JP4860908B2 - 孔版印刷用エマルションインキ - Google Patents
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特に孔版印刷機においてインキの乾燥はインキの紙への浸透性のみに頼っていることから
他印刷システムと比較し、乾燥が遅く画像上のインキ皮膜が弱いことからフィードローラー汚れの問題は深刻である。
また、植物油を使用した孔版印刷用エマルションインキは、印刷によるフィードローラー汚れが生じてしまうという問題がある。更に、飲食物の製造に使用され残された油(廃食油)は再生処理することによって試料の製造に用いたり、燃料としたり、加工して石鹸としたりして再利用されているが、廃食油の生産量は年々増加しており、処理しきれておらず、その有効利用を図ることができていないのが現状である。
<1> 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含み、該油相中に植物油及び大豆油脂肪酸アルキド樹脂を含有することを特徴とする孔版印刷用エマルションインキである。本発明の孔版印刷用エマルションインキにおいては、植物油と大豆油脂肪酸アルキド樹脂を混合し使用することで植物油のみを含有するインキに比べ印刷によるフィードローラー汚れを大幅に改善でき、また、植物油を多く使用することにより、より安全性に優れたインキを得ることが可能となった。更に、大豆油と大豆油脂肪酸アルキド樹脂の合計がインキ全体の6質量%以上であるとすると、米国大豆協会の大豆油インキとしての認定を満たすので好ましい。
前記油相の混合割合が10質量%未満であると、W/O型エマルションとしての形態をとれなくなることがあり、90質量%を超えると、物性的にW/O型エマルションとすることの効果が不足してしまうことがある。
−大豆油脂肪酸アルキド樹脂−
前記大豆油脂肪酸アルキド樹脂は、油脂として大豆油、多塩基酸、及び多価アルコールを含有してなる。前記油脂としては大豆油以外にも、必要に応じてヨウ素価が80以下であるアマニ油、キリ油等の乾性油も一部使用してもよい。更に必要に応じて、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、ひまし油、米糠油、綿実油等のヨウ素価が80以下の不乾性油、半乾性油又はこれらの脂肪酸を使用することもできる。
前記多塩基酸としては、飽和多塩基酸及び不飽和多塩基酸のいずれかを用いることができる。前記飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられる。前記不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、マンニット、ソルビットなどが挙げられる。
前記大豆油脂肪酸アルキド樹脂の油長は油脂中の脂肪酸がトリグリセライドで存在したときの樹脂中の質量%で示され、分散安定性、及び皮膜形成による版銅スクリーンの目詰まりを改善する観点から、油長は60〜90質量%が好ましい。また、前記大豆油脂肪酸アルキド樹脂のヨウ素価は80以下が好ましい。
前記大豆油脂肪酸アルキド樹脂の添加量は、前記孔版印刷用エマルションインキの総質量に対し1〜7質量%が好ましく、3〜7質量%がより好ましい。前記大豆油脂肪酸アルキド樹脂の添加量が少なすぎると、定着性への効果が小さくなることがあり、前記大豆油脂肪酸アルキド樹脂の添加量が多すぎると、インキの塑性粘度が高くなり、ドラム後端からインキが漏れるなどの印刷適性に問題が生じることがある。
前記植物油としては、大豆油、エステル化植物油、及び再生エステル化植物油の少なくともいずれかが用いられる。
前記エステル化植物油、又は再生エステル化植物油に用いられる植物油としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、脱水ひまし油、つばき油、オリーブ油、やし油、米油、綿実油、パーム油、あまに油、パーム核油、桐油、カメリアオイル、グレープシード油、スイートアルモンド油、ピスタチオナッツ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、メドウホーム油、などが挙げられ、これらの中でも、大豆油、菜種油、コーン油、サフラワー油が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記エステル化植物油としては、前記植物油をエステル化したものが挙げられ、前記エステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル等が挙げられる。
前記再生エステル化植物油は、前記植物油を使用し、廃食油として回収し再生した植物油をエステル化したものが挙げられる。前記エステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル等が挙げられる。前記廃食油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲食店、学校給食、総菜屋などで天ぷらなどの製造に使用した植物油を回収したものが挙げられ、これら以外にも、使用後の植物油で再生可能なものであれば適用可能である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記植物油の添加量が1質量%未満であると、安全性及び環境面でのメリットに乏しくなることがあり、40質量%を超えると、他の成分により物性等をコントロールすることが困難となることがある。
前記鉱物油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤、スピンドル油、流動パラフィン、軽油、灯油、マシン油、ギヤー油、潤滑油、モーター油、等が挙げられ、これらの中でも、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤が特に好ましい。
前記パラフィン系オイルとしては、市販品を用いることができ、例えば三和化成工業株式会社製のサミックスGAシリーズ、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックシリーズ、日本石油株式会社製の日石スーパーオイルシリーズ、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ等が挙げられる。
前記ナフテン系オイルとしては、環分析によるナフテン成分の炭素含有量(CN)が30%以上であり、芳香族成分の炭素の含有量(CA)が20%以下であり、かつパラフィン成分の炭素含有量(CP)が55%以下であるものが好適であり、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックオイル155及び300ID、ガーゴオイルアークティックオイルライト、ガーゴオイルアークティックオイルCヘビー;出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ;日本サン石油株式会社製のサンセンオイルシリーズなどが挙げられる。
前記石油系溶剤としては、市販品を用いることができ、例えば、エクソン化学社製のアイソパーシリーズ及びエクソール;日本石油株式会社製のAFソルベントシリーズなどが挙げられる。
なお、必要に応じて安全性の高いアロマー系オイル(例えば、特開平11−80640号公報)を使用することもできる。
前記鉱物油の添加量が1質量%未満であると、印刷直後のこすれ汚れ性が多少悪くなることがあり、40質量%を超えると、他の成分により物性等をコントロールすることが困難となることがある。
前記着色剤としては、各種色調の公知の顔料、分散染料などを用いることができ、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉;弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料;無金属フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料等のフタロシアニン系顔料;アントラキノン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、イソインドリン系色素、ジオキサンジン系色素、スレン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジゴ系色素、キノフタロン系色素、金属錯体等の縮合多環系顔料;酸性又は塩基性染料のレーキ等の有機顔料;ジアゾ染料、アントラキノン系染料等の油溶性染料;蛍光顔料、などが挙げられ、これらの中でも、カーボンブラック、アゾレーキ顔料、フタロシアニン系顔料などが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤の孔版印刷用エマルションインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常2〜15質量%が好ましい。
前記体質顔料の孔版印刷用エマルションインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜50質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
前記酸化防止剤の添加によって油相中のバインダー樹脂等の酸化を防ぎ、これによってインキ粘度の上昇等が防止される。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中の油相の総量に対し2質量%以下が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。
前記水相は、エマルションの形成を妨害しない範囲で、水、電解質、水溶性高分子化合物、O/W樹脂エマルション、防腐・防かび剤、水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤、pH調整剤などを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電解質の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水相の0.1〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。
前記天然高分子化合物としては、例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、プルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等が挙げられる。
前記半合成高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等が挙げられる。
前記合成高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のアクリル酸樹脂誘導体;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル等の合成高分子などが挙げられる。
前記水溶性高分子化合物の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキに含まれる水の25質量%以下が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
また、前記水中油型樹脂エマルションの分散方法についても特に制限はなく、分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成したものでもよい。前記水中油型樹脂エマルションの最低造膜温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、40℃以下が好ましい。
前記防腐・防かび剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中に含まれる水の総質量に対し3質量%以下が好ましく、0.1〜1.2質量%がより好ましい。
前記低級飽和一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール等が挙げられる。
前記水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中の水の総質量に対し15質量%以下が好ましく、4〜12質量%がより好ましい。
以上説明したように、本発明の孔版印刷用エマルションインキは、放置後の目詰まりや印刷における画像立ち上がりの遅延の不具合がなく、両面印刷時のフィードローラー汚れを大幅に改善することができ、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
フタロシアニンブルー(東洋インキ製造株式会社製)4.5質量%、カーボンブラック(コロンビアカーボン株式会社製、ラーベン1100)0.5質量%、顔料分散剤としてのアルミニウムキレート(味の素ファインテクノ株式会社製)0.5質量%、鉱物油としてのサミックGA 1046(三和化成工業株式会社製)6.0質量%、及び植物油としての大豆油3.0質量%を3本ロールで練肉することで顔料分散体を調製した。この顔料分散体に、鉱物油としてのサミックGA 1046(三和化成工業株式会社製)8.7質量%、大豆油脂肪酸アルキド樹脂3質量%、及びソルビタンセスキオレート4.0質量%を加え混合して、油相を調製した。
一方、エチレングリコール10.0質量%、p−オキシ安息香酸メチル0.1質量%、硫酸マグネシウム1.0質量%、及び水道水58.7質量%を混合して水相を調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
参考例1において、鉱物油としてのサミックGA 1046(三和化成工業株式会社製)を10.7質量%とし、エステル化植物油としての大豆メチルエステルを4.0質量%、大豆油脂肪酸アルキド樹脂を6.0質量%添加した以外は、参考例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
参考例1において、鉱物油としてのガーゴイルアークティックライト(エクソンモービル社製)を9.7質量%、再生エステル化植物油としての大豆ブチルエステルを4.0質量%、大豆油脂肪酸アルキド樹脂を7.0質量%添加した以外は、参考例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
参考例1において、大豆油の添加量を6.0質量%添加し、大豆油脂肪酸アルキド樹脂を添加しない以外は、参考例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
参考例1において、エステル化植物油としての大豆メチルエステルを6.0質量%添加し、大豆油脂肪酸アルキド樹脂を添加しない以外は、参考例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
参考例1において、鉱物油としてのガーゴイルアークティックライト(エクソンモービル社製)を12.7質量%添加し、大豆油脂肪酸アルキド樹脂を8.0質量%添加した以外は、参考例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
各孔版印刷用エマルションインキを、ガラス板上にバーコーダーで薄く塗り、そのインキの乾燥性について下記基準により評価した。
〔評価基準〕
×:1ヶ月以内に放置によりインキが固まった。
△:3ヶ月以内に放置によりインキが固まった。
○:6ヶ月以内に放置によりインキが固まった。
◎:インキが乾かなかった。
各孔版印刷用エマルションインキについて、孔版印刷機(株式会社リコー製、JP5500)を用いて、表面を印刷後、2分後に裏面を印刷した時のフィードローラーにおける汚れを以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
×:汚れが大量にある。
△:汚れが少しある。
○:汚れがない。
◎:汚れが全くない。
Claims (2)
- 油相10質量%〜90質量%及び水相90質量%〜10質量%を含み、該油相中に、エステル化植物油及び再生エステル化植物油の少なくともいずれかである植物油、並びに、大豆油脂肪酸アルキド樹脂を含有し、該大豆油脂肪酸アルキド樹脂の孔版印刷用エマルションインキにおける含有量が、3質量%〜7質量%であり、該大豆油脂肪酸アルキド樹脂の油長が、60質量%〜90質量%であることを特徴とする孔版印刷用エマルションインキ。
- 再生エステル化植物油が、廃食植物油を再生した再生植物油をエステル化してなる請求項1に記載の孔版印刷用エマルションインキ。
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