以下に添付図面を参照して、本発明に係るインキ供給装置及び方法並びに印刷機の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、複数の実施形態がある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
図9は、新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図、図10は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図、図11は、印刷ユニットにおけるローラ配列を表す概略図である。
本実施形態の印刷機は、図9に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機10であって、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとから構成されている。給紙装置Rは、複数(本実施形態では、7台)の給紙ユニットR1〜R7を有し、インフィード装置Iは、複数(本実施形態では、7台)のインフィードユニットI1〜I7を有し、印刷装置Uは、複数(本実施形態では、6台)の印刷ユニットU1〜U6を有し、ウェブパス装置Dは、複数(本実施形態では、2台)のウェブパスユニットD1,D2を有し、折機Fは、複数(本実施形態では、2台)の折ユニットF1,F2を有している。
この場合、印刷ユニットU1〜U6を6台として説明したが、各印刷ユニットU1〜U6は、4色刷りが可能であると共に、上下に分割して12台の2色刷りが可能な印刷ユニットU11,U12,U21・・・U61,U62として用いることができる。また、2つの折ユニットF1,F2を上下に並べて記載したが、実際には、紙面に直交する方向に並んで配置される操作側折ユニットF1と駆動側折ユニットF2となっている。更に、印刷装置Uを2つの部分から記載したが、機能上2つに分けて記載しただけであり、実際には、1つの装置となっている。
そして、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機10では、図示しない建屋の1階の床面上に給紙ユニットR1〜R7が設置され、2階にインフィードユニットI1〜I7が設置され、2階及び3階に印刷ユニットU1〜U6が設置され、3階から5階にウェブパス装置Dが設置され、また、2階、3階に折機Fが設置されている。
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1〜R7は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(印刷媒体)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アーム11を有し、この保持アーム11を回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。また、この各給紙ユニットR1〜R7には、図示しない紙継装置が設けられており、給紙位置で繰り出されている巻取紙が残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙に対して、待機位置にある巻取紙を紙継することができる。
インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1〜I7は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に送り込むウェブWのテンションを調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWのテンションを適正値に安定して維持するようにしている。例えば、各インフィードユニットI1〜I7は、インフィードローラ、紙押えゴムローラ、ダンサローラ、ガイドローラなどを有している。そして、ダンサローラをウェブWの張り方向に付勢することでウェブWのテンションを適正にし、このダンサローラの揺動に応じてインフィードローラの周速を変更し、ウェブWの適正なテンションを維持している。
なお、給紙装置Rからインフィード装置IまでのウェブWのテンションは、給紙ユニットR1〜R7に設けられた図示しないブレーキ装置により行っており、給紙装置Rに設けられたテンション検出ローラの検出結果に基づいて、このブレーキ装置を制御している。また、印刷装置Uの下流側には、駆動源により駆動回転可能なドラグローラ12が設けられており、このドラグローラ12の周速やダンサローラの付勢力を制御することで、ウェブWのテンションを調整している。
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1〜U6は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1〜U6は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11〜U62とすることができる。各印刷ユニットU11〜U62は、ほぼ同様の構成をなし、後述するが、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有している。本実施形態では、各印刷ユニットU1〜U6は、版胴の周長(直径)とブランケット胴の周長(直径)が同じに設定されている。なお、各印刷ユニットU1〜U6にて、版胴の周長(直径)に対して、ブランケット胴の周長(直径)を整数倍に設定してもよい。
なお、本実施形態では、印刷ユニットU1〜U6を、全て多色刷印刷ユニットにより構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、両面2色刷印刷ユニット、両面単色刷印刷ユニット、一面4色または単色刷印刷ユニットなど、印刷物に応じて適宜各種ユニットを組み合わせて使用すればよい。
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1〜U3に対して設けられ、ウェブパスユニットD2は、印刷ユニットU4〜U6に対して設けられている。各ウェブパスユニットD1,D2は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブWを縦(ウェブWの天地長手方向、ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断するスリッタ、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバー、ウェブWにおける天地長手方向における搬送位置を調整するコンペンセータなどを有している。
即ち、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
折機Fにて、2つの折ユニットF1,F2は、操作側と駆動側に配設されている。即ち、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。この場合、折機Fでは、折ユニットF1,F2が各ウェブパスユニットD1,D2からのウェブW1,W2を処理するだけでなく、各折ユニットF1,F2の一方がまとめて処理することもできる。
従って、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機10では、給紙装置Rの各給紙ユニットR1〜R7からそれぞれ供給された各ウェブWは、インフィード装置Iの各インフィードユニットI1〜I7によりテンションが調整され、印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U6に供給される。この印刷装置Uにおける各印刷ユニットU1〜U6にて、各ウェブWの両面に印刷が施される。そして、各印刷ユニットU1〜U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4〜U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
その後、折機Fでは、ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。
ここで、印刷装置Uにおける印刷ユニットU1について詳細に説明する。印刷ユニットU1は、図10に示すように、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットとなっている。この印刷ユニットU1は、ウェブWの搬送方向(図10にて、下から上)に沿って、墨(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(Yellow)ごとの4つのスタック21,22,23,24が配置されて構成されており、各スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列となっている。
即ち、印刷ユニットU1における各スタック21,22,23,24は、左右に対向してブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで対接可能であり、各ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bに版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接している。そして、各スタック21,22,23,24は、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられている。また、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられている。
この場合、スタック21,23は、ブランケット胴31a,31b,33a,33bと版胴41a,41b,43a,43bがハの字形状に配列され、スタック22,24は、ブランケット胴32a,32b,34a,34bと版胴42a,42b,44a,44bが逆ハの字形状に配列されている。そして、各版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bにて、外周面に異なる絵柄を印刷する刷版(図示略)が軸方向、つまり、ウェブWの幅方向に沿って並べて装着可能となっている。
この場合、各スタック21,23、各スタック22,24は、それぞれローラ配列がほぼ同様の構成となっていることから、以下に、スタック21,22について詳細に説明する。
印刷ユニットU12において、図11に示すように、スタック21は、垂直方向に沿ったウェブWの搬送経路に対して、左側が表面印刷を行う表面印刷ユニットであり、右側が裏面印刷を行う裏面印刷ユニットである。
スタック21は、ブランケット胴31a,31bと、版胴41a,41bと、インキ供給装置51a,51bと、湿し装置61a,61bを有している。このインキ供給装置51a,51bは、インキ元ローラ71a,71bと、インキつぼを構成するインキキー72a,72bと、インキ受渡しローラ73a,73bと、2つのインキ練ローラ74a,74b,75a,75bと、2つのインキ往復ローラ76a,76b,77a,77bと、3つのインキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bから構成されている。また、湿し装置61a,61bは、練ローラ81a,81bと、往復ローラ82a,82bと、水着ローラ83a,83bと、スプレーダンプナー84a,84bから構成されている。
本実施形態のインキ供給装置51a,51bは、インキつぼ方式であって、1つのインキ元ローラ71a,71bに対して複数のインキキー72a,72bが幅方向に沿って配置されて構成されている。そして、インキ元ローラ71a,71b及びインキキー72a,72bは、予め設定された所定の流動性(粘度)を有するインキを貯留することができると共に、インキキー72a,72bを開放することで、所定量のインキを送り出すことができる。このインキ元ローラ71a,71bは、表面が金属により形成され、図示しないフレームに回転自在に支持され、後述する駆動装置により矢印方向に駆動回転可能となっている。
インキ受渡しローラ73a,73bは、インキ元ローラ71a,71bのインキを受け渡すものであって、表面が金属または樹脂により形成され、インキ元ローラ71a,71bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ練ローラ74a,74bは、インキ受渡しローラ73a,73bから受け渡されたインキを練るものであって、表面がゴムにより形成され、インキ受渡しローラ73a,73bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。インキ往復ローラ76a,76bは、インキ練ローラ74a,74bにより練られたインキを幅方向に広げるものであって、表面が金属により形成され、インキ練ローラ74a,74bに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
なお、他のインキ練ローラ75a,75bは、隣接するローラ間で受け渡されるインキを練るものであり、表面がゴムにより形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。また、他のインキ往復ローラ77a,77bは、隣接するローラ間で受け渡されるインキを幅方向に広げるもの、表面が金属により形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。
インキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bは、インキ往復ローラ76a,76b,77a,77bにより幅方向に広げられたインキを受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、インキ往復ローラ76a,76b,77a,77bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、インキ受渡しローラ73a,73bとインキ往復ローラ76a,76b,77a,77bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、図示しない駆動装置により矢印方向に駆動回転可能となっている。また、インキ練ローラ74a,74b,75a,75bとインキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により矢印方向に回転可能となっている。
また、練ローラ81a,81bは、ローラ間で受け渡される湿し水を練るものであり、表面がゴムにより形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。また、往復ローラ82a,82bは、隣接するローラ間で受け渡される湿し水を幅方向に広げるもの、表面が金属により形成され、隣接するローラに対接するようにフレームに回転自在に支持されると共に、軸方向に往復移動可能となっている。水着ローラ83a,83bは、往復ローラ82a,82bにより幅方向に広げられた湿し水を受け取って供給するものであって、表面がゴムにより形成され、往復ローラ82a,82bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、往復ローラ82a,82bは、往復ローラ76a,76b,77a,77bと共にギアにより同期駆動するように連結され、矢印方向に駆動回転可能となっている。また、練ローラ81a,81bと水着ローラ83a,83bは、駆動回転する各ローラとの摩擦接触による回転伝達により矢印方向に回転可能となっている。スプレーダンプナー84a,84bは、往復ローラ82a,82bの軸方向に沿って複数のスプレーノズルが配置されて構成され、湿し水を扇状に霧化して往復ローラ82a,82bに付与するものである。
版胴41a,41bは、表面に図示しない刷版が巻き付けられる金属ローラであり、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bのインキが刷版の画線部に受け渡されると共に、水着ローラ83a,83bの湿し水が刷版の非画線部に受け渡されるものである。この版胴41a,41bは、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bと水着ローラ83a,83bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。ブランケット胴31a,31bは、表面に図示しないブランケット(ゴム)が巻き付けられるゴムローラであり、版胴41a,41bから受け渡されたインキをウェブWに転写するものであって、版胴41a,41bに対接するようにフレームに回転自在に支持されている。そして、版胴41a,41bとブランケット胴31a,31bは、図示しないギアにより同期駆動するように連結され、駆動装置により矢印方向に駆動回転可能となっている。
この場合、版胴41a,41bに装着される刷版は、絵柄のある領域(画線部)と絵柄のない領域(非画線部)が形成され、画線部が親油性であり、非画線部が親水性である。そのため、版胴41a,41bに装着された刷版に対して、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bからインキが供給されると共に、水着ローラ83a,83bから湿し水が供給されると、画線部のみにインキが転写され、非画線部に湿し水が転写される。そして、版胴41a,41bに対してブランケット胴31a,31bが対接して同期回転すると、版胴41a,41bから画線部にあるインキがブランケット胴31a,31bに転写される。
従って、スタック21にて、インキキー72a,72bが所定開度に設定され、インキ元ローラ71a,71bが所定の速度で回転することで、調量されたインキがこのインキ元ローラ71a,71bを通してインキ受渡しローラ73a,73bに供給される。このインキ受渡しローラ73a,73bに供給されたインキは、インキ練ローラ74a,74bを通してインキ往復ローラ76a,76bに受け渡され、このインキ往復ローラ76a,76bが軸方向に往復移動することで、幅方向に広げられる。また、このインキ往復ローラ76a,76bで幅方向に広げられたインキは、インキ練ローラ75a,75bを通してインキ往復ローラ77a,77bに受け渡され、このインキ往復ローラ77a,77bが軸方向に往復移動することで、さらに幅方向に広げられる。
そして、各インキ往復ローラ76a,76b,77a,77bにより幅方向に広げられたインキは、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bに供給され、このインキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80bが回転することで版胴41a,41bの版面に受け渡される。このとき、インキ着ローラ78a,78b,79a,79b,80a,80b上のインキは、版胴41a,41bに装着された刷版の画線部のみに転写される。一方、スプレーダンプナー84a,84bは、扇状に霧化した湿し水を往復ローラ82a,82bに付与し、湿し水は、練ローラ81a,81bにより練られてから水着ローラ83a,83bにより版胴41a,41bの版面に受け渡される。このとき、水着ローラ83a,83bの湿し水は、版胴41a,41bに装着された刷版の非画線部のみに転写される。そして、この版胴41a,41bが回転することで、刷版の画線部にあるインキがブランケット胴31a,31bに受け渡される。
その後、ブランケット胴31a,31bの間にウェブWが通過するときに、その印圧により各ブランケット胴31a,31bに転写されたインキ(絵柄)がウェブWの表裏に転写される。即ち、ウェブWの表面に対して、ブランケット胴41aのインキが転写され、ウェブWの裏面に対して、ブランケット胴41bのインキが転写されることで、ウェブWへの両面印刷が行われる。
また、スタック22は、垂直方向に沿ったウェブWの搬送経路に対して、左側が表面印刷を行う表面印刷ユニットであり、右側が裏面印刷を行う裏面印刷ユニットである。
スタック22は、ブランケット胴32a,32bと、版胴42a,42bと、インキ供給装置52a,52bと、湿し装置62a,62bを有している。このインキ供給装置52a,52bは、インキ元ローラ91a,91bと、インキつぼを構成するインキキー92a,92bと、インキ受渡しローラ93a,93bと、2つのインキ練ローラ94a,94b,95a,95bと、2つのインキ往復ローラ96a,96b,97a,97bと、3つのインキ着ローラ98a,98b,99a,99b,100a,100bから構成されている。また、湿し装置62a,62bは、練ローラ101a,101bと、往復ローラ102a,102bと、水着ローラ103a,103bと、スプレーダンプナー104a,104bから構成されている。
なお、このスタック22におけるブランケット胴32a,32b、版胴42a,42b、インキ供給装置52a,52b、湿し装置62a,62bは、スタック21におけるブランケット胴31a,31b、版胴41a,41b、インキ供給装置51a,51b、湿し装置61a,61bと配列が相違するだけで、その構成はほぼ同様であることから、詳細な説明は省略する。
このように構成された本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機10にて、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bは、停止時にインキの漏れを防止するシャットオフ機能を有している。即ち、図1に示すように、インキ供給装置51aにて、インキ元ローラ71aは、フレームに回転自在に支持されると共に、ローラ駆動装置(例えば、モータ)111により駆動回転可能となっている。インキキー72aは、所定の大きさを有する板形状をなし、基端部がフレーム112に支持軸113により回動自在に支持され、先端部がインキ元ローラ71aの周面に沿って配置されている。このインキキー72aは、付勢部材としてのばね114により先端部がインキ元ローラ71aの周面から離間する方向に付勢支持されている。
インキキー72aは、インキキー開度調整装置115によりインキキー開度が調整可能となっている。このインキキー開度調整装置115は、駆動モータ116と、ねじ機構(図示略)と、回動自在に支持された調整片117とを有し、インキキー72aの先端部が調整片117に当接することでインキキー72aが位置決めされ、インキキー開度が設定されている。そのため、駆動モータ116を駆動し、ねじ機構を介して調整片117を回動することで、調整片117とインキキー72aとの当接位置が変更され、インキキー72aを回動してインキキー開度を変更(調整)することができる。
制御装置121は、操作表示部122と記憶部123が接続されている。また、制御装置121は、インキキー開度調整装置115の検出器(ポテンションメータ)118からのインキキー開度信号と、印刷機制御部124からの印刷終了信号と、ウェブWの搬送経路に設けられた検出器125からの断紙信号が入力される。ここで、印刷終了信号と断紙信号は、印刷機停止信号(インキ供給停止信号)であり、新聞用オフセット輪転印刷機10が停止している。
そして、制御装置121は、この印刷機停止信号が出力されたとき、インキキー72aによるインキキー開度を予め設定された所定値まで減少させた後、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転させるようにしている。即ち、印刷が終了して次の印刷開始を待っているとき、また、印刷途中で断紙して印刷の再開を待っているときは、インキキー72aのインキキー開度が印刷時の開度に維持され、インキ元ローラ71aやとインキ受渡しローラ73aなどが停止している。そのため、インキ元ローラ71aとインキキー72aとの隙間やインキ元ローラ71aとインキ受渡しローラ73aとの隙間からインキが漏れるおそれがある。そのため、制御装置121は、印刷が終了したり、断紙したりしたとき、インキキー開度調整装置115によりインキキー72aを回動してインキキー開度を減少させることで、インキ元ローラ71aとインキキー72aとの隙間からのインキ漏れを防止する。また、その後、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71aを所定時間だけ回転させ、インキ元ローラ71aの表面に付着しているインキを回収することで、インキ元ローラ71aとインキ受渡しローラ73aとの隙間からインキ漏れを防止する。
この場合、制御装置121は、印刷機停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を最小値に設定する。また、制御装置121は、使用するインキの流動性が予め設定された所定値より高いとき、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。
なお、印刷機停止信号は、所定の印刷物(新聞)が所定冊数を印刷して所定の印刷ジョブが終了したときに出力される印刷終了信号、または、印刷機トラブル時に出力される緊急停止信号である。この緊急停止信号としては、ウェブWが途中で切れた断紙信号が代表的であるが、主機の故障などもある。その他の停止要因としては、自動選択モードの入れ忘れや紙継ぎ設定上の入力エラーや刷版の装着間違い信号などがある。
また、制御装置121は、記憶部123が接続されている。制御装置121は、所定時間ごとにインキキー開度を記憶部123に記憶しているが、印刷機停止信号が入力されたとき、そのときのインキキー開度を記憶する。そして、制御装置121は、シャットオフ解除信号が入力されたとき、インキキー開度調整装置115によりインキキー開度を記憶部123に記憶されたインキキー開度に復帰させる。
制御装置121に印刷機停止信号が入力され、インキキー開度調整装置115によりインキキー開度を所定値(最小値)に減少して待機しているとき、印刷機制御部124からインキプリセットデータが入力されることがある。例えば、印刷中に原稿の差し替えが生じた場合などである。このインキプリセットデータとは、印刷データの一部を変更するものであり、制御装置121は、このインキプリセットデータが入力されたら、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをこのインキプリセットデータに上書きする。一方、所定の印刷物(新聞)が所定冊数を印刷して所定の印刷ジョブが終了したとき、次の印刷データがなくなってしまう。このとき、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをリセットする。
インキ供給装置51aは、印刷機停止信号が入力されたとき、自動的にインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少する自動シャットオフモードと、作業者の操作により手動印刷機停止信号が入力されたとき、インキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少する手動シャットオフモードが設けられている。そして、自動シャットオフモードは、印刷機停止信号が入力されたとき、インキキー開度を減少する全自動シャットオフモードと、断紙信号が入力されたときのみ、インキキー開度を減少する断紙時自動シャットオフモードとが設けられている。
操作表示部122は、図2に示す操作表示画面を有している。この画面にて、自動シャットオフモードを選択のための全自動シャットオフモード選択ボタン131と、断紙時自動シャットオフモード選択ボタン132が設けられている。また、この画面にて、手動シャットオフモードを選択のためのロックリリースボタン133と、手動シャットオフモード選択ボタン134と、シャットオフモード復帰選択ボタン135、リセットボタン136が設けられている。このリセットボタン136は、記憶部123に記憶されているインキキー開度をリセット(0)するものである。なお、別の画面に印刷機起動ボタン137が設けられている。
そして、制御装置121は、印刷機停止信号の入力によりインキキー開度を所定値に減少した後、各ローラにおける緩動速度より高い速度での回転を禁止する。緩動速度とは、例えば、版交換時に刷版を版胴に巻き付けながら版胴をゆっくりと回転させる速度である。
また、制御装置121は、印刷機停止信号が出力されたとき、インキキー72aによるインキキー開度を所定値まで減少させた後、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転させるが、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71aを回転する時間を調整可能となっている。操作表示部122は、図3に示す操作表示画面を有している。この画面にて、インキシャットオフ設定の数値表示部141が設けられている。ここで、インキ元ローラ回転時間とは、印刷機停止信号が出力されたとき、インキキー開度を所定値まで減少させた後にインキ元ローラ71aを回転させる時間である。符号142,143,144,145は、インキ元ローラ回転時間の入力表示部である。なお、A,B,C,Dは、スタック21,22,23,24に相当する。また、インキ元ローラ回転出力とは、インキ元ローラ71aの回転速度であり、インキシャットオフ目標値とは、印刷機停止信号が出力されたときに減少させるインキキー開度の所定値である。符号146,147は、インキ元ローラ回転出力とインキシャットオフ目標値の入力表示部である。
また、制御装置121は、シャットオフ解除信号が出力されたとき、インキキー72aによるインキキー開度を所定値まで復帰させた後、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転させるが、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71aを回転する時間を調整可能となっている。この画面にて、インキ呼び出し設定の数値表示部151が設けられている。ここで、インキ元ローラ回転時間とは、シャットオフ解除信号が出力されたとき、インキキー開度を所定値まで復帰させた後にインキ元ローラ71aを回転させる時間である。符号152,153,154,155は、インキ元ローラ回転時間の入力表示部である。また、インキ元ローラ回転出力とは、インキ元ローラ71aの回転速度である。符号156は、インキ元ローラ回転出力の入力表示部である。
ここで、インキ供給装置51aにおけるシャットオフ動作について、フローチャートを用いて詳細に説明する。
まず、全自動シャットオフモード処理(断紙時シャットオフモード処理)において、図1及び図4に示すように、ステップS11にて、全自動シャットオフモード(全自動シャットオフモード選択ボタン131)または断紙時シャットオフモード(断紙時シャットオフモード選択ボタン132)が選択(ON)されることで、インキ供給装置51aは、全自動シャットオフモードまたは断紙時シャットオフモードが実行される。ここで、図示しないが、操作表示部122の表示パネルに、全自動シャットオフモードランプまたは断紙時シャットオフモードランプが点灯する。この場合、使用しているインキユニットに対応して表示ランプが設けられている。
ステップS12にて、制御装置121は、印刷機停止信号が入力されたかどうかを判定する。ここで、印刷機停止信号が入力されていないと判定(No)されたら、この状態が継続される。一方、印刷機停止信号が入力されたと判定(Yes)されたら、ステップS13にて、制御装置121は、現在のインキキー開度を記憶部123に記憶し、ステップS14にて、インキキーシャットオフ処理を開始する。即ち、制御装置121は、インキキー開度調整装置115によりインキキー72aを回動し、インキキー開度を所定開度(例えば、最小値)まで減少させる。
ステップS15にて、制御装置121は、全てのインキキー72aがシャットオフされたかどうかを判定する。この場合、1つのインキ元ローラ71aに対して複数のインキキー72aが配置されており、各インキキー72aに対してポテンションメータ118が設けられている。そのため、制御装置121は、複数のポテンションメータ118からのインキキー開度信号に基づいて全てのインキキー72aのインキキー開度が所定値になったかどうかを判定する。また、印刷機停止信号が入力されたとき、インキキー72aだけでなく、使用している印刷ユニットに設けられている全てのインキキーの開度を減少させることから、制御装置121は、使用している印刷ユニットにおける全てのインキキーの開度信号に基づいて全てのインキキー開度が所定値になったかどうかを判定する。
ここで、全てのインキキー開度が所定値にならないと判定(No)されたら、この状態を維持する。そして、全てのインキキー開度が所定値になったと判定(Yes)されたら、ステップS16にて、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。その後、ステップS17にて、印刷機10の加速を禁止、つまり、緩動速度を超える各ローラの回転を禁止する。
そのため、印刷機10の停止時、インキキー72aによるインキキー開度が所定値(最小値)に調整されることで、インキ元ローラ71aとインキキー72aとの隙間からのインキ漏れが防止される。また、その後、インキ元ローラ71aが所定時間だけ回転されることで、インキ元ローラ71aの表面に付着しているインキがインキつぼに回収され、インキ元ローラ71aとインキ受渡しローラ73aとの隙間からのインキ漏れが防止される。
なお、制御装置121は、ステップS15にて、全てのインキキー72aがシャットオフされたと判定したら、ステップS16にて、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転するように構成したが、この処理に限定されるものではない。例えば、制御装置121は、インキキー72aのシャットオフ処理を開始してから、または、インキキー72aのシャットオフ処理が完了してから、所定時間の経過後にインキ元ローラ71aを所定時間だけ回転するように構成してもよい。この場合、制御装置121は、所定時間の経過後に、警報やランプの点灯をしてインキ元ローラ71aを回転するとよい。
その後、この印刷機10の停止時に、各種の作業(半交換、断紙の復旧など)が完了したら、シャットオフモード復帰処理を行う。図1及び図5に示すように、ステップS21にて、全自動シャットオフモードまたは断紙時シャットオフモードが実行中である。ステップS22にて、制御装置121は、シャットオフ解除信号(起動ボタン137)が入力(ON)されたかどうかを判定する。ここで、シャットオフ解除信号が入力されていないと判定(No)されたら、この状態が継続される。一方、シャットオフ解除信号が入力されたと判定(Yes)されたら、ステップS23にて、制御装置121は、現在のインキキー開度(最小値)を記憶部123に記憶されたインキキー開度に復帰させる。即ち、制御装置121は、インキキー開度調整装置115によりインキキー72aを回動し、インキキー開度をシャットオフ前のインキキー開度まで増加させる。
なお、インキ供給装置51aがシャットオフ動作中、制御装置121は、インキプリセットデータが入力されたら、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをこのインキプリセットデータに上書きする。また、所定の印刷物(新聞)が所定冊数を印刷して所定の印刷ジョブが終了したとき、次の印刷データがないことから、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをリセットする。
ステップS24にて、制御装置121は、全てのインキキー72aがシャットオフ前のインキキー開度に復帰したかどうかを判定する。ここで、全てのインキキー開度がシャットオフ前のインキキー開度に復帰しないと判定(No)されたら、この状態を維持する。そして、全てのインキキー開度がシャットオフ前のインキキー開度に復帰したと判定(Yes)されたら、ステップS25にて、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。その後、印刷機10は、印刷を開始する。
なお、上述した全自動シャットオフモード処理(断紙時シャットオフモード処理)にて、制御装置121は、印刷機停止信号が入力されたら、インキキー72aによるインキキー開度を所定値(最小値)に減少した後、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転するように構成したが、この構成に限定されるものではない。即ち、印刷に使用するインキは、用途により流動性(粘度)が相違する。そのため、流動性が高い(粘度が低い)インキほど漏れが発生するおそれがある。そこで、流動性が高い(粘度が低い)インキを使用した場合、印刷機停止信号が入力されたとき、インキキー開度を所定値(最小値)に減少した後、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。一方、流動性が低い(粘度が高い)インキを使用した場合、印刷機停止信号が入力されたとき、インキキー開度を所定値(最小値)に減少するが、インキ元ローラ71aの回転は行わない。
図6に示すように、ステップS31にて、全自動シャットオフモード(全自動シャットオフモード選択ボタン131)または断紙時シャットオフモード(断紙時シャットオフモード選択ボタン132)が選択(ON)されることで、インキ供給装置51aは、全自動シャットオフモードまたは断紙時シャットオフモードが実行される。
ステップS32にて、制御装置121は、印刷機停止信号が入力されたかどうかを判定する。ここで、印刷機停止信号が入力されていないと判定(No)されたら、この状態が継続される。一方、印刷機停止信号が入力されたと判定(Yes)されたら、ステップS33にて、制御装置121は、現在のインキキー開度を記憶部123に記憶し、ステップS34にて、インキキーシャットオフ処理を開始する。即ち、制御装置121は、インキキー開度調整装置115によりインキキー72aを回動し、インキキー開度を所定開度(例えば、最小値)まで減少させる。
ステップS35にて、制御装置121は、全てのインキキー72aがシャットオフされたかどうかを判定する。ここで、全てのインキキー開度が所定値にならないと判定(No)されたら、この状態を維持する。そして、全てのインキキー開度が所定値になったと判定(Yes)されたら、ステップS36にて、使用しているインキの流動性(粘度)が予め設定された所定値以上であるかどうかを判定する。ここで、インキの流動性(粘度)が予め設定された所定値以上であると判定(Yes)と判定されたら、ステップS37にて、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。一方、インキの流動性(粘度)が予め設定された所定値以上でないと判定(No)と判定されたら、ステップS37に移行しない。つまり、インキ元ローラ71aを回転しない。その後、ステップS38にて、印刷機10の加速を禁止、つまり、緩動速度を超える各ローラの回転を禁止する。
インキの流動性は、スプレッドメータ(平行板粘度計)で測定した値であり、SL値とDM値で表される。ここで、インキの流動性(粘度)が所定値以上であるインキとは、SL値=10、DM値=50〜60(mm)のインキであり、インキの流動性(粘度)が所定値より低いインキとは、SL値=5〜8、DM値=35〜40(mm)のインキである。
そのため、印刷機10の停止時、インキキー72aによるインキキー開度が所定値(最小値)に調整されることで、インキ元ローラ71aとインキキー72aとの隙間からのインキ漏れが防止される。また、その後、流動性の高いインキを使用しているときは、インキ元ローラ71aが所定時間だけ回転されることで、インキ元ローラ71aの表面に付着しているインキがインキつぼに回収され、インキ元ローラ71aとインキ受渡しローラ73aとの隙間からのインキ漏れが防止される。
また、インキ元ローラ71aのインキ膜厚が厚いほど漏れが発生するおそれがある。そのため、インキ元ローラ71aのインキ膜厚が厚い場合、印刷機停止信号が入力されたとき、インキキー開度を所定値(最小値)に減少した後、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。一方、インキ元ローラ71aのインキ膜厚が厚くない場合、印刷機停止信号が入力されたとき、インキキー開度を所定値(最小値)に減少するが、インキ元ローラ71aの回転は行わない。インキ元ローラ71aの回転をインキ元ローラ71aのインキ膜厚に応じて設定してもよい。また、インキは、色(墨、藍、紅、黄)ごとに粘度が相違することから、粘度の低い色を使用する印刷ユニットにおけるインキ元ローラ71aだけ回転するようにしてもよい。また、スタック21とスタック22とでは、ローラ配列が相違することから、インキ漏れが発生しやすいスタック21におけるインキ元ローラ71aだけ回転するようにしてもよい。
次に、手動シャットオフモード処理において、図1及び図7に示すように、ステップS41にて、手動シャットオフモード(ロックリリースボタン133及び手動シャットオフモード選択ボタン134)が選択(ON)されることで、インキ供給装置51aは、手動シャットオフモードが実行される。ここで、図示しないが、操作表示部122の表示パネルに、手動シャットオフモードランプが点灯する。この場合、使用しているインキユニットに対応して表示ランプが設けられている。
ステップS42にて、制御装置121は、印刷速度が予め設定された所定の印刷速度(緩動速度)以下になったかどうかを判定する。ここで、所定の印刷速度以下になっていないと判定(No)されたら、この状態が継続される。一方、所定の印刷速度以下になったと判定(Yes)されたら、ステップS43にて、制御装置121は、現在のインキキー開度を記憶部123に記憶し、ステップS44にて、インキキーシャットオフ処理を開始する。即ち、制御装置121は、インキキー開度調整装置115によりインキキー72aを回動し、インキキー開度を所定開度(例えば、最小値)まで減少させる。
ステップS45にて、制御装置121は、全てのインキキー72aがシャットオフされたかどうかを判定する。ここで、全てのインキキー開度が所定値にならないと判定(No)されたら、この状態を維持する。そして、全てのインキキー開度が所定値になったと判定(Yes)されたら、ステップS46にて、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。その後、ステップS47にて、印刷機10の加速を禁止、つまり、緩動速度を超える各ローラの回転を禁止する。
そのため、印刷機10の停止時、インキキー72aによるインキキー開度が所定値(最小値)に調整されることで、インキ元ローラ71aとインキキー72aとの隙間からのインキ漏れが防止される。また、その後、インキ元ローラ71aが所定時間だけ回転されることで、インキ元ローラ71aの表面に付着しているインキがインキつぼに回収され、インキ元ローラ71aとインキ受渡しローラ73aとの隙間からのインキ漏れが防止される。
その後、この印刷機10の停止時に、各種の作業(半交換、断紙の復旧など)が完了したら、シャットオフモード復帰処理を行う。図1及び図8に示すように、ステップS51にて、手動シャットオフモードが実行中である。ステップS52にて、制御装置121は、シャットオフ解除信号(シャットオフモード復帰選択ボタン135)が入力(ON)されたかどうかを判定する。ここで、シャットオフ解除信号が入力されていないと判定(No)されたら、この状態が継続される。一方、シャットオフ解除信号が入力されたと判定(Yes)されたら、ステップS53にて、制御装置121は、現在のインキキー開度(最小値)を記憶部123に記憶されたインキキー開度に復帰させる。即ち、制御装置121は、インキキー開度調整装置115によりインキキー72aを回動し、インキキー開度をシャットオフ前のインキキー開度まで増加させる。
なお、インキ供給装置51aがシャットオフ動作中、制御装置121は、インキプリセットデータが入力されたら、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをこのインキプリセットデータに上書きする。また、所定の印刷物(新聞)が所定冊数を印刷して所定の印刷ジョブが終了したとき、次の印刷データがないことから、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをリセットする。
ステップS54にて、制御装置121は、全てのインキキー72aがシャットオフ前のインキキー開度に復帰したかどうかを判定する。ここで、全てのインキキー開度がシャットオフ前のインキキー開度に復帰しないと判定(No)されたら、この状態を維持する。そして、全てのインキキー開度がシャットオフ前のインキキー開度に復帰したと判定(Yes)されたら、ステップS55にて、インキ元ローラ71aを所定時間だけ回転する。その後、印刷機10は、印刷を開始する。
なお、この手動シャットオフモード処理は、自動シャットオフモード処理中であっても実行することができる。また、自動シャットオフモード処理または手動シャットオフモード処理を選択後、例えば、モード解除ボタン(図示略)を押すことで、選択したモードを解除することができるようにしてもよい。
このように本実施形態のインキ供給装置にあっては、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bと、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bが供給するインキ膜厚を調整可能なインキキー72a,72b,92a,92bと、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bからインキが受け渡されるインキ受渡しローラ73a,73b,93a,93bと、インキキー72a,72b,92a,92bの開度を調整可能なインキキー開度調整装置115と、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bを回転可能なローラ駆動装置111と、インキ供給停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少すると共に、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転可能な制御装置121とを設けている。
従って、インキ供給停止信号が入力したとき、インキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少すると共に、ローラ駆動装置111により必要に応じてインキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転する。そのため、印刷機10の停止時に、インキキー開度を減少することで、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキキー72a,72b,92a,92bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができ、また、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転することで、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキ受渡しローラ73a,73b,93a,93bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができる。その結果、印刷機10の停止時におけるインキの漏れを防止することで印刷品質を向上することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、制御装置121は、インキ供給停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を最小値に設定している。従って、インキキー開度の最小値とは、インキキー72a,72b,92a,92bの先端部がインキ元ローラ71a,71b,91a,91bの外周面に接触しない位置であり、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキキー72a,72b,92a,92bとの接触を防止してインキ元ローラ71a,71b,91a,91bの損傷を防止することができると共に、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキキー72a,72b,92a,92bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、制御装置121は、使用するインキの流動性が予め設定された所定値より高いとき、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転している。従って、インキ供給停止信号が入力したとき、インキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少し、インキの流動性が所定値より高いときだけ、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転する。そのため、印刷機10の停止時に、インキ元ローラ71a,71b,91a,91を所定時間だけ回転するため、流動性が高いインキであっても、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキ受渡しローラ73a,73b,93a,93bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、インキ供給停止信号は、印刷機10の緊急停止信号である。従って、印刷機10の緊急停止信号が入力したとき、インキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少することで、断紙などのときであっても、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキキー72a,72b,92a,92bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができる。また、作業者は、インキキーの全閉ボタンを操作することなく、輪転機の不都合を解消する作業に注力することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、インキ供給停止信号の入力時のインキキー開度を記憶する記憶部123を設け、制御装置121は、シャットオフ解除信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を記憶部123に記憶されたインキキー開度に復帰させている。従って、早期にインキ供給を開始することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、制御装置121は、インキ供給停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を所定値に減少した後、インキプリセットデータが入力されたら、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをインキプリセットデータに変更している。従って、印刷内容に変更があった場合、インキ供給開始時にインキプリセットデータに基づいたインキ供給を適正の行うことができる。
本実施形態のインキ供給装置では、制御装置121は、インキ供給停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を所定値に減少した後、次の印刷データがないとき、記憶部123に記憶されたインキキー開度のデータをリセットしている。従って、記憶部123に次の印刷データがないとき、インキキー開度のデータをリセットすることで、無駄なインキの供給を停止することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、制御装置121は、インキ供給停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少する自動シャットオフモードと、作業者の操作により入力される手動インキ供給停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を減少する手動シャットオフモードとを有している。従って、自動シャットオフモードと手動シャットオフモードを設けることで、インキ供給形態に応じて作業者は好みのモードを選択することができ、操作性を向上することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、制御装置121は、インキ供給停止信号の入力によりインキキー開度調整装置115によりインキキー開度を所定値に減少した後、各ローラにおける緩動速度より高い速度での回転を禁止している。従って、シャットオフ中は、版交換などで使用する緩動速度より高い速度でのローラの回転を禁止することで、シャットオフ中でもメンテナンスが可能となる。また、シャットオフ動作が終了後、所定のキー開度にすることができるので、所定のインキキー開度となっていない状態での印刷開始を防止し、損紙を低減すると共に、インキ元ローラの回転等による作業者に対する安全性を向上することができる。
本実施形態のインキ供給装置では、ローラ駆動装置111によりインキ元ローラ71a,71b,91a,91bを回転する時間を調整可能としている。従って、ローラ駆動装置111によるインキ元ローラ71a,71b,91a,91bの回転時間を調整可能とすることで、例えば、現在のインキキー開度やインキの流動性などを考慮し、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bの表面に付着したインキを適正に回収することができる。
また、本実施形態のインキ供給方法にあっては、インキ供給停止信号が出力されたとき、インキキー開度を予め設定された所定値まで減少させた後、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転させている。従って、印刷機10の停止時に、インキキー開度を減少することで、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキキー72a,72b,92a,92bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができ、また、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転することで、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキ受渡しローラ73a,73b,93a,93bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができる。その結果、印刷機10の停止時におけるインキの漏れを防止することで印刷品質を向上することができる。
また、本実施形態の印刷機にあっては、印刷機10の停止時に、インキキー開度を減少することで、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキキー72a,72b,92a,92bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができ、また、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bを所定時間だけ回転することで、インキ元ローラ71a,71b,91a,91bとインキ受渡しローラ73a,73b,93a,93bとの隙間からのインキの漏洩を防止することができる。その結果、印刷機10の停止時におけるインキの漏れを防止することで印刷品質を向上することができる。
なお、上述した実施形態で説明した印刷機10は一例であって、各ユニットの構成に限定されるものではない。また、ローラ駆動装置111やインキ開度調整装置115の構造も一例であって、他の構造であってもよい。
また、上述した実施形態では、印刷機の停止信号の入力によりインキキー開度を最小値に設定したが、タイマを設けて印刷機が所定時間停止したときに、本機能を実施するようにしてもよい。そうすることにより、短時間停止の比較的インキ漏れの少ない停止要因についてはインキキーシャットオフを行わないようにすることで、インキキーシャットオフ及びインキキーシャットオフ解除に係る時間を削減でき、効率的な運転が可能となる。
また、上述した実施形態では、本発明の印刷機を新聞用オフセット輪転印刷機に適用して説明したが、商業用オフセット輪転印刷機やオフセット枚葉印刷機などに適用してもよく、この場合、両面印刷機であっても、片面印刷機であってもよい。