JP6599212B2 - オフセット印刷用インキ組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、オフセット印刷用インキ組成物に関する。
オフセット印刷は、油性であるオフセット印刷用インキ組成物(以下、「インキ組成物」又は「インキ」と適宜省略する。)が水に反発する性質を利用した印刷方式であり、凹凸を備えた印刷版を用いる凸版印刷方式とは異なり、凹凸のない印刷版を用いることを特徴とする。この印刷版は、凹凸の代わりに親油性の画像部と親水性の非画像部とを備える。そして印刷に際しては、まず、湿し水によって印刷版の非画像部が湿潤されてその表面に水膜が形成され、次いでインキ組成物が印刷版に供給される。このとき、供給されたインキ組成物は、水膜の形成された非画像部には反発して付着せず、親油性の画像部のみに付着する。こうして、印刷版の表面にインキ組成物による画像が形成され、次いでそれがブランケット及び紙に順次転移することにより印刷が行われる。
そして、オフセット印刷は、印刷版の作製が比較的簡単でありながら、高い美粧性を備えた印刷物を得たり、大量の印刷物を短時間で得たりする分野に適するという特性を備える。そこで、オフセット印刷は、パンフレット、ポスター、カレンダー等といった高い美粧性が要求される分野から、新聞、雑誌、電話帳等といった高速かつ大量に印刷されることが要求される分野まで広く利用されている。
これらの分野のうち、高速かつ大量に印刷することが必要な分野では、オフセット輪転機を用いるのが一般的である。オフセット輪転機では、印刷用紙を巻き取りの状態で用紙供給部に装着し、この巻き取りを巻き解くことで印刷用紙を印刷部へ供給し印刷を行う。印刷された印刷用紙は、裁断部で裁断を受けたあと、折り加工等といった必要な加工を受けて製品となる。このような印刷方法によれば、数万部から数十万部程度の印刷を一度に行うことができるので効率的であり、その印刷速度も1時間あたり十万部以上という高速に達することもある。
このように、新聞印刷に用いられるインキ組成物は、高速回転するオフセット輪転機に対する追随性と、浸透乾燥による速やかな乾燥とを両立させることへの技術的な要求があり、高速印刷適性を付与した製品が数多く提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、このような高速印刷を行うための印刷機についても改良が重ねられている。近年では、新聞印刷用の印刷機におけるインキ組成物の供給方式として、従来用いられてきたインキ壷供給方式に加えてインキレール供給方式を採用する印刷機も多く見られるようになっている。印刷紙面は様々な画像や文字情報を含むものであるが、同じ面(ページ)内であっても、文字が主体となる部分ではインキ組成物の消費量が比較的少なく、画像が主体となる部分では(画像の内容にもよるが)インキ組成物の消費量が比較的多くなる。したがって、こうした印刷紙面を印刷する場合、面内でインキ組成物の消費量が多くなる箇所にはインキ組成物を多く供給し、逆にインキ組成物の消費量が少なくなる箇所にはインキ組成物の供給を絞るような調整を行わなければ一定の印刷濃度での印刷を行うことができなくなる。このため、印刷機には、面内の任意の位置にてインキ組成物の供給量を調節できるような機構が設けられている。
例えばインキ壷供給方式では、インキ壷の下方に設けられたキーの開度を調節することによってインキ壷からのインキ組成物の吐出量を調節できるようにされており、インキレール供給方式では、印刷紙面1頁あたり8本のインキ吐出口(スリット)が印刷紙面の幅方向に沿って離間して設けられており、それぞれのスリットからのインキ組成物の吐出速度を調節することで印刷紙面内の位置に応じたインキ組成物の供給量の調節を行えるようにされている。
インキレール供給方式においてスリットからのインキ組成物の吐出速度を調節する方法として、一定時間あたりの吐出量に変化をつけながら連続的に吐出する方式と、一定時間あたりの吐出回数に変化をつけながら定量のインキ組成物を間欠的に吐出する方式とを挙げることができる。後者の方式はデジタルインキポンプ供給方式と呼ばれ、メンテナンスの容易性やデジタル化された印刷データとの良好な親和性から近年採用例が増えてきている。デジタルインキポンプ供給方式に関する特許文献としては、例えば特許文献2や特許文献3等を挙げることができる。
特開2000−281954号公報 特開2000−355096号公報 特開2001−63004号公報
ところで、デジタルインキポンプ供給方式では、インキレールに設けられたスリットから高速回転するインキ元ローラーへ直接インキ組成物が供給され、インキレールとインキ元ローラーとの狭い間隙の中でインキ元ローラー上に膜状で存在するインキ組成物と供給されたインキ組成物とが混ざり合う。上記のように、この方式では定量のインキ組成物がスリットから間欠的に吐出されるが、この吐出がされた瞬間にインキレールの上端からインキ組成物が溢れたり、インキレール近傍のローラーにインキ組成物が転移した際にローラー回転の遠心力でインキ組成物が飛び散ったりしたりすることで、インキレールにインキ溜まり(これを「インキレール溜まり」とも呼ぶ。)を生じることがある。インキレールにインキ溜まりを生じると、溜まったインキ組成物がローラーに接触することによる印刷紙面の濃度ムラを発生させたり、印刷後の清掃作業に要する労力を増大させたりすることにつながる。
本発明者らの検討により、この現象は、インキ元ローラーの表面に存在するインキ組成物と、スリットから吐出されたインキ組成物との物性の違いに基づく混合性の不足によってもたらされるものと推察された。すなわち、周知のように、印刷版に供給された湿し水は、殆どが印刷版から印刷用紙へと消費されるが、一部はインキ組成物に乳化水として取り込まれた状態でインキ元ローラーへ届いており、ゆえにインキ元ローラーのインキ組成物は乳化インキとなっている。これに対して、スリットからインキ元ローラーへ供給されたインキ組成物は乳化されていないので、乳化しているインキ組成物と乳化していないインキ組成物との間の親和性の違いによって、インキレールの間隙にて互いに十分混ざらずに両者が分離しやすい二層になってしまい、インキレールの上端からインキ組成物が溢れたり、インキレール近傍のローラーに転移した際にローラー回転の遠心力でインキ組成物が飛び散ったりする問題を生じるものと考えられる。
このような観点からは、インキ組成物の乳化性を低下させて、インキ元ローラーにおけるインキ組成物の乳化の程度を小さくすればよいと予想される。しかしながら、インキ組成物の乳化の程度を小さくすると、印刷紙面のベタ部等に「白ポチ」と呼ばれる小さな白点を生じてしまい、印刷適性の面で問題を生じることがある。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、インキレール供給方式の印刷機に適用した際のインキレール溜まりを抑制しつつ、白ポチといった印刷適性面での問題が抑制されたオフセット印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、着色成分と、バインダー樹脂と、油成分と、を含んでなるオフセット印刷用インキ組成物に対してジアルキルグリコールエーテル化合物を0.3質量%〜5質量%程度添加することにより、意外にも、インキレール溜まりを抑制しながら白ポチの発生も抑えられることを見出した。本発明は、以上の知見によりなされたものであり、以下のようなものを提供する。
本発明は、着色顔料と、バインダー樹脂と、油成分と、を含んでなり、さらに、下記一般式(1)で表すジアルキルグリコールエーテル化合物を組成物中に0.3質量%〜5質量%含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物である。
Figure 0006599212
(上記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜8の整数である。)
上記一般式(1)中のRは、水素原子であることが好ましい。
上記ジアルキルグリコールエーテル化合物は、ジエチレングリコールジブチルエーテルであることが好ましい。
本発明によれば、インキレール供給方式の印刷機に適用した際のインキレール溜まりを抑制しつつ、白ポチといった印刷適性面での問題が抑制されたオフセット印刷用インキ組成物が提供される。
以下、本発明のオフセット印刷用インキ組成物の一実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、特に、インキレール供給方式の新聞印刷用輪転機に対して好ましく用いられ、着色顔料と、バインダー樹脂と、油成分と、を含んでなり、さらに、上記一般式(1)で表すジアルキルグリコールエーテル化合物を組成物中に0.3質量%〜5質量%含むことを特徴とする。以下、各成分について説明する。
[着色顔料]
着色顔料は、インキ組成物に着色力を付与するための成分である。着色顔料としては、従来からインキ組成物に使用される有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。
このような着色顔料としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、カーボンブラック等の黒色顔料等が例示される。
着色顔料の添加量としては、インキ組成物の全体に対して8〜30質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、イエロー顔料を使用してイエローインキ組成物を、マゼンタ顔料を使用してマゼンタインキ組成物を、シアン顔料を使用してシアンインキ組成物を、黒色顔料を使用して墨インキ組成物をそれぞれ調製する場合には、補色として、他の色の顔料を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、印刷用紙の表面で上記顔料を固定するバインダーとして機能する成分であり、また、上記顔料をインキ組成物中に分散させるために用いられる成分でもある。このようなバインダー樹脂としては、インキ組成物の分野で通常使用されるものを特に制限なく挙げることができ、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、アルキド樹脂、植物油変性アルキド樹脂、石油樹脂等が例示される。これらの樹脂の重量平均分子量としては、1000〜30万程度を好ましく例示することができる。これらのバインダー樹脂は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、良好な顔料分散性及び印刷品質、並びに長時間にわたる安定な印刷適性といった観点からは、バインダー樹脂として、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂及びアルキド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、ロジン変性フェノール樹脂を含むことがより好ましい。ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性マレイン酸樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されないが、1万〜30万程度を例示することができ、アルキド樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されないが、1000〜3万程度を例示することができる。なお、樹脂の添加量としては、印刷インキ組成物全体に対して、10〜45%程度を好ましく例示できる。
バインダー樹脂は、後述する油成分とともに加熱されることにより溶解又は分散され、ワニスとされた状態で使用される。ワニスを調製する際、樹脂を溶解させて得られた溶解ワニス中に2価以上の金属アルコキシ化合物をゲル化剤として投入し、ゲル化ワニスとしてもよい。バインダー樹脂からゲル化ワニスを調製し、これをインキ組成物の調製に用いることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与することができるので好ましい。
[油成分]
油成分は、バインダー樹脂を溶解させてワニスとしたり、インキ組成物の粘度を調節したりするために使用される。油成分としては、植物油及び/又は鉱物油を挙げることができ、これまでインキ組成物の調製に用いられてきたものを特に制限なく使用できる。
本発明において、植物油には、植物油の他に植物油由来の脂肪酸エステル化合物が含まれてもよい。植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等の乾性油や半乾性油等が例示される。また、植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記植物油に由来する脂肪酸のモノアルキルエステル化合物等が例示される。この脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく例示され、このような飽和又は不飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が好ましく例示される。脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成するアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく例示され、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく例示される。
これらの植物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。植物油としては、大豆油、大豆油脂肪酸エステル等が好ましく例示される。インキ組成物における植物油の含有量としては、インキ組成物全体に対して20〜60質量%程度を例示することができる。
本発明において、鉱物油としては、溶剤とも呼ばれる軽質の鉱物油や、潤滑油状である重質の鉱物油等が挙げられる。
軽質の鉱物油としては、沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上の非芳香族系石油溶剤が例示される。このような非芳香族系石油溶剤としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の0号ソルベント、同AFソルベント5号、同AFソルベント6号、同AFソルベント7号等が例示される。
重質の鉱物油としては、スピンドル油、マシン油、ダイナモ油、シリンダー油等として分類されてきた各種の潤滑油を挙げることができる。これらの中でも、米国におけるOSHA基準やEU基準に適応させるとの観点からは、縮合多環芳香族成分の含有量が抑制されたものであることが好ましい。このような鉱物油としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のインクオイルH8、同インクオイルH35(いずれも商品名)、三共油化工業株式会社製のSNH8、同SNH46、同SNH220、同SNH540(いずれも商品名)等が例示される。
これらの鉱物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。インキ組成物における鉱物油の含有量としては、インキ組成物全体に対して0〜50質量%程度を例示することができる。
[ジアルキルグリコールエーテル化合物]
本発明のインキ組成物は、上記の着色顔料、バインダー樹脂及び油成分に加えて、下記一般式(1)で表すジアルキルグリコールエーテル化合物を含む。次に、このジアルキルグリコール化合物について説明する。
Figure 0006599212
印刷機のインキ元ローラーへ供給されたインキ組成物は、複数のローラー群を介して印刷版へと供給され、同じく印刷版へ供給された湿し水と接触することで乳化インキとなる。この乳化インキは、印刷版上でインキ組成物と湿し水とに分離して、前者は印刷版上の画像部へ移行し、後者は印刷版上の非画像部へ移行して、最終的にこれらは印刷用紙へと転写される。しかしながら、一部の乳化インキは再度ローラー群を介してインキ元ローラーへ戻るので、インキ元ローラー上で膜を形成しているインキ組成物はある程度乳化した状態となっている。
既に述べたように、インキ元ローラー上で膜を形成しているインキ組成物の乳化の程度が高い場合には、インキレールのスリットから供給された新しいインキ組成物との混合性に問題を生じてインキレール上にインキ溜まり(インキレール溜まり)を形成することもある。このような場合に、モノアルキルグリコールエーテル(上記一般式(1)におけるRが水素原子となる化合物)等の各種の界面活性剤をインキ組成物に添加することで、インキ元ローラー上で膜を形成しているインキ組成物の乳化の程度を低くすることが有効である。これらの界面活性剤をインキ組成物に添加した場合にインキ元ローラー上で膜を形成しているインキ組成物の乳化の程度が低くなる理由は必ずしも明らかでないが、こうした界面活性剤を含むインキ組成物が乳化されると、それに含まれる乳化水(湿し水)の水滴が大きくなる傾向があり、それゆえ、ローラー間でせん断を受けた際に乳化インキから乳化水が容易に分離するためと推察される。実際、こうした界面活性剤をインキ組成物へ添加することにより、インキレール溜まりは減少する傾向にある。
ところで、印刷用紙に対して印刷を行っていると、印刷用紙に接触しているブランケットに紙粉が付着し、やがてこの紙粉はブランケットに接触している印刷版に付着する。こうした紙粉は親水性でありこれが印刷版の画像部に付着すると、画像部上の紙粉に湿し水が吸収されてインキ組成物が付着しにくくなる。この場合、得られた印刷物では、印刷版の画像部上で紙粉の存在していた箇所にインキの抜けである白点が観察されるようになる。この白点は「白ポチ」と呼ばれ、印刷物の商品価値を毀損する要因の一つであるが、この白ポチは、上記のように界面活性剤を含んで乳化の程度が低くなったインキ組成物を用いて印刷を行った場合に顕著に観察されるものである。また、このような現象の程度がより酷くなると版パイリングの発生に繋がり、さらに印刷物の商品価値が毀損される結果となる。
このように、界面活性剤を用いてインキレール溜まりを軽減させようとすると、今度は白ポチや版パイリングといった印刷適性面での問題を生じることになり、これら相反する要求を同時に満足させるような手法がなかったのが現状である。
このような状況において、本発明者らは、上記一般式(1)で表されるジアルキルグリコールエーテル化合物をインキ組成物中に添加することにより、意外にも、上記の相反する要求を同時に満足させられることを見出し、本発明を完成させるに至った。ジアルキルグリコールエーテル化合物をインキ組成物中に添加することにより、これらの要求を両方とも満足できる理由は必ずしも明らかでないが、グリコール化合物に2つ存在する水酸基の両方をエーテルとすることによって親水性と親油性のバランスが変化したことと関係があるものと推察される。
上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、これらのアルキル基には酸素原子、硫黄原子、窒素原子等の異種原子が含まれてもよい。また、R及びRは、互いに同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基である。Rが水素原子であれば、上記ジアルキルグリコールエーテル化合物はポリエチレンオキシド骨格を有することになるし、Rがメチル基であれば、上記ジアルキルグリコール化合物はポリプロピレンオキシド骨格を有することになる。これらの中でも、Rは水素原子であることが好ましい。
上記一般式(1)において、nは、1〜8の整数である。nとしては、2〜6の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましい。
上記一般式(1)で表すジアルキルグリコールエーテル化合物として、ジエチレングリコールジブチルエーテルを特に好ましく挙げることができる。ジアルキルグリコールエーテル化合物としてジエチレングリコールジブチルエーテルを選択することにより、インキレール溜まりの抑制と、白ポチの抑制とをバランス良く両立できるので好ましい。
インキ組成物中における上記ジアルキルグリコールエーテル化合物の含有量は、0.3質量%〜5質量であり、0.5質量%〜3質量%が好ましく、0.5質量%〜2質量%がより好ましく、0.5質量%〜1.5質量%がさらに好ましく、0.5質量%〜1質量%が特に好ましい。
[その他の成分]
本発明のインキ組成物には、印刷性能を向上させる等の観点から、必要に応じて上記の各成分の他に各種成分を添加することができる。このような各種成分としては、無色顔料、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類、酸化防止剤等が例示される。
無色顔料は、体質顔料とも呼ばれ、顔料成分の一つである。この無色顔料は、インキ組成物における流動性等といった特性を調節するために好ましく使用される。無色顔料としては、クレー、タルク、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、ベントナイト、酸化チタン等が例示される。無色顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して0〜33質量%程度が例示されるが、特に限定されない。
上記の各成分を用いて本発明のインキ組成物を製造するに際しては、従来公知の方法を用いることができる。このような方法としては、上記の各成分を混合した後にビーズミルや三本ロールミル等で練肉することで着色顔料を分散させた後、水、及び必要に応じて油成分や添加剤(酸化防止剤、アルコール類、ワックス類等)等を加えてよく撹拌し、さらに粘度調整することを例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明のインキ組成物をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[インキ組成物用ワニスの調製]
冷却管、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、重量平均分子量10万のロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社製)35部、大豆油20部及びAFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)44.5部を仕込んだ後200℃に昇温し、同温度を1時間維持することにより樹脂を溶解させた後、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH)を0.5部仕込み、その後170℃で60分間加熱保持して、ワニスを得た。
[インキ組成物の調製]
表1に示す処方にて大豆油を除く各種の材料を混合し三本ロールにて練肉後、表1に示す処方にて大豆油を添加して混合することによりインキベースを得た。表1に示す各配合量は質量部である。表1において、「カーボンブラック」は三菱化学株式会社製のカーボンブラックMA70であり、「ワニス」は上記手順にて調製したインキ組成物用ワニスであり、「ギルソナイトワニス」はギルソナイト(American Gilsonite Company社製、製品名:ギルソナイト S325L)20部をAFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)40部及びナフテン系ベースオイル(三共油化株式会社製、製品名:SNH540)40部の混合油で溶解させたものであり、「ベースオイル」は上記ナフテン系ベースオイル(製品名:SNH540)である。
Figure 0006599212
このインキベースに対して、表2に示す界面活性剤を加えて混合することによりRUN1〜16の各インキ組成物を得た。各界面活性剤の添加量は表2における「添加量」欄に示す通りであり、これはインキベース100質量部に対する質量部である。なお、これらのインキ組成物のうち、RUN1〜3のインキ組成物が本発明の実施例に相当し、RUN4〜16が比較例に相当する。また、下記表2に示した界面活性剤のうち、ソルビタンモノオレエートは花王株式会社製のSP−O10Vであり、ソルビタンモノラウレートは花王株式会社製のSP−L10であり、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートは花王株式会社製のTW−O120Vであり、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートは花王株式会社製のTW−L106である。
[印刷評価(インキレール溜まり評価)]
RUN1〜16のインキ組成物のそれぞれについて、デジタルインキポンプを備えたインキレールをインキ元ローラーに装着したN−750型印刷実験機(東浜精機株式会社製)を使用し、印刷速度12万部/時で用紙を新聞用更紙としてベタ紙面濃度を1.1として印刷試験を行った。なお、ベタ紙面濃度は、印刷物におけるベタ部の濃度をSpectroeye濃度計(Gretagmacbeth社製)により測定した数値である。各インキ組成物について2万部の印刷を行い、それぞれの印刷の終了後におけるインキレール溜まり目視で観察し評価した。評価基準は以下の通りとし、その結果を表2の「インキレール溜まり」欄に示す。
○:インキレール溜まりは殆ど目立たず、良好である
△:インキレール溜まりがやや目立つが実用範囲内である
×:インキレール溜まりが多い
[印刷評価(白ポチ評価)]
上記の印刷試験の終了付近における印刷紙面をサンプリングし、ベタ部における白ポチの発生状況を目視で観察し評価した。評価基準は以下の通りとし、その結果を表2の「白ポチ」欄に示す。
○:白ポチは観察されなかった
△:若干の白ポチが観察された
×:やや目立つ程度に白ポチが観察された
Figure 0006599212
界面活性剤を含まないRUN4と比較すると、本発明の実施例であるRUN1〜3では、白ポチの悪化を招くことなくインキレール溜まりが改善される一方で、比較例であるRUN5〜16では、インキレール溜まりが改善しても白ポチが悪化してしまう結果となった。このことから、本発明のインキ組成物によれば、白ポチの悪化を抑制しつつインキレール溜まりを改善できることが理解される。

Claims (3)

  1. 着色顔料と、バインダー樹脂と、油成分と、を含んでなり、
    さらに、下記一般式(1)で表すジアルキルグリコールエーテル化合物を組成物中に0.3質量%〜5質量%含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物。
    Figure 0006599212
    (上記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜8の整数である。)
  2. 前記一般式(1)中のRが水素原子である請求項1記載のオフセット印刷用インキ組成物。
  3. 前記ジアルキルグリコールエーテル化合物がジエチレングリコールジブチルエーテルである請求項1又は2記載のオフセット印刷用インキ組成物。
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