JP7129523B2 - オフセット印刷用インキ組成物、その製造方法、及びオフセット印刷用インキ組成物調製用ワニス - Google Patents
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まずは、本発明のオフセット印刷用インキ組成物の一実施形態について説明する。本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、着色顔料と油成分とを含み、さらに、石油アスファルトを組成物全体に対して2.5質量%以上含むことを特徴とする。本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、凹凸のない平版印刷版を用いて印刷を行うオフセット平版印刷用であり、特に、浸透乾燥方式のオフセット平版印刷において好ましく用いることができる。また、本発明のオフセット印刷インキ組成物は、湿し水を用いた水有り印刷方式については勿論、湿し水を用いない水無し印刷にも用いることができる。
着色顔料は、インキ組成物に着色力を付与するための成分である。着色顔料としては、従来からインキ組成物に使用される有機及び/又は無機顔料を挙げることができる。しかしながら、本発明のインキ組成物へ添加されるアスファルトは、カーボンブラックへの親和性、すなわち濡れ性が高く、またそれ自体が黒色に着色しているため、本発明における着色顔料としてはカーボンブラックが好ましく挙げられる。この場合、インキ組成物は黒色に着色したブラックインキとなる。なお、その他の色の顔料を着色顔料として用いる場合には、石油アスファルトからアスファルテン成分やレジン成分を抽出してなる精製アスファルトを用いることができる。
油成分は、後述する石油アスファルトを溶解又は分散させてワニスとしたり、インキ組成物の粘度を調節したりするために用いられる。油成分としては、植物油及び/又は鉱物油を挙げることができ、これまでインキ組成物の調製に用いられてきたものを特に制限なく使用できる。
本発明のインキ組成物は、組成物全体に対して2.5質量%以上の石油アスファルトを含有する。石油アスファルトとは、石油化学産業において原油を精留して各種の石油製品を得た後の残渣として得られるものであり、石油アスファルトは、さらに、原油を精留して得た残渣であるストレートアスファルトと、ストレートアスファルトを空気酸化して得たブローンアスファルトとに分類される。本発明における石油アスファルトとしては、上記のストレートアスファルトとブローンアスファルトのいずれも使用可能であり、両者を混合して用いることも可能である。石油アスファルトは、瀝青と呼ばれる、比較的分子量の大きな炭化水素やその化合物を含み、主として、ヘキサンやヘプタンに溶解しないアスファルテン成分と、ヘキサンやヘプタンに溶解するレジン成分と、アスファルトオイル成分とを含むものである。既に述べたが、通常の石油アスファルトは黒色に着色しているため、黒色以外のインキ組成物に本発明を適用する場合、アスファルテン成分やレジン成分を抽出してなる精製アスファルトを用いることが望ましい。このような精製アスファルトもまた、本発明における石油アスファルトとして用いることができる。
本発明のインキ組成物には、印刷性能を向上させる等の観点から、必要に応じて上記の各成分の他に各種成分を添加することができる。このような各種成分としては、ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性マレイン酸樹脂を除く、アルキド樹脂、石油樹脂等の樹脂類、ギルソナイト、無色顔料、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類、酸化防止剤等が例示される。
次に、上記オフセット印刷用インキ組成物の製造方法の一実施態様について説明する。以下に説明するオフセット印刷用インキ組成物の製造方法も本発明の一つである。
石油アスファルトを油成分に溶解又は分散させて得られる上記ワニス、すなわちオフセット印刷用インキ組成物調製用ワニスも本発明の一つである。本発明の一実施形態は既に説明した通りであり、ここでの説明を省略する。なお、上記の通り、このワニスを調製する際の油成分としては、上記の油成分の中から選択され、これらの中でも重質鉱物油や植物油が好ましく挙げられ、植物油としては特に大豆油が好ましく挙げられる。これら重質鉱物油と大豆油とを組み合わせることでインキ組成物の特性を調節してもよい。
冷却管、温度計、撹拌装置及び加熱装置を装着した4つ口フラスコに、ブローンアスファルトA(アスファルテン成分及びレジン成分の平均分子量8350、オイル成分37.2%、レジン成分15.1%、アスファルテン成分47.7%)50部、及び大豆油50部を仕込んだ後140℃に昇温し、撹拌しながら同温度を1時間維持することによりブローンアスファルトAを溶解させ、インキ組成物調製用ワニス1(以下、ワニス1と呼ぶ。)を得た。
冷却管、温度計、撹拌装置及び加熱装置を装着した4つ口フラスコに、ブローンアスファルトA30部、及び重質鉱物油(三共油化工業株式会社製、SNH540)70部を仕込んだ後140℃に昇温し、撹拌しながら同温度を1時間維持することによりブローンアスファルトAを溶解させ、インキ組成物調製用ワニス2(以下、ワニス2と呼ぶ。)を得た。
冷却管、温度計、撹拌装置及び加熱装置を装着した4つ口フラスコに、ブローンアスファルトA40部、大豆油20部、及び重質鉱物油(三共油化工業株式会社製、SNH540)40部を仕込んだ後140℃に昇温し、撹拌しながら同温度を1時間維持することによりブローンアスファルトAを溶解させ、インキ組成物調製用ワニス3(以下、ワニス3と呼ぶ。)を得た。
ブローンアスファルトAに代えてブローンアスファルトB(アスファルテン成分及びレジン成分の平均分子量16524、オイル成分41.2%、レジン成分15.6%、アスファルテン成分43.2%)を用いたこと以外は上記ワニス2と同様の手順で、インキ組成物調製用ワニス4(以下、ワニス4と呼ぶ。)を得た。ワニス4は、ブローンアスファルトAを用いたワニス1~3に比べて弾性が大きくなる傾向だった。
冷却管、温度計、撹拌装置及び加熱装置を装着した4つ口フラスコに、質量平均分子量10万のロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社製)28.6部、及び大豆油28.4部を仕込んだ後200℃に昇温し、撹拌しながら同温度を30分間維持することにより樹脂を溶解させた後、大豆油43部、及びエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH)を0.8部仕込み、その後175℃で50分間加熱しながら撹拌して、インキ組成物調製用ワニス5(以下、ワニス5と呼ぶ。)を得た。
冷却管、温度計、撹拌装置及び加熱装置を装着した4つ口フラスコに、質量平均分子量10万のロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社製)22部、及び大豆油22部を仕込んだ後200℃に昇温し、撹拌しながら同温度を30分間維持することにより樹脂を溶解させた後、大豆油56部、及びエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH)を0.8部仕込み、その後175℃で50分間加熱しながら撹拌して、インキ組成物調製用ワニス6(以下、ワニス6と呼ぶ。)を得た。
表1に示す処方にて各種の材料を混合し三本ロールで練肉することにより、実施例1~8、及び参考例1のインキ組成物を調製した。参考例1は、従来型のインキ組成物と同様にロジン変性フェノール樹脂を含むインキ組成物である。表1に示す配合量は質量部である。なお、表1において、「カーボンブラック」は三菱化学株式会社製のカーボンブラック#32であり、「カオリナイト」は市販の粉末状カオリナイトであり、「ギルソナイトワニス」はギルソナイト(American Gilsonite Company社製、製品名:ギルソナイト S325L)20部をAFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)80部で溶解させたものであり、「ワニス1~5」は上記のワニス1~5であり、「重質鉱物油」は三共油化工業株式会社製のSNH540である。また、表1の各実施例及び参考例において、配合された合計質量部数が異なるのは、各インキ組成物の粘度を揃えるため油成分の添加量に差があるためであり、この程度の差が評価に影響を与えることはない。
表2に示す処方にて各種の材料を混合しビーズミルで練肉することにより、実施例6~8、及び参考例2のインキ組成物を調製した。参考例2は、従来型のインキ組成物と同様にロジン変性フェノール樹脂を含むインキ組成物である。表2に示す配合量は質量部である。なお、表2において、「カーボンブラック」は三菱化学株式会社製のカーボンブラック#32であり、「カオリナイト」は市販の粉末状カオリナイトであり、「ギルソナイトワニス」はギルソナイト(American Gilsonite Company社製、製品名:ギルソナイト S325L)20部をAFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)80部で溶解させたものであり、「ワニス5~6」は上記のワニス5~6であり、「重質鉱物油」は三共油化工業株式会社製のSNH540である。なお、ストレートアスファルトA全体の平均分子量は644であり、オイル成分は48.1%であり、レジン成分は49.9%であり、アスファルテン成分は2.0%である。また、表2の各実施例及び参考例において、配合された合計質量部数が異なるのは、各インキ組成物の粘度を揃えるため油成分の添加量に差があるためであり、この程度の差が評価に影響を与えることはない。
インキ組成物の物性の一つである流動性は、顔料分散の程度や粘弾性を表す指標の一つであり、これが大きすぎればフライングやミスチング等を増加させる要因につながるし、これが小さすぎればインキ組成物の配管圧送における供給不良や壷上がり等の問題を生じる要因につながる。そこで、各実施例及び参考例のインキ組成物のそれぞれについて流動性を評価した。各実施例及び参考例のインキ組成物の流動性の評価は、垂直ガラス板流度計を用いて、25℃において、印刷インキ組成物0.5ccが重力により10分間で流れた距離(mm)を測定することにより行った。その結果を表3及び4の「流動性」欄に示す。
実施例1~8、及び参考例1~2の印刷インキ組成物のそれぞれについて、卓上乳化機(MHIソリューションテクノロジー株式会社製、製品名STIEU-02)を使用して、湿し水(サカタインクス株式会社製、エッチ液N-4の0.7%水溶液)の存在下でインキ組成物(1g)を回転ローラーで練り、0.5分間経過時点での当該インキ組成物の乳化率(%)を測定した。その結果を表3及び4の乳化率欄に示す。
本発明に係る実施例1~8のインキ組成物、及び従来型のインキ組成物である参考例1~2のインキ組成物のそれぞれについて、N-750型印刷実験機(東浜精機株式会社製)を使用して、印刷速度12万部/時で用紙を新聞用更紙として1.05±0.02のベタ紙面濃度にて印刷試験を行った。なお、ベタ紙面濃度は、印刷物におけるベタ部の濃度をSpectroeye濃度計(Gretagmacbeth社製)により測定した数値である。印刷評価では、各インキ組成物について17000部の印刷を行い、印刷時における水量の変動に対する許容幅、すなわち水幅を調べた。具体的には、水増加時における煽られ状態、すなわち湿し水の供給量が増加した際のインキ転移量低下に伴う紙面濃度の減少幅を調べるために、まず、通常の湿し水供給量で印刷を行って紙面の濃度を求めた後、意図的に湿し水の供給量を増加させた際の紙面の濃度を求めた。その結果を表3及び4の水幅試験欄に示す。また、それぞれの印刷の終了後における印刷版上の紙粉の堆積状況及び印刷物における着肉性も併せて評価した。その結果を表3及び4のパイリング欄に示す。印刷試験における湿し水としては水道水にSAH-7(サカタインクス株式会社製、アルカリH液)を0.7%加えたものを使用し、湿し水の供給にはスプレーダンプナーSSD-12(サカタインクス株式会社製)を使用し、湿し水増加条件では、SSD-12のダイヤルを60ポイント上げた状態とした。
Claims (5)
- 着色顔料としてのカーボンブラックと、油成分としての重質鉱物油及び/又は大豆油と、を含み、
さらに、石油アスファルトを組成物全体に対して2.5質量%以上含むことを特徴とし、前記石油アスファルトがその全成分の平均分子量を500~1000とするストレートアスファルトであるオフセット印刷用インキ組成物。 - ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性マレイン酸樹脂の組成物中における含有量が3質量%未満である請求項1記載のオフセット印刷用インキ組成物。
- 前記石油アスファルトを組成物全体に対して5質量%以上含む請求項1又は2記載のオフセット印刷用インキ組成物。
- 石油アスファルトを油成分に溶解又は分散させてワニスとし、これをインキ組成物の調製のためのワニスとして用いることを特徴とし、前記石油アスファルトがその全成分の平均分子量を500~1000とするストレートアスファルトであり、前記油成分が重質鉱物油及び/又は大豆油であるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
- 石油アスファルトを油成分に溶解又は分散させてなり、前記石油アスファルトがその全成分の平均分子量を500~1000とするストレートアスファルトであり、前記油成分が重質鉱物油及び/又は大豆油であるオフセット印刷用インキ組成物調製用ワニス。
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