JP2004217840A - 印刷インキ - Google Patents
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Abstract
【目的】本発明は、地球環境・作業環境汚染の少ない非芳香族系石油溶剤と植物油を併用した印刷インキでも、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮(痩せ・細り)を極力抑制させることができる浸透乾燥型の印刷インキを提供する。
【構成】顔料とワニス用樹脂と溶剤とを含む印刷インキ全重量中において、ショ糖と天然油脂由来の脂肪酸をエステル交換して得られるショ糖脂肪酸エステルを1〜20重量%、植物油を10〜60重量%、非芳香族系石油溶剤を0〜40重量%含有することを特徴とする印刷インキ。
【構成】顔料とワニス用樹脂と溶剤とを含む印刷インキ全重量中において、ショ糖と天然油脂由来の脂肪酸をエステル交換して得られるショ糖脂肪酸エステルを1〜20重量%、植物油を10〜60重量%、非芳香族系石油溶剤を0〜40重量%含有することを特徴とする印刷インキ。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷インキに関し、更に詳しくは、地球環境・作業環境汚染の少ない非芳香族系石油溶剤と植物油を併用した印刷インキでも、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮(痩せ・細り)を極力抑制させることができる浸透乾燥型の印刷インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オフセット印刷インキに用いる溶剤は含有している芳香族炭化水素を水添により非芳香族成分としたものが主体となっており、芳香族炭化水素を含む溶剤は環境衛生面での問題が指摘されている。
【0003】
浸透乾燥型印刷インキは高速印刷時のインキの安定性保持のため、印刷機上での溶剤の蒸発を抑制することが必要であり、高沸点の溶剤を使用することが不可欠であった。このため従来の溶剤は、石油精製の際の高沸点留分が主に用いられていたが、これらの溶剤は芳香族成分含有率が高く、近年は環境面から非芳香族成分を主体とする溶剤への置換が進み、環境対応型インキとして、各社印刷メーカーに使用されつつある。非芳香族成分を主体とした溶剤は従来の芳香族系溶剤(以下、鉱物油と称す)に比べ、樹脂との溶解性が問題となる。特に高沸点の非芳香族溶剤では、インキ化した場合に樹脂の溶解性の不良により、流動性が劣化し、転移不良等の問題が発生する。その樹脂の溶解性を補うものとして、脂肪酸エステルを主成分とする植物油は樹脂溶解性が良好であり、揮発成分が少ない。
【0004】
浸透乾燥型乾燥方式をとる平版印刷インキでは、乾性油の含有率を高めていくと機上安定性の向上には寄与するものの、樹脂からの溶剤離脱が遅くなることによるセットの劣化は酸化重合型インキと同様である。機上安定性とは、インキの印刷機上での溶剤蒸発による流動性の劣化の程度を表す。流動性劣化が少ないこと、もしくは流動性が劣化するまでの時間が長いことがインキ性能として優れている。
【0005】
環境対応型インキは、印刷での印刷作業者あるいは、印刷物を見る読者に対しても、環境衛生面で一部問題指摘のある芳香族炭化水素をほとんど含まない溶剤を使用していることから、安全で環境に優しく設計された印刷インキということで、各印刷メーカーでは、この環境対応型インキに置換を進めており、地球環境保全へ貢献している。
しかしながら、これら環境対応型インキに使用しているインキ成分の内、非芳香族系石油溶剤、植物油は、印刷機のゴムロール及びブランケットを収縮させやすい傾向がある。印刷機のゴムロール及びブランケットが収縮してしまうと、ロール間のニップ幅が狭くなり、着肉不良等が発生し、良好な印刷紙面が得られない。
【0006】
ゴムロール及びブランケットの収縮に関するメカニズムは、環境対応型インキに含まれる、非芳香族系石油溶剤及び植物油がゴム中の可塑剤を抽出させることにより空隙ができる。これらはゴムとの親和性が劣るため、できた空隙に補充が行われず、収縮が起きる。従来の鉱物油でも同じ様にゴム中の可塑剤を抽出し、空隙ができるが、芳香族系の溶剤はゴムとの親和性があるため、その空隙を補充する(膨潤)効果があり、収縮を和らげる。
そこで、インキ面からゴムロール及びブランケットの収縮を極力抑える検討をインキ各社で行っているが、未だ十分な解決策は見出されていない。一方、ゴムメーカーにおいても、環境対応型インキに対するゴムロール及びブランケットの改良は進められているものの、未だ完全ではない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−140070号公報
【特許文献2】
特開平5−112745号公報
【特許文献3】
特開2001−288394号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の印刷における機上安定性と乾燥性のバランスを保ちつつ、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮をインキ面から極力抑えることのできる印刷インキ組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、顔料とワニス用樹脂と溶剤とを含む印刷インキ全重量中において、ショ糖と天然油脂由来の脂肪酸をエステル交換して得られるショ糖脂肪酸エステルを1〜20重量%、植物油を10〜60重量%、非芳香族系石油溶剤を0〜40重量%含有することを特徴とする印刷インキに関する。
さらに本発明は、印刷インキが浸透乾燥型印刷インキである上記印刷インキに関する。
加えて本発明は、上記インキを用いることによる、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮抑制方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する脂肪酸エステルの原料となる油脂類としては、例えば、大豆油、アマニ油、コーン油、米糠油、菜種油、脱水ヒマシ油、小麦胚芽油、ゴマ油、トール油、麻実油、エノ油、ひまわり油、桐油、シナギリ油、サフラワー油、綿実油、等の植物油、秋刀魚油、鰯油、鯖油、イカ油等の魚油、鯨油等の天然油脂が挙げられる。
上記油脂類をショ糖でエステル交換する反応は、例えば、両者を無触媒好ましくは酸触媒又はアルカリ触媒の共存下、常圧又は加圧下に加熱する方法が挙げられるが、他の方法であってもよい。上記エステル交換反応生成物は、そのままでも使用でき、又、エステル交換物を蒸留によって脂肪酸のエステルを分留して使用してもよい。この様なエステル交換物は、本発明の印刷インキ中において、1重量%〜20重量%、好ましくは3重量%〜10重量%を占める割合で使用される。1重量%未満では印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮を抑制することはできず、20重量%を超えると、ゴムロール及びブランケットが膨潤してしまい、印刷時に問題となる。
【0011】
本発明で使用する植物油は、溶剤と見なしており、アマニ油、桐油、エノ油等の乾性油や大豆油、米糠油、菜種油、ゴマ油等の半乾性油が望ましいが、必要に応じてヤシ油、オリーブ油、パーム油等の不乾性油を併用することも可能である。添加量としては、10重量%〜60重量%が望ましい。10重量%未満では樹脂との溶解性不足によりインキの流動性が不足する。また、場合によっては機上安定性に問題を生じる。また、60重量%を超えるとセットが劣化する。
【0012】
本発明で使用する非芳香族系石油溶剤は、例えば炭素数14〜18のナフテン、イソパラフィンを主成分とするものである。アニリン点は65〜110℃が好ましい。もしアニリン点が110℃より高い溶剤を利用すれば、インキ組成中の使用樹脂との溶解性に乏しく、インキの流動性が不十分であり、その結果被印刷体へのレベリングが乏しく光沢のない印刷物しか得られない。また65℃より低いアニリン点の溶剤を使用したインキは乾燥時のインキ皮膜からの溶剤の離脱性が悪く乾燥劣化を起こしてしまう。このような非芳香族系石油溶剤としては、日石三菱(株)製0号、AF4〜7号ソルベントがある。添加量としては、0重量%〜40重量%が望ましい。これら溶剤は、大気汚染などの地球環境問題や作業環境の安全衛生面での問題が指摘されている揮発性有機化合物(VOC)であるため、近年使用量を低減させる傾向がある。それゆえこれら溶剤の添加量は、0重量%〜20重量%が一層好ましい。また、特にこれら溶剤を使用せず、揮発性有機化合物(VOC)を全く含有しない、植物油を溶剤成分の主成分とした印刷インキでも構わない。
【0013】
本発明で使用する他の助剤としては、ドライヤー、ゲル化剤、乾燥抑制剤(遅延剤)、酸化防止剤等の添加剤を適宜用いることができる。
【0014】
本発明で使用するワニス用樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂が好ましく、必要に応じて石油樹脂、アルキッド樹脂との併用も可能である。ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量としては、1万〜40万のものが望ましい。1万未満ではインキの粘弾性が不足し、40万を超えるとインキとしての流動性が不充分となる。ロジン変性フェノール樹脂の溶解性としては、日本石油(株)製0号ソルベント溶剤でのトレランスが10%〜40%のものが望ましい。10%未満ではインキのセットが劣化し、40%以上を超えるとインキの流動性が低下する。
トレランスとは樹脂Xgを試験管に取り、溶剤で加熱溶解させたのちに25℃に冷却したときの白濁しない最小樹脂濃度であり、数値が小さいほど溶解性が優れている。
トレランス(%)=樹脂(Xg)/[樹脂(Xg)+溶剤(Yg)]×100
【0015】
本発明で使用される顔料は、従来の印刷インキに使用されているものであって、従来公知の顔料は本発明の印刷インキ用顔料として、何れもそのまま使用することができる。又、その使用量も従来公知の印刷インキと同様でよく、例えば、印刷インキ100重量部中で、約10〜40重量部を占める割合が一般的である。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。例中、「部」「%」は、それぞれ「重量部」「重量%」である。
【0017】
[ワニス製造例]
(ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスの製造1)コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製、重量平均分子量8万、酸価20、軟化点165℃)38.5部、大豆油30部、6号ソルベント(日石三菱(株)製)30部を仕込み、180℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後、放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み180℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ゲルワニス1を得た。6号ソルベントは環境衛生面で問題指摘のある芳香族系石油溶剤である。
(ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスの製造2)コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製、重量平均分子量8万、酸価20、軟化点165℃)38.5部、大豆油30部、AFソルベント7号(以下AF7と称す)(日石三菱(株)製)30部を仕込み、180℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後、放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み180℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ゲルワニス2を得た。
【0018】
[インキ製造例]
実施例1〜4.比較例1〜4
得られたロジン変性フェノール樹脂ワニス1を60部、藍顔料(リオノールブルーFG−7330、東洋インキ製造(株)製)17部を配合し三本ロールで練肉して、藍インキベース1を得た。
続いて得られたロジン変性フェノール樹脂ワニス2を60部、藍顔料(リオノールブルーFG−7330、東洋インキ製造(株)製)17部を配合し三本ロールで練肉して、藍インキベース2を得た。
次いで、該藍インキベース1及び2に対して、表1の配合で溶剤、及びショ糖脂肪酸エステルを添加して粘度5.0〜5.5Pa・sに調整し、実施例1〜4、比較例1〜4の印刷インキ組成物を得た。
【0019】
[評価結果]
上記実施例及び比較例の印刷インキ組成物について機上安定性・セット及び印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮性について評価を実施し、結果を表2に示した。
機上安定性は東洋精器(株)製デジタルインコメーターにて、40℃、インキ0.1cc、1000rpmの条件でのタック値の最大値と初期値の差(以下△T値と称す)と最大値を示すまでの経過時間(以下Tmax値と称す)により評価を行った。△T値が小さく、Tmax値が大きいほどインキのタック値変動が少なく、インキ性能として優れている。
セットは新聞用更紙を用いて濃度1.00の展色刷を作成し、展色直後から展色面にコート紙をあて、少しずつずらしながら圧力10barをかけ、更紙からコート紙へのインキの転移を観察、転移しなくなった時間(以下セット時間と称す)により評価を行った。セット時間が短いほどセットは優れているが、セット時間が短すぎる場合には、実印刷ではガイドローラー汚れの原因となる。
印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮性の評価は、以下のゴム浸漬試験にて行った。ゴムシートA((株)金陽社製.硬度30)及びB(明和ゴム工業(株)製.硬度25)を100mm×15mm×2mmにカットし2個1組とする。これらのゴムシートを浸漬前に重量、体積、硬度を測定する。定量容器にインキを100g入れ、ゴムシートを浸漬させる。40日浸漬後に取り出し、ゴムシートに付着したインキを溶剤を使わず、布等でよく拭き取る。1時間放置後、重量、体積、硬度を測定する。浸漬前に測定した重量、体積、硬度に対し、浸漬後どれだけ変化したかの割合を、重量変化率、体積変化率、硬度変化率とし百分率で表す。ゴム中の可塑剤が抽出されると、重量及び体積は減少し、重量変化率及び体積変化率はマイナスになる。また硬度は硬くなり、硬度変化率はプラスになる。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明で得られるインキは従来の環境対応型インキと比較して、機上安定性及びセットを向上させることができる上に、問題であったゴムの伸縮に関しても大きく抑制された。したがって、本発明により、従来の環境対応型インキでも、比較例8の一部有害性が指摘される多環式芳香族成分を含んだ鉱物油タイプのインキと同レベルのゴムの伸縮度合いまで抑制させることができるインキ組成物を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷インキに関し、更に詳しくは、地球環境・作業環境汚染の少ない非芳香族系石油溶剤と植物油を併用した印刷インキでも、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮(痩せ・細り)を極力抑制させることができる浸透乾燥型の印刷インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オフセット印刷インキに用いる溶剤は含有している芳香族炭化水素を水添により非芳香族成分としたものが主体となっており、芳香族炭化水素を含む溶剤は環境衛生面での問題が指摘されている。
【0003】
浸透乾燥型印刷インキは高速印刷時のインキの安定性保持のため、印刷機上での溶剤の蒸発を抑制することが必要であり、高沸点の溶剤を使用することが不可欠であった。このため従来の溶剤は、石油精製の際の高沸点留分が主に用いられていたが、これらの溶剤は芳香族成分含有率が高く、近年は環境面から非芳香族成分を主体とする溶剤への置換が進み、環境対応型インキとして、各社印刷メーカーに使用されつつある。非芳香族成分を主体とした溶剤は従来の芳香族系溶剤(以下、鉱物油と称す)に比べ、樹脂との溶解性が問題となる。特に高沸点の非芳香族溶剤では、インキ化した場合に樹脂の溶解性の不良により、流動性が劣化し、転移不良等の問題が発生する。その樹脂の溶解性を補うものとして、脂肪酸エステルを主成分とする植物油は樹脂溶解性が良好であり、揮発成分が少ない。
【0004】
浸透乾燥型乾燥方式をとる平版印刷インキでは、乾性油の含有率を高めていくと機上安定性の向上には寄与するものの、樹脂からの溶剤離脱が遅くなることによるセットの劣化は酸化重合型インキと同様である。機上安定性とは、インキの印刷機上での溶剤蒸発による流動性の劣化の程度を表す。流動性劣化が少ないこと、もしくは流動性が劣化するまでの時間が長いことがインキ性能として優れている。
【0005】
環境対応型インキは、印刷での印刷作業者あるいは、印刷物を見る読者に対しても、環境衛生面で一部問題指摘のある芳香族炭化水素をほとんど含まない溶剤を使用していることから、安全で環境に優しく設計された印刷インキということで、各印刷メーカーでは、この環境対応型インキに置換を進めており、地球環境保全へ貢献している。
しかしながら、これら環境対応型インキに使用しているインキ成分の内、非芳香族系石油溶剤、植物油は、印刷機のゴムロール及びブランケットを収縮させやすい傾向がある。印刷機のゴムロール及びブランケットが収縮してしまうと、ロール間のニップ幅が狭くなり、着肉不良等が発生し、良好な印刷紙面が得られない。
【0006】
ゴムロール及びブランケットの収縮に関するメカニズムは、環境対応型インキに含まれる、非芳香族系石油溶剤及び植物油がゴム中の可塑剤を抽出させることにより空隙ができる。これらはゴムとの親和性が劣るため、できた空隙に補充が行われず、収縮が起きる。従来の鉱物油でも同じ様にゴム中の可塑剤を抽出し、空隙ができるが、芳香族系の溶剤はゴムとの親和性があるため、その空隙を補充する(膨潤)効果があり、収縮を和らげる。
そこで、インキ面からゴムロール及びブランケットの収縮を極力抑える検討をインキ各社で行っているが、未だ十分な解決策は見出されていない。一方、ゴムメーカーにおいても、環境対応型インキに対するゴムロール及びブランケットの改良は進められているものの、未だ完全ではない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−140070号公報
【特許文献2】
特開平5−112745号公報
【特許文献3】
特開2001−288394号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の印刷における機上安定性と乾燥性のバランスを保ちつつ、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮をインキ面から極力抑えることのできる印刷インキ組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、顔料とワニス用樹脂と溶剤とを含む印刷インキ全重量中において、ショ糖と天然油脂由来の脂肪酸をエステル交換して得られるショ糖脂肪酸エステルを1〜20重量%、植物油を10〜60重量%、非芳香族系石油溶剤を0〜40重量%含有することを特徴とする印刷インキに関する。
さらに本発明は、印刷インキが浸透乾燥型印刷インキである上記印刷インキに関する。
加えて本発明は、上記インキを用いることによる、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮抑制方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する脂肪酸エステルの原料となる油脂類としては、例えば、大豆油、アマニ油、コーン油、米糠油、菜種油、脱水ヒマシ油、小麦胚芽油、ゴマ油、トール油、麻実油、エノ油、ひまわり油、桐油、シナギリ油、サフラワー油、綿実油、等の植物油、秋刀魚油、鰯油、鯖油、イカ油等の魚油、鯨油等の天然油脂が挙げられる。
上記油脂類をショ糖でエステル交換する反応は、例えば、両者を無触媒好ましくは酸触媒又はアルカリ触媒の共存下、常圧又は加圧下に加熱する方法が挙げられるが、他の方法であってもよい。上記エステル交換反応生成物は、そのままでも使用でき、又、エステル交換物を蒸留によって脂肪酸のエステルを分留して使用してもよい。この様なエステル交換物は、本発明の印刷インキ中において、1重量%〜20重量%、好ましくは3重量%〜10重量%を占める割合で使用される。1重量%未満では印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮を抑制することはできず、20重量%を超えると、ゴムロール及びブランケットが膨潤してしまい、印刷時に問題となる。
【0011】
本発明で使用する植物油は、溶剤と見なしており、アマニ油、桐油、エノ油等の乾性油や大豆油、米糠油、菜種油、ゴマ油等の半乾性油が望ましいが、必要に応じてヤシ油、オリーブ油、パーム油等の不乾性油を併用することも可能である。添加量としては、10重量%〜60重量%が望ましい。10重量%未満では樹脂との溶解性不足によりインキの流動性が不足する。また、場合によっては機上安定性に問題を生じる。また、60重量%を超えるとセットが劣化する。
【0012】
本発明で使用する非芳香族系石油溶剤は、例えば炭素数14〜18のナフテン、イソパラフィンを主成分とするものである。アニリン点は65〜110℃が好ましい。もしアニリン点が110℃より高い溶剤を利用すれば、インキ組成中の使用樹脂との溶解性に乏しく、インキの流動性が不十分であり、その結果被印刷体へのレベリングが乏しく光沢のない印刷物しか得られない。また65℃より低いアニリン点の溶剤を使用したインキは乾燥時のインキ皮膜からの溶剤の離脱性が悪く乾燥劣化を起こしてしまう。このような非芳香族系石油溶剤としては、日石三菱(株)製0号、AF4〜7号ソルベントがある。添加量としては、0重量%〜40重量%が望ましい。これら溶剤は、大気汚染などの地球環境問題や作業環境の安全衛生面での問題が指摘されている揮発性有機化合物(VOC)であるため、近年使用量を低減させる傾向がある。それゆえこれら溶剤の添加量は、0重量%〜20重量%が一層好ましい。また、特にこれら溶剤を使用せず、揮発性有機化合物(VOC)を全く含有しない、植物油を溶剤成分の主成分とした印刷インキでも構わない。
【0013】
本発明で使用する他の助剤としては、ドライヤー、ゲル化剤、乾燥抑制剤(遅延剤)、酸化防止剤等の添加剤を適宜用いることができる。
【0014】
本発明で使用するワニス用樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂が好ましく、必要に応じて石油樹脂、アルキッド樹脂との併用も可能である。ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量としては、1万〜40万のものが望ましい。1万未満ではインキの粘弾性が不足し、40万を超えるとインキとしての流動性が不充分となる。ロジン変性フェノール樹脂の溶解性としては、日本石油(株)製0号ソルベント溶剤でのトレランスが10%〜40%のものが望ましい。10%未満ではインキのセットが劣化し、40%以上を超えるとインキの流動性が低下する。
トレランスとは樹脂Xgを試験管に取り、溶剤で加熱溶解させたのちに25℃に冷却したときの白濁しない最小樹脂濃度であり、数値が小さいほど溶解性が優れている。
トレランス(%)=樹脂(Xg)/[樹脂(Xg)+溶剤(Yg)]×100
【0015】
本発明で使用される顔料は、従来の印刷インキに使用されているものであって、従来公知の顔料は本発明の印刷インキ用顔料として、何れもそのまま使用することができる。又、その使用量も従来公知の印刷インキと同様でよく、例えば、印刷インキ100重量部中で、約10〜40重量部を占める割合が一般的である。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。例中、「部」「%」は、それぞれ「重量部」「重量%」である。
【0017】
[ワニス製造例]
(ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスの製造1)コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製、重量平均分子量8万、酸価20、軟化点165℃)38.5部、大豆油30部、6号ソルベント(日石三菱(株)製)30部を仕込み、180℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後、放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み180℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ゲルワニス1を得た。6号ソルベントは環境衛生面で問題指摘のある芳香族系石油溶剤である。
(ロジン変性フェノール樹脂ゲルワニスの製造2)コンデンサー、温度計、及び攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業(株)製、重量平均分子量8万、酸価20、軟化点165℃)38.5部、大豆油30部、AFソルベント7号(以下AF7と称す)(日石三菱(株)製)30部を仕込み、180℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後、放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み180℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ゲルワニス2を得た。
【0018】
[インキ製造例]
実施例1〜4.比較例1〜4
得られたロジン変性フェノール樹脂ワニス1を60部、藍顔料(リオノールブルーFG−7330、東洋インキ製造(株)製)17部を配合し三本ロールで練肉して、藍インキベース1を得た。
続いて得られたロジン変性フェノール樹脂ワニス2を60部、藍顔料(リオノールブルーFG−7330、東洋インキ製造(株)製)17部を配合し三本ロールで練肉して、藍インキベース2を得た。
次いで、該藍インキベース1及び2に対して、表1の配合で溶剤、及びショ糖脂肪酸エステルを添加して粘度5.0〜5.5Pa・sに調整し、実施例1〜4、比較例1〜4の印刷インキ組成物を得た。
【0019】
[評価結果]
上記実施例及び比較例の印刷インキ組成物について機上安定性・セット及び印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮性について評価を実施し、結果を表2に示した。
機上安定性は東洋精器(株)製デジタルインコメーターにて、40℃、インキ0.1cc、1000rpmの条件でのタック値の最大値と初期値の差(以下△T値と称す)と最大値を示すまでの経過時間(以下Tmax値と称す)により評価を行った。△T値が小さく、Tmax値が大きいほどインキのタック値変動が少なく、インキ性能として優れている。
セットは新聞用更紙を用いて濃度1.00の展色刷を作成し、展色直後から展色面にコート紙をあて、少しずつずらしながら圧力10barをかけ、更紙からコート紙へのインキの転移を観察、転移しなくなった時間(以下セット時間と称す)により評価を行った。セット時間が短いほどセットは優れているが、セット時間が短すぎる場合には、実印刷ではガイドローラー汚れの原因となる。
印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮性の評価は、以下のゴム浸漬試験にて行った。ゴムシートA((株)金陽社製.硬度30)及びB(明和ゴム工業(株)製.硬度25)を100mm×15mm×2mmにカットし2個1組とする。これらのゴムシートを浸漬前に重量、体積、硬度を測定する。定量容器にインキを100g入れ、ゴムシートを浸漬させる。40日浸漬後に取り出し、ゴムシートに付着したインキを溶剤を使わず、布等でよく拭き取る。1時間放置後、重量、体積、硬度を測定する。浸漬前に測定した重量、体積、硬度に対し、浸漬後どれだけ変化したかの割合を、重量変化率、体積変化率、硬度変化率とし百分率で表す。ゴム中の可塑剤が抽出されると、重量及び体積は減少し、重量変化率及び体積変化率はマイナスになる。また硬度は硬くなり、硬度変化率はプラスになる。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明で得られるインキは従来の環境対応型インキと比較して、機上安定性及びセットを向上させることができる上に、問題であったゴムの伸縮に関しても大きく抑制された。したがって、本発明により、従来の環境対応型インキでも、比較例8の一部有害性が指摘される多環式芳香族成分を含んだ鉱物油タイプのインキと同レベルのゴムの伸縮度合いまで抑制させることができるインキ組成物を提供することができた。
Claims (3)
- 顔料とワニス用樹脂と溶剤とを含む印刷インキ全重量中において、ショ糖と天然油脂由来の脂肪酸をエステル交換して得られるショ糖脂肪酸エステルを1〜20重量%、植物油を10〜60重量%、非芳香族系石油溶剤を0〜40重量%含有することを特徴とする印刷インキ。
- 印刷インキが浸透乾燥型印刷インキである請求項1記載の印刷インキ。
- 請求項1または2記載のインキを用いることによる、印刷機のゴムロール及びブランケットの収縮抑制方法。
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2003
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