以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷機の制御装置及び方法と印刷機の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、複数の実施形態がある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
図8は、新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図、図9は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図、図10は、印刷ユニットにおけるローラ配列を表す概略図、図11は、印刷ユニットにおけるローラ配列を表す斜視図、図12は、印刷ユニットにおける版胴を表す概略図である。
本実施形態の印刷機は、図1及び図8に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機システム10であって、印刷機本体106は、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとから構成されている。給紙装置Rは、複数(本実施形態では、7台)の給紙ユニットR1〜R7を有し、インフィード装置Iは、複数(本実施形態では、7台)のインフィードユニットI1〜I7を有し、印刷装置Uは、複数(本実施形態では、6台)の印刷ユニットU1〜U6を有し、ウェブパス装置Dは、複数(本実施形態では、2台)のウェブパスユニットD1,D2を有し、折機Fは、複数(本実施形態では、2台)の折ユニットF1,F2を有している。
この場合、印刷ユニットU1〜U6を6台として説明したが、各印刷ユニットU1〜U6は、4色刷りが可能であると共に、上下に分割して12台の2色刷りが可能な印刷ユニットU11,U12,U21・・・U61,U62として用いることができる。また、2つの折ユニットF1,F2を上下に並べて記載したが、実際には、紙面に直交する方向に並んで配置される操作側折ユニットF1と駆動側折ユニットF2となっている。更に、印刷装置Uを2つの部分から記載したが、機能上2つに分けて記載しただけであり、実際には、1つの装置となっている。
そして、印刷機本体106では、図示しない建屋の1階の床面上に給紙ユニットR1〜R7が設置され、2階にインフィードユニットI1〜I7が設置され、2階及び3階に印刷ユニットU1〜U6が設置され、3階から5階にウェブパス装置Dが設置され、また、2階、3階に折機Fが設置されている。
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1〜R7は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(印刷媒体)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アーム11を有し、この保持アーム11を回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。また、この各給紙ユニットR1〜R7には、図示しない紙継装置が設けられており、給紙位置で繰り出されている巻取紙が残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙に対して、待機位置にある巻取紙を紙継することができる。
インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1〜I7は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に送り込むウェブWのテンションを調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWのテンションを適正値に安定して維持するようにしている。例えば、各インフィードユニットI1〜I7は、インフィードローラ、紙押えゴムローラ、ダンサローラ、ガイドローラなどを有している。そして、ダンサローラをウェブWの張り方向に付勢することでウェブWのテンションを適正にし、このダンサローラの揺動に応じてインフィードローラの周速を変更し、ウェブWの適正なテンションを維持している。
なお、給紙装置Rからインフィード装置IまでのウェブWのテンションは、給紙ユニットR1〜R7に設けられた図示しないブレーキ装置により行っており、給紙装置Rに設けられたテンション検出ローラの検出結果に基づいて、このブレーキ装置を制御している。また、印刷装置Uの下流側には、駆動源により駆動回転可能なドラグローラ12が設けられており、このドラグローラ12の周速やダンサローラの付勢力を制御することで、ウェブWのテンションを調整している。
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1〜U6は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1〜U6は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11〜U62とすることができる。各印刷ユニットU11〜U62は、ほぼ同様の構成をなし、後述するが、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有している。本実施形態では、各印刷ユニットU1〜U6は、版胴の周長が新聞(印刷物)の1頁の縦の長さに設定され、ブランケット胴の周長が版胴の周長の整数倍に設定されているが、版胴の周長(直径)とブランケット胴の周長(直径)を同じに設定してもよい。
なお、本実施形態では、印刷ユニットU1〜U6を、全て多色刷印刷ユニットにより構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、両面2色刷印刷ユニット、両面単色刷印刷ユニット、一面4色または単色刷印刷ユニットなど、印刷物に応じて適宜各種ユニットを組み合わせて使用すればよい。
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1〜U3に対して設けられ、ウェブパスユニットD2は、印刷ユニットU4〜U6に対して設けられている。各ウェブパスユニットD1,D2は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブWを縦(ウェブWの天地長手方向、ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断するスリッタ、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバー、ウェブWにおける天地長手方向における搬送位置を調整するコンペンセータなどを有している。
即ち、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
折機Fにて、2つの折ユニットF1,F2は、操作側と駆動側に配設されている。即ち、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。この場合、折機Fでは、折ユニットF1,F2が各ウェブパスユニットD1,D2からのウェブW1,W2を処理するだけでなく、各折ユニットF1,F2の一方がまとめて処理することもできる。
従って、印刷機本体106では、給紙装置Rの各給紙ユニットR1〜R7からそれぞれ供給された各ウェブWは、インフィード装置Iの各インフィードユニットI1〜I7によりテンションが調整され、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に供給される。この印刷装置Uにおける各印刷ユニットU1〜U6にて、各ウェブWの両面に印刷が施される。そして、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
その後、折機Fでは、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。
ここで、印刷装置Uにおける印刷ユニットU1について詳細に説明する。なお、他の各印刷ユニットU2〜U6もほぼ同様の構成となっている。
印刷ユニットU1は、図9に示すように、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットとなっている。この印刷ユニットU1は、ウェブWの搬送方向が鉛直方向における上方となっており、本実施形態では、下から上に向かって、墨(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)ごとの4つのスタック21,22,23,24が配置されて構成されており、各スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列となっている。なお、このスタック21,22,23,24の順序(色の順序)は、これに限定されるものではない。
即ち、印刷ユニットU1における各スタック21,22,23,24は、左右に対向してブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで対接可能であり、各ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bに版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接している。そして、各スタック21,22,23,24は、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられている。また、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられている。
この場合、スタック21,23は、ブランケット胴31a,31b,33a,33bと版胴41a,41b,43a,43bがハの字形状に配列され、スタック22,24は、ブランケット胴32a,32b,34a,34bと版胴42a,42b,44a,44bが逆ハの字形状に配列されている。そして、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bにて、外周面に異なる絵柄を印刷する刷版(図示略)が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に沿って並べて装着可能となっている。
ここで、最も上方側に配置されるスタック24について詳細に説明する。なお、他のスタック21,22,23もほぼ同様の構成である。
スタック24は、図10及び図11に示すように、鉛直方向における上方向に沿ったウェブWの搬送経路(ウェブ搬送位置)に対して、左側が表面印刷を行う表面印刷ユニットであり、右側が裏面印刷を行う裏面印刷ユニットである。
スタック24は、ブランケット胴34a,34bと、版胴44a,44bと、インキ供給装置54a,54bと、湿し装置64a,64bを有している。このインキ供給装置54a,54bは、デジタルインキポンプ方式であって、インキ元ローラ71a,71bと、インキポンプ72a,72bと、インキ受渡しローラ73a,73bと、インキ練ローラ74a,74bと、インキ往復ローラ75a,75bと、インキ着練りローラ76a,76bと、インキ往復ローラ77a,77bと、2つのインキ着ローラ78a,78b,79a,79bから構成されている。また、湿し装置64a,64bは、スプレー方式であって、水ライダローラ81a,81bと、水往復ローラ82a,82bと、水着ローラ83a,83bと、スプレーノズル84a,84bとから構成されている。
本実施形態のインキ供給装置54a,54bは、1つのインキ元ローラ71a,71bに対して複数(本実施形態では、4台)のインキポンプ72a,72bが幅方向に沿って配置されて構成されている。そして、インキポンプ72a,72bは、予め設定された所定の流動性(粘度)を有するインキをインキ元ローラ71a,71bの周面に供給することができる。このとき、複数のインキポンプ72a,72bのうちのいずれかを作動することで、インキ元ローラ71a,71bの軸方向における所定の領域だけにインキを供給することができる。また、1台のインキポンプ72a,72bは、幅方向に複数分割(本実施形態では、8分割)されたインキ吐出機構が組み込まれており、各インキ吐出機構を個別に制御することができる。この場合、インキポンプ72a,72bは、複数のホースを介してインキレールが連結され、このインキレールを介してインキ元ローラ71a,71bにインキを供給することができる。インキ元ローラ71a,71bは、表面が金属により形成され、図示しないフレームに回転自在に支持され、図示しない駆動装置により単独で回転可能となっている。なお、インキ供給装置54a,54bは、インキつぼ方式であってもよい。
インキ受渡しローラ73a,73bは、インキ元ローラ71a,71bのインキを受け渡すものであって、表面が金属または樹脂により形成され、インキ元ローラ71a,71bと所定量のギャップを持って対向するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ練ローラ74a,74bは、インキ受渡しローラ73a,73bから受け渡されたインキを練るものであって、表面がゴムにより形成され、インキ受渡しローラ73a,73bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ往復ローラ75a,75bは、インキ練ローラ74a,74bにより練られたインキを幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、インキ練ローラ74a,74bに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
インキ練ローラ76a,76bは、インキ往復ローラ75a,75bから受け渡されたインキを練るものであって、表面がゴムにより形成され、インキ往復ローラ75a,75bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ往復ローラ77a,77bは、インキ練ローラ76a,76bにより練られたインキを幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、インキ練ローラ76a,76bに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
インキ着ローラ78a,78b,79a,79bは、インキ往復ローラ77a,77bにより幅方向に広げられたインキを受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、インキ往復ローラ77a,77bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、インキ受渡しローラ73a,73bとインキ往復ローラ75a,75b,77a,77bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、図示しない駆動装置により駆動回転可能となっている。また、インキ練ローラ74a,74bとインキ着ローラ78a,78b,79a,79bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により回転可能となっている。
また、水ライダローラ81a,81bは、ローラ間で受け渡される湿し水を練るものであり、表面がゴムにより形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。また、水往復ローラ82a,82bは、隣接するローラ間で受け渡される湿し水を幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。水着ローラ83a,83bは、水往復ローラ82a,82bにより幅方向に広げられた湿し水を受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、水往復ローラ82a,82bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。スプレーノズル84a,84bは、水往復ローラ82a,82bに対して幅方向に沿って複数配置されている。このとき、複数のスプレーノズル84a,84bのうちのいずれかを作動することで、水往復ローラ82a,82bの軸方向における所定の領域だけに湿し水を供給することができる。そして、水往復ローラ82a,82bは、インキ往復ローラ75a,75b,77a,77bと共にギアにより同期駆動するように連結され、駆動回転可能となっている。また、水ライダローラ81a,81bと水着ローラ83a,83bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により回転可能となっている。
版胴44a,44bは、表面に刷版が巻き付けられる金属ローラであり、水着ローラ83a,83bの湿し水が刷版の非画線部に受け渡された後、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bのインキが刷版の画線部に受け渡される。この版胴44a,44bは、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bと水着ローラ83a,83bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。ブランケット胴34a,34bは、表面に図示しないブランケット(ゴム)が巻き付けられるゴムローラであり、版胴44a,44bから受け渡されたインキをウェブWに転写するものであって、版胴44a,44bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。ここで、左右のブランケット胴34a,34bは、所定高さだけ上下方向にずれて配置されている。即ち、左右のブランケット胴34a,34bは、水平線に対して所定角度θだけ回動した位置に配置されることで、左側のブランケット胴34aが右側のブランケット胴34bより所定高さだけ上方に位置している。そして、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、駆動装置により駆動回転可能となっている。
この場合、版胴44a,44bに装着される刷版は、絵柄のある領域(画線部)と絵柄のない領域(非画線部)が形成され、画線部が親油性であり、非画線部が親水性である。そのため、版胴44a,44bに装着された刷版に対して、水着ローラ83a,83bから湿し水が供給された後に、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bからインキが供給されると、画線部のみにインキが転写され、非画線部に湿し水が転写される。そして、版胴44a,44bに対してブランケット胴34a,34bが対接して同期回転すると、版胴44a,44bから画線部にあるインキがブランケット胴34a,34bに転写される。
従って、スタック24にて、インキポンプ72a,72bがインキを噴射し、インキ元ローラ71a,71bが所定の速度で回転することで、所定量のインキがこのインキ元ローラ71a,71bを通してインキ受渡しローラ73a,73bに供給される。このインキ受渡しローラ73a,73bに供給されたインキは、インキ練ローラ74a,74bを通してインキ往復ローラ75a,75bに受け渡され、このインキ往復ローラ75a,75bが軸方向に往復移動することで、幅方向に広げられる。また、このインキ往復ローラ75a,75bで幅方向に広げられたインキは、インキ練ローラ76a,76bを通してインキ往復ローラ77a,77bに受け渡され、このインキ往復ローラ77a,77bが軸方向に往復移動することで、さらに幅方向に広げられる。
そして、スプレーノズル84a,84bが水往復ローラ82a,82bに湿し水を噴射すると、水ライダローラ81a,81bは、水往復ローラ82a,82bに付与された湿し水を水着ローラ83a,83bを介して版胴44a,44bの版面に受け渡す。このとき、水着ローラ83a,83bの湿し水は、版胴44a,44bに装着された刷版の非画線部のみに転写される。一方、各インキ往復ローラ77a,77bにより幅方向に広げられたインキは、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bに供給され、このインキ着ローラ78a,78b,79a,79bが回転することで版胴44a,44bの版面に受け渡される。このとき、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b上のインキは、版胴44a,44bに装着された刷版の画線部のみに転写される。そして、この版胴44a,44bが回転することで、刷版の画線部にあるインキがブランケット胴34a,34bに受け渡される。
その後、ブランケット胴34a,34bの間のニップ部にウェブWが通過するときに、その印圧により各ブランケット胴34a,34bに転写されたインキ(絵柄)がウェブWの表裏に転写される。即ち、ウェブWの表面に対して、ブランケット胴34aのインキが転写され、ウェブWの裏面に対して、ブランケット胴34bのインキが転写されることで、ウェブWへの両面印刷が行われる。
この場合、図12に示すように、版胴44a(44b)は、外周部に周方向に沿って複数(本実施形態では、4枚)の刷版91,92,93,94が着脱可能となっており、各刷版91,92,93,94は、異なる画像A,B,C,Dが形成されている。そのため、版胴44aの各刷版91,92,93,94にあるインキがブランケット胴を介してウェブWに画像a,b,c,dとして転写される。そして、ウェブWを画像a,b,c,dの間で縦裁断することで、4枚のウェブW1,W2,W3,W4が形成される。
ここで、上述した新聞用オフセット輪転印刷機システム10における制御構成について説明する。図1は、本実施形態の印刷機の制御装置を表す概略構成図である。図1に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機システム10は、印刷機管理装置101と、紙面管理装置102と、製版装置103と、印刷部数管理装置104と、印刷工程管理装置105と、印刷機本体106とを有している。
紙面管理装置102は、これから印刷する新聞の紙面構成を設定して管理する。製版装置103は、紙面管理装置102からの紙面構成情報に基づいてページごとの刷版を製造する。印刷部数管理装置104は、印刷する新聞の部数を管理する。印刷工程管理装置105は、印刷機本体106における印刷する新聞の工程(印刷タイミング)を管理する。印刷機管理装置101は、紙面管理装置102からの紙面構成情報、製版装置103からの刷版(画線率)情報、印刷部数管理装置104からの部数情報、印刷工程管理装置105からの工程(印刷タイミング)情報に基づいて印刷機本体106を運転管理する。
ところで、新聞を印刷する場合、例えば、印刷の途中で、記事の差し替えが行われることがあり、印刷された時間帯により収録記事や紙面構成が違ってくる。即ち、変遷していく紙面に対して第一版、第二版、第三版・・・最終版が発行される。このとき、前述したように、版胴44aは、外周部に周方向に沿って複数の刷版91,92,93,94が装着されるが、紙面構成が変更されるとき、例えば、一つの刷版だけ変更される場合がある。この場合、刷版における画線率がほぼ同様であれば問題ないが、刷版における画線率が増加すると、印刷時にこの刷版に対するインキ供給量を増加させる必要がある。このインキ供給量の調整を印刷開始時に行うと、インキ供給量を調整するための準備印刷が必要となり、無駄なウェブの消費が発生すると共に、印刷準備時間が増加することとなり、印刷作業効率が低下してしまう。
図3は、版交換時におけるインキ膜厚を表すタイムチャートである。
図3に示すように、最初の印刷開始時(工程0)、インキ元ローラ71a,71bは、インキ受渡しローラ73a,73bとのギャップにより表面上に若干のインキ膜厚が残留している。一方、インキ受渡しローラ73a,73b、インキ練ローラ74a,74b、インキ往復ローラ75a,75b、インキ練ローラ76a,76b、インキ往復ローラ77a,77b、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bは、表面上のインキ膜厚は洗浄により除去された状態にある。
この状態から、まず、ウェブWの搬送を止めた状態で印刷機を空転し、デジタルインキポンプ72a,72bは、最低インキ膜厚分のインキ噴射を行い、インキ元ローラ71a,71bが回転すると、インキ受渡しローラ73a,73b、インキ練ローラ74a,74b、インキ往復ローラ75a,75b、インキ練ローラ76a,76b、インキ往復ローラ77a,77b、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b上に最低インキ膜厚が形成される(工程1)。次に、デジタルインキポンプ72a,72bは、画線率に応じた正規のインキを噴射すると、画線率に応じた正規の膜厚が形成され、印刷前の準備としてインキ巻きが終了する(工程2)。
そして、ウェブWの搬送を開始し、デジタルインキポンプ72a,72bによりインキ噴射を行い、インキ元ローラ71a,71bを回転させ、回転速度が所定速度まで上昇して、ブランケット胴34a,34bに版胴44a,44bを接触させ、ウェブWにブランケット胴34a,34bを接触させ、版胴44a,44bに各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを接触させて印刷が開始される。すると、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bから版胴44a,44bの画線部に供給されたインキ画像がブランケット胴34a,34bを介してウェブWに転写され、正規の画像「H」が印刷される(工程3)。
その後、印刷部数が所定部数に到達すると、デジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止するため、インキ元ローラ71a,71b、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79b、版胴44a,44b、ブランケット胴34a,34bに滞留するインキがウェブWに排出されるために減少し、ウェブWの画像が徐々に薄くなる(工程4)。そして、インキ元ローラ71a,71b、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79b、版胴44a,44b、ブランケット胴34a,34bに滞留するインキが所定量、つまり、インキ膜厚が所定厚さになると、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを離間させ、ウェブWの搬送を停止して版交換作業を実施する(工程5)。
版交換作業が終了すると、ウェブWの搬送を開始すると同時に、デジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始する。すると、版胴44a,44bがブランケット胴34a,34bから離間していることから、インキ元ローラ71a,71bから各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bまでの間にインキが蓄積され、所定のインキ膜厚となる(工程6)。その後、版胴44a,44bをブランケット胴34a,34bに接触させると印刷が開始され(工程7)、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bから版胴44a,44bの画線部に供給されたインキ画像がブランケット胴34a,34bを介してウェブWに転写され、正規の画像「−」が印刷される(工程8)。この工程7から工程8の間、つまり、前の印刷版の履歴を解消して次の印刷版の絵柄が綺麗に印刷されるまでの間、インキ供給量を調整するための準備印刷が必要となり、無駄なウェブの消費が発生すると共に、印刷準備時間が増加することとなり、印刷作業効率が低下してしまっていた。
そこで、本実施形態の印刷機の制御装置(印刷機管理装置101)は、印刷終了時に、絵柄の変更が少ない第1領域に対して予め設定された第1規定時間の間にデジタルインキポンプ(インキ供給源)72a,72bからインキ元ローラ(インキ供給装置)71a,71bに向けてインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続する一方、絵柄の変更が多い第2領域に対してデジタルインキポンプ(インキ供給源)72a,72bからインキ元ローラ(インキ供給装置)71a,71bへのインキの供給を停止する。
ここで、印刷終了時とは、印刷済部数が予め設定された所定部数に到達したときである。また、絵柄の変更が少ない第1領域とは、例えば、紙面構成の変更がなくて刷版を交換する必要がない領域であり、絵柄の変更が多い第2領域とは、例えば、紙面構成の変更があって画線率の少ない刷版に交換する領域である。この第1領域と第2領域は、刷版の幅に対応したデジタルインキポンプ72a,72bの幅方向、インキ元ローラ71a,71bの軸方向、ウェブWの幅方向に沿った領域である。そのため、印刷機の制御装置は、印刷済部数が予め設定された所定部数に到達したとき、刷版を交換しない第1領域に対して第1規定時間の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続する一方、画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。
そして、第1規定時間の経過後に、第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止すると共に、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを離間させる。その後、ウェブWの搬送が停止する。
一方、版交換の完了後に次の印刷を開始するとき、印刷機の起動時から印刷開始時までの間に、第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する一方、第2領域に対して予め設定された第2規定時間の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始する。
ここで、印刷機の起動時とは、ウェブの搬送を開始した時期であり、印刷開始時とは、第1規定時間T1の経過後に、第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始するタイミングである。
そして、第2規定時間の経過後に、第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bのインキの供給を開始すると共に、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを対接させる。
ここで、第1規定時間と第2規定時間は、前回の印刷時に必要なインキ供給量と、次回の印刷時に必要なインキ供給量の偏差に応じて設定される。
以下、本実施形態の印刷機の制御装置による制御方法について詳細に説明する。図2は、印刷機の制御装置による版交換時の制御を表すタイムチャートである。
図2は、版交換時に、一部の交換する刷版における画線率が減少し、交換する刷版の領域に供給するインキ供給量も減少させる必要があるときの各構成部材の制御を表すものであり、「標準履歴解消動作/次版の立ち上げ時インキ巻動作」を説明するためのタイムチャートである。例えば、図12にて、刷版91の画像Aが替り面で、刷版92,93,94の画像B,C,Dが通し面であるとき、図2にて、上段(通し面)は、版交換がなく画線率の変更が無いまたは少ないインキポンプ及び湿し水装置の制御であり、下段(替り面)は、版交換があって画線率の変更が多いインキポンプ及び湿し水装置の制御である。
図2及び図10に示すように、時間t1にて、給紙装置R(図8参照)を作動することで、ウェブWを給紙装置Rからインフィード装置I、印刷装置U、ウェブパス装置D、折機Fへの搬送を開始する。このとき、印刷装置Uは、インキや湿し水の供給はないものの、各胴や各ローラが回転する。時間t2にて、ブランケット胴34a,34bと版胴44a,44bを各インキ着ローラ78a,78b,79a,79b及びウェブWに接触させ、時間t3にて、湿し装置64a,64bのスプレーノズル84a,84bから湿し水を噴射し、時間t4にて、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bに接触させる。そして、時間t5にて、印刷速度(ウェブの搬送速度)が所定速度に達すると、印刷速度を一定とし、デジタルインキポンプ72a,72bからインキを噴射し、インキ元ローラ71a,71bが回転させると共に、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを版胴44a,44bに接触する。
すると、湿し水が水往復ローラ82a,82b及び水着ローラ83a,83bを介して版胴44a,44bの版面に供給される。一方、インキがインキ元ローラ71a,71b、インキ受渡しローラ73a,73b、インキ練ローラ74a,74b、インキ往復ローラ75a,75b、インキ練ローラ76a,76b、インキ往復ローラ77a,77b、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを介して版胴44a,44bの版面に供給される。そして、版胴44a,44bのインキ画像がブランケット胴34a,34bを介してウェブWに転写される。時間t6にて、インキ供給量の調整が完了して印刷品質が安定すると、印刷速度を上昇させて本印刷を開始し、時間t7にて、印刷速度を一定と維持する。
その後、時間t8にて、印刷部数が所定部数に近づくと、印刷速度を低下させる。そして、まず、時間t9にて、印刷部数が所定部数に到達すると、図2の上段に表した刷版を交換しない第1領域に対して第1規定時間T1の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続する。一方、図2の下段に表した画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。
そして、第1規定時間T1が経過した時間t10にて、スプレーノズル84a,84bから湿し水の噴射を停止し、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bから離間し、全てのデジタルインキポンプ72a,72bを停止し、インキ元ローラ71a,71bの回転を停止し、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを版胴44a,44bから離間させる。即ち、第1規定時間T1の経過後に、第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。そして、時間t11にて、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを離間させ、時間t12にて、ウェブWの搬送が停止する。ここで、版交換作業が実施される。
版交換作業が終了すると、時間t13にて、前述と同様に、給紙装置R(図8参照)を作動することで、ウェブWを給紙装置Rからインフィード装置I、印刷装置U、ウェブパス装置D、折機Fへの搬送を開始する。また、このとき、図2の上段に表した刷版を交換していない第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。一方、図2の下段に表した画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対して予め設定された第2規定時間T2の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始すると共に、インキ元ローラ71a,71bの回転を開始する。このとき(時間t13〜t17)のデジタルインキポンプ72a,72bによるインキ噴射量(単位時間当たりのインキ噴射量)は、一定であってもよく、また、インキ噴射開始時に多量のインキを噴射し、その後、一定の微量としてもよい。
そして、時間t14にて、ブランケット胴34a,34bと版胴44a,44bを各インキ着ローラ78a,78b,79a,79b及びウェブWに接触させ、時間t15にて、湿し装置64a,64bのスプレーノズル84a,84bから湿し水を噴射し、時間t16にて、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bに接触させる。そして、時間t17にて、印刷速度が所定速度に達すると、印刷速度を一定とし、全てのデジタルインキポンプ72a,72bからインキを噴射し、インキ元ローラ71a,71bが回転すると共に、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを版胴44a,44bに接触させる。時間t18にて、インキ供給量の調整が完了して印刷品質が安定すると、印刷速度を上昇させて本印刷を開始し、時間t19にて、印刷速度を一定と維持する。
このとき、版交換により第2領域の画線率が変化する場合、例えば、第2領域のカラム値(インキ供給量)が50から30に減少するとき、印刷終了時に、第2領域のカラム値を50から20に減少させた後、次の印刷の開始時に、第2領域のカラム値(インキ供給量)を20から30に増加させることが望ましい。そのため、第1規定時間T1は、印刷終了時に、第2領域のカラム値を50から20に減少させるために必要な時間であり、第2規定時間T2は、次の印刷開始時に、第2領域のカラム値を20から30に増加させるために必要な時間である。なお、第2領域のカラム値(インキ供給量)が50から30に減少するとき、印刷終了時に、第2領域のカラム値を50から0に減少させた後、次の印刷の開始時に、第2領域のカラム値(インキ供給量)を0から30に増加させるようにしてもよい。
なお、本実施形態の印刷機の制御装置による制御方法は、上述したものに限定されるものではない。図4から図6は、印刷機の制御装置による版交換時の制御の変形例を表すタイムチャートである。
図2に示すように、前述の説明では、印刷部数が所定部数に到達した時間t9にて、下段に表した画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止した。図4に示すように、この変形例は、「早期インキ供給停止による履歴解消動作/次版の立ち上げ時インキ巻動作」を説明するためのものであり、印刷部数が所定部数に到達する前の時間t9’にて、下段に表した画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。印刷速度がわかっていることから、印刷部数が所定部数に到達する時間を予測することができ、印刷部数が所定部数に到達する時間から第3規定時間だけ遡った時間t9’にて、デジタルインキポンプ72a,72bを停止する。この場合、デジタルインキポンプ72a,72bを停止したとしても、インキ供給装置54a,54bを構成する各ローラにインキが残っていることから、この残留するインキにより印刷を継続することができる。即ち、第3規定時間は、デジタルインキポンプ72a,72bを停止したとき、残留するインキにより印刷を継続することができる時間に応じて設定される。
また、図2に示すように、前述の説明では、版交換作業が終了した時間t13にて、画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始した。図5に示すように、この変形例は、「標準履歴解消動作/次版の立ち上げ時早期インキ巻動作」を説明するためのものであり、時間t9にて、印刷部数が所定部数に到達すると、画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止すると共に、インキ元ローラ71a,71bの回転を停止する。そして、第1規定時間T1が経過した時間t10にて、画線率の少ない刷版に交換する第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始すると共に、インキ元ローラ71a,71bの回転を開始する。その後、時間t12にて、ウェブWの搬送が停止すると、デジタルインキポンプ72a,72bとインキ元ローラ71a,71bを停止する。この場合、ウェブWの搬送が停止する時間t12までの間にインキを供給することから、インキ供給時間を長く確保して各ローラにおける適正なインキ膜厚を早期に形成することができる。
また、図2に示すように、前述の説明では、第1規定時間T1が経過した時間t10にて、スプレーノズル84a,84bから湿し水の噴射を停止し、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bから離間した。図6に示すように、この変形例は、「早期湿し停止による履歴解消動作/次版の立ち上げ時インキ巻動作」を説明するためのものであり、印刷部数が所定部数に到達した時間t9にて、スプレーノズル84a,84bから湿し水の噴射を停止し、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bから離間する。この場合、印刷部数が所定部数に到達した時間t9にて、版胴44a,44bへの湿し水の供給が停止することから、版胴44a,44bは、非画線部がなくなって全面が画線部となり、版胴44a,44bからブランケット胴34a,34bを介してウェブWに排出されるインキ量が増加することから、早期にインキ供給装置54a,54bに残留するインキを減少することができる。
また、図7は、印刷機の制御装置による版交換時の制御を表すタイムチャートである。この図7は、版交換時に、一部の交換する刷版における画線率が増加し、交換する刷版の領域に供給するインキ供給量も増加させる必要があるときの各構成部材の制御を表すタイムチャートである。そして、上段は、版交換がなく画線率の変更がないインキポンプ及び湿し水装置の制御であり、下段は、版交換があって画線率の変更が多いインキポンプ及び湿し水装置の制御である。
次に、図6の変形例を用いて、印刷機全体(図8参照)の制御を説明する。図6及び図9に示すように、時間t1にて、給紙装置Rを作動することで、ウェブWを給紙装置Rからインフィード装置I、印刷装置U、ウェブパス装置D、折機Fへの搬送を開始する。このとき、印刷装置Uは、インキや湿し水の供給はないものの、各胴や各ローラが回転する。時間t2にて、ブランケット胴34a,34bと版胴44a,44bを各インキ着ローラ78a,78b,79a,79b及びウェブWに接触させ、時間t3にて、湿し装置64a,64bのスプレーノズル84a,84bから湿し水を噴射し、時間t4にて、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bに接触させる。そして、時間t5にて、印刷速度(ウェブの搬送速度)が所定速度に達すると、印刷速度を一定とし、デジタルインキポンプ72a,72bからインキを噴射し、インキ元ローラ71a,71bが回転させると共に、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを版胴44a,44bに接触させる。
すると、湿し水が水往復ローラ82a,82b及び水着ローラ83a,83bを介して版胴44a,44bの版面に供給される。一方、インキがインキ元ローラ71a,71b、インキ受渡しローラ73a,73b、インキ練ローラ74a,74b、インキ往復ローラ75a,75b、インキ練ローラ76a,76b、インキ往復ローラ77a,77b、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを介して版胴44a,44bの版面に供給される。そして、版胴44a,44bのインキ画像がブランケット胴34a,34bを介してウェブWに転写される。時間t6にて、インキ供給量の調整が完了して印刷品質が安定すると、印刷速度を上昇させて本印刷を開始し、時間t7にて、印刷速度を一定と維持する。
その後、時間t8にて、印刷部数が所定部数に近づくと、印刷速度を低下させる。そして、まず、時間t9にて、印刷部数が所定部数に到達すると、スプレーノズル84a,84bから湿し水の噴射を停止し、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bから離間し、全てのデジタルインキポンプ72a,72bを停止し、インキ元ローラ71a,71bの回転を停止し、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを版胴44a,44bから離間させる。そして、時間t11にて、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを離間させ、時間t12にて、ウェブWの搬送が停止する。ここで、版交換作業が実施される。
版交換作業が終了すると、時間t13にて、前述と同様に、給紙装置Rを作動することで、ウェブWを給紙装置Rからインフィード装置I、印刷装置U、ウェブパス装置D、折機Fへの搬送を開始する。また、このとき、図6の上段に表した刷版を交換していない第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。一方、図6の下段に表した画線率の多い刷版に交換する第2領域に対して予め設定された第2規定時間T2の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始すると共に、インキ元ローラ71a,71bの回転を開始する。
そして、時間t14にて、ブランケット胴34a,34bと版胴44a,44bを各インキ着ローラ78a,78b,79a,79b及びウェブWに接触させ、時間t15にて、湿し装置64a,64bのスプレーノズル84a,84bから湿し水を噴射し、時間t16にて、水着ローラ83a,83bを水往復ローラ82a,82bと版胴44a,44bに接触させる。そして、時間t17にて、印刷速度が所定速度に達すると、印刷速度を一定とし、全てのデジタルインキポンプ72a,72bからインキを噴射し、インキ元ローラ71a,71bが回転すると共に、各インキ着ローラ78a,78b,79a,79bを版胴44a,44bに接触させる。時間t18にて、インキ供給量の調整が完了して印刷品質が安定すると、印刷速度を上昇させて本印刷を開始し、時間t19にて、印刷速度を一定と維持する。
即ち、版交換により第2領域の画線率が変化する場合、例えば、第2領域のカラム値(インキ供給量)が30から50に増加するとき、次の印刷の開始時に、第2領域のカラム値(インキ供給量)を30から50に増加させることが望ましい。そのため、第2規定時間T2は、次の印刷開始時に、第2領域のカラム値を30から50に増加させるために必要な時間である。
なお、第2領域のカラム値が30から50に増加するとき、印刷終了時に、第2領域のカラム値を30から20(または、0)に減少させた後、次の印刷の開始時に、第2領域のカラム値(インキ供給量)を20(または、0)から50に増加させるようにしてもよい。
このように本実施形態の印刷機の制御装置にあっては、印刷終了時に、絵柄の変更が無いまたは少ない第1領域に対して予め設定された第1規定時間T1の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続する一方、絵柄の変更が多い第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。
従って、印刷終了時に、絵柄の変更が少ない第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続することで、インキ供給装置54a,54bを構成する各ローラにおける現在の最適なインキ膜厚を維持することができ、また、絵柄の変更が多い第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止することで、インキ供給装置54a,54bを構成する各ローラに形成されたインキをウェブWに排出してインキ膜厚を減少させることができる。そのため、交換されていない刷版に対しては、早期に適正なインキ量を供給することができ、交換された刷版に対しては、早期に適正なインキ膜厚を形成して適正なインキ量を供給することができる。その結果、印刷開始時の損紙を低減して印刷コストを低減することができると共に、印刷準備時間を短縮して印刷効率の低下を抑制することができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、印刷済部数が予め設定された所定部数に到達したとき、第1領域に対して第1規定時間T1の間にインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続する一方、第2領域に対してインキの供給を停止する。従って、印刷済部数が所定部数に到達したときに、第1領域に対するインキ供給の継続処理と、第2領域に対するインキ供給の停止処理を行うことで、所定部数に到達してから印刷機が停止してウェブWの搬送が停止するまでの間に、第2領域に対応した各ローラに形成されたインキをウェブに排出することとなり、更なる損紙の増加を防止して早期にインキ膜厚を減少させることができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、印刷済部数が予め設定された所定部数に到達する前に、第1領域に対して第1規定時間T1の間にインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続する一方、第2領域に対してインキの供給を停止する。従って、印刷済部数が予め設定された所定部数に到達する前に、第1領域に対するインキ供給の継続処理と、第2領域に対するインキ供給の停止処理を行うことで、所定部数に到達する前から印刷機が停止してウェブの搬送が停止するまでの間に、第2領域に対応した各ローラに形成されたインキをウェブに排出することとなり、更なる損紙の増加を防止して早期に、且つ、より多くのインキ膜厚を減少させることができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、版胴に対して湿し水を供給する湿し装置64a,64bが設けられ、印刷済部数が所定部数に到達する前に、第2領域に対して湿し装置64a,64bから版胴44a,44bへの湿し水の供給を停止する。従って、印刷済部数が予め設定された所定部数に到達する前に、第1領域に対するインキ供給の継続処理と、第2領域に対するインキ供給の停止処理と、第2領域に対する湿し水供給の停止処理を行うことで、湿し水の供給がない版胴44a,44bは、より多くのインキを受け取ることとなり、第2領域に対応した各ローラに形成された多くのインキをウェブWに排出することとなり、早期にインキ膜厚を減少させることができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、第1規定時間T1を、前回の印刷時に必要なインキ供給量と、次回の印刷時に必要なインキ供給量の偏差に応じて設定する。従って、前回の印刷時に必要なインキ供給量と次回の印刷時に必要なインキ供給量の偏差に応じて、第2領域に対応した各ローラからウェブWに排出するインキ量を設定する第1規定時間T1を設定することで、各ローラのインキ膜厚を最適値まで減少させることができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、第1規定時間T1の経過後に、第1領域に対してインキの供給を停止すると共に、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを離間させる。従って、各ローラのインキ膜厚が適正値まで減少すると、第1領域に対するインキ供給を停止し、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを離間させることで、調整後の適正なインキ膜厚を維持することができると共に、無駄なインキの消費を防止することができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、印刷機の起動時から印刷開始時までの間に、第1領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する一方、第2領域に対して予め設定された第2規定時間T2の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始する。従って、印刷機の起動時から印刷開始時までの間に、第1領域に対してインキ供給を停止することで、インキ供給装置54a,54bを構成する各ローラにおける現在の最適なインキ膜厚を維持することができ、また、第2領域に対してインキ供給を開始することで、インキ供給装置54a,54bを構成する各ローラに対してインキを供給して適正なインキ膜厚を形成することができる。そのため、交換された刷版に対しては、早期に適正なインキ膜厚を形成して適正なインキ量を供給することができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、第1規定時間T1の経過後に、第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキの供給を開始する。従って、第1規定時間T1の経過後に、第2領域に対してインキ供給を開始することで、インキ供給時間を長く確保して各ローラにおける適正なインキ膜厚を早期に形成することができる。
本実施形態の印刷機の制御装置では、第2規定時間T2の経過後に、第1領域に対してインキの供給を開始すると共に、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを対接させる。従って、第2領域に対応する各ローラのインキ膜厚が適正値まで増加すると、第1領域に対応するインキ供給を開始して版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bを対接することで、全ての領域で適正なインキ膜厚により印刷作業を実施することができる。
また、本実施形態の印刷機の制御方法にあっては、印刷終了時に、絵柄の変更が少ない第1領域に対して予め設定された第1規定時間T1の間にデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bに向けてインキ供給量を変更せずにインキの供給を継続する一方、絵柄の変更が多い第2領域に対してデジタルインキポンプ72a,72bからインキ元ローラ71a,71bへのインキの供給を停止する。
従って、交換されていない刷版に対しては、早期に適正なインキ量を供給することができ、交換された刷版に対しては、早期に適正なインキ膜厚を形成して適正なインキ量を供給することができる。その結果、印刷開始時の損紙を低減して印刷コストを低減することができると共に、印刷準備時間を短縮して印刷効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の印刷機にあっては、印刷開始時の損紙を低減して印刷コストを低減することができる。
なお、上述した実施形態では、図12にて、刷版91の画像Aが替り面で、刷版92,93,94の画像B,C,Dが通し面であるときのインキ量を制御について説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、刷版91の画像Aが通し面、刷版92の画像Bが替り面(図2の制御)、刷版63の画像Cが替り面(図4の制御)、刷版92の画像Dが替り面(図5の制御)であるときも、同様にインキ量を制御することができる。即ち、刷版91,92,93,94の各領域での通し面と替り面の組み合わせは多様であり、いずれの場合であっても対応することが可能である。
また、上述した実施形態では、第1領域と第2領域を版胴に装着される刷版の幅としたが、この構成に限定されるものではない。即ち、インキ供給源としてのデジタルインキポンプやインキつぼ及びインキキーは、複数のものが直列に並んで構成されており、一部のデジタルインキポンプやインキつぼ及びインキキーを作動することで、インキ元ローラの軸方向(ウェブWの幅方向)における所定の領域にインキを供給することができる。そのため、第1領域と第2領域は、インキを供給することができる単位の領域、例えば、カラム単位とすることができる。
また、上述した実施形態では、版交換時に、画線率が変更される領域に対してインキ供給を制御するように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、新たに印刷を開始する領域については、インキ供給量を0から所定量まで増加させる。また、印刷を終了する領域については、インキ供給量を所定量から0まで減少させる。
また、上述した実施形態で説明した印刷機本体106は一例であって、各ユニットの構成や組み合わせに限定されるものではない。