JP2013018819A - インクジェット用油中水(w/o)型エマルションインク - Google Patents

インクジェット用油中水(w/o)型エマルションインク Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット印刷用に適した油中水(W/O)型エマルションインクであって、吐出性能と保存安定性に優れ、かつ低粘度なものを提供する。
【解決手段】水相中に重合度3以上のポリグリセリンを含有するインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインクであり、乳化剤として、脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であり、かつ、HLBが7〜14であるポリグリセリン脂肪酸エステル、または、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを含有し、水相中のポリグリセリンの濃度は、水相全体100質量%に対して10〜70質量%であり、ポリグリセリンの重合度は4以上であるインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインク。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット印刷における使用に適した油中水(W/O)型エマルションインクであって、吐出性能と保存安定性に優れ、かつ低粘度なインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインクに関する。
インクジェット印刷は、微細なノズルからインク滴を吐出して、非接触で印字するのが特徴であり、インク滴の微細化、印刷物の高速化、大判化を目指して各社がインクジェット用インクの開発を行っている。
インクジェット印刷で用いられるインク(本明細書中、「インクジェット用インク」)としては、パーソナル及び事務用途では、一般に水性染顔料インクが用いられる。水性染顔料インクは、用紙繊維の吸水性が高いために印刷濃度が高く、且つ印刷物裏側から見た印刷濃度である裏抜けが少なくなる。その反面、用紙は製紙される時に圧力が掛かった状態で乾燥しているために、水が付着すると用紙繊維間の水素結合が切られて紙カールが発生する。この紙カールは、断裁された枚葉紙を用いる場合に顕著であり、インク滴の位置精度や用紙搬送に影響を及ぼす。特に高速印刷を目指すためには、紙カールを無くすことが必要であった。
紙カールを無くす手法としては、インク中の水配合量を少なくする、または無くすことが挙げられる。したがって、油性インクを用いれば、紙カールが発生することもなく、高速印刷にも適合する。
ラインヘッド型インクジェット方式を採用したビジネスプリンタは、ヘッドが固定されているので高速で大量印刷が可能であり、低価格である点からも注目されている。この高速印刷用インクジェット印刷機には、通常、油性顔料インクが使われるが、他方式のプリンタと比較して、印字した際に印刷物裏側にインクが浸透するため、得られる印刷物は、印刷濃度が低く、裏抜けの多いものになる。
この問題の解決方法の一つとして、油性インクに水を乳化して油中水(W/O)型エマルションインクにする方法がある(特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1のエマルションインクは、乳化剤としてHLB値が3〜5のポリグリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルを用いているが、吐出性能は必ずしも十分とは言えなかった。また、このエマルションインクはインクジェット用としては粘度が高いという問題があった。
特開2006−56931号公報 特開2009−57462号公報
本発明の目的は、インクジェット印刷用に適した油中水(W/O)型エマルションインクであって、吐出性能に優れ、かつ低粘度なものを提供することにある。
本発明者等は、上記目的の下に鋭意研究した結果、水相に重合度が3以上であるポリグリセリンを含有させることにより、吐出性能に優れ、かつ低粘度なインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインクが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、水相に重合度が3以上であるポリグリセリンを含有することを特徴とするインクジェット用W/Oエマルションインクが提供される。
乳化剤として、脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であり、かつHLBが7〜14であるポリグリセリン脂肪酸エステル、または、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを含有することが好ましい。
前記水相に含有されるポリグリセリンの濃度は、水相全体100質量%に対して10〜70質量%であることが好ましい。
本発明によれば、油中水(W/O)型エマルションの水相中に重合度3以上のポリグリセリンを含有せしめることとしたので、吐出性能に優れ、かつ低粘度なインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインクが得られる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の油中水(W/O)型エマルションインクは、油相及び水相を混合し、該油相中に該水相を微細な粒子として分散させることによって得られる。
油相は、有機溶剤、着色剤、乳化剤から主として構成されるが、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
有機溶剤としては、非極性溶剤及び極性溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、または、単一の相を形成する限り、2種以上組み合わせて使用できる。
非極性溶剤としては、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の石油系炭化水素溶剤を使用でき、具体的には、ドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素類、エクソンモービル社製「アイソパー、エクソール」(いずれも商品名)、JX日鉱日石エネルギー社製「AFソルベント」(商品名)、サン石油社製「サンセン、サンパー」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
極性溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が5以上、好ましくは9以上、より好ましくは12乃至32の高級脂肪酸エステル類が挙げられ、例えば、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、イソパルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルドデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が12以上の脂肪族高級アルコール類が挙げられ、具体的には、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールが挙げられる。
脂肪酸系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が4以上、好ましくは9乃至22の脂肪酸類が挙げられ、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる、
エーテル系溶剤としては、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類の他、グリコールエーテル類のアセタートなどが挙げられる。
着色剤としては、染料及び顔料の何れも使用可能であり、それらを単独、または併用して使用できる。
顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、カーボンブラック、カドミウムレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化クロム、ピリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料などが好適に使用できる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
染料としては、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の水溶性染料、または油溶性染料を用いることができる。
着色剤は、インク全量に対して0.01〜20質量%の範囲で含有されることが好ましい。
着色剤として顔料を使用する場合、油相中における顔料の分散を良好にするために、油相に顔料分散剤を添加することが好ましい。本発明で使用できる顔料分散剤としては、顔料を溶剤中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤を使用するのが好ましい。
分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、Efka CHEMICALS社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46,47,48,49,4010,4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名)、花王社製「デモールP、EP、ポイズ520、521、530、ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)」(いずれも商品名)、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)、第一工業製薬社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名)等が挙げられる。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に油相中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。
乳化剤としては、油中水(W/O)型エマルションインクを形成できるものであれば特に制限されるものではないが、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。非イオン性界面活性剤として、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジグリセリド、及び高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸等の酸化エチレン付加物等を挙げることができる。このうち、脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であり、HLBが7〜14であるポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルが好ましく使用される。ここにおいて、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化物を言う。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、グリセリンの重合度は4〜20であることが好ましく、6〜16であることがより好ましく、6〜12であることが特に好ましい。このポリグリセリン1分子当たり数個(例えば1〜3個)の上記高級脂肪酸がエステル結合して付加していることが好ましい。また、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの有機性値は550〜2300が好ましく、無機性値は600〜2500が好ましい。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましい有機性値は590〜1700であり、より好ましい無機性値は600〜1300である。有機性値が2300より大きい場合や、無機性値が2500より大きい場合はインクの粘度が高くなってしまう。好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸テトラグリセリル、モノイソステアリン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリルなどが挙げられる。
なお、「有機性値」及び「無機性値」は、藤田穆により提案された「有機概念図」において用いられている概念に基づくものであり、有機化合物をその炭素領域の共有結合連鎖に起因する「有機性」と置換基(官能基)に存在する静電性の影響による「無機性」との2因子に分けてそれぞれを数値化したものであり、個々の化合物の構造等から求められる値である。「有機概念図」に関連する事項は、藤田穆著「系統的有機定性分析(混合物編)」風間書房(1974)等に詳述されている。
HLBは下記式より算出した理論値である。
HLB = {(無機性値)/(有機性値)}×10
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルは、ソルビトールに酸化エチレンを付加したポリオキシエチレンソルビトールと脂肪酸のエステル化物を言う。酸化エチレンの平均付加モル数は6〜60が好ましく、10〜50がより好ましく、20〜45が更により好ましく、30〜40が特に好ましい。脂肪酸部位としては、1分子中の炭素数が9乃至22の高級脂肪酸類が挙げられ、具体的には、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。このうち、オレイン酸またはイソステアリン酸が好ましい。エステル化度は1〜5が好ましく、3〜5が特に好ましい。
本発明における乳化剤の使用量は、インク全量に対し、固形分質量比で、0.5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。この使用量が0.5質量%に満たない場合には、エマルションの保存安定性が低下する可能性がある。また、この使用量が40質量%を超えた場合には、粘度が高くなり、インクジェット用途に適さなくなる可能性がある。また、乳化剤の使用量は、油相の量の5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。
油相は、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め溶剤の一部と顔料及び顔料分散剤の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
水相は、水に重合度3以上のポリグリセリンを必須成分として溶解させ、必要に応じて、水溶性染料、金属塩、電解質、保湿剤、水溶性高分子、水中油(O/W)型樹脂エマルション、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、凍結防止剤等を溶解して構成される。
重合度3以上のポリグリセリンとしては、重合度4〜20のものがより好ましく、重合度4〜12のものが特に好ましい。ポリグリセリンは、特定の重合度のものを単独で使用してもよく、または、重合度の異なるポリグリセリンの混合物であってもよい。ポリグリセリンの配合量は、水相全体の10〜70質量%であることが好ましく、20〜65質量%あることがより好ましい。10質量%未満の場合、低粘度化効果が得られ難くなり、70質量%より多いと、吐出安定性や保存安定性が悪くなる可能性がある。
水相が水溶性染料を含有する場合、その配合量は、インク全量に対して0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。0.5質量%未満では、表印刷濃度が向上しない。また、15質量%より多いと吐出性が悪くなる。
水相が着色剤として水溶性染料を含有する場合、水相に溶解助剤を添加することが好ましい。この場合、染料が分子状態まで溶解した状態で紙繊維に浸透・吸着するので、染料の発色が向上する。溶解助剤としては、アミン系界面活性剤が好ましい。アミン系界面活性剤としては、有機アミンのポリアルキレンオキシド付加物、例えば、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキルヒドロキシルアミン、アルケニルヒドロキシルアミン、オキシアルキルアミン、オキシアルケニルアミン等のエチレンオキシド(EO)又はプロピレンオキシド(PO)付加物が挙げられる。このうち、アルキルアミンのエチレンオキシド(EO)又はプロピレンオキシド(PO)付加物が好ましい。かかるアミン系界面活性剤として、ルーブリゾール社製ソルスパース20000、ソルスパース27000、ソルスパース46000(何れも商品名)、日光ケミカル株製TAMNO−15(商品名)として市販されているものを用いることができる。溶解助剤の配合量は、インク全量に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜8質量%がより好ましい。
本発明のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインクは、上記の油相と水相を混合、乳化させることにより製造できる。水相と油相は、予め別々に調製したのち、油相液中に水相液を添加して乳化させてもよく、または、水相に油相を構成する成分を一括または個別に添加した後、乳化させてもよい。製造には、ディスパーミキサー、ホモミキサー等の公知の乳化機を用いることができる。
本発明のインクジェットインクは、油相40〜99質量%、水相60〜1質量%となるように配合される。水相の比率が60質量%を越えると油中水(W/O)型エマルションが形成されにくくなる。水相の比率が1質量%未満の場合、印刷濃度が低くなったり、印刷物に裏抜けが発生する可能性がある。一般に、水相の比率が高くなると、インク粘度が上昇する傾向があるため、両相の配合比率は、油相50〜98質量%及び水相50〜2質量%が好ましく、油相55〜97質量%及び水相45〜3質量%がより好ましい。
このようにして得られる本発明のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインクの23℃における粘度は、3〜100mP・sの範囲に設定することが好ましく、5〜30mPa・sの範囲に設定することがより好ましい。インクの粘度は、油相の構成成分の種類及び量、水相の量を調節することによって調整できる。一般的には、乳化剤の量が少ないほど、インクの粘度は低下するが、エマルションの保存安定性が低下する傾向がある。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜8、比較例1〜2、参考例1〜5
表1又は表2に示す配合量の顔料と分散剤を、同表に示す溶剤の一部と混合し、ロッキングミル(セイワ技研製)で顔料を分散して顔料分散体を得た。この顔料分散体を残りの溶剤で希釈した後、これに界面活性剤を溶解させて油相を得た。この油相に、高速ホモジナイザー「ヒスコトロン」(商品名:マイクロテック・ニチオン社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら、予め表1又は表2の処方に従って用意しておいたイオン交換水とポリグリセリンの混合液を滴下した後、20000rpmで5分間攪拌して油中水(W/O)型エマルションインクを作製した。なお、表1及び表2中の各成分の配合量は質量部で示してある。
上記実施例及び比較例でそれぞれ得られたインクジェットインクについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表1及び表2に示した。
(1)吐出性能
ライン型インクジェットプリンター「オルフィスHC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(商品名:理想科学工業(株)製)に印字する評価を行った。ベタ画像を10枚連続で印刷した時のインクの不吐出の様子を観察し、次の基準で評価した。
A:不吐出がほとんど無く、1枚目と10枚目でほぼ同じ画像が印刷できた
B:不吐出が多く、1枚目と10枚目で同じ画像が印刷できない
C:吐出不可能、または不吐出が多過ぎてベタ画像が印刷できない
(2)粘度実測値(mPas)
レオメータAR−G2(TAインスツルメント製)を用いて、インクに10Paの剪断応力がかかった時の粘度(単位:mPas)を測定した。なお、粘度低下率は下記の式により計算した。
{粘度低下率(%)}={実施例の粘度/比較対象の粘度−1}×100
Figure 2013018819
Figure 2013018819
尚、表1及び表2記載の原材料の記号は、以下の通りである。
カーボンブラックMA8(商品名):三菱化学社製カーボンブラック。
ソルスパース28000:ルーブリゾール社製顔料分散剤ソルスパース28000(商品名)。
AFソルベント4号(商品名):JX日鉱日石エネルギー社製石油系炭化水素溶剤。
SフェイスIS−1002P(商品名):阪本薬品工業株式会社製ジイソステアリン酸デカグリセリル。
SフェイスIS−401P(商品名):阪本薬品工業株式会社製モノイソステアリン酸テトラグリセリル。
SフェイスIS−601P(商品名):阪本薬品工業株式会社製モノイソステアリン酸ヘキサグリセリル。
Decaglyn3−OV(商品名):日光ケミカルズ株式会社製トリオレイン酸デカグルセリル。
レオドール430V(商品名):花王株式会社製テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット。
グリセリン:和光純薬工業株式会社製。
ジグリセリン:阪本薬品工業株式会社製。
テトラグリセリン:阪本薬品工業株式会社製。
ヘキサグリセリン:阪本薬品工業株式会社製。
デカグリセリン:阪本薬品株式会社製。
表1の結果から、実施例1〜8のインクの場合、水相に重合度3以上のポリグリセリンを含有させることにより、吐出性能が改善され、粘度が大きく低減されることがわかる。これに対し、比較例1〜2のインクの場合、吐出性能は改善されているものの、インクジェット用インクとしては高い粘度を示した。高い粘度のインクを吐出するためには、インクを加温する必要が生じるため、消費電力が高くなり好ましくない。
本発明のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインクは、吐出性能に優れ、低粘度なので、インクジェット印刷の分野、特に、ラインヘッド型インクジェット方式を採用したビジネスプリンタのインクとして利用できる。

Claims (4)

  1. 水相に重合度が3以上であるポリグリセリンを含有することを特徴とするインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインク
  2. 脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であり、かつHLBが7〜14であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する請求項1に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインク。
  3. ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを含有する請求項1に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインク。
  4. 前記水相に含有されるポリグリセリンの濃度が、水相全体100質量%に対して10〜70質量%である請求項1乃至3に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインク。
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