以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷機の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、本発明の実施例1に係る印刷機としての新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットのローラ配列を表す概略図、図2は、実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットの別のローラ配列を表す概略図、図3は、実施例1の印刷ユニットにおける揺動機構を表すインキ往復ローラの軸部の断面図、図4は、実施例1の印刷ユニットにおける揺動機構を表す偏心軸部の断面図、図5は、インキ受渡しローラの正面図、図6は、インキ受渡しローラの外周形状を表す説明図、図7は、印刷ユニットにおけるインキと湿し水の供給経路を表す説明図、図8は、実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図、図9は、実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図である。
実施例1の印刷機は、図8に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機であって、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとから構成されている。給紙装置Rは、複数(実施例1では、7台)の給紙ユニットR1〜R7を有し、インフィード装置Iは、複数(実施例1では、7台)のインフィードユニットI1〜I7を有し、印刷装置Uは、複数(実施例1では、6台)の印刷ユニットU1〜U6を有し、ウェブパス装置Dは、複数(実施例1では、2台)のウェブパスユニットD1,D2を有し、折機Fは、複数(実施例1では、2個)の折ユニットF1,F2を有している。
この場合、印刷ユニットU1〜U6を6台として説明したが、各印刷ユニットU1〜U6は、4色刷りが可能であると共に、上下に分割して12台の2色刷りが可能な印刷ユニットU11,U12,U21・・・U61,U62として用いることができる。また、2つの折ユニットF1,F2を上下に並べて記載したが、実際には、紙面に直交する方向に並んで配置される操作側折ユニットF1と駆動側折ユニットF2となっている。更に、印刷装置Uを2つの部分から記載したが、機能上2つに分けて記載しただけであり、実際には、1つの装置となっている。
そして、実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機では、図示しない建屋の1階の床面上に給紙ユニットR1〜R7が設置され、2階にインフィードユニットI1〜I7が設置され、2階及び3階に印刷ユニットU1〜U6が設置され、3階から5階にウェブパス装置Dが設置され、また、2階、3階に折機Fが設置されている。
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1〜R7は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(印刷媒体)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アーム11を有し、この保持アーム11を回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。また、この各給紙ユニットR1〜R7には、図示しない紙継装置が設けられており、給紙位置で繰り出されている巻取紙が残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙に対して、待機位置にある巻取紙を紙継することができる。
インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1〜I7は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に送り込むウェブWのテンションを調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWのテンションを適正値に安定して維持するようにしている。例えば、各インフィードユニットI1〜I7は、インフィードローラ、紙押えゴムローラ、ダンサローラ、ガイドローラなどを有している。そして、ダンサローラをウェブWの張り方向に付勢することでウェブWのテンションを適正にし、このダンサローラの揺動に応じてインフィードローラの周速を変更し、ウェブWの適正なテンションを維持している。
なお、給紙装置Rからインフィード装置IまでのウェブWのテンションは、給紙ユニットR1〜R7に設けられた図示しないブレーキ装置により行っており、給紙装置Rに設けられたテンション検出ローラの検出結果に基づいて、このブレーキ装置を制御している。また、印刷装置Uの下流側には、駆動源により駆動回転可能なドラグローラ12が設けられており、このドラグローラ12の周速やダンサローラの付勢力を制御することで、ウェブWのテンションを調整している。
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1〜U6は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1〜U6は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11〜U62とすることができる。各印刷ユニットU11〜U62は、ほぼ同様の構成をなし、後述するが、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有している。実施例1では、各印刷ユニットU1〜U3は、版胴の周長(直径)に対して、ブランケット胴の周長(直径)が2倍に設定され、各印刷ユニットU4〜U6は、版胴の周長(直径)とブランケット胴の周長(直径)が同じに設定されている。この場合、ブランケット胴と版胴とブランケット胴の各周長(各直径)が同じに設定されている。
なお、実施例1では、印刷ユニットU1〜U6を、全て多色刷印刷ユニットにより構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、両面2色刷印刷ユニット、両面単色刷印刷ユニット、一面4色または単色刷印刷ユニットなど、印刷物に応じて適宜各種ユニットを組み合わせて使用すればよい。
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1〜U3に対して設けられ、ウェブパスユニットD2は、印刷ユニットU4〜U6に対して設けられている。各ウェブパスユニットD1,D2は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブWを縦(ウェブWの天地長手方向、ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断するスリッタ、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバー、ウェブWにおける天地長手方向における搬送位置を調整するコンペンセータなどを有している。
即ち、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
折機Fにて、2つの折ユニットF1,F2は、操作側と駆動側に配設されている。即ち、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。この場合、折機Fでは、折ユニットF1,F2が各ウェブパスユニットD1,D2からのウェブW1,W2を処理するだけでなく、各折ユニットF1,F2の一方がまとめて処理することもできる。
従って、実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機では、給紙装置Rの各給紙ユニットR1〜R7からそれぞれ供給された各ウェブWは、インフィード装置Iの各インフィードユニットI1〜I7によりテンションが調整され、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に供給される。この印刷装置Uにおける各印刷ユニットU1〜U6にて、各ウェブWの両面に印刷が施される。そして、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
その後、折機Fでは、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。
ここで、印刷装置Uにおける印刷ユニットU1について詳細に説明する。印刷ユニットU1は、図9に示すように、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットとなっている。この印刷ユニットU1は、ウェブWの搬送方向(下から上)に沿って、墨(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)ごとの4つのスタック21,22,23,24が配置されて構成されており、各スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列となっている。
即ち、印刷ユニットU1における各スタック21,22,23,24は、左右に対向してブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで対接可能であり、各ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bに版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接している。そして、各スタック21,22,23,24は、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられている。また、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられている。
この場合、スタック21,23は、ブランケット胴31a,31b,33a,33bと版胴41a,41b,43a,43bがハの字形状に配列され、スタック22,24は、ブランケット胴32a,32b,34a,34bと版胴42a,42b,44a,44bが逆ハの字形状に配列されている。そして、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bにて、外周面に異なる絵柄を印刷する刷版(図示略)が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に2つ(または、4つ)並べて装着可能となっている。なお、刷版の取付数は適宜設定すればよい。
この場合、各スタック21,23、各スタック22,24は、それぞれローラ配列がほぼ同様の構成となっていることから、以下に、スタック21,22について詳細に説明する。
印刷ユニットU1におけるスタック21は、図1に示すように、一対のブランケット胴31a,31bと、一対の版胴41a,41bと、一対のインキ供給装置51a,51bと、一対の湿し装置61a,61bとから構成されている。
インキ供給装置51a,51bは、インキつぼ101a,101b及びインキ元ローラ102a,102bと、インキ受渡しローラ103a,103bと、インキ練ローラ104a,104bと、インキ往復ローラ105a,105bと、第1インキ着ローラ106a,106bと、第2インキ着ローラ107a,107bとから構成されている。ここで、本発明のインキ供給源は、インキつぼ101a,101bとインキ元ローラ102a,102bにより構成されている。
インキつぼ101a,101bは、インキ(油性インキ)を所定量だけ貯留可能となっており、図示しないインキキーによりインキキー開度を調整することで、インキ元ローラ102a,102bへのインキ供給量を調整することができる。インキ元ローラ102a,102bは、金属製ローラであって、インキつぼ101a,101bから供給されたインキを受け取り、インキ受渡しローラ103a,103bに受け渡すものである。インキ受渡しローラ103a,103bは、インキ練ローラ104a,104bと所定のニップ量(ニップ圧)をもって対接しており、受け取ったインキをこのインキ練ローラ104a,104bに供給するものである。
このインキ受渡しローラ103a,103bは、図5に示すように、金属ローラであって、表面に11−ポリアミド膜または12−ポリアミド膜が設けられ、このポリアミド膜の表面に軸心方向Oに対して所定角度θだけ傾斜した方向に沿う複数の角部111が形成されることで、ツイストローラとなっている。この場合、インキ受渡しローラ103a,103bは、ポリアミド膜が形成されることで真円の円柱形状をなし、表面を切削加工することで所定角度θだけ傾斜した複数の角部111を形成している。即ち、図6に示すように、一点鎖線で表す真円形状をなす表面112を、周方向に所定間隔L1をあけて、周方向に所定範囲L2だけ、切削加工して平面部113を形成することで、この平面部113と円弧部114とを周方向に交互に形成し、平面部113と円弧部114との間に角部111を形成している。このとき、表面112を軸心方向Oに対して所定角度θだけ傾斜した方向に沿って切削加工することで、所定角度θだけ傾斜した方向に沿う複数の角部111が形成される。
図1に戻り、インキ元ローラ102a,102bとインキ受渡しローラ103a,103bとの間には、所定の隙間が確保されており、インキ受渡しローラ103a,103bの回転速度に対してインキ元ローラ102a,102bの回転速度が低速に設定されている。インキ元ローラ102a,102bのインキ膜に対して、インキ受渡しローラ103a,103bの表面に形成された複数の角部111が接触してインキを掻き取ることで、インキがインキ元ローラ102a,102bからインキ受渡しローラ103a,103bに供給される。
インキ練ローラ104a,104bは、インキ受渡しローラ103a,103bから受け取ったインキをインキ往復ローラ105a,105bに供給するものである。この場合、インキ練ローラ104a,104bは、ゴム製ローラであって、インキ受渡しローラ103a,103bより小径に設定され、インキ往復ローラ105a,105bは、金属製ローラである。インキ練ローラ104a,104bは、インキ往復ローラ105a,105bと所定のニップ量(ニップ圧)をもって対接しており、インキを練り込んで、インキ往復ローラ105a,105bが対接する2つのインキ着ローラ106a,106b,107a,107bに供給する。
第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107bは、インキ往復ローラ105a,105bが受け取ったインキを版胴41a,41bに供給するものである。この版胴41a,41bは、表面に刷版が固定されており、この刷版における印刷される絵柄の画線部にインキが供給される。各インキ着ローラ106a,106b,107a,107bは、ゴム製ローラであって、第1インキ着ローラ106a,106bは、外径(周長)が版胴41a,41bと同径であり、第2インキ着ローラ107a,107bは、外径(周長)が版胴41a,41bより小径である。
この場合、第1インキ着ローラ106a,106bは、インキ往復ローラ105a,105bの回転方向における上流側に対接し、第2インキ着ローラ107a,107bは、インキ往復ローラ105a,105bの回転方向における下流側に対接している。即ち、インキ往復ローラ105a,105bは、第1インキ着ローラ106a,106b、第2インキ着ローラ107a,107bの順にインキを供給する。また、第1インキ着ローラ106a,106bは、版胴41a,41bの回転方向における下流側に対接し、第2インキ着ローラ107a,107bは、版胴41a,41bの回転方向における上流側に対接している。即ち、版胴41a,41bは、第2インキ着ローラ107a,107b、第1インキ着ローラ106a,106bの順にインキが供給される。
版胴41a,41bは、刷版に供給されたインキをブランケット胴31a,31bに転写するものであり、ブランケット胴31a,31bは、両者の対接位置に搬送されるウェブWの表裏に対してインキを転写して印刷を行うものである。
このようにスタック21は、インキ元ローラ102a,102b、インキ受渡しローラ103a,103b、インキ練ローラ104a,104b、インキ往復ローラ105a,105bが直列をなして対接している。また、版胴41a,41b、ブランケット胴31a,31bが直列をなして対接している。そして、インキ往復ローラ105a,105bと版胴41a,41bとの間に、2つのインキ着ローラ106a,106b,107a,107bが対接している。
この場合、版胴41a,41bに対してブランケット胴31a,31bが2倍胴であり、第1インキ着ローラ106a,106bは、版胴41a,41bと同径であり、第2インキ着ローラ107a,107bは、版胴41a,41b及び第1インキ着ローラ106a,106bより小径で、外径が整数倍ではなく、両者の位相が合わない径となっている。また、インキ練ローラ104a,104bは、インキ元ローラ102a,102b、インキ受渡しローラ103a,103b、インキ着ローラ106a,106b,107a,107bより小径に形成され、同期して回転するときに、その位相が合わない径となっている。
なお、この実施例1では、インキつぼ101a,101bとインキ元ローラ102a,102bによりインキ供給源を構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、インキつぼ101a,101bに代えて、インキ元ローラ102a,102bにインキを直接供給するインキ供給ノズルを有するポンプ方式(例えば、デジタルインキポンプ)や、インキ量を調整するキーがなくてインキ着ローラに常に一定厚さのインキ膜を形成するキーレス方式などとしてもよい。
湿し装置61a,61bは、スプレーノズルを有し、スプレー式で湿し水をインキ練ローラ104a,104bに直接供給するものである。この場合、湿し装置61a,61bは、インキ練ローラ104a,104bの回転方向におけるインキ受渡しローラ103a,103bとの対接位置より下流側で、且つ、インキ往復ローラ105a,105bとの対接位置より上流側に湿し水を供給する。そして、湿し装置61a,61bからインキ練ローラ104a,104bに供給された湿し水は、インキと共に、インキ往復ローラ105a,105b、インキ着ローラ106a,106b,107a,107bを介して版胴41a,41b(刷版)における印刷されない非画線部に供給される。
なお、この実施例1では、湿し装置61a,61bを、スプレー式で湿し水をインキ練ローラ104a,104bに直接供給するものとしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、湿し装置61a,61bを、水舟、水元ローラ、水練ローラ、水往復ローラ、水着ローラなどにより構成してもよい。
また、インキ受渡しローラ103a,103bと版胴41a,41bとブランケット胴31a,31bは、第1駆動装置121a,121bにより同期して駆動回転可能となっている。そして、インキ受渡しローラ103a,103bや版胴41a,41bに直接的または間接的に対接するインキ練ローラ104a,104b、インキ往復ローラ105a,105b、各インキ着ローラ106a,106b,107a,107bは、この第1駆動装置121a,121bに基づく駆動力によって連れ回りして駆動回転可能となっている。即ち、第1駆動装置121a,121bは、図示しない第1駆動モータの回転力を減速機により減速してブランケット胴31a,31bに伝達し、図示しないギアを介して版胴41a,41b及びインキ受渡しローラ103a,103bに伝達し、同期して回転させている。
詳細に説明すると、インキ受渡しローラ103a,103b、インキ練ローラ104a,104b、インキ往復ローラ105a,105b、各インキ着ローラ106a,106b,107a,107bが直列をなして対接して配置されていることから、ブランケット胴31a,31bから版胴41a,41bに伝達された回転力が、外周面を通して各インキ着ローラ106a,106b,107a,107b、インキ往復ローラ105a,105b、インキ練ローラ104a,104b、インキ受渡しローラ103a,103bへ伝達されることで、これらのローラが連れ回り可能となっている。
また、インキ元ローラ102a,102bは、第2駆動装置122a,122bにより駆動回転可能となっている。即ち、第2駆動装置122a,122bは、図示しない第2駆動モータの回転力を減速機により減速してインキ元ローラ102a,102bに伝達し、回転させている。
また、インキ往復ローラ105a,105bは、揺動装置131a,131bにより軸方向に往復移動可能となっている。第2インキ着ローラ107a,107bは、インキ往復ローラ105a,105bにより軸方向に往復移動可能となっている。この場合、揺動装置131a,131bは、版胴41a,41bの回転力によりカム機構(図示略)を介してインキ往復ローラ105a,105bを軸心方向に沿って往復移動可能である。そして、第2インキ着ローラ107a,107bは、接触するインキ往復ローラ105a,105bから揺動力を受けて軸心方向に連られて往復移動可能である。
以下、この揺動装置131a,131bについて説明するが、両者はほぼ同様の構成であることから、一方の揺動装置131aについて詳細に説明する。揺動装置131aにおいて、図3及び図4に示すように、インキ往復ローラ105aは、支持軸201が駆動側フレーム202に軸受203により回転自在に支持されると共に軸方向に移動自在に支持されている。この支持軸201は、ウォームギア204が固定されている。一方、駆動側フレーム202に固定された案内軸205に移動フレーム206が支持軸201の軸方向に沿って移動自在に支持されている。偏心軸207は、支持軸201に直交する方向に沿って配置され、一対の軸部208が軸受209により移動フレーム206に支持されている。そして、偏心軸207は、ウォームホイール210が固定され、ウォームホイール210は、支持軸201のウォームギア204と噛み合っている。この場合、支持軸201は、移動フレーム206に回転自在に支持されると共に、軸方向に相対移動不能に支持されている。なお、偏心軸207は、軸心が軸部208の軸心に対してずれることで、所定の偏心量eが設定されている。
従って、連れ回りによりインキ往復ローラ105aが回転し、支持軸201が回転すると、この回転力がウォームギア204によりウォームホイール210に伝達され、軸部208と共に偏心軸207が回転する。このとき、軸部208は、軸受209により移動フレーム206に対して支持軸201に直交する径方向(図3の左右方向)に移動自在に支持されていることから、この方向への偏心軸207の偏心量eが吸収され、ウォームギア204とウォームホイール210との噛み合いが維持される。一方、軸部208は、軸受209により移動フレーム206に対して支持軸201の軸方向(図3及び図4の上下方向)に移動不能に支持されていることから、この方向への偏心軸207の偏心量eが移動フレーム206を介して支持軸201に伝達され、ウォームギア204とウォームホイール210との噛み合いが維持されたままで、支持軸201、つまり、インキ往復ローラ105aが軸方向に沿って往復移動する。
そして、インキ往復ローラ105a,105bと第2インキ着ローラ107a,107bは、周面が接触して連れ回りすることから、同時に、連れ揺動する。なお、この揺動装置131a,131bは、この構成に限定されるものではない。例えば、インキ往復ローラ105a,105bの揺動力を第2インキ着ローラ107a,107bに伝達して軸方向に往復移動するようにしてもよい。
また、印刷ユニットU1におけるスタック22は、図2に示すように、一対のブランケット胴32a,32bと、一対の版胴42a,42bと、一対のインキ供給装置52a,52bと、一対の湿し装置62a,62bとから構成されている。
インキ供給装置52a,52bは、インキつぼ161a,161b及びインキ元ローラ162a,162bと、インキ受渡しローラ163a,163bと、インキ練ローラ164a,164bと、インキ往復ローラ165a,165bと、第1インキ着ローラ166a,166bと、第2インキ着ローラ167a,167bとから構成されている。ここで、本発明のインキ供給源は、インキつぼ161a,161bとインキ元ローラ162a,162bにより構成されている。湿し装置62a,62bは、スプレーノズルを有し、スプレー式で湿し水をインキ練ローラ164a,164bに直接供給するものである。
また、インキ受渡しローラ163a,163bと版胴42a,42bとブランケット胴32a,32bは、第1駆動装置171a,171bにより同期して駆動回転可能となっている。そして、インキ受渡しローラ163a,163bや版胴42a,42bに直接的または間接的に対接するインキ練ローラ164a,164b、インキ往復ローラ165a,165b、各インキ着ローラ166a,166b,167a,167bは、この第1駆動装置171a,171bに基づく駆動力によって連れ回りして駆動回転可能となっている。即ち、第1駆動装置171a,171bは、図示しない第1駆動モータの回転力を減速機により減速してブランケット胴32a,32bに伝達し、図示しないギアを介して版胴42a,42b及びインキ受渡しローラ163a,163bに伝達し、同期して回転させている。
インキ元ローラ162a,162bは、第2駆動装置172a,172bにより駆動回転可能となっている。即ち、第2駆動装置172a,172bは、図示しない第2駆動モータの回転力を減速機により減速してインキ元ローラ162a,162bに伝達し、回転させている。また、インキ往復ローラ165a,165bは、揺動装置181a,181bにより軸方向に往復移動可能となっており、第2インキ着ローラ167a,167bは、接触するインキ往復ローラ165a,165bから揺動力を受けて軸心方向に連られて往復移動可能である。
なお、スタック22を構成するインキ供給装置52a,52b、湿し装置62a,62bなどは、スタック21を構成するインキ供給装置51a,51b、湿し装置61a,61bなどと、各ローラの配列方向が上下逆になるだけで、ほぼ同様の構成をなしていることから、詳細な説明は省略する。
以下、印刷ユニットU1の作動を説明する。図1に示すように、スタック21にて、インキ元ローラ102a,102bが回転することで、インキつぼ101a,101bから所定量の墨インキが取り出され、インキ受渡しローラ103a,103bを通してインキ練ローラ104a,104bに受け渡され、インキ練ローラ104a,104bからインキ往復ローラ105a,105bに受け渡される。また、湿し装置61a,61bは、湿し水をインキ練ローラ104a,104bに直接供給する。
すると、インキ練ローラ104a,104bに対してインキ往復ローラ105a,105bが軸方向に往復移動することから、インキ及び湿し水が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に均一に広げられると共に、インキが練り込まれて所定粘度となる。そして、所定の膜厚に形成されたインキ及び湿し水がインキ往復ローラ105a,105bから第1、第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107bに供給され、この各インキ着ローラ106a,106b,107a,107bから版胴41a,41bの版面(画線部と非画線部)に供給される。
このとき、インキ元ローラ102a,102bは、第2駆動装置122a,122bにより駆動回転する一方、版胴41a,41bは、第1駆動装置121a,121bにより駆動回転し、この版胴41a,41bの駆動回転力が、各インキ着ローラ106a,106b,107a,107b、インキ往復ローラ105a,105b、インキ練ローラ104a,104b、インキ受渡しローラ103a,103bへ伝達され、各ローラが連れ回りしている。そのため、版胴41a,41bからインキ受渡しローラ103a,103bへ向けて下流側のローラ間ほど所望の練り効果を得るために適度なスリップが生じやすくなり、インキ練ローラ104a,104bやインキ往復ローラ105a,105bによりインキを適正に練り込んで、最適な粘性に調整することができると共に、このインキ往復ローラ105a,105bを揺動することで、インキの膜厚を均一に調整することができる。
そして、版胴41a,41bの版面に付着したインキは、ブランケット胴31a,31bに転写され、この一対のブランケット胴31a,31bの間で、ウェブWに所定の印圧が掛けられることで、各ブランケット胴31a,31bのインキが絵柄としてウェブWの表面に転写され、両面印刷が行われる。
続いて、図2に示すように、スタック22にて、インキ元ローラ162a,162bが回転することで、インキつぼ161a,161bから所定量の藍インキが取り出され、インキ受渡しローラ163a,163bを通してインキ練ローラ164a,164bに受け渡され、インキ練ローラ164a,164bからインキ往復ローラ165a,165bに受け渡される。また、湿し装置62a,62bは、湿し水をインキ練ローラ164a,164bに直接供給する。
すると、インキ練ローラ164a,164bに対してインキ往復ローラ165a,165bが軸方向に往復移動することから、インキ及び湿し水が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に均一に広げられると共に、インキが練り込まれて所定粘度となる。そして、所定の膜厚に形成されたインキ及び湿し水がインキ往復ローラ165a,165bから第1、第2インキ着ローラ166a,166b,167a,167bに供給され、この各インキ着ローラ166a,166b,167a,167bから版胴42a,42bの版面(画線部と非画線部)に供給される。
このとき、インキ元ローラ162a,162bは、第2駆動装置172a,172bにより駆動回転する一方、版胴42a,42bは、第1駆動装置171a,171bにより駆動回転し、この版胴42a,42bの駆動回転力が、各インキ着ローラ166a,166b,167a,167b、インキ往復ローラ165a,165b、インキ練ローラ164a,164b、インキ受渡しローラ163a,163bへ伝達され、各ローラが連れ回りしている。そのため、版胴42a,42bからインキ受渡しローラ163a,163bへ向けて下流側のローラ間ほど所望の練り効果を得るために適度なスリップが生じやすくなり、インキ練ローラ164a,164bやインキ往復ローラ165a,165bによりインキを適正に練り込んで、最適な粘性に調整することができると共に、このインキ往復ローラ165a,165bを揺動することで、インキの膜厚を均一に調整することができる。
そして、版胴42a,42bの版面に付着したインキは、ブランケット胴32a,32bに転写され、この一対のブランケット胴32a,32bの間で、ウェブWに所定の印圧が掛けられることで、各ブランケット胴32a,32bのインキが絵柄としてウェブWの表面に転写され、両面印刷が行われる。
その後、同様に、スタック23にて、紅インキによる印刷が行われ、スタック24にて、黄インキによる印刷が行われる。
ここで、印刷ユニットU1におけるインキと湿し水の供給関係について、図7に基づいて説明するが、この図7は、スタック22にて、インキつぼ161aからブランケット胴32aまでのインキの流れと、湿し装置62aからブランケット胴32aまでの湿し水の流れを模式的に表すものであり、あえて各ローラ間に隙間を設けて表している。なお、インキつぼ161bからブランケット胴32bまでのインキの流れと、湿し装置62bからブランケット胴32bまでの湿し水の流れについて説明しないが、基本的には同様である。図7に示すように、インキ元ローラ162aは、インキつぼ161aのインキをインキ受渡しローラ163aを通してインキ練ローラ164aに供給し、湿し装置62aは、湿し水をインキ練ローラ164aにおけるインキ膜の表面に供給する。すると、インキ練ローラ164aは、実線で表すインキ膜の上に点線で表す水膜が形成された状態でインキ往復ローラ165aに受け渡され、インキ往復ローラ165aは、水膜上にインキ膜が形成された状態で受け取り、第1、第2インキ着ローラ166a,167aに供給する。そして、各インキ着ローラ166a,167aは、インキ膜の上に水膜が形成された状態で受け取り、版胴42a,42bの版面に供給する。
そのため、インキは、インキ元ローラ162a、インキ受渡しローラ163a、インキ練ローラ164a、インキ往復ローラ165a、第1、第2インキ着ローラ166a,167aを介して版胴42aに供給されることとなる。この場合、インキ供給経路は、従来に比べて短いものの、第2インキ着ローラ167aが異径で揺動することから、十分なインキの練り効果を確保することができる。また、湿し水は、インキ練ローラ164a、インキ往復ローラ165a、第1、第2インキ着ローラ166a,167aを介して版胴42aに供給されることとなる。この場合、インキ膜厚が大きい箇所にインキ転移を阻害することなく適切に湿し水を供給できることから、インキが湿し水を十分に取り込めることができる。
また、インキ練ローラ164aは、実線で表すインキ膜の上に点線で表す水膜が形成された状態でインキ往復ローラ165aに受け渡され、インキ往復ローラ165aは、水膜上にインキ膜が形成された状態で受け取り、第1、第2インキ着ローラ166a,167aに供給する。そして、各インキ着ローラ166a,167aは、インキ膜の上に水膜が形成された状態で受け取り、版胴42aの版面に供給する。そのため、版胴42aは、水膜が供給されてからインキ膜が供給される。即ち、版胴42aは、白紙となる非画線部に水膜(湿し水)が付着してから、絵柄を構成する画線部にインキ膜が供給される。その結果、版胴42aは、非画線部へのインキ膜の付着が抑制され、画線部へ適正にインキが付着することとなり、画線部と非画線部との境界が安定し、印刷品質が良好となる。
その後、版胴42aは、画線部に付着したインキをブランケット胴32aに転写し、この一対のブランケット胴32aがウェブWにインキを転写することで、ウェブWに絵柄が形成される。この場合、オフセット印刷の刷版は、親油性の部分(画線部)と親水性の部分(非画線部)を作り、親水性の部分に水を付け、水と油の反発を利用して、親油性部分にインキをつけて、画線部を形成する。そのため、刷版に対して、先にインキが付くと、親油性部分、親水性部分に限らず、全面にインキがべったりと付いてしまい、画線部と非画線部を精度良く形成することが困難となる。
このように実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機にあっては、インキつぼ101a,101b,161a,161bと、インキ元ローラ102a,102b,162a,162bと、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bと、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bと、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165bと、径の異なる第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bと、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bと、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bと、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bに対して湿し水を供給する湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bを設けている。
従って、ローラ本数を減少して駆動伝達系を簡素化することで、各ローラの回転駆動力を低減し、消費電力を低減することができると共に、ゴムローラの本数を減少してランニングコストやメンテナンスコストを低減することができる。また、インキ膜厚が大きいインキ供給源側に湿し水を供給すると、インキが湿し水を取り込める量が増加するものの、供給される湿し水によりインキの供給が阻害されてインキの転移が悪くなってしまう可能性がある。そのため、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bに対して湿し水を供給することで、このインキが湿し水を取り込める量とインキの供給量との微妙なバランスを適切に確保し、インキ供給経路における上流側に湿し水をインキ供給量との良好なバランスを維持して供給することができ、印刷品質を向上することができる。
実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機では、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bは、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bの回転方向におけるインキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bとの対接位置より下流側で、且つ、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165bとの対接位置より上流側に湿し水を供給している。
従って、インキは、インキつぼ101a,101b,161a,161b、インキ元ローラ102a,102b,162a,162b、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163b、インキ練ローラ104a,104b,164a,164b、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165b、第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bを介して版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに供給され、湿し水は、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bからインキ練ローラ104a,104b,164a,164b上のインキ膜上、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165b、第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bを介して版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに供給される。そのため、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bは、各インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bから先に水膜が供給され、続いてインキ膜が供給されることとなり、画線部と非画線部との境界が安定し、印刷品質を向上することができる。
実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機では、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bと版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bとブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bを駆動回転する第1駆動装置121a,121b,171a,171bが設けられ、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bとインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bと第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bが連れ回りで駆動している。
従って、駆動する各ローラの間に連れ回りするローラが配置されることで、連れ回りによる適度なスリップが発生し、ローラ本数を増加することなくインキ練り効果を高めることができる。また、インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bから版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bを離間させたとき、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bによりインキ練ローラ104a,104b,164a,164bとインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bと各インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bを連れ回りさせることが可能となる。そのため、印刷開始前におけるインキ膜の生成処理、印刷終了後におけるインキ洗浄処理などにて、各ローラを回転することができ、各種作業を円滑に行うことができる。
実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機では、第1インキ着ローラ106a,106b,166a,166bは、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bと同径に設定され、第2インキ着ローラ107a,107b,167a,167bは、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bより小径に設定され、且つ、軸心方向に沿って往復移動可能としている。従って、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して第1インキ着ローラ106a,106b,166a,166bを同径とし、第2インキ着ローラ107a,107b,167a,167bを小径とすることで、インキ練り効果を高めることができ、また、第2インキ着ローラ107a,107b,167a,167bを往復移動可能とすることで、インキ供給時の履歴を効果的に解消してゴーストの発生を抑制し、印刷品質を向上することができる。
実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機では、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bは、表面に11−ポリアミド膜または12−ポリアミド膜が設けられ、ポリアミド膜の表面に軸心方向Oに対して所定角度θだけ傾斜した方向に沿う複数の角部111を形成している。従って、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bの表面における高い親油性を確保し、インキを良好に受け渡すことができ、また、ポリアミド膜の表面に傾斜した複数の角部111が形成されることで、複数の角部111がインキを掻き取ることで、所定量のインキを供給することができる。
また、実施例1のインキ供給方法にあっては、インキをインキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bに供給して表面にインキ膜を形成する工程と、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bのインキ膜をインキ練ローラ104a,104b,164a,164bに転写して表面にインキ膜を形成する工程と、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bのインキ膜上に湿し水を供給して水膜を形成する工程と、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bのインキ膜及び水膜をインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bに転写して表面に水膜とインキ膜を形成する工程と、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165bの水膜とインキ膜を径の異なる第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bに転写して表面にインキ膜と水膜を形成する工程と、第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bのインキ膜と水膜を版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに転写して表面に水膜とインキ膜を形成する工程と、を有している。
従って、インキ膜厚が大きいインキ供給源側に湿し水を供給すると、インキが湿し水を取り込める量が増加するものの、供給される湿し水によりインキの供給が阻害されてインキの転移が悪くなってしまう可能性がある。そのため、インキ練ローラ104a,104b,164a,164bに対して湿し水を供給することで、このインキが湿し水を取り込める量とインキの供給量との微妙なバランスを適切に確保し、インキ供給経路における上流側に湿し水をインキ供給量との良好なバランスを維持して供給することができ、印刷品質を向上することができる。
実施例1のインキ供給方法では、第1及び第2インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bは、インキ膜の表面に水膜が形成され、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bの表面に対して先に水膜を付着させている。従って、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bは、各インキ着ローラ106a,106b,107a,107b,166a,166b,167a,167bから先に水膜が供給され、続いてインキ膜が供給されることとなり、画線部と非画線部との境界が安定し、印刷品質を向上することができる。
図14は、本発明の実施例6に係る印刷機としての新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットのローラ配列を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例6の新聞用オフセット輪転印刷機において、図14に示すように、印刷ユニットU1におけるスタック22は、一対のブランケット胴32a,32bと、一対の版胴42a,42bと、一対のインキ供給装置52a,52bと、一対の湿し装置62a,62bとから構成されている。
この場合、インキ供給装置52a,52bは、インキつぼ161a,161b及びインキ元ローラ162a,162bと、インキ受渡しローラ163a,163bと、インキ練ローラ164a,164bと、インキ往復ローラ165a,165bと、第1インキ着ローラ166a,166bと、第2インキ着ローラ167a,167bとから構成されている。
そして、インキ往復ローラ165a,165bと版胴42a,42bとブランケット胴32a,32bは、第1駆動装置171a,171bにより同期して駆動回転可能となっている。そして、インキ往復ローラ165a,165bや版胴42a,42bに直接的または間接的に対接するインキ受渡しローラ163a,163b、インキ練ローラ164a,164b、各インキ着ローラ166a,166b,167a,167bは、この第1駆動装置171a,171bに基づく駆動力によって連れ回りして駆動回転可能となっている。また、インキ往復ローラ165a,165bは、揺動装置181a,181bにより軸方向に往復移動可能となっており、第2インキ着ローラ167a,167bは、接触するインキ往復ローラ165a,165bから揺動力を受けて軸心方向に連られて往復移動可能である。
また、湿し装置62a,62bは、インキ練ローラ164a,164bに対接するならしローラ192a,192bを有している。このならしローラ192a,192bは、インキ練ローラ164a,164bより小径に設定されている。ならしローラ192a,192bは、インキ練ローラ164a,164bと所定のニップ圧(ニップ幅)をもって対接することで連れ回り可能となっている。そして、湿し装置62a,62bは、粒状の湿し水を供給できるようにスプレーノズルを有し、スプレー式で湿し水をインキ練ローラ164a,164bに直接供給するものである。
この場合、湿し装置62a,62bは、インキ練ローラ164a,164bにおけるならしローラ192a,192bとの対接位置よりも回転方向の上流側に湿し水を供給可能となっている。具体的に、インキ練ローラ164a,164bに対してその一方側に湿し装置62a,62bが配置され、一方側における湿し装置62a,62bより下方にならしローラ192a,192bが配置されており、湿し装置62a,62bとならしローラ192a,192bが上下に位置している。
また、インキ練ローラ164a,164bは、軸心方向に沿って往復移動可能となっている。この場合、インキ練ローラ164a,164bは、接触するインキ往復ローラ165a,165bから揺動力を受けて軸心方向に連られて往復移動可能である。
従って、インキ元ローラ162a,162bが回転し、インキつぼ161a,161bから所定量のインキをインキ受渡しローラ163a,163bを通してインキ練ローラ164a,164bに受け渡す。また、湿し装置62a,62bは、インキ練ローラ164a,164bにおけるならしローラ192a,192bとの対接位置よりも上流側に湿し水を供給する。そして、このインキ練ローラ164a,164bの表面に供給された湿し水は、ならしローラ192a,192bとのニップ部で周方向及び軸方向に広げられ、厚さが均一化された水膜が形成される。
また、インキ練ローラ164a,164bが往復移動することから、このインキ練ローラ164a,164bとならしローラ192a,192bとの間でスリップが発生し、インキ練ローラ164a,164bに供給された湿し水がこのニップ部でならされることとなり、インキ練ローラ164a,164bに厚さが均一化された水膜を形成することができる。
その後、インキ練ローラ164a,164bに対してインキ往復ローラ165a,165bが軸方向に往復移動することから、インキ及び湿し水が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に均一に広げられると共に、インキが練り込まれて所定粘度となる。そして、所定の膜厚に形成されたインキ及び湿し水がインキ往復ローラ165a,165bから第1、第2インキ着ローラ166a,166b,167a,167bに供給され、この各インキ着ローラ166a,166b,167a,167bから版胴42a,42bの版面(画線部と非画線部)に供給される。そして、版胴42a,42bの版面に付着したインキは、ブランケット胴32a,32bに転写され、この一対のブランケット胴32a,32bの間で、ウェブWに所定の印圧が掛けられることで、各ブランケット胴32a,32bのインキが絵柄としてウェブWの表面に転写され、両面印刷が行われる。
このとき、インキ練ローラ164a,164bは、インキ受渡しローラ163a,163bからインキが供給された後、湿し装置62a,62bから湿し水が供給される。そのため、インキ膜と水膜は、インキ練ローラ164a,164bから各インキ着ローラ166a,166b,167a,167bを介して版胴42a,42bに供給されるが、版胴42a,42bは、水膜が供給されてからインキ膜が供給される。即ち、版胴42a,42bは、白紙となる非画線部に水膜(湿し水)が付着してから、絵柄を構成する画線部にインキ膜が供給される。その結果、版胴42a,42bは、非画線部へのインキ膜の付着が抑制され、画線部へ適正にインキが付着することとなり、画線部と非画線部との境界が安定し、印刷品質が良好となる。
このように実施例6の新聞用オフセット輪転印刷機にあっては、インキつぼ161a,161bと、インキ元ローラ162a,162bと、インキ受渡しローラ163a,163bと、軸心方向に往復移動するインキ練ローラ164a,164bと、インキ往復ローラ165a,165bと、径の異なる第1及び第2インキ着ローラ166a,166b,167a,167bと、版胴42a,42bと、ブランケット胴32a,32bと、インキ練ローラ164a,164bに対接するならしローラ192a,192bと、インキ練ローラ164a,164bにおけるならしローラ192a,192bとの対接位置よりも上流側に湿し水を供給可能とする湿し装置62a,62bを設けている。
従って、インキ練ローラ164a,164bが往復移動することで、インキ練ローラ164a,164bとならしローラ192a,192bとの間でスリップが発生し、湿し装置62a,62bからインキ練ローラ164a,164bに供給された湿し水は、このインキ練ローラ164a,164bとならしローラ192a,192bとの間でならされることとなり、下流側に厚さが均一化された水膜を供給することができる。
本実施例では、インキ練ローラ164a,164bを往復移動するように構成したが、ならしローラ192a,192bを往復移動するように構成してもよいし、インキ練ローラ164a,164bとならしローラ192a,192bの両方を往復移動するように構成してもよい。
なお、実施例5、6では、湿し装置をインキ練ローラに対して湿し水を粒状にして供給可能とするため、スプレーノズルを有する湿し装置62a,62bとしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、ブラシ式湿し装置としてもよく、このブラシ式湿し装置は、合成繊維性のブラシローラからなる水元ローラを回転し、ドクタによりブラシ上の水滴を飛散させて粒状の湿し水を供給するものである。
なお、上述した実施例では、第1駆動装置からの駆動力が、版胴へ入力するものとして説明したが、ブランケット胴へ入力してもよいし、圧胴へ入力するようにしてもよい。即ち、第1駆動装置からの駆動力が直接的または間接的に版胴を駆動回転させ、その駆動力により、インキ着ローラ、インキ往復ローラ、インキ練ローラ、インキ受渡しローラなどを連れ回りで駆動することができればよいものである。
また、上述した実施例では、第1インキ着ローラの外径(周長)を版胴と同径とし、第2インキ着ローラの外径(周長)を版胴より小径し、第1インキ着ローラを版胴の回転方向における下流側に対接し、第2インキ着ローラを版胴の回転方向における上流側に対接するように配置したが、版胴に対して第1インキ着ローラと第2インキ着ローラを逆に配置してもよい。
また、上述した実施例では、版胴に対してブランケット胴を2倍胴としたが、版胴とブランケット胴を同径としてもよい。
また、上述した実施例にて、揺動装置131a,131b,181a,181bによりインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bを軸方向に往復移動可能としている。この場合、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165bにおける揺動(軸方向の往復移動)の周期及び移動量を最適値に設定することが望ましい。具体的に、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが6〜15回転する間にインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bが1往復移動することが望ましい。例えば、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが5回転する間にインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bが1往復移動すると、振動が発生しやすく、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが16回転する間にインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bが1往復移動すると、インキ膜の厚さが均一にならずに印刷品質が低下する。
なお、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165bの周期を調整するには、図4及び図5に示す構造の場合、ウォームギア204とウォームホイール210との減速比を変更すればよい。また、インキ往復ローラ105a,105b,165a,165bの移動量を調整するには、偏心軸207の軸心と軸部208の軸心との偏心量eを変更すればよい。また、モータを用いてインキ往復ローラ105a,105b,165a,165bの周期や移動量を調整するように構成してもよい。
また、上述した実施例にて、インキ受渡しローラ103a,103b,163a,163bを金属ローラとし、表面に11−ポリアミド膜または12−ポリアミド膜を設け、表面に所定角度θだけ傾斜した複数の角部111を形成しており、複数の角部111がインキを掻き取ることで、所定量のインキを供給することができる。この場合、インキの流度(流動性)や粘度を最適化(流度の上昇、粘度の低下)することで、表面の角部111をなくした平滑なローラを使用することができる。また、インキの流度(流動性)や粘度を最適化することで、ローラ表面に格子目状のパターンを形成したり、ローラ表面に銅めっき膜を形成したり、銅めっき膜の上に格子目状のパターンを形成したりすることができる。
また、上述した実施例では、本発明の印刷機を新聞用オフセット輪転印刷機に適用して説明したが、商業用オフセット輪転印刷機やオフセット枚葉印刷機などに適用してもよく、この場合、両面印刷機であっても、片面印刷機であってもよい。