JP2004083871A - インキローラーの収縮を抑制するインキ - Google Patents
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Abstract
【課題】作業環境や大気汚染などの環境負荷が少なく、版面汚れや印刷適性不良が発生しないインキローラーの収縮を抑制するインキを提供すること。
【解決手段】植物油および/または非芳香族系溶剤(A成分)と、脂肪族二塩基酸エステル(a成分)および/または(トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステル)(b成分)を含有するインキにおいて、a成分が、インキ全体の2〜15質量%、およびb成分がインキ全体の0.5〜5.0質量%未満であることを特徴とするインキローラーの収縮を抑制するインキ。
【選択図】 なし
【解決手段】植物油および/または非芳香族系溶剤(A成分)と、脂肪族二塩基酸エステル(a成分)および/または(トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステル)(b成分)を含有するインキにおいて、a成分が、インキ全体の2〜15質量%、およびb成分がインキ全体の0.5〜5.0質量%未満であることを特徴とするインキローラーの収縮を抑制するインキ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、版面の汚れや印刷不良が発生せず、印刷時のインキローラーのニップ調整などの作業負荷を低減した、インキローラーの収縮を抑制するインキに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷用インキは、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂などの合成樹脂と、アマニ油、桐油、大豆油などの植物油、鉱物油、合成油、必要に応じてインキの乾燥被膜に可撓性や柔軟性を付与するために可塑剤やワックスコンパンドなどの添加剤と、顔料や染料の着色剤および溶剤からなっており、これらのインキに使用される溶剤は、上記成分の溶解分散性や印刷適性から主に芳香族系溶剤が使用されていた。
【0003】
しかしながら、近年、上記の芳香族系溶剤を主体としたインキは、その製造や印刷時、および印刷物において残留溶剤などの揮発蒸気の臭気が強いという問題がある。従って、作業環境や大気汚染などの環境安全性の点から、揮発蒸気の臭気が極めて低く、また、作業環境や大気汚染などの環境負荷が少ない非芳香族系溶剤を主体としたインキが要望されており、また、インキのワニスは、植物油や非芳香族系溶剤に溶解する樹脂系を原料としたワニスに変わりつつある。
【0004】
また、上記のインキを使用した平版印刷では、印刷機上のインキ壺中のインキを、金属芯に被覆された天然または合成ゴム系材料からなるインキローラーを介して版面に着肉供給し、着肉された版面のインキが一旦ブランケットに転写され、印刷用紙をニップされた該ブランケットと圧胴の間を通して印刷する。上記のインキローラーを介して版面へのインキの供給は、インキ壺からインキが順次インキ出しローラー、渡しローラーへと供給され、多数のならしロール、練りロールによって均一にされ、さらに着けローラーによって版面に均一に着肉される。
【0005】
上記のインキローラーは、前記の環境上の負荷が伴う芳香族系溶剤を主体としたインキを使用して印刷した場合には、印刷時において、インキローラーの質量および体積の減量変化が比較的少ない。このために、印刷時に、最適な印刷適性を得るためのインキローラーのニップ圧の調整を頻繁に行う必要がない。
【0006】
しかしながら、前記の環境上の負荷が少ない植物油や非芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合には、インキローラーからゴム系材料の軟化性および可塑性付与成分などがインキ中に抽出されると考えられ、インキローラーの質量および体積の減量変化が極めて大きくなり、それに伴いインキローラーの収縮および硬化が発生する。
【0007】
このために、インキローラーの表面状態が一定でなくなり、インキローラーの表面に均一なインキ量が供給されず、版面やブランケットへのインキの転移性が低下し、インキ濃度のむらや濃度変化あるいはミストが発生して安定した良好な印刷適性が得られない。また、インキローラーの収縮に伴い、ニップ圧が変化するために、印刷適性を良好に維持するために、印刷時にインキローラー間のニップ圧調整を頻繁に行う必要があり、印刷作業性が低下する。
【0008】
上述のように、従来の芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合に匹敵あるいはそれ以上のインキローラーの質量および体積変化に伴う収縮や硬度上昇が発生せず、また、インキローラーの収縮に伴うニップ圧調整作業の回数を低減ができ、安定した印刷ができる植物油や非芳香族系溶剤を主体とし、環境上の負荷が少なく、インキローラーの収縮を抑制するインキの提供が望まれている。
【0009】
上記のインキローラーの収縮を防止する方法として、インキローラーのゴム材料やインキ組成の調整が検討されているが、ゴム材料の調整では、インキや印刷物に合わせたゴム材料の選択など作業が複雑となり、また、インキ組成の調整では、とくに、平版印刷インキでは、版全面に湿し水を供給し、親水性の非画線部に湿し水の薄膜を形成後、油性の平版インキを供給し、非画線部へのインキの付着を湿し水の薄膜で防ぎ、親油性の画線部にインキを選択的に付着して印刷しているが、この親水性の非画線部にインキが付着しやすくなり、版面汚れに伴う印刷汚れが発生しやすくなるという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、作業環境や大気汚染などの環境負荷が少なく、版面汚れや印刷適性不良が発生しないインキローラーの収縮を抑制するインキを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、植物油および/または非芳香族系溶剤(A成分)と、脂肪族二塩基酸エステル(a成分)および/または(トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステル)(b成分)を含有するインキにおいて、a成分が、インキ全体の2〜15質量%、およびb成分がインキ全体の0.5〜5.0質量%未満であることを特徴とするインキローラーの収縮を抑制するインキを提供する。
【0012】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記のA成分と、a成分および/またはb成分を含有したインキが、従来の植物油および/または非芳香族系溶剤を使用したインキよりも、インキローラーに使用されているゴム系材料中の軟化性および可塑性付与成分の抽出を抑え、従来の芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合に匹敵あるいはそれ以上のインキローラーの収縮を抑制する効果を有し、かつ、版面の汚れや印刷適性不良が発生せず、印刷時のインキローラーのニップ調整などの作業回数を低減し、安定した印刷ができるインキであることを見いだした。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明を主として特徴づけるインキは、上記のA成分と、a成分および/またはb成分とを含有するインキにおいて、a成分がインキ全体の2〜15質量%、およびb成分がインキ全体の0.5〜5.0質量%未満であることを特徴とする。
【0014】
上記のA成分の1種である植物油は、例えば、大豆油、大豆白絞油、菜種油、コーン油、アマニ油、桐油、サフラワー油、シナキリ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油などの半乾性油、乾性油、不乾性油および脱水ヒマシ油、熱重合油、再生油、およびそれらの混合物が挙げられ、大豆白絞油が特に好ましい。
【0015】
また、上記のA成分の1種である非芳香族系溶剤としては、作業環境や大気汚染などの環境安全性の面から芳香族含有量が1.0質量%未満の溶剤を使用することが好ましい。上記の非芳香族系溶剤としては、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、その他石油系非芳香族系溶剤などが挙げられる。これらの非芳香族系溶剤は、日石三菱(株)から[AFソルベント4号]、[AFソルベント5号]、[AFソルベント6号]、[AFソルベント7号]などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0016】
上記のA成分における植物油と非芳香族系溶剤とは、それぞれ単独でも使用できるが、好ましくは両者を併用する。両者を併用する場合の両者の配合割合は、植物油が非芳香族系溶剤より著しく多い場合には、インキローラーの体積および質量の減量変化が大きくなり、それに伴いインキローラーの収縮率がさらに大きくなる。一方、植物油が非芳香族系溶剤より著しく少ない場合には、わずかにインキローラーの収縮率が低下し、インキワニス中の樹脂の溶解性と転移不良などの問題が生じる。好ましい植物油と非芳香族系溶剤との配合は、植物油/非芳香族系溶剤=40/100〜600/100(質量比)である。
【0017】
本発明で使用するインキを主として特徴づけるa成分および/またはb成分は、植物油や非芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合における、インキローラーの質量および体積減量を誘因すると考えられるインキローラー中の軟化性および可塑性付与成分の抽出を抑え、インキローラーの収縮抑制剤として効果を発揮する。また、a成分および/またはb成分は、印刷時における版面汚れや印刷適性不良が発生せず、印刷時のインキローラーのニップ調整などの作業負荷を低減させる。
【0018】
上記のa成分は、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤であり、または、b成分は、トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステルである。上記のa成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、グルタル酸などの脂肪族二塩基酸と、アルコール類からなる脂肪族二塩基酸エステルが挙げられる。
【0019】
上記のa成分としては、例えば、ジイソブチルアジペート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジメチルセバケート、ビス(ブチルジグリコール)アジペートおよびジエチルサクシネートなどが挙げられる。
【0020】
上記のa成分として、ジイソブチルアジペート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケートおよびビス(ブチルジグリコール)アジペートが好ましく使用される。これらの脂肪族二塩基酸エステルは、大八化学(株)から「DIBA」、「BXA」、「DBS」、および「DOS」などの商品名にて入手して本発明で使用することができる。
【0021】
また、前記のb成分は、トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステルであり、上記のトール油脂肪酸エステルとしては、例えば、トール油脂肪酸のメチル、ブチル、2−エチルヘキシルおよびジエチレングリコールなどのアルキルエステルが挙げられ、トール油脂肪酸イソブチルエステルが特に好ましい。
【0022】
また、上記の植物油脂肪酸エステルは、大豆油、桐油、アマニ油、エノ油、菜種油、ヤシ油、ヒマシ油、パーム油、再生植物油などの植物油系油脂類から誘導される植物油脂肪酸エステルであり、例えば、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸およびパーム油脂肪酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルおよびオクチルなどのエステルなど、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜4のアルコールとのエステルである植物油脂肪酸のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステルおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
前記のa成分およびb成分は、単独または混合して使用することができる。得られるインキ中のa成分の配合割合は、インキ全体の2〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。a成分の配合割合が、上記上限を超える場合には、インキローラーが膨潤および軟化しやすくなり、一方、配合割合が上記下限未満の場合には、インキローラーの収縮率が上昇し、インキローラーの収縮が抑制できない。
【0024】
また、得られるインキ中のb成分の配合割合は、インキ全体の0.5〜5.0質量%未満、好ましくは2.0〜4.8質量%である。b成分の配合割合が、上記上限を超える場合には、インキローラーが膨潤および軟化しやすくなり、また、特に、平版印刷では、版全面に湿し水を供給し、親水性の非画線部に湿し水の薄膜を形成後、油性の平版インキを供給し、非画線部へのインキの付着を湿し水の薄膜で防ぎ、親油性の画線部にインキを選択的に付着して印刷しているが、この親水性の非画線部にb成分が付着しやすくなり、このために、その部分にインキが付着して、版面汚れが発生して、印刷物に汚れが生じやすくなる。一方、b成分の配合割合が、上記下限未満の場合には、インキローラーの収縮率が上昇し、インキローラーの収縮が抑制できない。
上記a成分とb成分とを併用する場合のインキ中の配合割合は、a+b=5〜15質量%が好ましく、また、a/b(質量比)=60/100〜500/100が好ましい。
【0025】
上記のa成分および/またはb成分の前記A成分に対する配合割合は、(a成分および/またはb成分)/A成分=4/100〜60/100(質量比)である。(a成分および/またはb成分)/A成分の配合割合が、上記上限を超える場合には、インキローラーが膨潤および軟化しやすくなり、また、印刷時のロール間のニップ圧の変形が起こりやすく、印刷適性を良好に維持するために、ニップ圧の調整を頻繁に行う必要があり、印刷作業性が低下する。一方、上記の配合割合が、上記下限未満の場合には、インキローラーが収縮しやすく、所望するインキローラーの収縮抑制効果が得られない。
【0026】
また、本発明では、必要に応じて、さらに、a成分以外のフタル酸系を除く可塑剤を本発明の目的を妨げない範囲において添加することができる。一般に、印刷インキ用可塑剤は、インキの乾燥被膜が、その樹脂分によって硬かったり、もろかったり、また、ひびが入りやすい場合に、乾燥被膜に柔軟性、可撓性および接着性を向上させる目的で添加されているが、フタル酸系可塑剤は、内分泌撹乱を有すると疑われる物質としてリストアップされた物質で環境上問題があり、好ましくない。上記の可塑剤としては、例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニルクレジル、水添加ロジンのメチルエステル、塩化パラフィン、エポキシ系およびポリエステル系などの可塑剤が挙げられる。上記の可塑剤を使用する場合には、その添加量は、a成分および/またはb成分の0.5〜1.0質量%である。
【0027】
前記のインキローラーとは、通常の新聞印刷用のオフセット輪転印刷機、凸版印刷機などの印刷機上のインキ壺から版面およびブランケットにインキを着肉するまでに使用されるインキローラーおよびブランケットで、印刷作業中に絶えずインキと接触しているインキローラーであり、例えば、インキ出しローラー、渡しローラー、ならしローラー、練りローラー、版へのインキ付けローラー、およびブランケットが挙げられる。上記のインキローラーは、金属芯に天然および合成のゴム系材料を被覆したものである。
【0028】
上記のゴム系材料としては、インキローラーが、ポリネオプレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリブタジエンスチレン、ポリブタジエンアクリロニトリル、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレンイソプレン、ポリイソブチレン、ポリアクリルなどの合成ゴムまたは天然ゴムが好ましく、その他、シリコーン系、フッ素系、ウレタン系などのゴムが挙げられる。
【0029】
インキローラーは、例えば、上記のゴム系材料に加硫剤(イオウ)、加硫助剤(亜鉛華、マグネシウム、ステアリン酸など)、促進剤(グアニジンなど)、老化防止剤(フェノール類、アミン類など)、その他硫化油、鉱物油および顔料などの充填剤を添加して、均一に混練し、鉄芯に被覆するか、あるいはブランケットの場合には綿布やフェルトに被覆した後、加熱、加硫して、表面を研磨し、シート状にしたものを金属芯に巻つけてローラー状にしたものである。
【0030】
本発明のインキは、前記のA成分と樹脂成分とを配合して、例えば、樹脂成分を220℃で溶解させ、1時間加熱撹拌してワニスを調製し、該ワニスに着色剤および前記a成分および/またはb成分および必要に応じて他の樹脂ワニスを本発明の目的を妨げない範囲において配合し、好ましくは粘度調整のために、非芳香族系溶剤をさらに追加して、公知の方法にて、E型粘度計(25℃、50rpmにおける120秒値)が5.0〜6.0Pa・sになるように均一に混練して調製することができる。また、必要に応じて、前記のa成分以外のフタル酸系を除く可塑剤やパラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックスなどのワックスコンパンドを本発明の目的を妨げない範囲において添加することができる。
【0031】
上記の樹脂成分としては、前記のA成分と、a成分および/またはb成分などに相溶する、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、炭化水素樹脂、石油樹脂、酸変性石油樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂およびアルキッド樹脂などが挙げられる。
【0032】
上記の着色剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、弁柄、亜鉛華、群青、紺青などの無機顔料、ピラゾロン系、アリリド系、アセト酢酸アリリドモノアゾ系などの不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、スルフォン化銅フタロシアニンブルー、キナクリドン系、ジオサジン系、ピラントロン系、インダストロン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、フラバントロン系、金属錯塩系などの有機顔料および酸性染料、塩基性染料、アゾ染料、インジゴ染料、ナフトキノン系染料、ニトロ染料などの染料が挙げられる。
【0033】
また、前記の成分を混練して調製した本発明のインキは、印刷時においてインキローラーの質量および体積の変化率を−2.150%未満とすることができる。上記の質量および体積の変化率が上記値を超える場合には、インキローラーの収縮に伴うニップ圧が変化するために、印刷適性を最適にするためインキローラー間のニップ圧調整を頻繁に行う必要があり、印刷作業性が低下する。さらに、インキローラーの収縮に伴って、その表面状態が一定でなくなり、インキローラー表面に均一なインキ被膜が形成されず、版面やブランケットへのインキの転移性が低下して、このためにインキ濃度のむらや色濃度変化あるいはインキミストが発生して安定した印刷適性の良い印刷物が得られない。
【0034】
【実施例】
次に、実施例、比較例および評価例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0035】
実施例1〜9
重量平均分子量40,000、酸価20および軟化点160℃であるロジン変性フェノール樹脂40部と、大豆白絞油30部と非芳香族系溶剤30部とを配合して220℃で均一に溶解させ、1時間加熱撹拌してワニスを製造した。
【0036】
次に、上記のワニス55部、ギルソナイトワニス15部および着色剤(シアニンブルー1部とカーボンブラック20部との混合物)21部を添加し、さらに後記表1のようにa成分および/またはb成分と、さらに粘度調整のために非芳香族系溶剤を各々配合して、サンドミルを使用してE型粘度(25℃、50rpmの条件120秒値)が5.0〜6.0Pa・sになるように均一に撹拌混練して本発明のインキR1〜R9を調製した。
【0037】
比較例1
前記実施例のインキ(R1)において、粘度調整のために添加される非芳香族系溶剤の添加量6部を9部にし、a成分および/またはb成分を配合しない以外は実施例と同様にして比較例のインキ(S1)を調整した。
比較例2
前記実施例のインキ(R1)において、粘度調整のために添加される非芳香族系溶剤の添加量6部を1部にし、かつb成分の量を10部とした以外は実施例と同様にして比較例のインキ(S2)を調整した。
【0038】
なお、表1に記載のA成分、a成分およびb成分は下記の通りである。
・A成分
非芳香族系溶剤:AFソルベント6号(日石三菱(株)製、石油系溶剤)
・a成分
a1:ビス(ブチルジグリコール)アジペート(大八化学(株)製、BXA)
a2:ジイソブチルアジペート(大八化学(株)製、DIBA)
a3:ジブチルセバケート(大八化学(株)製、DBS)
a4:ビス(2−エチルヘキシル)セバケート(大八化学(株)製、DOS)・b成分
b1:トール油脂肪酸イソブチルエステル
b2:大豆油脂肪酸メチルエステル
【0039】
【0040】
評価例1〜11
上記で得られた各々のインキを使用して、通常のオフセット印刷機を使用し、印刷時に設定したインキローラーのニップ圧を一定とし、その他は、通常の印刷条件にて連続印刷を行った。上記で得られた各々のインキを使用したインキローラーの収縮に関して、ニップ変化に伴う印刷適性、版面の汚れ、インキローラーの質量変化率および体積変化率を下記の測定方法により測定し評価した。評価結果を表2に示す。
【0041】
(印刷適性)
上記の各々のインキを使用して、上記の印刷条件にて印刷を行い、印刷後の印刷適性を下記の基準にて評価した。
◎:インキローラーのニップ圧の変化がなく、インキローラー上のインキの濃度むらを伴わず、版面やブランケットへのインキの転移性が良く、印刷適性が良好である。
×:インキローラーのニップ圧が低下し、インキローラー上のインキの濃度むらを生じ、版面やブランケットへのインキの転移性が悪く、印刷適性が不良である。
【0042】
(版面の汚れ)
上記の各々のインキを使用して、上記の印刷条件にて印刷を行い、2週間程度印刷後の版面の汚れを下記の基準にて評価した。
◎:非画線部にインキの付着が認めらず、版面に汚れ発生しない。
×:非画線部にインキの付着が認められ、版面に汚れが発生した。
【0043】
(質量変化率および体積変化率)
上記の各々のインキ中に、ゴムブランケット片(明和ゴム(株)製、ST−30、2.5×2.5cm×2mm(厚み))を23±2℃で168時間浸漬させた。浸漬後、ゴムブランケット片を取り出し、ゴムブランケット片に付着しているインキを拭き取り、空中質量および水中質量を測定して、ゴムブランケット片の質量変化率および体積変化率を測定した。なお、測定はゴム収縮試験(JIS
K6301)により行った。
【0044】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、環境負荷の少ない植物油および非芳香族系溶剤を主体とした溶剤に特定の化合物を加えたものをインキの溶剤として使用することで、印刷時におけるインキローラーの収縮を抑制することができ、また、従来のインキローラーの収縮に伴う、インキローラーのニップ圧の調整作業を減少させ、版面汚れや印刷適性不良が発生しない安定した印刷ができるインキが提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、版面の汚れや印刷不良が発生せず、印刷時のインキローラーのニップ調整などの作業負荷を低減した、インキローラーの収縮を抑制するインキに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷用インキは、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂などの合成樹脂と、アマニ油、桐油、大豆油などの植物油、鉱物油、合成油、必要に応じてインキの乾燥被膜に可撓性や柔軟性を付与するために可塑剤やワックスコンパンドなどの添加剤と、顔料や染料の着色剤および溶剤からなっており、これらのインキに使用される溶剤は、上記成分の溶解分散性や印刷適性から主に芳香族系溶剤が使用されていた。
【0003】
しかしながら、近年、上記の芳香族系溶剤を主体としたインキは、その製造や印刷時、および印刷物において残留溶剤などの揮発蒸気の臭気が強いという問題がある。従って、作業環境や大気汚染などの環境安全性の点から、揮発蒸気の臭気が極めて低く、また、作業環境や大気汚染などの環境負荷が少ない非芳香族系溶剤を主体としたインキが要望されており、また、インキのワニスは、植物油や非芳香族系溶剤に溶解する樹脂系を原料としたワニスに変わりつつある。
【0004】
また、上記のインキを使用した平版印刷では、印刷機上のインキ壺中のインキを、金属芯に被覆された天然または合成ゴム系材料からなるインキローラーを介して版面に着肉供給し、着肉された版面のインキが一旦ブランケットに転写され、印刷用紙をニップされた該ブランケットと圧胴の間を通して印刷する。上記のインキローラーを介して版面へのインキの供給は、インキ壺からインキが順次インキ出しローラー、渡しローラーへと供給され、多数のならしロール、練りロールによって均一にされ、さらに着けローラーによって版面に均一に着肉される。
【0005】
上記のインキローラーは、前記の環境上の負荷が伴う芳香族系溶剤を主体としたインキを使用して印刷した場合には、印刷時において、インキローラーの質量および体積の減量変化が比較的少ない。このために、印刷時に、最適な印刷適性を得るためのインキローラーのニップ圧の調整を頻繁に行う必要がない。
【0006】
しかしながら、前記の環境上の負荷が少ない植物油や非芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合には、インキローラーからゴム系材料の軟化性および可塑性付与成分などがインキ中に抽出されると考えられ、インキローラーの質量および体積の減量変化が極めて大きくなり、それに伴いインキローラーの収縮および硬化が発生する。
【0007】
このために、インキローラーの表面状態が一定でなくなり、インキローラーの表面に均一なインキ量が供給されず、版面やブランケットへのインキの転移性が低下し、インキ濃度のむらや濃度変化あるいはミストが発生して安定した良好な印刷適性が得られない。また、インキローラーの収縮に伴い、ニップ圧が変化するために、印刷適性を良好に維持するために、印刷時にインキローラー間のニップ圧調整を頻繁に行う必要があり、印刷作業性が低下する。
【0008】
上述のように、従来の芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合に匹敵あるいはそれ以上のインキローラーの質量および体積変化に伴う収縮や硬度上昇が発生せず、また、インキローラーの収縮に伴うニップ圧調整作業の回数を低減ができ、安定した印刷ができる植物油や非芳香族系溶剤を主体とし、環境上の負荷が少なく、インキローラーの収縮を抑制するインキの提供が望まれている。
【0009】
上記のインキローラーの収縮を防止する方法として、インキローラーのゴム材料やインキ組成の調整が検討されているが、ゴム材料の調整では、インキや印刷物に合わせたゴム材料の選択など作業が複雑となり、また、インキ組成の調整では、とくに、平版印刷インキでは、版全面に湿し水を供給し、親水性の非画線部に湿し水の薄膜を形成後、油性の平版インキを供給し、非画線部へのインキの付着を湿し水の薄膜で防ぎ、親油性の画線部にインキを選択的に付着して印刷しているが、この親水性の非画線部にインキが付着しやすくなり、版面汚れに伴う印刷汚れが発生しやすくなるという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、作業環境や大気汚染などの環境負荷が少なく、版面汚れや印刷適性不良が発生しないインキローラーの収縮を抑制するインキを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、植物油および/または非芳香族系溶剤(A成分)と、脂肪族二塩基酸エステル(a成分)および/または(トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステル)(b成分)を含有するインキにおいて、a成分が、インキ全体の2〜15質量%、およびb成分がインキ全体の0.5〜5.0質量%未満であることを特徴とするインキローラーの収縮を抑制するインキを提供する。
【0012】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記のA成分と、a成分および/またはb成分を含有したインキが、従来の植物油および/または非芳香族系溶剤を使用したインキよりも、インキローラーに使用されているゴム系材料中の軟化性および可塑性付与成分の抽出を抑え、従来の芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合に匹敵あるいはそれ以上のインキローラーの収縮を抑制する効果を有し、かつ、版面の汚れや印刷適性不良が発生せず、印刷時のインキローラーのニップ調整などの作業回数を低減し、安定した印刷ができるインキであることを見いだした。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明を主として特徴づけるインキは、上記のA成分と、a成分および/またはb成分とを含有するインキにおいて、a成分がインキ全体の2〜15質量%、およびb成分がインキ全体の0.5〜5.0質量%未満であることを特徴とする。
【0014】
上記のA成分の1種である植物油は、例えば、大豆油、大豆白絞油、菜種油、コーン油、アマニ油、桐油、サフラワー油、シナキリ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油などの半乾性油、乾性油、不乾性油および脱水ヒマシ油、熱重合油、再生油、およびそれらの混合物が挙げられ、大豆白絞油が特に好ましい。
【0015】
また、上記のA成分の1種である非芳香族系溶剤としては、作業環境や大気汚染などの環境安全性の面から芳香族含有量が1.0質量%未満の溶剤を使用することが好ましい。上記の非芳香族系溶剤としては、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、その他石油系非芳香族系溶剤などが挙げられる。これらの非芳香族系溶剤は、日石三菱(株)から[AFソルベント4号]、[AFソルベント5号]、[AFソルベント6号]、[AFソルベント7号]などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0016】
上記のA成分における植物油と非芳香族系溶剤とは、それぞれ単独でも使用できるが、好ましくは両者を併用する。両者を併用する場合の両者の配合割合は、植物油が非芳香族系溶剤より著しく多い場合には、インキローラーの体積および質量の減量変化が大きくなり、それに伴いインキローラーの収縮率がさらに大きくなる。一方、植物油が非芳香族系溶剤より著しく少ない場合には、わずかにインキローラーの収縮率が低下し、インキワニス中の樹脂の溶解性と転移不良などの問題が生じる。好ましい植物油と非芳香族系溶剤との配合は、植物油/非芳香族系溶剤=40/100〜600/100(質量比)である。
【0017】
本発明で使用するインキを主として特徴づけるa成分および/またはb成分は、植物油や非芳香族系溶剤を主体としたインキを使用した場合における、インキローラーの質量および体積減量を誘因すると考えられるインキローラー中の軟化性および可塑性付与成分の抽出を抑え、インキローラーの収縮抑制剤として効果を発揮する。また、a成分および/またはb成分は、印刷時における版面汚れや印刷適性不良が発生せず、印刷時のインキローラーのニップ調整などの作業負荷を低減させる。
【0018】
上記のa成分は、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤であり、または、b成分は、トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステルである。上記のa成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、グルタル酸などの脂肪族二塩基酸と、アルコール類からなる脂肪族二塩基酸エステルが挙げられる。
【0019】
上記のa成分としては、例えば、ジイソブチルアジペート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジメチルセバケート、ビス(ブチルジグリコール)アジペートおよびジエチルサクシネートなどが挙げられる。
【0020】
上記のa成分として、ジイソブチルアジペート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケートおよびビス(ブチルジグリコール)アジペートが好ましく使用される。これらの脂肪族二塩基酸エステルは、大八化学(株)から「DIBA」、「BXA」、「DBS」、および「DOS」などの商品名にて入手して本発明で使用することができる。
【0021】
また、前記のb成分は、トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステルであり、上記のトール油脂肪酸エステルとしては、例えば、トール油脂肪酸のメチル、ブチル、2−エチルヘキシルおよびジエチレングリコールなどのアルキルエステルが挙げられ、トール油脂肪酸イソブチルエステルが特に好ましい。
【0022】
また、上記の植物油脂肪酸エステルは、大豆油、桐油、アマニ油、エノ油、菜種油、ヤシ油、ヒマシ油、パーム油、再生植物油などの植物油系油脂類から誘導される植物油脂肪酸エステルであり、例えば、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸およびパーム油脂肪酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルおよびオクチルなどのエステルなど、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜4のアルコールとのエステルである植物油脂肪酸のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステルおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
前記のa成分およびb成分は、単独または混合して使用することができる。得られるインキ中のa成分の配合割合は、インキ全体の2〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。a成分の配合割合が、上記上限を超える場合には、インキローラーが膨潤および軟化しやすくなり、一方、配合割合が上記下限未満の場合には、インキローラーの収縮率が上昇し、インキローラーの収縮が抑制できない。
【0024】
また、得られるインキ中のb成分の配合割合は、インキ全体の0.5〜5.0質量%未満、好ましくは2.0〜4.8質量%である。b成分の配合割合が、上記上限を超える場合には、インキローラーが膨潤および軟化しやすくなり、また、特に、平版印刷では、版全面に湿し水を供給し、親水性の非画線部に湿し水の薄膜を形成後、油性の平版インキを供給し、非画線部へのインキの付着を湿し水の薄膜で防ぎ、親油性の画線部にインキを選択的に付着して印刷しているが、この親水性の非画線部にb成分が付着しやすくなり、このために、その部分にインキが付着して、版面汚れが発生して、印刷物に汚れが生じやすくなる。一方、b成分の配合割合が、上記下限未満の場合には、インキローラーの収縮率が上昇し、インキローラーの収縮が抑制できない。
上記a成分とb成分とを併用する場合のインキ中の配合割合は、a+b=5〜15質量%が好ましく、また、a/b(質量比)=60/100〜500/100が好ましい。
【0025】
上記のa成分および/またはb成分の前記A成分に対する配合割合は、(a成分および/またはb成分)/A成分=4/100〜60/100(質量比)である。(a成分および/またはb成分)/A成分の配合割合が、上記上限を超える場合には、インキローラーが膨潤および軟化しやすくなり、また、印刷時のロール間のニップ圧の変形が起こりやすく、印刷適性を良好に維持するために、ニップ圧の調整を頻繁に行う必要があり、印刷作業性が低下する。一方、上記の配合割合が、上記下限未満の場合には、インキローラーが収縮しやすく、所望するインキローラーの収縮抑制効果が得られない。
【0026】
また、本発明では、必要に応じて、さらに、a成分以外のフタル酸系を除く可塑剤を本発明の目的を妨げない範囲において添加することができる。一般に、印刷インキ用可塑剤は、インキの乾燥被膜が、その樹脂分によって硬かったり、もろかったり、また、ひびが入りやすい場合に、乾燥被膜に柔軟性、可撓性および接着性を向上させる目的で添加されているが、フタル酸系可塑剤は、内分泌撹乱を有すると疑われる物質としてリストアップされた物質で環境上問題があり、好ましくない。上記の可塑剤としては、例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニルクレジル、水添加ロジンのメチルエステル、塩化パラフィン、エポキシ系およびポリエステル系などの可塑剤が挙げられる。上記の可塑剤を使用する場合には、その添加量は、a成分および/またはb成分の0.5〜1.0質量%である。
【0027】
前記のインキローラーとは、通常の新聞印刷用のオフセット輪転印刷機、凸版印刷機などの印刷機上のインキ壺から版面およびブランケットにインキを着肉するまでに使用されるインキローラーおよびブランケットで、印刷作業中に絶えずインキと接触しているインキローラーであり、例えば、インキ出しローラー、渡しローラー、ならしローラー、練りローラー、版へのインキ付けローラー、およびブランケットが挙げられる。上記のインキローラーは、金属芯に天然および合成のゴム系材料を被覆したものである。
【0028】
上記のゴム系材料としては、インキローラーが、ポリネオプレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリブタジエンスチレン、ポリブタジエンアクリロニトリル、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレンイソプレン、ポリイソブチレン、ポリアクリルなどの合成ゴムまたは天然ゴムが好ましく、その他、シリコーン系、フッ素系、ウレタン系などのゴムが挙げられる。
【0029】
インキローラーは、例えば、上記のゴム系材料に加硫剤(イオウ)、加硫助剤(亜鉛華、マグネシウム、ステアリン酸など)、促進剤(グアニジンなど)、老化防止剤(フェノール類、アミン類など)、その他硫化油、鉱物油および顔料などの充填剤を添加して、均一に混練し、鉄芯に被覆するか、あるいはブランケットの場合には綿布やフェルトに被覆した後、加熱、加硫して、表面を研磨し、シート状にしたものを金属芯に巻つけてローラー状にしたものである。
【0030】
本発明のインキは、前記のA成分と樹脂成分とを配合して、例えば、樹脂成分を220℃で溶解させ、1時間加熱撹拌してワニスを調製し、該ワニスに着色剤および前記a成分および/またはb成分および必要に応じて他の樹脂ワニスを本発明の目的を妨げない範囲において配合し、好ましくは粘度調整のために、非芳香族系溶剤をさらに追加して、公知の方法にて、E型粘度計(25℃、50rpmにおける120秒値)が5.0〜6.0Pa・sになるように均一に混練して調製することができる。また、必要に応じて、前記のa成分以外のフタル酸系を除く可塑剤やパラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックスなどのワックスコンパンドを本発明の目的を妨げない範囲において添加することができる。
【0031】
上記の樹脂成分としては、前記のA成分と、a成分および/またはb成分などに相溶する、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、炭化水素樹脂、石油樹脂、酸変性石油樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂およびアルキッド樹脂などが挙げられる。
【0032】
上記の着色剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、弁柄、亜鉛華、群青、紺青などの無機顔料、ピラゾロン系、アリリド系、アセト酢酸アリリドモノアゾ系などの不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、スルフォン化銅フタロシアニンブルー、キナクリドン系、ジオサジン系、ピラントロン系、インダストロン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、フラバントロン系、金属錯塩系などの有機顔料および酸性染料、塩基性染料、アゾ染料、インジゴ染料、ナフトキノン系染料、ニトロ染料などの染料が挙げられる。
【0033】
また、前記の成分を混練して調製した本発明のインキは、印刷時においてインキローラーの質量および体積の変化率を−2.150%未満とすることができる。上記の質量および体積の変化率が上記値を超える場合には、インキローラーの収縮に伴うニップ圧が変化するために、印刷適性を最適にするためインキローラー間のニップ圧調整を頻繁に行う必要があり、印刷作業性が低下する。さらに、インキローラーの収縮に伴って、その表面状態が一定でなくなり、インキローラー表面に均一なインキ被膜が形成されず、版面やブランケットへのインキの転移性が低下して、このためにインキ濃度のむらや色濃度変化あるいはインキミストが発生して安定した印刷適性の良い印刷物が得られない。
【0034】
【実施例】
次に、実施例、比較例および評価例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0035】
実施例1〜9
重量平均分子量40,000、酸価20および軟化点160℃であるロジン変性フェノール樹脂40部と、大豆白絞油30部と非芳香族系溶剤30部とを配合して220℃で均一に溶解させ、1時間加熱撹拌してワニスを製造した。
【0036】
次に、上記のワニス55部、ギルソナイトワニス15部および着色剤(シアニンブルー1部とカーボンブラック20部との混合物)21部を添加し、さらに後記表1のようにa成分および/またはb成分と、さらに粘度調整のために非芳香族系溶剤を各々配合して、サンドミルを使用してE型粘度(25℃、50rpmの条件120秒値)が5.0〜6.0Pa・sになるように均一に撹拌混練して本発明のインキR1〜R9を調製した。
【0037】
比較例1
前記実施例のインキ(R1)において、粘度調整のために添加される非芳香族系溶剤の添加量6部を9部にし、a成分および/またはb成分を配合しない以外は実施例と同様にして比較例のインキ(S1)を調整した。
比較例2
前記実施例のインキ(R1)において、粘度調整のために添加される非芳香族系溶剤の添加量6部を1部にし、かつb成分の量を10部とした以外は実施例と同様にして比較例のインキ(S2)を調整した。
【0038】
なお、表1に記載のA成分、a成分およびb成分は下記の通りである。
・A成分
非芳香族系溶剤:AFソルベント6号(日石三菱(株)製、石油系溶剤)
・a成分
a1:ビス(ブチルジグリコール)アジペート(大八化学(株)製、BXA)
a2:ジイソブチルアジペート(大八化学(株)製、DIBA)
a3:ジブチルセバケート(大八化学(株)製、DBS)
a4:ビス(2−エチルヘキシル)セバケート(大八化学(株)製、DOS)・b成分
b1:トール油脂肪酸イソブチルエステル
b2:大豆油脂肪酸メチルエステル
【0039】
【0040】
評価例1〜11
上記で得られた各々のインキを使用して、通常のオフセット印刷機を使用し、印刷時に設定したインキローラーのニップ圧を一定とし、その他は、通常の印刷条件にて連続印刷を行った。上記で得られた各々のインキを使用したインキローラーの収縮に関して、ニップ変化に伴う印刷適性、版面の汚れ、インキローラーの質量変化率および体積変化率を下記の測定方法により測定し評価した。評価結果を表2に示す。
【0041】
(印刷適性)
上記の各々のインキを使用して、上記の印刷条件にて印刷を行い、印刷後の印刷適性を下記の基準にて評価した。
◎:インキローラーのニップ圧の変化がなく、インキローラー上のインキの濃度むらを伴わず、版面やブランケットへのインキの転移性が良く、印刷適性が良好である。
×:インキローラーのニップ圧が低下し、インキローラー上のインキの濃度むらを生じ、版面やブランケットへのインキの転移性が悪く、印刷適性が不良である。
【0042】
(版面の汚れ)
上記の各々のインキを使用して、上記の印刷条件にて印刷を行い、2週間程度印刷後の版面の汚れを下記の基準にて評価した。
◎:非画線部にインキの付着が認めらず、版面に汚れ発生しない。
×:非画線部にインキの付着が認められ、版面に汚れが発生した。
【0043】
(質量変化率および体積変化率)
上記の各々のインキ中に、ゴムブランケット片(明和ゴム(株)製、ST−30、2.5×2.5cm×2mm(厚み))を23±2℃で168時間浸漬させた。浸漬後、ゴムブランケット片を取り出し、ゴムブランケット片に付着しているインキを拭き取り、空中質量および水中質量を測定して、ゴムブランケット片の質量変化率および体積変化率を測定した。なお、測定はゴム収縮試験(JIS
K6301)により行った。
【0044】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、環境負荷の少ない植物油および非芳香族系溶剤を主体とした溶剤に特定の化合物を加えたものをインキの溶剤として使用することで、印刷時におけるインキローラーの収縮を抑制することができ、また、従来のインキローラーの収縮に伴う、インキローラーのニップ圧の調整作業を減少させ、版面汚れや印刷適性不良が発生しない安定した印刷ができるインキが提供される。
Claims (7)
- 植物油および/または非芳香族系溶剤(A成分)と、脂肪族二塩基酸エステル(a成分)および/または(トール油脂肪酸エステルおよび/または植物油脂肪酸エステル)(b成分)を含有するインキにおいて、a成分がインキ全体の2〜15質量%、およびb成分がインキ全体の0.5〜5.0質量%未満であることを特徴とするインキローラーの収縮を抑制するインキ。
- a成分および/またはb成分と、A成分との配合割合が、(aおよび/またはb)成分/A成分=4/100〜60/100(質量比)である請求項1に記載のインキ。
- a成分が、ジイソブチルアジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ジブチルセバケートおよびビス(2−エチルヘキシル)セバケートから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のインキ。
- b成分が、トール油脂肪酸イソブチルエステル、植物油脂肪酸のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステルから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3の何れか1項に記載のインキ。
- さらに、a成分以外のフタル酸系を除く可塑剤を含む請求項1〜4の何れか1項に記載のインキ。
- インキローラーが、ポリネオプレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリブタジエンスチレン、ポリブタジエンアクリロニトリル、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレンイソプレン、ポリイソブチレン、ポリアクリルなどの合成ゴムまたは天然ゴムからなる請求項1〜5の何れか1項に記載のインキ。
- 印刷時におけるインキローラーの質量変化率および体積変化率が、−2.150%未満である請求項1〜6の何れか1項に記載のインキ。
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