例えば、C3d)又はT細胞にターゲッティングするタンパク質にコンジュゲートさせることができる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、自然免疫系を刺激するタンパク質、例えば、インターフェロン1型、アルファ、ベータ、又はガンマインターフェロン、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、腫瘍壊死因子(TNF)-β、TNFα、B7.1、B7.2、4-1BB、CD40リガンド(CD40L)、及び薬物誘導性CD40(iCD40)にコンジュゲートさせることができる。
本明細書に提供されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは、本明細書に記載の技術を含む、当業者により知られる及び当業者に好適と考えられる任意の技術に従って調製することができることが当業者によって理解されるであろう。ある実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは単離される。
(5.2 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)をコードする核酸である。遺伝暗号の縮重のために、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする任意の核酸が本明細書に包含される。ある実施態様において、HA1のN末端ステムセグメント、HA1のC末端ステムセグメント、HA2ドメイン、内腔ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/もしくは細胞質ドメインをコードする天然のインフルエンザウイルス核酸に対応するか、又は該核酸とハイブリダイズすることができる核酸を用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを産生する。
また、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)をコードする核酸にハイブリダイズすることができる核酸である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸の断片にハイブリダイズすることができる核酸である。他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする全長核酸にハイブリダイズすることができる核酸である。核酸のハイブリダイゼーション条件の一般的なパラメータは、Sambrookらの文献、分子クローニング-実験マニュアル(Molecular Cloning - A Laboratory Manual)(第2版)、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York(1989)、及びAusubelらの文献、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第2巻、Current Protocols Publishing, New York(1994)に記載されている。ハイブリダイゼーションは、高いストリンジェンシー条件、中間のストリンジェンシー条件、又は低いストリンジェンシー条件の下で実施することができる。当業者は、低いストリンジェンシー条件、中間のストリンジェンシー条件、及び高いストリンジェンシー条件は、その全てが相互作用する複数の因子に左右され、また、当該核酸によっても決まることを理解するであろう。例えば、高いストリンジェンシー条件は、核酸(複数可)の融点の5℃以内の温度、低い塩濃度(例えば、250mM未満)、及び高い共溶媒濃度(例えば、1〜20%の共溶媒、例えば、DMSO)を含むことができる。他方、低いストリンジェンシー条件は、核酸(複数可)の融点より10℃を超えて低い温度、高い塩濃度(例えば、1000mM超)、及び共溶媒の欠如を含むことができる。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸は、単離される。ある実施態様において、「単離された」核酸は、核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離されている核酸分子を指す。つまり、単離された核酸は、天然ではそれと関連していない異種核酸を含むことができる。他の実施態様において、「単離された」核酸、例えば、cDNA分子は、組換え技術によって産生されたとき、他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まないものであるか、又は化学合成されたとき、化学物質前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであることができる。「細胞物質を実質的に含まない」という用語には、それが単離されるか又は組換え産生される細胞の細胞成分から核酸が分離されている核酸調製物が含まれる。したがって、細胞物質を実質的に含まない核酸には、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、又は5%未満の他の核酸を有する核酸調製物が含まれる。「培養培地を実質的に含まない」という用語には、培養培地が調製物の容量の約50%、20%、10%、又は5%未満である核酸調製物が含まれる。「化学物質前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない」という用語には、核酸の合成に関与する化学物質前駆体又は他の化学物質から核酸が分離されている調製物が含まれる。具体的な実施態様において、そのような核酸調製物は、(乾燥重量で)約50%、30%、20%、10%、5%未満の化学物質前駆体又は関心対象の核酸以外の化合物を有する。
さらに、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの個々の成分をコードする核酸であり、例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの球状ヘッドドメイン、HA1のN末端ステムセグメント、HA1のC末端ステムセグメント、及び/又はHA2ドメインが本明細書に提供される。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの成分をコードする核酸は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを生じるように、当業者に公知の標準的な分子生物学の技術を用いてアセンブルすることができる。
(5.3 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)をコードする核酸を含む、発現ベクターを含む、ベクターである。具体的な実施態様において、該ベクターは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸の発現を導くことができる発現ベクターである。発現ベクターの非限定的な例としては、プラスミド及びウイルスベクター、例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びバキュロウイルスが挙げられるが、これら限定されない。発現ベクターとしては、限定されないが、トランスジェニック動物及び非哺乳動物細胞/生物、例えば、哺乳動物のN結合型グリコシル化を行うように改変されている哺乳動物細胞/生物を挙げることもできる。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの成分をコードする発現ベクターである。そのようなベクターを用いて、1以上の宿主細胞で該成分を発現させることができ、該成分を、当業者に公知の技術を用いて、単離し、リンカーとコンジュゲートさせることができる。
発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に好適な形態の本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む。具体的な実施態様において、発現ベクターは、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される、発現される核酸に機能的に連結された1以上の調節配列を含む。発現ベクターにおいて、「機能的に連結された」とは、関心対象の核酸が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系での、又はベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞での)核酸の発現を可能にする形で調節配列(複数可)に連結されていることを意味するものとする。調節配列には、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞で核酸の構成的発現を導くもの、特定の宿主細胞でのみ核酸の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)、及び特定の薬剤による刺激によって核酸の発現を導くもの(例えば、誘導可能な調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現レベルのような因子によって決まり得ることが当業者には理解されるであろう。「宿主細胞」という用語は、核酸で形質転換又はトランスフェクトされる特定の対象細胞、及びそのような細胞の子孫又は可能性のある子孫を含むことが意図される。そのような細胞の子孫は、後続の世代で起こり得る突然変異もしくは環境の影響又は宿主細胞ゲノムへの核酸の組込みのために、核酸で形質転換又はトランスフェクトされる親細胞と同一でなくてもよい。
発現ベクターは、原核生物細胞(例えば、大腸菌(E. coli))又は真核生物細胞(例えば、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Treanorらの文献、2007, JAMA, 297(14):1577-1582参照)、酵母細胞、植物細胞、藻類、もしくは哺乳動物細胞)を用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現のために設計することができる。酵母宿主細胞の例としては、分裂酵母(S. pombe)、出芽酵母(S. cerevisiae)、及びピキア・パストリス(P. pastoris)、並びに下記の実施例が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物宿主細胞の例としては、Crucell Per.C6細胞、Vero細胞、CHO細胞、VERY細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、又はWI38細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、宿主細胞は、骨髄腫細胞、例えば、NS0細胞、45.6 TG1.7細胞、AF-2クローン9B5細胞、AF-2クローン9B5細胞、J558L細胞、MOPC 315細胞、MPC-11細胞、NCI-H929細胞、NP細胞、NS0/1細胞、P3 NS1 Ag4細胞、P3/NS1/1-Ag4-1細胞、P3U1細胞、P3X63Ag8細胞、P3X63Ag8.653細胞、P3X63Ag8U.1細胞、RPMI 8226細胞、Sp20-Ag14細胞、U266B1細胞、X63AG8.653細胞、Y3.Ag.1.2.3細胞、及びYO細胞である。昆虫細胞の非限定的な例としては、Sf9、Sf21、Ao/Tn 38、High Five、キンウワバ(Trichoplusia ni)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)、及びカイコガ(Bombyx mori)が挙げられる。特定の実施態様において、哺乳動物細胞培養系(例えば、チャイニーズハムスター卵巣又はベビーハムスター腎臓細胞)が、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に使用される。別の実施態様において、植物細胞培養系が、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に使用される。植物細胞培養系を利用するタンパク質の産生のための植物細胞及び方法については、例えば、米国特許第7,504,560号;第6,770,799号;第6,551,820号;第6,136,320号;第6,034,298号;第5,914,935号;第5,612,487号;及び第5,484,719号、並びに米国特許出願公開第2009/0208477号、第2009/0082548号、第2009/0053762号、第2008/0038232号、第2007/0275014号、及び第2006/0204487号を参照されたい。具体的な実施態様において、植物細胞培養系は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に使用されない。
ある実施態様において、植物(例えば、タバコ属の植物)を、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を発現するように改変することができる。具体的な実施態様において、植物を、当技術分野で公知の方法を用いるアグロインフィルトレーションによって、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変する。例えば、関心対象の遺伝子、例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする遺伝子をコードする核酸を、アグロバクテリウムの株に導入する。その後、この株を液体培地中で増殖させ、得られる細菌を洗浄し、バッファー溶液に懸濁させる。その後、アグロバクテリウムが関心対象の遺伝子を植物細胞の一部に形質転換するように、植物を、本明細書に記載のflキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含むアグロバクテリウムに(例えば、注射又は浸漬によって)暴露させる。その後、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを該植物によって一過性に発現させ、当技術分野で公知かつ本明細書に記載の方法を用いて単離することができる(具体的な例については、Shojiらの文献、2008, Vaccine, 26(23):2930-2934;及びD’Aoustらの文献、2008, J. Plant Biotechnology, 6(9):930-940を参照されたい)。具体的な実施態様において、植物は、タバコ植物(例えば、タバコ(Nicotiana tabacum))である。別の具体的な実施態様において、植物は、タバコ植物の近縁種(例えば、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana))である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを大豆種で発現させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをトウモロコシ種で発現させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコメ種で発現させる。
他の実施態様において、藻類(例えば、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii))を改変して、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させることができる(例えば、Rasalaらの文献、2010, Plant Biotechnology Journal(2010年3月7日にオンラインで発表)参照)。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させるために使用される植物は、N-グリコシル化系(例えば、細菌又は哺乳動物のN-グリコシル化系)の構成要素を発現するように改変されている、すなわち、該植物は、N-グリコシル化を行うことができる。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させるために使用することができる植物細胞、及び植物細胞培養系を利用するタンパク質の産生方法は、例えば、米国特許第5,929,304号;第7,504,560号;第6,770,799号;第6,551,820号;第6,136,320号;第6,034,298号;第5,914,935号;第5,612,487号;及び第5,484,719号、米国特許出願公開第2009/0208477号、第2009/0082548号、第2009/0053762号、第2008/0038232号、第2007/0275014号、及び第2006/0204487号、並びにShojiらの文献、2008, Vaccine, 26(23):2930-2934、及びD’Aoustらの文献、2008, J. Plant Biotechnology, 6(9):930-940に記載されている(これらは、引用により完全に本明細書中に組み込まれている)。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞は単離することができ、例えば、該細胞は、対象の体外にあるか、又はトランスフェクト/形質転換されていない宿主細胞から単離される(すなわち、分離される)。ある実施態様において、該細胞は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を発現するように改変される。
発現ベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術によって宿主細胞に導入することができる。そのような技術としては、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクション、及びエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための好適な方法は、Sambrookらの文献、1989、分子クローニング-実験マニュアル(Molecular Cloning - A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Press, New York、及び他の実験マニュアルに見出すことができる。ある実施態様において、宿主細胞は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターで一過性にトランスフェクトされる。他の実施態様において、宿主細胞は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターで安定にトランスフェクトされる。
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについて、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技術によっては、細胞のごく一部だけが外来性DNAをそのゲノムに組み込むことができることが知られている。これらの組込み体を同定及び選択するために、(例えば、抗生物質耐性用の)選択マーカーをコードする核酸が、通常、関心対象の核酸と一緒に宿主細胞に導入される。選択マーカーの例としては、薬剤、例えば、G418、ハイグロマイシン、及びメトトレキセートに対する耐性を付与するものが挙げられる。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬剤選択によって同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存するが、他の細胞は死滅する)。
宿主細胞を用いる本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの組換え発現の代替法として、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写及び翻訳することができる。具体的な実施態様において、共役転写/翻訳系、例えば、Promega TNT(登録商標)、又は転写及び翻訳に必要な成分を含む細胞溶解物もしくは細胞抽出物を用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを産生することができる。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドが産生されると、それは、タンパク質の単離又は精製のための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィーによるもの(例えば、イオン交換、親和性、特に、特定の抗原、もしくは該抗原と関連する「タグ」(例えば、HISタグ、strepタグ/strep IIタグ、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼタグ、mycタグ、HAタグ)に対する親和性によるもの、プロテインAによるもの、及びクロマトグラフィー(例えば、サイジングカラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、逆相クロマトグラフィー、疑似移動床クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、モノリスクロマトグラフィー、対流相互作用媒質クロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー))、遠心分離、示差溶解性、限外濾過、沈殿、又はタンパク質の単離もしくは精製のための任意の他の標準的な技術によって単離又は精製することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の単離/精製されたキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは可溶性であり、例えば、当業者に公知の任意の方法、例えば、本明細書に記載の方法を用いて可溶性にされる(例えば、第6.6.1.2節参照)。
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを産生する方法である。一実施態様において、本方法は、ポリペプチドが産生されるように、ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を好適な培地中で培養することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、ポリペプチドを培地又は宿主細胞から単離することをさらに含む。
(5.4 インフルエンザウイルスベクター)
一態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を含むインフルエンザウイルスである。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、インフルエンザウイルスのビリオンに組み込まれる。インフルエンザウイルスは、該ウイルスを免疫細胞などの特定の細胞型にターゲッティングする部分にコンジュゲートさせることができる。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスのビリオンは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに加えて、異種ポリペプチドをそれらに組み込んでいるか、又は異種ポリペプチドを発現する。異種ポリペプチドは、免疫増強活性を有するか又はインフルエンザウイルスを特定の細胞型にターゲッティングするポリペプチド、例えば、特定の細胞型の表面の抗原に結合する抗体又は特定の細胞型の表面の特異的受容体に結合するリガンドであってもよい。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むインフルエンザウイルスは、当業者に公知の技術、例えば、リバースジェネティクス及びヘルパーフリープラスミドレスキューを用いて、ビリオンの産生の間にキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをトランスに供給することによって産生することができる。或いは、血球凝集素機能がトランスに提供されているウイルスに感染しやすい細胞で本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含む親インフルエンザウイルスの複製は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む子孫インフルエンザウイルスを産生する。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスである。具体的な実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、子孫インフルエンザウイルスによって発現される本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変される。別の具体的な実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、発現されて、子孫インフルエンザウイルスのビリオンに組み込まれる本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変される。したがって、親インフルエンザウイルスの複製によって生じる子孫インフルエンザウイルスは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。親インフルエンザウイルスのビリオンは、同じ又は異なる型、亜型、又は株のインフルエンザウイルスに由来するステムドメイン又はヘッドドメインを含むキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをそれらに組み込んでいてもよい。或いは、親インフルエンザウイルスのビリオンは、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの活性(例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素の受容体結合及び/又は融合活性)のうちの1つ又は複数を機能的に代替することができる部分をそれらに組み込んでいてもよい。ある実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの活性のうちの1つ又は複数は、(i)インフルエンザウイルスと異種のポリペプチドの細胞外ドメインが(ii)インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの膜貫通ドメイン、又は膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインに融合したものを含む融合タンパク質によって提供される。具体的な実施態様において、親インフルエンザウイルスのビリオンは、(i)インフルエンザウイルス以外の感染性病原体の受容体結合性/融合原性ポリペプチドの細胞外ドメインが(ii)インフルエンザウイルス血球凝集素の膜貫通ドメイン、又は膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインに融合したものを含む融合タンパク質をそれらに組み込んでいてもよい。インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの1以上の活性を提供する融合タンパク質、及びそのような融合タンパク質を発現するように改変されたインフルエンザウイルスの産生方法の説明については、例えば、2007年6月7日に公開された国際特許出願公開WO 2007/064802号、及び米国特許出願公開第2012/0122185号を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれている。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの球状ヘッドドメインが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)に由来するものである、ノイラミニダーゼ(NA)、又はその断片を含む。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの球状ヘッドドメインが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)に由来するものである、ノイラミニダーゼ(NA)、又はその断片を含み、ここで、該球状ヘッドドメインは、該キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのHA1及び/又はHA2サブユニットのステムドメインと異種である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのうちの1つ又複数を発現するように改変されたインフルエンザウイルスは、キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのHAステムドメインが由来する源と同じ源(例えば、インフルエンザウイルス株又は亜型)に由来するものである、ノイラミニダーゼ(NA)、又はその断片を含む。
いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルスのビリオンは、異種ポリペプチドをそれらに組み込んでいる。ある実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、子孫インフルエンザウイルスによって発現される異種ポリペプチド及びキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変される。具体的な実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、異種ポリペプチド、又は両方は、子孫インフルエンザウイルスのビリオンに組み込まれる。
異種ポリペプチドは、インフルエンザウイルスを特定の細胞型にターゲッティングするポリペプチド、例えば、特定の細胞型の表面の抗原を認識する抗体、又は特定の細胞型の表面の特異的受容体に結合するリガンドであってもよい。いくつかの実施態様において、ターゲッティングポリペプチドは、ウイルスの標的細胞認識機能を代替する。具体的な実施態様において、異種ポリペプチドは、インフルエンザウイルスを、インフルエンザウイルスが天然で感染するのと同じ細胞型にターゲッティングする。他の具体的な実施態様において、異種ポリペプチドは、子孫インフルエンザウイルスを、免疫細胞、例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ、又は樹状細胞にターゲッティングする。いくつかの実施態様において、異種ポリペプチドは、抗原提示細胞、例えば、樹状細胞の細胞特異的マーカー(例えば、CD44など)を認識して、それに結合する。一実施態様において、異種ポリペプチドは、ウイルスを樹状細胞にターゲッティングするDC-SIGNである。別の実施態様において、異種ポリペプチドは、ウイルスを免疫細胞にターゲッティングする抗体(例えば、単鎖抗体)であり、この抗体は、それがインフルエンザウイルスビリオンに組み込まれるように、別のポリペプチド由来の膜貫通ドメインと融合されていてもよい。いくつかの実施態様において、抗体は、CD20抗体、CD34抗体、又はDEC-205に対する抗体である。ターゲッティング機能のあるポリペプチドを発現するようにウイルスを改変する技術は当技術分野で公知である。例えば、その各々の内容が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Yangらの文献、2006, PNAS103:11479-11484及び2008年1月24日に公開された米国特許出願公開第20080019998号及び2007年1月25日に公開された第20070020238号を参照されたい。
別の実施態様において、異種ポリペプチドは、ウイルス付着タンパク質である。その付着タンパク質(複数可)をこの態様で使用することができるウイルスの非限定的な例は、以下の群:ラッサ熱ウイルス、B型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、レトロウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、アルファウイルス、例えば、セムリキ森林ウイルス、ロスリバーウイルス、及びアウラウイルス(E1、E2、及びE3などの表面糖タンパク質を含む)、ボルナ病ウイルス、ハンターンウイルス、フォーミーウイルス、並びにSARS-CoVウイルスから選択されるウイルスである。
一実施態様において、フラビウイルス表面糖タンパク質、例えば、デングウイルス(DV)Eタンパク質を使用することができる。いくつかの実施態様において、アルファウイルスファミリー由来のシンドビスウイルス糖タンパク質が使用される(K. S. Wang, R. J. Kuhn, E. G. Strauss, S. Ou, J. H. Straussの文献、J. Virol. 66, 4992(1992))。ある実施態様において、異種ポリペプチドは、NDV HNもしくはFタンパク質;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp160(又はその産物、例えば、gp41もしくはgp120); B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);ヘルペスウイルスの糖タンパク質(例えば、gD、gE);或いはポリオウイルスのVP1に由来する。
別の実施態様において、異種ポリペプチドは、当技術分野で公知の任意の非ウイルスターゲッティング系に由来する。ある実施態様において、非ウイルス病原体、例えば、細胞内細菌又は原虫のタンパク質が使用される。いくつかの実施態様において、細菌ポリペプチドは、例えば、クラミジア(Chlamydia)、リケッチア(Rikettsia)、コクセリア(Coxelia)、リステリア(Listeria)、ブルセラ(Brucella)、又はレジオネラ(Legionella)によって提供される。いくつかの実施態様において、原虫のポリペプチドは、例えば、マラリア原虫(Plasmodia)種、リューシマニア属(Leishmania)種、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、又はクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)によって提供される。他の例示的なターゲッティング系は、完全に本明細書中に組み込まれる、Waehlerらの文献、2007、「遺伝子治療のための標的ウイルスベクターの改変(Engineering targeted viral vectors for gene therapy)」、Nature Reviews Genetics 8:573-587に記載されている。
ある実施態様において、インフルエンザウイルスによって発現される異種ポリペプチドは、免疫増強(免疫賦活)活性を有する。免疫増強ポリペプチドの非限定的な例としては、刺激分子、サイトカイン、ケモカイン、抗体、及び他の作用物質、例えば、Flt-3リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。免疫増強活性のあるポリペプチドの具体的な例としては:インターフェロン1型、アルファ、ベータ、もしくはガンマインターフェロン、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、腫瘍壊死因子(TNF)-β、TNFα、B7.1、B7.2、4-1BB、CD40リガンド(CD40L)及び薬物誘導性CD40(iCD40)が挙げられる(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Hanks, B. A.らの文献、2005. Nat Med 11:130-137参照)。
A型及びB型インフルエンザウイルスのゲノムは8本(8)の一本鎖のマイナスセンスセグメントからなる(C型インフルエンザウイルスは7本(7)の一本鎖のマイナスセンスセグメントからなる)ので、親インフルエンザウイルスのゲノムは、組換えセグメント、並びに当業者に公知の技術、例えば、リバースジェネティクス及びヘルパーフリープラスミドレスキューを用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(及び任意の他のポリペプチド、例えば、異種ポリペプチド)を発現するように改変することができる。一実施態様において、組換えセグメントは、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、並びにvRNAの適切な複製、転写、及びパッケージングに必要とされる3'及び5'組込みシグナルをコードする核酸を含む(Fujiiらの文献、2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:2002-2007; Zhengらの文献、1996, Virology 217:242-251、これらは両方とも、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。具体的な実施態様において、組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスと異なる又は同じ型、亜型、又は株に由来するインフルエンザウイルスのセグメントの3'及び5'非コード及び/又は非翻訳配列を使用する。いくつかの実施態様において、組換えセグメントは、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの3'非コード領域、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの非翻訳領域、及びインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの5'非コード領域を含む。具体的な実施態様において、組換えセグメントは、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのHA1のN末端ステムセグメント、HA1のC末端ステムセグメント、球状ヘッドドメイン、及び/又はHA2として、インフルエンザウイルスの型、亜型、又は株と同じ型、亜型、又は株であるインフルエンザウイルスのHAセグメントの3'及び5'非コード並びに/又は非翻訳配列を含む。ある実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスのHAセグメントを代替することができる。いくつかの実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスのNS1遺伝子を代替することができる。いくつかの実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする組換えセグメントは、親インフルエンザウイルスのNA遺伝子を代替することができる。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現させるために使用することができる例示的なインフルエンザウイルス株としては、アンアーバー/1/50、A/アンアーバー/6/60、A/プエルトリコ/8/34、A/サウスダコタ/6/2007、A/ウルグアイ/716/2007、A/カリフォルニア/07/2009、A/パース/16/2009、A/ブリスベン/59/2007、A/ブリスベン/10/2007、A/レニングラード/134/47/57、B/ブリスベン/60/2008、B/山形/1/88、A/パナマ/2007/99、A/ワイオミング/3/03、及びA/WSN/33が挙げられる。
いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素遺伝子セグメントは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする。具体的な実施態様において、インフルエンザ血球凝集素遺伝子セグメント及び少なくとも1つの他のインフルエンザウイルス遺伝子セグメントは、該インフルエンザ血球凝集素遺伝子セグメント及び該少なくとも1つの他の遺伝子セグメントを組換えインフルエンザウイルスの複製時に一緒に分離することを可能にするパッケージングシグナルを含む(Gao及びPaleseの文献、2009, PNAS 106:15891-15896;国際出願公開WO11/014645号;及び米国特許出願公開第2012/0244183号参照)。
いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルスのゲノムは、二シストロン性である組換えセグメントを用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変することができる。二シストロン性技術は、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列の使用により、複数のタンパク質のコード配列の単一mRNAへの改変を可能にする。IRES配列は、RNA分子へのリボソームの内部動員を導き、キャップ非依存的に下流の翻訳を可能にする。簡潔に述べると、あるタンパク質のコード領域が、第二のタンパク質のオープンリーディングフレーム(ORF)に挿入される。挿入は、IRES並びに適切な発現及び/又は機能に必要な任意の非翻訳シグナル配列に連なる。挿入は、第二のタンパク質のORF、ポリアデニル化、又は転写プロモーターを妨害してはならない(例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Garcia-Sastreらの文献、1994, J. Virol. 68:6254-6261及びGarcia-Sastreらの文献、1994 Dev. Biol. Stand. 82:237-246参照)。例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,887,699号、米国特許第6,001,634号、米国特許第5,854,037号、及び米国特許第5,820,871号も参照されたい。当技術分野で公知又は本明細書に記載の任意のIRESを本発明に従って使用することができる(例えば、BiP遺伝子のIRES、GenBankデータベースエントリーHUMGRP78のヌクレオチド372〜592;又は脳心筋炎ウイルス(EMCV)のIRES、GenBankデータベースエントリーCQ867238のヌクレオチド1430-2115)。したがって、ある実施態様において、親インフルエンザウイルスは、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドと、別のポリペプチド、例えば、親インフルエンザウイルスによって発現される遺伝子とを発現する二シストロン性RNAセグメントを含むように改変される。いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルス遺伝子は、HA遺伝子である。いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルス遺伝子は、NA遺伝子である。いくつかの実施態様において、親インフルエンザウイルス遺伝子は、NS1遺伝子である。
当業者に公知の技術を用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むインフルエンザウイルス及び本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスを産生することができる。例えば、リバースジェネティクス技術を用いて、そのようなインフルエンザウイルスを産生することができる。簡潔に述べると、リバースジェネティクス技術は、一般に、ウイルスポリメラーゼによる認識及び成熟ビリオンの生成に必要なパッケージングシグナルに必須である、マイナス鎖ウイルスRNAの非コード領域を含む合成組換えウイルスRNAの調製を含む。組換えRNAは、組換えDNA鋳型から合成され、精製されたウイルスポリメラーゼ複合体によってインビトロで再構成されて、細胞をトランスフェクトするために使用することができる組換えリボ核タンパク質(RNP)を形成する。インビトロ又はインビボのどちらかでの合成RNAの転写の間にウイルスポリメラーゼタンパク質が存在する場合、より効率的なトランスフェクションが達成される。合成組換えRNPは、感染性ウイルス粒子中にレスキューすることができる。前述の技術は、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、1992年11月24日に出願された米国特許第5,166,057号; 1998年12月29日に出願された米国特許第5,854,037号; 1996年2月20日に公開された欧州特許公開EP 0702085A1号;米国特許出願第09/152,845号; 1997年4月3日に公開された国際特許公開PCT WO 97/12032号; 1996年11月7日に公開されたWO 96/34625号;欧州特許公開EP A780475号; 1999年1月21日に公開されたWO 99/02657号; 1998年11月26日に公開されたWO 98/53078号; 1998年1月22日に公開されたWO 98/02530号; 1999年4月1日に公開されたWO 99/15672号; 1998年4月2日に公開されたWO 98/13501号; 1997年2月20日に公開されたWO 97/06270号;及び1997年6月25日に公開されたEPO 780 475A1号に記載されている。
或いは、ヘルパーフリープラスミド技術を用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むインフルエンザウイルス、及び本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスを産生することができる。簡潔に述べると、ウイルスセグメントの全長cDNAを、プラスミドベクターへのPCR産物の挿入を可能にする独特の制限部位を含むプライマーによるPCRを用いて増幅させる(Flandorferらの文献、2003, J. Virol. 77:9116-9123; Nakayaらの文献、2001, J. Virol. 75:11868-11873;これらは両方とも、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。プラスミドベクターは、正確なマイナスの(vRNAセンス)転写物が発現されるように設計される。例えば、正確なマイナスの(vRNAセンス)転写物がポリメラーゼIプロモーターから産生されるように、プラスミドベクターは、切断されたヒトRNAポリメラーゼIプロモーターとデルタ型肝炎ウイルスリボザイム配列の間にPCR産物を配置するように設計することができる。各々のウイルスセグメントを含む別個のプラスミドベクター並びに必要なウイルスタンパク質を含む発現ベクターを細胞にトランスフェクトして、組換えウイルス粒子の産生をもたらすことができる。別の例では、必要なウイルスタンパク質をコードするウイルスのゲノムRNAとmRNAの両方が発現されるプラスミドベクターを使用することができる。ヘルパーフリープラスミド技術の詳細な説明については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 01/04333号;米国特許第6,951,754号、第7,384,774号、第6,649,372号、及び第7,312,064号; Fodorらの文献、1999, J. Virol. 73:9679-9682; Quinlivanらの文献、2005, J. Virol. 79:8431-8439; Hoffmannらの文献、2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6108-6113; Neumannらの文献、1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:9345-9350; Enami及びEnamiの文献、2000, J. Virol. 74(12):5556-5561;並びにPleschkaらの文献、1996, J. Virol. 70(6):4188-4192)を参照されたい。
本明細書に記載のインフルエンザウイルスは、本明細書に記載の方法によるその使用を可能にする力価までウイルスを増殖させる任意の基体中で増殖させることができる。一実施態様において、該基体は、対応する野生株ウイルスについて測定される力価と同等の力価までウイルスを増殖させる。ある実施態様において、該基体は、インフルエンザウイルスにとって、又はHA機能が由来するウイルスにとって生物学的に関連するものである。具体的な実施態様において、例えば、NS1遺伝子中の突然変異による弱毒化インフルエンザウイルスは、IFN欠損基体中で増殖させることができる。例えば、好適なIFN欠損基体は、インターフェロンを産生するかもしくはインターフェロンに応答するその能力に欠陥がある基体であってもよく、又はIFN欠損基体をインターフェロン欠損増殖環境を必要とし得る任意の数のウイルスの増殖のために使用することができる基体である。例えば、その各々の内容全体が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、2003年6月3日に出願された米国特許第6,573,079号、2005年2月8日に出願された同第6,852,522号、及び2009年2月24日に出願された同第7,494,808号を参照されたい。具体的な実施態様において、ウイルスを発育卵(例えば、鶏卵)中で増殖させる。具体的な実施態様において、ウイルスを8日齢、9日齢、8〜10日齢、10日齢、11日齢、10〜12日齢、又は12日齢の発育卵(例えば、鶏卵)中で増殖させる。ある実施態様において、ウイルスをMDCK細胞、Vero細胞、293T細胞、又は当技術分野で公知の他の細胞株で増殖させる。ある実施態様において、ウイルスを発育卵に由来する細胞で増殖させる。
本明細書に記載のインフルエンザウイルスは、当業者に公知の任意の方法によって単離及び精製することができる。一実施態様において、ウイルスは、一般に、周知の清澄化手順、例えば、勾配遠心分離及びカラムクロマトグラフィーによって細胞培養物から取り出され、細胞成分から分離され、望ましい場合、当業者に周知の手順、例えば、プラークアッセイを用いて、さらに精製することができる。
ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、A型インフルエンザウイルスから得られるか、又はそれに由来する。ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、2以上のA型インフルエンザウイルス亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、B型インフルエンザウイルスから得られるか、又はそれに由来する。ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、2以上のB型インフルエンザウイルス亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。他の実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、A型インフルエンザウイルス亜型もしくは株とB型インフルエンザウイルス亜型もしくは株の組合せから得られるか、又はそれらに由来する。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、C型インフルエンザウイルスから得られるか、又はそれに由来する。ある実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、2以上のC型インフルエンザウイルス亜型もしくは株から得られるか、又はそれらに由来する。他の実施態様において、本明細書に記載されているように使用されるインフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスポリペプチド、遺伝子、もしくはゲノムセグメントは、C型インフルエンザウイルス亜型もしくは株とA型インフルエンザウイルス及び/もしくはB型インフルエンザウイルス亜型もしくは株の組合せから得られるか、又はそれらに由来する。
ある実施態様において、本明細書に提供されるインフルエンザウイルスは、弱毒化表現型を有する。具体的な実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスに基づく。他の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、B型インフルエンザウイルスに基づく。さらに他の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、C型インフルエンザウイルスに基づく。他の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、及び/又はC型インフルエンザウイルスの1以上の株又は亜型由来の遺伝子又はゲノムセグメントを含むことができる。いくつかの実施態様において、弱毒化骨格ウイルスは、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス由来の遺伝子を含む。
具体的な実施態様において、ウイルスが少なくとも部分的に感染性を保持し、インビボで複製することができるが、非病原性である不顕性レベルの感染をもたらす低い力価を生じさせることしかできないような、インフルエンザウイルスの弱毒化が望ましい。そのような弱毒化ウイルスは、ウイルス又はその免疫原性組成物が免疫応答を誘導するために対象に投与される本明細書に記載の実施態様に特に好適である。インフルエンザウイルスの弱毒化は、例えば、化学的突然変異誘発によって作製されるウイルス突然変異体の選択、遺伝子操作によるゲノムの突然変異、弱毒化された機能を有するセグメントを含む再集合体ウイルスの選択、又は条件的ウイルス突然変異体(例えば、低温適応ウイルス)の選択などの、当技術分野で公知の任意の方法によって達成することができる。或いは、天然に存在する弱毒化インフルエンザウイルスを、インフルエンザウイルスベクターのためのインフルエンザウイルス骨格として使用することができる。
一実施態様において、インフルエンザウイルスは、親インフルエンザウイルスのHA遺伝子を本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドと置換することによって、少なくとも部分的に弱毒化することができる。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスは、細胞のインターフェロン(IFN)応答に拮抗するウイルスの能力を損なわせる突然変異したNS1遺伝子を発現するようにインフルエンザウイルスを改変することによって、少なくとも部分的に弱毒化することができる。インフルエンザウイルスNS1遺伝子に導入することができる突然変異の種類の例としては、欠失、置換、挿入、及びそれらの組合せが挙げられる。NS1遺伝子全体のどこにでも(例えば、N末端、C末端、もしくはその間のどこか)、及び/又はNS1遺伝子の調節エレメントに、1以上の突然変異を導入することができる。一実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、NS1のC末端から5個、好ましくは10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、75、80、85、90、95、99、100、105、110、115、120、125、126、130、135、140、145、150、155、160、165、170、もしくは175個のアミノ酸残基からなる欠失、又はC末端から5〜170、25〜170、50〜170、100〜170、100〜160、もしくは105〜160個のアミノ酸残基の欠失をもたらすインフルエンザウイルスNS1遺伝子の突然変異を有するゲノムを含む。別の実施態様において、弱毒化インフルエンザウイルスは、それがアミノ酸残基1〜130、アミノ酸残基1〜126、アミノ酸残基1〜120、アミノ酸残基1〜115、アミノ酸残基1〜110、アミノ酸残基1〜100、アミノ酸残基1〜99、アミノ酸残基1〜95、アミノ酸残基1〜85、アミノ酸残基1〜83、アミノ酸残基1〜80、アミノ酸残基1〜75、アミノ酸残基1〜73、アミノ酸残基1〜70、アミノ酸残基1〜65、又はアミノ酸残基1〜60のNS1タンパク質をコードするように、インフルエンザウイルスNS1遺伝子の突然変異を有するゲノムを含み、ここで、N末端アミノ酸は、1番である。NS1突然変異及び突然変異したNS1を含むインフルエンザウイルスの例については、例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,468,544号及び第6,669,943号;並びにLiらの文献、1999, J. Infect. Dis. 179:1132-1138を参照されたい。
別の実施態様において、インフルエンザウイルスは、該ウイルスのNA又はM遺伝子を文献に記載されているように突然変異させることによって、少なくとも部分的に弱毒化することができる。
(5.5 非インフルエンザウイルスベクター)
一態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を含む非インフルエンザウイルスである。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、非インフルエンザウイルスのビリオンに組み込まれる。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、精製された(例えば、プラーク精製された)又は単離されたウイルスに含まれる/該ウイルスによって発現される。非インフルエンザウイルスは、該ウイルスを、特定の細胞型、例えば、免疫細胞にターゲッティングする部分に結合させることができる。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスのビリオンは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに加えて、異種ポリペプチドをそれらに組み込んでいるか、又は異種ポリペプチドを発現する。異種ポリペプチドは、免疫増強活性を有するか又は非インフルエンザウイルスを特定の細胞型にターゲッティングするポリペプチド、例えば、特定の細胞型の表面の抗原に結合する抗体もしくは特定の細胞型の表面の特異的受容体に結合するリガンドであってもよい。そのような異種ポリペプチドの例については、上の第5.4節を参照されたい。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含有/発現する非インフルエンザウイルスは、当業者に公知の技術を用いて産生することができる。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む非インフルエンザウイルスは、当技術分野で公知の技術を用いて、ビリオンの産生の間にキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをトランスに供給することによって産生することができる。或いは、血球凝集素機能がトランスに提供されているウイルスに感染しやすい細胞で本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含む非インフルエンザ親ウイルスの複製は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む子孫ウイルスを産生する。
限定されないが、天然に存在する株、変異体、もしくは突然変異体、突然変異を誘発させたウイルス、再集合体、及び/又は遺伝子改変ウイルスを含む、任意のウイルス型、亜型、又は株を、非インフルエンザウイルスベクターとして使用することができる。具体的な実施態様において、非インフルエンザ親ウイルスは、天然に存在するウイルスではない。別の具体的な実施態様において、非インフルエンザ親ウイルスは、遺伝子改変ウイルスである。ある実施態様において、エンベロープ型ウイルスが、本明細書に記載の膜結合型キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に好ましい。
例示的な実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、ニューカッスル病ウイルス(NDV)である。別の実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、ワクシニアウイルスである。別の実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、バキュロウイルス(例えば、BacMam[Invitrogen]など)である。他の例示的で、非限定的な実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、B型肝炎ウイルス、レトロウイルス(例えば、ガンマレトロウイルス、例えば、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)ゲノムもしくはマウス白血病ウイルス(MLV)、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、腫瘍レトロウイルス、もしくはレンチウイルスなど)、アルファウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス)、ラブドウイルス(例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)もしくはパピローマウイルス)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、MVA-T7ベクター、もしくは鶏痘など)、メタニューモウイルス、麻疹ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、又はフォーミーウイルスである。例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Lawrie及びTuminの文献、1993, Cur. Opin. Genet. Develop. 3, 102-109(レトロウイルスベクター); Bettらの文献、1993, J. Virol. 67, 5911(アデノウイルスベクター); Zhouらの文献、1994, J. Exp. Med. 179, 1867(アデノ随伴ウイルスベクター); Dubenskyらの文献、1996, J. Virol. 70, 508-519(ワクシニアウイルス及び鶏痘ウイルスを含むポックスファミリー由来のウイルスベクター並びにアルファウイルス属由来のウイルスベクター、例えば、シンドビスウイルス及びセムリキ森林ウイルスに由来するもの);米国特許第5,643,576号(ベネズエラウマ脳炎ウイルス); WO 96/34625号(VSV); Oheらの文献、1995, Human Gene Therapy 6, 325-333; Wooらの文献(WO 94/12629号); Xiao及びBrandsmaの文献、1996, Nucleic Acids. Res. 24、2630-2622(パピローマウイルス);並びにBukreyev及びCollinsの文献、2008, Curr Opin Mol Ther. 10:46-55(NDV)を参照されたい。
具体的な実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、NDVである。任意のNDV型、亜型、又は株は、限定されないが、天然に存在する株、変異体、もしくは突然変異体、突然変異を誘発させたウイルス、再集合体、及び/又は遺伝子改変ウイルスを含む、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変される骨格の役割を果たすことができる。具体的な実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、天然に存在する株である。ある実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、溶解性株である。他の実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、非溶解性株である。ある実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、長潜伏期性株である。いくつかの実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、亜病原性株である。他の実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、短潜伏期性株である。NDV株の具体的な例としては、73-T株、アルスター株、MTH-68株、イタリアン(Italien)株、ヒックマン(Hickman)株、PV701株、ヒッチナー(Hitchner)B1株、ラソタ(La Sota)株、YG97株、MET95株、及びF48E9株が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、ヒッチナーB1株である。別の具体的な実施態様において、遺伝子操作のための骨格の役割を果たすNDVは、ラソタ株である。
一実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターのための骨格として使用されるNDVは、修飾Fタンパク質を発現するように改変されており、この修飾Fタンパク質中では、該Fタンパク質の切断部位が1つ又は2つの追加のアルギニン残基を含む部位に置き換えられ、この突然変異切断部位がフリンファミリーの遍在性に発現されるプロテアーゼによって活性化されるようになる。そのような修飾Fタンパク質を発現するNDVの具体的な例としては、rNDV/F2aa及びrNDV/F3aaが挙げられるが、これらに限定されない。突然変異した切断部位を有する修飾Fタンパク質を産生するためにNDVのFタンパク質に導入される突然変異の説明については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Parkらの文献、2006、「二重特異性を有する改変されたウイルスワクチン構築物:鳥インフルエンザ及びニューカッスル病(Engineered viral vaccine constructs with dual specificity: Avian influenza and Newcastle disease.)」、PNAS USA 103:8203-2808を参照されたい。
一実施態様において、非インフルエンザウイルスベクターは、ポックスウイルスである。ポックスウイルスベクターは、ワクチンベクターに好適な配列を提供するポックスウイルス科の任意のメンバー、特に、ワクシニアウイルス又はアビポックスウイルス(例えば、カナリア痘ウイルス、鶏痘など)に基づくことができる。具体的な実施態様において、ポックスウイルスベクターは、ワクシニアウイルスベクターである。好適なワクシニアウイルスとしては、コペンハーゲン(VC-2)株(Goebelらの文献、Virol 179:247-266, 1990; Johnsonらの文献、Virol. 196:381-401, 1993)、改変コペンハーゲン株(NYVAC)(米国特許第6,265,189号)、WYETH株、及び改変アンカラ(MVA)株(Antoineらの文献、Virol. 244:365-396、1998)が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なポックスウイルスとしては、望ましい特性を提供し、高度に弱毒化されているALVAC及びTROVACベクターなどの鶏痘株が挙げられる(例えば、米国特許第6,265,189号; Tartagliaらの文献、AIDS研究レビュー(AIDS Research Reviews)、Koffら編、第3巻、Marcel Dekker, N. Y., 1993;及びTartagliaらの文献、1990, Reviews in Immunology 10:13-30、1990参照)。
インフルエンザポリペプチドを発現させるために非インフルエンザウイルスを改変する方法は、そのようなウイルスを弱毒化させ、増殖させ、かつ単離及び精製する方法と同様に当技術分野で周知である。NDVベクターに関するそのような技術については、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 01/04333号;米国特許第7,442,379号、第6,146,642号、第6,649,372号、第6,544,785号、及び第7,384,774号; Swayneらの文献(2003)、Avian Dis. 47:1047-1050;及びSwayne文献(2001)、J. Virol. 11868-11873を参照されたい。ポックスウイルスに関するそのような技術については、例えば、Picciniらの文献、Methods of Enzymology 153:545-563, 1987;国際公開WO 96/11279号;米国特許第4,769,330号;米国特許第4,722,848号;米国特許第4,769,330号;米国特許第4,603,112号;米国特許第5,110,587号;米国特許第5,174,993号; EP 83 286号; EP 206 920号; Mayrらの文献、Infection 3:6-14, 1975;並びにSutter及びMossの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10847-10851, 1992を参照されたい。ある実施態様において、非インフルエンザウイルスは、弱毒化されている。
特に、対象への投与のための組成物中で使用するための、非インフルエンザウイルスベクターの選択のための例示的な検討事項は、安全性、低毒性、安定性、細胞型特異性、及び免疫原性、特に、非インフルエンザウイルスベクターによって発現される本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの抗原性である。
(5.6 ウイルス様粒子及びウイロソーム)
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)は、ウイルス様粒子(VLP)ベクター、例えば、精製された/単離されたVLPに組み込むことができる。VLPは、通常、ウイルスの構造タンパク質(複数可)に一般的に由来するウイルスポリペプチド(複数可)を含む。いくつかの実施態様において、VLPは複製することができない。ある実施態様において、VLPはウイルスの完全なゲノムを欠いていてもよく、又はウイルスのゲノムの一部を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、VLPは細胞に感染することができない。いくつかの実施態様において、VLPは、当業者に公知又は本明細書に記載のウイルス性標的部分(例えば、ウイルス表面糖タンパク質)又は非ウイルス性標的部分(例えば、抗体もしくはタンパク質)のうちの1つ又は複数をその表面に発現する。いくつかの実施態様において、VLPは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド及びウイルス構造タンパク質、例えば、HIV gagを含む。具体的な実施態様において、VLPは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド及びHIV gagポリペプチドを含む。
組換えで産生されるVLPを産生して特徴付けるための方法は、インフルエンザウイルス(Brightらの文献(2007)、Vaccine. 25:3871)、ヒトパピローマウイルス1型(Hagneseeらの文献(1991)、J. Virol. 67:315)、ヒトパピローマウイルス16型(Kirnbauerらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci.(1992) 89:12180)、HIV-1(Hafferらの文献(1990)、J. Virol. 64:2653)、及びA型肝炎(Winokurの文献(1991) 65:5029)を含む、いくつかのウイルスに基づいて記載されており、これらの文献の各々は、完全に本明細書中に組み込まれている。NDVタンパク質を含むVLPを発現させる方法は、その各々が完全に本明細書中に組み込まれる、Pantuaらの文献(2006)、J. Virol. 80:11062-11073、及び2009年3月12日に公開された米国特許出願公開第20090068221号に提供されている。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPは、バキュロウイルスを用いて生成される。他の実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPは、293T細胞を用いて生成される。
具体的な実施態様において、VLP、例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPは、細胞(例えば、293T細胞)で発現される。ある実施態様において、VLPは、シアル酸を含む表面糖タンパク質を発現する細胞で発現される。そのような実施態様に従って、細胞は、ノイラミニダーゼ(例えば、ウイルス又は細菌のノイラミニダーゼ)の存在下で培養される。ある実施態様において、VLP、例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むVLPは、シアル酸を含む表面糖タンパク質を発現しない細胞で発現される。
具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、ウイロソームに組み込むことができる。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むウイロソームは、当業者に公知の技術を用いて産生することができる。例えば、ウイロソームは、精製されたウイルスを破壊し、ゲノムを抽出し、ウイルスタンパク質(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)及び脂質で粒子を再構成させて、ウイルスタンパク質を含む脂質粒子を形成させることによって産生することができる。
(5.7 細菌ベクター)
具体的な実施態様において、細菌は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を発現するように改変することができる。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現用の好適な細菌としては、リステリア、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)種、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、大腸菌、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、乳酸菌(Lactobacillus)、カンピロバクター(Campylobacter)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ビフィズス菌(Bifidobacterium)、及び野兎病菌(Francisella tularensis)が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変された細菌は、弱毒化されている。異種ポリペプチドを発現するように改変された細菌の産生技術は当技術分野で公知であり、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現に適用することができる。例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、2008年10月9日に公開された米国特許出願公開第20080248066号及び2007年9月6日に公開された米国特許出願公開第20070207171号を参照されたい。ある実施態様において、本明細書で使用される細菌ベクターは、N結合型グリコシル化を行う能力を保有し、例えば、そのような細菌は、N-グリコシル化機構を天然に保有するか(例えば、カンピロバクター)、又はN-グリコシル化機構を保有するように遺伝子改変されている。
(5.8 キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の作製)
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又は本明細書に記載のそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて、インフルエンザに対する、例えば、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドのストーク領域に対する中和抗体を誘発することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを非ヒト対象(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)に投与して、抗体の産生を含む免疫応答を誘導することができ、この抗体は、当業者に公知の技術(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、遠心分離、沈殿など)を用いて単離することができる。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対するヒト抗体は、ヒト抗体を産生することができる非ヒト対象(例えば、トランスジェニックマウス)を用いて作製することができる。例えば、ヒト抗体は、機能的な内在性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて産生することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、ランダムに、又は相同組換えによってマウス胚性幹細胞に導入することができる。或いは、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域を、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞に導入することができる。マウス重鎖及び軽鎖遺伝子免疫グロブリン遺伝子を、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入によって、個別に又は同時に、非機能的にすることができる。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内在性抗体の産生を妨げる。修飾された胚性幹細胞を増殖させ、胚盤胞に顕微注入して、キメラマウスを生じさせる。その後、キメラマウスを交配させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を産生する。このトランスジェニックマウスが有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞分化の間に再編成し、その後、クラススイッチング及び体細胞突然変異を経る。したがって、そのような技術を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、及びIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するこの技術の概説については、Lonberg及びHuszarの文献、Int. Rev. Immunol. 13:65-93(1995)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するこの技術並びにそのような抗体を産生するプロトコルの詳細な議論については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、PCT公開WO 98/24893号; WO 92/01047号; WO 96/34096号; WO 96/33735号;欧州特許第0 598 877号;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;第5,885,793号;第5,916,771号;及び第5,939,598号を参照されたい。Abgenix社(Freemont, Calif.)、Genpharm(San Jose, Calif.)、及びMedarex社(Princeton, N.J.)などの会社に、選択された抗原に対するヒト抗体を提供することを請け負わせることができる。さらに、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合するヒト抗体が生成されるように、非ヒト対象に、ヒト末梢血白血球、脾細胞、又は骨髄を移植することができる(例えば、Trioma Techniques XTL)。
或いは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを用いて、抗体ライブラリーから抗体をスクリーニングすることができる。例えば、単離されたキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを固体支持体(例えば、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、ポリスチレンビーズ、アルミナゲル、又は多糖、磁気ビーズ)に固定し、抗体への結合についてスクリーニングすることができる。代替法として、抗体を固体支持体に固定し、単離されたキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドへの結合についてスクリーニングすることができる。任意のスクリーニングアッセイ、例えば、パニングアッセイ、ELISA、表面プラズモン共鳴、又は当技術分野で公知の他の抗体スクリーニングアッセイを用いて、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに結合する抗体についてスクリーニングすることができる。スクリーニングされる抗体ライブラリーは、市販の抗体ライブラリー、インビトロで作製されたライブラリー、又はインフルエンザに感染した個体から抗体を同定及びクローニング又は単離することによって得られたライブラリーであることができる。特定の実施態様において、抗体ライブラリーは、インフルエンザウイルス大発生の生存者から作製される。抗体ライブラリーは、当技術分野で公知の方法に従って作製することができる。特定の実施態様において、抗体ライブラリーは、抗体をクローニングし、それをファージディスプレイライブラリー又はファージミドディスプレイライブラリーで用いることによって作製される。
本明細書に記載の方法で同定される抗体は、当技術分野で公知又は本明細書に記載の生物学的アッセイを用いて、中和活性及び自己反応性の欠如について試験することができる。一実施態様において、非ヒト動物又は抗体ライブラリーから単離された抗体は、複数のインフルエンザ亜型由来の血球凝集素ポリペプチドを中和する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドをコードするベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、インフルエンザH3ウイルスを中和する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは16種、又はそれより多くのインフルエンザウイルスの亜型又は株を中和する。一実施態様において、中和抗体は1以上のA型インフルエンザウイルス及び1以上のB型インフルエンザウイルスを中和する。特定の実施態様において、中和抗体は、CR6261、CR6325、CR6329、CR6307、CR6323、2A、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90、H98、C179(ハイブリドーマFERM BP-4517により産生される; Takara Bio社(Otsu, Shiga, Japan)により販売されているクローン)、及び/又はAI3C(FERM BP-4516);もしくはEkiert DCらの文献(2009)、高度に保存されたインフルエンザウイルスエピトープの抗体認識(Antibody Recognition of a Highly Conserved Influenza Virus Epitope.)、Science(2009年2月26日にScience Expressで発表された); Kashyapらの文献(2008)、トルコH5N1鳥インフルエンザ大発生の生存者由来のコンビナトリアル抗体ライブラリーはウイルス中和戦略を明らかにする(Combinatorial antibody libraries from survivors of the Turkish H5N1 avian influenza outbreak reveal virus neutralization strategies.)、Proc Natl Acad Sci U S A 105: 5986-5991; Suiらの文献(2009)、鳥及びヒトA型インフルエンザウイルスの広域スペクトル中和のための構造及び機能的基礎(Structural and functional bases for broad-spectrum neutralization of avian and human influenza A virus.)、Nat Struct Mol Biol 16: 265-273;米国特許第5,589,174号、第5,631,350号、第6,337,070号、及び第6,720,409号;国際公開WO 2007/134237として公開された国際出願PCT/US2007/068983号;国際公開WO 2009/036157号として公開された国際出願PCT/US2008/075998号;国際公開WO 2008/028946号として公開された国際出願PCT/EP2007/059356号;及び国際公開WO 2009/079259号として公開された国際出願PCT/US2008/085876号に記載されている任意の他の抗体でもなく、該抗体と同じエピトープに結合するものでもない。他の実施態様において、中和抗体は、Wangらの文献(2010)「異なる血球凝集素による連続免疫後のH3インフルエンザウイルスに対する広域防御性モノクローナル抗体(Broadly Protective Monoclonal Antibodies against H3 Influenza Viruses following Sequential Immunization with Different Hemagglutinins)」、PLOS Pathogens 6(2):1-9に記載されている抗体ではない。特定の実施態様において、中和抗体は、Ig VH1-69セグメントを使用していない。いくつかの実施態様において、中和抗体と抗原との相互作用は、重鎖によってのみ媒介されるものではない。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて同定又は誘発される抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性部分、すなわち、血球凝集素ポリペプチドに特異的に結合する抗原結合部位を含む分子が含まれる。免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであることができる。抗体には、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に記載の方法を用いて誘発又は同定される抗体に対する抗Id抗体を含む)、並びに上記のいずれかのエピトープ結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、診断的免疫アッセイ、受動免疫療法、及び抗イディオタイプ抗体の作製で使用することができる。受動免疫療法で使用される前の抗体を修飾することができ、例えば、抗体をキメラ化又はヒト化することができる。キメラ抗体及びヒト化抗体の作製に関する概説については、例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;並びに国際公開WO 98/46645号、WO 98/50433号、WO 98/24893号、WO 98/16654号、WO 96/34096号、WO 96/33735号、及びWO 91/10741号を参照されたい。さらに、血球凝集素ポリペプチドを中和する抗体の能力及び該ポリペプチドに対する抗体の特異性を、受動免疫療法で抗体を使用する前に試験することができる。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体を用いて、療法の効力及び/又は疾患の進行をモニタリングすることができる。この目的のために、限定されないが、少し例を挙げれば、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、及び免疫電気泳動アッセイなどの技術を用いる、競合的及び非競合的アッセイ系を含む、当技術分野で公知の任意の免疫アッセイ系を使用することができる。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、抗イディオタイプ抗体の作製で使用することができる。その後さらに、インフルエンザの特定の抗原、例えば、血球凝集素ポリペプチドの中和エピトープに結合する抗体の亜集団を産生するために、該抗イディオタイプ抗体を免疫に使用することができる(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Jerneの文献、1974, Ann. Immunol.(Paris) 125c:373; Jerneらの文献、1982, EMBO J. 1:234)。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸もしくはポリペプチドを含むベクターを用いて誘発又は同定される抗体は、ミモトープ(mimotope)の設計に使用することができる。その後さらに、ミモトープ中にコードされるインフルエンザの特定の抗原、例えば、血球凝集素ポリペプチドの中和エピトープに結合する抗体のサブ集団を産生するために、該ミモトープを免疫に使用することができる(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Jerneの文献、1974, Ann. Immunol.(Paris) 125c:373; Jerneらの文献、1982, EMBO J. 1:234)。
(5.9 キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドによる細胞の刺激)
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)によってエクスビボで細胞を刺激する方法である。そのような細胞、例えば、樹状細胞を、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体を作製するためにインビトロで使用することができるか、又はそれ自体を、例えば、当技術分野で公知の養子移入技術によって対象に投与することができる。養子移入技術の説明については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、2008年1月24日に公開された米国特許出願公開第20080019998号を参照されたい。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドによってエクスビボで刺激された細胞を対象に投与する場合、該細胞は、哺乳動物細胞(例えば、CB-1細胞)ではない。
1つの非限定的な例において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変されたベクター、例えば、インフルエンザウイルスベクターを用いて、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現し、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫刺激特性を提示する樹状細胞(DC)を作製することができる。そのようなDCは、メモリーT細胞を拡大するために使用されることができ、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに特異的な細胞傷害性Tリンパ球クローンを含む、T細胞の強力なスティミュレーターである。引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Strobelらの文献、2000, Human Gene Therapy 11:2207-2218を参照されたい。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、該ポリペプチドを標的細胞、例えば、DCと接触させ、該ポリペプチドを標的細胞に送達するのを可能にする任意の方法で標的細胞に送達することができる。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを本明細書に記載されているように対象に送達する。いくつかのそのような実施態様において、該ポリペプチドと接触させた細胞を単離し、増殖させることができる。
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをインビトロで標的細胞に送達する。当業者に公知の技術を用いて、該ポリペプチドを標的細胞に送達することができる。例えば、標的細胞を、組織培養プレート、チューブ、又は他の容器中の該ポリペプチドと接触させることができる。該ポリペプチドを培地に懸濁させ、培養プレートのウェル、チューブ、又は他の容器に添加することができる。該ポリペプチドを含む培地を、細胞のプレーティングの前に、又は細胞をプレーティングした後に添加することができる。標的細胞は、該ポリペプチドを細胞と接触させるのに十分な量の時間、該ポリペプチドとともにインキュベートすることが好ましい。ある実施態様において、該細胞を、該ポリペプチドとともに、約1時間以上、約5時間以上、約10時間以上、約12時間以上、約16時間以上、約24時間以上、約48時間以上、約1時間〜約12時間、約3時間〜約6時間、約6時間〜約12時間、約12時間〜約24時間、又は約24時間〜約48時間インキュベートする。キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドがウイルス中にある、ある実施態様において、標的細胞を接触させることは、該細胞をウイルスに感染させることを含む。
標的細胞は、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びモルモットを含む、任意の種由来のものであることができる。いくつかの実施態様において、標的細胞は、健康な対象又は治療を必要とする対象から得られるDCである。ある実施態様において、標的細胞は、ポリペプチドに対する免疫応答を刺激することが望ましい対象から得られるDCである。対象から細胞を得る方法は、当技術分野で周知である。
(5.10 組成物)
本明細書に記載の核酸、ベクター、ポリペプチド、細菌、抗体、又は細胞(本明細書では「活性化合物」と呼ばれることもある)を組成物に組み込むことができる。具体的な実施態様において、組成物は、医薬組成物、例えば、免疫原性組成物(例えば、ワクチン製剤)である。本明細書に提供される医薬組成物は、組成物を対象に投与することができる任意の形態であることができる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、動物及び/又はヒト投与に好適である。組成物は、インフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法で使用することができる。
一実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)をコードする核酸を含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)をコードする核酸を含む発現ベクターを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を含むインフルエンザウイルス又は非インフルエンザウイルスを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を発現するように改変されたゲノムを有するインフルエンザウイルス又は非インフルエンザウイルスを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を含むウイルス様粒子又はウイロソームを含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を発現するか又は該ポリペプチドを発現するように改変された細菌を含む。別の実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)で刺激された細胞を含む。
いくつかの実施態様において、医薬組成物は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを利用する療法に加えて1以上の他の療法を含むことができる。
本明細書で使用されるように、「医薬として許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されているか、又は米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、医薬組成物がそれとともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクル体を指す。生理食塩水溶液及び水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液は、特に注射用溶液のための液体担体として利用することもできる。好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。好適な医薬担体の例は、E. W. Martin著、「レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。製剤は、投与様式に適するべきである。
具体的な実施態様において、医薬組成物は、対象への意図された投与経路に適するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、非経口、経口、皮内、経皮、結腸直腸、腹腔内、及び直腸投与に適するように製剤化することができる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、静脈内、経口、腹腔内、鼻腔内、気管内、皮下、筋肉内、局所、皮内、経皮、又は肺投与用に製剤化することができる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、鼻腔内投与用に製剤化される。別の具体的な実施態様において、医薬組成物は、筋肉内投与用に製剤化される。
ある実施態様において、生体分解性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリエチレングリコール(PEG化)、ポリメタクリル酸メチルポリマー、ポリラクチド、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を担体として使用することができる。いくつかの実施態様において、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤のように、身体からの速やかな消失からの化合物の保護を増大させる担体を用いて調製される。そのような製剤の調製方法は当業者には明らかであろう。リポソーム又はミセルを医薬として許容し得る担体として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に公知の方法によって調製することができる。ある実施態様において、医薬組成物は、1以上のアジュバントを含む。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、一価製剤、例えば、本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、本明細書に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、本明細書に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、本明細書に記載のcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、本明細書に記載のcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、本明細書に記載のcHB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、又は本明細書に記載のcH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む一価製剤である。
他の具体的な実施態様において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、多価製剤、例えば、二価及び三価製剤である。一例において、多価製剤は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現する複数のベクターを含む。ある実施態様において、多価製剤は、単一のベクターを用いて発現される本明細書に記載の1以上の異なるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むことができる。ある実施態様において、多価製剤は、異なるキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含み、ここで、各々のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメイン及び異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、異なるインフルエンザウイルス株、亜型、又は群に由来するものであることができる。例えば、二価製剤は、2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含むことができ、ここで、該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメイン及び2つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。別の例において、三価製剤は、3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含むことができ、ここで、該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメイン及び3つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。具体的な実施態様において、本明細書に提供される二価ワクチン製剤は、本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドと本明細書に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの組合せ;又は本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドと本明細書に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの組合せを含むことができる。具体的な実施態様において、本明細書に提供される三価ワクチン製剤は、(i)本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドと本明細書に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドと本明細書に記載のcH5/B、cH7/B、もしくはcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのいずれかの組合せ;又は(ii)本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドと本明細書に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドと本明細書に記載のcH5/B、cH7/B、もしくはcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドのいずれかの組合せを含むことができる。ある実施態様において、二価又は三価ワクチン製剤は、本明細書に記載のcH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤、例えば、水銀誘導体のチメロサールをさらに含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、0.001%〜0.01%のチメロサールを含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、防腐剤を含まない。具体的な実施態様において、チメロサールは、本明細書に記載の医薬組成物の製造時に使用され、チメロサールは、医薬組成物の生産後の精製工程を通して除去される、すなわち、医薬組成物は、微量のチメロサールを含む(精製後に、1用量当たり<0.3μgの水銀;そのような医薬組成物は、チメロサール非含有製品とみなされる)。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、卵タンパク質(例えば、オボアルブミン又は他の卵タンパク質)をさらに含む。本明細書に記載の医薬組成物中の卵タンパク質の量は、1mlの医薬組成物に対して、約0.0005〜約1.2μgの卵タンパク質であることができる。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、卵タンパク質を含まない。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、限定されないが、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ポリミキシン(例えば、ポリミキシンB)、及びカナマイシン、ストレプトマイシンを含む、1以上の抗微生物剤(例えば、抗生物質)をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、いかなる抗生物質も含まない。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ウイルスを不活化するために使用される1以上の成分、例えば、ホルマリンもしくはホルムアルデヒド、又は洗剤、例えば、デオキシコール酸ナトリウム、オクトキシノール9(Triton X-100)、及びオクトキシノール10をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ウイルスを不活化するために使用されるいかなる成分も含まない。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ゼラチンをさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、ゼラチンを含まない。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、1以上の緩衝剤、例えば、リン酸緩衝剤及びスクロースリン酸グルタミン酸緩衝剤をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、緩衝剤を含まない。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、1以上の塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、グルタミン酸一ナトリウム、及びアルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)、又はそのようなアルミニウム塩の混合物)をさらに含む。他の実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、塩を含まない。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、低添加剤インフルエンザウイルスワクチンである、すなわち、該医薬組成物は、インフルエンザウイルスワクチン中に一般に見られる1以上の添加剤を含まない。低添加剤インフルエンザワクチンは記載されている(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 09/001217号として公開された国際出願PCT/IB2008/002238号参照)。
本明細書に記載の医薬組成物は、投与のための説明書と一緒に、容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。
本明細書に記載の医薬組成物は、使用前に保存することができ、例えば、該医薬組成物は、冷凍して(例えば、約-20℃もしくは約-70℃で)保存するか;冷蔵条件で(例えば、約4℃で)保存するか;又は室温で保存することができる(インフルエンザワクチンを含む組成物を冷蔵しないで保存する方法については、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 07/110776号として公開された国際出願PCT/IB2007/001149号を参照されたい)。
ある実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物中の活性化合物が、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するように改変された細胞である場合、該医薬組成物中の細胞は、哺乳動物細胞(例えば、CB-1細胞)ではない。
(5.10.1 サブユニットワクチン)
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むサブユニットワクチンである。いくつかの実施態様において、サブユニットワクチンは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、及び1以上の表面糖タンパク質(例えば、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ)、他のターゲッティング部分、又はアジュバントを含む。具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、本明細書に記載の単一のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。他の実施態様において、サブユニットワクチンは、本明細書に記載の2つ、3つ、4つ、又はそれより多くのキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。具体的な実施態様において、サブユニットワクチンで使用されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、膜結合型ではない、すなわち、可溶性である。
本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの有効量を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、約5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、又は150μgの本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、約5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、又は140〜150μgの本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。
具体的な実施態様において、本明細書に提供される一価のサブユニットワクチンは、7.5μg〜90μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される二価のサブユニットワクチンは、7.5μg〜90μgの本明細書に記載の第一のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド及び7.5μg〜90μgの本明細書に記載の第二のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される三価のサブユニットワクチンは、7.5μg〜90μgの本明細書に記載の第一のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、7.5μg〜90μgの本明細書に記載の第二のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、及び7.5μg〜90μgの本明細書に記載の第三のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1用量当たり、約10μg〜約60μgの本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、約0.001%〜0.01%のチメロサール、約0.1μg〜約1.0μgの鶏卵タンパク質、約1.0μg〜約5.0μgのポリミキシン、約1.0μg〜約5.0μgのネオマイシン、約0.1μg〜約0.5μgのベータプロピオラクトン、及び約0.001〜約0.05w/v%のノニルフェノールエトキシレートを含むサブユニットワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、45μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、1.0μg以下の水銀(チメロサール由来)、1.0μg以下の鶏卵タンパク質(すなわち、オボアルブミン)、3.75μg以下のポリミキシン、及び2.5μg以下のネオマイシンを含む0.5ml用量を含むか又はそれからなる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、1用量当たり、0.5μg以下のベータプロピオラクトン及び0.015w/v%以下のノニルフェノールエトキシレートをさらに含むか又はそれらからなる。いくつかの実施態様において、0.5ml用量のサブユニットワクチンは、充填済み注射器にパックされる。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、45μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、25.0μgの水銀(チメロサール由来)、1.0μg以下の鶏卵タンパク質(すなわち、オボアルブミン)、3.75μg以下のポリミキシン、及び2.5μg以下のネオマイシンを含む5.0mlの多用量バイアル(1用量当たり、0.5ml)からなる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、1用量当たり、0.5μg以下のベータプロピオラクトン及び0.015w/v%以下のノニルフェノールエトキシレートをさらに含むか又はそれらからなる。
具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチンの成分(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)は、発育鶏卵で増殖させたウイルスから単離される)。別の具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、発育鶏卵で増殖させなかったインフルエンザウイルスを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチンの成分(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)は、発育鶏卵で増殖させなかったウイルスから単離される)。別の具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号参照)、イヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号参照)、Vero細胞、PerC.6細胞、又はアヒル細胞、例えば、EB66細胞で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチンの成分(例えば、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)は、哺乳動物細胞で増殖させたウイルスから単離される)。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチン中のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、発現ベクター、例えば、ウイルスベクター、植物ベクター、又は細菌ベクターを用いて調製される(すなわち、サブユニットワクチン中のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、発現ベクターから得られる/単離される)。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む一価のサブユニットワクチンである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む一価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む一価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む一価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む一価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む一価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む一価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)を含む一価のサブユニットワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンであり、ここで、該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、2つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、2つの異なるインフルエンザ株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド及びcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のcH4/3キメラ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のサブユニットワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノムを含むウイルスを含む三価のサブユニットワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のサブユニットワクチンであり、ここで、該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、3つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、3つの異なるインフルエンザウイルス株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、及びcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、及びcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、及びcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のサブユニットワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、及びcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、及びcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のサブユニットワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド、及びcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のサブユニットワクチンである。ある実施態様において、三価のサブユニットワクチンは、本明細書に記載のcH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素を含む。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、A/ベトナム/1203/2004(H5)の球状ヘッドドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含まない。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7)の球状ヘッドドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるサブユニットワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含まない。
(5.10.2 生ウイルスワクチン)
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む生ウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、組成物を投与される対象で産生される子孫ウイルスによって発現される本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするように改変されている生ウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。具体的な実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、膜結合型である。他の具体的な実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、膜結合型ではない、すなわち、それは、可溶性である。特定の実施態様において、生ウイルスは、上の第5.4節に記載されているような、インフルエンザウイルスである。他の実施態様において、生ウイルスは、上の第5.5節に記載されているような、非インフルエンザウイルスである。いくつかの実施態様において、生ウイルスは弱毒化されている。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、本明細書に記載の2つ、3つ、4つ、もしくはそれより多くの異なるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むか、又はそれらを発現するように改変されている、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの生ウイルスを含む。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1用量当たり、本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む約105〜約1010蛍光焦点単位(FFU)の弱毒化生インフルエンザウイルス、約0.1〜約0.5mgのグルタミン酸一ナトリウム、約1.0〜約5.0mgの加水分解ブタ(procine)ゼラチン、約1.0〜約5.0mgのアルギニン、約10〜約15mgのスクロース、約1.0〜約5.0mgの二塩基性リン酸カリウム、約0.5〜約2.0mgのリン酸二水素カリウム、及び約0.001〜約0.05μg/mlの硫酸ゲンタマイシンを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.2ml用量を含む充填済み噴霧器としてパックされる。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、1用量当たり、本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む106.5〜107.5FFUの弱毒化生インフルエンザウイルス、0.188mgのグルタミン酸一ナトリウム、2.0mgの加水分解ブタゼラチン、2.42mgのアルギニン、13.68mgのスクロース、2.26mgの二塩基性リン酸カリウム、0.96mgのリン酸二水素カリウム、及び0.015μg/ml未満の硫酸ゲンタマイシンを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.2ml用量を含む充填済み噴霧器としてパックされる。
具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む生ウイルスを、本明細書に記載の免疫原性組成物中でのその使用の前に、発育鶏卵で増殖させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む生ウイルスを、本明細書に記載の免疫原性組成物中でのその使用の前に、発育鶏卵で増殖させない。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む生ウイルスを、本明細書に記載の免疫原性組成物中でのその使用の前に、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号参照)、イヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号参照)、Vero細胞、PerC.6細胞、又はアヒル細胞、例えば、EB66細胞で増殖させる。
対象でのウイルスの増殖は、自然感染で起こるものと同様の種類及び程度の長期刺激をもたらし、そのため、かなりの長期持続性免疫を付与することができるので、対象への投与用の生ウイルスを含む免疫原性組成物が好ましい場合がある。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む一価の生ウイルスワクチンである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノムを含むウイルスを含む一価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノムを含むウイルスを含む生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の生ウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価の生ウイルスワクチンであり、ここで、該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、2つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、2つの異なるインフルエンザ株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の生ウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価の生ウイルスワクチンであり、ここで、該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、3つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、3つの異なるインフルエンザウイルス株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の生ウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、生ウイルスワクチンの一部であるキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、生ウイルスの表面(例えば、生インフルエンザウイルスの表面)に見出される及び/又は発現される。
具体的な実施態様において、本明細書に提供される生ウイルスワクチンは、A/ベトナム/1203/2004(H5)の球状ヘッドドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される生ウイルスワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。
具体的な実施態様において、本明細書に提供される生ウイルスワクチンは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7)の球状ヘッドドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される生ウイルスワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。
(5.10.3 不活化ウイルスワクチン)
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む不活化ウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。具体的な実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、膜結合型である。特定の実施態様において、不活化ウイルスは、上の第5.4節に記載されているような、インフルエンザウイルスである。他の実施態様において、不活化ウイルスは、上の第5.5節に記載されているような、非インフルエンザウイルスである。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、本明細書に記載の2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの異なるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの不活化ウイルスを含む。ある実施態様において、不活化ウイルス免疫原性組成物は、1以上のアジュバントを含む。
当業者に公知の技術を用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むウイルスを不活化することができる。一般的な方法は、不活化のためにホルマリン、熱、又は洗剤を使用する。例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,635,246号を参照されたい。他の方法としては、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第5,891,705号;第5,106,619号及び第4,693,981号に記載されているものが挙げられる。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、免疫原性組成物の各用量が、約7.5μg〜約90μg又は約15〜約60μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、約1.0〜約5.0mgの塩化ナトリウム、約20〜約100μgの一塩基リン酸ナトリウム、約100〜約500μgのリン酸水素ナトリウム、約5〜約30μgのリン酸二水素カリウム、約5〜約30μgの塩化カリウム、及び約0.5〜約3.0μgの塩化カルシウムを含むような、不活化インフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.25ml又は単一の0.5mlの用量としてパックされる。他の実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、多用量製剤としてパックされる。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、免疫原性組成物の各用量が、1用量当たり、約7.5μg〜約90μg又は約15〜約60μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、約0.001%〜0.01%のチメロサール、約1.0〜約5.0mgの塩化ナトリウム、約20〜約100μgの一塩基リン酸ナトリウム、約100〜約500μgのリン酸水素ナトリウム、約5〜約30μgのリン酸二水素カリウム、約5〜約30μgの塩化カリウム、及び約0.5〜約3.0μgの塩化カルシウムを含むような、不活化インフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.25ml又は単一の0.5mlの用量としてパックされる。他の実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、多用量製剤としてパックされる。
具体的な実施態様において、本明細書に提供される免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.25ml用量としてパックされ、1用量当たり、22.5μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、2.05mgの塩化ナトリウム、40μgの一塩基リン酸ナトリウム、150μgのリン酸水素ナトリウム、10μgのリン酸二水素カリウム、10μgの塩化カリウム、及び0.75μgの塩化カルシウムを含む。
具体的な実施態様において、本明細書に提供される免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、単一の0.5ml用量としてパックされ、1用量当たり、45μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、4.1mgの塩化ナトリウム、80μgの一塩基リン酸ナトリウム、300μgのリン酸水素ナトリウム、20μgのリン酸二水素カリウム、20μgの塩化カリウム、及び1.5μgの塩化カルシウムを含む。
具体的な実施態様において、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)は、5.0mlのワクチン(1用量当たり、0.5ml)を含むか又はそれからなる多用量製剤としてパックされ、1用量当たり、24.5μgの水銀(チメロサール由来)、45μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、4.1mgの塩化ナトリウム、80μgの一塩基リン酸ナトリウム、300μgのリン酸水素ナトリウム、20μgのリン酸二水素カリウム、20μgの塩化カリウム、及び1.5μgの塩化カルシウムを含む。
具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む不活化ウイルスを、その不活化及びその後の本明細書に記載の免疫原性組成物中での使用の前に、発育鶏卵で増殖させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む不活化ウイルスを、その不活化及びその後の本明細書に記載の免疫原性組成物中での使用の前に、発育鶏卵で増殖させない。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む不活化ウイルスを、その不活化及びその後の本明細書に記載の免疫原性組成物中での使用の前に、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号参照)、イヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号参照)、Vero細胞、PerC.6細胞、又はアヒル細胞、例えば、EB66細胞で増殖させる。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価の不活化ウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価の不活化ウイルスワクチンであり、ここで、該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、2つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、2つの異なるインフルエンザ株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価の不活化ウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価の不活化ウイルスワクチンであり、ここで、該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、3つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、3つの異なるインフルエンザウイルス株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価の不活化ウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、不活化ウイルスワクチンの一部であるキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、不活化ウイルスの表面(例えば、不活化インフルエンザウイルスの表面)に見出される及び/又は発現される。
具体的な実施態様において、本明細書に提供される不活化ウイルスワクチンは、A/ベトナム/1203/2004(H5)の球状ヘッドドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される不活化ウイルスワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。
具体的な実施態様において、本明細書に提供される不活化ウイルスワクチンは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7)の球状ヘッドドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される不活化ウイルスワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。
(5.10.4 スプリットウイルスワクチン)
一実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む免疫原性組成物は、スプリットウイルスワクチンである。いくつかの実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、本明細書に記載の2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの異なるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。ある実施態様において、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、膜結合型である/膜結合型であった。ある実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、1以上のアジュバントを含む。
スプリットウイルスワクチンの産生技術は当業者に公知である。非限定的な例として、インフルエンザウイルススプリットワクチンは、洗剤で破壊された不活化粒子を用いて調製することができる。本明細書に記載の方法による使用に適合させることができるスプリットウイルスワクチンの一例は、筋肉内使用のためのfluzone(登録商標)インフルエンザウイルスワクチン(ゾーン精製、サブビリオン)であり、これを、発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスから調製される滅菌懸濁剤として製剤化する。ウイルス含有液を回収し、ホルムアルデヒドで不活化する。インフルエンザウイルスを、連続フロー遠心分離機を用いて、線形ショ糖密度勾配溶液中で濃縮し、精製する。その後、ウイルスを、非イオン性界面活性剤、オクトキシノール-9(Triton(登録商標) X-100−Union Carbide社の登録商標)を用いて化学的に破壊し、「スプリットウイルス」を生じさせる。その後、このスプリットウイルスを、化学的手段によってさらに精製し、リン酸ナトリウム緩衝等張塩化ナトリウム溶液に懸濁させる。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、約7.5μg〜約90μg又は約10μg〜約60μgの本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、約0.01〜約1.0mgのオクトキシノール-10(TRITON X-100(登録商標))、約0.5〜0.5mgのα-トコフェリルハイドロジェンスクシネート、約0.1〜1.0mgのポリソルベート80(Tween 80)、約0.001〜約0.003μgのヒドロコルチゾン、約0.05〜約0.3μgの硫酸ゲンタマイシン(gentamcin)、約0.5〜約2.0μgの鶏卵タンパク質(オボアルブミン)、約25〜75μgのホルムアルデヒド、及び約25〜75μgのデオキシコール酸ナトリウムを含むスプリットウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるスプリットウイルスワクチンは、45μgの本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、0.085mg以下のオクトキシノール-10(TRITON X-100(登録商標))、0.1mg以下のα-トコフェリルハイドロジェンスクシネート、0.415mg以下のポリソルベート80(Tween 80)、0.0016μg以下のヒドロコルチゾン、0.15μg以下の硫酸ゲンタマイシン、1.0以下の鶏卵タンパク質(オボアルブミン)、50μg以下のホルムアルデヒド、及び50μg以下のデオキシコール酸ナトリウムを含む0.5ml用量を含むか又はそれからなる。いくつかの実施態様において、0.5ml用量のサブユニットワクチンは、充填済み注射器にパックされる。
具体的な実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、発育鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される。別の具体的な実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、発育鶏卵で増殖させなかったインフルエンザウイルスを用いて調製される。別の具体的な実施態様において、スプリットウイルスワクチンは、哺乳動物細胞、例えば、不死化ヒト細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、WO 07/045674号として公開された国際出願PCT/EP2006/067566号参照)、イヌ腎臓細胞、例えば、MDCK細胞(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、WO 08/032219号として公開された国際出願PCT/IB2007/003536号参照)、Vero細胞、PerC.6細胞、又はアヒル細胞、例えば、EB66細胞で増殖させたインフルエンザウイルスを用いて調製される。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH7/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(例えば、第5.1節に記載のcH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド)をコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む一価のスプリットウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む二価のスプリットウイルスワクチンであり、ここで、該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該2つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、2つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、2つの異なるインフルエンザ株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む二価のスプリットウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む三価のスプリットウイルスワクチンであり、ここで、該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、あるインフルエンザウイルス由来の同じインフルエンザ血球凝集素球状ヘッドドメインを含み、かつ該3つのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの各々は、3つの異なるインフルエンザウイルス由来の異なるインフルエンザ血球凝集素ステムドメインを含む。ある実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ステムドメインは、3つの異なるインフルエンザウイルス株、亜型、又は群由来のものである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、cH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルス、並びにcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、cH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含む三価のスプリットウイルスワクチンである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるスプリットウイルスワクチンは、A/ベトナム/1203/2004(H5)の球状ヘッドドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるスプリットウイルスワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるスプリットウイルスワクチンは、A/マガモ/アルバータ/24/2001(H7)の球状ヘッドドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるスプリットウイルスワクチンは、A/パース/16/2009(H3)のステムドメインを含むcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドをコードするゲノムを含有し及び/又は該ゲノム含むウイルスを含まない。
(5.10.5 アジュバント)
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物は、アジュバントを含むか、又はそれと併用投与される。本明細書に記載の組成物との併用投与のためのアジュバントは、該組成物の投与前に、それと同時に、又はその後に投与されてもよい。いくつかの実施態様において、「アジュバント」という用語は、本明細書に記載の組成物とともに又はその一部として投与した場合、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する免疫応答を強化し、増強し、及び/又は増進させるが、その化合物を単独で投与した場合、該ポリペプチドに対する免疫応答を生じさせない化合物を指す。いくつかの実施態様において、アジュバントは、該ポリペプチドに対する免疫応答を生じさせ、アレルギーも他の有害反応も生じさせない。アジュバントは、例えば、リンパ球動員、B細胞及び/又はT細胞の刺激、並びにマクロファージの刺激を含むいくつかの機構によって、免疫応答を増強することができる。
ある実施態様において、アジュバントは、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する固有の応答を、該応答の定性的形態に影響を及ぼす該ポリペプチドの立体構造変化を引き起こすことなく強化する。アジュバントの具体的な例としては、アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウム)、3デ-O-アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)(GB 2220211号参照)、MF59(Novartis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ポリソルベート80(Tween 80; ICL Americas社)、イミダゾピリジン化合物(国際公開WO 2007/109812号として公開された国際出願PCT/US2007/064857号参照)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開WO 2007/109813号として公開された国際出願PCT/US2007/064858号参照)、Matrix-M(iscanova)、MVA(the Jenner Institute、Oxford)、ISCOMATRIX(CSL Behring)、AddaVax(Invivogen)、ポリI:C(Invivogen)、センダイウイルスCantell株欠陥干渉RNA由来のインビトロ転写されたRNAヘアピン、及びサポニン、例えば、QS21(Kensilらの文献、ワクチンの設計:サブユニット及びアジュバント手法(Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach)(Powell及びNewman編、Plenum Press, NY, 1995);米国特許第5,057,540号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、アジュバントは、フロイントアジュバント(完全又は不完全)である。他のアジュバントは、任意に免疫賦活剤、例えば、モノホスホリル脂質Aと組み合わせた、水中油型エマルジョン(例えば、スクアレン又はピーナッツ油)である(Stouteらの文献、N. Engl. J. Med. 336, 86-91(1997)参照)。別のアジュバントは、CpGである(Bioworld Today, 1998年11月15日)。そのようなアジュバントは、他の特定の免疫刺激剤、例えば、MPLもしくは3-DMP、QS21、重合体もしくは単量体のアミノ酸、例えば、ポリグルタミン酸もしくはポリリジン、又は上の第5.4節に記載されている他の免疫増強剤とともに、又はそれらなしで使用することができる。別の実施態様において、アジュバントは、物理的アジュバント、例えば、マイクロニードル及びマイクロニードルパッチである。別の実施態様において、アジュバントは、Toll様受容体(TLR)刺激分子、例えば、フラジェリン(McSorleyらの文献、2002. J. Immunol. 169:3914-3919)である。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの異なる製剤は、異なるアジュバントを含んでいてもよく、又は同じアジュバントを含んでいてもよいことを理解すべきである。
(5.11 予防的及び治療的使用)
一態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物(例えば、ワクチン製剤)を利用して、対象の免疫応答を誘導する方法である。具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド又はその免疫原性組成物(例えば、そのワクチン製剤)の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含有もしくは発現するウイルスベクター又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。さらに別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドで刺激された細胞又はその医薬組成物の有効量を投与することを含む。ある実施態様において、本方法で使用される本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、哺乳動物細胞、植物細胞、又は昆虫細胞に由来する本明細書に記載の精製されたキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドである。
具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のサブユニットワクチン(第5.10.1節参照)を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の生ウイルスワクチン(第5.10.2節参照)を投与することを含む。特定の実施態様において、生ウイルスワクチンは、弱毒化ウイルスを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の不活化ウイルスワクチン(第5.10.3節参照)を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のスプリットウイルスワクチン(第5.10.4節参照)を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイルス様粒子ワクチン(第5.6節参照)を投与することを含む。別の実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイロソーム(第5.6節参照)を投与することを含む。別の実施態様において、インフルエンザ血球凝集素ポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するか又は発現するように改変された細菌又はその組成物(第5.7節参照)を投与することを含む。ある実施態様において、本方法で使用される本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、哺乳動物細胞、植物細胞、又は昆虫細胞に由来する本明細書に記載の精製されたキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドである。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの任意の亜型又は株によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの同じ亜型内の1以上の株によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの同じ亜型の複数の株によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、(i)H1N1及びH1N2亜型;(ii)H1N1及びH3N1亜型;(iii)H1N2及びH3N2亜型;並びに/又は(iv)(i)〜(iii)とB型インフルエンザの組合せのいずれかによって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、一方のHAグループ(例えば、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、及びH18を含むグループ1)に属し、もう一方のHAグループ(例えば、H3、H4、H7、H10、H14、及びH15を含むグループ2)に属さないインフルエンザウイルスの亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。例えば、誘導される免疫応答は、H11、H13、H16、H9、H8、H12、H6、H1、H5、及び/又はH2からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。或いは、誘導される免疫応答は、H3、H4、H14、H10、H15、及び/又はH7からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、又は15の亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、H1 HAグループに属するインフルエンザウイルスの1つ、2つ、もしくはそれより多くの株、及び/又はH2 HAグループに属するインフルエンザウイルスの1つ、2つ、もしくはそれより多くの株によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、H1 HAグループに属するインフルエンザウイルスの1つ、2つ、もしくはそれより多くの株; H3 HAグループに属するインフルエンザウイルスの1つ、2つ、もしくはそれより多くの株;及び/又は1つ、2つ、もしくはそれより多くのB型インフルエンザウイルス株によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、H1N1亜型とH2N2亜型の両方によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、H1N1亜型とH2N2亜型の両方によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効ではない。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、H1N1、H2N2、及びH3N2亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、H3N2亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効である。他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、H3N2亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療するのに有効ではない。
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、一方のHAグループに属し、もう一方のHAグループに属さないインフルエンザウイルスの亜型によって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。例えば、誘導される免疫応答は、H11、H13、H16、H9、H8、H12、H6、H1、H5、及び/又はH2からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。或いは、誘導される免疫応答は、H3、H4、H14、H10、H15、及び/又はH7からなるHAグループに属するインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効であり得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの亜型のいずれかによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、又は15の亜型のいずれかによって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルスの同じ亜型内の1以上の株によって引き起こされるインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療するのに有効である。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルス疾患/感染に起因する症状を軽減するのに有効である。インフルエンザウイルス疾患/感染の症状としては、体の痛み(特に、関節及び咽喉)、発熱、吐き気、頭痛、ひりひり痛む目、疲労、咽喉炎、赤くなった目又は皮膚、並びに腹痛が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物(例えば、ワクチン製剤)によって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルス疾患/感染に罹患している対象の入院を減少させるのに有効である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物に(例えば、ワクチン製剤)よって誘導される免疫応答は、インフルエンザウイルス疾患/感染に罹患している対象の入院期間を短縮するのに有効である。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物(例えば、ワクチン製剤)を利用して、対象のインフルエンザウイルス感染を予防及び/又は治療する方法である。一実施態様において、対象のインフルエンザウイルス感染を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター、又は上記のいずれか1つの組成物を投与することを含む。具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス感染を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のサブユニットワクチン、生ウイルスワクチン、不活化ウイルスワクチン、スプリットウイルスワクチン、又はウイルス様粒子ワクチンを投与することを含む。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター、もしくはそのようなポリペプチドで刺激された細胞、又は本明細書に記載の組成物(例えば、ワクチン製剤)を利用して、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療する方法である。具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド含有もしくは発現するウイルスベクター又はその免疫原性組成物の有効量を投与することを含む。さらに別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドで刺激された細胞又はその医薬組成物の有効量を投与することを含む。
具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるサブユニットワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の生ウイルスワクチンを投与することを含む。特定の実施態様において、生ウイルスワクチンは、弱毒化ウイルスを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の不活化ウイルスワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のスプリットウイルスワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、インフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイルス様粒子ワクチンを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のウイロソームを投与することを含む。別の実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するかもしくは発現するように改変された細菌又はその組成物を投与することを含む。
具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、多価ワクチン(例えば、二価又は三価ワクチン)をその対象に投与することを含み、ここで、該多価ワクチンは、2以上のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含む。ある実施態様において、第二の多価ワクチン(例えば、二価又は三価ワクチン)は、該対象に、追加免疫として投与され、ここで、該第二の多価ワクチンは、2以上のキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを含み、かつ該第二の多価ワクチンは、該第一の多価ワクチンと異なっている。具体的な実施態様において、第二の多価ワクチンのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドは、該キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの血球凝集素球状ヘッドドメインに関して、第一の多価ワクチンのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドと異なっている。ある実施態様において、第二の多価ワクチンのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの血球凝集素ステムドメインは、第一の多価ワクチンのキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドの血球凝集素ステムドメインと同じである。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の中和抗体を投与することによって対象のインフルエンザウイルス疾患を予防及び/又は治療する方法である(第5.9節参照)。具体的な実施態様において、対象のインフルエンザウイルス疾患を予防又は治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の中和抗体又はその医薬組成物の有効量を投与することを含む。特定の実施態様において、該中和抗体は、モノクローナル抗体である。ある実施態様において、該中和抗体は、CR8114、CR8020(Ekiertらの文献、2011. Science. 333(6044): 843-850)、FI6(Cortiらの文献、2011. Science. 333(6044) 850-856, DOI: 10.1126/science.1205669)、B型インフルエンザウイルスストークmAbである3A2、10C4、もしくは5A7(Yasugiらの文献、2013. PLoS Pathog. 9(2): e1003150)、CR6261、CR6325、CR6329、CR6307、CR6323、2A、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90、H98、C179(FERM BP-4517)、AI3C(FERM BP-4516)、又はEkiert DCらの文献(2009)、高度に保存されたインフルエンザウイルスエピトープの抗体認識(Antibody Recognition of a Highly Conserved Influenza Virus Epitope.)、Science(2009年2月26日にScience Expressで発表された); Kashyapらの文献(2008)、トルコH5N1鳥インフルエンザ大発生の生存者由来のコンビナトリアル抗体ライブラリーはウイルス中和戦略を明らかにする(Combinatorial antibody libraries from survivors of the Turkish H5N1 avian influenza outbreak reveal virus neutralization strategies.)、Proc Natl Acad Sci U S A 105: 5986-5991; Suiらの文献(2009)、鳥及びヒトA型インフルエンザウイルスの広域スペクトル中和のための構造及び機能的基礎(Structural and functional bases for broad-spectrum neutralization of avian and human influenza A virus.)、Nat Struct Mol Biol 16: 265-273;米国特許第5,589,174号、第5,631,350号、第6,337,070号、及び第6,720,409号;国際公開WO 2007/134237として公開された国際出願PCT/US2007/068983号;国際公開WO 2009/036157号として公開された国際出願PCT/US2008/075998号;国際公開WO 2008/028946号として公開された国際出願PCT/EP2007/059356号;及び国際公開WO 2009/079259号として公開された国際出願PCT/US2008/085876号に記載されている任意の他の抗体ではない。他の実施態様において、該中和抗体は、Wangらの文献(2010)「異なる血球凝集素による連続免疫後のH3インフルエンザウイルスに対する広域防御性モノクローナル抗体(Broadly Protective Monoclonal Antibodies against H3 Influenza Viruses following Sequential Immunization with Different Hemagglutinins)」、PLOS Pathogens 6(2):1-9に記載されている抗体ではない。
ある実施態様において、本明細書に提供される、対象(例えば、ヒト又は非ヒト動物)のインフルエンザウイルス疾患又は感染を予防又は治療する方法は、当業者に公知かつ本明細書に記載のインビボ及びインビトロアッセイによって測定したとき、対象でのインフルエンザウイルスの複製の低下をもたらす。いくつかの実施態様において、インフルエンザウイルスの複製は、約1log以上、約2log以上、約3log以上、約4log以上、約5log以上、約6log以上、約7log以上、約8log以上、約9log以上、約10log以上、1〜3log、1〜5log、1〜8log、1〜9log、2〜10log、2〜5log、2〜7log、2log〜8log、2〜9log、2〜10log、3〜5log、3〜7log、3〜8log、3〜9log、4〜6log、4〜8log、4〜9log、5〜6log、5〜7log、5〜8log、5〜9log、6〜7log、6〜8log、6〜9log、7〜8log、7〜9log、又は8〜9log低下する。
(5.11.1 併用療法)
様々な態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞、又は中和抗体は、1以上の他の療法(例えば、抗ウイルス療法、抗細菌療法、又は免疫調節療法)との併用で対象に投与することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物(例えば、免疫原性組成物)は、1以上の療法との併用で対象に投与することができる。1以上の他の療法は、インフルエンザウイルス疾患の治療もしくは予防に有益であることができるか、又はインフルエンザウイルス疾患と関連する症状もしくは状態を改善することができる。いくつかの実施態様において、1以上の他の療法は、鎮痛剤、解熱薬、又は呼吸を楽にするかもしくは助ける療法である。ある実施態様において、療法は、5分未満の間隔、30分未満の間隔、1時間の間隔、約1時間の間隔、約1〜約2時間の間隔、約2時間〜約3時間の間隔、約3時間〜約4時間の間隔、約4時間〜約5時間の間隔、約5時間〜約6時間の間隔、約6時間〜約7時間の間隔、約7時間〜約8時間の間隔、約8時間〜約9時間の間隔、約9時間〜約10時間の間隔、約10時間〜約11時間の間隔、約11時間〜約12時間の間隔、約12時間〜18時間の間隔、18時間〜24時間の間隔、24時間〜36時間の間隔、36時間〜48時間の間隔、48時間〜52時間の間隔、52時間〜60時間の間隔、60時間〜72時間の間隔、72時間〜84時間の間隔、84時間〜96時間の間隔、又は96時間〜120時間の間隔で投与される。具体的な実施態様において、2以上の療法が、同じ患者(patent)診察時に投与される。
当業者に周知の任意の抗ウイルス剤を、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は医薬組成物と併用することができる。抗ウイルス剤の非限定的な例としては、その受容体へのウイルスの付着、細胞内へのウイルスの内在化、ウイルスの複製、又は細胞からのウイルスの放出を阻害し及び/又は低下させる、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質 抗体、核酸分子、有機分子、無機分子、及び小分子が挙げられる。特に、抗ウイルス剤としては、ヌクレオシド類似体(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、及びリバビリン)、フォスカーネット、アマンタジン、ペラミビル、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、リトナビル、α-インターフェロン及び他のインターフェロン、AZT、ザナミビル(Relenza(登録商標))、並びにオセルタミビル(Tamiflu(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗ウイルス剤としては、インフルエンザウイルスワクチン、例えば、Fluarix(登録商標)(GlaxoSmithKline)、FluMist(登録商標)(MedImmune Vaccines)、Fluvirin(登録商標)(Chiron社)、Flulaval(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Afluria(登録商標)(CSL Biotherapies社)、Agriflu(登録商標)(Novartis)、又はFluzone(登録商標)(Aventis Pasteur)が挙げられる。
具体的な実施態様において、抗ウイルス剤は、ウイルス抗原に特異的である免疫調節剤である。特定の実施態様において、ウイルス抗原は、血球凝集素ポリペプチド以外のインフルエンザウイルスポリペプチドである。他の実施態様において、ウイルス抗原は、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドである。
当業者に公知の任意の抗細菌剤を、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は医薬組成物と併用することができる。抗細菌剤の非限定的な例としては、アミカシン、アモキシシリン、アモキシシリン-クラブラン酸、アンホテリシンB、アンピシリン、アンピシリン(Ampicllin)-スルバクタム、アプラマイシン、アジスロマイシン、アズトレオナム、バシトラシン、ベンジルペニシリン、カスポファンギン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファロチン、セファゾリン、セフジニル、セフェピム、セフィキシム、セフメノキシム、セフォペラゾン、セフォペラゾン-スルバクタム、セフォタキシム、セフォキシチン、セフピロム、セフポドキシム、セフポドキシム-クラブラン酸、セフポドキシム-スルバクタム、セフプロジル、セフキノム、セフタジジム、セフチブテン(Ceftibutin)、セフチオフル、セフトビプロール、セフトリアキソン、セフロキシム、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリナフロキサシン、クリンダマイシン、クロキサシリン、コリスチン、コトリモキサゾール(トリムトプリム/スルファメトキサゾール)、ダルババンシン、ダルフォプリスチン/キノプリスチン、ダプトマイシン、ジベカシン、ジクロキサシリン、ドリペネム、ドキシサイクリン、エンロフロキサシン、エルタペネム、エリスロマイシン、フルクロキサシリン、フルコナゾール、フルシトシン、ホスホマイシン、フシジン酸、ガレノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲンタマイシン、イミペネム、イトラコナゾール、カナマイシン、ケトコナゾール、レボフロキサシン、リンコマイシン、リネゾリド、ロラカルベフ、メシルナム(アムジノシリン)、メロペネム、メトロニダゾール、メジオシリン、メズロシリン-スルバクタム、ミノサイクリン、モキシフロキサシン、ムピロシン、ナリジキシン酸、ネオマイシン、ネチルマイシン、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキサシリン、ペフロキサシン、ペニシリンV、ピペラシリン、ピペラシリン-スルバクタム、ピペラシリン-タゾバクタム、リファンピシン、ロキシスロマイシン、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、ストレプトマイシン、スルバクタム、スルファメトキサゾール、テイコプラニン、テラバンシン、テリスロマイシン、テモシリン、テトラサイクリン、チカルシリン、チカルシリン-クラブラン酸、チゲサイクリン、トブラマイシン、トリメトプリム、トロバフロキサシン、タイロシン、バンコマイシン、バージニアマイシン、及びボリコナゾールが挙げられる。
いくつかの実施態様において、併用療法は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド又は本明細書に記載の1以上の発現ベクターによる能動免疫、並びに本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを用いて作製及び/又は同定された1以上の中和抗体による受動免疫を含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、本明細書に記載の1以上の発現ベクターによる免疫、及び本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドで刺激された細胞の投与(例えば、養子移入によるもの)を含む。
いくつかの実施態様において、併用療法は、本明細書に記載の2以上の異なる発現ベクターの投与を含む。
いくつかの実施態様において、併用療法は、もう一方のHAグループ(例えば、グループ2)の1つ、2つ、3つ、又はそれより多くのHA亜型に対する免疫応答を誘導する活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)と併用した、一方のHAグループ(例えば、グループ1)の1つ、2つ、3つ、又はそれより多くのHA亜型に対する免疫応答を誘導する活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)による能動免疫を含む。
いくつかの実施態様において、併用療法は、本明細書に記載の2以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドによる能動免疫を含む。
(5.11.2 患者集団)
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、未感作の対象、すなわち、インフルエンザウイルス感染に起因する疾患を有していないか、又はインフルエンザウイルス感染症に感染したことがなく、かつ現在それに感染していない対象に投与することができる。一実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、インフルエンザウイルス感染を獲得する危険のある未感作の対象に投与される。一実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドが免疫応答を誘導する、特定のインフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患を有していないか、又は特定のインフルエンザウイルスに感染したことがなく、かつそれに感染していない対象に投与される。本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドが免疫応答を誘導する、インフルエンザウイルス、又はインフルエンザウイルスの別の型、亜型、もしくは株に感染している対象、及び/或いはそれらに感染したことがある対象に投与することができる。
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、インフルエンザウイルス感染と診断された患者に投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、症状が現われるか又は症状が重くなる前に(例えば、患者が入院を必要とする前に)、インフルエンザウイルス感染患者に投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、該活性化合物又は組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのヘッドドメインが由来したインフルエンザウイルスの型と異なる型のインフルエンザウイルスに感染しているか、又はそう診断された患者に投与される。
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのヘッドドメインのHAグループと同じHAグループに属するインフルエンザウイルスに感染している可能性があるか又はそれに感染している患者に投与される。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのヘッドドメインの亜型と同じ亜型のインフルエンザウイルスに感染している可能性があるか又はそれに感染している患者に投与される。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、動物である。ある実施態様において、該動物は、鳥である。ある実施態様において、該動物は、イヌである。ある実施態様において、該動物は、ネコである。ある実施態様において、該動物は、ウマである。ある実施態様において、該動物は、ウシである。ある実施態様において、該動物は、哺乳動物、例えば、ウマ、ブタ、マウス、又は霊長類、好ましくは、ヒトである。
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト成人である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、50歳を超えるヒト成人である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、高齢のヒト対象である。
ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト小児である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、ヒト乳児である。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与される対象は、月齢6カ月未満の乳児ではない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、2歳以下のヒトである。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、5歳以下のヒトである。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、1〜5歳のヒトである。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(すなわち、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべき対象は、月齢6カ月を超える任意の乳児又は小児及び50歳を超える任意の成人である。他の実施態様において、該対象は、妊娠個体である。別の実施態様において、該対象は、インフルエンザシーズン(例えば、通常、北半球の11月から4月)中に妊娠の可能性又はその予定がある個体である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべき対象は、1、2、3、4、5、6、7、又は8週間前に出産した女性である。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべきヒト対象は、インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス感染に起因する疾患の危険が高い任意の個体(例えば、免疫障害又は免疫不全個体)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス感染に起因する疾患の危険が高い個体(例えば、免疫障害又は免疫抑制個体)と密接に接触する任意の個体である。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべきヒト対象は、インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス感染に起因する合併症もしくは疾患に対する感受性を増大させる任意の疾病に罹患した個体である。他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物は、インフルエンザウイルス感染によって、個体が罹患するか又は個体が危険に暴露される別の疾病の合併症が増加する可能性を有する対象に投与される。特定の実施態様において、インフルエンザウイルス合併症に対する感受性を増大させる疾病、又はインフルエンザウイルスによってその疾病と関連する合併症が増加する疾病は、例えば、肺を侵す疾病、例えば、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、喘息、又は細菌感染症(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、及びトラコーマ病原体(Chlamydia trachomatus)によって引き起こされる感染症);心血管疾患(例えば、先天性心臓疾患、鬱血性心不全、及び冠動脈疾患);内分泌障害(例えば、糖尿病)、神経学的障害及びニューロン発達障害(例えば、脳、脊髄、末梢神経、及び筋肉の障害(例えば、脳性麻痺、癲癇(発作性疾患)、脳卒中、知的障害(例えば、精神遅滞)、筋ジストロフィー、及び脊髄損傷))である。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が投与されるべきヒト対象は、グループホーム、例えば、老人ホームに在住する個体である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、グループホーム、例えば、老人ホームで勤務するか、又はそこでかなりの時間を過ごす。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、医療従事者(例えば、医師又は看護士)である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、喫煙者である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物が投与されるべきヒト対象は、免疫障害又は免疫抑制を起こしている。
さらに、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物を投与することができる、インフルエンザの合併症を発症する危険が高い対象には、以下の者が含まれる:合併症の危険が高い者にインフルエンザウイルスを伝染させることができる個体、例えば、6カ月未満の乳児を含むことになる家族を含む、高リスク個体がいる家族の構成員、6カ月未満の乳児と接触する個体、又は老人ホームもしくは他の長期介護施設に住む個体と接触する個体;長期にわたる肺、心臓、又は循環障害を有する個体;代謝性疾患(例えば、糖尿病)を有する個体;腎臓障害を有する個体;血液障害(貧血又は鎌状赤血球症を含む)を有する個体;弱くなった免疫系(医薬品、悪性腫瘍、例えば、癌、臓器移植、又はHIV感染に起因する免疫抑制を含む)を有する個体;長期アスピリン療法を受けている(そのため、インフルエンザに感染した場合、ライ症候群を起こす可能性が高い)小児。
他の実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物の投与の対象には、以下の、生後6カ月以上の健康な個体が含まれる:4月から9月にかけて、例えば、熱帯地方及び南半球などの、インフルエンザの大発生が起こり得る外国及び地域に旅行する予定のある者;インフルエンザウイルスが循環している世界の地域から来た者を含む可能性がある大きな組織的観光団の一員として旅行する者;学校もしくは大学に通い、寄宿舎に住むか、もしくは施設環境に住む者;又は自分がインフルエンザで病気になる危険を減らしたい者。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物の投与が禁忌である対象には、インフルエンザワクチン接種が禁忌である以下の任意の個体が含まれる:生後6カ月未満の乳児;及び免疫原性製剤の生産で使用される卵、卵製品、又は他の成分に対してアナフィラキシー反応(ショックが続発することが多い呼吸困難を引き起こすアレルギー反応)を経験したことがある個体。ある実施態様において、本明細書に記載の活性化合物又は組成物の投与が、免疫原性製剤の生産で使用される1以上の成分のために(例えば、卵又は卵製品の存在のために)禁忌である場合、活性化合物又は組成物を、該活性化合物又は組成物の投与を禁忌にする成分を含まない方法で生産することができる(例えば、該活性化合物又は組成物を、卵又は卵製品を使用しないで生産することができる)。
いくつかの実施態様において、以下の患者集団の1つ又は複数に生ウイルスワクチンを投与しないことが望ましい場合がある:高齢者;生後6カ月未満の乳児;妊娠個体; 1歳未満の乳児; 2歳未満の小児; 3歳未満の小児; 4歳未満の小児; 5歳未満の小児; 20歳未満の成人; 25歳未満の成人; 30歳未満の成人; 35歳未満の成人; 40歳未満の成人; 45歳未満の成人; 50歳未満の成人; 70歳を超える高齢者; 75歳を超える高齢者; 80歳を超える高齢者; 85歳を超える高齢者; 90歳を超える高齢者; 95歳を超える高齢者;その年齢層でのアスピリン及び野生型インフルエンザウイルス感染と関連する合併症が理由で、アスピリンもしくはアスピリン含有医薬品を服用している小児及び若者(2〜17歳);喘息又は他の反応性気道疾患の病歴がある個体;重度のインフルエンザ感染の素因となり得る慢性の医学的基礎疾患を有する個体;ギランバレー症候群の病歴がある個体;発熱を伴う急性の重篤な疾患を有する個体;又は中程度もしくは重度の病気である個体。そのような個体については、本明細書に記載の不活化ウイルスワクチン、スプリットウイルスワクチン、サブユニットワクチン、ウイロソーム、ウイルス様粒子、又は非ウイルスベクターの投与が好ましい場合がある。ある実施態様において、生ウイルスワクチンを投与することが好ましい対象には、2〜17歳の健康な小児及び若者、並びに18〜49歳の健康な成人が含まれ得る。
ある実施態様において、生ウイルスベクターを含む免疫原性製剤は、他の生ウイルスワクチンと同時に投与されない。
(5.12 投与様式)
(5.12.1 送達経路)
本明細書に記載の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、種々の経路によって対象に送達することができる。これらには、鼻腔内、気管内、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、結膜内、及び皮下経路が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、組成物は、局所投与用に、例えば、皮膚への塗布用に製剤化される。具体的な実施態様において、投与経路は、例えば、鼻スプレーの一部としての、鼻腔内へのものである。ある実施態様において、組成物は、筋肉内投与用に製剤化される。いくつかの実施態様において、組成物は、皮下投与用に製剤化される。ある実施態様において、組成物は、注射による投与用には製剤化されない。生ウイルスワクチンのための具体的な実施態様において、ワクチンは、注射以外の経路による投与用に製剤化される。
例えば、抗原が、ウイルスベクター、ウイルス様粒子ベクター、又は細菌ベクターである場合、ベクターが由来する骨格ウイルス又は細菌の天然の感染経路から免疫原性組成物を導入することが好ましいと考えられる。或いは、ポリペプチドが由来するインフルエンザウイルスの天然の感染経路から本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを導入することが好ましい場合がある。激しい分泌性及び細胞性免疫応答を誘導する抗原、特に、ウイルスベクターの能力を有利に使用することができる。例えば、ウイルスベクターによる気道の感染は、インフルエンザウイルスからの防御を同時に伴って、例えば、泌尿器系での強い分泌性免疫応答を誘導することができる。さらに、好ましい実施態様において、任意の好適な経路によって医薬組成物を肺に導入することが望ましい場合がある。肺投与は、例えば、吸入器又はネブライザー、及び噴霧剤として使用するためのエアゾール化剤を含む製剤の使用によって利用することもできる。
具体的な実施態様において、サブユニットワクチンは、筋肉内投与される。別の実施態様において、生インフルエンザウイルスワクチンは、鼻腔内投与される。別の実施態様において、不活化インフルエンザウイルスワクチン又はスプリットインフルエンザウイルスワクチンは、筋肉内投与される。別の実施態様において、ウイルス様粒子又はその組成物は、筋肉内投与される。
いくつかの実施態様において、インビトロで本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドで刺激された細胞は、当業者に公知の技術を用いて対象に導入(又は再導入)することができる。いくつかの実施態様において、該細胞は、真皮内に、真皮下に、又は末梢血流中に導入することができる。いくつかの実施態様において、対象に導入される細胞は、有害な免疫応答を回避するために、その対象に由来する細胞であることが好ましい。他の実施態様において、同様の免疫バックグラウンドを有するドナー宿主に由来する細胞を使用することもできる。有害な免疫原性応答を回避するように設計されたものを含む、他の細胞を使用することもできる。
(5.12.2 投薬量及び投与頻度)
インフルエンザウイルス感染又はインフルエンザウイルス疾患の治療及び/又は予防で有効である活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物の量は疾患の性質によって決まり、標準的な臨床技術によって決定することができる。
製剤で使用すべき正確な用量は、投与経路、及び感染又はそれに起因する疾患の重篤度によっても決まり、臨床医の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。例えば、有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態(年齢、体重、健康を含む)、患者がヒトであるか動物であるかということ、投与される他の医薬品、及び治療が予防的であるか治療的であるかということによって異なり得る。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。治療投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために最適に調節される。
ある実施態様において、最適な投薬量範囲の特定を助けるために、インビトロアッセイが利用される。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得られる用量応答曲線から推定することができる。
本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする核酸の例示的な用量の範囲は、患者1人当たり、約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mg、又は30〜300μgの核酸、例えば、DNAである。
ある実施態様において、(例えば、スプリットウイルスワクチン及びサブユニットワクチン中に提供される)本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの例示的な用量の範囲は、患者1キログラム当たり、約0.5μg〜1.0μg、1.0μg〜2.0μg、2.0μg〜5.0μg、5.0μg〜10μg、15μg〜25μg、25μg〜50μg、50μg〜100μg、100μg〜500μg、又は500μg〜1.0mgのキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドである。他の実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの例示的な用量の範囲は、1用量当たり、約0.5μg〜1.0μg、1.0μg〜2.0μg、2.0μg〜5.0μg、5.0μg〜10μg、15μg〜25μg、25μg〜50μg、50μg〜100μg、100μg〜500μg、250μg〜500μg、500μg〜1.0mg、又は750μg〜1mgのキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドであり、必要とされるだけの間隔で、1回、2回、3回、又は4回以上、対象に投与することができる。
感染性ウイルスベクターの用量は、1用量当たり、ビリオン数が10〜100個、又はそれより多くまで様々であることができる。いくつかの実施態様において、ウイルスベクターの好適な投薬量は、102、5×102、103、5×103、104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011、又は1012pfuであり、必要とされるだけの間隔で、1回、2回、3回、又はそれより多くの回数、対象に投与することができる。
ある実施態様において、VLPの例示的な用量の範囲は、患者1キログラム当たり、約0.01μg〜約100mg、約0.1μg〜約100mg、約5μg〜約100mg、約15μg〜約50mg、約15μg〜約25mg、約15μg〜約10mg、約15μg〜約5mg、約15μg〜約1mg、約15μg〜約100μg、約15μg〜約75μg、約5μg〜約50μg、約10μg〜約50μg、約15μg〜約45μg、約20μg〜約40μg、又は約25〜約35μgである。
一実施態様において、不活化ワクチンは、それが約5μg〜約50μg、約10μg〜約50μg、約15μg〜約100μg、約15μg〜約75μg、約15μg〜約50μg、約15μg〜約30μg、約20μg〜約50μg、約25μg〜約40μg、約25μg〜約35μgのキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含むように製剤化される。
ある実施態様において、活性化合物、すなわち、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞、又は組成物は、単一用量として1回、対象に投与される。例えば、過去にインフルエンザに暴露されたことがない対象(例えば、高齢対象)は、本明細書に記載の活性化合物又はその組成物の複数回の投与を必要とする場合があるのではなく、むしろ、本明細書に記載の活性化合物又はその組成物による単回免疫でワクチン接種が十分である場合がある。或いは、過去にインフルエンザに暴露されたことがない対象(例えば、高齢対象)は、本明細書に記載の活性化合物又はその組成物の複数回の投与を必要とする場合があるが、ワクチン接種が十分となるために、未感作の対象(すなわち、過去にインフルエンザに暴露されたことがない対象)が必要とするほどは、そのような投与を必要としない場合がある。したがって、ある実施態様において、未感作の対象は、本明細書に記載の活性化合物又はその組成物による第一の免疫(例えば、初回免疫)、次いで、本明細書に記載の活性化合物又はその組成物による1回、2回、又はそれより多くの回数のさらなる免疫(例えば、追加免疫)を必要とする場合がある。
具体的な実施態様において、対象に、本明細書に記載の複数の活性化合物又はその組成物が連続して(例えば、免疫レジメンの一部として)投与される場合、後続の投与(すなわち、第一の投与の後に行われる投与)で使用される活性化合物又はその組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、第一の投与で使用される活性化合物又はその組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドと異なっている。具体的な実施態様において、後続の投与で使用される活性化合物又はその組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、第一の投与で使用される活性化合物又はその組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドと異なる球状ヘッドドメインを含むが、第一の投与で使用される活性化合物又はその組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドと同じHAステムドメインを含むが、同じHAステムドメインを含む。具体的な実施態様において、後続の投与で使用される活性化合物又はその組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、第一の投与で使用される活性化合物又はその組成物のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドと異なる球状ヘッドドメイン及び異なるHAステムドメインを含む。
ある実施態様において、活性化合物又は組成物(例えば、活性化合物を含む組成物)は、単一用量として、次いで3〜6週間後に第二の用量として、対象に投与される。ある実施態様において、活性化合物又は組成物は、単一用量として、次いで3〜6週間後に第二の用量として、対象に投与され、次いで3〜6週間後に、第三の用量が投与される。ある実施態様において、第二及び/又は第三の投与は、異なる活性化合物又は組成物を利用することができる。具体的な実施態様において、投与される活性化合物又は組成物中の各々のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの球状ヘッドドメインは、互いに異なっており、例えば、第一及び第二の、又は第一、第二、及び第三の投与は、各々、異なる活性化合物又は組成物を使用し、ここで、投与される各々の活性化合物又は組成物中のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの少なくとも球状ヘッドドメインは異なっている。これらの実施態様に従って、2回目の接種の後に、例えば、3〜6カ月、6〜9カ月、又は6〜12カ月間隔で、追加免疫接種を対象に投与することができる。ある実施態様において、追加免疫接種は、異なる活性化合物又は組成物を利用することができる。ある実施態様において、第一の(初回免疫)投与は、全長血球凝集素もしくはその断片(又はそれらをコードする核酸)を含み、第二の(追加免疫)投与は、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド(或いはそれをコードする核酸、それを含むVLP、又はそれを発現するウイルスもしくは細菌)の投与を含む。いくつかの実施態様において、同じ活性化合物又は組成物の投与を繰り返すことができ、投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月の間隔を空けることができる。ある実施態様において、活性化合物又は組成物は、単一用量として1年に1回、対象に投与される。
小児への投与のための具体的な実施態様において、少なくとも1カ月間隔で与えられる、2用量の活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物が小児に投与される。成人への投与のための具体的な実施態様において、単一用量が与えられる。別の実施態様において、少なくとも1カ月間隔で与えられる、2用量の活性化合物又は組成物が成人に投与される。別の実施態様において、若年小児(6カ月〜9歳)には、1カ月間隔で与えられる2用量の活性化合物又は組成物を初めて投与することができる。特定の実施態様において、その最初のワクチン接種の年に1用量だけ投与された小児には、その翌年に2用量が投与されるべきである。いくつかの実施態様において、インフルエンザワクチン、例えば、本明細書に記載の免疫原性製剤を初めて投与される2〜8歳の小児には、4週間の間隔で投与される2用量が好ましい。ある実施態様において、3歳を超える対象に好ましい場合がある0.5mlとは対照的に、生後6〜35カ月の小児には、半用量(0.25ml)が好ましい場合がある。
具体的な実施態様において、ヒト乳児への投与のために、2用量の本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドもしくはその組成物及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つもしくは複数を乳児に投与し、ここで、第一の用量で使用されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、第二の用量で使用されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインと異なる株又は亜型由来のものである。第一及び第二の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。
具体的な実施態様において、ヒト乳児への投与のために、3用量の本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドもしくはその組成物及び/又は本明細書に記載の核酸、ベクター、VLP、もしくはウイロソームのうちの1つもしくは複数を乳児に投与し、ここで、第一、第二、及び第三の用量で使用されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのインフルエンザウイルス血球凝集素ヘッドドメインは、インフルエンザウイルスの異なる株又は亜型由来のものである。第一、第二、及び第三の投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月隔てることができる。
特定の実施態様において、活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチド含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、そのようなポリペプチドで刺激された細胞)又は組成物は、秋又は冬に、すなわち、各半球のインフルエンザシーズンの前又はその期間中に、対象に投与される。一実施態様において、第二の用量をインフルエンザシーズンのピークの前に与えることができるように、小児には、該シーズンの初め、例えば、北半球で9月下旬又は10月初旬に第一の用量が投与される。
抗体(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを用いて作製及び/又は同定された抗体)による受動免疫について、投薬量の範囲は、患者の体重1kg当たり、約0.0001〜100mg、より一般的には0.01〜5mgである。例えば、投薬量は、体重1kg当たり、1mgもしくは10mg又は1〜10mgの範囲、つまり、70kgの患者の場合、それぞれ、70mgもしくは700mg又は70〜700mgの範囲であることができる。例示的な治療レジメンは、1年もしくは数年の間、又は数年間隔で、2週間毎に1回、又は月に1回、又は3〜6カ月毎に1回の投与を必要とする。いくつかの方法において、異なる結合特異性を有する2以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、その場合、投与される各抗体の投薬量は示された範囲に含まれる。抗体は、通常、複数の機会に投与される。単一の投薬の間隔は、毎週、毎月、又は毎年であることができる。間隔は、患者でキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の血液レベルを測定することにより示されるように、不規則であることもできる。
(5.13 生物学的アッセイ)
(5.13.1 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの活性を試験するためのアッセイ)
本明細書に開示されるベクターでキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの発現を試験するためのアッセイは、当技術分野で公知の任意のアッセイを用いて実施することができる。例えば、ウイルスベクターへの組込みについてのアッセイは、ウイルスを増殖させること、ショ糖クッションに通す遠心分離によってウイルス粒子を精製すること、及び当技術分野で周知の方法を用いる免疫アッセイ、例えば、ウェスタンブロットによるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド発現についてのその後の解析を含む。血球凝集素ポリペプチドがキメラであるかどうかを判定する方法は当業者に公知であり、かつ本明細書に記載されている。
一実施態様において、本明細書に開示されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、当技術分野で公知の抗体抗原相互作用についての任意のアッセイを用いて、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、例えば、該ポリペプチドのストーク領域に対する中和抗体に特異的に結合するその能力を試験することにより、適切なフォールディング及び機能性についてアッセイされる。そのようなアッセイで使用される中和抗体には、例えば、Ekiertらの文献、2009, Science Express, 2009年2月26日; Kashyapらの文献、2008, Proc Natl Acad Sci USA 105: 5986-5991; Suiらの文献、2009, Nature Structural and Molecular Biology, 16:265-273; Wangらの文献、2010, PLOS Pathogens 6(2): 1-9;米国特許第5,589,174号、第5,631,350号、第6,337,070号、及び第6,720,409号;国際公開WO 2007/134237号として公開された国際出願PCT/US2007/068983号;国際公開WO 2009/036157号として公開された国際出願PCT/US2008/075998号;国際公開WO 2008/028946号として公開された国際出願PCT/EP2007/059356号;及び国際公開WO 2009/079259号として公開された国際出願PCT/US2008/085876号に記載されている中和抗体が含まれる。これらの抗体には、とりわけ、CR6261、CR6325、CR6329、CR6307、CR6323、2A、D7、D8、F10、G17、H40、A66、D80、E88、E90、H98、C179(FERM BP-4517)、AI3C(FERM BP-4516)、CR8114、CR8020(Ekiertらの文献、2011. Science. 333(6044): 843-850)、FI6(Cortiらの文献、2011. Science. 333(6044) 850-856, DOI: 10.1126/science.1205669)、B型インフルエンザウイルスストークmAbである3A2、10C4、又は5A7(Yasugiらの文献、2013. PLoS Pathog. 9(2): e1003150)が含まれる。
別の実施態様において、本明細書に開示されるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、例えば、NMR、X線結晶学的方法、又は二次構造予測法、例えば、円二色性などの、当技術分野で公知の任意の方法を用いるキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの構造又は立体構造の決定により、適切なフォールディングについてアッセイされる。
(5.13.2 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを用いて作製された抗体の活性を試験するためのアッセイ)
本明細書に記載の抗体は、当業者に公知の種々の方法(例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴ディスプレイ(BIAcore)、ウェスタンブロット、免疫蛍光、免疫染色、及び/又は微量中和アッセイ)で特徴付けることができる。いくつかの実施態様において、抗体は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド、又は該ポリペプチドを含むベクターに特異的に結合する能力についてアッセイされる。そのようなアッセイは、溶液中で(例えば、Houghtenの文献、1992, Bio/Techniques 13:412 421)、ビーズ表面で(Lamの文献、1991, Nature 354:82 84)、チップ表面で(Fodorの文献、1993, Nature 364:555 556)、細菌を用いて(米国特許第5,223,409号)、胞子を用いて(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号;及び第5,223,409号)、プラスミドを用いて(Cullらの文献、1992, Proc Natl. Acad. Sci. USA 89:1865 1869)、又はファージを用いて(Scott及びSmithの文献、1990, Science 249:386 390; Cwirlaらの文献、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378 6382;及びFeliciの文献、1991, J. Mol. Biol. 222:301 310)実施することができる(これらの参考文献の各々は、引用により完全に本明細書中に組み込まれている)。
キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の特異的結合及び他の抗原との交差反応性は、当技術分野で公知の任意の方法により評価することができる。特異的結合及び交差反応性を解析するために使用することができる免疫アッセイには、少し例を挙げれば、ウェスタンブロット、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどの技術を用いる、競合的及び非競合的アッセイ系が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアッセイはルーチンであり、かつ当技術分野で周知である(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Ausubelら編の文献、1994、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第1巻、John Wiley & Sons社, New York参照)。
キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の結合親和性及び抗体抗原相互作用の解離速度は、競合的結合アッセイにより決定することができる。競合的結合アッセイの一例は、漸増する量の非標識抗原の存在下での標識抗原(例えば、3H又は125I)と関心対象の抗体とのインキュベーション、及び標識抗原に結合した抗体の検出を含む放射性免疫アッセイである。キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体の親和性及び結合解離速度は、スキャッチャードプロット解析によるデータから決定することができる。二次抗体との競合も放射性免疫アッセイを用いて決定することができる。この場合、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、漸増する量の非標識二次抗体の存在下で、標識化合物(例えば、3H又は125I)にコンジュゲートした試験抗体とともにインキュベートされる。
ある実施態様において、抗体結合親和性及び速度定数は、KinExA 3000システム(Sapidyne Instruments, Boise, ID)を用いて測定される。いくつかの実施態様において、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore動態)解析を用いて、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに対する抗体の結合及び解離速度を決定する。BIAcore動態解析は、その表面にキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する抗体が固定されたチップからのキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドの結合及び解離を解析することを含む。典型的なBIAcore動態試験は、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドが固定されているセンサーチップ表面への、0.005%のTween20を含むHBSバッファー中の様々な濃度の250μLの抗体試薬(mAb、Fab)の注入を含む。流速は、75μL/分で一定に保たれる。解離データは、必要に応じて15分間又はそれよりも長い間回収される。各々の注入/解離サイクルの後、結合抗体は、希酸、通常、10〜100mM HClの短い1分間の投入を用いて、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド表面から除去されるが、状況が許せば、他の再生剤が利用される。より具体的には、結合速度kon及び解離速度koffの測定のために、ポリペプチドを、標準的なアミンカップリング化学、すなわち、EDC/NHS法(EDC=N-ジエチルアミノプロピル)-カルボジイミド)を用いて、センサーチップ表面に直接固定する。簡潔に述べると、pH4又はpH5の10mM NaOAc中のポリペプチドの5〜100nM溶液を調製し、約30〜50RU相当のポリペプチドが固定されるまで、EDC/NHS活性化表面に流す。この後、1MのEt-NH2を注入して、未反応の活性エステルの「キャップ」を外す。参照目的のために、同一の固定条件下で、ポリペプチドを含まないブランク表面を調製する。適当な表面が調製されたら、抗体試薬のそれぞれの好適な希釈系列をHBS/Tween-20中に調製し、直列につながれたポリペプチドセル表面と参照セル表面の両方に流す。調製される抗体濃度の範囲は、平衡結合定数KDの推定値によって異なる。上記のように、結合した抗体は、適当な再生剤を用いて、各注入/解離サイクル後に除去される。
抗体の中和活性は、当業者に公知の任意のアッセイを用いて決定することができる。本明細書に記載の抗体は、当業者に公知の技術を用いて、その宿主細胞受容体(すなわち、シアル酸)へのインフルエンザウイルス、又はキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む任意の他の組成物(例えば、VLP、リポソーム、もしくは洗剤抽出物)の結合を阻害するその能力についてアッセイすることができる。例えば、インフルエンザウイルス受容体を発現する細胞を、抗体の存在下又は非存在下で、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物と接触させることができ、抗原の結合を阻害する抗体の能力を、例えば、フローサイトメトリー又はシンチレーションアッセイにより測定することができる。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物、又は抗体を、検出可能な化合物、例えば、放射性標識(例えば、32P、35S、及び125I)又は蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、及びフルオレサミン)で標識して、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物と細胞受容体との間の相互作用の検出を可能にすることができる。或いは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドがその受容体に結合するのを阻害する抗体の能力を無細胞アッセイで決定することができる。例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物を抗体と接触させることができ、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物が細胞受容体に結合するのを阻害する抗体の能力を決定することができる。具体的な実施態様において、抗体を固体支持体上に固定し、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを含む組成物を検出可能な化合物で標識する。或いは、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む組成物を固体支持体上に固定し、抗体を検出可能な化合物で標識する。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドが細胞受容体に結合するのを阻害する抗体の能力は、対照(例えば、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドが細胞受容体に結合するのを阻害することが知られている抗体)と比べた抗体の結合阻害率を評価することにより決定される。
他の実施態様において、本明細書に記載の方法で使用するのに好適な抗体は、インフルエンザウイルスの受容体結合を阻害しないが、それでもなお本明細書に記載のアッセイで中和することが分かっている。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って使用するのに好適な抗体は、当技術分野で公知又は本明細書に記載のアッセイでウイルスと宿主膜との融合を低下させるか、又はそれを阻害する。
一実施態様において、ウイルスと宿主膜との融合は、レポーターを含むインフルエンザウイルスと、該ウイルスに感染させることができる宿主細胞とを用いるインビトロアッセイでアッセイされる。レポーター活性が、陰性対照(例えば、対照抗体の存在下又は抗体の非存在下でのレポーター活性)と比較して阻害されるか又は低下する場合、抗体は融合を阻害する。
一実施態様において、ウイルスと宿主膜との融合は、細胞融合のモデル系を用いて検出される。例示的な細胞融合アッセイにおいて、細胞(例えば、HeLa細胞)に、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードするプラスミドをトランスフェクトし、抗体の存在下でキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド融合機能を可能にする緩衝液(例えば、pH 5.0の緩衝液)に接触及び暴露させる。抗体は、それが陰性対照(例えば、対照抗体の存在下又は抗体の非存在下でのシンシチウム形成)と比較してシンシチウム形成を低下させるか又は阻害する場合、中和性である。
他の実施態様において、ウイルスと宿主膜との融合は、インビトロでのリポソームに基づくアッセイを用いてアッセイされる。例示的なアッセイにおいて、宿主細胞受容体は、レポーターの半分を含むリポソームへと再構築される。本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドは、レポーターのもう半分を含む別の組のリポソームへと再構築される。2つのリポソーム集団を一緒に混合すると、融合は、レポーターの再構成、例えば、比色定量的に検出することができる酵素反応により検出される。レポーター活性が、抗体の非存在下又は対照抗体の存在下で行われるアッセイでのレポーター活性と比較して低下するか又は阻害される場合、抗体は融合を阻害する。ある実施態様において、融合を阻害する抗体の能力は、対照の存在下での融合率と比べた抗体の存在下での融合率を評価することにより決定される。
(5.13.3 刺激された細胞の活性を試験するためのアッセイ)
本明細書に記載の方法に従って刺激された細胞は、例えば、関心対象のポリヌクレオチド又は遺伝子(複数可)の組込み、転写、及び/又は発現、組み込まれた遺伝子のコピー数、並びに組込みの位置について解析することができる。そのような解析は、いつでも実施することができ、かつ当技術分野で公知の任意の方法により実施することができる。他の実施態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドによる標的細胞の刺激の成功は、当技術分野で公知又は本明細書に記載の方法を用いて、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する中和抗体の産生を検出することにより決定される。
ある実施態様において、刺激された細胞、例えば、DCが投与される対象を、細胞の位置、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドをコードする、ベクターによって送達されるポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現、免疫応答(例えば、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドに対する中和抗体の産生)の刺激について解析し、及び/又は当技術分野で公知もしくは本明細書に記載の任意の方法によって、インフルエンザウイルス感染もしくはそれと関連する疾患と関連する症状についてモニタリングすることができる。
レポーターアッセイを用いて、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドのターゲッティングの特異性を決定することができる。例えば、骨髄細胞の混合集団を対象から取得し、インビトロで培養することができる。キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを骨髄細胞の混合集団に投与することができ、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドと関連するレポーター遺伝子の発現を培養細胞でアッセイすることができる。いくつかの実施態様において、混合細胞集団中の刺激された細胞の少なくとも約50%、より好ましくは、少なくとも約60%、70%、80%、又は90%、さらにより好ましくは、少なくとも約95%は、樹状細胞である。
(5.13.4 抗ウイルス活性アッセイ)
本明細書に記載の抗体又はその組成物は、抗ウイルス活性についてインビトロで評価することができる。一実施態様において、抗体又はその組成物は、インフルエンザウイルスの増殖に対するその効果についてインビトロで試験される。インフルエンザウイルスの増殖は、当技術分野で公知又は本明細書に記載の任意の方法により(例えば、細胞培養で)評価することができる。具体的な実施態様において、細胞は、0.0005及び0.001、0.001及び0.01、0.01及び0.1、0.1及び1、もしくは1及び10のMOI、又は0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、もしくは10のMOIで感染させられ、補充された無血清培地とともにインキュベートされる。ウイルス力価は、血球凝集素プラーク又は本明細書に記載の任意の他のウイルスアッセイにより上清中で決定される。ウイルス力価を評価することができる細胞としては、EFK-2細胞、Vero細胞、MDCK細胞、初代ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、H292ヒト上皮細胞株、及びHeLa細胞が挙げられるが、これらに限定されない。インビトロアッセイには、当技術分野で周知又は本明細書に記載の方法を用いて、インビトロで、培養細胞におけるウイルス複製の変化(例えば、プラーク形成により決定される)、或いはウイルスタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット解析により決定される)又はウイルスRNAの産生(例えば、RT-PCRもしくはノーザンブロット解析により決定される)を測定するものが含まれる。
非限定的な例において、標的哺乳動物細胞株の単層を様々な量(例えば、3プラーク形成単位(pfu)又は5pfuの多重度)のウイルス(例えば、インフルエンザ)に感染させ、その後、様々な希釈の抗体(例えば、0.1μg/ml、1μg/ml、5μg/ml、又は10μg/ml)の存在下又は非存在下で培養する。感染した培養物を感染から48時間後又は72時間後に回収し、適当な標的細胞株(例えば、Vero細胞)に対する当技術分野で公知の標準的なプラークアッセイにより力価を測定する。
血球凝集アッセイの非限定的な例において、細胞を抗体と接触させ、同時に又はその後(例えば、1のMOIで)ウイルスに感染させ、ウイルス複製を可能にする条件下で(例えば、20〜24時間)ウイルスをインキュベートする。抗体は、感染の全過程で存在することが好ましい。次に、ウイルスの複製及びウイルス粒子の放出を、0.5%のニワトリ赤血球を用いる血球凝集アッセイにより決定する。例えば、Kashyapらの文献、PNAS USA 105:5986-5991を参照されたい。いくつかの実施態様において、化合物は、それが、ウイルス力価の約75%低下に相当する少なくとも2ウェルのHAだけウイルスの複製を低下させる場合、ウイルス複製の阻害剤とみなされる。具体的な実施態様において、阻害剤は、このアッセイで、ウイルス力価を50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上低下させる。他の具体的な実施態様において、阻害剤は、対象におけるインフルエンザウイルス力価の約1log以上、約2log以上、約3log以上、約4log以上、約5log以上、約6log以上、約7log以上、約8log以上、約9log以上、約10log以上、1〜3log、1〜5log、1〜8log、1〜9log、2〜10log、2〜5log、2〜7log、2log〜8log、2〜9log、2〜10log、3〜5log、3〜7log、3〜8log、3〜9log、4〜6log、4〜8log、4〜9log、5〜6log、5〜7log、5〜8log、5〜9log、6〜7log、6〜8log、6〜9log、7〜8log、7〜9log、又は8〜9logの低下をもたらす。インフルエンザウイルス力価のlog低下は、陰性対照と比較したもの、別の処置と比較したもの、又は抗体投与前の患者における力価と比較したものであることができる。
(5.13.5 細胞毒性アッセイ)
当技術分野で周知の多くのアッセイを用いて、活性化合物又はその組成物への暴露後の細胞(感染もしくは未感染)又は細胞株の生存率を評価し、それにより、該化合物又は組成物の細胞毒性を決定することができる。例えば、細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込み(例えば、Hoshinoらの文献、1986, Int. J. Cancer 38, 369; Campanaらの文献、1988, J. Immunol. Meth. 107:79参照)、(3H)チミジンの取込み(例えば、Chen, J.の文献、1996, Oncogene 13:1395-403; Jeoung, J.の文献、1995, J. Biol. Chem. 270:18367 73参照)を測定することによるか、直接的な細胞カウントによるか、又は既知の遺伝子、例えば、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)もしくは細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、Eなど)の転写、翻訳、もしくは活性の変化を検出することによりアッセイすることができる。そのようなタンパク質及びmRNA及び活性のレベルは、当技術分野で公知の任意の方法により決定することができる。例えば、市販の抗体を含む抗体を用いる公知の免疫診断方法、例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、又は免疫沈降により、タンパク質を定量することができる。当技術分野で周知かつルーチンの方法を用いて、例えば、ノーザン解析、RNアーゼ保護、又は逆転写と関連するポリメラーゼ連鎖反応を用いて、mRNAを定量することができる。細胞生存率は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞生死マーカーを用いて評価することができる。具体的な実施態様において、細胞のATPレベルを測定して、細胞生存率を決定する。
具体的な実施態様において、細胞生存率は、細胞内ATPレベルを測定する、当技術分野で標準的なアッセイ、例えば、CellTiter-Gloアッセイキット(Promega)を用いて、3日及び7日の期間で測定される。細胞ATPの低下は、細胞毒性効果を示すものである。別の具体的な実施態様において、細胞生存率は、ニュートラルレッド取込みアッセイで測定することができる。他の実施態様において、形態変化の目視観察には、肥大、粒状度、ギザギザの縁を有する細胞、薄膜状の外観、円形化、ウェル表面からの剥離、又は他の変化が含まれ得る。こうした変化には、観察された細胞毒性の程度に従って、T(100%毒性)、PVH(部分的毒性-非常に強い-80%)、PH(部分的毒性-強い-60%)、P(部分的毒性-40%)、Ps(部分的毒性-わずか-20%)、又は0(毒性なし-0%)という呼称が与えられる。50%細胞阻害(細胞毒性)濃度(IC50)は、これらのデータの回帰分析により決定される。
具体的な実施態様において、細胞毒性アッセイで使用される細胞は、初代細胞及び細胞株を含む動物細胞である。いくつかの実施態様において、細胞はヒト細胞である。ある実施態様において、細胞毒性は、以下の細胞株のうちの1つ又は複数で評価される: U937、ヒト単球細胞株;初代末梢血単核細胞(PBMC); Huh7、ヒト肝芽細胞腫細胞株; 293T、ヒト胚性腎細胞株;及びTHP-1、単球細胞。ある実施態様において、細胞毒性は、以下の細胞株のうちの1つ又は複数で評価される: MDCK、MEF、Huh 7.5、Detroit、又はヒト気管気管支上皮(HTBE)細胞。
活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物は、動物モデルでインビボ毒性について試験することができる。例えば、活性化合物の活性を試験するために使用される、本明細書に記載の動物モデル及び/又は当技術分野で公知の他のものを用いて、これらの化合物のインビボ毒性を決定することもできる。例えば、動物に様々な濃度の活性化合物を投与する。その後、該動物を、致死率、体重減少もしくは体重増加失敗、及び/又は組織損傷を示し得る血清マーカーのレベル(例えば、全般的な組織損傷の指標としてのクレアチンホスホキナーゼレベル、肝損傷の可能性の指標としてのグルタミン酸シュウ酸トランスアミナーゼ又はピルビン酸トランスアミナーゼのレベル)について経時的にモニタリングする。これらのインビボアッセイは、投薬量の他に、様々な投与様式及び/又はレジメンの毒性を試験するように適合させることができる。
活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)の毒性及び/又は効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、それは、比LD50/ED50と表すことができる。大きい治療指数を示す活性化合物が好ましい。毒性のある副作用を示す活性化合物を使用してもよいが、感染していない細胞に対する潜在的な損傷を最小限に抑え、それにより、副作用を軽減するために、そのような薬剤を罹患組織の部位にターゲッティングする送達系を設計するよう、注意を払うべきである。
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトで使用するための活性化合物の投薬量の範囲を定める際に使用することができる。そのような薬剤の投薬量は、循環濃度の範囲内にあることが好ましく、この範囲には、ほとんど又は全く毒性のないED50が含まれる。投薬量は、利用される剤形及び利用される投与経路によって、この範囲内で異なり得る。本明細書に記載の方法で使用される任意の活性化合物について、有効用量を、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量を動物モデルで定めて、循環血漿濃度範囲を得ることができ、この循環血漿濃度範囲には、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)が含まれる。そのような情報を用いて、ヒトでの有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。投薬量の決定に関するさらなる情報が本明細書に提供される。
さらに、当業者に公知の任意のアッセイを用いて、例えば、ウイルス感染又はそれと関連する状態もしくは症状を測定することにより、本明細書に記載の活性化合物及び組成物の予防的及び/又は治療的有用性を評価することができる。
(5.13.6 インビボでの抗ウイルス活性)
活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)及びその組成物は、ヒトで使用する前に所望の治療的又は予防的活性についてインビボでアッセイすることができる。例えば、インビボアッセイを用いて、活性化合物もしくはその組成物及び/又は別の療法を投与することが好ましいかどうかを決定することができる。例えば、インフルエンザウイルス疾患を予防するための活性化合物又はその組成物の使用を評価するために、動物をインフルエンザウイルスに感染させる前に、組成物を投与することができる。或いは、又はさらに、動物をインフルエンザウイルスに感染させるのと同時に、活性化合物又はその組成物を動物に投与することができる。インフルエンザウイルス感染又はそれと関連する疾患を治療するための活性化合物又はその組成物の使用を評価するために、動物をインフルエンザウイルスに感染させた後に、化合物又は組成物を投与することができる。具体的な実施態様において、活性化合物又はその組成物は、動物に複数回投与される。
活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)及びその組成物は、限定されないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、フェレット、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、モルモットなどを含む動物モデル系で、抗ウイルス活性について試験することができる。具体的な実施態様において、活性化合物及びその組成物は、マウスモデル系で試験される。そのようなモデル系は広く使用されており、かつ当業者に周知である。具体的な実施態様において、活性化合物及びその組成物は、マウスモデル系で試験される。インフルエンザウイルスのための動物モデルの非限定的な例がこの節で提供される。
一般に、動物をインフルエンザウイルスに感染させ、同時に又はその後に、活性化合物もしくはその組成物、又はプラセボで処置する。或いは、動物を、活性化合物もしくはその組成物、又はプラセボで処置し、その後、インフルエンザウイルスに感染させる。これらの動物から得られる試料(例えば、血清、尿、喀痰、精液、唾液、血漿、又は組織試料)は、当技術分野で周知の方法、例えば、ウイルス力価の変化(例えば、プラーク形成により決定される)、ウイルスタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、もしくはフローサイトメトリー解析により決定される)、又はウイルス核酸の産生(例えば、RT-PCRもしくはノーザンブロット解析により決定される)を測定する方法により、ウイルス複製について試験することができる。組織試料中のウイルスの定量のために、組織試料を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でホモジナイズし、清澄化されたホモジネートの希釈物を、細胞(例えば、Vero、CEF、又はMDCK細胞)の単層表面に37℃で1時間吸着させる。他のアッセイにおいて、組織病理学的評価、好ましくは、ウイルスが感染の標的にすることが知られている器官(複数可)の評価を感染後に実施する。ウイルス特異的モノクローナル抗体を用いて、ウイルス免疫組織化学検査を実施することができる。
活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象におけるウイルスの力価、活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象の生存期間、活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象における免疫応答、活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象における症状の数、持続時間、及び/もしくは重症度、並びに/又は活性化合物もしくはその組成物が投与される感染対象における1以上の症状の開始までの時間が評価されるインビボアッセイを用いて、ウイルスの病原性に対する活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物の効果を決定することもできる。当業者に公知の技術を用いて、そのような効果を測定することができる。ある実施態様において、活性化合物又はその組成物は、未処置の対象と比べて、0.5倍、1倍、2倍、4倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、125倍、150倍、175倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、もしくは1,000倍、又はそれより大きいインフルエンザウイルスの力価の低下をもたらす。いくつかの実施態様において、活性化合物又はその組成物は、未処置の対象と比べて、約1log以上、約2log以上、約3log以上、約4log以上、約5log以上、約6log以上、約7log以上、約8log以上、約9log以上、約10log以上、1〜3log、1〜5log、1〜8log、1〜9log、2〜10log、2〜5log、2〜7log、2log〜8log、2〜9log、2〜10log、3〜5log、3〜7log、3〜8log、3〜9log、4〜6log、4〜8log、4〜9log、5〜6log、5〜7log、5〜8log、5〜9log、6〜7log、6〜8log、6〜9log、7〜8log、7〜9log、又は8〜9logのインフルエンザウイルスの力価の低下をもたらす。
インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤の試験用に開発された、インフルエンザウイルス動物モデル、例えば、フェレット、マウス、モルモット、リスザル、マカク、及びニワトリが記載されている。例えば、Sidwellらの文献、Antiviral Res., 2000, 48:1-16; Lowen A.C.らの文献、PNAS., 2006, 103:9988-92;及びMcCauleyらの文献、Antiviral Res., 1995, 27:179-186及びRimmelzwannらの文献、Avian Diseases, 2003, 47:931-933を参照されたい。インフルエンザのマウスモデルについて、インフルエンザ感染マウスに投与される活性化合物の抗ウイルス活性をアッセイするために使用することができるパラメータの非限定的な例としては、肺炎関連死、血清α1酸糖タンパク増加、動物体重、血球凝集素によりアッセイされる肺ウイルス、プラークアッセイによりアッセイされる肺ウイルス、及び肺の組織病理学的変化が挙げられる。統計解析を実施して、有意性(例えば、0.05以下のP値)を計算する。
他のアッセイにおいて、動物モデル対象の感染後に、組織病理学的評価を行う。鼻甲介及び気管を、上皮変化及び上皮下炎症について調べることができる。肺を、細気管支上皮の変化、及び大、中、小、又は末端細気管支における細気管支周囲炎症について調べることができる。肺胞を、炎症性変化についても評価する。中細気管支は、以下のように、0〜3+のスケールで等級付けられる:0(正常:繊毛性頂端境界及び基底偽重層核を有する中位から高い円柱状の上皮細胞により裏打ちされている;最小限の炎症); 1+(輪郭が円柱状かつ均一で増殖がわずかに増加した上皮層;繊毛がなおも多くの細胞に見られる); 2+(減弱から顕著な増殖までの範囲の上皮層における顕著な変化;破壊された細胞及び管腔境界での不規則な層輪郭); 3+(著しく破壊され、無秩序になった上皮層、内腔には壊死細胞が見られる;減弱した細気管支もあれば、反応性増殖が顕著な細気管支もある)。
気管は、以下のように、0〜2.5+のスケールで等級付けられる: 0(正常:繊毛性頂端境界、基底偽重層核を有する中位から高い円柱状の上皮細胞により裏打ちされている。頂端境界と核との間に明らかな細胞質。時折見られる扁平上皮細胞の小さな増殖巣); 1+(上皮層の限局的扁平上皮化生); 2+(上皮層の大部分の広範囲の扁平上皮化生、繊毛は限局的に明白な場合がある); 2.5+(明白な繊毛が極めて少ない広範囲の扁平上皮化生)。
ウイルス免疫組織化学検査は、ウイルス特異的モノクローナル抗体(例えば、NP-、N-、又はHN-特異的モノクローナル抗体)を用いて行われる。染色は、以下のように、0〜3+に等級付けられる:0(感染細胞なし); 0.5+(ほとんど感染細胞なし); 1+(ほとんど感染細胞なし、広く離れた個々の細胞として); 1.5+(ほとんど感染細胞なし、広く離れた単体として、及び小クラスターで); 2+(通常、上皮層が裏打ちする細気管支の一部の、又は肺胞内の小さな小葉下病巣(sublobular foci)の、隣接細胞のクラスターを侵す、適度な数の感染細胞); 3+(細気管支の上皮層の大部分を侵すか、又は肺胞内の大きな小葉下病巣に広がる、多数の感染細胞)。
一例において、ウイルス感染の動物モデルで肺病変を誘導し、感染を引き起こす能力を、野生株ウイルス及び模擬ウイルスを用いて比較する。肺病変は、目視検査で健康である肺葉の割合として評価することができる。感染から5日後、動物をペントバルビタールの静脈内投与により安楽死させ、その肺全体を取り出す。肉眼的病変に侵された各肺葉の表面の割合を目視で見積もる。割合を平均化して、各々の動物の7つの肺葉についての平均値を得る。他のアッセイにおいて、鼻スワブを検査して、ウイルス負荷量又は力価を決定することができる。検死時に鼻スワブを採取して、感染後のウイルス負荷量を決定することができる。
一実施態様において、ウイルスを組織試料中で定量する。例えば、組織試料をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でホモジナイズし、清澄化されたホモジネートの希釈物を、細胞(例えば、MDCK細胞)の単層表面に37℃で1時間吸着させる。次に、感染させた単層に、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.01%DEAE-デキストラン、0.1%NaHCO3、及び1%寒天を含む最小必須培地の溶液を重層する。プラークを可視化することができるまで、プレートを2〜3日インキュベートする。PR8感染試料由来のウイルスの力価を測定するための組織培養感染量(TCID)アッセイを以下のように実施する。96ウェルプレート中の細胞(例えば、MDCK細胞)のコンフルエントな単層を、培地中の清澄化された組織ホモジネートの対数希釈物とともにインキュベートする。接種から2〜3日後に、各ウェルからの0.05mlのアリコートを、ウイルス増殖について、血球凝集アッセイ(HAアッセイ)により評価する。
(5.13.6.1.1 ヒトでのアッセイ)
一実施態様において、インフルエンザウイルスの複製を調節する活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物を感染ヒト対象で評価する。この実施態様に従って、活性化合物又はその組成物をヒト対象に投与し、ウイルスの複製に対する活性化合物又は組成物の効果を、例えば、生体試料(例えば、血清又は血漿)中のウイルス又はウイルス核酸のレベルを解析することにより決定する。ウイルス複製を変化させる活性化合物又はその組成物は、対照で処置した対象又は対象群におけるウイルス複製のレベルを、活性化合物又はその組成物で処置した対象又は対象群におけるウイルス複製のレベルと比較することにより同定することができる。或いは、ウイルスの複製の変化は、活性化合物又はその組成物の投与の前後で対象又は対象群におけるウイルス複製のレベルを比較することにより同定することができる。当業者に公知の技術を用いて、生体試料を取得し、mRNA又はタンパク質の発現を解析することができる。
別の実施態様において、インフルエンザウイルス感染/疾患と関連する1以上の症状の重症度に対する活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物の効果を感染対象で評価する。この実施態様に従って、活性化合物もしくはその組成物又は対照をインフルエンザウイルス感染に罹患しているヒト対象に投与し、ウイルス感染の1以上の症状に対する活性化合物又は組成物の効果を決定する。1以上の症状を軽減する活性化合物又はその組成物は、対照で処置した対象を活性化合物又は組成物で処置した対象と比較することにより同定することができる。具体的な実施態様において、活性化合物(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)又はその組成物の投与は、インフルエンザウイルス疾患又は感染に起因するヒト又はヒト集団の入院の減少をもたらす。別の具体的な実施態様において、活性化合物又はその組成物の投与は、インフルエンザウイルス疾患又は感染を有するヒト又はヒト集団における呼吸(respiratory)/呼吸(breathing)補助の必要性を低下させる。別の具体的な実施態様において、活性化合物又はその組成物の投与は、インフルエンザウイルス疾患又は感染を有するヒト又はヒト集団の罹患期間の短縮をもたらす。別の具体的な実施態様において、活性化合物又はその組成物の投与は、例えば、全身又は肺プレチスモグラフィーにより評価される肺容量の改善(例えば、増加)をもたらす。別の実施態様において、活性化合物又はその組成物を健康なヒト対象に投与し、ワクチンとしての効力についてモニタリングする(例えば、対象を、インフルエンザウイルス感染の症状の開始;対象に感染するインフルエンザウイルスの能力;並びに/又はインフルエンザウイルス感染と関連する1以上の症状の軽減/不在についてモニタリングする)。感染性疾患を熟知している医師に公知の技術を用いて、活性化合物又はその組成物がインフルエンザウイルス疾患と関連する1以上の症状を軽減するかどうか決定することができる。
(5.14 対象における抗体の評価)
別の態様において、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド又は本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するウイルスを用いて、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)に対する対象(例えば、未感作の対象もしくは免疫/ワクチン接種された対象)又は対象集団の抗体応答を評価することができる。具体的な実施態様において、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド又はキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルスを用いて、対象又は対象集団におけるステム特異的抗体の存在を評価することができる。
具体的な実施態様において、インフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド又は本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するウイルス)で免疫/ワクチン接種されたことがある対象又は対象集団の抗体応答を評価して、該対象又は対象集団におけるストーク特異的抗体の種類を特定する。そのような評価は、本明細書に記載のインフルエンザウイルスHAポリペプチドポリペプチド(複数可)(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド又は本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するウイルス)の投与に対する臨床応答を決定する際に重要な代用マーカー/エンドポイントの同定を可能にすることができる。そのような手法において、対象又は対象集団由来の生体試料、例えば、血液を単離し、抗体の存在について直接試験することができるか、又は(例えば、血清を得るために)処理し、その後、抗体の存在について試験することができる。そのような抗体試験は、当技術分野で公知のアッセイ、例えば、ELISAを利用することができる。
別の具体的な実施態様において、未感作の対象(すなわち、インフルエンザウイルスHAポリペプチドポリペプチド(複数可)(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)もしくはインフルエンザウイルスHAポリペプチドポリペプチド(複数可)(例えば、本明細書に記載のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド)を発現するウイルスで免疫/ワクチン接種されたことがない対象)又は未感作の対象の集団の抗体プロファイルを評価して、該対象又は対象集団が、様々なインフルエンザウイルス株又は亜型に対する球状ヘッド特異的及び/又はステム特異的抗体を保有するかどうかを決定する。そのような評価は、該対象又は対象集団への投与に好適である、キメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチド又はキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを発現するウイルスの作製を可能にすることができる。そのような評価は、患者のための免疫戦略を決定することができる。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、特定のインフルエンザウイルス株又は亜型のステムドメインに特異的である対象中の抗体の存在を評価/検出する方法であって、該対象由来の生体試料(例えば、血液、血清)を、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドとインビトロで接触させることを含み、ここで、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが関心対象の株又は亜型由来のステムドメインを含む、方法である。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、特定のインフルエンザウイルス株又は亜型のステムドメインに特異的である対象中の抗体の存在を評価/検出する方法であって、該対象由来の生体試料(例えば、血液、血清)を、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現/含有するウイルスとインビトロで接触させることを含み、ここで、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドが関心対象の株又は亜型由来のステムドメインを含む、方法である。
(5.15 キット)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の医薬/免疫原性組成物の1以上の成分、例えば、本明細書に提供される1以上の活性化合物を充填した1以上の容器を含む医薬パック又はキットである。医薬又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を規制する行政機関により規定された形式での通知を、そのような容器(複数可)に任意で関連付けることができ、その通知は、この機関による、ヒト投与のための製造、使用、又は販売の承認を示している。
本明細書に包含されるキットは、本明細書に記載の方法に従って使用することができる。一実施態様において、キットは、1以上の容器中に、本明細書に記載の活性化合物、好ましくは本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。ある実施態様において、キットは、本明細書に記載のワクチン、例えば、スプリットウイルスワクチン、サブユニットワクチン、不活化インフルエンザウイルスワクチン、又はインフルエンザ生ウイルスワクチンを含み、ここで、該ワクチンは、本明細書に記載の1以上のキメラインフルエンザ血球凝集素(HA)ポリペプチドを含む。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド及び該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを用いて対象中に存在する抗体を評価するための説明書を含むキットである。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、試料中のHAステムドメイン特異的抗体の存在をアッセイする方法で使用するための本明細書に記載のキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを含むキットである。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるキットは、本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)、本明細書に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)、本明細書に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)、本明細書に記載のcH5/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)、本明細書に記載のcH7/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)、本明細書に記載のcHB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)、或いは本明細書に記載のcH4/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)を含む。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるキットは、本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)と本明細書に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)の組合せ;或いは本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)と本明細書に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)の組合せを含む。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるキットは、本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)と本明細書に記載のcH5/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)と本明細書に記載のcH5/B、cH7/B、又はcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)のいずれかの組合せを含む。
別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるキットは、本明細書に記載のcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)と本明細書に記載のcH7/3キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)と本明細書に記載のcH5/B、cH7/B、又はcB/Bキメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチド(或いはそのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを含有もしくは発現するベクター(例えば、ウイルスベクターもしくは細菌)、又はそのようなポリペプチドで刺激された細胞)のいずれかの組合せを含む。
(6.実施例)
(6.1 実施例1:キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド)
この実施例は、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、及び該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの投与を含む、対象において高レベルの交差中和性HAストーク抗体を誘導する方法を記載している。この実施例に記載されているように、インフルエンザウイルスによって、及びキメラインフルエンザウイルス血球凝集素を発現するように改変された細胞によって良好に発現されるキメラインフルエンザウイルス血球凝集素を作製した。キメラインフルエンザウイルス血球凝集素のステムドメインとヘッドドメインの両方の抗体認識から明らかなように、該キメラインフルエンザウイルス血球凝集素を、その適切な立体構造で回収することに成功した。
図2は、インフルエンザウイルスのH1亜型のステム/ストークドメイン及び他のインフルエンザウイルス亜型(H2、H3、及びH5)の異種球状ヘッドドメインを含む、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)を示している。図2の戦略概要に従って、H1N1(PR8-H1N1)インフルエンザウイルスに由来するステムドメイン及び2009パンデミックH1 HA(Cal/09)の球状ヘッドドメインから構成されるキメラHAを含むインフルエンザウイルスを作製した。2つのウイルスのHAの球状ヘッドドメインが非常に異なっているのに対し(〜70%アミノ酸同一性)、ステムドメインは極めて保存されているが、それでも異なっている(〜89%アミノ酸同一性)。図3に示すように、同じステムドメインを有するが、同じ亜型内の非常に異なるHAヘッドを有するキメラHAを発現させた。
さらに、A/PR/8/34 HAのストークドメイン及びHK/68の球状ヘッドドメインからなるキメラHA(キメラH3)、並びに野生型HA(PR8-HA及びHK68 HA)を293T細胞で発現させた。図5は、(H1亜型HAに由来する)同じステムドメインを有し、かつ異種亜型(H3)由来の球状ヘッドを有する安定なキメラHAを発現させることも可能であることを示している。
このように、HAステムドメインを完全に共有するが、その球状ヘッドが極めて異なっているHA免疫原を設計した。これらの構築物による免疫の繰返しは、HAの共通のステムドメインに対する高レベルの交差中和抗体を生じさせるはずである。したがって、改善されたワクチン戦略は、不変のステム/ストークドメイン及び変化する球状ヘッドを有するキメラHAを用いて、強力な交差中和性抗ステムドメイン抗体を誘導する。例えば、A/PR/8/34由来のH1 HAの不変のステムドメインを異なるグループ1 HA(H1、H2、H5、H9)由来の球状ヘッドと一緒に用いて、一連の組換え不活化ウイルス、組換え弱毒化ウイルス、又は組換えHAのいずれかを作製することができる(図4)。例えば、X31ウイルスのH3 HAのステムドメインに基づくグループ2 HAの一連の類似物は、H3、H4、及びH7球状ヘッドと組み合わせて、グループ2 HAの普遍的なワクチンの基礎を提供することができる。組換えウイルスを、PR/8又は低温適応インフルエンザウイルスなどの、インフルエンザウイルスワクチン骨格上にレスキューし、標準的な技術により増殖させ、不活化又は弱毒化ワクチンとして使用することができる。組換えHAを、哺乳動物様のグリコシル化を行うことができる昆虫細胞(MIMIC Sf9)において、又は例えば、293 TもしくはVero細胞の一過性トランスフェクションにより発現させることができ、その後、C末端hisタグを援用するNi-キレートクロマトグラフィーにより精製することができる。他の戦略としては、キメラHAを発現するDNAワクチン、又はキメラHAを発現する他のベクター、例えば、アデノウイルスベクターの使用を挙げることができる。
(6.2 実施例2:キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルス)
この実施例は、異なる血球凝集素亜型由来の種々の球状ヘッド及びストーク組合せを包含するいくつかの機能的キメラインフルエンザウイルス血球凝集素、並びにこれらのキメラ血球凝集素を発現する、野生型インフルエンザウイルスの増殖特性と同様の増殖特性を有していた、組換えインフルエンザウイルスを記載している。
(6.2.1 材料及び方法)
(6.2.1.1 細胞及びウイルス)
293T及びMDCK細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC, Manassas, VA)から入手し、10%胎仔ウシ血清(HyClone; Thermo Scientific)及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco, Invitrogen)を補充したダルベッコの最小必須培地(DMEM)中又はMEM(Gibco, Invitrogen)中で維持した。
全てのA/PR/8/34組換えウイルスを、10日齢の発育鶏卵中、37℃で2日間増殖させた。
(6.2.1.2 プラスミドの構築)
異なるキメラ血球凝集素をコードするプラスミドを、以前に記載されているような組換えウイルスを作製するためのリバースジェネティックスプラスミドの構築を基に改変した同様の戦略により構築した(例えば、Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-9682;及びHaiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)。簡潔に述べると、キメラHAの様々なセグメントを、SapI部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、SapIで消化し、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター及びマウスRNAポリメラーゼIターミネーターを含むpDZベクター(例えば、Quinlivanらの文献、2005, J Virol 79:8431-8439参照)のSapI部位に、多重セグメントライゲーションによりクローニングした。
(6.2.1.3 フローサイトメーター解析)
細胞表面における血球凝集素タンパク質のレベルを評価するために、293T細胞に、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの適当なプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、細胞をトリプシン処理し、2%FBSを含むPBSに懸濁させた後、それらを、1/1000希釈のH1 HAに対するモノクローナル抗体(mAb) 6F12、又は1/400希釈のH3 HAに対するmAb 12D1(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6:e1000796参照)で染色した。染色された細胞をBeckman Coulter Cytomics FC 500フローサイトメーターで計数し、結果を、FlowJoソフトウェアを用いて解析した。
(6.2.1.4 偽粒子生成及び侵入アッセイ)
偽粒子産生のための手順を以前の研究を基に改変した(例えば、Evansらの文献、2007, Nature 446:801-805;及びSuiらの文献、2011, Clin Infect Dis 52:1003-1009参照)。簡潔に述べると、293-T細胞に、(i)所望のレポーターを含むプロウイルス(V1-GLuc)、(ii)HIV Gag-Pol、(iii)異なるキメラ血球凝集素タンパク質、及び(iv)A型インフルエンザPR8ノイラミニダーゼ(NA)をコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした。トランスフェクションから72時間後、上清を回収し、その後、濾過した(0.45μm孔径)。偽粒子を用いる形質導入及び感染アッセイは全て、1μg/mlのポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で実施した(Suiらの文献、2011, Clin Infect Dis 52:1003-1009参照)。
侵入アッセイは、MDCK細胞を、異なるキメラ血球凝集素を有し、G-Lucレポーターを含む偽粒子に感染させることにより実施した。感染から24時間後、細胞を新鮮な培地で3回洗浄して、偽粒子接種材料中に存在するG-Lucタンパク質を除去した。感染から48時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した(Evansらの文献、2007, Nature 446:801-805参照)。
(6.2.1.5 組換えキメラA型インフルエンザウイルスのレスキュー)
プラスミドDNAからのA型インフルエンザウイルスのレスキューを、以前に記載されている通りに実施した(例えば、Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-9682;及びHaiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)。組換え野生型(rWT)PR8ウイルスを作製するために、293T細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、1μgの8つのpDZ PR8レスキュープラスミドの各々をコトランスフェクトした。異なるキメラHAを発現するウイルスを同じ方法で作製したが、HAプラスミドを対応するキメラプラスミドに置き換えて、対応するキメラウイルスを回収した。感染から6時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM HEPES、及び1.5μg/ml TPCK(L-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシンを含むDMEMと交換した。トランスフェクションから24時間後、ウイルス含有上清を8日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ウイルスの存在について、ニワトリ赤血球の血球凝集により、及びMDCK細胞におけるプラーク形成によりアッセイした。
(6.2.1.6 ウイルス増殖動態アッセイ)
組換えウイルスの複製特徴を解析するために、10日齢の発育鶏卵に100pfuの各々それぞれのウイルスを接種した。尿膜腔液を回収し、その後、0、9、24、48、及び72感染後時間(hpi)でのウイルス増殖についてアッセイした。尿膜腔液中に存在するウイルスの力価をMDCK細胞でのプラークアッセイにより決定した。
(6.2.1.7 プラークの免疫染色)
プラークを、A型インフルエンザNPタンパク質に対するmAb(HT103)による免疫染色により可視化した。
(6.2.1.8 ウェスタンブロット及び間接免疫蛍光解析)
12ウェルディッシュのうちの1つのウェルのコンフルエントなMDCK細胞を、37℃で1時間、表示された組換えインフルエンザウイルスに感染させるか(2の感染多重度[MOI])、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に模擬感染させた。12感染後時間(hpi)で、細胞を、以前に記載されている通りに1×タンパク質ローディングバッファーに溶解させた(例えば、Haiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)。還元された細胞ライセートを、A/NPに対するmAb(HT103)、A/PR8/HAに対するmAb(PY102)、A/Cal/09/HAに対するmAb(29C1)、A/VN/HAに対するmAb(M08)(20)、A/H3/HAに対するmAb(12D1)を使用することによって、ウェスタンブロット解析により解析した。パース-cH7の検出は、BEI Resourcesから入手されるA/FPV/オランダ/27(H7)ウイルスに対するヤギポリクローナル血清のNR-3152を使用した。mAb抗 グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)ローディング対照抗体はAbcam製であった。関心対象のタンパク質は全て、増強化学発光タンパク質検出系(PerkinElmer Life Sciences, Boston, MA)を用いて可視化した。
免疫蛍光解析のために、15-mmカバースリップ上のコンフルエントなMDCK細胞の単層に、組換えウイルスを2のMOIで感染させた。15hpiで、細胞を固定し、メタノール-アセトン(比率、1:1)で、-20℃で20分間透過処理した。0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、細胞を、上記のように、A/NPに対する抗体(HT103)、A/H1/HAに対する抗体(6F12)、A/PR8/HAに対する抗体(PY102)、A/Cal/09/HAに対する抗体(29C1)、A/VN/HAに対する抗体(M08)(20)、A/H3/HAに対する抗体(12D1)、及びA/H7ウイルスに対する抗体(NR-3152)とともに1時間インキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞を、Alexa Fluor 594コンジュゲート抗マウス免疫グロブリンG(IgG; Invitrogen, Carlsbad, CA)又はAlexa Fluor 594コンジュゲート抗ヤギ免疫グロブリンG(IgG, Invitrogen, Carlsbad, CA)とともに1時間インキュベートした。最後に3回洗浄した後、感染細胞を、Olympus IX70顕微鏡を用いる蛍光顕微鏡法により解析した。
(6.2.2 結果)
(6.2.2.1 キメラ血球凝集素の作製)
Cys52-Cys277ジスルフィド結合を形成するシステイン残基の保存に関する情報を得るために、H1、H3、H5、及びH7亜型のA型インフルエンザウイルスHA配列のアラインメントを作成した(図6参照)。免疫優性抗原性部位が球状ヘッドドメイン上に存在することが主な原因で、HA1サブユニットの配列は、HA2サブユニットの配列よりも保存されていない。より保存されたHA2鎖は、HA分子をウイルスエンベロープに固定するストーク領域を含む。このアラインメントは、Cys52及びCys277並びに両末端に向かうアミノ酸が選択された亜型にわたって保存されていることを示している。これ以降、Cys52に対してN末端及びCys277に対してC末端の血球凝集素配列をストークドメインと定義する(図6)。介在配列は、この実施例において、ヘッドドメインであるとみなされる。
パンデミックH1 Cal/09 HA球状ヘッドドメインをPR8(H1) HA由来のストーク領域とともに含むキメラ血球凝集素構築物(PR8-cH1)を最初に作製した(図7A)。VN1203(H5) HA由来の球状ヘッドをPR8(H1) HA由来のストークとともに含むキメラHA(PR8-cH5)も作製した(図7B)。インフルエンザHAの全16種の亜型は2つの系統発生学的グループ(グループ1及び2)に分類され(例えば、Suiらの文献、2009, Nat Struct Mol Biol 16:265-273参照)、H1 HAとH5 HAは両方ともグループ1に属するので、A/アルバータ/24/01(H7)ヘッドドメインをA/パース/16/2009(H3) HA(パース-cH7)由来のストーク領域とともに有するキメラHAを作製するための同様の戦略(図7B)を適用した。H7とH3は両方とも、グループ2の系統発生学的グループ由来のメンバーである(例えば、Suiらの文献、2009, Nat Struct Mol Biol 16:265-273参照)。
次に、様々なキメラHA構築物が発現されて細胞表面に輸送されているかどうかを検討した。それぞれ、PR8及びH3ストークドメイン特異的抗体で表面染色した後、一過性にトランスフェクトした293T細胞の蛍光活性化セルソーター(FACS)解析を実施した(図8A)。図8Aに示すように、3つ全てのキメラ構築物の発現を検出した。この検出により、ゴルジ複合体から細胞表面へのキメラHAの輸送が分断されないことが示される。
次に、様々なキメラHAの侵入特徴を、MDCK細胞を、キメラHA、野生型A型インフルエンザPR8 NA、及びHIVベースのルシフェラーゼを含むレトロウイルスHAシュードタイプ化粒子に感染させることにより調べた。キメラHAタンパク質によって媒介される侵入効率は、ルシフェラーゼの読出しにより検出した。同程度のレベルのシュードタイプ化粒子媒介性ルシフェラーゼ送達が、PR8-cH5及びパース-cH7キメラHA並びに対応する野生型タンパク質について観察された(図8B)。PR8-cH1 HAは、他のHA構築物と比べてより低いルシフェラーゼレベルを示した。
(6.2.3 キメラ血球凝集素を有する組換えインフルエンザウイルスの作製)
上の結果を考慮して、キメラHAがウイルス粒子全体との関連で最終的に機能的であるかどうかということが、キメラHAのみを発現する組換えA型インフルエンザウイルスのレスキューを可能にすることを確かめた。以前に発表されたプロトコル(例えば、Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-9682;及びHaiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590)を用いて、異なるキメラHAの全てを含むウイルスを作製するのに成功した。得られたウイルスをプラーク精製し、10日齢の発育卵中で増幅させ、キメラセグメントをRT-PCRにより解析し、シークエンシングした。どの場合も、ウイルスは、予想されたキメラHAセグメントを有し、他のHAセグメントを有さないことが分かった。
キメラウイルスの同一性を感染細胞のウェスタンブロッティング及び間接免疫蛍光によりさらに示した(図9A及び9B)。MDCK細胞を、rWT A/PR8、野生型A/パース、PR8-cH1、PR8-cH5、及びパース-cH7ウイルスに感染させた(図9A及び9B)。PR8-cH1及びPR8-cH5キメラHAタンパク質を、ぞれぞれ、Cal/09 HAに対する抗体(29C1)又はVN/04 HAに対する抗体(M08)のどちらかを用いて、対応する試料中で検出した(Steelらの文献、2009, J Virol 83:1742-1753参照)(図9A)。汎H3ストークmAbの12D1(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6:e1000796参照)を用いて、パースcH7-HAと野生型パースHAの間での同程度の発現レベルが観察された。抗H7抗体(NR-3152)を使用したとき、陽性バンドは、パース-cH7感染試料でしか検出されなかった。
免疫蛍光研究について、感染条件は、ウェスタン解析の感染条件と同様であった。感染細胞を、図9Bに示すように、対応する抗体で染色した。感染細胞は全て、予想されたHA発現及び予想されたA/NPタンパク質発現を示した(図9B)。
(6.2.4 組換えウイルスの複製特徴)
ウイルスの増殖特性を、10日齢の発育鶏卵中、37℃で評価した(図8A)。キメラHAを発現する組換えウイルスの増殖動態との比較のために、rWT PR8ウイルスを含めた。PR8-cH5ウイルスに関して、PR8ウイルスと比較して同様の複製パターンが観察された。パース-cH7ウイルスに関して、rWT PR8ウイルスと比較して、9hpiでウイルス力価が2倍低下した。それにもかかわらず、それは、48hpiで、野生型ウイルスと同様のピーク力価(1×109 PFU/ml)に達した。全ての時点を通した力価の低下によって示されるように、rWT PR8ウイルスと比較すると、PR8-cH1ウイルスは弱毒化されていた。それにもかかわらず、このキメラウイルスですら、約108 PFU/mlというかなりのピーク力価に達した。キメラウイルスの各々のプラーク表現型もMDCK細胞で評価した。図8Bに示すように、全てのウイルスが同程度のサイズのプラークを形成した。これらの結果から、キメラHA構築物がインビボで正しくフォールディングし、生物学的に機能的であることが確認される。
(6.2.5 結論)
ヘッドドメインとストークドメインの境界を定める保存されたジスルフィド結合Cys52-Cys277を利用することにより、異なるHA球状ヘッドドメインを有するキメラHAタンパク質を有するインフルエンザウイルスを作製するための新しい戦略を開発した。したがって、もとのヘッドドメインを別のHAのヘッドドメインと置換することにより、同じストークを有するが、異なる球状ヘッドを有する一連のキメラHAを作製した。この設計を、PR8ストークドメインをCal/09及びVN H5球状ヘッドとともに含む、多数の亜型にわたって検討した。さらに、H7球状ヘッドをH3ストークドメイン上に配置した。これらの構築物は、両方の系統発生学的グループのインフルエンザHAタンパク質を網羅する。各々の構築物は細胞表面に発現し、図7に示すように融合活性を保持した。キメラHAを有する組換えウイルスの作製により、HAが正しくフォールディングし、生物学的機能を保持することがさらに立証された。
(6.3 実施例3:キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの診断的適用及びキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドによるマウスのワクチン接種)
この実施例は、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを診断目的で利用することができること、及びキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを発現するウイルスをワクチンで利用することができることを示している。
(6.3.1 材料及び方法)
(6.3.1.1 細胞及びプラスミド)
293T細胞及びMDCK細胞をATCCから入手し、それぞれ、各々10%胎仔ウシ血清(HyClone)、及び100ユニット/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン(Pen/Strep, Gibco)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)及び最小必須培地(どちらもGibco製)中で維持した。10%胎仔ウシ血清を補充したTNM-FH(Sigma-Aldrich)とHyclone SFX昆虫培地(ThermoScientific)とを、Sf9及びBTI-TN5B1-4(High Five)細胞培養に使用した。
A/マガモ/スウェーデン/81/02(「cH6」)ウイルス又はA/ホロホロチョウ/香港/WF10/99(「cH9」)ウイルスのどちらかに由来する球状ヘッドドメインを含むA/プエルトリコ/8/1934(PR8)のストークを有するキメラ血球凝集素構築物を同様の技術を用いて作製した。キメラH6構築物については、様々な成分をPCRにより増幅させ、以前に記載されたクローニング戦略を用いてpDZプラスミドにクローニングした(例えば、Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-82;及びHaiらの文献、2008, Journal of Virology 82:10580-90参照)。簡潔に述べると、キメラ血球凝集素(cHA)の様々な成分を、Sap I部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、Sap Iで消化し、pDZプラスミドのSap I部位にクローニングした。バキュロ転移プラスミドの作製のために、cH6をPCRにより増幅させ、BamHI及びNotIで切断し、C末端T4ファージフォルドン及び6-hisタグを有する修飾されたpBacPAK8(Gentech)バキュロ転移ベクターにインフレームでクローニングした(Meierらの文献、2004, J Mol Biol 344:1051-69参照)。全てのプラスミドの配列をサンガーシークエンシングにより確認した。
(6.3.1.2 組換えcH9ウイルスのレスキュー)
組換えワクチンウイルスをレスキューするために、PR8由来の7つの野生型ウイルスセグメントのvRNA及びmRNAをコードする8つのリバースジェネティックスプラスミドと、cH9とを、以前に記載されている通りに使用した(Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-82;及びPleschkaらの文献、1996, J Virol 70:4188-92)。簡潔に述べると、293T細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの8つのプラスミドの各々をトランスフェクトした。トランスフェクションから12時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン、10mM HEPES、及び1.5μg/mLのTPCK(l-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシンを含むDMEMと交換した。トランスフェクションから2日後、ウイルス含有上清を10日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集により、ウイルスの存在についてアッセイした。その後、レスキューされたcH9ウイルスを10日齢の卵中で増殖させ、次いで、37℃で48時間インキュベートした。ウイルスストックの力価を、以前に記載されている通りにプラークアッセイにより測定した(例えば、Steelらの文献、2009, Journal of Virology 83:1742-53参照)。cH9の配列を逆転写PCR産物のシークエンシングにより確認した。
(6.3.1.3 組換えバキュロウイルス作製、タンパク質発現、及び精製)
cH6を保有する組換えバキュロウイルス(rBV)を作製するために、プラスミド及びBaculogold DNA(BDBioschiences)を、製造業者の指示に従ってCellfectin II(Invitrogen)を用いて、Sf9細胞にコトランスフェクトした。組換えバキュロウイルスを、TNM-FH培地(Gemini Bioproducts, West Sacramento, CA)中で増殖させたSf9細胞で増幅させ、力価を、以前に記載されている通りにプラークアッセイにより決定した(例えば、Steelらの文献、2009, Journal of Virology 83:1742-53参照)。
HyClone SFX昆虫細胞培地(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)中で増殖させたHigh Five細胞(Krammerらの文献、2010, Mol Biotechnol 45:226-34参照)を、500mlの振盪フラスコ中、10の感染多重度(MOI)及び1×106細胞/mlの細胞密度で、cH6を発現するrBVに感染させた。感染から96時間後、細胞を回収し、室温で2000×gで10分間の低速遠心分離により、上清から分離した。cH6タンパク質の精製のために、上清を回収し、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートした。スラリーをカラムに充填し、洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl, 20mMイミダゾール、pH 8)で3回洗浄した。タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH 8)で0.5mlずつ溶出させ、タンパク質含量についてブラッドフォード試薬で試験し、タンパク質を含む画分をプールした。タンパク質の純度及び同一性を、SDS-PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。タンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
(6.3.1.4 マウス実験)
全ての処置のために、マウスを0.1mLのケタミン/キシラジン混合物(1.5mgケタミン及び0.3mgキシラジン)の腹腔内注射で麻酔した。
マウス50%致死用量(LD50)を、4匹のマウスの群をインフルエンザウイルスの10倍連続希釈液に感染させることにより、BALB/cマウス(Charles River Laboratories)で決定した。体重を2週間にわたってモニタリングした。その体重の25%超を失ったマウスを実験的エンドポイントに達したものとみなし、安楽死させた。LD50値をReed及びMeunchの方法により計算した(Reed及びMeunchの文献、1938, Am. J. Hyg. 27:493-497参照)。
A/カリフォルニア/04/09(Cal/09)ウイルス感染後に産生されるステム抗体を評価する実験のために、以前に記載されているような電気刺激の適用(TriGrid送達系、Ichor Medical Systems)(例えば、Luxembourgらの文献、2007, Expert Opinion on Biological Therapy 7:1647-64参照)に加えて、雌の8〜10週齢BALB/cマウスを、PR8ウイルス由来の全長HAをコードする80μgの発現プラスミドの筋肉内投与で最初に初回免疫した。3週間後、マウスを、50μl容量中の致死未満用量の104PFU Cal/09で鼻腔内に追加免疫した。対照動物は、DNAのみ又はCal/09ウイルスのみ又は2009-2010ワクチン(Cal/09スプリットワクチン)の筋肉内注射のいずれかを受容した。追加免疫から3週間後、又は対照動物について同等の時点で、マウスから採血し、血清を回収して、cH6に対する反応性を下記のような免疫蛍光により試験した。
ワクチン構築物としてのcH9ウイルスの効力を試験する実験のために、PR8全長DNAを上記の通りに投与した。初回免疫から3週間後、マウスに、鼻腔内に注入される103PFUのcH9ウイルスを接種した。対照動物は、DNAのみ又はCal/09ウイルスのみ又は精製不活化PR8ウイルスのいずれかを筋肉内に受容した。追加免疫から3週間後、又は対照動物について同等の時点で、マウスを5×104 LD50のPR8ウイルスの鼻腔内接種で感染させた。マウスを感染後14日間計量した。その初期体重の27.5%超を失ったマウスを安楽死させ、死亡と記録した。
(6.3.1.5 キメラ血球凝集素の発現を確認するための免疫蛍光)
293T細胞のコンフルエントな単層に、1μgのpDZ cH6プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を固定し、0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。その後、細胞を、上記の4つの実験群(PR8 DNAのみ、Cal/09のみ、PR8 DNA及びCal/09感染、又はCal/09スプリットワクチンのみ)の各々の動物からプールされた血清とともにインキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞をAlexa Fluor 488コンジュゲート抗マウスIgG(Invitrogen)とともに1時間インキュベートした。感染細胞を、Olympus IX70顕微鏡を用いる蛍光顕微鏡法により解析した。
(6.3.1.6 ELISA)
96ウェルELISAプレート(Nunc, MaxiSorp)に、50mlのバキュロウイルス発現cH6をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを3%ミルク/PBSでブロッキングし、その後、PBS/0.1%Tween(PBST)で洗浄した。ワクチン接種マウス由来の血清をPBSに連続希釈し、プレートに添加し、次いで、37℃で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで洗浄し、1:2500希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(GE Healthcare)とともにインキュベートした。PBSTでさらに洗浄した後、SigmafastOPD基質(Sigma)を添加した。反応を3M H2SO4で停止させ、光学密度測定を490nmで行った。
(6.3.2 結果)
(6.3.2.1 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドは診断的適用に使用することができる)
免疫マウスによるH6ステムドメインに対する抗体の産生をアッセイする解析ツールとしての役割を果たすH6インフルエンザウイルス亜型の血球凝集素由来の球状ヘッドドメイン及びPR8ウイルスの血球凝集素由来のステム/ストークドメインを含むキメラ血球凝集素構築物を作製した。免疫マウスはH1ウイルスの球状ヘッドにのみ暴露されたので、実験動物で生成される抗体は、それらがそのH1ステムに対するものであった場合、キメラH6血球凝集素(cH6)に対してのみ反応することとなった。
図11A及び11Dに示すように、DNAのみ又はパンデミックスプリットワクチンによる処置は、ワクチン接種マウスにおいてステム反応性抗体を誘発しなかった。逆に、Cal/09のみの感染は、ステム反応性抗体を生成させたが(図11B)、DNAエレクトロポレーション及び感染によって誘発されるほどではなかった(図11C)。交差反応性H1ステム抗体であるC179をトランスフェクションの対照として使用した(図11E)。予想された通り、PR8の球状ヘッドに対する抗体であるPY102は、トランスフェクトされたcH6 HAに反応しなかった(図11F)。
図13に示すように、ステム抗体結合を検出するツールとしてのcH6キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドの有用性をELISAにより確認した。
(6.3.2.2 キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドはワクチンで使用することができる)
図12に示すように、不活化PR8ウイルスをワクチン接種した動物は致死感染から防御されたが、DNAのみを受容した動物は、感染後5日までに感染が原因で完全に死亡した。cH9ウイルスのみを受容した動物も感染から防御されず、生存率はわずか25%であった。対照的に、最初にDNAで初回免疫し、その後、cH9ウイルスで追加免疫した動物は、感染から防御され、生存率は、不活化ウイルス調製物をワクチン接種した動物と統計的に同じであった。
(6.4 実施例4: 2009パンデミックH1N1インフルエンザウイルスの感染によって誘発される血球凝集素ストーク抗体)
この実施例は、ステムドメイン特異的抗体を研究するために使用されたキメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドを記載している。これらのポリペプチドを用いて、2009パンデミックH1N1ウイルスの感染が血球凝集素ステムに対するウイルス中和抗体の力価の上昇を誘発することが明らかにされた。キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチドに加えて、従来の血球凝集阻害アッセイで検出されないインフルエンザウイルス中和抗体を測定するために使用することができるアッセイも記載されている。
(6.4.1 材料及び方法)
(6.4.1.1 細胞及びプラスミド)
293T及びMDCK細胞をATCCから入手し、それぞれ、各々10%胎仔ウシ血清(HyClone)及び100ユニット/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン(Pen/Strep, Gibco)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)及び最小必須培地(どちらもGibco製)中で維持した。10%胎仔ウシ血清を補充したTNM-FH培地(Gemini Bioproducts)と、Hyclone SFX昆虫培養培地(ThermoScientific)とを、Sf9及びBTI-TN5B1-4(High Five)細胞培養に使用した。
A/マガモ/スウェーデン/81/02(cH6/1)ウイルス又はA/ホロホロチョウ/香港/WF10/99(cH9/1)ウイルスのどちらかに由来する球状ヘッドドメインを含むA/プエルトリコ/8/1934(PR8)のストークを有するキメラ血球凝集素(cHA)構築物を、以前に記載された方法を用いて作製した(Haiらの文献、2008, J Virol 82, 10580; Fodorらの文献、1999, J Virol 73, 9679)。簡潔に述べると、キメラ血球凝集素(cHA)の様々な成分を、Sap I部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、Sap Iで消化し、pDZプラスミド(Quinlivanらの文献、2005, J Virol 79, 8431)のSap I部位にクローニングした。バキュロ転移プラスミドの作製のために、cH6/1及びcH9/1をPCRにより増幅させ、BamHI及びNotIで切断し、C末端T4ファージフォルドン及び6-hisタグを有する修飾されたpFastBac(Invitrogen)バキュロ転移ベクターにインフレームでクローニングした(Meierらの文献、2004, J Mol Biol 344, 1051)。全てのプラスミドの配列をサンガーシークエンシングにより確認した。
(6.4.1.2 組換えバキュロウイルス作製、タンパク質発現、及び精製)
組換えcH6/1及びcH9/1タンパク質を作製するために、バキュロ転移ベクターを、製造業者の指示に従って、大腸菌株DH10Bac(Invitrogen)中に形質転換した。正しい表現型を示すDH10Bacコロニーを採取し、増殖させ、バクミドをPlasmid Midi Kit(Qiagen)を用いて調製した。
cH6/1又はcH9/1遺伝子を保有するバクミドを、製造業者の指示に従ってCellfectin II(Invitrogen)を用いて、Sf9細胞にトランスフェクトした。組換えバキュロウイルスを、TNM-FH培地(Gemini Bioproducts, West Sacramento, CA)中で増殖させたSf9細胞で増幅させ、力価をプラークアッセイにより決定した(Kingらの文献、2007, Methods Mol Biol 388, 77)。
HyClone SFX昆虫細胞培地(Thermo Fisher Scientific)中で増殖させたHigh Five細胞を、500mlの振盪フラスコ中、10の感染多重度(MOI)及び1×106細胞/mlの細胞密度で、cH6/1又はcH9/1を発現する組換えバキュロウイルスに感染させた(Krammerらの文献、2010, Mol Biotechnol 45, 226)。感染から96時間後、細胞を回収し、2000×g及び室温で10分間の低速遠心分離により、上清から分離した。cHAタンパク質の精製のために、上清を回収し、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートした。スラリーをカラムに充填し、洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH 8)で3回洗浄した。タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH 8)で0.5mlずつ溶出させ、タンパク質含量についてブラッドフォード試薬で試験し、タンパク質を含む画分をプールした。プール画分をPBS中でバッファー交換し、10kD分子量カットオフを有するAmicon Ultra遠心分離フィルターユニット(Millipore)を用いて、スイング式バケットローター中で濃縮した。タンパク質の純度及び同一性を、SDS-PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。以下の抗体:抗H6ヤギ抗血清(BEI, #NR-663)、G1-26(抗H9、マウス; BEI# NR-9485)、3951(ウサギ、抗HA2 PR8)(Gravesらの文献、1983, Virology 126, 106)、PY102(抗PR8ヘッド、マウス)、及び12D1(抗H3ストーク、マウス)(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6, e1000796)を用いて、cHAの発現を確認した。最終的なタンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
(6.4.1.3 組換えcHA発現ウイルスのレスキュー)
cH9/1を発現する組換えウイルスをレスキューするために、PR8由来の6つの野生型ウイルスセグメントのvRNA及びmRNAをコードするリバースジェネティックスプラスミド、並びにA/マガモ/アルバータ/24/01ウイルス及びcH9/1由来のN3 NAをコードするプラスミドを、以前に記載されている通りに使用した(Haiらの文献、2008, J Virol 82, 10580; Fodorらの文献、1999, J Virol 73, 9679, 27)。簡潔に述べると、293T細胞に、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの8つのプラスミドの各々をトランスフェクトした。トランスフェクションから12時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン、10mM HEPES、及び1.5μg/mLのTPCK(l-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシン(Sigma T1426)を含むDMEMと交換した。トランスフェクションから2日後、ウイルス含有上清を10日齢の発育鶏卵中に接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集により、ウイルスの存在についてアッセイした。その後、レスキューされたcH9/1ウイルスを10日齢の卵中で増殖させ、次いで、37℃で48時間インキュベートした。ウイルスストックの力価を、TPCKトリプシンの存在下、以前に記載されているMDCK細胞でのプラークアッセイにより測定した(Steelらの文献、2009, J Virol 83, 1742)。cH9/1 RNAの配列を逆転写PCR産物のシークエンシングにより確認した。
(6.4.1.4 キメラ血球凝集素の発現を確認するための免疫蛍光)
MDCK細胞のコンフルエントな単層を、2のMOIでcH9/1N3ウイルスに感染させた。感染から48時間後、細胞を固定し、0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。その後、細胞をマウスmAb:抗NP抗体HT103、PY102、抗H9(BEI NR#9485)、又は汎H1ストーク特異的抗体(6F12)とともにインキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞をAlexa Fluor 488コンジュゲート抗マウスIgG(Invitrogen)とともに1時間インキュベートした。感染細胞をOlympus IX70顕微鏡を用いる蛍光顕微鏡法により解析した。
(6.4.1.5 ヒト血清試料)
ヒト血清試料を回収し、施設内プロトコルに準拠して使用した。血清を3つの患者コホート: pH1N1に感染していない成人、pH1N1に感染していない小児、及びpH1N1ウイルスに感染した成人から回収した。血清をpH1N1に感染した患者から症候性感染の最初の3週間以内に回収した。プール血清を用いる実験については、等容量の各々の試料を混合して、プールを作製した。感染の確認は、Wrammertらによって、RT-PCR及び血清学的アッセイにより実施された(Wrammertらの文献、2011, J Exp Med 208, 181-193)。
(6.4.1.6 血球凝集素阻害アッセイ)
血球凝集の非特異的阻害因子を除去するために、回収された血清を、トリプシン-熱-過ヨウ素酸処理によるか又はRDE処理により、最初に不活化した(Coleman, Dowdleの文献、1969, Bull World Health Organ 41, 415(1969)。血球凝集阻害(HI)アッセイを実施して、cH9/1N3及びA/アヒル/フランス/MB42/76(H6 HA)(Desselbergerらの文献、1978, Proc Natl Acad Sci U S A 75, 3341(Jul, 1978))ウイルスとの反応性を、以前に記載されている通りに試験した(Lowenらの文献、2009,. J Virol 83, 2803)。HI活性が1:10希釈の血清で見られない場合、試料を陰性とみなす。
(6.4.1.7 ELISA)
96ウェルELISAプレート(Qiagen HisSorb又はNunc Immulon 2)に、PBSに希釈した50ulのバキュロウイルス発現cH6/1、cH9/1、もしくは全長血球凝集素(H5 HA、BEI NR#660; H3 HA、BEI NR#15171)タンパク質、又はH1配列(PR8)の長いαヘリックス(LAH)(Wangらの文献、2010, Proc Natl Acad Sci U S A 107, 18979)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを0.5%ミルク/2%ヤギ血清/PBSでブロッキングし、その後、PBS/0.1%Tween(PBST)で3回洗浄した。モノクローナル抗体、ヒト対象由来血清、及び対照として使用されるマウス血清をPBS又はブロッキングバッファーに連続希釈し、その後、プレートに添加し、次いで、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、アルカリホスファターゼ(AP)(Meridian Life Science)又は抗マウスAP(Invitrogen)に結合させたヤギ抗ヒトIgG[Fc]の1:5000希釈液とともにさらに1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、p-ニトロフェニルホスフェート基質(Sigma)を添加した。10分後、反応をNaOHで停止させ、光学密度測定を405nmで行った。
(6.4.1.8 プラーク減少アッセイ)
感染した成人及び未感作(pH1N1ウイルスに感染していない)患者由来血清を最初にプールし、IgGタンパク質の精製のために、プロテインGセファロース(GE Healthcare)を含む重力流カラムに充填した。カラムをPBSで洗浄した。ポリクローナル抗体を0.1Mグリシンバッファー(pH 2.7)で溶出させた。2M Tris-HClバッファー(pH 10)を1:10の比率ですぐに添加して、pHをもとに戻した。溶出液をPBS中でバッファー交換し、50kD MWカットオフを有するAmicon Ultra-15遠心分離フィルターユニット(Millipore)を用いて、スイング式バケットローター中で濃縮した。タンパク質濃度を、A280法を用いてNanoDrop 2000分光光度計で測定した。非特異的血清阻害因子の除去を、多数のウイルス株を用いて、精製IgG調製物中にHI活性が存在しないことを示すHI試験で確認した(データは示さない)。ストーク反応性抗体の中和能力を、以前に記載されている通りに評価した(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6, e1000796)。ウイルスを、1ウェル当たり100プラーク形成単位を生じさせる濃度にまで最初に希釈した。その後、プール血清由来の様々な濃度のIgGをウイルスとともに室温で1時間共インキュベートした。MDCK細胞を播種した6ウェルプレートをPBSで洗浄し、その後、200ulのウイルス-IgG混合物に感染させた。37℃で45分間のインキュベーションの後、ウイルス及びIgGを細胞から吸引し、適切な抗体濃度及びTPCKトリプシンを含む寒天オーバーレイを各々のウェルに添加した。プレートを37℃で2日間インキュベートした。プラークを、抗H9抗体G1-26を用いる免疫染色により可視化した(Bouvierらの文献、2008, J Virol 82, 10052)。
(6.4.1.9 シュードタイプ粒子中和アッセイ)
シュードタイプ粒子産生の手順を以前の研究を基に改変した(Evansらの文献、2007, Nature 446, 801)。簡潔に述べると、293-T細胞に、(i)所望のレポーターを含むプロウイルス(V1-GLuc)、(ii)HIV Gag-Pol、(iii)キメラcH9/1血球凝集素タンパク質、及び(iv)B型インフルエンザ/山形/16/88ノイラミニダーゼ(NA)をコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした(Tscherneらの文献、2010, J Virol Methods 163, 336)。V1-GLucプラスミドは、細胞から分泌され、細胞上清中で検出することができるルシフェラーゼタンパク質をコードしている。トランスフェクションから48時間後、上清を回収し、その後、cH9/1粒子調製物を精製するために濾過した(0.45μm孔径)。その後、粒子を(感染後に線形範囲内のルシフェラーゼ活性を与えることが判明している量で)様々な濃度(50μg/ml、10μg/ml、及び2μg/ml)の精製ヒトIgGとともにインキュベートし、MDCK細胞に添加した。感染が6時間進行した後、細胞を洗浄し、新鮮な上清を細胞に加えた。シュードタイプ粒子を用いる感染は全て、1μg/mlポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で実施した(Tscherneらの文献、2010, J Virol Methods 163, 336)。感染から48時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
(6.4.2 結果)
(6.4.2.1 キメラ血球凝集素に基づく試薬の開発)
解析ツールとしての役割を果たすキメラ血球凝集素(cHA)構築物を作製して、ヒト血清中のストーク抗体の存在を評価した。C52とC277の間に存在し、かつHAストークとヘッドの境界の線引きをするジスルフィド結合を利用することにより、PR8ウイルスのHA由来のストークドメインの上にH6又はH9血球凝集素の球状ヘッドドメインをコードする発現プラスミドを人為的に作製した(図14A)。ストーク抗体を含むヒト血清試料は、H6又はH9ウイルスに対する血球凝集素阻害(HI)活性について陰性である可能性が高い(これらのウイルス亜型に対して事前に暴露されていないことによる)が、H1血球凝集素ストークに対して事前に暴露されているためにcH6/1又はcH9/1構築物と反応するであろうと仮定した。これらのツール、組換え発現cHAタンパク質、及びcHAを発現するウイルスを用いて、ヒト血清試料中のストーク抗体の相対量を評価し、該ストーク特異的抗体によって媒介される中和活性を測定することができた。
解析的アッセイ用のcH6/1及びcH9/1タンパク質を生成させるために、キメラHAをコードするプラスミドを作製し、バキュロウイルス発現系で可溶性タンパク質として発現させた。2μgの全タンパク質のクマシー染色から、これらの調製物における高い純度が示唆される(図17A)。cH9/1のわずかな移動の遅れは、cH9/1ヘッド上での占められたグリコシル化部位の数の増加の結果であると考えられる。cHAタンパク質を、HAの様々な部分と反応する抗体を用いるウェスタンブロット解析によりさらに特徴付けた。図17Bに示すように、cH6/1、cH9/1、及びPR8由来の全長HAのみが、PR8ストークに特異的なウサギポリクローナル抗血清と反応した。H6、H9、及びPR8のヘッドドメインに対するモノクローナル抗体により、キメラ構築物がPR8ストークの上に外来のヘッドを発現することが確認された。H3タンパク質は、陰性対照として使用され、汎H3抗体12D1を使用した場合にのみ検出された(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6, e1000796)。
中和ストーク抗体を検出する目的で、キメラ分子を発現する組換えウイルスもレスキューした。過去1世紀にわたるヒトインフルエンザウイルスは全て、N1又はN2亜型のNAをコードしているので、cH9/1N3再集合体ウイルスのレスキューにより、どの(N1又はN2)ノイラミニダーゼ抗体活性も測定することなく、ストーク特異的抗体の中和能力の評価が可能になると推論された。cH9/1N3ウイルス(H9球状ヘッドHAと、N3亜型ノイラミニダーゼとともに、H1ストークを発現する)を、リバースジェネティックスを用いてレスキューし、高力価になるまで発育鶏卵中で増殖させた。このウイルスのプラークアッセイ表現型は、PR8野生型ウイルスのプラークアッセイ表現型と同様であった(図14C)。ウイルス継代後のH9ヘッドの存在を確認するために、細胞をcH9/1N3ウイルスに感染させた。その後、感染細胞を、H9亜型血球凝集素タンパク質に特異的な抗体であるマウスmAb G1-26でプロービングした。汎H1ストーク特異的抗体6F12を用いて、野生型PR8ウイルス感染細胞とcH9/1N3ウイルス感染細胞の両方を検出した(図14B)。
(6.4.2.2 ストーク特異的抗体はcHAに結合し、それを中和する)
cH6/1及びcH9/1タンパク質をツールとして用いて、ステム抗体を検出することができることを確認するために、これらのcHAの使用を、HAストークと反応することが知られている抗体で最初に検証した。実際、H1 HAのストークと反応する抗体であるマウスmAb C179(Okunoらの文献、1993, J Virol 67, 2552)は、ELISAにより、用量依存的な形でバキュロウイルス発現cH6/1及びcH9/1タンパク質に結合した(図18A及びB)。
次に、cH9/1N3ウイルスの複製がモノクローナル抗体6F12によって阻害され得るかどうかを確認した。このモノクローナル抗体は、H1インフルエンザウイルスに対する中和活性を有する(データは示さない)。抗体6F12は、プラーク減少アッセイにおいて、用量依存的な形でcH9/1N3ウイルスに結合して、それを中和することができ(図18C及びD)、4μg/mlを超える濃度で100%阻害が見られた。これらの結果は、キメラタンパク質及び組換えcH9/1N3ウイルスを用いて、中和活性を有するストーク抗体を検出することができるという仮説を立証した。
(6.4.2.3 pH1N1に感染した患者は、cHAに結合し、それを中和する高力価の抗体を有する)
cH6/1及びcH9/1可溶性タンパク質を用いて患者血液試料中のストーク反応性抗体を定量する前に、HI活性用の血清を、これら2つのHA亜型を発現するウイルスに対して試験した。A/アヒル/フランス/MB42/76(H6)及びcH9/1N3ウイルスを用いて、回収された成人及び小児血清試料の全てがHI陰性であることが確認された(結果は示さない)。
次に、血清とcH6/1及びcH9/1タンパク質との反応性をELISAにより試験した。pH1N1ウイルスに感染していない成人及び小児対象から回収された血清は、どちらのタンパク質ともほとんど反応性を示さなかった。しかしながら、pH1N1インフルエンザウイルスに感染した患者から回収された血清は、両方のcHA構築物に対する結合の増強を示し、pH1N1感染者由来の血清プールを未感染の成人及び小児の血清プールと比較したとき、IgG反応性の違いは、(同等の光学密度測定値を生じる希釈液と比べて)30倍を超えて大きかった(図15A及びB)。したがって、陰性のHIデータを考慮することにより、cHAタンパク質との反応性がストークドメイン中で生じると推論された。
ヒト血清のプール試料を用いて、HAステムの一部である、長いαヘリックス(LAH)に対するIgG結合も試験した。これらのIgGは、マウスにおける防御的免疫を媒介することが以前に示されていた(Wangらの文献、2010, Proc Natl Acad Sci U S A 107, 18979)。pH1N1に感染した患者由来の血清は、H1 LAHと反応する抗体を含有していたが、パンデミックウイルスに暴露されていない患者は、最小限のLAH特異的血清抗体を有していた(図15C)。
H5血球凝集素亜型は、H1 HAと同じ系統発生学的グループにあり、極めてよく似たストーク構造を共有する(Ekiertらの文献、2009, Science 324, 246)。興味深いことに、pH1N1に暴露された患者では、H5タンパク質と反応する血清抗体特異性が増大したが(図15D)、相同なH5亜型ウイルスに対する血清HI活性が全くなかった(データは示さない)。この結果は、pH1N1ウイルスへの暴露によって、ストーク特異的抗体により媒介されるある程度の抗H5免疫が付与された可能性があることを示唆した。
重要なことに、pH1N1に感染した患者では、H3血球凝集素タンパク質に特異的な血清抗体が増加しなかった(H3は、H1及びH5 HAとは別の系統発生学的グループにある)(図15E)。この結果は、pH1N1感染患者由来の血清中のストーク特異的抗体の力価の増強が通常の免疫刺激の機能ではなく;むしろ、H1ストーク抗体特異性がパンデミックウイルス株の感染によって選択的に増大したことを示している。
次に、これらのヒト試料中に見られるこれらのストーク反応性抗体が中和能力を有するかどうかを評価した。感染した成人及び未感染の成人由来の血清試料をプールし、血球凝集素ヘッドに結合する非特異的阻害因子(例えば:シアル酸含有分子及びレクチン)を除去するために、全IgGを精製した。これらの純粋なIgG調製物を用いて、55.5μg/mL全血清IgGを超える抗体濃度での完全阻害プラーク形成(図16A及びB)が達成された。ELISAデータによると、pH1N1感染者由来の血清を未感染の成人の血清と比較したとき、中和活性の約30倍の違いが観察された。mAb 6F12を標準として用いて、6F12によって媒介される中和活性とポリクローナルヒトIgG調製物によって媒介される中和活性との比較を行うことができた。cHAウイルスの100%中和をもたらした6F12の濃度とヒトIgGの濃度を比較することにより、最後の30日間にpH1N1に感染した患者由来の全ヒトIgGの7%が中和ストーク抗体を含むと推測された。
最後に、ストーク反応性抗体の中和能力を、シュードタイプ粒子感染アッセイを用いて評価した。このアッセイは、宿主細胞へのウイルス侵入時に生成されるルシフェラーゼ活性の読出しを有する。cH9/1タンパク質を発現するシュードタイプ化粒子を精製ヒトIgGとともにインキュベートし、中和活性を、細胞上清中のルシフェラーゼ酵素活性の欠如をもたらす粒子侵入の阻害により測定した(方法参照)。プラーク減少アッセイと一致して、シュードタイプ化粒子アッセイも、10μg/mlを超える全IgG濃度で粒子の100%中和を示した(図16C)。
(6.4.3 結論)
血球凝集素タンパク質の球状ヘッドに結合する抗体も含む調製物中でのストーク特異的抗体の選択的検出を可能にする、キメラ血球凝集素タンパク質及び該キメラタンパク質を発現するウイルスの形態の、新規の解析ツールを開発した。これらの新規の血球凝集素構築物は、不変のH1亜型ストークを異なる血球凝集素亜型由来の球状ヘッドドメインとともに(例えば: H1ストークをH6ヘッドとともに)有している。これを、血球凝集素タンパク質(19)のシステイン52と277の間に存在するジスルフィド結合を利用することにより達成し、介在配列を異なるHA亜型の配列と交換した。
これらのキメラ血球凝集素(cHA)構築物を用いて、pH1N1ウイルス感染が確認されたヒトの小コホートが、未感染の成人及びpH1N1ウイルスに感染していない小児対照と比べて高い力価のストーク特異的な中和抗体を生成させることが示された。これらの知見は、pH1N1感染に応答して生成される、血球凝集素(hemagglutintin)ストークと反応する抗体が、2009年のインフルエンザパンデミック以前に循環していた季節性H1N1ウイルスの絶滅の一因となった可能性が高いという仮説を支持する。
(6.5 実施例5:キメラ血球凝集素:異なる亜型及び系統発生学的グループに由来する球状ヘッドドメイン及びストークドメインを発現するインフルエンザウイルス)
この実施例は、異なる血球凝集素亜型及び異なる系統発生学的グループ由来の種々の球状ヘッド及びストーク組合せを包含するいくつかの機能的キメラインフルエンザウイルス血球凝集素、並びにこれらのキメラ血球凝集素を発現し、野生型インフルエンザウイルスの増殖特性と同様の増殖特性を有する組換えインフルエンザウイルスを記載している。これらのキメラ組換えウイルスは、野生型インフルエンザウイルスの増殖特性と同様の増殖特性を保有しており、ウイルス学的及び免疫学的アッセイでドメイン特異的抗体を測定するための試薬として使用することができる。
(6.5.1 材料及び方法)
(6.5.1.1 細胞及びウイルス)
293T及びMDCK細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手し、10%胎仔ウシ血清(HyClone; Thermo Scientific)及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco, Invitrogen)を補充したダルベッコの最小必須培地(DMEM)又はMEM(Gibco, Invitrogen)のどちらかの中で維持した。A/プエルトリコ/8/1934(PR8)及びA/パース/16/2009(パース/09)野生型(Alexander Klimov, CDCにより親切に提供されたもの)及び組換えウイルスを、特定病原菌を含まない10日齢の発育鶏卵(Charles River)中、37℃で2日間増殖させた。
(6.5.1.2 プラスミドの構築)
様々なキメラ血球凝集素をコードするプラスミドを、以前に記載されているものと同様の戦略を用いて構築した(例えば、Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-9682;及びHaiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)。簡潔に述べると、キメラHAの様々なセグメントを、SapI部位を含むプライマーでPCRにより増幅させ、SapIで消化し、アンビセンス発現ベクターであるpDZベクターのSapI部位に、多重セグメントライゲーションによりクローニングした。このベクターでは、vRNA転写がヒトRNAポリメラーゼIプロモーター及びマウスRNAポリメラーゼIターミネーターによって制御され、mRNA/cRNA転写がニワトリβアクチンポリメラーゼIIプロモーターによって制御される(例えば、Quinlivanらの文献、2005, J Virol 79:8431-8439参照)。本発明者らは、Daniel Perez(メリーランド大学)に対して、H7 HAプラスミド(Genbank ID: DQ017504)のことで深く感謝している。A/プエルトリコ/8/1934(PR8)遺伝子をコードするプラスミドを以前に記載されている通りに使用した(Haiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590)。
(6.5.1.3 ヌクレオチド配列受託番号)
本研究で使用される構築されたcHA遺伝子は全て、受託番号IRD-RG-684014、IRD-RG-684022、IRD-RG-684030、及びIRD-RG-684038の下、インフルエンザ研究データベース(Influenza Research Database)に寄託されている。キメラcH1/1、cH5/1、cH7/3、及びcH5/3は、それぞれ、A/プエルトリコ/8-RGcH1-1/34、A/プエルトリコ/8-RGcH5-1/34、A/パース/16-RGcH7-3/09、及びA/パース/16-RGcH5-3/09として記載されている。
(6.5.1.4 フローサイトメトリー解析)
細胞表面での血球凝集素タンパク質発現のレベルを評価するために、293T細胞に、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの適当なプラスミドをトランスフェクトするか、又はMDCK細胞をcHA発現組換えウイルスに感染させた。トランスフェクションから48時間後、293T細胞をトリプシン処理し、2%FBSを含むPBSに再懸濁させ、その後、モノクローナル抗体(mAb) 6F12(これは、本発明者らの実験室で作製された、グループ1 HAのストークドメインに広く反応するmAbである(データは示さない))(5μg/ml)で、又はH3 HAに対するmAb 12D1(5μg/mL)で染色した(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6:e1000796参照)。感染から12時間後、MDCK細胞をトリプシン処理により再懸濁させ、mAb 12D1で染色した。染色された細胞をBeckman Coulter Cytomics FC 500フローサイトメーターで解析し、結果を、FlowJoソフトウェアを用いて解析した。
(6.5.1.5 偽粒子生成及び侵入アッセイ)
偽粒子産生のための手順を以前の研究を基に改変した(例えば、Evansらの文献、2007, Nature 446:801-805及びTscherneらの文献、2010, J Virol Methods 163:336-43参照)。簡潔に述べると、本発明者らは、293T細胞に、(i)所望のレポーターを含むプロウイルス(V1-Gaussiaルシフェラーゼ)(Evansらの文献、2007, Nature 446:801-805)、(ii)HIV Gag-Pol(Evansらの文献、2007, Nature 446:801-805)、(iii)キメラ血球凝集素タンパク質、及び(iv)B/山形/16/88ウイルスノイラミニダーゼ(NA)をコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした。トランスフェクションから72時間後、上清を回収し、その後、濾過した(0.45μm孔径)。シュードタイプウイルス様粒子(VLP)の存在を血球凝集アッセイにより評価した。異なるVLP調製物を同じ4血球凝集単位に調整した後、MDCK細胞に接種した。形質導入の効率を増大させるために、偽粒子を用いる以下のアッセイは全て、1μg/mLポリブレン(Sigma)の存在下で実施した(例えば、Evansらの文献、2007, Nature 446:801-805及びTscherneらの文献、2010, J Virol Methods 163:336-43参照)。
侵入アッセイは、MDCK細胞に、異なるキメラ血球凝集素を発現し、かつGaussiaルシフェラーゼレポーターを含有する偽粒子を形質導入することにより実施した。形質導入から24時間後、細胞を新鮮な培地で3回洗浄して、接種材料中に存在する残留Gaussiaルシフェラーゼタンパク質を除去した。形質導入から48時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した(Evansらの文献、2007, Nature 446:801-805)。
(6.5.1.6 組換えキメラインフルエンザAウイルスのレスキュー)
プラスミドDNAからのA型インフルエンザウイルスのレスキューを以前に記載されている通りに実施した(例えば、Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-9682;及びHaiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)。組換え野生型(rWT)PR8ウイルスを作製するために、293T細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、1μgの8つのpDZ PR8レスキュープラスミドをコトランスフェクトした。cHA発現組換えウイルスを作製するために、野生型HAプラスミドを、所望のキメラHAをコードするプラスミドと置き換えた。トランスフェクションから6時間後、培地を、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM HEPES、及び1.5μg/ml TPCK(L-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン)処理トリプシン(Sigma)を含むDMEMと交換した。トランスフェクションから24時間後、8日齢の発育鶏卵にウイルス含有上清を接種した。37℃で2日間のインキュベーションの後、尿膜腔液を回収し、ニワトリ赤血球の血球凝集により、ウイルスの存在についてアッセイした。ウイルスストックの力価を、以前に記載されている通りに、MDCK細胞でのプラークアッセイにより測定した(Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-9682、Haiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590)。
(6.5.1.7 ウイルス増殖動態アッセイ)
組換えウイルスの複製特徴を解析するために、10日齢の発育鶏卵に、100プラーク形成単位(pfu)の野生型又はcHA発現組換えウイルスを接種した。尿膜腔液を回収し、その後、0、9、24、48、及び72感染後時間(hpi)で、ウイルス増殖についてアッセイした。尿膜腔液中に存在するウイルスの力価を、上で言及されている通りに、MDCK細胞でのプラークアッセイにより決定した。
(6.5.1.8 プラークの免疫染色)
プラークを、以前に記載されているプロトコルを用いて、A型インフルエンザ核タンパク質(NP)に対するmAb HT103で免疫染色することにより可視化した(Bouvierらの文献、2008, Journal of Virology 82:10052-8;及びSteelらの文献、2009, J Virol 83:1742-53)。
(6.5.1.9 ウェスタンブロット及び間接免疫蛍光解析)
コンフルエントなMDCK細胞を、表示された組換えインフルエンザウイルスに感染させるか(2の感染多重度[MOI])、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に37℃で1時間模擬感染させた。12hpiで、細胞を、以前に記載されている通りに、1×SDSローディングバッファーに溶解させた(例えば、Haiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)。還元された細胞ライセートを、A型インフルエンザウイルス核タンパク質(NP)に対するモノクローナル抗体(mAb)(HT103)、PR8 HAヘッドドメインに対するモノクローナル抗体(PY102)、Cal/09 HAヘッドドメインに対するモノクローナル抗体(29E3)、VN/04 HAヘッドドメインに対するモノクローナル抗体(mAb #8)、及びHAストークに対して反応する汎H3抗体である12D1を用いるウェスタンブロット解析により解析した。H7ヘッドドメインを検出するために、ポリクローナルヤギ血清NR-3152(A/FPV/オランダ/27(H7)ウイルスに対して作製されたもの、BEI Resources)を使用した。抗グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)抗体(Abcam)をローディング対照に使用した。増強化学発光タンパク質検出系(PerkinElmer Life Sciences)を用いて、タンパク質を可視化した。
免疫蛍光解析のために、15-mmカバースリップ上のMDCK細胞のコンフルエントな単層を、2のMOIで組換えウイルスに感染させた。15hpiで、細胞を固定し、メタノール-アセトン(比率、1:1)で、-20℃で20分間透過処理した。0.1%Tween 20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、細胞を、上記の抗体及びmAb 6F12とともに1時間インキュベートした。0.1%Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後、細胞を、Alexa Fluor 594コンジュゲート抗マウスIgG(Invitrogen)又はAlexa Fluor 594コンジュゲート抗ヤギIgG(Invitrogen)とともに1時間インキュベートした。最後の3回の洗浄の後、感染細胞を、Olympus IX70顕微鏡を用いる蛍光顕微鏡法により解析した。
(6.5.1.10 プラーク減少アッセイ)
プラーク減少アッセイを以前に記載されている通りに実施した(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6:e1000796参照)。Cal/09又はVN/04球状ヘッドドメインがPR8ストークの上にあるものから構成されるcHAを発現する約60〜80pfuの組換えウイルスを、様々な濃度(100、20、4、0.8、0.16、及び0.032ug/ml)のmAb KB2(これは、本発明者らの実験室で作製された広域中和性抗HAストーク抗体である(データは示さない))とともに、又はそれらなしで、240uLの全容量中、室温で60分間インキュベートした。6ウェルプレート中のMDCK細胞のコンフルエントな層をPBSで2回洗浄し、その後、抗体-ウイルス複合体とともに37℃で40分間インキュベートした。その後、接種材料を吸引除去した後に、上記の濃度の抗体を補充した又は抗体を補充していないTPCK-トリプシン寒天オーバーレイを各々のウェルに添加した。プレートを37℃で2日間インキュベートした。その後、プラークを、抗A型インフルエンザNP抗体HT103を用いる免疫染色により可視化した(Bouvierらの文献、2008, Journal of Virology 82:10052-8;及びSteelらの文献、2009, J Virol 83:1742-53)。
(6.5.1.11 シュードタイプ粒子中和アッセイ)
シュードタイプ粒子産生の手順は上記のものと同じであり、VN/04(H5)ヘッド又はCal/09(H1)ヘッドのどちらか及びPR8(H1)ストークから構成されるcHA構築物をB型インフルエンザ/山形/16/88ウイルスNAとともに使用した。その後、粒子を、100μg/mLから0.032μg/mLまでの5倍希釈の様々な濃度のmAb KB2とともにインキュベートした。その後、これらの混合物をMDCK細胞に添加した。形質導入が6時間進行した後、細胞を洗浄し、新鮮な培地を細胞に加えた。シュードタイプ粒子を用いる形質導入は全て、1μg/mLポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で実施した(Tscherneらの文献、2010, J Virol Methods 163:336-43)。形質導入から48時間後、侵入がmAb KB2によって遮断された程度をアッセイするために、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
(6.5.2 結果:)
(6.5.2.1 キメラ血球凝集素の作製)
Cys52-Cys277ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が保存されているかどうかを確かめるために、H1、H3、H5、及びH7亜型のA型インフルエンザウイルスHA配列のアラインメントを本研究で使用した。これらのシステイン残基は、HA亜型にわたって極めて保存されているので、グループ1 HAとグループ2 HAの両方について、Cys52-Cys277ジスルフィド結合を、ヘッドドメインとストークドメインの間を線引きする点として使用した。Cys52とCys277の間の配列をヘッド領域と定義し、分子の残りの部分をストークと定義することにより、種々のHA亜型由来の新規のヘッド及びストーク組合せをコードする構築物を作製することができることが理論的に説明された(図19A及びB)。
血球凝集素亜型のストーク領域間に存在するアミノ酸同一性度により、本発明者らは、ヘッドドメインの交換が可能であり得るとの意をさらに強くした。ヘッドドメインと比べて、より高いパーセンテージのアミノ酸同一性が、全ての亜型にわたってストークドメイン中に見られた(図20)。
インフルエンザHAの16種の亜型は全て、2つの系統発生学的グループに分類される(Palese及びShawの文献、2006, オルトミクソウイルス:ウイルス及びその複製(Orthomyxoviridae: the virus and their replication)、フィールズのウイルス学(Fields virology)、第5版、1647-1690)。より高いパーセンテージのアミノ酸同一性が特定のグループのストーク領域内で観察されたので(図20)、及びグループ1ウイルス由来のヘッドドメイン及びストークドメインを含む1つのcHAウイルスの作製に成功していたので(Picaらの文献、2012, PNAS 109:2573-8)、グループ内cHAの作製を試みた。グループ1については、パンデミックH1 Cal/09 HA又はVN/04球状ヘッドドメインのどちらかをPR8(H1)HA由来のストーク領域とともにコードする2つのキメラ血球凝集素構築物(それぞれ、cH1/1及びcH5/1)を作製した(図19B)。同様の戦略を適用して、異なるグループ2インフルエンザ株由来のヘッドドメイン及びストークドメイン: Alb/01(H7、グループ2)由来のヘッド及びパース/09(H3、グループ2)HA由来のストーク領域を発現するキメラHA(cH7/3)を作製した(図19B)。最後に、ヘッドドメイン及びストークドメインを交換して、パース/09 HA(H3、グループ2)ストークの上にVN/05 HA(H5、グループ1)のヘッドドメインを含むグループ間キメラHA(cH5/3)を作製することができるかどうかを評価した(図19B)。
これらのプラスミドの構築後、様々なキメラHA構築物が発現されて、野生型HAのように細胞表面に輸送されることができるかどうかを明らかにするために、実験を実施した。それぞれ、H1及びH3ストークドメイン特異的抗体で表面染色した後、一過性にトランスフェクトされた293T細胞の蛍光活性化セルソーター(FACS)解析を実施した。この方法を用いて、4つ全てのキメラ構築物の細胞表面発現を検出した(図21)。しかしながら、野生型PR8 HAと比べて、より少ない表面タンパク質発現がcH1/1構築物について検出され、これは、このキメラDNA構築物についてのCal/09 HAのヘッドドメインと関連する固有の性格又はより低いトランスフェクション効率に起因する可能性があった。さらに、cH7/3構築物とcH5/3構築物の細胞表面発現パターンに違いがあったことは注目すべきことである。この「二重ピーク」発現パターンは、トランスフェクション条件でのみ観察され、再現性があった。それは、cH7/3発現組換えウイルスの感染によっても、cH5/3発現組換えウイルスの感染によっても検出されなかった(図21)。したがって、これらのデータは、cHAがゴルジ複合体から細胞表面へと輸送されることができることを示している。
次に、ルシフェラーゼレポーター構築物を含有し、かつcHA及び野生型B/山形/16/88ウイルスNAを粒子表面に発現するレトロウイルスシュードタイプ粒子を用いて、MDCK細胞の形質導入による様々なcHAの侵入特徴を調べた。cHAタンパク質によって媒介される侵入効率をルシフェラーゼの読出しにより検出した。同程度のレベルのシュードタイプ粒子媒介性ルシフェラーゼ発現が、cH5/1、cH7/3、及びcH5/3キメラHA、並びに対応する野生型タンパク質について観察された(図22)。cH1/1 HAをコードする粒子は、他のHA構築物と比べてより低いルシフェラーゼレベルを発現し、これは、プロデューサー細胞株におけるcH1/1発現がより低く、したがって、粒子1つ当たりのHA三量体がより少ないことか、又はcH1/1 HAの侵入特性の効率がより低いことかのどちらかによるものである可能性があった。シュードタイプ粒子を4血球凝集素単位に標準化したとき、赤血球に対する結合の違いのために、シュードタイプ粒子の実際の量が変化し得るということもあり得る。
(6.5.2.2 キメラ血球凝集素を有する組換えインフルエンザウイルスの作製)
本発明者らのcHA構築物は効率的に発現され、細胞表面に輸送されることが明らかにされていたので、cHAをコードする組換えインフルエンザウイルスをレスキューすることができるかどうかを評価するための研究を実施した。以前に発表されたプロトコル(例えば、Fodorらの文献、1999, J Virol 73:9679-9682;及びHaiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)を用いて、様々なcHAを含むウイルスを作製するのに成功した。得られたウイルスをプラーク精製し、10日齢の発育卵中で増幅させ、キメラセグメントをRT-PCRにより解析し、シークエンシングした。どの場合も、ウイルスは、予想されたキメラHAセグメントを有し、他のHAセグメントを有さないことが分かった(データは示さない)。
レスキューされたウイルスにおけるcHAの存在を感染細胞のウェスタンブロット(図23)及び間接免疫蛍光(図24)によりさらに確認した。MDCK細胞を、rWT PR8、野生型パース/09、cH1/1、cH5/1、cH7/3、及びcH5/3ウイルスに感染させた。cH1/1及びcH5/1キメラHAタンパク質を、それぞれ、Cal/09(H1) HAのヘッドドメインに対して反応する抗体(29E3)(Medinaらの文献、2010, Nature Communications 1:28)又はVN/04(H5) HAのヘッドドメインに対して反応する抗体(mAb #8)(Steelらの文献、2009, J Virol 83:1742-53)を用いて、対応する試料中で検出した(図23)。汎H3抗ストークmAbの12D1を用いて、cH7/3とcH5/3と野生型パースHAの間で同程度の発現レベルが観察された(Wangらの文献、2010, PLoS Pathog 6:e1000796参照)。野生型パースHAは、ゲル上でのより遅い移動を示し、これは、球状ヘッドドメイン中のグリコシル化部位の数がより多いためである可能性が高い。cH7/3又はcH5/3感染試料に対して、それぞれ、抗H7ポリクローナル抗体(NR-3152)又は抗H5モノクローナル抗体(mAb #8)を使用することにより、正確なHAヘッドドメインがH3ストークの上に発現することが確認された。陽性バンドは、どちらの場合にも検出された。
免疫蛍光研究について、感染条件は、ウェスタンブロット解析に使用した条件と同様であった。感染細胞を、図23で使用されているような対応する抗体で染色した。感染細胞は全て、キメラ及び野生型HA、並びにA型インフルエンザウイルスNPの予想される発現を示した(図24)。
(6.5.2.3 組換えウイルスの複製特徴)
野生型及び組換えウイルスの増殖特性を、10日齢の発育鶏卵中、37℃で評価した(図25A)。キメラHAを発現する組換えウイルスの増殖動態の比較のために、rWT PR8ウイルスを含めた。cH5/1及びcH5/3ウイルスは、rWT PR8ウイルスの複製動態と同程度の複製動態を示した。cH7/3ウイルスは、48hpiで、rWT PR8と同様のピーク力価(1×109PFU/mL)にまで増殖したが、9hpiで、rWT PR8ウイルスと比べてウイルス力価が2log低下した。全ての時点でのウイルス力価の低下によって示されるように、cH1/1ウイルスは、rWT PR8ウイルスと比べて弱毒化された。それにもかかわらず、cH1/1ウイルスは、約108PFU/mLというかなりのピーク力価に達した。パース/09野生型ウイルスは、発育卵中で同程度のピーク力価にまで増殖する(データは示さない)。
キメラウイルスの各々のプラーク表現型もMDCK細胞で評価した。図25Bに示すように、全てのウイルスが同程度の大きさのプラークを形成した。これらのデータを合わせて、キメラHA構築物が正確にフォールディングし、生物学的に機能的であることが確認される。
(6.5.2.4 ストーク特異的抗体はcHA発現ウイルス及び偽粒子を中和することができる)
最後に、ストーク特異的抗体を、本発明者らが新たに作製した、cHAを発現する組換えウイルスを中和する能力について試験した。プラーク減少アッセイを、広範なグループ1反応性を有するHAストーク特異的抗体であるmAb KB2の存在下で、又は抗体なしで実施した。mAb KB2が、同様の効率でかつ用量依存的な形で、全てのcHA発現ウイルスを中和することが示された。100ug/mLで、mAb KB2は、cH1/1及びcH5/1ウイルスを、100%の効率で完全に中和することができ、4ug/mL程度の低い濃度でもいくらかの中和活性があった(図26A)。
これらの結果を確認するために、シュードタイプ粒子阻害アッセイをmAb KB2を用いて実施した。cH1/1又はcH5/1及びB型インフルエンザウイルスNAを発現するシュードタイプ粒子を、mAb KB2の存在下で又は抗体なしで、MDCK細胞に添加した。形質導入から48時間後、上清を回収し、ルシフェラーゼ活性を測定した。予想された通り、mAb KB2は、cH1/1及びcH5/1シュードタイプ粒子の侵入を、4ug/mLを超える濃度で、用量依存的な形で阻止した。シュードタイプ粒子の侵入を阻害するのに、プラーク減少アッセイで使用される濃度と比べてより低い濃度のmAb KB2で十分であったが、シュードタイプ粒子の表面でのHA三量体の組込みがより少ないと想定されていたので、これは予想された結果であった(Cortiらの文献、2010, The Journal of Clinical Investigation 120:1663-73)。全ウイルスをシュードタイプ粒子と対比させて含むアッセイにおいて、mAbの中和能力が異なるというこの現象は、他の研究で認められている(Cortiらの文献、2010, The Journal of Clinical Investigation 120:1663-7321; Suiらの文献、2009, Nature Structural & Molecular Biology 16:265-73)。
(6.5.3 結論)
ヘッドドメインとストークドメインの境界を定める保存されたジスルフィド結合Cys52-Cys277を利用することにより、異なるHA球状ヘッドドメインを有するキメラHAタンパク質を有するインフルエンザウイルスを作製するための新しい戦略を開発した。したがって、もとのヘッドドメインを別のHAのヘッドドメインと置換することにより、同じストークを有するが、異なる球状ヘッドを有する一連のキメラHAを作製した。この設計を、PR8ストークドメインをCal/09及びVN H5球状ヘッドとともに含む、多数の亜型にわたって検討した。さらに、H7球状ヘッドをH3ストークドメイン上に配置した。これらの構築物は、両方の系統発生学的グループのインフルエンザHAタンパク質を網羅する。各々の構築物は細胞表面に発現し、融合活性を保持した。キメラHAを有する組換えウイルスの作製により、HAが正しくフォールディングし、生物学的機能を保持することがさらに立証された。
(6.6 実施例6:普遍的なインフルエンザワクチンとしてのキメラ血球凝集素構築物)
この実施例は、独特な血球凝集素ヘッド及びストーク組合せを含むタンパク質である、キメラ血球凝集素(cHA)構築物のワクチン接種により誘発されることができるストーク特異的免疫応答の防御効力を示している。
(6.6.1 材料及び方法)
(6.6.1.1 細胞及びウイルス)
293T及びMDCK細胞をATCCから入手し、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)及び最小必須培地(どちらもGibco製)中で維持した。各々に、10%胎仔ウシ血清(HyClone)及び100ユニット/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン(Pen/Strep, Gibco)を補充した。
インフルエンザウイルスA/フォートモンマス/1/1947(FM1)及びA/ネーデルラント/602/2009をマウス肺で継代し、その後、10日齢の発育鶏卵中で48時間増殖させた。多塩基性切断部位が除去された低病原性A/ベトナム/1203/04(VN04):PR8 2:6再集合体ウイルス(例えば、Steelらの文献、2009, J Virol 83:1742-1753参照)と、B/山形/16/1988ウイルスとを、ぞれぞれ、10日齢の発育鶏卵中、37℃で48時間又は33℃で72時間増殖させた。
組換えインフルエンザウイルスを上記のような及び以前に記載されているようなリバースジェネティックス系により産生した(例えば、Quinlivanらの文献、2005, J Virol 79:8431-8439参照)。H9ウイルスのHA球状ヘッドドメインがH1ストーク(PR8ウイルス由来)の上にあるものを発現するウイルスであるcH9/1 N1ウイルスと、cH5/1(H5ヘッド(VN04)、H1ストーク)N1ウイルスとを、以前に記載されているのと同様の方法でレスキューした(例えば、Picaらの文献、2012, PNAS USA 109:2573-2578参照)。YAM-HAウイルスを作製するために、B/山形/16/1988(WT YAM) HAの細胞外ドメインをA/プエルトリコ/8/1934ウイルス HAの対応するドメインと置換した(例えば、Haiらの文献、2011, Journal of virology 85:6832-6843参照)。他の7つのWT YAMウイルスセグメントをコードするリバースジェネティックプラスミドは、以前の研究で構築された(例えば、Haiらの文献、2008, J Virol 82:10580-10590参照)。レスキューの後、cHA発現組換えウイルスを、10日齢の発育鶏卵中、37℃で48時間増殖させた。YAM-HAウイルスを、8日齢の発育鶏卵中、33℃で72時間増殖させた。
組換えウイルス及び野生型ウイルスの力価を、上記のように、TPCKトリプシンの存在下、MDCK細胞(ATCC)で測定した。ELISAアッセイで使用するために、cH5/1 N1ウイルスを30%ショ糖クッション上で部分精製した。cH9/1 N1、cH5/1 N1、及びFM1ウイルスを勾配遠心分離で精製し、陽性対照ワクチンとして使用されるように、PBSに希釈した(1:4000)ホルムアルデヒドで不活化した。
(6.6.1.2 cH6/1及びcH9/1タンパク質構築物の作製)
可溶性cH6/1及びcH9/1タンパク質を、上記のような及び以前に記載されているようなバキュロウイルス発現系を用いて生成させた(例えば、Picaらの文献、2012, PNAS USA 109:2573-2578参照)。簡潔に述べると、バキュロ転移ベクターを最初に作製し、次いで、Sf9細胞へのバクミドのトランスフェクションを行った。その後、組換えバキュロウイルスを用いて、High Five細胞に10のMOIで感染させた。感染から96時間後、上清を回収し、その後、Ni-NTA樹脂(Qiagen)とともに4℃で2時間インキュベートして、Hisタグ化組換えcHAタンパク質を精製した。スラリーをカラムに充填し、洗浄した後、pH 8の溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール)中で溶出させた。タンパク質を含むプール画分をPBS中でバッファー交換し、10-kDa分子質量カットオフを有するAmicon Ultra遠心分離フィルターユニット(Millipore)を用いて、スイング式バケットローター中で濃縮した。タンパク質の純度及び同一性を、SDS/PAGE、クマシー染色、及びウェスタンブロットにより試験した。最終的なタンパク質濃度をブラッドフォード試薬で決定した。
(6.6.1.3 動物)
動物に、食餌及び水を自由に利用することを許し、12時間の明/暗周期で維持した。全ての鼻腔内処置のために、雌の6〜8週齢BALB/cマウス(Jackson Laboratories)を0.1mlのケタミン/キシラジン(0.15mgケタミン及び0.03mgキシラジン)の腹腔内(IP)注射で麻酔した。
(6.6.1.4 ワクチン接種及び感染実験)
未感作の6〜8週齢の雌BALB/cマウスに、cH9/1タンパク質を、アジュバントR848(Invitrogen)の存在下で鼻腔内に(10ug)、及びMF59様アジュバント(Invitrogen)であるAddavaxとともに腹腔内に(10ug)ワクチン接種した。初回免疫から3週間後、動物をcH6/1タンパク質又はBSA(BioRad)で追加免疫した。追加免疫ワクチン接種も鼻腔内(10ug)及び腹腔内(10ug)に投与したが、ポリI:Cをアジュバント(Invitrogen)とした。不活化FM1ウイルス(1ug)を50ulの容量で陽性対照として筋肉内投与した。追加免疫から3週間後、動物から採血し、血清を回収し、動物を5 LD50のFM1ウイルスに感染させた。体重を感染後14日間モニタリングした。
他の実験において、動物を、cH9/1をコードするプラスミドDNA(80ug、TriGrid送達系; Ichor Medical Systems)で初回免疫し、次いで3週間後、ポリI:Cとともに鼻腔内(10ug)及び筋肉内(10ug)投与されるcH6/1又はcH9/1(対照)タンパク質で追加免疫した。3週間後、cH5/1又はcH9/1(対照)タンパク質で追加免疫を繰り返した。対照動物にも同じく、cH9/1をコードするDNAをDNA電気穿孔したが、(処置群と同様の方法で)BSAで2回追加免疫した。陽性対照動物は、不活化FM1もしくはPR8ウイルス(1μg)又は1μgのpH1N1一価スプリットワクチンのどちらかを筋肉内に受容した(BEI)。次いで、追加免疫から3〜5間後、動物を、5 LD50のPR8もしくはFM1、又は10 LD50のpH1N1ウイルスに感染させた。感染の48及び24時間前に、CD8+ T細胞除去に使用される動物を、300μgの抗CD8+ T細胞抗体(ATCCから購入したハイブリドーマ株2.43由来のもの)で処置し(例えば、M.L. Salemの文献、2000, Int. J. Immunopharmacol. 22:707参照)、5 LD50のPR8ウイルスに感染させた。体重を感染後14日間モニタリングした。20%カットオフを全てのウイルスに使用した。
他の実験のために、マウスにYAM-HA又はWT YAMウイルスを接種し、次いで3週間後、ポリI:Cの存在下、BSA又はcH6/1タンパク質を筋肉内及び腹腔内にワクチン接種した。未感作動物は、さらなる対照としての役割を果たした。全ての動物から採血し、ワクチン接種から3〜5週間後、250 LD50のcH9/1 N1ウイルス、又はPR8バックグラウンドで多塩基性切断部位が除去された10 LD50の2:6再集合体H5ウイルス(例えば、Steelらの文献、2009, J Virol 83:1742-1753参照)に感染させた。ホルムアルデヒドで不活化したcH9/1 N1ウイルス(1ug)及びcH5/1 N1ウイルスを、適切なウイルス感染の陽性対照として、50ulの容量で筋肉内投与した。動物が感染後にその初期体重の30%超を失った場合、施設内ガイドラインに準拠して、動物を安楽死させた。20%カットオフを低病原性のcH9/1 N1及びA/ネーデルラント/602/2009ウイルスの感染に使用した。これら2つのウイルスを用いる感染については、全ての対照の死亡又は大幅な体重減少を評価するために、よりストリンジェントな用量を使用した(250又は10 LD50)。
(6.6.1.5 酵素結合免疫吸着アッセイ)
Immulon 4HBX(Thermo Scientific)プレートに、5ug/mLになるまでPBSに希釈した部分精製cH5/1 N1ウイルスを一晩コーティングした。プレートを、3%脱脂粉乳を含む0.1%Tween 20-PBS(TPBS)で1時間ブロッキングし、その後、1%粉乳を含むTPBSに連続希釈したマウス血清とともに、室温で1時間インキュベートした。3回洗浄した後、プレートを、アルカリホスファターゼ(AP)結合抗マウスIgG(γ鎖特異的、Invitrogen)とともに室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをTPBSで3回洗浄し、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)基質(Zymed)で発色させ、0.5M NaOHで停止させ、405nmの光学密度で読み取った。全ての実験のために、Synergy 4(BioTek)プレートリーダーを使用した。
ストーク特異的抗体力価を上記のようなELISAにより検出した。ストーク特異的反応性を定量するために、PR8抗原を用いて、ELISAプレートをコーティングした。ワクチン接種マウスにおけるストーク特異的抗体の中和能力を検出するために、血清をプールし、全血清IgGを精製した。
H5 HAを発現する偽粒子を、以前に記載されている通りに、偽粒子侵入アッセイで使用した(例えば、Haiらの文献、2012, J. Virol. 86:5774-5781及びN. Picaらの文献、2012, PNAS 109:2573-2578参照)。侵入すると、偽粒子は、ルシフェラーゼレポーターを発現する。IgGによるこの侵入の阻害を、IgG処置していない対照と比べた発現のパーセンテージとして定量した。動物は、H5球状ヘッドドメインに暴露されていなかったので、これらのアッセイは、ワクチン接種によって産生されるストーク特異的抗体がウイルスを中和する程度を決定した。モノクローナル抗体CR6261、及びB型インフルエンザ野生型感染マウス由来の精製IgGを対照として使用した。
(6.6.1.6 プラーク減少中和アッセイ(PRNA))
まず、mAbの希釈液を、60〜80プラーク形成単位(pfu)のウイルス(cH9N1 A型インフルエンザウイルス)とともに、RTで1時間、シェーカー上でプレインキュベートした。その後、ウイルス及び精製IgG混合物を用いて、MDCK細胞の単層に、2連で、12ウェルフォーマットで感染させ、10分毎に間欠的に揺り動かしながら、37℃で1時間インキュベートした。寒天オーバーレイに、対応するIgG希釈液を補充した。2感染後日(dpi)で、単層を4% PFA/1×PBSで30分間固定した。細胞を、5%NF-ミルク/1×PBSで、RTで30分間ブロッキングし、状況に応じて、いずれかのH9特異的モノクローナル抗体(5μg/mL)とともに、RTで1時間インキュベートした。HRPにコンジュゲートした抗マウス二次抗体を1:1000希釈で二次抗体として使用した。プラークを、TrueBlueペルオキシダーゼ基質(KPL社)を用いて可視化し、反応を水道水で停止させた。プラークを各々の抗体について計数し、mAbなしの群と比べて、パーセント阻害を計算した。
(6.6.1.7 統計学的検定)
統計解析を、片側スチューデントT検定(Prism4, GraphPad)を用いて実施した。図29Cについて、値は全て、平均値の標準誤差付きの平均としてプロットされている。生存の差は、ログランク有意検定によるカプランマイヤー生存解析で計算した。
P値を用いる解析については、0.05又はそれ未満のP値を統計的有意とみなす。分散が、統計的に異なるものと決定される場合は、ウェルチの補正を使用した。0.05又はそれ未満のP値を統計的有意とみなす。ストーク血清反応性を図29Cの最大体重減少と比較したとき、Iglewicz及びHoaglinの方法(Iglewicz, B.及びH., D.の文献、1993. 第16巻:外れ値の検出及び処理方法(How to detect and handle outliers.)、E. Mykytka(編)、品質管理におけるASQC基本参考文献:統計的技術(The ASQC Basic References in Quality Control: Statistical Techniques). American Society of Quality Control)参照)に従って、1つの値を外れ値(修正Z-スコア>平均を上回る3.5標準偏差)として検出し、解析から除外した。
(6.6.2 結果)
(6.6.2.1 cHA構築物の順次ワクチン接種はHAストーク特異的抗体を誘発し、致死的インフルエンザ感染からの防御をもたらす)
異なる抗原性を有するウイルス由来の球状ヘッドドメインを発現する構築物が、HAのストークドメインに対するポリクローナル応答を刺激することができると仮定した。これを検証するために、まず、マウスに、HAのストークがA/プエルトリコ/8/1934(PR8)ウイルスに由来するものであり、かつヘッドがH9分離株に由来するものであるcH9/1可溶性タンパク質を、アジュバントとともにワクチン接種した。初回免疫から3週間後、分子のストークドメインに対する液性応答を刺激する目的で、マウスを、第二の可溶性cHAであるcH6/1(H6ウイルス由来のヘッド、PR8ウイルス由来のストーク)で追加免疫した。(不活化FM1ウイルスをワクチン接種したマウスは、陽性対照としての役割を果たした)。追加免疫から3週間後、マウスから採血して、H1ストークドメインに対する血清反応性を評価し、その後、マウスに適応したA/フォートマウンモス(Fort Mounmoth)/1/1947(FM1)ウイルスに感染させた。図27Aに示すように、ワクチン接種マウスは、HAストークドメインに対する血清抗体応答を生じさせた。FM1に感染した後、動物は、相当な量の体重を失ったが(図27B)、7日後に、90%の全生存率を取り戻した(図27C)。マウスがH9及びH6ウイルスの球状ヘッドドメインにしか暴露されていなかったとしても、全てのマウスがFM1ウイルスに対してHI陰性であることが立証され、それにより、ワクチン接種から誘発される防御がストークドメインに特異的な免疫応答の結果であることが確認された。したがって、PR8に基づくcHAのワクチン接種は、FM1ウイルス感染に対して防御的であるストーク特異的免疫をもたらす。
(6.6.2.2 cH6/1タンパク質のワクチン接種はcH9/1 N1ウイルス感染からの防御を媒介するストーク特異的免疫を誘発する)
2つの異なる可溶性cHA構築物を投与することにより、抗体応答をストークに対して生じさせたが、FM1感染後、かなりの程度の罹病が見られた。マウスは、インフルエンザウイルスに対して免疫学的に未感作であるので、HAストークに対する高い血清抗体力価を誘導するために、インフルエンザウイルスへの多重暴露と、それに続く、抗原性が異なるヘッドの導入が必要とされる可能性があった。血球凝集素ストークに対する特異性を有する血清抗体力価の刺激の増強は、感染も必要とする可能性があり、cHAタンパク質のみによる初回免疫及び追加免疫後の強力な防御が観察されない理由を説明することができる。
ウイルス血球凝集素に対する免疫応答を刺激するが、他のウイルスタンパク質に対する防御的免疫を生じさせないために、PR8ウイルス由来のHAの細胞外ドメインを発現する組換えB/山形/16/1988ウイルス(YAM-HA)を構築した(例えば、Haiらの文献、2011, Journal of virology 85:6832-6843参照)。インフルエンザウイルスへの事前暴露を模倣するために、マウスにYAM-HAを接種し、次いで3週間後、BSA又はcH6/1タンパク質をワクチン接種した。さらなる対照として、マウスを野生型B/山形/16/1988(WT YAM)ウイルスに感染させ、BSAをワクチン接種した。その後、HAストークのみに対する免疫応答の防御的性質を決定的に示すために、cH9/1(H9ヘッド、H1ストーク)を発現するA型インフルエンザウイルスを感染ウイルスとして使用した。この場合も、動物は、H1及びH6ウイルス由来の球状ヘッドドメインに暴露されるので、cH9/1 HAを発現するウイルスの感染後に見られる防御は、H1ストークドメインに対する免疫の結果である可能性が最も高い。
図28Aに示すように、YAM-HAに暴露された後にcH6/1タンパク質ワクチンを受けた動物は、PR8バックグラウンドでcH9/1を発現するウイルスの250 LD50感染から完全に防御された。cH6/1可溶性タンパク質をワクチン接種した動物は、BSAをワクチン接種した動物と比べて統計的により少ない体重を3、4、及び5日目に失った。この体重減少からの防御は、BSAをワクチン接種したコホートと比べて、cH6/1をワクチン接種した群における生存の延長をもたらした(p=0.038;図28B)。未感作動物及びWT YAMを接種した動物は、感染から防御されず、他のワクチン接種群で見られた防御はいずれも、ウイルスの複製の結果ではなく、代わりに、H1ストークドメインに対する特異的な応答であったことを示している。動物は、H1及びH6ウイルス由来の球状ヘッドドメインに暴露され、かつcH9/1感染ウイルスに対してHI陰性であったので、ここで見られた防御は、H1ストークドメインに対する免疫の結果であると考えられる。
HAストークに対する特異性を有するモノクローナル抗体が、季節性H1N1ウイルスに感染した又は該ウイルスに対するワクチン接種を受けた個体から単離され(例えば、Cortiらの文献、2010, The Journal of clinical investigation 120:1663-1673; Cortiらの文献、2011, Science 333:850-856; Ekiertらの文献、2011, Science 333:843-850; Suiらの文献、2009, Nat Struct Mol Biol 16:265-273; Throsbyらの文献、2008, PLoS One 3:e3942参照)、かつストーク力価が、より低いレベルではあるが、pH1N1ウイルスに感染していない個体で認められる(例えば、Picaらの文献、2012, PNAS USA 109:2573-2578参照)ことは注目すべきことである。したがって、YAM-HA接種動物がある程度のストーク力価を生じさせることができることは驚くべきことではない。しかしながら、cH6/1構築物のワクチン接種は、血清ストーク力価を4倍(同等のOD値を生じさせる希釈の逆数(reciprocal dilutions))増大させ(図28C)、動物を大幅な体重減少及び死亡から防御した(図28A及び28B)。cH6/1構築物のワクチン接種が、ウイルスを100%の効率で中和するストーク特異的IgGの産生を誘発したのに対し(YAM-HA+BSA)(図28D)、初回免疫のみの動物由来の血清は、バックグラウンドを辛うじて上回る中和レベルを示した(YAM-HA+BSA)。実際、YAM-HAを接種し、その後、BSAをワクチン接種した動物は、WT YAMウイルスを接種し、BSAをワクチン接種した動物と統計的に同様の生存率を有していた(p=0.058)。対照的に、cH6/1タンパク質をワクチンとして使用すると、WT YAMを接種した動物の生存と比較した場合に極めて有意な率である、感染からの100%の生存がもたらされた(p<0.0001)。生存は、YAM-HAを接種し、BSAをワクチン接種したマウスの生存と比較した場合にも増加した(p=0.038)。これらの差は、偽粒子侵入アッセイでは反映されなかったが、それは、YAM-HA+BSAマウス及びYAM-HA+cH6/1マウス由来のIgGが、H5 HAをコードする偽粒子の侵入を同様の効率で阻害したためである(図28E)。後者のアッセイのみが、偽粒子の侵入を阻止する抗体の能力を検出することに留意するのは重要なことである。したがって、侵入の下流でのストーク抗体の作用及び/又は感染(免疫)細胞とのその相互作用は、このアッセイでは検出されない。これにより、中和の差がこれら2つの群で観察されず、インビボでの知見を反映しなかった理由を説明することができる。それにもかかわらず、これらの感染プロトコルによって誘発される抗体は、ストーク特異的であり、かつ広域中和性であった。感染ウイルスは、H1ウイルス由来のストークドメインのみをコードするので、見られた防御が、cH6/1ワクチン接種によって刺激されるHAストークドメインに対する宿主免疫応答の結果であったと結論付けることができる。
(6.6.2.3 cH6/1タンパク質のワクチン接種は致死的H5インフルエンザウイルス感染からマウスを防御する)
次に、cH6/1タンパク質のワクチン接種がH5ウイルスの感染からマウスを防御することができるかどうかを確かめた。上記のように、マウスに接種及びワクチン接種し、PR8バックグラウンドでA/ベトナム/1203/2004ウイルス由来のHA及びNAを発現する10 LD50の2:6再集合体ウイルスに感染させた(例えば、Steelらの文献、2009, J Virol 83:1742-1753参照)。予想された通り、未感作動物及びWT YAMウイルスを接種した動物は感染から防御されず、8日目までに感染が原因で死亡した。YAM-HAウイルスを接種し、BSAをワクチン接種した動物は、感染から辛うじて防御され、生存率は40%であった。防御の増大は、動物にcH6/1タンパク質をワクチン接種したときに見られ、生存は90%であった。2つのワクチン群間の生存率の差は、統計的有意に接近したが(p=0.06)、cH6/1タンパク質をワクチン接種したマウスは、統計的により長い時間生存した(p=0.037)(図29A及び29B)。HAストークに対する反応性と、H5感染後のモニタリング期間にわたる%最大体重減少とを比較したとき、より高い血清ストーク力価を有する動物が感染後により少ない体重を失う傾向にある逆相関が検出され(図29C)、cH6/1がHAストークに基づく免疫を増強することができるという考えを支持した。
ワクチン接種マウスが、それに対して免疫学的に感作されておらず、かつHI陰性であるHA球状ヘッドドメインを有する感染ウイルスを用いて、これらの結果は、ワクチン接種後の感染からの防御が、HAストークに対する免疫応答のみに基づいていたことを示している。受容体結合部位に対する交差反応性抗体が、ここで見られた防御において役割を果たし得る可能性を排除するために、マウスを全てHIについて試験し、そのそれぞれの感染ウイルスに対してHI陰性であることが分かった。
(6.6.2.4 cHAのワクチン接種はH1N1ウイルス感染からの防御を媒介するストーク特異的免疫を誘発する)
ストーク特異的抗体は、ヒト血清中で検出されている(例えば、図15A及び15B; M. Thorsbyらの文献、2008, PLoS One 3:e3942、D.C. Ekiertらの文献、2009, Science 324:246-251、D.C. Ekiertらの文献、2011, Science 333:843-850、J. Wrammertらの文献、2011, J. Exp. Med. 208:181-193、及びN. Picaらの文献、2012, PNAS 109:2573-2578参照)。過去のインフルエンザウイルスHAへの暴露がストーク特異的免疫応答の強力な生成にとって重要である可能性があるので、マウスにおけるインフルエンザウイルスに対する先在免疫を再現することができるかどうかを確認した。これにより、ウイルス感染後の罹病からより効率的に防御されると仮定した。これを達成するために、マウスを、cH9/1をコードするDNA発現ベクターで初回免疫し(例えば、J. Steelらの文献、2010, MBio 1(1), pii:e00018-10参照)、その後、可溶性cH6/1タンパク質、次いで、cH5/1タンパク質(H5ヘッド、H1ストーク)で追加免疫し、最後に、一連のH1N1ウイルスに感染させた(図30A〜30F)。FM1(図30A及び30B)、A/ネーデルラント/602/2009(pH1N1)(図30C及び30D)、並びにPR8ウイルス(図30E及び30F)に感染させた後、全てのcHAワクチン接種動物は感染から防御され、あるとしても、最小量の体重減少しか示さなかった。対照的に、cH9/1 DNAによる初回免疫の後にBSAを受容した陰性対照動物は、1匹の動物を除いて、相当な量の体重を失い、9日目までに感染が原因で死亡した(図30A〜30F)。感染実験の各々におけるcHAワクチン接種動物の生存は、対照の生存と有意に異なっていた(図30B、30D、及び30F)。誘発された防御がストーク特異的液性免疫の結果であることを確認するために、血清がELISAによりH1 HAに結合することができるにもかかわらず、全てのマウスが各々の感染ウイルスに対してHI陰性であることを確認し(図30G)、本発明者らのワクチン接種プロトコルによるストーク特異的抗体の産生が確認された。HAストーク内のエピトープに対するCD8 T細胞が、ここで見られた防御において役割を果たし得る可能性があるので(例えば、M. Tamuraらの文献、J. Virol. 72:9404-9406参照)、マウスにワクチンを接種し、モノクローナル抗体2.43を投与することによってCD8 T細胞を除去し、その後、PR8に感染させた(M.L. Salemの文献、2000, Int. J. Immunopharmacol. 22:707-718)。除去は、体重減少にも生存転帰にも影響を及ぼさず、ワクチン接種によって誘発される防御における液性応答の関与を示唆した(図30H及び30I)。したがって、ヘッドではなく、HAストークに対する適応的液性免疫応答が、3つの異なるH1N1ウイルスに対する防御をもたらしていた。
cHAに基づくワクチン接種プロトコルが、他の亜型に対する中和能力を有するストーク特異的抗体を誘導したことをさらに立証するために、H2 HAを有する偽粒子の侵入を阻止するワクチン接種マウス由来の精製IgGの能力を試験した。偽粒子は、侵入後にルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するので、中和活性を、細胞上清中のルシフェラーゼ酵素活性の欠如によって測定した(R. Haiらの文献、2012, J. Virol. 86:5774-5781及びN. Picaらの文献、2012, PNAS 109:2573-2578)。感染後に見られる防御と一致して、ワクチン接種マウスから精製されるIgGは、用量依存的な形でかつ陽性対照として使用されるHAストークに対する特異性を有するモノクローナル抗体であるCR6261の効力と同様の効力で、偽粒子の侵入を阻害した(図30J)。したがって、ワクチン接種プロトコルは、H2と同様に、他のグループ1 HAを中和することができる、広範な特異性を有するストーク抗体を誘発した。
(6.6.3 結論)
この実施例は、キメラHAのワクチン接種によって誘発することができるストーク特異的免疫応答の防御的効果を示している。HAストークに対する免疫応答がウイルス感染からの防御に十分であること、及びこのワクチン接種プロトコルが異種亜型防御をもたらすことが示された。年に1度のワクチン接種の必要性をなくし、かつパンデミックに対する準備を促進する、広範囲のインフルエンザウイルスに対する防御をもたらすための同様の戦略をヒトで開発することができる。
(6.7 実施例7:カルボキシ末端三量体化ドメインは可溶性組換え血球凝集素基体のストークドメイン上の立体構造エピトープを安定化する)
この実施例は、カルボキシ末端三量体化ドメインが組換え可溶性インフルエンザウイルス血球凝集素上のストークエピトープの構造完全性に重要であることを示している。
(6.7.1 材料及び方法)
(6.7.1.1 細胞)
Sf9昆虫細胞(ATCC # CRL-1711)を、10%FBS(Atlanta Biologicals)、0.1%Pluronic F68(Sigma)、及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質(Gibco)混合物を補充したTMN-FH培地(Gemini Bio-Products)中で増殖させた。BTI-TN-5B1-4細胞(High Five - Vienna Institute of Biotechnologyのサブクローン)を、ペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質混合物(Gibco)を補充したHyClone SFX無血清培地(Fisher Scientific)中で増殖させた。
(6.7.1.2 クローニング及び組換えバキュロウイルス作製)
H1株A/プエルトリコ/8/34(PR8)、A/カリフォルニア/04/09(Cal09)、H2株A/日本/305/57(JAP57)、H3株A/香港/1/68(HK68)、A/ウィスコンシン/67/05(Wisc05)、及びH5株A/ベトナム/1203/04(VN04-多塩基性切断部位が除去されたもの; Steelらの文献、2009, J Virol 83: 1742-1753参照)のHAをコードする配列を、ポリメラーゼ連鎖反応によりpCAGGSプラスミドから増幅させ、BamHI又はStuI及びNotI制限エンドヌクレアーゼ(NEB)を用いて、修飾されたpFastBacベクター(Invitrogen)にクローニングした。三量体化ドメインを有さないHA及び三量体化ドメインを有するHAという2組の構築物をクローニングした:三量体化ドメインを有さないHA構築物は、HAのC末端膜貫通及び細胞内ドメインがヘキサヒスチジン-タグと置き換えられるように設計され(HA配列は、H1についてはI509、H2及びH5についてはV509、並びにH3についてはG508で終わる; H3付番);もう1組の構築物である三量体化ドメインを有するHAもC末端膜貫通及び細胞内ドメインを欠くが(HA配列はV503で終わる-H3付番)、C末端ヘキサヒスチジン-タグに加えて、トロンビン切断部位及びT4フォルドン三量体化ドメインを含む(例えば、Meierらの文献、2004, J Mol Biol 344: 1051-1069参照)(図31)。作製された組換えpFastBacクローンを、製造業者の指示に従ってDH10Bac細菌(Invitrogen)中に形質転換し、組換えバクミドをPureLink Plasmid Filter Midiprepキット(Invitrogen)で調製した。Cellfectin II(Invitrogen)を組換えバキュロウイルスのレスキューに用いて、組換えバクミドをSf9細胞中に形質転換した。全ての配列をサンガーシークエンシングにより確認した。
(6.7.1.3 タンパク質発現、精製、及び特徴付け)
バキュロウイルスをSf9細胞で継代数3のストックになるまで増幅させ、その後、それを用いて、BTI-TN-5B1-4(High Five)細胞に、HyClone SFX無血清培地(Fisher Scientific)中、1×106細胞/mlで、10の感染多重度で感染させた。発現を、1000mlの振盪フラスコ中、28℃で96時間実施した。96時間後、上清を低速遠心分離(5000g、4℃、20分)により清澄化し、Ni-NTA(Qiagen)樹脂(250mlの培養上清に対して3mlのスラリー)とともに、室温(RT)で2時間インキュベートした。その後、樹脂-上清混合物を10mlのポリプロピレンカラム(Qiagen)に通した。保持された樹脂を15mlの洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH 8)で4回洗浄し、タンパク質を溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、300mMイミダゾール、pH 8)で溶出させた。溶出液を、30kDaのカットオフを有するAmicon Ultracell(Millipore)遠心分離ユニットを用いて濃縮し、バッファーをpH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に交換した。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン標準曲線とともにQuickstart Bradford Dye Reagent(Bio-Rad)を用いて定量した。タンパク質の純度、完全性、及び同一性を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)(4〜20%ポリアクリルアミド - Mini PROTEAN TGXゲル、Bio-Rad)、クマシー染色、及びウェスタンブロット、又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により評価した。三量体化及び/又は多量体化の程度を、製造業者の奨めに従って、HAをビス-[スルホスクシンイミジル]スベレート(BS3 - Fisher Scientific)と架橋することにより試験した。簡潔に述べると、3μgのHAを、25倍モル濃度過剰のBS3クロスリンカーの存在下、30μlのPBS中でインキュベートした。混合物をRTで30分間インキュベートし、その後、1M Tris-HClバッファー(pH 8)を50mMの最終濃度まで添加することにより、BS3をクエンチした。その後、SDS-PAGE並びに/又はマウス抗his一次抗体(Sigma)及び抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(Santa Cruz Biotechnology)もしくはアルカリホスファターゼ(Santa Cruz Biotechnology)コンジュゲート二次抗体を用いるウェスタンブロット解析を実施した。
(6.7.1.4 酵素結合免疫吸着アッセイ)
Immunolon 4HBX(Fisher Scientific)プレートに、三量体化ドメインを有する組換えHA及び三量体化ドメインを有さない組換えHAを、コーティングバッファー(0.1M Na2CO3/NaHCO3、pH 9.2、50μl/ウェル)中、5μg/mlの濃度で、4℃で一晩コーティングした。その後、プレートを、1%Tween 20及び3%脱脂粉乳を含むPBS(pH 7.4)(TBPS)で、RTで1時間ブロッキングした。ブロッキング後、プレートをTPBSで1回洗浄し、その後、3倍希釈のモノクローナル抗体又は血清(1%粉乳を含むTPBS中、1ウェル当たり100μl-モノクローナル抗体の出発濃度30μg/ml;血清については、1:100希釈)とともにRTで1時間インキュベートした。その後、プレートを100μlのTPBSで3回洗浄し、1:3000希釈(1ウェル当たり50μl)の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgG(Santa Cruz Biotechnology)又は抗ヒトFab二次抗体(Sigma)とともに、RTでさらに1時間インキュベートした。さらに3回洗浄した後、プレートを、SigmaFAST OPD基質(Sigma)(100ul/ウェル)を用いて発色させ、3M HCl(50μl/ウェル)で停止させ、490nmの吸光度で、Synergy 4(BioTek)プレートリーダーで読み取った。得られた読出しから、二次抗体のみとともにインキュベートしたウェルからの値をバックグラウンド減算した。
安定性研究のために、三量体化ドメインを有するPR8ウイルス由来のHAを4℃で60日間、又は-80℃で保存し、1回(標準)、2回、3回、又は4回の凍結-解凍サイクルに供した。ストーク結合抗体と比べたヘッド結合抗体の安定性を、PY102及びC179モノクローナル抗体を用いて比較した。ELISAにおける抗体-HA組合せを、二回反復を使用する安定性研究を除き、三回反復で行った。
(6.7.2 結果)
(6.7.2.1 C末端三量体化ドメインはHAを安定化し、三量体形成を誘導する)
様々なグループ1及びグループ2 HAの細胞外ドメインを、バキュロウイルス発現系で、C末端T4ファージ三量体化ドメインを有する又はC末端T4ファージ三量体化ドメインを有さない可溶性形態で発現させた(図31)。感染から96時間後、タンパク質を回収し、Ni-NTAカラムを用いて、C末端ヘキサヒスチジン-タグを介して精製した。精製タンパク質を、超遠心スピンカラムを用いて濃縮し、タンパク質の完全性及び不純度についてSDS-PAGE及びクマシー染色により評価し、ブラッドフォード試薬で定量した。アミノ酸配列と、多塩基性切断部位のないバキュロウイルス発現全長HAは通常切断されないという事実とに基づくと、HAの細胞外ドメインは、グリコシル化を考慮しなければ、単量体当たり約60kDaの予想分子質量(すなわち、三量体当たり180kDa)を有することになる。60kDaの切断されていないHAバンド(HA0)に加えて、約40kDa(HA1)及び25kDa(HA2)のバンドが存在することによって示されるように、三量体化ドメインを有さないCal09(H1)、JAP57(H2)、及びVN04(多塩基性切断部位のないH5) HAは、一部切断されて、HA1とHA2になるように思われた。非還元変性SDS-PAGEで、三量体化ドメインを有するCal09、JAP57、及びVN04 HAについて60kDaのバンドだけが存在することに基づき、これらのタンパク質は、大部分が、切断されていないHA0として発現されると仮定することができる(図32A)。さらに、三量体化ドメインのないWisc05(H3) HAの調製物は、抗ストーク抗体(12D1)でプロービングしたときに反応性がある40kDaの分解産物を示した。したがって、この種は、非特異的切断の産物である可能性が高かった。三量体化ドメインを有するWisc05 HAは、HA0バンドとしてのみ出現した(図32A)。PR8及びHK68 HAは、三量体化ドメインがなくても、非常に安定である(HA0として存在する)ように見えた。
HAの三量体化を示すために最近使用される親水性の11オングストロームの化学クロスリンカーのBS3を用いて、T4三量体化ドメインを有するHA又はT4三量体化ドメインを有さないHAを架橋した(例えば、Weldonらの文献、2010, PLoS One 5参照)。架橋後、試料を還元変性ローディング色素に希釈し、還元変性SDS-PAGEゲル上で分離した。三量体化ドメインを有さないグループ1 HAは、ランニングゲル中をほとんど泳動せず、大部分がスタッキングゲルに保持される高分子量オリゴマーを形成した(図32B及び32C)。最も強い表現型は、VN04及びJAP57の場合に検出され;他のグループ1 HAは、さらなる三量体(約230kDa)、二量体(130〜150kDa)、及び単量体(60kDa)も形成した(図32B及び32C)。三量体化ドメインを有するグループ1 HAは、大部分が、SDS-PAGEゲル上で約230kDに泳動する三量体を形成し、また、ランニングゲル中に明確なバンドを形成した。しかしながら、それらは、二量体(約130〜150kDa、Cal09の場合に最も強い)及び単量体(60kDa)も形成した。グループ2 HAは、異なる形で挙動し: HK68 HAは、主に三量体を形成し、三量体化ドメインの存在を問わず、ある程度、二量体を形成した。Wisc05 HAは、三量体化ドメインの非存在下で、主に二量体化を示したが、T4ドメインを有するHAは、大部分が三量体化した。
(6.7.2.2 C末端三量体化ドメインはHA基体に対するストーク反応性抗体の結合を強く増強する)
三量体化ドメインを有するHA基体及び三量体化ドメインを有さないHA基体に対するこれらの抗体の示差結合を明らかにするために、HA構築物に対する一連の広域反応性中和抗体の反応性を評価した。ストーク特異的抗体mAb C179、マウスmAb 6F12、ヒトmAb CR6261(全てグループ1特異的);並びにマウスmAb 12D1及びヒトmAb CR8020(両方ともグループ2特異的)を本実験で使用した。最近単離され、H1 HaとH5 Haの両方に対する反応性を有することが特徴付けられた4つの他のストーク反応性抗体、KB2、BD3、GG3、及びIB11も本実験で使用した。対照として、HAの球状ヘッドドメインに結合することが知られている株特異的抗体を使用した。さらなる対照として、インフルエンザウイルス株(PR8、Cal09、H3、VN04)に致死量未満で感染させた又はVLP(JAP57)をワクチン接種したマウスの血清を使用した。抗体C179、CR6261、及び6F12は、試験された両方のH1 HA(Cal09及びPR8)に対する強い結合表現型を示した。それらが、三量体化ドメインを有するHAにのみ結合し(図33A及び33B);三量体化ドメインを有さないHAに対する結合が観察されなかったことは注目すべきことである。同様の結合特徴は、他の4つのストーク反応性広域中和性H1-H5抗体で見られた。対照的に、ヘッド特異的抗体、例えば、7B2(Cal09)及びPY102(PR8)は、三量体化ドメインの発現とは無関係にHAと反応し、これらの知見は、Cal09又はPR8感染動物由来の血清を用いて確認された(図33A及び33B)。
この作用は、H1亜型に特異的なものではなく−三量体化ドメインを有するJAP57(H2)及びVN04(H5) HA並びに三量体化ドメインを有さないJAP57(H2)及びVN04(H5) HAに対するC179及びCR6261の結合を試験したとき、同様の表現型が観察され、その場合、これらの抗体は、三量体化形態のタンパク質とのみ反応した(図34A及び34B)。同じ結果は、4つのH1-H5抗体の反応性を評価したときに見られた。ヘッド特異的抗体8F8(JAP57)及びmAb#8(VN04)又はポリクローナル抗H2もしくは抗H5血清は、両方の形態のHAを同程度によく認識した。
グループ2 HA結合抗体については、異なるパターンが出現した。ストーク抗体とグループ2 HAとの反応性に対する三量体化ドメインの効果を検証するために、広域反応性抗体CR8020及び12D1を使用した。CR8020がグループ2 HA中の立体構造エピトープに結合するのに対し、12D1は、HA2サブユニットの長いαヘリックス(LAH)内の線状エピトープに結合すると考えられる。三量体化ドメインを有するHK68及びWisc05 HAに対するCR8020結合は、三量体化ドメインを有さないHAに対する結合と比べて大きく増強された(図35A及び35B)。しかしながら、三量体化ドメインの欠如は、グループ1 HAで見られるように、結合を完全に無効化するものではななかった。12D1は、三量体化ドメインを有するHAと三量体化ドメインを有さないHAを区別しなかった(図35)。
(6.7.3 結論)
T4三量体化ドメインは可溶性HA分子の三量体化の成功を可能にし、バキュロウイルス発現後のこれらの分子の安定性を大きく増大させる。
(6.8 実施例8: H1インフルエンザウイルスのステムドメイン及びH5インフルエンザウイルスの球状ヘッドドメインを含むキメラHAを発現するインフルエンザウイルス(cH5/1))
この実施例は、H1インフルエンザウイルスのステムドメイン及びH5インフルエンザウイルスの球状ヘッドドメインを含むキメラHAを発現するインフルエンザウイルス(すなわち、cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルス)の人為的作製及びレスキューを示している。
cH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを発現するインフルエンザウイルスのレスキュー用のプラスミドは、A/カリフォルニア/04/09のHA遺伝子を保有するレスキュープラスミド中の球状ヘッドドメインのコドン(53〜276、H3付番)をA/ベトナム/1203/04(H5)の球状ヘッドドメインと置換することにより構築した。構築物の配列をサンガーシークエンシングにより確認し、293T細胞における発現を、上記の方法に従って、ウェスタンブロット解析を用いて試験した。
レスキュー用の組換えウイルスの作製を、上の実施例5に記載の手法を用いて達成した。cH5/1Cal09 HAをコードするプラスミドを、A型インフルエンザウイルス(PR8骨格)の7つの他のゲノムセグメントをコードする7つの相補的レスキュープラスミドとともに、293T細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクション後の1日目に、上清を回収し、10日齢の発育卵中に直接接種した。接種後48時間の卵を4℃に冷却し、尿膜腔液を回収した。ウイルスの増殖を血球凝集アッセイにより評価した。陽性の卵由来の上清をMDCK細胞上でプラーク形成させ、単一のプラークを採取し、発育卵中で再び増殖させた。プラーク精製したウイルス由来のRNAを単離し、逆転写し、配列をサンガーシークエンシングにより確認した。ウイルスクローンの同定は、厳密にH1ストーク反応性である抗体(6F12)及びA/ベトナム/1203/04(H5)に対する株特異的抗ヘッド抗体による染色によって証明され、A/カリフォルニア/04/09のHA遺伝子及びA/ベトナム/1203/04(H5)の球状ヘッドドメインを含むcH5/1キメラインフルエンザ血球凝集素ポリペプチドを発現するように改変されたゲノムを含むインフルエンザウイルスの作製及び単離が確認された。
(6.9 実施例9 血球凝集素ストークに基づく普遍的ワクチン構築物はグループ2のA型インフルエンザウイルスを防御する)
この実施例は、H3血球凝集素(グループ2)のストークドメインを含むキメラHAポリペプチドの投与を含むワクチン接種戦略が、対象において、異種H3、H10、H14、H15、及びH7(新規の中国のH7N9ウイルスに由来する)血球凝集素に極めて交差反応性である広域中和性抗ストーク抗体を誘導することを示している。この実施例は、これらの抗ストーク抗体が、H7亜型を含む様々なグループ3の血球凝集素を発現するインフルエンザウイルスに対する広範な防御を付与することも示している。
(6.9.1 材料及び方法)
(細胞及びウイルス)
Madin-Darbyイヌ腎臓細胞(MDCK; ATCC CCL-34)及びヒト胚腎臓293T細胞(ATCC CRL-11268) をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から購入し、それぞれ、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)及び最小必須培地(Gibco)中で維持した。両方の培地に、10%胎仔ウシ血清(FBS; HyClone)及び100ユニット/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン(Pen-Strep; Gibco)を補充した。
キメラ及び組換えインフルエンザウイルスを、以前に記載されている通りに、プラスミドベースのリバースジェネティックスにより産生した(Margineらの文献、2013, J. Virol. 87:4728-4737; Haiらの文献、2012. J. Virol. 86:5774-5781; Krammerらの文献、2013. J. Virol. 87:6542-6550)。ウイルス株A/ビクトリア/361/11(H3N2; Vic11)、A/パース/16/09(H3N2; パース09)、A/フィリピン/2/82(H3N2; Phil82)、X-31(H3N2; A/香港/1/68由来のHA及びNAを有するA/プエルトリコ/8/34の6:2再集合体)、A/レア/ノースカロライナ/39482/93(H7N1;レアH7)、A/cH5/3N1(A/ベトナム/1203/04のH5球状ヘッドドメイン、パース09由来のH3ストークドメイン、並びにA/プエルトリコ/8/34のNA及び内部遺伝子を発現する)、A/ワイオミング/03/03(H3N2; WyoH3)、A/ハシビロガモ/アラスカ/7MP1708/07(H3N8)、A/マガモ/内陸アラスカ/10BM01929/10(H10N7)、並びにB/cH7/3(B/山形/16/88バックグラウンドでA/パース/16/09由来のH3ストークドメインの上にA/マガモ/アルバータ/24/01由来のH7球状ヘッドを発現する)を、8又は10日齢の発育鶏卵中、37℃で48時間(A型インフルエンザウイルスの場合)又は33℃で72時間(B型インフルエンザウイルスの場合)増殖させた(Haiらの文献、2012. J. Virol. 86:5774-5781; Haiらの文献、2011. J. Virol. 85:6832-6843)。A/インディアナ/10/11(H3N2変異体、H3N2v)をMDCK細胞で増殖させた。ウイルス力価を、トシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理トリプシンの存在下、MDCK細胞で決定した。Vic11、パース09、Phil82、X-31、レアH7、及びA/cH5/3N1ウイルスを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)用に、ショ糖密度超遠心により精製した。陽性対照として使用される株(Phil82、X-31、レアH7、及びA/cH5/3N1)の精製した調製物をホルマリン処理により不活化した。ウイルスは全て、バイオセーフティーレベル2の条件下で取り扱った。cH5/3及びcH7/3タンパク質を発現するウイルスは、低病原性の表現型と関連するもとのH3切断部位を含有し、通常、ヒトにとって安全であると考えられるA/プエルトリコ/8/34バックグラウンド(Beareらの文献、1975. Lancet ii:729-732)中でレスキューされた。利用されたH7N1分離株は、鳥類の種でも同様に低病原性の表現型を示す(Josephらの文献、2007. J. Virol. 81:10558:10566)。Sf9細胞(ATCC CRL-1711)は、10%FBS、1%Pluronic F68(Sigma)、及びPen-Strep(Gibco)を補充したキンウワバ培地製剤Hink(TNM-FH)(Gemini Bio-products)中で維持した。BTI-TN-5B1-4(High Five)細胞(ATCC CRL-10859)は、Pen-Strep(Gibco)を含むHyClone SFX無血清昆虫細胞培地(Fisher Sci- entific)中で増殖させた。
(組換えタンパク質発現)
cH4/3(A/アヒル/チェコ/56由来のH4球状ヘッドドメインをパース09由来のH3ストークドメインと組み合わせたもの)、cH5/3(A/ベトナム/1203/04由来のH5球状ヘッドドメインをパース09由来のストークドメインと組み合わせたもの)、cH7/3(A/マガモ/アルバータ/24/01由来のH7球状ヘッドがパース09のH3ストークドメインの上にある)、及びパース09 HAの発現用の組換えバキュロウイルスを、別の場所に記載されている通りに作製し(Margineらの文献、2013. J. Virol. 87:4728-4737; Krammerらの文献、2012. PLoS One. 7:e43603. doi:10.1371/journal.pone.0043603)、Sf9細胞で増殖させた。発現のために、High Five細胞を組換えバキュロウイルスに約10の感染多重度で感染させ、フェルンバッハフラスコに移し、振盪させながら、28℃でインキュベートした。感染から96時間後、培養上清を低速遠心分離(5,500相対遠心力[RCF]、10分、4℃)により回収し、その後、回転シェーカー中、75rpmで振盪させながら、Ni-ニトリロ三酢酸(NTA)樹脂(Qiagen)とともに室温(RT)で3時間インキュベートした。その後、樹脂-上清混合物を10mlポリプロピレンカラム(Qiagen)に通し、洗浄バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH 8)で4回洗浄し、溶出バッファー(50mM Na2HCO3、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH8)で溶出させた。溶出画分を濃縮し、Amicon Ultra遠心分離フィルターユニット(Millipore; 30-kDa分子量カットオフ)を用いて、バッファーをリン酸緩衝生理食塩水(PBS; pH 7.4)と交換した。精製タンパク質の純度、同一性、及び完全性を、SDS-PAGE及びウェスタンブロッティング又はELISAにより評価し、タンパク質濃度を、ブラッドフォード試薬(Bio-Rad)を用いて測定した。ワクチン構築物によって誘導されるストーク反応性抗体を評価するためのELISAで使用する場合、ELISA用の可溶性A/パース/16/09 H3、A/上海/1/13 H7、及びA/PR/8/34 H1 HAを、同様の方法で、しかし、GCN4pII三量体モチーフ及びC末端Strep-Tag IIを有する融合タンパク質として発現させ、StrepTactin樹脂(GE Healthcare)に通して、バックグラウンドシグナルを回避した(Krammerらの文献、2013. J. Virol. 87:6542-6550)。
(動物、ワクチン接種、及び感染)
動物実験は全て、6〜8週齢の雌BALB/cマウス(Jackson Laboratories)を用いて、マウント・サイナイ・アイカーン医科大学(Icahn Sinai School of Medicine at Mount Sinai)の施設内動物管理及び使用委員会のガイドラインに完全に準拠して行われた。動物に、食餌及び水を自由に与え、12時間の明暗周期で維持した。全ての鼻腔内処置のために、0.1mlのケタミン-キシラジン混合物(0.15mg/kg及び0.03mg/kg)を腹腔内投与することにより、動物を麻酔した。
最初の実験のために、未感作の6〜8週齢のBALB/cマウスに、TriGrid送達系(Ichor Medical Systems)を用いるインビボエレクトロポレーションにより、cH4/3 HAをコードするDNAを左腓腹筋にワクチン接種した(Margineらの文献、2013. J. Virol. 87:4728-4737; Krammerらの文献、2013. J. Virol. 87:6542-6550; Steelらの文献、2010. mBio 1(1):e00018-10. doi:10.1128/mBio.00018-10)。3週間後、動物を、各々の部位で、5μgのポリ(I・C)(Invivogen)がアジュバントとして添加された5μgのタンパク質で、筋肉内(i.m.)及び鼻腔内(i.n.)に追加免疫した(1群当たり、n=9又は10匹の動物)。初回免疫のみの動物(1群当たりn=5)は、筋肉内と鼻腔内の両方で、同量の無関係なタンパク質(ウシ血清アルブミン[BSA])を同量のアジュバントとともに受容した。3週間後、第二の追加免疫を、同じ方法ではあるが、cH7/3タンパク質とともに投与した。H7N1感染に供されるマウスのサブセットについては、cH7/3タンパク質を全長パース09 H3タンパク質に置き換えた。初回免疫のみの動物は、対応するBSAワクチン接種を再び受けた。感染の3週間前に、陽性対照動物(1群当たりn=5)に、1 fl.gの不活化されたマッチする感染ウイルスを筋肉内にワクチン接種した。未感作マウス(1群当たりn=5)をさらなる陰性対照群として含めた。最後の追加免疫から4週間後、動物を麻酔し、5 50%致死用量(LD50)のPhil82、X-31、又はレアH7ウイルスに感染させた。体重を14日間毎日モニタリングし、その初期体重の25%以上を失った動物を死亡と記録し、人道的に安楽死させた。初回免疫前及び感染前に、顎下腺出血により、血清試料を回収した。
第二の組の実験のために、未感作の6〜8週齢BALB/cマウスに、cH7/3 HAタンパク質を発現する致死用量未満(106PFU)の組換えB型インフルエンザウイルスベクター(B/山形/16/88に基づく)を鼻腔内感染させた。対照動物は、同じ用量の野生型(wt) B型インフルエンザウイルス(Bwt)を受容した。その後、ワクチン群のマウスを、5μgのポリ(I・C)が各々アジュバントとして添加されたcH5/3タンパク質(5μg i.n.+5μg i.m.)で追加免疫し、cH5/3N1ウイルス感染に供した動物のサブセットを例外とした;これらの動物は、cH5/3タンパク質の代わりに同じ方法で組換えパース09全長H3 HAを受容した(1群当たりn=10)。初回免疫のみの動物及びベクター対照動物(1群当たりn=5)は、その代わりに、無関係なタンパク質(BSA;ワクチン群の場合と同じ量、アジュバント、及び投与経路)による追加免疫を受けた。最後に、3週間後、動物は、第一の追加免疫について記載されている通りに、cH4/3タンパク質による第二の追加免疫を受けた。この場合も、初回免疫のみの動物及びベクター対照動物は、同じ方法で、無関係なタンパク質を受容した。未感作マウス(1群当たりn=5)をさらなる陰性対照群として含めた。ウイルス感染の3週間前に、陽性対照動物(1群当たりn=5)に、1μgの不活化されたマッチする感染ウイルスを筋肉内にワクチン接種した。最後の追加免疫から4週間後、動物を麻酔し、10 LD50のPhil82もしくはX-31のどちらか又は100 LD50のcH5/3N1ウイルスに感染させた。体重減少を14日間毎日モニタリングし、その初期体重の25%以上を失った動物を死亡と記録し、人道的に安楽死させた。初回免疫前及び感染前に、顎下腺出血により、血清試料を回収した。肺力価測定実験については、上記の通りに、マウスにワクチンを接種し(cHA及びBwt-BSA-BSA群、1群当たりn=3匹のマウス)、その後、5×104PFUのH3N2v又は1×105PFUのH3N8、WyoH3、もしくはH10N7ウイルスに感染させた。感染後3日目に肺を回収し、ホモジナイズし、50%組織培養感染用量(TCID50)を以前に記載されている通りに測定した(Millerらの文献、2013. J. Infect. Dis. 207:98-105)。
受動伝達実験のために、後者の組の実験からの血清を、(B型インフルエンザ-ベクター化)ワクチン群、陽性対照群、ベクター対照群、及び未感作動物から回収した。その後、各々の群由来の血清を腹腔内注射により未感作マウスに伝達し(6〜8週齢、1群当たりn=5、マウス1匹当たり血清300μl)、伝達から2時間後、マウスを5 LD50のPhil82ウイルスに感染させた。体重を14日間毎日モニタリングし、その初期体重の30%以上を失った動物を死亡と記録し、安楽死させた。
(ELISA)
ELISAプレート(Immunolon 4 HBX)に、4℃で一晩、炭酸塩/重炭酸塩コーティングバッファー(pH 9.4)に希釈した精製ウイルス(4μg/ml)又は精製タンパク質(2μg/ml)のどちらかをコーティングした。プレートを、0.1%Tween 20及び3%脱脂粉乳を含むPBS(TPBS)で、RTで1時間ブロッキングした。マウス血清を1:100に予め希釈し、1%脱脂粉乳を含むTPBSに1:2ずつ連続希釈し、プレート上で、RTで1時間インキュベートした。TPBS(3×100μl/ウェル)で徹底洗浄した後、プレートを、1%脱脂粉乳を含むTPBSに希釈した抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートIgG(Santa Cruz)とともに、RTで1時間インキュベートした。さらに3回のTPBSによる洗浄工程の後、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(SigmaFast OPD; Sigma)基質を用いてプレートを発色させた。3M HClを用いて反応を停止させ、490nmの光学密度でプレートを読み取った。
鼻洗浄液中のIgAの検出を、アルカリホスファターゼ(AP)結合抗マウスIgA抗体(Southern Biotech)を1:500に希釈して及び37℃で3時間のインキュベーション工程で使用することを除き、同様のアッセイを用いて行った。血清中のアイソタイプ分布を、アイソタイピングキット(Invitrogen)を用いるELISAにより決定した。このキットは、各々の亜型に特異的な多数の二次抗体及び結合の検出を可能にするAPコンジュゲート三次抗体を含む。
(シュードタイプ化粒子中和アッセイ)
シュードタイプ化粒子産生プロトコルを以前の研究(Haiらの文献、2012. J. Virol. 86:5774-5781; Evansらの文献、2007. Nature, 446:801-805; Picaらの文献、2012. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 109:2573-2578)を基に改変した。簡潔に述べると、293-T細胞に、ルシフェラーゼレポーター遺伝子、HIV Gag-Pol、Vic11 HAタンパク質、及びB型インフルエンザウイルスB/山形/16/88由来のノイラミニダーゼを含むプロウイルスをコードする4つのプラスミドをコトランスフェクトした。培養上清をトランスフェクションから48時間後に回収し、0.45-μm孔径のフィルターユニットに通して濾過して、細胞破片を除去した。精製されたシュードタイプ化粒子を様々な濃度の非働化マウス血清とともにインキュベートした後、MDCK細胞に添加した。形質導入処置を6時間実施し、その後、細胞を洗浄し、新鮮な培地を細胞に加えた。形質導入処置を1μg/mlのポリブレン(Sigma, St. Louis, MO)の存在下で行った。ルシフェラーゼ活性を形質導入から48時間後に読み取った。ストーク反応性モノクローナル抗体12D1(Wangらの文献、2010. PLoS Pathog. 6:e1000796.doi:10.1371/journal.ppat.1000796)を123μg/mlの開始濃度で陽性対照として使用した。
(免疫蛍光染色)
MDCK細胞に、A/安徽/1/13(H7N9)、A/上海/1/13(H7N9)、A/ニワトリ/ハリスコ/12283/12(H7N3)、A/マガモ/グリエフ/263/82(H14N5)、及びA/オナガミズナギドリ/西オーストラリア/2576/79(H15N9)由来のHAを発現するプラスミドをトランスフェクトした。細胞にそれぞれのプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションから16時間後、細胞を0.5%パラホルムアルデヒドで固定し、ワクチン接種動物(cH4/3DNA-cH5/3-H3)又は未感作動物から回収された1:200希釈の血清で染色した。ストーク反応性抗体FI6(Cortiらの文献、2011. Science, 333:850-856)及びFBE9(どちらも10μg/mlの濃度で使用)は陽性対照としての役割を果たし、一方、未感作動物から回収された血清は、陰性対照として使用された。Alexa 488にコンジュゲートした二次抗体を用いて、タンパク質に対する反応性を可視化した。画像を、10倍の倍率で、LSM 510 Meta共焦点顕微鏡(Carl Zeiss MicroImaging GmbH, Jena, Germany)で取得した。
(統計学的検定、血球凝集素モデリング、及び系統解析)
統計解析を、Prism4(GraphPad)を用いて実施した。値は全て、平均値の標準偏差付きの平均としてプロットされている。生存の差は、ログランク有意検定によるカプラン-マイヤー生存解析を用いることにより計算した。0.05又はそれ未満のP値を統計的有意とみなす。野生型及びキメラ血球凝集素のモデルを作成するために、タンパク質データバンク(PDB)からの構造を、PyMolソフトウェア(Delano Scientific)を用いることによりモデリングした。cH4/3構築物のモデリングのために、A/香港/1/68(HK68)のHA(PBD識別子[ID] 1MQN)を使用し、H4ヘッドドメインを異なる色で表示した(利用可能なH4構造はない)。cH5/3 HAは、HK68 HA由来のストーク(PBD ID 1MQN)及びH5ウイルスの球状ヘッド(PBD ID 2FK0)を用いてモデリングし; cH7/3は、HK68ストークドメイン及び鳥H7ウイルス由来のヘッドドメイン(PDB ID 4DJ6)を用いてモデリングした。キメラ感染ウイルスは、HK68のストーク構造(PBD ID 1MQN)及びH5 HAのヘッド(PBD ID 4DJ6)を用いることによりモデリングした。系統解析を、ClustalW(EMBL-EBI)を用いて実施した。タンパク質配列をGenBankからダウンロードし、Megaバージョン5.1のClustalWアルゴリズムを用いて、多重アラインメントを行った。FigTreeソフトウェア及び近隣結合法を用いて、系統樹を構築した。
(6.9.2 結果)
(キメラHA構築物は異なるH3N2ウイルスによる感染からの広範な防御をもたらす)
グループ2 HAを発現するインフルエンザウイルスに対する広範な防御をマウスモデルで誘導するために、保存されたHAストークドメインに対する抗体を特異的に追加免疫した。この目的のために、様々なヘッドドメインと組み合わせたH3ストークドメインを発現する多数のcHA分子を構築した(Margineらの文献、2013. J. Virol. 87:4728-4737; Haiらの文献、2012. J. Virol. 86:5774-5781)。マウスを、cH4/3 HAをコードするプラスミドDNA(H4球状ヘッドドメイン及びH3ストークドメインを発現する)で筋肉内に(i.m.)初回免疫した(図37A)。3週間後、マウスを、i.m.経路と鼻腔内(i.n.)経路の両方を介して、可溶性cH5/3タンパク質(H3ストークドメインをH5球状ヘッドドメインと組み合わせたもの)で追加免疫した。両方の応答がインフルエンザウイルス感染に対する効率的な防御に重要であるので、全身免疫及び粘膜免疫の誘導を確実にするために、両方の経路を利用した。3週間後、cH7/3タンパク質(H7球状ヘッドがH3ストークの上にある)による第二の追加免疫を行った(図37A)。動物を、一般的な非拘束型(可溶性の非膜結合型)ストークドメインを発現する抗原に繰り返し暴露させることにより、現在使用されているワクチン接種戦略によって準優位な応答しか誘導されないこの領域の免疫原性を増強させることができるという仮説が立てられた(Wrammertらの文献、2008. Nature 453:667-671; Margineらの文献、2013. J. Virol. 87:4728-4737)。
対照動物は、DNA初回免疫のみ(初回免疫のみの対照)もしくは不活化されたマッチする感染ウイルス(陽性対照)を受容したか、又は未感作であった。このワクチンがインフルエンザと関連する罹病及び死亡を防御する能力を試験するために、マウスを2つの異なるH3N2ウイルスに感染させた。全てのcHAワクチン接種動物がそれぞれの感染株に対してHI陰性であったことは注目すべきことである。A/フィリピン/2/82ウイルス(Phil82)に感染させたとき、ワクチン接種動物は、陽性対照の体重減なしと比較して最小量の体重を失い、臨床症状を発症せず、死亡から完全に防御された(図37B及びC)。しかしながら、未感作動物は急速に体重を失い、9日目までに感染が原因で死亡した(未感作対照)。初回免疫のみの対照も急速な体重減少を示し、これらの20%しかウイルス感染を切り抜けて生き残らなかった。同様の結果は、香港1968 H3N2ウイルスの糖タンパク質を発現するウイルスであるX-31に感染させたときにも観察された(図37D及びE)。
過去のデータは、致死量未満のインフルエンザウイルス感染がマウス及びヒトでストーク反応性抗体を誘導する1つの方法であることを示している(Margineらの文献、2013. J. Virol. 87:4728-4737; Picaらの文献、2012. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 109:2573-2578; Krammerらの文献、2012. J. Virol. 86:10302-10307)。ほとんどのヒト個体は、生涯を通じてインフルエンザウイルスに複数回暴露されるので、該個体は、通常、ベースラインレベルのストーク反応性抗体を有する。この先在免疫をマウスモデルで模倣するために、野生型B型インフルエンザウイルスHAの代わりにcH7/3 HAを発現するB型インフルエンザウイルスをレスキューした。致死用量未満のこのウイルスを用いて、マウスを初回免疫し、その後、これに、3週間の間隔で、cH5/3、次いで、cH4/3タンパク質を、i.m.とi.n.の両方でワクチン接種した(図38A)。Phil82又はX-31のどちらかに感染させた場合、動物は、疾患の臨床的兆候を示さず、不活化されたマッチする感染株を受容した陽性対照動物の体重減少と同程度の最小限の体重減少を示した(図38C、D、F、及びG)。野生型B型インフルエンザウイルスを致死量未満で感染させ、無関係なタンパク質(BSA)と同様の方法でワクチン接種した対照動物、並びに未感作マウス及び初回免疫のみの対照は、急速に体重を失い、両方の感染が原因で死亡した。次に、ストークに対する免疫が直近のH3N2分離株を防御する能力を試験した。現代のH3N2ウイルスはマウスモデルで病原性がないので、最近のワクチン株A/パース/16/09(パース09)のH3ストークドメイン及びA/PR/8/34(H1N1)由来のNAを発現するcH5/3N1ウイルスをこの目的のために使用した(Haiらの文献、2012. J. Virol. 86:5774-5781)。ストーク反応性抗体により付与される防御を評価するために(及びH5-H5ヘッド反応性抗体を排除するために)、ワクチン接種レジメンをこのサブセットのマウスについて改変し、全長H3をcH5/3タンパク質の代わりに投与した(図38A)。高用量(100マウスLD50[mLD50])のcH5/3N1ウイルスに感染させた場合、ワクチン接種動物の体重減少に対する強力な防御及び死亡に対する完全な防御が観察された。これにより、現代のH3N2分離株に対するHAストークに基づくワクチンアプローチの効力が示された(図38B及びE)。マウスモデルで死亡を誘導しないさらなる異なるH3株を試験するために、肺力価測定実験を実施した。上記の通りにワクチン接種した動物を、H3N2変異体ウイルス(H3N2v)(CDC. July 2012. MMWR Morb. Mortal. Wkly. Rep. 61:561)、鳥H3N8分離株(H3N8)、及びヒトH3N2 A/ワイオミング/03/03株(WyoH3)に感染させた。感染から3日後、ワクチン接種動物の肺力価が低かった(検出限界に近かった)のに対し、対照動物(Bwt-BSA-BSA)から回収された肺では高いウイルス力価が検出された(図37F及びG並びにデータ非表示)。まとめると、これらのデータは、ストークに基づくワクチン接種戦略が、インフルエンザのマウスモデルで異種及び異種亜型ウイルスに対する強力な防御をもたらすことができることを明白に示している。
(キメラHA構築物のワクチン接種はストークに対する広範囲の全身及び粘膜液性応答を誘導する)
このワクチン接種レジメンによって誘導されるストークに対する抗体応答を特徴付けるために、ELISAを利用した。動物は、ベクター発現HA又は組換えHAのみに暴露されるが、任意の他のA型インフルエンザタンパク質には暴露されないので、精製ウイルスを、抗ストーク応答を測定するための基質として使用することができた。両方のワクチン接種レジメン(B型インフルエンザウイルスをベクター化するもの又はDNAを初回免疫するもの)由来の血清を、感染株Phil82及びX-31に対する、並びに現在のH3N2ワクチン株A/ビクトリア/361/11(Vic11)、H3N8株、及びパース09由来のHAタンパク質に対するその反応性について試験した。未感作であるか又はDNA初回免疫のみに暴露させた動物から回収された血清は、低バックグラウンドレベル結合を示し、一方、ワクチン接種マウスから回収された血清では、5つ全てのウイルス株に対する高い反応性が見られた(図39A〜E)。同様に、ストークに対する高い抗体力価が、cHAを発現するB型インフルエンザウイルスで初回免疫した動物の血清で検出された(図39F〜H)。ベクター対照(野生型B型インフルエンザウイルス)及び未感作動物は、この場合も、バックグラウンド反応性しか示さず、一方、初回免疫のみの群(c7/3 HAを発現するB型インフルエンザウイルス)は、中間の結合表現型を有していた。後者の群の中間の力価は、ウイルスの複製の結果であると考えられた(Margineらの文献、2013. J. Virol. 87:4728-4737; Krammerらの文献、2012. J. Virol. 86:10302-10307)。アイソタイプ分布から、ワクチンによって誘導される抗体応答のプロファイルは均衡が取れており、IgGの大部分がIgG1、IgG2a、又はIgG2bサブクラスであることが明らかになった(図41C参照)。
血清IgG力価に加えて、ワクチン接種マウスの粘膜表面での分泌IgAのレベルを評価した。これにより、ワクチンを受けたマウスの群から回収された鼻洗浄液中のパース09 H3 HAに対する高い反応性が明らかになったのに対し、対照動物由来の鼻洗浄液は、この基質と反応しなかった(図41B参照)。粘膜の抗ストークIgA抗体、及びウイルス感染を阻止するその能力は、正式にはまだ特徴付けられていないが、それらは観察された防御に寄与すると仮定されている。
最近、広域反応性の抗球状ヘッド抗体が文献に記載されている(Ekiertらの文献、2012. Nature 489:526-532; Leeらの文献、2012. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109:17040-17045; Krauseらの文献、2012. J. Virol. 86:6334-6340)。天然では稀であるが、これらの抗体は、受容体結合部位の保存された領域を認識し、かつ系統発生的関連性に厳密に従うことなく、異なる球状ヘッドドメインを認識する傾向がある。グループ1 HAとグループ2 HAの両方のヘッドドメインに対する結合(例えば、H1-H3結合)は、これらの抗体によって説明されている。cHAに基づくワクチン接種によってそのような抗体が誘導されるかどうかを評価するために、全長H1 HAを基質とするさらなるELISAを実施した(図41A参照)。cHAワクチン接種動物由来の血清はこの基質と反応せず、cHAワクチン接種が検出可能なレベルの広域反応性抗ヘッド抗体を誘導しないことが示唆された。
(誘導された広域反応性抗体はインビトロとインビボの両方でウイルスを強力に中和する)
ワクチン接種レジメンよって誘導されるストーク抗体のインビトロでの交差中和性をさらに試験するために、Vic11 HAシュードタイプ化粒子を用いる侵入阻害アッセイを実施した。ワクチン接種動物由来の血清は、偽粒子の細胞侵入を用量依存的な形で阻害した(図41D参照)。対照的に、B型インフルエンザウイルスベクターに感染させた対照動物及び未感作マウス由来の血清は、このアッセイで阻害活性を示さなかった。
インビボで観察されたワクチン誘導性防御が少なくとも部分的には血清中の中和抗体によるものであることを示すために、受容伝達実験を実施した。ワクチン接種動物、陽性対照動物、B型インフルエンザウイルスベクター感染動物、又は未感作動物由来の血清を未感作マウスに伝達し、その後、これを、Phil82ウイルスに感染させた。ワクチン接種群又は陽性対照群由来の血清を受容したマウスが死亡から完全に防御されたのに対し、陰性対照群のどちらか由来の血清を受容した動物はいずれも生き残らなかった(図41E参照)。これらの結果は、ストークに対する液性応答がマウスを致死感染から防御するのに十分であることを示している。
(キメラHA構築物のワクチン接種はストークに基づく異種亜型免疫を誘導する)
異なるグループ2 HAインフルエンザウイルスを交差中和する抗体が文献に記載されている(Wangらの文献、2010. PLoS Pathog. 6:e1000796. doi:10.1371/journal.ppat.1000796; Ekiertらの文献、2011. Science 333:843-850)。異種亜型H7N1ウイルスに対する防御を試験し、観察された防御におけるヘッドに対する抗体のいかなる関与も排除するために、上記のDNA-タンパク質-タンパク質ワクチン接種レジメンを使用したが、cH7/3 HAタンパク質を全長H3 HAと置き換えた(図40A)。鳥H7N1 A/レア/ノースカロライナ/39482/93株(レアH7)に感染させたワクチン接種動物と陽性対照動物はどちらも、約15%の類似した初期体重減少を経験した(図40B)。これは、おそらく、この実験的ウイルス感染に必要とされるマウス致死用量当たりのPFU数が大きいことによるものである。しかしながら、両群のマウスは速やかに体重を回復し、ワクチン群は90%の生存率を示した。しかしながら、未感作動物及び初回免疫のみの動物は重度の体重減少を経験し、それぞれ、生存を全く示さないか、又はわずかな(20%)生存を示した。後者の実験の結果は、HAストークに対する応答によって生じる免疫の真の異種亜型性を示している(図40C)。血清中に存在する広域中和抗体のレベルをさらに評価するために、精製H7N1感染ウイルスを用いて、及び新規の中国のH7N9ウイルス株(Gaoらの文献、2013. N. Engl. J. Med. 368:1888-1897)由来の組換えH7タンパク質を用いて、ELISAを実施した。これらの動物から回収された血清中のH7 HAに対する高い抗体力価は、H3ストークドメインによって誘導される応答の交差反応性を明確に示すものである(図40D及びE、図41)。さらに、肺力価をアッセイ読出しとして、H10N7ウイルスを用いる感染実験を実施した。ワクチン接種動物の3日目の肺力価が103 TCID50/mlの範囲であったのに対し、模擬ワクチン接種動物は、10〜100倍高い力価を示した(図40F)。ユーラシア及び北米系統のH7 HA、並びにH14及びH15 HAを発現する細胞に対するcHAワクチン接種動物由来の血清の効率的な結合は、この免疫応答の交差反応性をさらに証明するものである(図40G及び42)。
(6.9.3 考察)
抗ストーク抗体は、ワクチン接種又は感染のどちらかによってインフルエンザウイルスに暴露されているヒトに見出すことができるが(Margineらの文献、2013. J. Virol. 87:4728-4737; Suiらの文献、2011. Clin. Infect. Dis. 52:1003-1009; Cortiらの文献、2010. J. Clin. Invest. 120:1663-1673)、それらは実際、天然では稀であるように思われ、これらの抗体のインビボレベルは低すぎて、防御を生じることができない可能性が高い。結果として、これらの広域中和性のストーク反応性抗体のレベルを増強することができるワクチンは、循環しているヒトインフルエンザウイルス株、及び新たに出現した中国のH7N9株のような潜在的パンデミック鳥ウイルスに対する普遍的な防御をもたらすことができる(Gaoらの文献、2013. N. Engl. J. Med. 368:1888-1897)。HAのストークドメインの保存に基づくと、そのような普遍的ワクチンは、3つの成分:グループ1、グループ2、及びB型インフルエンザのストークに基づく抗原を含まなければならない可能性が高い。
H3ストークドメイン及び異なる球状ヘッドを発現するキメラHA構築物を順次ワクチン接種された動物は、ストークドメインに対する高力価の交差反応性抗体を生じさせた。これらの抗体は、一連のH3N2株とH3N8ウイルスとに対して防御的であるだけでなく、鳥H7N1及びH10N7分離株の異種亜型感染に対する強力な防御をもたらし、グループ2 HA発現ウイルスの両方のクレードにまたがる幅の広さを示した。この幅の広さは、H3N2変異体(H3N2v)ウイルス及びニューイングランドゼニガタアザラシから単離されたH3N8ウイルス及び人獣共通に感染する他のH3株(Bazらの文献、2013. J. Virol. 87:6901-6910; CDC. July 2012. MMWR Morb. Mortal. Wkly. Rep. 61:561; Anthonyらの文献、2012. mBio 3(4):e00166-12. doi: 10.1128/mBio.00166-12)、並びに時折ヒトに感染するH4、H7、及びH10発現ウイルス(Runstadlerらの文献、2013. Infect. Genet. Evol. 17:162-187; Kayaliらの文献、2011. PLoS One 6:e26818. doi:10.1371/journal.pone.0026818; Arzeyらの文献、2012. Emerg. Infect. Dis. 18:814-816; CDC. 2012. MMWR Morb. Mortal. Wkly. Rep. 61:726-727; Fouchierらの文献、2004. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 101:1356-1361; Tweedらの文献、2004. Emerg. Infect. Dis. 10:2196-2199)のパンデミックの可能性に関する懸念の増大を考慮すると重要である。重要なのは、このワクチン接種戦略が、新たに出現した中国のH7N9ウイルス由来のH7 HAに対する高力価のストーク反応性抗体も誘導したということである(Gaoらの文献、2013. N. Engl. J. Med. 368:1888-1897)。
ヒトは、生涯を通じてインフルエンザウイルスに複数回暴露されるため、ストークドメインへの特異性を有する既に存在するメモリーB細胞を有する可能性が高い。この状況をマウスモデルで模倣するために及びストーク反応性抗体の先在力価を効率的に増強するために、H3ストークドメインを無関係な球状ヘッドドメインとの組合せで発現する組換えB型インフルエンザウイルスに致死量未満で感染させることにより、マウスをH3ストークドメインに予め暴露させた。同じストークドメインを含有するが、異なるヘッドを含有するcHA構築物によるその後のワクチン接種により、ストーク反応性抗体のレベルは効率的に増強され、1968年から2009年までに及ぶ一連のH3N2インフルエンザウイルス株による感染からマウスを防御した。ワクチン接種マウス由来の血清は、広範囲のH3N2ウイルス基体並びにH7N1ウイルス及びH7N9 HAタンパク質基体に対する良好な反応性を示した。ワクチン接種動物は、H3N2v、H3N8、及びH10N7感染による感染後の肺力価の低下も示した。さらに、該血清は中和活性を示し、受動伝達感染実験でマウスを防御することができた。これらの知見から、このワクチン接種戦略によって誘発される中和のメカニズムが明らかにされ、おそらくはウイルス中和に基づく抗体媒介性メカニズムが防御を媒介していることが示唆される。防御に対するCD8+及びCD4+ T細胞の寄与は、この時点では除外することができないが、感染を防御するのに、血清のみの伝達で十分であった。非中和性の交差反応性抗インフルエンザ抗体によって誘導される病原性の増強が高齢者における新規の中国のH7N9ウイルスの高い病原性の考えられる理由として提唱されている(Skowronskiらの文献、2013. Euro Surveill. 18:pii=20465. http://www.eurosurveillance.org/View Article.aspx? ArticleId=20465)。高力価の交差中和性抗体を有するcHAワクチン接種動物における病原性の増強は観察されなかった。実際、該動物は罹病及び死亡から防御され、ウイルスはより速やかに除去された。
本実験は、グループ2 HA発現ウイルスに対する防御がストーク反応性抗体のみによって媒介されることができることを示すために設計された。本明細書に記載されているように、ヒトワクチン戦略は、cHA構造をインフルエンザウイルスの機能的ノイラミニダーゼ及び全ての内部タンパク質との組合せで発現する不活化ウイルス又は弱毒化ウイルスのどちらかに基づくことができる。ヒトがメモリー応答を有するH3 HAの球状ヘッドドメインを、ヒトが感作されていない「外来の」無関係なヘッドドメインに置き換えると、ストーク反応性抗体が増加することに加え(Krammerらの文献、2013. J. Virol. 87:6542-6550; Millerらの文献、2013. J. Infect. Dis. 207:98-105; Picaらの文献、2012. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 109:2573-2578; Liらの文献、2012. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109:9047-9052; Wrammertらの文献、2011. J. Exp. Med. 208:181-193; Thomsonらの文献、2012. Front. Immunol. 3:87)、NAに対する抗体のレベルが増強されるはずである。さらに、強力なT細胞エピトープを有する内部タンパク質の存在によって、細胞性免疫応答(cellular arm of the immune response)も活性化され、防御に寄与する可能性が高いことが保証される。そのようなワクチンは、循環している全てのヒトインフルエンザウイルス株に対する及び潜在的パンデミック亜型に対する広範な防御を保証するために、グループ1、グループ2、及びB型のストーク成分を含む。非常に幼い子供を除く大部分のヒトは、HAのストークドメインに対する低レベルの抗体を含む、インフルエンザウイルスに対する先在免疫を有するので、三価のキメラHAワクチンによるワクチン接種がこれらの力価を防御的レベルにまで効率的に増強することができることが可能である。
(6.10 実施例10: H3ストークに基づくキメラ血球凝集素インフルエンザウイルス構築物はマウスをH7N9感染から防御する)
この実施例は、H7ヘッドドメインを保有しないキメラHA構築物を用いて、対象を新規のH7N9ウイルスから防御することができることを示している。この実施例はまた、ヒト用に認可されているものと同様の水中油系アジュバントがキメラHAワクチン候補とともにうまく機能したことを示している。
防御に対する粘膜応答の重要性を検討するために、粘膜免疫と全身免疫の両方を誘導する実験設定を適用し、全身免疫しか誘導しない実験設定と比較した。さらに、ポリI:C(PIC)−以前に動物においてcHAとの組合せで使用するのに成功している−と一般的な水中油型(OIW)アジュバントという2つのアジュバントを比較した(Ottらの文献、2000. アジュバントMF59: 10年間の展望(The Adjuvant MF59: A 10-Year Perspective)、p. 211-228. O'Hagan DT(編)、ワクチンアジュバント(Vaccine Adjuvants)、第42巻. Springer)。後者は、ヒトへの使用が認可されているアジュバントと同様のものである(Ottらの文献、2000. アジュバントMF59: 10年間の展望(The Adjuvant MF59: A 10-Year Perspective)、p. 211-228. O'Hagan DT(編)、ワクチンアジュバント(Vaccine Adjuvants)、第42巻. Springer)。
動物(四角、1群当たりN=10、雌6〜8週齢BALB/cマウス)を、TriGridエレクトロポレーション装置(Ichor Medical Systems)を用いる筋肉内エレクトロポレーションにより、cH4/3タンパク質(A/アヒル/チェコ/56に由来するH4ヘッドがA/パース/16/09に由来するH3ストークドメインの上にある)(Margineらの文献、2013. J Virol 87:10435-10446)を発現するDNAプラスミドで初回免疫した(図43A)。DNAワクチン接種はcHAワクチン接種レジメンによる広範な防御の誘導に必須ではないことに留意されたい。タンパク質のみ(DNAなし)によるワクチン接種により、初期の研究でのDNA初回免疫によるワクチン接種と同様の結果が得られた(Goffらの文献、2013. PLoS One 8:e79194)。初回免疫から3週間後、動物は、組換えcH5/3タンパク質(A/ベトナム/1203/04に由来するH5ヘッドがA/パース/16/09に由来するH3ストークの上にある)(Margineらの文献、2013. J Virol 87:10435-10446)を受容した。ある群の動物は、5μgのPIC(高分子量、Invivogen)がアジュバントとして添加された5μgのcH5/3タンパク質を鼻腔内に(i.n.)、5μgを筋肉内に(i.m.)受容した(「PIC i.n.+i.m.」)。第二の群は、PICのi.m.投与のみを受け(合計5μgのHA)(「PIC i.m.」)、一方、第三の群は、一般的なOIW系アジュバントとともに5ugのcH5/3タンパク質を受容した(「OIW i.m.」)(図43A)。3週間後、それぞれ、同じワクチン接種経路、アジュバント、及び免疫原量を用いて、全てのマウスを全長H3タンパク質で2回追加免疫した(図43A)。ワクチン接種に使用される全ての組換えタンパク質を、C末端のT4フォルドン三量体化ドメイン及び精製を容易にするためのヘキサヒスチジンタグを伴って、バキュロウイルス発現系で発現させた(Krammerらの文献、2012. PLoS One 7:e43603)。OIWアジュバント(20mMクエン酸塩、0.5%ポリソルベート80、pH 6.5、0.5%span-85(トリオレイン酸ソルビタン)、4.3%スクアレン)を以前に記載されている通りに調製した(Ottらの文献、2000. アジュバントMF59: 10年間の展望(The Adjuvant MF59: A 10-Year Perspective)、p. 211-228. O'Hagan DT(編)、ワクチンアジュバント(Vaccine Adjuvants)、第42巻. Springer)(図44)。陽性対照(丸、n=5)は、ホルマリン不活化A/上海/1/13 H7N9(SH1、A/上海/1/13に由来するHA及びNA並びにA/プエルトリコ/8/34由来の内部遺伝子を有する6:2再集合体)全ウイルス調製物の1回のi.m.ワクチン接種を受けた。陰性対照(三角、n=4〜5)は模擬DNAワクチン接種を受け、その後、ウシ血清アルブミン(BSA)による2回の追加免疫が、それらが比較されるそれぞれのcHAワクチン接種レジメンと同じ量及び経路で投与された。最後の免疫から4週間後、動物から採血し、その後、10マウス致死用量50(mLD50)のSH1ウイルスに感染させた。体重減少を14日間にわたってモニタリングし、その初期体重の20パーセント超を失ったマウスを安楽死させた。PIC i.n.+i.m.群の動物は、PIC i.m.群の15%(図43C)と比較したとき、その初期体重の平均10%を失い(図43B)、感染部位での粘膜免疫が防御において重要な役割を果たすことを示唆した。さらに、OIW i.m.群のマウスは、平均してその初期体重の12%しか失わなかったが(図43D)、これは、観察された生存にも反映されている。PIC i.m.動物のわずか70%(図43F)と比較して、全てのPIC i.m.+i.n.ワクチン接種動物が感染を切り抜けて生き残った(図43E)。しかしながら、OIW i.m.群の生存は100%であり(図43F)、OIWアジュバントによるより良好な防御効果が示された。3つの異なるワクチン接種レジメンによって誘発されるH7 HA抗体の力価を定量的に評価するために、組換えSH1 H7 HAを基質として用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施した。cHAワクチン接種動物はH7ヘッドドメインに暴露されなかったので、H7に対する何らかの観察される反応性は、主に、交差反応性抗ストーク抗体に由来すると仮定された。ヘキサヒスチジンタグ又は三量体化ドメインに対する結合を排除するために、GCN pIIロイシンジッパー三量体化ドメイン及びstrepタグIIを伴って発現される組換えSH1 H7 HAを利用した(Krammerらの文献、2013. J Virol 87:6542-6550; Weldonらの文献、2010. PLoS One 5.)。最大終点力価は、PIC i.n.+i.m.ワクチン接種動物から回収された血清で検出され、OIW i.m.動物がそれに次いだ(図45A)。PIC i.m.ワクチンを受けたマウスは、OIW i.m.動物よりも統計的に有意に低い力価(p=0.03)を有していた。この終点力価の差は、体重減少及び生存の差と相関している。抗体アイソタイプ分布はアジュバントによって強く影響を受けることがあり、抗体の防御効率に大きな影響を与えることがある。しかしながら、3つのワクチン接種レジメンを比較したとき、アイソタイププロファイルに顕著な違いはなかった(図45B)。これは、−i.m.のみのワクチン接種の場合−抗体力価が防御の主な相関物であったことを示唆している。ワクチン群及び対照群由来の血清を微量中和アッセイでも試験したが、cHAワクチン接種群の結果は、おそらくはこのアッセイの検出限界(1:20)のために、陰性であった(データは示さない)。両方の経路で免疫された動物は筋肉内にしかワクチン接種されなかった動物よりも低い罹病率を示したので、i.n.ワクチン接種によって誘導される粘膜IgA抗体は防御に対する相当な寄与を有していたと仮定される。PIC i.n.+i.m.群とPIC i.m.群の間の体重減少の差は、7日目(p=0.0383)及び8日目(0.0136)で統計的に有意であった(対応のないt-検定)。しかしながら、これらの動物がi.m.のみの動物の2倍の抗原も受容したことに留意すべきである。
結論として、この実施例は、ストークに基づく免疫レジメンを、H7ヘッドドメインを保有しないcHA構築物とともに用いて、マウスを新規のH7N9ウイルスから防御することができることを示している。さらに、ヒトへの使用が認可されているものと同様の水中油系アジュバント((Ottらの文献、2000. アジュバントMF59: 10年間の展望(The Adjuvant MF59: A 10-Year Perspective)、p. 211-228. O'Hagan DT(編)、ワクチンアジュバント(Vaccine Adjuvants)、第42巻. Springer); O'Haganらの文献、2013. Expert Rev Vaccines 12:13-30)は、cHAワクチン候補とともにうまく機能し、この組合せをヒトでの実験用に検討することができることを示唆した。普遍的なインフルエンザウイルス防御をもたらすHAストークに基づくワクチンは、株特異的季節性ワクチンに取って代わり、H7N9のような潜在的パンデミックインフルエンザウイルス株に対する準備をさらに促進することができる。
本明細書で引用されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物又は特許出願が引用により組み込まれていることが具体的にかつ個別に示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれている。上の発明は理解の明快さの目的のために図及び実施例によって少し詳細に記載されているが、本発明の教示に照らし、添付の請求項の精神又は範囲を逸脱することなく、一定の変更及び修正をそれに加えることができることが、当業者には容易に明らかであろう。