JP2013215687A - 油中水(w/o)型エマルションの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温及び低温における長期の保存安定性に優れた油中水(W/O)型エマルションを提供する。
【解決手段】乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて油相中に水相を乳化して得られた油中水(W/O)型エマルションを30℃〜90℃で3時間〜2週間保持することを特徴とする油中水(W/O)型エマルションの製造方法。ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸で、かつ、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが7〜14であることが好ましい。乳化剤としてさらにアルキルグリセリルエーテルまたはソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。油相及び/又は水相は色材を含有させることでインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキが得られる。
【選択図】なし
【解決手段】乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて油相中に水相を乳化して得られた油中水(W/O)型エマルションを30℃〜90℃で3時間〜2週間保持することを特徴とする油中水(W/O)型エマルションの製造方法。ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸で、かつ、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが7〜14であることが好ましい。乳化剤としてさらにアルキルグリセリルエーテルまたはソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。油相及び/又は水相は色材を含有させることでインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキが得られる。
【選択図】なし
Description
本発明は、医薬品、化粧品、インキ等の用途に適した油中水(W/O)型エマルションの製造方法であって、高温及び低温の何れにおいても長期保存安定性に優れた油中水(W/O)型エマルションを提供するものに関する。
油中水(W/O)型エマルションは、医薬品、化粧品、インキ等に用いられている。このうち、水分の含有量が少なく低粘度な油中水(W/O)型エマルションは、インクジェットヘッドからの吐出が可能である為、インクジェット用インキに好適である。インクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキは、普通紙に印刷した場合、水性インキに比べ、印刷用紙にカールを生じさせることが少なく、油性インキに比べ、印刷濃度が高くなるとともに裏抜けが低減するので、普通紙を対象とした高速印刷が可能になる(特許文献1及び2参照)。しかし、特許文献1及び2の油中水(W/O)型エマルションインキは、乳化剤としてHLB値が3〜5のポリグリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルを用いているが、保存安定性に関しては必ずしも十分とは言えなかった。
本発明者等は、脂肪酸部分がイソステアリン酸またはオレイン酸であり且つHLBが7〜14であるポリグリセリン脂肪酸エステルとアルキルグリセリルエーテルとを乳化剤として併用することによって、70℃において1週間以上の保存安定性を示す、インクジェット用インキに適した低粘度の油中水(W/O)型エマルションが形成されることを既に見出している。しかし、この油中水(W/O)型エマルションは、氷点下で1週間以上放置すると保存安定性が損なわれるという問題を有していた。
本発明の目的は、高温及び低温の何れにおいても長期の保存安定性に優れた油中水(W/O)型エマルションを提供することにある。
本発明者等は、上記目的の下に鋭意研究した結果、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた油中水(W/O)型エマルションを一定温度で一定時間保持してエージングすることで、高温及び低温における長期の保存安定性を両立させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて油相中に水相を乳化して得られた油中水(W/O)型エマルションを30℃〜90℃で3時間〜2週間保持することを特徴とする油中水(W/O)型エマルションの製造方法が提供される。
上記油相及び水相の少なくとも何れか1つに色材を含有させれば、油中水(W/O)型エマルションインキが得られる。このエマルションインキは、低粘度に構成することができ、吐出性に優れるため、インクジェット用インキとして好適である。
本発明によれば、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル及び所望によりアルキルグリセリルエーテルまたはソルビタン脂肪酸エステルを使用して油中水(W/O)型エマルションを形成した後、得られたエマルションを30℃〜90℃で3時間〜2週間保持してエージングすることとしたので、高温及び低温の何れにおいても長期保存安定性に優れた油中水(W/O)型エマルション、及び、該エマルションを用いた油中水(W/O)型エマルションインキが得られる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明は、油中水(W/O)型エマルションを製造した後、該エマルションを一定温度で一定時間保持してエージングすることを特徴とする。エージングする際の保持温度は30℃〜90℃であり、45℃〜80℃がより好ましい。エージングする際の保持時間は、3時間〜2週間であるが、6時間〜10日が好ましい。保持温度及び保持時間が短すぎると保存安定性の改善効果が十分得られない。保持温度が高すぎると、逆に保存安定性を悪化させる。保持時間を2週間より長くしても、更なる保存安定性の改善効果は得られない。エージングは、油中水(W/O)型エマルションを形成させた後、直ちに恒温槽等の温度制御された環境下にエマルションを放置することにより行うことができる。エージングに供する油中水(W/O)型エマルションは、油相及び水相を混合し、該油相中に該水相を微細な粒子として分散させることによって得られる。
本発明は、油中水(W/O)型エマルションを製造した後、該エマルションを一定温度で一定時間保持してエージングすることを特徴とする。エージングする際の保持温度は30℃〜90℃であり、45℃〜80℃がより好ましい。エージングする際の保持時間は、3時間〜2週間であるが、6時間〜10日が好ましい。保持温度及び保持時間が短すぎると保存安定性の改善効果が十分得られない。保持温度が高すぎると、逆に保存安定性を悪化させる。保持時間を2週間より長くしても、更なる保存安定性の改善効果は得られない。エージングは、油中水(W/O)型エマルションを形成させた後、直ちに恒温槽等の温度制御された環境下にエマルションを放置することにより行うことができる。エージングに供する油中水(W/O)型エマルションは、油相及び水相を混合し、該油相中に該水相を微細な粒子として分散させることによって得られる。
油相は、有機溶剤及び乳化剤から主として構成されるが、必要に応じて、色材等の他の成分を含有してもよい。
有機溶剤としては、非極性溶剤及び極性溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、または、単一の相を形成する限り、2種以上組み合わせて使用できる。
非極性溶剤としては、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の石油系炭化水素溶剤を使用でき、具体的には、ドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素類、エクソンモービル社製「アイソパー、エクソール」(いずれも商品名)、JX日鉱日石エネルギー社製「AFソルベント」(商品名)、サン石油社製「サンセン、サンパー」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
極性溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が5以上、好ましくは9以上、より好ましくは12乃至32の高級脂肪酸エステル類が挙げられ、例えば、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、イソパルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルドデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が12以上の脂肪族高級アルコール類が挙げられ、具体的には、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールが挙げられる。
脂肪酸系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が4以上、好ましくは9乃至22の脂肪酸類が挙げられ、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類の他、グリコールエーテル類のアセタートなどが挙げられる。
乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル(以下「乳化剤(A)」)が必須成分として使用され、所望によりアルキルグリセリルエーテル及びソルビタン脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1つの乳化剤(以下「乳化剤(B)」)が併用される。これらの乳化剤を使用することで、エマルションが熟成し易くなり、上記温度及び時間でエージングした時、エマルションの粒子径が小さく均一化し、エマルションの安定性が向上する。さらに、必要に応じて、他の乳化剤を併用してもよい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であり、HLBが7〜14であるポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく用いられる。ここにおいて、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化物を言う。ポリグリセリン脂肪酸エステルが上記要件を満たさない場合、エマルションの粘度が高くなり、また、エマルションの保存安定性が劣る場合がある。脂肪酸部分がイソステアリン酸であると、エマルションの粘度が低くなり、かつ、エマルションの保存安定性も高度に改善できるため、好ましい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、グリセリンの重合度は4以上が好ましく、4〜20であることがより好ましく、6〜16であることが更により好ましく、このポリグリセリン1分子当たり数個(例えば1〜3個)の上記高級脂肪酸がエステル結合して付加していることが好ましい。グリセリンの重合度が4未満では、水相の分離が起こり易くなることがある。また、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの有機性値は550〜2300が好ましく、無機性値は600〜2500が好ましい。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましい有機性値は550〜1700であり、より好ましい無機性値は600〜1800である。有機性値が2300より大きい場合や、無機性値が2500より大きい場合はエマルションの粘度が高くなってしまう。
好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸ヘキサグリセリル、モノイソステアリン酸テトラグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリルなどが挙げられる。
アルキルグリセリルエーテルとしては、23℃で液体のものが好ましい。23℃で固体のものは、低温で析出物を生じる可能性がある。アルキルグリセリルエーテルのアルキル基としては、炭素数12〜24のアルキル基が好ましく、炭素数16〜18のアルキル基がより好ましい。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、モノミリスチルグリセリルエーテル、モノパルミチルグリセリルエーテル、モノステアリルグリセリルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテル、モノイソステアリルグリセリルエーテルなどが挙げられる。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、HLBが3〜12のソルビタン脂肪酸エステルが挙げられ、このうちHLBが5〜10のものが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタンなどが挙げられる。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(乳化剤(A))と前記アルキルグリセリルエーテル及びソルビタン脂肪酸エステル(乳化剤(B))の配合比率は、質量比(ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量(乳化剤(A)):アルキルグリセリルエーテル及びソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量(乳化剤(B))にて:95〜50:5〜50が好ましい。アルキルグリセリルエーテル及び/又はソルビタン脂肪酸エステルを上記配合比率で併用することにより、高温及び低温での長期保存安定性を高度に改善できる。
本発明における上記乳化剤(A)及び(B)の合計使用量は、油中水(W/O)型エマルション全量に対し、固形分質量比で、0.5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。この使用量が0.5質量%に満たない場合には、エマルションの保存安定性が低下する可能性がある。また、この使用量が40質量%を超えた場合には、粘度が高くなり、インクジェット用インキには適さなくなる可能性がある。また、乳化剤の使用量は、油相の量の5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。
なお、「有機性値」及び「無機性値」は、藤田穆により提案された「有機概念図」において用いられている概念に基づくものであり、有機化合物をその炭素領域の共有結合連鎖に起因する「有機性」と置換基(官能基)に存在する静電性の影響による「無機性」との2因子に分けてそれぞれを数値化したものであり、個々の化合物の構造等から求められる値である。「有機概念図」に関連する事項は、藤田穆著「系統的有機定性分析(混合物編)」風間書房(1974)等に詳述されている。
HLBは下記式より算出した理論値である。
HLB = {(無機性値)/(有機性値)}×10
HLB = {(無機性値)/(有機性値)}×10
油相は、例えばディスパー等の公知の撹拌混合機又はビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。
水相は、水に、必要に応じて、色材、金属塩、電解質、保湿剤、水溶性高分子、水中油(O/W)型樹脂エマルション、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、凍結防止剤等を溶解又は分散して構成される。
水相に含有される水としては、特に限定されず、例えば、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。
高温で保存した場合のインキの粘度変化を抑制するために、水相にグリセリン又はジグリセリンを添加することが好ましい。グリセリン又はジグリセリンの配合量は、水相全体の5〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%あることがより好ましい。5質量%未満の場合、粘度変化抑制効果が得られ難くなり、50質量%より多いと、吐出安定性や保存安定性が悪くなる可能性がある。
水相は、例えばディスパー等の公知の撹拌混合機又はビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。
本発明の油中水(W/O)型エマルションは、上記の油相と水相を混合、乳化させることにより製造できる。水相と油相は、予め別々に調製したのち、油相中に水相を添加して乳化させてもよく、または、水相に油相を構成する成分を一括または個別に添加した後、乳化させてもよい。製造には、ディスパーミキサー、ホモミキサー等の公知の乳化機を用いることができる。
本発明の油中水(W/O)型エマルションは、油相40〜95質量%及び水相60〜5質量%となるように配合することが好ましい。水相の比率が60質量%を越えると、油中水(W/O)型エマルション中で水相が分離しやすくなる。水相の比率が5質量%に満たないと、インキとして使用した場合、印刷濃度が低くなったり、印刷物に裏抜けが発生したりする可能性がある。一般に、水相の比率が高くなると、エマルション粘度が上昇する傾向があるため、両相の配合比率は、油相50〜95質量%及び水相50〜5質量%がより好ましく、油相60〜95質量%及び水相40〜5質量%がさらにより好ましく、油相70〜95質量%及び水相30〜5質量%が特に好ましい。
本発明の油中水(W/O)型エマルションに色材を含有させることにより、幅広い温度条件において水相の分離が起こらず、高温でのエマルション粒子の粗大化が起こらない油中水(W/O)型エマルションインキを調製することができる。色材は、油相及び水相の少なくとも何れか一方に含有させればよい。色材としては、染料及び顔料の何れも使用することができる。色材は、インキ全量に対して0.01〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、カーボンブラック、カドミウムレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化クロム、ピリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料などが好適に使用できる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
染料としては、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の油溶性染料及び水溶性染料を用いることができる。
上記色材を油相又は水相中に良好に分散又は溶解させるために、色材とともに分散剤または溶解助剤を添加してもよい。分散剤の含有量は、色材を十分に水相又は油相中に分散又は溶解可能な量であれば足り、適宜設定できる。
エマルションの安定性の観点からは、水相に色材として水溶性染料を含有させることが好ましく、また、さらに油相に顔料を含有させることがより好ましい。水溶性染料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、アジン系などのアニオン性染料が挙げられる。ここで、アニオン性染料は、染料イオンが、アニオン性を示すものの総称である。
水溶性染料の配合量は、水相全量に対して5〜30質量%が好ましく、10〜24質量%がより好ましい。水溶性染料濃度が5質量%未満では、粘度が悪化する。また、30質量%より多いとインクジェットヘッドからの吐出性が悪くなる。水相には、水溶性染料の溶解助剤を添加してもよい。
本発明において、エマルションがインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキである場合の製造方法は、特に限定されない。例えば、油相に乳化剤とともに顔料を含有させておき、そこに色材を含有せしめた水相を添加して乳化する方法、予め有機溶剤の一部と顔料の全量を均一に分散させた顔料分散液を調製しておき、この分散液に残りの成分を添加して乳化する方法、顔料を有機溶剤に分散させて得た顔料分散液又は色材を含有せしめた水相を予め調製しておいた油中水(W/O)型エマルションに混合して更に乳化する方法等が挙げられる。製造には、ディスパーミキサー、ホモミキサー等の公知の乳化機を用いることができる。
このようにして得られる油中水(W/O)型エマルションインキの23℃における粘度は、インクジェット用途の場合、5〜100mP・sの範囲に設定することが好ましく、5〜50mPa・sの範囲に設定することがより好ましく、10〜20mPa・sの範囲に設定することが特に好ましい。インキの粘度は、油相の構成成分の種類及び量、水相の量を調節することによって調整できる。一般的には、水相の量及び/又は乳化剤の量が少ないほど、インキの粘度は低下する。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜7、比較例1〜4
表1に示す配合量の顔料と分散剤を、同表に示す溶剤の一部と混合し、ロッキングミル(セイワ技研製)で顔料を分散して顔料分散体を得た。次に、表1に示す配合量の水、水溶性染料及びグリセリンを混合して水相を得た。また、残りの溶剤の一部に乳化剤を溶解させた乳化剤溶液を得た。この乳化剤溶液に、高速ホモジナイザー「ヒスコトロン」(商品名:マイクロテック・ニチオン社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら上記水相を滴下した後、20000rpmで5分間攪拌して油中水(W/O)型エマルションを得た。さらに、上記顔料分散体を残りの溶剤で希釈した後、上記油中水(W/O)型エマルションと混合することにより、油中水(W/O)型エマルションインキを作製した。その後、この油中水(W/O)型エマルションインキを10mlのスクリューバイアル瓶に入れて、表1に示す保持温度及び保持時間の条件下に放置してエージングした。なお、表1中の各成分の配合量は質量部で示してある。
表1に示す配合量の顔料と分散剤を、同表に示す溶剤の一部と混合し、ロッキングミル(セイワ技研製)で顔料を分散して顔料分散体を得た。次に、表1に示す配合量の水、水溶性染料及びグリセリンを混合して水相を得た。また、残りの溶剤の一部に乳化剤を溶解させた乳化剤溶液を得た。この乳化剤溶液に、高速ホモジナイザー「ヒスコトロン」(商品名:マイクロテック・ニチオン社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら上記水相を滴下した後、20000rpmで5分間攪拌して油中水(W/O)型エマルションを得た。さらに、上記顔料分散体を残りの溶剤で希釈した後、上記油中水(W/O)型エマルションと混合することにより、油中水(W/O)型エマルションインキを作製した。その後、この油中水(W/O)型エマルションインキを10mlのスクリューバイアル瓶に入れて、表1に示す保持温度及び保持時間の条件下に放置してエージングした。なお、表1中の各成分の配合量は質量部で示してある。
上記実施例及び比較例でそれぞれ得られた油中水(W/O)型エマルションインキについて、以下の方法により評価を行った。
(1)吐出性能
ライン型インクジェットプリンター「オルフィスHC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(商品名:理想科学工業(株)製)にベタ画像を10枚連続で印刷し、インキの不吐出の様子を観察し、次の基準で評価した。
A:不吐出がほとんど無く、1枚目と10枚目でほぼ同じ画像が印刷できた。
B:不吐出が多く、1枚目と10枚目で同じ画像が印刷できない。
C:吐出不可能、または不吐出が多過ぎてベタ画像が印刷できない。
ライン型インクジェットプリンター「オルフィスHC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(商品名:理想科学工業(株)製)にベタ画像を10枚連続で印刷し、インキの不吐出の様子を観察し、次の基準で評価した。
A:不吐出がほとんど無く、1枚目と10枚目でほぼ同じ画像が印刷できた。
B:不吐出が多く、1枚目と10枚目で同じ画像が印刷できない。
C:吐出不可能、または不吐出が多過ぎてベタ画像が印刷できない。
(2)保存安定性
油中水(W/O)型エマルションインキは、経時で粘度が変化する可能性がある。一定条件で放置した後のエマルションの粘度と、調製直後の粘度とを比較する事によって保存安定性を評価した。油中水(W/O)型エマルションインキを10mlのスクリューバイアル瓶に入れて、−5℃又は70℃で1カ月放置した。その後、インキを混合してサンプリングし、インキ粘度を測定した。得られたエマルションの粘度は、レオメーターAR−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて室温(23℃)で測定した。
油中水(W/O)型エマルションインキは、経時で粘度が変化する可能性がある。一定条件で放置した後のエマルションの粘度と、調製直後の粘度とを比較する事によって保存安定性を評価した。油中水(W/O)型エマルションインキを10mlのスクリューバイアル瓶に入れて、−5℃又は70℃で1カ月放置した。その後、インキを混合してサンプリングし、インキ粘度を測定した。得られたエマルションの粘度は、レオメーターAR−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて室温(23℃)で測定した。
インキ粘度変化率(%):
{放置後のインキ粘度(mPas)/調製直後の粘度(mPas)}×100
{放置後のインキ粘度(mPas)/調製直後の粘度(mPas)}×100
下記の様に表されるインキ粘度変化率を指標にして、保存安定性を次の基準に基づいて評価した。
A:インキ粘度変化率が±5%以内である。
B:インキ粘度変化率が±5%以上10%未満である。
C:インキ粘度変化率が±10%以上である。
A:インキ粘度変化率が±5%以内である。
B:インキ粘度変化率が±5%以上10%未満である。
C:インキ粘度変化率が±10%以上である。
なお、表1記載の原材料の詳細は、以下の通りである。
ジイソステアリン酸デカグリセリル:Decaglyn2−ISV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
モノイソステアリン酸テトラグリセリル:IS401P(商品名)阪本薬品工業株式会社製。
モノオレイン酸ヘキサグリセリル:Hexaglyn1−OV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
トリオレイン酸デカグリセリル:Decaglyn3−OV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
モノイソステアリルグリセリルエーテル:ペネトールGE−IS(商品名)花王株式会社製。
モノオレイルグリセリルエーテル:セラキルアルコール(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
モノイソステアリン酸ソルビタン:SI−10RV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
セスキイソステアリン酸ソルビタン:SI−15RV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
カーボンブラックMA8(商品名):三菱化学株式会社製カーボンブラック。
ソルスパース28000(商品名):日本ルーブリゾール株式会社製顔料分散剤。
AFソルベント6号(商品名):JX日鉱日石エネルギー(株)製石油系炭化水素溶剤。
オレイン酸メチル:MOL(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
ドデカン:和光純薬工業株式会社製ドデカン。
Food Black2:KST Black J−BL(商品名)日本化薬株式会社製。
グリセリン:和光純薬工業(株)製グリセリン。
ジイソステアリン酸デカグリセリル:Decaglyn2−ISV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
モノイソステアリン酸テトラグリセリル:IS401P(商品名)阪本薬品工業株式会社製。
モノオレイン酸ヘキサグリセリル:Hexaglyn1−OV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
トリオレイン酸デカグリセリル:Decaglyn3−OV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
モノイソステアリルグリセリルエーテル:ペネトールGE−IS(商品名)花王株式会社製。
モノオレイルグリセリルエーテル:セラキルアルコール(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
モノイソステアリン酸ソルビタン:SI−10RV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
セスキイソステアリン酸ソルビタン:SI−15RV(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
カーボンブラックMA8(商品名):三菱化学株式会社製カーボンブラック。
ソルスパース28000(商品名):日本ルーブリゾール株式会社製顔料分散剤。
AFソルベント6号(商品名):JX日鉱日石エネルギー(株)製石油系炭化水素溶剤。
オレイン酸メチル:MOL(商品名)日光ケミカルズ株式会社製。
ドデカン:和光純薬工業株式会社製ドデカン。
Food Black2:KST Black J−BL(商品名)日本化薬株式会社製。
グリセリン:和光純薬工業(株)製グリセリン。
これらの評価結果を表1に示す。表1から以下のことがわかる。
乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルとアルキルグリセリルエーテルを併用した油中水(W/O)型エマルションインキを保持温度50〜70℃及び保持時間5時間〜1週間の条件でエージングした実施例1〜4では、吐出性能だけでなく、―5℃及び70℃での長期保存安定性に優れていた。乳化剤を他のポリグリセリン脂肪酸エステルと他のアルキルグリセリルエーテルに代えた実施例5でも、吐出性能だけでなく、―5℃及び70℃での長期保存安定性も良好であった。さらに、乳化剤として他のポリグリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルを使用した実施例6及び7でも、実施例5と同様の結果が得られた。
乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルとアルキルグリセリルエーテルを併用した油中水(W/O)型エマルションインキを保持温度50〜70℃及び保持時間5時間〜1週間の条件でエージングした実施例1〜4では、吐出性能だけでなく、―5℃及び70℃での長期保存安定性に優れていた。乳化剤を他のポリグリセリン脂肪酸エステルと他のアルキルグリセリルエーテルに代えた実施例5でも、吐出性能だけでなく、―5℃及び70℃での長期保存安定性も良好であった。さらに、乳化剤として他のポリグリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルを使用した実施例6及び7でも、実施例5と同様の結果が得られた。
これに対し、エージングしなかった比較例1〜4では、吐出性能及び70℃での長期保存安定性は良好であったが、―5℃での長期保存安定性が劣っていた。
本発明の製造方法で得られる油中水(W/O)型エマルションは、高温及び低温の何れにおいても長期保存安定性に優れているので、本発明は、温度変化の激しい環境下で製造、使用又は保存される医薬品、化粧品、インキ等の各種製品の製造に応用することができ、また、低粘度化が容易に達成できるので、インクジェット印刷の分野、特に、ラインヘッド型インクジェット方式を採用したビジネスプリンタのインキの製造に利用できる。
Claims (5)
- 乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて油相中に水相を乳化して得られた油中水(W/O)型エマルションを30℃〜90℃で3時間〜2週間保持することを特徴とする油中水(W/O)型エマルションの製造方法。
- 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸で、かつ、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが7〜14である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記油中水(W/O)型エマルションが乳化剤としてさらにアルキルグリセリルエーテルまたはソルビタン脂肪酸エステルを含有する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルと前記アルキルグリセリルエーテルまたはソルビタン脂肪酸エステルとの配合比率は、質量比(ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量:アルキルグリセリルエーテル及びソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量)にて95〜50:5〜50である、請求項3に記載の製造方法。
- 前記油中水(W/O)型エマルションは、前記油相及び/又は前記水相に色材を含有するインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキである、請求項1乃至4の何れか1項に記載の製造方法。
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CN104084087A (zh) * | 2014-06-27 | 2014-10-08 | 江南大学 | 一种含硼、氮的聚乙二醇脂肪酸酯表面活性剂 |
WO2016208493A1 (ja) * | 2015-06-26 | 2016-12-29 | セーレン株式会社 | インクジェットインクおよびそれを用いたインクジェットプリント物の製造方法 |
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2012
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