以下に添付図面を参照して、本発明に係る紙巻防止装置及び印刷機の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、複数の実施形態がある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
図5は、新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図、図6は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図、図7は、印刷ユニットにおけるローラ配列を表す概略図である。
本実施形態の印刷機は、図5に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機10であって、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとから構成されている。給紙装置Rは、複数(本実施形態では、7台)の給紙ユニットR1〜R7を有し、インフィード装置Iは、複数(本実施形態では、7台)のインフィードユニットI1〜I7を有し、印刷装置Uは、複数(本実施形態では、6台)の印刷ユニットU1〜U6を有し、ウェブパス装置Dは、複数(本実施形態では、2台)のウェブパスユニットD1,D2を有し、折機Fは、複数(本実施形態では、2台)の折ユニットF1,F2を有している。
この場合、印刷ユニットU1〜U6を6台として説明したが、各印刷ユニットU1〜U6は、4色刷りが可能であると共に、上下に分割して12台の2色刷りが可能な印刷ユニットU11,U12,U21・・・U61,U62として用いることができる。また、2つの折ユニットF1,F2を上下に並べて記載したが、実際には、紙面に直交する方向に並んで配置される操作側折ユニットF1と駆動側折ユニットF2となっている。更に、印刷装置Uを2つの部分から記載したが、機能上2つに分けて記載しただけであり、実際には、1つの装置となっている。
そして、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機10では、図示しない建屋の1階の床面上に給紙ユニットR1〜R7が設置され、2階にインフィードユニットI1〜I7が設置され、2階及び3階に印刷ユニットU1〜U6が設置され、3階から5階にウェブパス装置Dが設置され、また、2階、3階に折機Fが設置されている。
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1〜R7は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(印刷媒体)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アーム11を有し、この保持アーム11を回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。また、この各給紙ユニットR1〜R7には、図示しない紙継装置が設けられており、給紙位置で繰り出されている巻取紙が残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙に対して、待機位置にある巻取紙を紙継することができる。
インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1〜I7は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に送り込むウェブWのテンションを調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWのテンションを適正値に安定して維持するようにしている。例えば、各インフィードユニットI1〜I7は、インフィードローラ、紙押えゴムローラ、ダンサローラ、ガイドローラなどを有している。そして、ダンサローラをウェブWの張り方向に付勢することでウェブWのテンションを適正にし、このダンサローラの揺動に応じてインフィードローラの周速を変更し、ウェブWの適正なテンションを維持している。
なお、給紙装置Rからインフィード装置IまでのウェブWのテンションは、給紙ユニットR1〜R7に設けられた図示しないブレーキ装置により行っており、給紙装置Rに設けられたテンション検出ローラの検出結果に基づいて、このブレーキ装置を制御している。また、印刷装置Uの下流側には、駆動源により駆動回転可能なドラグローラ12が設けられており、このドラグローラ12の周速やダンサローラの付勢力を制御することで、ウェブWのテンションを調整している。
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1〜U6は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1〜U6は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11〜U62とすることができる。各印刷ユニットU11〜U62は、ほぼ同様の構成をなし、後述するが、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有している。本実施形態では、各印刷ユニットU1〜U6は、版胴の周長が新聞(印刷物)の1頁の縦の長さに設定され、ブランケット胴の周長が版胴の周長の整数倍に設定されなお、各印刷ユニットU1〜U6にて、版胴の周長(直径)とブランケット胴の周長(直径)を同じに設定してもよい。
なお、本実施形態では、印刷ユニットU1〜U6を、全て多色刷印刷ユニットにより構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、両面2色刷印刷ユニット、両面単色刷印刷ユニット、一面4色または単色刷印刷ユニットなど、印刷物に応じて適宜各種ユニットを組み合わせて使用すればよい。
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1〜U3に対して設けられ、ウェブパスユニットD2は、印刷ユニットU4〜U6に対して設けられている。各ウェブパスユニットD1,D2は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブWを縦(ウェブWの天地長手方向、ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断するスリッタ、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバー、ウェブWにおける天地長手方向における搬送位置を調整するコンペンセータなどを有している。
即ち、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
折機Fにて、2つの折ユニットF1,F2は、操作側と駆動側に配設されている。即ち、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。この場合、折機Fでは、折ユニットF1,F2が各ウェブパスユニットD1,D2からのウェブW1,W2を処理するだけでなく、各折ユニットF1,F2の一方がまとめて処理することもできる。
従って、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機10では、給紙装置Rの各給紙ユニットR1〜R7からそれぞれ供給された各ウェブWは、インフィード装置Iの各インフィードユニットI1〜I7によりテンションが調整され、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に供給される。この印刷装置Uにおける各印刷ユニットU1〜U6にて、各ウェブWの両面に印刷が施される。そして、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
その後、折機Fでは、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。
ここで、印刷装置Uにおける印刷ユニットU1について詳細に説明する。なお、他の各印刷ユニットU2〜U6もほぼ同様の構成となっている。
印刷ユニットU1は、図6に示すように、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットとなっている。この印刷ユニットU1は、ウェブWの搬送方向が鉛直方向における上方となっており、本実施形態では、下から上に向かって、墨(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)ごとの4つのスタック21,22,23,24が配置されて構成されており、各スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列となっている。なお、このスタック21,22,23,24の順序(色の順序)は、これに限定されるものではない。
即ち、印刷ユニットU1における各スタック21,22,23,24は、左右に対向してブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで対接可能であり、各ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bに版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接している。そして、各スタック21,22,23,24は、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられている。また、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられている。
この場合、スタック21,23は、ブランケット胴31a,31b,33a,33bと版胴41a,41b,43a,43bがハの字形状に配列され、スタック22,24は、ブランケット胴32a,32b,34a,34bと版胴42a,42b,44a,44bが逆ハの字形状に配列されている。そして、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bにて、外周面に異なる絵柄を印刷する刷版(図示略)が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に沿って並べて装着可能となっている。
ここで、最も上方側に配置されるスタック24について詳細に説明する。なお、他のスタック21,22,23もほぼ同様の構成である。
スタック24は、図7に示すように、鉛直方向における上方向に沿ったウェブWの搬送経路(ウェブ搬送位置)に対して、左側が表面印刷を行う表面印刷ユニットであり、右側が裏面印刷を行う裏面印刷ユニットである。
スタック24は、ブランケット胴34a,34bと、版胴44a,44bと、インキ供給装置54a,54bと、湿し装置64a,64bを有している。このインキ供給装置54a,54bは、インキ元ローラ71a,71bと、インキつぼを構成するインキキー72a,72bと、インキ受渡しローラ73a,73bと、インキ練ローラ74a,74bと、インキ往復ローラ75a,75bと、インキ着練りローラ76a,76bと、インキ往復ローラ77a,77bと、2つのインキ着ローラ78a,78b,79a,79b,から構成されている。また、湿し装置64a,64bは、水ライダローラ81a,81bと、水往復ローラ82a,82bと、水着ローラ83a,83bとから構成されている。
本実施形態のインキ供給装置54a,54bは、インキつぼ方式であって、1つのインキ元ローラ71a,71bに対して複数のインキキー72a,72bが幅方向に沿って配置されて構成されている。そして、インキ元ローラ71a,71b及びインキキー72a,72bは、予め設定された所定の流動性(粘度)を有するインキを貯留することができると共に、インキキー72a,72bを開放することで、所定量のインキを送り出すことができる。このインキ元ローラ71a,71bは、表面が金属により形成され、図示しないフレームに回転自在に支持され、後述する駆動装置により駆動回転可能となっている。
インキ受渡しローラ73a,73bは、インキ元ローラ71a,71bのインキを受け渡すものであって、表面が金属または樹脂により形成され、インキ元ローラ71a,71bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ練ローラ74a,74bは、インキ受渡しローラ73a,73bから受け渡されたインキを練るものであって、表面がゴムにより形成され、インキ受渡しローラ73a,73bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ往復ローラ75a,75bは、インキ練ローラ74a,74bにより練られたインキを幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、インキ練ローラ74a,74bに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
インキ着練りローラ76a,76bは、インキ往復ローラ75a,75bから受け渡されたインキを練るものであって、表面がゴムにより形成され、インキ往復ローラ75a,75bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ往復ローラ77a,77bは、インキ練りローラ76a,76bにより練られたインキを幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、インキ練ローラ76a,76bに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
インキ着ローラ78a,78b,79a,79bは、インキ往復ローラ77a,77bにより幅方向に広げられたインキを受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、インキ往復ローラ77a,77bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、インキ受渡しローラ73a,73bとインキ往復ローラ75a,75b,77a,77bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、図示しない駆動装置により駆動回転可能となっている。また、インキ練ローラ74a,74bとインキ着ローラ78a,78b,79a,79bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により回転可能となっている。
また、水ライダローラ81a,81bは、ローラ間で受け渡される湿し水を練るものであり、表面がゴムにより形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。また、水往復ローラ82a,82bは、隣接するローラ間で受け渡される湿し水を幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。水着ローラ83a,83bは、水往復ローラ82a,82bにより幅方向に広げられた湿し水を受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、水往復ローラ82a,82bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、水往復ローラ82a,82bは、インキ往復ローラ75a,75b,77a,77bと共にギアにより同期駆動するように連結され、駆動回転可能となっている。また、水ライダローラ81a,81bと水着ローラ83a,83bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により回転可能となっている。
版胴44a,44bは、表面に図示しない刷版が巻き付けられる金属ローラであり、水着ローラ83a,83bの湿し水が刷版の非画線部に受け渡された後、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bのインキが刷版の画線部に受け渡される。この版胴44a,44bは、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bと水着ローラ83a,83bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。ブランケット胴34a,34bは、表面に図示しないブランケット(ゴム)が巻き付けられるゴムローラであり、版胴44a,44bから受け渡されたインキをウェブWに転写するものであって、版胴44a,44bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。ここで、左右のブランケット胴34a,34bは、所定高さだけ上下方向にずれて配置されている。即ち、左右のブランケット胴34a,34bは、水平線に対して所定角度θだけ回動した位置に配置されることで、左側のブランケット胴34aが右側のブランケット胴34bより所定高さだけ上方に位置している。そして、版胴44a,44bとブランケット胴34a,34bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、駆動装置により駆動回転可能となっている。
この場合、版胴44a,44bに装着される刷版は、絵柄のある領域(画線部)と絵柄のない領域(非画線部)が形成され、画線部が親油性であり、非画線部が親水性である。そのため、版胴44a,44bに装着された刷版に対して、水着ローラ83a,83bから湿し水が供給された後に、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bからインキが供給されると、画線部のみにインキが転写され、非画線部に湿し水が転写される。そして、版胴44a,44bに対してブランケット胴34a,34bが対接して同期回転すると、版胴44a,44bから画線部にあるインキがブランケット胴34a,34bに転写される。
従って、スタック24にて、インキキー72a,72bが所定開度に設定され、インキ元ローラ71a,71bが所定の速度で回転することで、調量されたインキがこのインキ元ローラ71a,71bを通してインキ受渡しローラ73a,73bに供給される。このインキ受渡しローラ73a,73bに供給されたインキは、インキ練ローラ74a,74bを通してインキ往復ローラ75a,75bに受け渡され、このインキ往復ローラ75a,75bが軸方向に往復移動することで、幅方向に広げられる。また、このインキ往復ローラ75a,75bで幅方向に広げられたインキは、インキ練ローラ76a,76bを通してインキ往復ローラ77a,77bに受け渡され、このインキ往復ローラ77a,77bが軸方向に往復移動することで、さらに幅方向に広げられる。
そして、水ライダローラ81a,81bは、湿し水を水往復ローラ82a,82bに付与し、この湿し水が水着ローラ83a,83bにより版胴44a,44bの版面に受け渡される。このとき、水着ローラ83a,83bの湿し水は、版胴44a,44bに装着された刷版の非画線部のみに転写される。一方、各インキ往復ローラ77a,77bにより幅方向に広げられたインキは、インキ着ローラ78a,78b,79a,79bに供給され、このインキ着ローラ78a,78b,79a,79bが回転することで版胴44a,44bの版面に受け渡される。このとき、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b上のインキは、版胴44a,44bに装着された刷版の画線部のみに転写される。そして、この版胴44a,44bが回転することで、刷版の画線部にあるインキがブランケット胴34a,34bに受け渡される。
その後、ブランケット胴34a,34bの間のニップ部にウェブWが通過するときに、その印圧により各ブランケット胴34a,34bに転写されたインキ(絵柄)がウェブWの表裏に転写される。即ち、ウェブWの表面に対して、ブランケット胴34aのインキが転写され、ウェブWの裏面に対して、ブランケット胴34bのインキが転写されることで、ウェブWへの両面印刷が行われる。
このように構成された本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機10は、図6に示すように、紙巻防止装置100が設けられている。この紙巻防止装置100は、紙切れ検出器101と、カッタ102と、ウェブキャッチャ103と、制御装置104と、ガード105とを有している。
紙切れ検出器101は、印刷ユニットU1の上方で、ドラグローラ12より下流側に配置されており、ウェブWのテンションを検出することでウェブWの切断(紙切れ)を判定することができる。この紙切れ検出器101は、接触式または非接触式など種々の形式のものが適用可能であり、検出結果を制御装置104に出力する。カッタ102は、印刷ユニットU1の下方に配置されており、印刷ユニットU1に入り込むウェブWを切断することができる。ウェブキャッチャ103は、印刷ユニットU1の上方で、ドラグローラ12及び紙切れ検出器101より下流側に配置されている。このウェブキャッチャ103は、駆動ローラ111と紙押えローラ112を有しており、ウェブWを上下から挟持するように、駆動ローラ111と紙押えローラで112が配置されている。そして、カッタ102とウェブキャッチャ103は、制御装置104により駆動可能となっている。
従って、何らかの原因でウェブWが切断されると、ウェブWのテンションが低下することから、紙切れ検出器101が紙切れを検知して検出信号を制御装置104に出力する。制御装置104は、印刷機10を停止した後に、カッタ102を作動し、印刷ユニットU1の下方でウェブWを切断すると同時に、ウェブキャッチャ103を作動し、紙押えローラ112を駆動ローラ111に押し当てることで、弛んだウェブWを巻き取る。すると、印刷ユニットU1の入口側で切断されたウェブWは、ウェブキャッチャ103に巻き取られることで、印刷ユニットU1内を高速で上方に引き上げられ、強制的に外部に排出される。
しかし、ウェブキャッチャ103により上方に引き上げられるウェブWは、端部が切断された自由状態であることから、印刷ユニットU1内で暴れながら移動する。このとき、特に、最も上方に位置するスタック24では、ウェブWにおける端部の暴れが大きく、ブランケット胴34a,34bやインキ着ローラ78a,78b(図7参照)に接触しやすい。紙切れが発生したときに、制御装置104が印刷機10を停止しても、各胴や各ローラが直ぐに止まることができず、ウェブWの端部がブランケット胴34a,34bやインキ着ローラ78a,78bに接触すると、このウェブWがブランケット胴34a,34bやインキ着ローラ78a,78bに巻き付いてしまい、ウェブキャッチャ103との間で切断してしまう。すると、ウェブWの一部がブランケット胴34a,34bやインキ着ローラ78a,78bに巻き付いたままとなり、ウェブWの除去作業が困難となり、印刷作業に支障をきたしてしまう。
そのため、本実施形態の紙巻防止装置100は、印刷ユニットU1のスタック24にガード105が設けられている。このガード105は、紙切れが発生してウェブキャッチャ103がウェブWを上方に引き上げて印刷ユニットU1から排出するとき、ウェブWの端部がブランケット胴34a,34bやインキ着ローラ78a,78bに接触しないようにガードするものである。
図1に示すように、左右のブランケット胴34a,34bは、水平線に対して所定角度θだけ回動した位置に配置されることで、左側のブランケット胴34aが右側のブランケット胴34bより所定高さだけ上方に配置されている。この左右のブランケット胴34a,34bは、対接部がニップ部となっており、このニップ部でウェブWを挟持してインキを転写する。そして、ブランケット胴34aに対して上方側の外周面に版胴44aが対接し、版胴44aに対して上方側の外周面に2個のインキ着ローラ78a,79aが対接している。
ガード105は、ブランケット胴34aの上方の外周辺で、インキ着ローラ78aとウェブ搬送位置(ウェブWのニップ部)との間に配置されている。つまり、ガード105は、ウェブWとブランケット胴34aとの接触位置(ニップ位置)よりブランケット胴34aの回転方向における下流側に配置されている。このガード105は、ブランケット胴34aの外周辺でインキ着ローラ78aとウェブ搬送位置との間に配置される第1ガード121と、ブランケット胴34aの外周辺で第1ガード121とインキ着ローラ78aとの間に配置される第2ガード122とから構成されている。
第1ガード121は、図1及び図2に示すように、ブランケット胴34aや版胴44aの軸方向に沿って、ウェブWの幅を越えて配置されており、取付部131と、第1ガード132と、第2ガード133と、受け止め部134を有している。第1ガード121は、取付部131が鉛直方向に沿って配置され、印刷ユニットU1のフレーム123から垂下された支持部124に固定されている。そして、取付部131の下部に連続する第1ガード132と第2ガード133は、ウェブ搬送位置側に延出されている。第1ガード132は、ウェブ搬送位置側が水平線に対して下方を向いて傾斜することで、下面に傾斜面132aが形成されている。第2ガード133は、ウェブ搬送位置側が水平線に対して更に下方を向いて傾斜することで、下面に傾斜面133aが形成されている。第1ガード121は、第1ガード132及び第2ガード133により、先端部側に向けてブランケット胴34aの外周面との隙間が小さくなる第1傾斜面135(傾斜面132a,133a)を有し、第1ガード121の先端部とブランケット胴34aの外周面との間に第1隙間S1が設けられている。
受け止め部134は、第2ガード133の先端部が上方に折り返されると共に、幅方向の各端部とその間に所定間隔で複数のリブプレート136が固定されることで構成されている。この受け止め部134は、上方から落下する異物(例えば、インキの液滴)を受け止めて貯留するものである。第1ガード121は、ブランケット胴34aの外周面に対向する先端部が湾曲形状をなしている。
第2ガード122は、ブランケット胴34aや版胴44aの軸方向に沿って、ウェブWの幅を越えて配置されており、取付部141と、ガード142と、受け止め部143を有している。第2ガード122は、取付部141が鉛直方向に沿って配置され、印刷ユニットU1のフレーム123から垂下された支持部124に第1ガード121と共にボルト125により締結されて固定されている。そして、取付部141の下部に連続するガード142は、インキ着ローラ78a側に延出されている。ガード142は、インキ着ローラ78a側が水平線に対して下方を向いて傾斜することで、下面に第2傾斜面144が形成されている。この第2傾斜面144は、ガード142により、先端部側に向けてブランケット胴34aの外周面との隙間が小さくなる傾斜面であって、第2ガード122の先端部とブランケット胴34aの外周面との間に第2隙間S2が設けられている。
受け止め部143は、ガード142の先端部が上方に折り返されると共に、幅方向の各端部とその間に所定間隔で複数のリブプレート145,146が固定されることで構成されている。この受け止め部143は、上方から落下する異物(例えば、インキの液滴)を受け止めて貯留するものである。第2ガード122は、ブランケット胴34aの外周面に対向する先端部が湾曲形状をなしている。
即ち、第2ガード122は、図2から図4に示すように、鉛直方向に沿う取付部141に対して傾斜したガード142が設けられ、先端部が上方に折り返されて受け止め部143が形成されている。取付部141は、一部に切欠部147が形成されることで軽量化が図られており、端部にだるま形状をなす取付孔148が形成されている。ガード142は、その先端部の中間部が折り返され、幅方向の各端部にリブプレート145が固定されることで受け止め部143が形成され、その間に所定間隔で複数のリブプレート146が固定されることで補強が施されている。
図1及び図2に示すように、この第2ガード122は、フレーム123に対して着脱自在に設けられている。第2ガード122は、取付部141がフレーム123から垂下された支持部124にボルト125により締結されていることから、このボルト125を弛緩することで取外すことができる。
第1ガード121と第2ガード122は、各取付部131,141がフレーム123から垂下された支持部124にボルト125により締結されており、各取付部131,141が本発明のガード板として機能する。そのため、第1ガード121と第2ガード122の各取付部131,141を共通化し、1個の取付部(ガード板)の下部に第1ガードと第2ガードを設けてもよい。
第2ガード122は、先端部がブランケット胴34aの軸中心の上方に配置されている。そして、第1ガード121は、先端部がウェブ搬送位置側の下方に延出することで第1傾斜面135が形成され、ブランケット胴34aの外周面との間に第1隙間S1が設けられている。一方、第2ガード122は、先端部がインキ着ローラ78a側の下方に延出することで第2傾斜面144が形成され、ブランケット胴34aの外周面との間に第2隙間S2が設けられている。この場合、第2隙間S2が第1隙間S1より小さく設定されている。
第1ガード121の第1傾斜面135と第2ガード122の第2傾斜面144とブランケット胴34aの外周面との間に空間部Aが設けられている。この空間部Aは、台形断面形状をなしている。なお、第1ガード121に2個のガード132,133を設けたが、1個でもよく、または3個以上でもよく、湾曲形状としてもよい。また、第2ガード122に1個のガード142を設けたが、2個以上でもよく、湾曲形状としてもよい。
そのため、図6及び図7に示すように、ウェブWが切断されると、紙切れ検出器101が紙切れを検知し、制御装置104は、印刷機10を停止した後に、カッタ102により印刷ユニットU1の下方でウェブWを切断すると同時に、ウェブキャッチャ103により印刷ユニットU1の上方で弛んだウェブWが巻き取られる。すると、ウェブWは、印刷ユニットU1の上方でウェブキャッチャ103に巻き取られることで、印刷ユニットU1内を高速で上方に引き上げられ、強制的に外部に排出される。
このとき、ウェブキャッチャ103により上方に引き上げられるウェブWは、端部が切断された自由状態であることから、印刷ユニットU1内で暴れながら移動し、スタック24にて、ブランケット胴34a,34bやインキ着ローラ78a,78bに接触し、巻き付いてしまうおそれがある。ところが、本実施形態では、このスタック24にガード105が設けられている。
図1及び図2に示すように、ウェブWの端部がブランケット胴34a,34bのニップを上方に移動して支持が解除されたとき、ウェブWの端部がブランケット胴34a側またはブランケット胴34b側に暴れる。このとき、ブランケット胴34bは、インキ着ローラ78bがウェブWの搬送位置から離間しており、ウェブWのインキ着ローラ78bへの巻き込みのおそれは少ない。一方、ブランケット胴34aは、インキ着ローラ78aがウェブWの搬送位置に近いことから、ウェブWのインキ着ローラ78aへの巻き込みのおそれがある。
しかし、ウェブWのインキ着ローラ78b側への移動は、第1ガード121により阻止される。即ち、第1ガード121は、先端部がウェブ搬送位置側に延出され、ブランケット胴34aの外周面との隙間が徐々に小さくなることから、くさび効果によりウェブWのインキ着ローラ78b側への移動が阻止される。
また、ウェブWが第1ガード121の先端部とブランケット胴34aの外周面との第1隙間S1を通ってインキ着ローラ78a側に移動すると、ウェブWのインキ着ローラ78a側への移動は、第2ガード122により阻止される。即ち、第2ガード122は、先端部がインキ着ローラ78a側に延出され、ブランケット胴34aの外周面との隙間が徐々に小さくなり、第1ガード121と第2ガード122とブランケット胴34aとの間に空間部Aが設けられる。そのため、第1ガード121とブランケット胴34aとの第1隙間S1を通って空間部Aに侵入したウェブは各傾斜面135,144に接触し、両者の摩擦抵抗により複雑に座屈し、空間部Aに滞積される。すると、座屈したウェブWは、第2ガード122の先端部とブランケット胴34aの外周面との第2隙間S2を通ることができず、ウェブWのインキ着ローラ78b側への移動が阻止される。
このように本実施形態の紙巻防止装置にあっては、インキを供給するインキ着ローラ78aと、インキ着ローラ78aから外周面に装着された刷版にインキが受け渡される版胴44aと、ウェブWに接触して搬送すると共に版胴44aから受け渡されたインキをウェブWに転写するブランケット胴34aとを設けると共に、ブランケット胴34aの外周辺でインキ着ローラ78aとウェブ搬送位置との間に第1ガード121を配置すると共に、ブランケット胴34aの外周辺で第1ガード121とインキ着ローラ78aとの間に第2ガード122を配置している。
従って、第1ガード121がインキ着ローラ78aとウェブ搬送位置との間に配置されることで、紙切れ時に、第1ガード121は、ウェブWがインキ着ローラ78a側に入り込むのを抑制することができる。また、第2ガード122が第1ガード121とインキ着ローラ78aとの間に配置されることで、第2ガード122は、第1ガード121を越えて入り込んだウェブWがインキ着ローラ78aに接触するのを抑制することができる。その結果、紙切れ時におけるブランケット胴34aやインキ着ローラ78aへのウェブWの巻き付けを効果的に防止することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、ウェブWは、ブランケット胴34aにより鉛直方向における上方に搬送され、第1ガード121及び第2ガード122は、ウェブWとブランケット胴34aとの接触位置よりブランケット胴34aの回転方向における下流側に配置される。従って、紙切れ時に、ウェブWはブランケット胴34aの回転により上方に搬送されるため、第1ガード121と第2ガード122をウェブWとブランケット胴34aとの接触位置よりブランケット胴34aの回転方向における下流側に配置することで、各ガード121,122は、ブランケット胴34aによるウェブWの巻き込みを効果的に防止することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、ブランケット胴34aの上方でインキ着ローラ78aとウェブ搬送位置との間に各ガード板121,122の取付部131,141を固定し、第1ガード121をウェブ搬送位置側に延出し、第2ガード122をインキ着ローラ78a側に延出している。従って、紙切れ時に、第1ガード121は、くさび効果によりウェブWがインキ着ローラ78a側に移動するのを抑制することができ、また、第2ガード122は、第1ガード121を越えて入り込んだウェブWがインキ着ローラ78aに接触するのを抑制することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、第1ガード121の先端部とブランケット胴34aの外周面との間に第1隙間S1を設け、第2ガード122の先端部とブランケット胴34aの外周面との間に第2隙間S2を設け、第2隙間S2を第1隙間S1より小さく設定している。従って、ウェブWのインキ着ローラ78a側への移動を、まず、第1ガード121により制限し、次に、第2ガード122により確実に阻止することとなり、ウェブWのインキ着ローラ78aへの接触を効果的に抑制することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、第1ガード121と第2ガード122とブランケット胴34aとの間に空間部Aを設けている。従って、紙切れ時に、第1ガード121を越えて入り込んだウェブWをこの空間部Aに押し込めることで、インキ着ローラ78a側へのウェブWの移動を抑制することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、第1ガード121は、先端部側に向けてブランケット胴34aの外周面との隙間が小さくなる第1傾斜面135が設けられ、第2ガード122は、先端部側に向けてブランケット胴34aの外周面との隙間が小さくなる第2傾斜面144が設けられている。紙切れ時に、第1ガード121を越えて入り込んだウェブWが各傾斜面135,144に接触して座屈することで、ウェブWをこの空間部Aに容易に押し込めることができ、インキ着ローラ78a側へのウェブWの移動を抑制することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、第2ガード122の先端部をブランケット胴34aの軸中心の上方に配置している。従って、ブランケット胴34aの回転により上方に移動したウェブWを第2ガード122により適正に排除することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、第1ガード121及び第2ガード122は、ブランケット胴34aの外周面に対向する先端部が湾曲形状をなしている。従って、第1ガード121及び第2ガード122の先端部がブランケット胴34aの外周面に接触しても、ブランケット胴34aの外周面の損傷を抑制することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、第1ガード121及び第2ガード122は、上方から落下する異物を受け止める受け止め部134,143が設けられている。従って、飛散するインキミストが周辺部材に接触して液状になると、インキとして落下するが、受け止め部134,143がこの落下するインキを受け止めることで、ブランケット胴34aの汚れを防止して印刷品質の低下を防止することができる。
本実施形態の紙巻防止装置では、第1ガード121及び第2ガード122は、フレーム123に対して着脱自在に設けている。従って、第1ガード121と第2ガード122を着脱自在とすることで、受け止め部134,143にインキがたまると、取外して洗浄することができ、ブランケット胴34aの汚れを防止して印刷品質の低下を防止することができる。また、このとき、第1ガード121及び第2ガード122は、フレーム123にボルト締結であることから、第1ガード121及び第2ガード122の取付位置を容易に調整することができる。
また、本実施形態の印刷機にあっては、新聞用オフセット輪転印刷機10に紙巻防止装置100を設けている。従って、紙切れ時におけるブランケット胴34aやインキ着ローラ78aへのウェブWの巻き付けを効果的に防止することができる。
本実施形態の印刷機にて、ブランケット胴34aの周長が版胴44aの周長の整数倍に設定されると、インキ着ローラ78aとブランケット胴34aとの距離が短くなる。また、ブランケット胴34a,34bと版胴44a,44bが逆ハの字状に配置されると、インキ着ローラ78aとブランケット胴34aとの距離が短くなる。この場合、紙巻防止装置100を適用することで、インキ着ローラ78aへのウェブWの巻き込みを適正に抑制することができる。
なお、上述した実施形態では、ガード105をスタック24におけるブランケット胴34aに対してだけ設けたが、ブランケット胴34bに対して設けたり、スタック22に対して設けたりしてもよい。更に、スタック21,23に対して設けてもよい。また、本実施形態では、左右のブランケット胴34a,34bの高さをずらして配置したが、左右のブランケット胴34a,34bの高さを同じ位置に配置してもよい。
また、上述した実施形態では、2個のガード121,122の基端部を1か所に固定し、先端部をウェブ搬送位置側とインキ着ローラ側に延出したが、2個のガードの基端部を異なる位置に固定してもよい。また、ガードの数は、2個に限らず、3個以上設けてもよい。
また、上述した実施形態で説明した印刷機10は一例であって、各ユニットの構成や組み合わせに限定されるものではない。