ところで、一般的な折機では、操作側と駆動側とに、ウェブを縦方向に二つ折りし、縦方向折り目をつけ、裁断しつつ折丁として排出する2組の折ユニットを有している。この折機では、各折ユニットにおいて最も幅方向寸法の嵩む三角板を相互に近づけて隣接することで配置域の省スペース化を図ると共に、各折ユニットのニッピングローラから下流側の構成(主に鋸胴および折胴)を相互に離間させて各折ユニットのメンテナンススペースを確保している。また、折機は、一方の折ユニットの三角板で縦折りされてニッピングローラで送り出されるウェブを他方の折ユニットの鋸胴および折胴に転送するように構成されている。
このように、ニッピングローラから下流側の構成を離間させたり、ウェブを別の折ユニットに転送させたりすると、各折ユニットのニッピングローラの下流側で、ウェブの経路が操作側や駆動側に偏ることになる。すると、図8に示すように、経路が偏った側のローラ100aの凸部101の周面には、ウェブWを挟んだポイントαから経路が偏った分のポイントβに至り、ウェブWが巻き付くことになる。このような場合、ローラ100a,100bに挟まれないウェブWの幅方向の中央部分は、ローラ100aに挟まれたポイントαから、次に経路が変わるポイント(図示せず)に至り直線最短経路を辿ろうとする。このため、ウェブWの幅方向の中央部分は、図8に一点鎖線で示すようにローラ100aに接近し、逃げ部102の外周に接触する。この結果、ウェブWの幅方向の中央部分に不要な張力が生じてウェブWにしわができ、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりするおそれがある。
ここで、ウェブWの幅方向の中央部分に生じる不要な張力を抑える目的で、以下の2つの構成が考えられる。1つ目は、図8で示すウェブWを挟んだポイントαから凸部101の外周でのウェブWの巻き付きをなくすように、ローラ100a,100bを通過するウェブWの経路を真っ直ぐ下に案内するガイドローラ(図示せず)を配置する構成である。しかし、1つ目の構成は、新たにガイドローラを配置することでスペース効率が悪くなり、かつ部品コストや製造コストが嵩むことになることから適していない。また、2つ目は、図8で示す凸部101で挟んだポイントαからのウェブW全体の経路が直線最短経路を辿るように、ニッピングローラ100を図8上の時計回りに傾ける構成である。しかし、2つ目の構成は、ニッピングローラ100を傾けたことで、凸部101で挟んだポイントαの上流側でローラ100aに巻き付きが生じる。このため、三角板で縦折りされた直後であってニッピングローラ100で折り目を付けられる以前で、ウェブWの巻き付き内側と外側とで重なるウェブWの送りにずれが生じやすく、ウェブWにしわができることから適していない。しかも、2つ目の構成は、一方の折ユニットから他方の折ユニットにウェブを転送した場合、図8上の時計回りに傾けたことで下側に位置するローラ100bに対するウェブWの巻き付き量が増大してしまう。このため、折ユニット間の転送時でのウェブWの幅方向の中央部分に生じる不要な張力を増大させるおそれがあることから適していない。
なお、上記問題は、ローラ100a,100bに、袋側とペラ側とが挟まれるブロード判について生じる問題として説明している。その他、ブロード判の縦方向折に切り目をいれたタブロイド判では、ウェブWの幅方向の両端側がペラ側となり、両ペラ側がローラ100a,100bに挟まれる。このタブロイド判でも、ローラ100aに対し、ウェブWを挟んだ位置からウェブWが巻き付くことで、ブロード判と同様にウェブWの幅の中央部分に不要な張力が生じてウェブWにしわができ、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりするおそれがある。しかも、タブロイド判では、ローラ100a,100bでウェブWを挟んだ位置からウェブWが巻き付くことで、巻き付き内側で重なるウェブWと、巻き付き外側で重なるウェブWとで送りにずれが生じやすく、ウェブWの幅の中央部分に生じる不要な張力によりウェブWにしわができやすい。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ウェブへのしわの発生を防ぐことのできるニッピング装置、折機、輪転印刷機およびウェブ搬送方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のニッピング装置では、重ねられたウェブを挟んで送り出す対のローラからなるニッピング装置において、送り出す前記ウェブが外周面に巻き付く前記ローラについて、前記ウェブの幅方向両端側を挟む態様で前記ローラの幅方向両端側の径外方向に突設された狭持部と、前記狭持部に挟まれていない前記ウェブの部位が、前記狭持部の外周に前記ウェブが巻き付く方向で前記狭持部に挟まれているポイントから次に経路が変わるポイントに至り直線的な最短経路となる直線最短経路を辿ろうとする場合、前記狭持部間での前記ローラの外周面と前記直線最短経路を辿る前記ウェブの部位との間に接触を防ぐ間隙を生じさせる態様で、前記狭持部に挟まれる前記ウェブの厚さを超えて前記狭持部の外径よりも外径が細く形成された細径部とを備え、前記狭持部の幅方向内側に隣接して配設され、前記狭持部の外径よりも外径が細く、かつ前記細径部の外径よりも外径が太く形成されて、各前記狭持部の位置から幅方向に流れる前記ウェブとの接触が許容された中陸部をさらに備えたことを特徴とする。
このニッピング装置は、送り出すウェブが外周面に巻き付くローラについて、細径部により、狭持部間でのローラの外周面と、直線最短経路を辿るウェブの部位との間に間隙を生じさせ、その接触を防ぐ。このため、ウェブに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブへのしわの発生を防ぐことができる。そして、ウェブへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。
このニッピング装置は、中陸部により、幅方向に流れたウェブと接触し支えて細径部へのウェブの落ち込みを防ぐので、ウェブが幅方向に流れた場合でも、ウェブへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブの送り出しを継続できる。
また、本発明のニッピング装置では、前記狭持部の外周面と前記中陸部の外周面とを連ねる傾斜面をさらに備えたことを特徴とする。
このニッピング装置は、傾斜面により、各外周面が連なっているため、狭持部の位置から幅方向に流れ、中陸部で支えられたウェブを狭持部に戻すことができる。
また、本発明のニッピング装置では、前記細径部は、前記狭持部の外周面に連なる湾曲面を含むことを特徴とする。
このニッピング装置は、湾曲面により、幅方向に流れたウェブと接触し支えることで、細径部へのウェブの落ち込みを防ぎ、しかも、各外周面が連なっているため、支えたウェブを狭持部に戻すことができるので、ウェブが幅方向に流れた場合でも、ウェブへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブの送り出しを継続できる。
上記の目的を達成するために、本発明の折機では、重ねられたウェブを挟んで送り出す対のローラと、送り出された前記ウェブを横裁断する鋸胴と、横裁断された前記ウェブを横折りするための折胴とを有して折丁を形成する折機において、送り出す前記ウェブが外周面に巻き付く前記ローラについて、上記のいずれか一つに記載のニッピング装置を備えたことを特徴とする。
この折機は、送り出すウェブが外周面に巻き付くローラについて、細径部により、狭持部間でのローラの外周面と、直線最短経路を辿るウェブの部位との間に間隙を生じさせ、その接触を防ぐ。このため、ウェブに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブへのしわの発生を防ぐことができる。そして、ウェブへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。すなわち、上記ニッピング装置を折機に適用すれば、ウェブの走行が安定化することにより折精度も向上する。なお、この折機は、折胴と共にウェブを横折する一対の折込ローラ、またはくわえ胴を備えることもできる。
また、中陸部により、幅方向に流れたウェブと接触し支えて細径部へのウェブの落ち込みを防ぐので、ウェブが幅方向に流れた場合でも、ウェブへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブの送り出しを継続できる。また、傾斜面により、各外周面が連なっているため、狭持部の位置から幅方向に流れ、中陸部で支えられたウェブを狭持部に戻すことができる。また、湾曲面により、幅方向に流れたウェブと接触し支えることで、細径部へのウェブの落ち込みを防ぎ、しかも、各外周面が連なっているため、支えたウェブを狭持部に戻すことができるので、ウェブが幅方向に流れた場合でも、ウェブへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブの送り出しを継続できる。すなわち、上記ニッピング装置を折機に適用すれば、生産性を向上できる。
上記の目的を達成するために、本発明の輪転印刷機では、重ねられたウェブを挟んで送り出す対のローラと、送り出された前記ウェブを横裁断する鋸胴と、横裁断された前記ウェブを横折りするための折胴とを有して折丁を形成する折機を備えた輪転印刷機において、前記折機は、送り出す前記ウェブが外周面に巻き付く前記ローラについて、上記のいずれか一つに記載のニッピング装置を備えたことを特徴とする。
この輪転印刷機は、送り出すウェブが外周面に巻き付くローラについて、細径部により、狭持部間でのローラの外周面と、直線最短経路を辿るウェブの部位との間に間隙を生じさせ、その接触を防ぐ。このため、ウェブに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブへのしわの発生を防ぐことができる。そして、ウェブへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。すなわち、上記ニッピング装置を輪転印刷機の折機に適用すれば、ウェブの走行が安定化することにより折精度の高く、かつしわや汚れのない高品質の印刷物が得られる。なお、この輪転印刷機は、折胴と共にウェブを横折する一対の折込ローラ、またはくわえ胴を備えることもできる。
また、中陸部により、幅方向に流れたウェブと接触し支えて細径部へのウェブの落ち込みを防ぐので、ウェブが幅方向に流れた場合でも、ウェブへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブの送り出しを継続できる。また、傾斜面により、各外周面が連なっているため、狭持部の位置から幅方向に流れ、中陸部で支えられたウェブを狭持部に戻すことができる。また、湾曲面により、幅方向に流れたウェブと接触し支えることで、細径部へのウェブの落ち込みを防ぎ、しかも、各外周面が連なっているため、支えたウェブを狭持部に戻すことができるので、ウェブが幅方向に流れた場合でも、ウェブへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブの送り出しを継続できる。すなわち、上記ニッピング装置を輪転印刷機の折機に適用すれば、生産性を向上できる。
上記の目的を達成するために、本発明のウェブ搬送方法では、重ねられたウェブの幅方向両端側を対のローラにより挟んで送り出すウェブ搬送方法において、前記ローラに挟まれたポイントを起点にして前記ローラの外周に前記ウェブが巻き付き、前記ローラに挟まれていない前記ウェブの部位が、前記ローラの外周に前記ウェブが巻き付く方向で前記ウェブの幅方向両端側が前記ローラの各狭持部に挟まれているポイントから次に経路が変わるポイントに至り直線的な最短経路となる直線最短経路を辿るとき、各前記狭持部間で前記狭持部の外径よりも外径が細く形成された細径部により前記ウェブが巻き付く側の前記ローラの外周面と前記直線最短経路を辿る前記ウェブの部位との間に接触を防ぐ間隙を生じさせつつ前記ウェブを送り、かつ前記狭持部の位置からウェブWが幅方向に流れた場合に、前記挟持部の幅方向内側に隣接する位置で前記狭持部の外径よりも外径が細く前記細径部の外径よりも外径が太く形成された中陸部により前記ウェブを支えて前記細径部への前記ウェブの落ち込みを防ぐことを特徴とする。
このウェブ搬送方法は、ローラの外周面にウェブが巻き付いて、ローラに挟まれていないウェブの部位が直線最短経路を辿るとき、ローラの外周面と、直線最短経路を辿るウェブの部位との間に間隙を生じさせ、相互の接触を防ぐ。このため、ウェブに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブへのしわの発生を防ぐことができる。そして、ウェブへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。
本発明のニッピング装置によれば、細径部により、狭持部間でのローラの外周面と、狭持部の外周面への巻き付きによって直線最短経路を辿るウェブの部位との間に間隙を生じさせ、その接触を防ぐため、ウェブに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブへのしわの発生を防ぐことができる。そして、ウェブへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。また、本発明の折機によれば、上記ニッピング装置を適用したことで、ウェブの走行が安定化して折精度も向上する。また、本発明の輪転印刷機によれば、上記ニッピング装置を適用したことで、ウェブの走行が安定化して折精度の高く、かつしわや汚れのない高品質の印刷物が得られる。また、本発明のウェブ搬送方法によれば、ローラの外周面にウェブが巻き付いて、ローラに挟まれていないウェブの部位が直線最短経路を辿るとき、ローラの外周面と、直線最短経路を辿るウェブの部位との間に間隙を生じさせ、相互の接触を防ぐため、ウェブに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブへのしわの発生を防ぐことができる。そして、ウェブへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるニッピング装置、折機、輪転印刷機およびウェブ搬送方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施の形態にかかる輪転印刷機の概略構成図、図2は、本発明の実施の形態にかかる折機の概略構成図、図3は、本発明の実施の形態にかかるニッピング装置の概略平面図、図4は、本発明の実施の形態にかかるニッピング装置の概略側面図、図5〜図7は、本発明の実施の形態にかかる他のニッピング装置の概略平面図である。
まず、本の実施の形態にかかる輪転印刷機10は、例えば、新聞用オフセット輪転印刷機であって、図1に示すように、主に、複数(本実施の形態では5台)の給紙ユニットR1〜R5を有する給紙装置Rと、複数(本実施の形態では5台)の印刷ユニットU1〜U5を有する印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、複数(本実施の形態では2台)の折ユニットF1,F2を有する折機Fとから構成されている。
給紙装置Rの各給紙ユニットR1〜R5には、それぞれウェブWがロール状に巻かれた3つのウェブ巻取紙Pをそれぞれ保持する保持アーム11が設けられ、この保持アーム11を回転させることで、保持したウェブ巻取紙Pを移動させて給紙位置に臨ませることができる。また、この各給紙ユニットR1〜R5には、図示しない紙継装置が設けられており、給紙位置で繰り出されているウェブ巻取紙Pが残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にあるウェブ巻取紙Pに対して、待機位置にあるウェブ巻取紙Pを紙継することができる。
印刷装置Uの各印刷ユニットU1〜U5において、印刷ユニットU1,U5は、両面4色印刷を行う多色刷印刷ユニットであり、印刷ユニットU2〜U4は、両面2色印刷を行う2色刷印刷ユニットとなっている。すなわち、印刷ユニットU1,U5は、それぞれ両面印刷を行うように対向配置された1対のブランケット胴21が、4色印刷を行うようにウェブWの搬送方向に4組配置されている。印刷ユニットU2〜U4は、それぞれ両面印刷を行うように対向配置された1対のブランケット胴21が、2色印刷を行うようにウェブWの搬送方向に2組配置されている。また、印刷ユニットU1〜U5には、各ブランケット胴21に対向配置された版胴22、および図には明示しないが版胴22に取り付けられた刷版にインキを供給するインキ供給機構が設けられている。
また、印刷ユニットU1〜U5にて、版胴22には、ウェブWに対し、4頁の印刷を同時に行うように、図1の紙面に直交する方向に沿って4頁の刷版が取り付けられる。そして、インキ供給機構は、1つの版胴22の4頁の刷版にそれぞれインキを供給するように構成されている。また、ブランケット胴21は、1つの版胴22の4頁の刷版に供給されたインキが転写されるように構成されている。
また、各給紙ユニットR1〜R5と各印刷ユニットU1〜U5との間には、複数のインフィード装置In1〜In5が設けられている。そして、これら各印刷ユニットU1〜U5および各インフィード装置In1〜In5は、それぞれ独立して駆動される。したがって、各給紙ユニットR1〜R5から各インフィード装置In1〜In5を介して各印刷ユニットU1〜U5にウェブWが供給されると、各印刷ユニットU1〜U5では、各ウェブWに対して所定の印刷を行うことができる。
なお、本実施例では、各印刷ユニットU1〜U5を、多色刷印刷ユニットU1,U5と2色刷印刷ユニットU2〜U4により構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、両面単色印刷を行う両面単色刷ユニット、一面4色または2色印刷を行う多色刷印刷ユニットなど印刷物に応じて適宜各種ユニットを組み合わせて使用すればよい。
ウェブパス装置Dは、ウェブWの搬送方向(ウェブWの長さに沿う縦方向)に沿ってその幅方向(ウェブWの搬送方向に直交する横方向)の中央部で2つに縦断裁する複数のカッタ(図示せず)と、縦断裁されたウェブWの搬送経路を設定する多数のターンバー30と、ターンバー30で搬送経路が設定されたウェブWを掛け回して搬送方向でのウェブ長さを設定することで、後の折機Fにより断裁されたときの天地(搬送方向)の余白寸法を調整するコンペンセータローラ31とが設けられている。したがって、各印刷ユニットU1〜U5で4頁の印刷が施された各ウェブWは、カッタにより2頁分ごとに縦断裁されると共に、ターンバー30により搬送経路が変更され、所定の順番(頁順)に重ねられる。
折機Fは、各折ユニットF1,F2において、ウェブパス装置Dで重ねられたウェブWを導入し、このウェブWを縦折りし、所定の長さで横断裁し、さらに横折りして所望の折丁(例えば新聞などの印刷物)を形成するものである。この折機Fの詳細は後述する。
ここで、輪転印刷機10による一連の印刷動作について説明する。本実施の形態における輪転印刷機10では、各印刷ユニットU1〜U5、各インフィード装置In1〜In5および各折ユニットF1,F2は独立して駆動する。このため、一種類の印刷物を作成することはもちろん、二種類の異なる印刷物を同時に作成できる。つまり、二種類の印刷物のうち、一方の印刷物は、複数の印刷ユニットU1〜U5の中の一部の印刷ユニットを用いて印刷が行われた後、一方の折ユニットF1から排紙され、他方の印刷物は、残りの印刷ユニット用いて印刷が行われた後、他方の折ユニットF2から排紙される。以下、一種類の印刷物を作成する場合について説明する。
各給紙ユニットR1〜R5から各インフィード装置In1〜In5を介して各印刷ユニットU1〜U5にウェブWがそれぞれ供給されると、各印刷ユニットU1〜U5では、各ウェブWに対して4色刷や2色刷が両面に行われる。各印刷ユニットU1〜U5で印刷が施された複数のウェブWは、ウェブパス装置Dにおいて、カッタにより縦断裁されると共に、搬送経路が変更されて所定の順番に重ねられる。そして、ウェブパス装置Dにより重ね合わされたウェブ群が折機F(折ユニットF1または折ユニットF2)に導入されると、重ねられた各ウェブ群は、縦折りされた後、所定の長さで横断裁され、横折りされて所望の折丁(印刷物)が作成され、排紙される。
次に、本実施の形態にかかる折機Fは、上述したように、ウェブパス装置Dから重ねられたウェブWを導入して、このウェブWを縦折りし、所定の長さで横裁断し、さらに横折りして所望の折丁Sを形成し、この折丁Sを排紙する複数(本実施の形態では2台)の折ユニットF1,F2を有している。
図2では、折機Fの折ユニットF1,F2を図1の紙面横方向から視た形態を示している。図2に示すように、各折ユニットF1,F2は、ほぼ対称に配置されている。折ユニットF1,F2には、上方から下方に向けて、ドラグローラ40、三角板41、リードインローラ42、ニッピングローラ(ニッピング装置)43、ガイドローラ44、およびニッピングローラ(ニッピング装置)45が設けられている。そして、ニッピングローラ45の下方には、折胴46と鋸胴47とが対向して設けられている。また、折胴46の下方には、下方に向けて、一対の折込ローラ46a、羽根車48、排紙コンベア49が設けられている。
上述したウェブパス装置Dで所定の順番に重ねられたウェブWは、ドラグローラ40と紙押えローラ(図示せず)とにより三角板41へと搬送される。三角板41へ搬送されたウェブWは、三角板41上に集められつつ、リードインローラ42によって搬送方向に縦折りされ、さらにニッピングローラ43,45によって折胴46および鋸胴47の方へ搬送される。そして、搬送されたウェブWは、鋸胴47により横裁断される。さらに横裁断されたウェブWは、同期回転する折胴46および折込ローラ46aにより横折されて折丁Sが形成される。さらに、形成された折丁Sは、折込ローラ46aと同期回転する羽根車48の各羽根で順次受け取られ、排紙コンベア49上に受け渡される。排紙コンベア49は、図2の左右方向(図1の紙面に直交する方向)に折丁Sを搬送する。
折機Fの折ユニットF1,F2には、上述したように折胴46と一対の折込ローラ46aを有して、同期回転する折胴46および折込ローラ46aにより横裁断されたウェブWを横折りするロータリータイプがある。その他、折機Fの折ユニットF1,F2には、図には明示しないが、折胴に隣接するくわえ胴を有して、鋸胴で横裁断されたウェブWを折胴からくわえ胴に移送しつつ横折りするくわえ胴タイプがある。
なお、本実施の形態にかかる折機Fでは、各折ユニットF1,F2が、最も幅方向寸法が嵩む三角板41を相互に近づけて隣接することで配置域の省スペース化を図ると共に、ニッピングローラ43から下流側の構成を離間させて各折ユニットF1,F2のメンテナンススペースを確保している。
このように、ニッピングローラ43から下流側の構成を離間させると、折ユニットF1のニッピングローラ43の下流側では、ウェブWの経路が操作側に偏り、折ユニットF2のニッピングローラ43の下流側では、ウェブWの経路が駆動側に偏ることになる。このため、折ユニットF1では、図2に示すように、経路が偏った側のローラ43a,45bの周面にウェブWが巻き付くことになる。また、折ユニットF2では、経路が偏った側のローラ43b,45aの周面にウェブWが巻き付くことになる。
また、各折ユニットF1,F2において、ガイドローラ44は、ニッピングローラ43,45の間で、上下に対をなして設けられている。このガイドローラ44は、例えば操作側の折ユニットF1(または駆動側の折ユニットF2)からのみ折丁Sを排出する片出しの場合、この折ユニットF1(または折ユニットF2)の折胴46、鋸胴47、折込ローラ46a、羽根車48または排紙コンベア49が故障などで使用できなくなったとき、ウェブWを駆動側の折ユニットF2(または操作側の折ユニットF1)に転送するためのものである。操作側の折ユニットF1から駆動側の折ユニットF2にウェブWを転送する場合、図2に一転鎖線で示すように、折ユニットF1の上側のガイドローラ44と、折ユニットF2の下側のガイドローラ44とを用いる。一方、駆動側の折ユニットF2から操作側の折ユニットF1にウェブWを転送する場合、図2に一転鎖線で示すように、折ユニットF2の上側のガイドローラ44と、折ユニットF1の下側のガイドローラ44とを用いる。なお、折ユニットF1から折ユニットF2にウェブWを転送する場合(または、折ユニットF2から折ユニットF1にウェブWを転送する場合)、図2に一転鎖線で示すように、下側のガイドローラ44のみ、または上側のガイドローラ44のみを用いてもよい。また、折ユニットF1から折ユニットF2にウェブWを転送する場合(または、折ユニットF2から折ユニットF1にウェブWを転送する場合)、図2に一転鎖線で示すように、ガイドローラ44を用いず、一方の折ユニットF1(F2)のニッピングローラ43から他方の折ユニットF2(F1)のニッピングローラ45に直接ウェブWを転送させてもよい。
このように、ウェブWを転送すると、折ユニットF1のニッピングローラ43の下流側では、ウェブWの経路が駆動側に偏り、折ユニットF2のニッピングローラ43の下流側では、ウェブWの経路が操作側に偏ることになる。このため、折ユニットF1から折ユニットF2にウェブWを転送した場合、図2に示すように、折ユニットF1のローラ43bおよび折ユニットF2のローラ45aの周面にウェブWが巻き付くことになる。また、折ユニットF2から折ユニットF1にウェブWを転送した場合では、折ユニットF2のローラ43aおよび折ユニットF1のローラ45bの周面にウェブWが巻き付くことになる。
次に、本実施の形態にかかるニッピングローラ(ニッピング装置)43は、三角板41上に集められつつリードインローラ42によって搬送方向に縦折りされたウェブWを、折胴46および鋸胴47の方へ搬送するためのもので、図示しない駆動機構により回転し、ウェブWを挟んで送り出す対のローラ43a,43bからなる。
図3では、ニッピングローラ43を図2の紙面上方向から視た形態を示し、図4では、折ユニットF1のニッピングローラ43を図2と同じ方向から視た形態を示している。このニッピングローラ43のローラ43a,43bには、狭持部51と細径部52とが設けられている。
狭持部51は、各ローラ43a,43bの幅方向(ウェブWの搬送方向に直交する横方向であって、ローラの軸に沿う方向)の両端側で、各ローラ43a,43bの外周に沿いつつ径外方向に突設されている。この狭持部51は、各ローラ43a,43b間でウェブWの幅方向の両端側を挟むためのものである。
細径部52は、狭持部51の間に設けられ、狭持部51の外径よりも外径が細く形成されている。具体的に、細径部52は、各ローラ43a,43b間で狭持部51に挟まれるウェブWの厚さTを超えて、狭持部51の外径よりも外径が細く形成されている。この細径部52は、図4に示すように、狭持部51間のローラ43a,43bの外周面と、図4に一点鎖線で示す直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせるためのものである。
図4に示すように、狭持部51の位置にあるウェブWは、図4に実線で示すように、経路が偏った分、各ローラ43a,43bの狭持部51に挟まれたポイントαを起点として、狭持部51の外周面のポイントβに至る巻付角θの範囲で狭持部51の外周面に巻き付く。一方、細径部52の位置にあるウェブWは、狭持部51に挟まれておらずフリーな状態であることから、特にウェブWの中央部分が、狭持部51の外周にウェブWが巻き付く方向であって、狭持部51に挟まれているポイントαから、次に経路が変わるポイント(例えば、ニッピングローラ45における各ローラ45a,45bの狭持部51で挟まれるポイントや、ガイドローラ44に掛かるポイント)に至り、直線的な最短経路を辿ろうとする。この経路が直線最短経路である。そして、細径部52は、直線最短経路を辿るウェブWの部位と、狭持部51間のローラ43a,43bの外周面との間に間隙Hが生じるように、その外径(図4に二点差線で示す)が狭持部51の外径よりも細く形成されている。
このように本実施の形態にかかるニッピングローラ(ニッピング装置)43によれば、送り出すウェブWが外周面に巻き付くローラ43a,43bについて、狭持部51にウェブWが挟まれたポイントαを起点にして狭持部51の外周にウェブWが巻き付いて、狭持部51に挟まれていないウェブWの部位が直線最短経路を辿ろうとする場合、細径部52により、狭持部51間でのローラ43a,43bの外周面と、直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせ、その接触を防いでいる。このため、ウェブWに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブWへのしわの発生を防ぐことが可能になる。そして、ウェブWへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。すなわち、間隙Hは、狭持部51間でのローラ43a,43bの外周面と、直線最短経路を辿るウェブWの部位との接触を防ぐものである。
なお、上記効果は、ローラ43a,43bの狭持部51に、袋側とペラ側とが挟まれるブロード判についてはもちろん、タブロイド判についても得ることができる。なお、ブロード判には、ウェブWを単数として、この単数のウェブWを縦折にしたものと、ウェブWを複数として、この複数のウェブWを縦折にしたものとがある。また、タブロイド判には、ウェブWを単数として、この単数のウェブWの縦折方向に切り目をいれたものと、ウェブWを複数として、この複数のウェブWの縦折方向に切り目をいれたものとがある。特に、タブロイド判では、ウェブWの幅方向の両端側がペラ側となり、両ペラ側がローラ43a,43bの狭持部51に挟まれることから、ウェブWを挟んだポイントαからウェブWが巻き付くことで、巻き付き内側で重なるウェブWと、巻き付き外側で重なるウェブWとで送りにずれが生じやすく、ウェブWの幅の中央部分に生じる不要な張力によりウェブWにしわができやすい。したがって、本実施の形態にかかるニッピングローラ(ニッピング装置)43は、ウェブWに不要な張力を生じさせる事態を回避するので、ブロード判およびタブロイド判を作成する際に効果があり、特にタブロイド判を作成する際に効果的である。
ところで、本実施の形態にかかるニッピングローラ(ニッピング装置)43は、図5に示すように、図3に示すローラ43a,43bに対し、中陸部53がさらに設けられている。中陸部53は、狭持部51の幅方向内側に隣接して配設され、狭持部51の外径よりも外径が細く、かつ細径部52の外径よりも外径が太く形成されている。この中陸部53は、狭持部51の位置からウェブWが幅方向に流れた場合に、このウェブWと接触し支えることで、細径部52へのウェブWの落ち込みを防ぐ。このように作用するために、中陸部53の外周面と狭持部51の外周面との差は、0.3mm〜0.5mmの範囲が好ましい。
かかる構成によれば、中陸部53を設けたことで、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。
また、本実施の形態にかかるニッピングローラ(ニッピング装置)43は、図6に示すように、図5に示すローラ43a,43bに対し、狭持部51の外周面と中陸部53の外周面とを連ねる傾斜面54がさらに設けられている。かかる構成によれば、傾斜面54により、各外周面が連なっているため、狭持部51の位置から幅方向に流れ、中陸部53で支えられたウェブWを狭持部51に戻す。この結果、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。
また、本実施の形態にかかるニッピングローラ(ニッピング装置)43は、図7に示すように、図3に示すローラ43a,43bに対し、細径部52が、狭持部51の外周面と連なる湾曲面55を含んでいる。すなわち、図7に示すように細径部52が湾曲面55で形成されている。または、図には明示しないが、狭持部51の外周面と細径部52の外周面との間に湾曲面55で形成されていてもよい。かかる構成によれば、湾曲面55により、狭持部51の位置からウェブWが幅方向に流れた場合、このウェブWと接触し支えることで、細径部52へのウェブWの落ち込みを防ぐ。しかも、各外周面が連なっているため、支えたウェブWを狭持部51に戻す。この結果、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。
また、本実施の形態にかかる折機Fでは、重ねられたウェブWを挟んで送り出す対のローラ43a,43bと、送り出されたウェブWを横裁断する鋸胴47と、横裁断されたウェブWを横折りする折胴46とにより折丁を形成する折機Fにおいて、送り出すウェブWが外周面に巻き付くローラ43a,43bについて、ウェブWの幅方向両端側を挟む態様で各ローラ43a,43bの幅方向両端側の径外方向に突設された狭持部51と、狭持部51にウェブWが挟まれたポイントαを起点にして狭持部51の外周にウェブWが巻き付いて、狭持部51に挟まれていないウェブWの部位が直線最短経路を辿ろうとする場合、狭持部51間でのローラ43a,43bの外周面と直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせる態様で狭持部51の外径よりも外径が細く形成された細径部52とを備えている。
かかる折機Fによれば、送り出すウェブWが外周面に巻き付くローラ43a,43bについて、細径部52により、狭持部51間でのローラ43a,43bの外周面と、直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせ、その接触を防いでいる。このため、ウェブWに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブWへのしわの発生を防ぐことが可能になる。そして、ウェブWへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。すなわち、上記ニッピング装置を折機に適用すれば、ウェブWの走行が安定化することにより折精度も向上する。
なお、上記折機1の効果は、ローラ43a,43bの狭持部51に、袋側とペラ側とが挟まれるブロード判についてはもちろん、タブロイド判についても得ることができる。
また、本実施の形態にかかる折機Fは、図5に示すように、図3に示すローラ43a,43bに対し、中陸部53がさらに設けられていてもよい。中陸部53は、狭持部51の幅方向内側に隣接して配設され、狭持部51の外径よりも外径が細く、かつ細径部52の外径よりも外径が太く形成されている。この中陸部53は、狭持部51の位置からウェブWが幅方向に流れた場合に、このウェブWと接触し支えることで、細径部52へのウェブWの落ち込みを防ぐ。このように作用するために、中陸部53の外周面と狭持部51の外周面との差は、0.3mm〜0.5mmの範囲が好ましい。かかる構成によれば、中陸部53を設けたことで、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。この結果、生産性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態にかかる折機Fは、図6に示すように、図5に示すローラ43a,43bに対し、狭持部51の外周面と中陸部53の外周面とを連ねる傾斜面54がさらに設けられていてもよい。かかる構成によれば、傾斜面54により、各外周面が連なっているため、狭持部51の位置から幅方向に流れ、中陸部53で支えられたウェブWを狭持部51に戻す。このため、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。この結果、生産性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態にかかる折機Fは、図7に示すように、図3に示すローラ43a,43bに対し、細径部52が、狭持部51の外周面と連なる湾曲面55を含んでいる。すなわち、図7に示すように細径部52が湾曲面55で形成されている。または、図には明示しないが、狭持部51の外周面と細径部52の外周面との間に湾曲面55で形成されていてもよい。かかる構成によれば、湾曲面55により、狭持部51の位置からウェブWが幅方向に流れた場合、このウェブWと接触し支えることで、細径部52へのウェブWの落ち込みを防ぐ。しかも、各外周面が連なっているため、支えたウェブWを狭持部51に戻す。このため、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。この結果、生産性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態にかかる輪転印刷機10では、重ねられたウェブWを挟んで送り出す対のローラ43a,43bと、送り出されたウェブWを横裁断する鋸胴47と、横裁断されたウェブWを横折りする折胴46とにより折丁を形成する折機Fを備え、この折機Fにて送り出すウェブWが外周面に巻き付くローラ43a,43bについて、狭持部51にウェブWが挟まれたポイントαを起点にして狭持部51の外周にウェブWが巻き付き、狭持部51に挟まれていないウェブWの部位が直線最短経路を辿ろうとする場合、ウェブWの幅方向両端側を挟む態様で各ローラ43a,43bの幅方向両端側の径外方向に突設された狭持部51と、狭持部51間でのローラ43a,43bの外周面と直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせる態様で狭持部51の外径よりも外径が細く形成された細径部52とを備えている。
かかる輪転印刷機10によれば、送り出すウェブWが外周面に巻き付くローラ43a,43bについて、細径部52により、狭持部51間でのローラ43a,43bの外周面と、直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせ、その接触を防いでいる。このため、ウェブWに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブWへのしわの発生を防ぐことが可能になる。そして、ウェブWへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。この結果、すなわち、上記ニッピング装置を輪転印刷機の折機に適用すれば、ウェブWの走行が安定化することにより折精度の高く、かつしわや汚れのない高品質の印刷物が得られる。
なお、上記輪転印刷機10の効果は、ローラ43a,43bの狭持部51に、袋側とペラ側とが挟まれるブロード判についてはもちろん、タブロイド判についても得ることができる。
また、本実施の形態にかかる輪転印刷機10は、図5に示すように、図3に示すローラ43a,43bに対し、中陸部53がさらに設けられていてもよい。中陸部53は、狭持部51の幅方向内側に隣接して配設され、狭持部51の外径よりも外径が細く、かつ細径部52の外径よりも外径が太く形成されている。この中陸部53は、狭持部51の位置からウェブWが幅方向に流れた場合に、このウェブWと接触し支えることで、細径部52へのウェブWの落ち込みを防ぐ。このように作用するために、中陸部53の外周面と狭持部51の外周面との差は、0.3mm〜0.5mmの範囲が好ましい。かかる構成によれば、中陸部53を設けたことで、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。この結果、生産性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態にかかる輪転印刷機10は、図6に示すように、図5に示すローラ43a,43bに対し、狭持部51の外周面と中陸部53の外周面とを連ねる傾斜面54がさらに設けられていてもよい。かかる構成によれば、傾斜面54により、各外周面が連なっているため、狭持部51の位置から幅方向に流れ、中陸部53で支えられたウェブWを狭持部51に戻す。このため、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。この結果、生産性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態にかかる輪転印刷機10は、図7に示すように、図3に示すローラ43a,43bに対し、細径部52が、狭持部51の外周面と連なる湾曲面55を含んでいる。すなわち、図7に示すように細径部52が湾曲面55で形成されている。または、図には明示しないが、狭持部51の外周面と細径部52の外周面との間に湾曲面55で形成されていてもよい。かかる構成によれば、湾曲面55により、狭持部51の位置からウェブWが幅方向に流れた場合、このウェブWと接触し支えることで、細径部52へのウェブWの落ち込みを防ぐ。しかも、各外周面が連なっているため、支えたウェブWを狭持部51に戻す。このため、ウェブWが幅方向に流れた場合でも、ウェブWへのしわの発生を防ぎつつ、ウェブWの送り出しを継続することが可能になる。この結果、生産性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態にかかるウェブ搬送方法では、重ねられたウェブWの幅方向両端側を対のローラ43a,43bにより挟んで送り出すウェブ搬送方法において、ローラ43a,43bの狭持部51に挟まれたポイントαを起点にしてローラ43a(43b)の外周にウェブWが巻き付き、ローラ43a,43bの狭持部51に挟まれていないウェブWの部位が直線最短経路を辿るとき、ウェブWが巻き付く側のローラ43a(43b)の外周面と直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせつつウェブWを送る。
このウェブ搬送方法は、ローラの外周面にウェブが巻き付いて、ローラに挟まれていないウェブの部位が直線最短経路を辿るとき、ローラ43a(43b)の外周面と、直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせ、相互の接触を防ぐ。このため、ウェブWに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブWへのしわの発生を防ぐことができる。そして、ウェブWへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。
ところで、上述した実施の形態では、折機Fが折ユニットF1,F2でウェブWを転送する構成で、各ローラ43a,43b双方の外周面にウェブWが巻き付くことがあるから、各ローラ43a,43bに狭持部51および細径部52を設けた場合を説明したが、ウェブWが巻き付くローラが一方のみである場合、その一方のローラに狭持部51および細径部52を設ければよい。
また、上述した実施の形態では、ウェブWを挟んで送り出す下流側でウェブWの経路が変化し、挟まれたポイントαを起点にした下流側の外周にウェブWが巻き付くローラ43a,43bについて、狭持部51および細径部52を設けた場合を説明したが、この限りではない。その他、ウェブWを挟んで送り出す上流側でウェブWの経路が変化し、挟まれたポイントを起点にした上流側の外周にウェブWが巻き付くローラ45a,45bについても、狭持部51および細径部52を設けてもよい。すなわち、ニッピングローラ45(ニッピング装置)45によれば、送り出すウェブWが外周面に巻き付くローラ45a,45bについて、狭持部51にウェブWが挟まれたポイントを起点にして狭持部51の外周にウェブWが巻き付き、狭持部51に挟まれていないウェブWの部位が直線最短経路を辿ろうとする場合、細径部52により、狭持部51間でのローラ45a,45bの外周面と、直線最短経路を辿るウェブWの部位との間に間隙Hを生じさせ、その接触を防いでいる。このため、ウェブWに不要な張力を生じさせる事態を回避し、ウェブWへのしわの発生を防ぐことが可能になる。そして、ウェブWへのしわの発生を防ぐことで、しわの部分に汚れが付いたり、走行が不安定になったりすることを防止できる。