JP2016098352A - 印刷インキ組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
水無し平版印刷では湿し水の代替としてシリコーンゴムがインキを反発する性質を利用するが、印刷機上で冷却効果を発揮する湿し水を使用しないため、印刷機上の温度及び室温等の印刷環境の温度管理を厳密に行う必要があり、水無し平版印刷の普及は従来の湿し水を用いた印刷に比べて未だ低いのが現状である。
石油系溶剤に由来するインキ中の揮発性成分を削減することを課題の一つとする本願発明とは課題が異なる。さらに体質顔料と水を必須成分とし、各種アルコールや界面活性剤、乳化剤等を必要としない本願発明とは印刷インキの構成が異なっている。
本発明には水を吸収させた吸水性樹脂の粒径が150ミクロン以下であるようなものが使用できるとの記載があるが、印刷紙面上のインキ膜厚が数ミクロン程度の平版印刷では数十ミクロンを超える粗大粒子はローラー、版、ブランケット等の印刷機上に堆積し、インキの転移を少なからず阻害する。したがって、本文献に記載の方法では印刷の進行とともに水分を吸収した高吸水性樹脂が印刷機上に堆積し、インキの転移不良や紙面品質の低下を引き起こすことが容易に予見できる。また本文献には体質顔料がインキ中に分散した水を安定化し、水分離を抑制することを示唆する記載はない。
尚エマルションインキとは、インキの製造後、印刷の使用に供されるまでの間、印刷インキ組成物中の水成分が微細に均一に分散した状態(乳化した状態)で安定して存在しているものを言う。
(1)着色剤、体質顔料及び水を含有し、
前記の体質顔料が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、アルミナホワイト、カオリンクレー、及び有機ベントナイトから成る群から選ばれる一つ以上であり、
前記の体質顔料を0.1〜20質量%含有し、
前記の水を1〜25質量%含有する平版印刷インキ組成物である。
(2)さらに本発明は、前記(1)に記載の平版印刷インキ組成物を用いた印刷物である。
また上記の体質顔料を用いず、界面活性剤等の乳化剤のみを使用した場合に比べて印刷時の汚れを抑制することができる。
さらに、水を添加することでインキ中の石油系溶剤量を削減でき、温室効果ガスおよび揮発性有機化合物(VOC)を含む関連ガスの排出量削減、枯渇性資源の使用量を低減することができる。
本発明の印刷インキ組成物は湿し水を用いる平版オフセット印刷に好適に用いることができる。また湿し水を用いない平版印刷(水なし平版とも呼ばれる)にも好適に用いられる。
但し前記の(a)着色剤、(e)体質顔料、及び(g)水は必須成分として含有するが、その他の成分は必須成分ではない。
(a)着色剤・・・・・5〜30重量%
(b)ビヒクル・・・・10〜60重量%
(c)石油系溶剤・・・0〜40重量%
(d)植物油・・・・・1〜50重量%
(e)体質顔料・・・・0.1〜20重量%
(f)助剤・・・・・・0〜10重量%
(g)水・・・・・・・1〜25重量%
からなる組成にて使用される。
本発明の着色剤として、公知公用の各種の無機顔料および有機顔料を用いることができる。無機顔料の例としては二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー等の酸化物、酸化鉄黄、ビリジアン等の水酸化物、硫化亜鉛等の硫化物、黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸塩、ホワイトカーボン、群青などのケイ酸塩、紺青やカーボンブラック等の各種顔料が挙げられる。有機顔料の例としてはレーキ(捺染系)顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、蛍光顔料等の各種顔料が挙げられる。着色剤は単独で使用しても良いし、複数のものを組み合わせて使用しても良い。
印刷インキのビヒクルとは、樹脂を油等の溶剤に溶解した樹脂溶液や、それらを加熱して粘度を調整したもの等を総称したものである。例えばロジン変性フェノール樹脂を用いたビヒクルはロジン変性フェノール樹脂と呼ばれることもあり、又ロジン変性フェノール樹脂ワニスとも呼ばれる。
本発明の印刷インキ組成物に用いるビヒクルは、一般に湿し水を用いて印刷する平版オフセット印刷インキに用いられるビヒクルであり、水性インキ等と呼ばれるインキのビヒクルとは異なる。水性インキ等のビヒクルにはしばしば水性樹脂や水分散性樹脂が用いられる。前記したように、水性インキは水との親和性が高いため、水と油との反発を利用する印刷方式である湿し水を用いた平版オフセット印刷には適していない。
本発明で用いるロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は1万〜30万のものが好ましい。
本発明の印刷インキに用いる石油系溶剤としては、平版印刷用インキ溶剤として利用されているものを特段の制限なく利用できる。例示すれば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、シクロヘキサン、シクロヘキシルメタン、オクタデシルシクロヘキサン、メチルイソプロピルシクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、およびJX日鉱日石エネルギー株式会社製の「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」、「AFソルベント7号」など、およびこれらの溶剤の相当品や混合物、そのほかにスピンドル油、マシン油、シリンダー油等が挙げられる。
本発明の印刷インキに用いられる植物油としては、ヤシ油、ヒマシ油、落花生油、オリーブ油などの不乾性油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、米ぬか油などの半乾性油、およびアマニ油、エノ油、キリ油などの乾性油、再生植物油、植物油エステル等の植物由来成分などが例示される。
本発明の印刷インキに用いられる体質顔料としては保水性を有するものが好ましく、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナホワイト、カオリンクレー、有機ベントナイト等が例示される。これらの体質顔料は単独で用いても良いし、異なる種類のものを組み合わせて使用しても良い。
前記の体質顔料の中では、炭酸カルシウム、有機ベントナイト及びアルミナホワイトが好ましく、有機ベントナイト及びアルミナホワイトがより好ましい。
保水性の観点から、これらの体質顔料は表面を疎水性処理したものより、未処理のものが好ましく、親水化処理したものがさらに好ましい。例えば炭酸カルシウムの場合,表面を脂肪酸処理したものに比べて未処理のものの方が好ましく、未処理のものより樹脂酸処理したものの方がより好ましい。
また粒径については、細かいものほど水を保持する表面積が大きくなるため、インキの流動性や印刷時のインキ転移性を損なわない範囲で粒径の細かいもの、比表面積の大きい体質顔料ほど好ましい。
さらに、体質顔料の含有量が高いほどインキ中に分散した水が安定化され、水分離が生じにくくなるが、インキの流動性が低下する。そのため、印刷インキ中への添加量としては0.1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、インキの流動性と水の安定分散の観点から2〜10重量%がさらに好ましい。
助剤にはドライヤー、皮張り防止剤、ゲル化剤等の粘度調整剤、ポリエチレン系やフッ素系に代表される各種ワックスや皮膜強化剤、顔料分散剤、汚れ防止剤等が含まれる。
前記したように、従来の水性インキにおいては、乳化剤、界面活性剤、アルコール等のが、水のインキ中における分散状態を高め、その状態を保持するために用いられることがある。
これらの乳化剤等は本発明の印刷インキ組成物には必須でないが、紙面品質や印刷適性を損なわない範囲の量を添加してもよい。
本発明の印刷インキ組成物の水成分としは、水道水や蒸留水、軟水化装置によるイオン交換水等を用いることができる。また、平版印刷用の湿し水に使用される各種添加剤を添加してもよい。インキ中の水の含有量を高めることで石油系溶剤量を削減し、より環境に優しい印刷インキを提供することが可能となる。
しかしながら、水の含有率が高くなるにつれてインキの流動性が低下する傾向にある。
そのため、本発明で用いる水の印刷インキ中の含有量は1〜25重量%が好ましい。より好ましくは1〜20重量%で、印刷適性等の観点から1〜15重量%がより好ましく、3〜10%がさらに好ましい。
<ロジン変性フェノール樹脂ワニスの調製>
コンデンサー、温度計、攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(DIC株式会社製、重量平均分子量6.5万、酸価16.0)45部、大豆油(日新オイリオ株式会社製)42部を仕込み、225℃で1時間加熱攪拌する。
その後、AFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)12.7部、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH−50F 川研ファインケミカル株式会社製)0.3部を加え、ロジン変性フェノール樹脂ワニスを得た。このロジン変性フェノール樹脂ワニスを実施例及び比較例で使用した。
前記の方法で得られたロジン変性フェノール樹脂ワニスを用い、表1に示す配合に従って3本ロールミルにてインキ中の粗大粒子の粒経が5μm以下になるように練肉分散し、石油系溶剤(AFソルベント6号)、乾燥防止剤として2、6−ジ−ターシャリーブチル−4−クレゾール(H−BHT 本州化学工業株式会社製)を混合し、表1のベースインキ1〜9の合計9点を得た。
溝の深さ(溝の目盛)が25μmから0μmまで直線的に変化しているグラインドメータのゲージ盤上の一番深いところにインキ等の試料を置き、スクレーパーを用いて溝の浅い方向に掻き取るようにして溝内に試料の膜を作る。ゲージ盤上には溝の深さを示す目盛が刻まれている。試料中に粒子が存在すると、その粒子がスクレーパーに引っ掛かり、掻き取られて移動することにより、その粒子の大きさ(直径等)より浅い溝内に線が生じる。その線を観察し、10mm以上連続した線が、一つの溝について3本以上現れたところの目盛の値をAとし、10本以上現れたところの目盛の値の位置をBとする。本願発明では、前記位置Aにおける溝の深さをそのインキ中の粗大粒子の粒径とする。
上記で調整したベースインキと水とを表2及び表3に示す配合に従いラボミキサーにて混合し、試作インキ13点(実施例1〜10、比較例1〜3)を得た。比較例2は乳化剤も添加している。
前記の処方で作成した実施例及び比較例のインキ(合計13点)について、(1)エマルションインキの乳化安定性、及び(2)印刷紙面品質を評価した。
また、実施例1及び比較例3については(3)再印刷時の損紙枚数を評価した。具体的な評価方法は以下の通りである。表2及び表3に評価結果を示す。
インキが水と乳化して形成されるエマルションの状態の安定性を評価するため、試作インキを平滑なガラス板上にヘラで薄くのばして薄膜とし、水滴が分離して出てくるかどうかを目視で確認する。水滴が分離して出てこない方がインキの乳化性が良好である。
体質顔料を含まない比較例1のインキを基準(STD)とし、水分離が比較例1と同等のものを△、比較例1より水分離が少ないものを○、水分離の無いものを◎として、乳化安定性を評価した。但し比較例3については水を含有していないので、本評価を実施していない。
実施例1〜10及び比較例1〜3の印刷インキ組成物(全13点)を用いてN−600型印刷機(東浜精機株式会社製)にて印刷速度12万部/時、新聞用更紙を使用して、ベタ部の紙面濃度が1.25±0.04の条件で印刷を行い、印刷紙面上の汚れを目視にて評価した。実用上、問題のない場合を○とし、実用上問題になる程度以上に汚れが発生している場合を×とした。
新聞印刷において損紙枚数、すなわち印刷機が安定状態に達するまでの不良印刷物の枚数を削減することは、印刷に関わるコストを削減する上で重要な課題である。損紙枚数の少ないほうが、より短い時間で実用的な印刷紙面が得られ、新聞紙の使用量削減につながる。
実施例1と比較例3については、上述の印刷紙面品質を評価するための印刷テスト終了後、10分間印刷機を停止した後、再度印刷機を稼動して、損紙枚数を評価した。
尚、表2には比較例3に含まれる石油系溶剤量を基準としたときの実施例1〜10の石油系溶剤量削減率(%)も合わせて記載した。
カーボンブラック:カーボン#95(三菱化学株式会社製)
アルキッド樹脂:DIC株式会社製アルキッド樹脂
炭酸カルシウム1:ハクエンカT−DD(白石工業株式会社製、表面処理:樹脂酸)
炭酸カルシウム2:Brilliant−1500(白石工業株式会社製、未処理品)
有機ベントナイト:エスベン(株式会社ホージュン社製)
クレー:カオリンクレーASP−101(BASFジャパン株式会社製)
アルミナホワイト:アルミナホワイトBS(大明化学工業株式会社)
シリカ:AEROSIL150(日本アエロジール株式会社製)
H−BHT:2、6−ジ−ターシャリーブチル−4−クレゾール(本州化学工業株式会社製)
大豆油:日新オイリオ株式会社製
AFソルベント6号:印刷インキ用ノンアロマ溶剤(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)
本願発明の印刷インキ組成物は、乳化剤を添加しないので印刷時に汚れを発生しにくく、さらに水を添加することでインキ中の石油系溶剤量を削減できる。枚葉インキ、ヒートセットインキに代表される平版インキと新聞インキは日本国内で年間15万トン以上が使用されており、本願発明を用いてインキ中の石油系溶剤量を1%削減できれば、年間1,500トン以上の削減が可能となり、温室効果ガスおよび揮発性有機化合物(VOC)を含む関連ガスの排出量削減と枯渇性資源の使用量低減に大きく寄与することができる。
Claims (2)
- 着色剤、体質顔料及び水を含有し、
前記の体質顔料が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、アルミナホワイト、カオリンクレー、及び有機ベントナイトから成る群から選ばれる一つ以上であり、
前記の体質顔料を0.1〜20質量%含有し、
前記の水を1〜25質量%含有する平版印刷インキ組成物。 - 請求項1に記載の平版印刷インキ組成物を用いた印刷物。
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