JP2013072056A - インクジェット用油中水(w/o)型エマルションインキ - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェット印刷用に適した吐出性能と保存安定性に優れる油中水(W/O)型エマルションインキの提供。
【解決手段】乳化剤として、(A)脂肪酸部位がイソステアリン酸又はオレイン酸であって、HLBが7〜14で、グリセリン重合度が4以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、(B)(a)水酸基を3〜5個有する有機化合物と炭素数が18である脂肪酸のエステル化合物、(b)アルキルグリセリルエーテル、(c)ジテルペンアルコール、(d)ショ糖脂肪酸エステルの群から選択される少なくとも1種の非イオン界面活性剤とを併用する。ポリグリセリン脂肪酸エステルをインキ全量に対し0.5〜40質量%含有することが好ましい。(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルと(B)非イオン界面活性剤との配合比(重量)は50〜95:50〜5であり、該エマルションインキは、油相50〜95質量%及び水相50〜5質量%からなるのが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット印刷における使用に適した油中水(W/O)型エマルションインキであって、吐出性能と保存安定性に優れたインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキに関する。
インクジェット印刷は、微細なノズルからインキ滴を吐出して、非接触で印字するのが特徴であり、インキ滴の微細化、印刷物の高速化、大判化を目指して各社がインクジェット用インキの開発を行っている。
インクジェット印刷で用いられるインキ(本明細書中、「インクジェット用インキ」という。)としては、パーソナル及び事務用途では、一般に水性染顔料インキが用いられる。水性染顔料インキは、用紙繊維の吸水性が高いために印刷濃度が高く、且つ印刷物裏側から見た印刷濃度である裏抜けが少なくなる。その反面、用紙は製紙される時に圧力が掛かった状態で乾燥しているために、水が付着すると用紙繊維間の水素結合が切られて紙カールが発生する。この紙カールは、断裁された枚葉紙を用いる場合に顕著であり、インキ滴の位置精度や用紙搬送に影響を及ぼす。特に高速印刷を目指すためには、紙カールを無くすことが必要であった。
紙カールを無くす手法としては、インキ中の水配合量を少なくする、または無くすことが挙げられる。したがって、油性インキを用いれば、紙カールが発生することもなく、高速印刷にも適合する。
ラインヘッド型インクジェット方式を採用したビジネスプリンタは、ヘッドが固定されているので高速で大量印刷が可能であり、低価格である点からも注目されている。この高速印刷用インクジェット印刷機には、通常、油性顔料インキが使われるが、他方式のプリンタと比較して、印字した際に印刷物裏側にインキが浸透するため、得られる印刷物は、印刷濃度が低く、裏抜けの多いものになる。
この問題の解決方法の一つとして、油性顔料インキに水を乳化して油中水(W/O)型エマルションインキにする方法がある(特許文献1、2参照)。特許文献1のエマルションインキは、乳化剤としてHLB値が3〜5のポリグリセリンヒドロキシ脂肪酸エステルを用いているが、吐出性能及び保存安定性に関しては必ずしも十分とは言えなかった。
特開2006−56931号公報 特開2009−57462号公報
本発明者等は、上記目的の下に鋭意研究した結果、油中水(W/O)型エマルションインキの乳化剤として特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することにより、吐出性能と保存安定性に優れたインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキの開発を進めているが、当該インキの70℃、1週間以上の保存安定性に関してはさらに改善の必要がある。
本発明の目的は、インクジェット印刷用に適した油中水(W/O)型エマルションインキであって、吐出性能を維持しつつ高温での長期保存安定性に優れたものを提供することにある。
本発明者等は、上記目的の下に鋭意研究した結果、油中水(W/O)型エマルションインキの乳化剤として特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと特定の非イオン界面活性剤とを併用することにより、70℃、1週間以上の保存安定性に優れたインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、乳化剤として(A)特定のポリグリセリン脂肪酸エステル及び(B)特定の非イオン界面活性剤を併用して油相中に水相を分散させたインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキであって、前記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であって、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが7〜14で、かつそのグリセリン重合度が4以上であり、前記(B)非イオン界面活性剤は(a)水酸基を3〜5個有する有機化合物と炭素数が18である脂肪酸のエステル化合物、(b)アルキルグリセリルエーテル、(c)ジテルペンアルコール及び(d)ショ糖脂肪酸エステルの群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキが提供される。
本発明によれば、油中水(W/O)型エマルションを形成するための乳化剤として(A)特定のポリグリセリン脂肪酸エステルと、(B)特定の非イオン界面活性剤とを併用することとしたので、吐出性能を維持しつつ、保存安定性に優れたインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキが得られる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の油中水(W/O)型エマルションインキは、油相及び水相を混合し、該油相中に該水相を微細な粒子として分散させることによって得られる。
油相は、有機溶剤、着色剤及び乳化剤から主として構成されるが、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
有機溶剤としては、非極性溶剤及び極性溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、または、単一の相を形成する限り、2種以上組み合わせて使用できる。好適には、有機溶剤は、非極性溶剤を主に含有するのがよい。
非極性溶剤としては、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の石油系炭化水素溶剤を使用でき、具体的には、ドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素類、エクソンモービル社製「アイソパー、エクソール」(いずれも商品名)、JX日鉱日石エネルギー社製「AFソルベント」(商品名)、サン石油社製「サンセン、サンパー」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
極性溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が5以上、好ましくは9以上、より好ましくは12乃至32の高級脂肪酸エステル類が挙げられ、例えば、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、イソパルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルドデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が12以上の脂肪族高級アルコール類が挙げられ、具体的には、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールが挙げられる。
脂肪酸系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が4以上、好ましくは9乃至22の脂肪酸類が挙げられ、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類の他、グリコールエーテル類のアセタートなどが挙げられる。
着色剤としては、染料及び顔料の何れも使用可能であり、それらを単独、または併用して使用できる。
顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、カーボンブラック、カドミウムレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化クロム、ピリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料などが好適に使用できる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
染料としては、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の水溶性染料、または油溶性染料を用いることができる。
着色剤は、インキ全量に対して0.01〜20質量%の範囲で含有されることが好ましい。
着色剤として顔料を使用する場合、油相中における顔料の分散を良好にするために、油相に顔料分散剤を添加することが好ましい。本発明で使用できる顔料分散剤としては、顔料を溶剤中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤を使用するのが好ましい。
分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、Efka CHEMICALS社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46,47,48,49,4010,4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名)、花王社製「デモールP、EP、ポイズ520、521、530、ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)」(いずれも商品名)、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)、第一工業製薬社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名)等が挙げられる。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に油相中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。
着色剤として水溶性染料を使用する場合、水溶性染料は内水相に溶解させて使用する。この時、内水相の粒子径は80〜500nmである事が好ましい。80nmより小さくなると、印刷物の表濃度が低くなったり、染料の発色が悪くなったりする。500nmより大きくなると、インクジェットでの吐出性が悪くなってしまう。
乳化剤としては、以下の(A)脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であって、HLBが7〜14であり、かつグリセリン重合度が4以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルと、(B)以下の(a)〜(d)の群から選択される少なくとも1種の非イオン界面活性剤とを併用する。さらに、これら以外の乳化剤を1種以上併用してもよい。
(B)非イオン界面活性剤:
(a)水酸基を3〜5個有する有機化合物と炭素数が18である脂肪酸のエステル化合物
(b)アルキルグリセリルエーテル
(c)ジテルペンアルコール
(d)ショ糖脂肪酸エステル
ここにおいて、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化物を言う。ポリグリセリン脂肪酸エステルが上記本発明の要件を満たさない場合、吐出性能及び保存安定性が劣る。脂肪酸部分がイソステアリン酸であると、吐出性能と保存安定性の両者が高度に改善できるため、好ましい。
上記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、グリセリンの重合度は4〜20であることが好ましく、6〜16であることがより好ましく、このポリグリセリン1分子当たり数個(例えば1〜3個)の上記高級脂肪酸がエステル結合して付加していることが好ましい。また、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの有機性値は550〜2300が好ましく、無機性値は600〜2500が好ましい。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましい有機性値は550〜1700であり、より好ましい無機性値は600〜1300である。有機性値が2300より大きい場合や、無機性値が2500より大きい場合はインキの粘度が高くなってしまう。好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸テトラグリセリル、モノイソステアリン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリルなどが挙げられる。
(B)(a)水酸基を3〜5個持つ有機化合物と炭素数が18である脂肪酸のエステル化合物としては、グリセリン重合度が3以下のモノグリセリンまたはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルであることが好ましい。具体例としては、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノイソステアリン酸時グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ペンタエリスリトール、モノオレイン酸ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
(B)(b)アルキルグリセリルエーテルは、アルキル基の炭素数が16〜18であることが好ましい。具体例としては、ミリスチルグリセリルエーテル、パルミチルグリセリルエーテル、ステアリルグリセリルエーテル、オレイルグリセリルエーテル、イソステアリルグリセリルエーテルなどが挙げられる。
(B)(c)ジテルペンアルコールは、環状構造を持たないものであることが好ましく、フィタントリオール、イソフィトール、フィトールであることがより好ましい。
(B)(d)ショ糖脂肪酸エステルは、HLB値が13以下であることが好ましい。ショ糖脂肪酸エステルは、モノエステル及びポリエステルの混合物であり、その混合比によってHLB値が決まるため、その製品を単独で使用することができ、また、その混合比でHLB値13以下に調整して使用することができる。具体例としては、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステルなどが挙げられる。
(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルと(B)非イオン界面活性剤の配合比率は、質量比にて、(A):(B)=50〜95:50:5が好ましく、(A):(B)=50〜90:50〜10がより好ましい。
なお、「有機性値」及び「無機性値」は、藤田穆により提案された「有機概念図」において用いられている概念に基づくものであり、有機化合物をその炭素領域の共有結合連鎖に起因する「有機性」と置換基(官能基)に存在する静電性の影響による「無機性」との2因子に分けてそれぞれを数値化したものであり、個々の化合物の構造等から求められる値である。「有機概念図」に関連する事項は、藤田穆著「系統的有機定性分析(混合物編)」風間書房(1974)等に詳述されている。
HLBは下記式1より算出した理論値である。また、例外として、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値については、アトラス法(式2)を用いて算出したカタログ値を用いた。
HLB = {(無機性値)/(有機性値)}×10 …(式1)
HLB = 20 × (1−ケン化価/中和価) …(式2)
本発明における乳化剤の使用量は、インキ全量に対し、固形分質量比で、0.5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。この使用量が0.5質量%に満たない場合には、エマルションの保存安定性が低下する可能性がある。また、この使用量が40質量%を超えた場合には、粘度が高くなり、インクジェット用途に適さなくなる可能性がある。また、乳化剤の使用量は、油相の量の5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。
油相は、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め溶剤の一部と顔料及び顔料分散剤の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
水相は、水に、必要に応じて、水溶性染料、金属塩、電解質、保湿剤、水溶性高分子、水中油(O/W)型樹脂エマルション、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、凍結防止剤等を溶解して構成される。
また、インキ粘度を低下させて吐出性を良好にするために、水相にグリセリン又はジグリセリンを添加することが好ましい。グリセリン又はジグリセリンの配合量は、水相全体の5〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%あることがより好ましい。5質量%未満の場合、低粘度化効果が得られ難くなり、50質量%より多いと、吐出安定性や保存安定性が悪くなる可能性がある。
本発明のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキの製造方法は、特に限定されない。例えば、顔料分散体に乳化剤を溶解させて、そこに水相を添加して乳化する方法や、予め顔料分散体と油中水(W/O)型エマルションを別々に調製し、それらを混合する方法等が挙げられる。製造には、ディスパーミキサー、ホモミキサー等の公知の乳化機を用いることができる。
本発明のインクジェットインキは、油相60〜95質量%、水相40〜5質量%となるように配合される。水相の比率が50質量%を越えると油中水(W/O)型エマルションが形成されにくくなる。水相の比率が5質量%未満の場合、印刷濃度が低くなったり、印刷物に裏抜けが発生する可能性がある。水相の比率が高くなると、インキ粘度が上昇する傾向があるため、両相の配合比率は、油相60〜95質量%及び水相40〜5質量%が好ましい。
このようにして得られる本発明のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキの23℃における粘度は、5〜100mP・sの範囲に設定することが好ましく、5〜50mPa・sの範囲に設定することがより好ましく、10〜20mPa・sの範囲に設定することが特に好ましい。インキの粘度は、油相の構成成分の種類及び量、水相の量を調節することによって調整できる。一般的には、水相の量及び/又は乳化剤の量が少ないほど、インキの粘度は低下するが、エマルションの保存安定性が低下する傾向がある。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1乃至48、比較例1乃至15
表1乃至表8の各表に示す配合量の顔料と分散剤を、それぞれの表に示す溶剤の一部と混合し、ロッキングミル(セイワ技研製)で顔料を分散して顔料分散体を得た。次に、表1乃至表8の各表に示す水相を混合して得た。また、残りの溶剤の一部に所定の濃度となるように界面活性剤を溶解させた油相を得た。この油相に、高速ホモジナイザー「ヒスコトロン」(商品名:マイクロテック・ニチオン社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら予め混合しておいた水相を滴下した後、20000rpmで5分間攪拌して油中水(W/O)型エマルションを得た。予め調製しておいた顔料分散体を残りの溶剤で希釈した後、調製した油中水(W/O)型エマルションを混合することにより、油中水(W/O)型エマルションインキを作製した。なお、表1乃至表8中の各成分の配合量は質量部で示してある。
上記実施例及び比較例でそれぞれ得られたインクジェットインキについて、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表1乃至表8に示した。
(1)吐出性能
ライン型インクジェットプリンター「オルフィスHC5500」(商品名:理想科学工業(株)製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(商品名:理想科学工業(株)製)に印字する評価を行った。ベタ画像を10枚連続で印刷した時のインキの不吐出の様子を観察し、次の基準で評価した。
A:不吐出がほとんど無く、1枚目と10枚目でほぼ同じ画像が印刷できた
B:不吐出が多く、1枚目と10枚目で同じ画像が印刷できない
C:吐出不可能、または不吐出が多過ぎてベタ画像が印刷できない
(2)保存安定性
油中水(W/O)型エマルションインキは、経時により内部で水相の分離が生じ、インキ上層の水分量が減少する。高温で保存した後にインキ上層の水分量を測定し、保存前の水分量と比較する事によって水相分離の程度を評価した。油中水(W/O)型エマルションインキを10mlのスクリューバイアル瓶に入れて、70℃の恒温槽で2カ月間静置した後にインキ上層の水分量を測定した。インキは容器の上の方からサンプリングし、水分量測定はカールフィッシャー水分測定装置(701型、メトローム・シバタ株式会社製)を用いて行った。
インキ上層水残存率(%):
{保存後のインキ上層水分量(質量%)/保存前のインキ上層水分量(質量%)}×100
上記の様に表される水残存率を指標にして、保存安定性を次の基準に基づいて評価した。
A:インキ上層水残存率が90%以上である
B:インキ上層水残存率が70%以上90%未満である
C:インキ上層水残存率が70%未満である
Figure 2013072056
Figure 2013072056
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尚、表1乃至表6記載の原材料の詳細は、以下の通りである。
ジイソステアリン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ社製、Decaglyn2-ISV(商品名)
モノイソステアリン酸テトラグリセリル:阪本薬品工業社製、IS401P(商品名)
モノオレイン酸ヘキサグリセリル:日光ケミカルズ社製、Hexaglyn1-OV(商品名)
トリオレイン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ社製、Decaglyn3-OV(商品名)
モノイソステアリン酸グリセリル:日光ケミカルズ社製、MGIS(商品名)
モノイソステアリン酸ジグリセリル:日光ケミカルズ社製、DGMIS(商品名)
ジイソステアリン酸ジグリセリル:高級アルコール工業社製、リソレックスPGIS22(商品名)
トリイソステアリン酸ジグリセリル:日光ケミカルズ社製、DGTIS(商品名)
モノラウリン酸ヘキサグリセリル:日光ケミカルズ社製、Hexaglyn 1-L(商品名)
デカイソステアリン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ社製、Decaglyn 10-ISV(商品名)
モノイソステアリン酸ソルビタン:日光ケミカルズ社製、SI-10RV(商品名)
セスキイソステアリン酸ソルビタン:日光ケミカルズ社製、SI-15RV(商品名)
モノステアリン酸ペンタエリスリトール:花王社製、エキセパールPE-MO(商品名)
モノオレイン酸ペンタエリスリトール:花王社製、エキセパールPE-MS-P(商品名)
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS170、S370、S570、S970、S1170、S1570(商品名)
モノイソステアリルグリセリルエーテル:花王社製、ぺネトールGE-IS(商品名)
モノオレイルグリセリルエーテル:日光ケミカルズ社製、セラキルアルコール(商品名)
モノセチルグリセリルエーテル:日光ケミカルズ社製、キミルアルコール(商品名)
モノステアリルグリセリルエーテル:日光ケミカルズ社製、バチルアルコール(商品名)
フィタントリオール:東京化成工業社製、フィタントリオール(商品名)
フィトール:東京化成工業社製、フィトール(商品名)
イソフィトール:東京化成工業社製、イソフィトール(商品名)
カーボンブラックMA8:三菱化学社製、MA8(商品名)
ソルスパース28000:日本ルーブリゾール社製、ソルスパース28000(商品名)
AFソルベント6号:JX日鉱日石エネルギー社製、石油系炭化水素溶剤
オレイン酸メチル:日光ケミカルズ社製、MOL(商品名)
ドデカン:和光純薬工業社製、ドデカン(商品名)
表1の結果から、油相に顔料を含有する実施例1乃至19のインキの場合、乳化剤として本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステルと所定のエステル化合物からなる非イオン界面活性剤とを用いることにより、インクジェットでの吐出性能を維持しつつ、保存安定性が改善した。また、実施例13乃至18から明らかなように、非イオン界面活性剤としてモノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン及びモノステアリン酸ペンタエリスリトールを用いると、保存安定性が、非常に優れていた。
これに対し、表2の結果から、比較例1乃至3は、乳化剤として本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを用いるか、又はこれと本発明の要件を満たさないポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用するのみで、本発明における非イオン界面活性剤を用いていないので、吐出性能は良好であるが、保存安定性は悪化した。
比較例4乃至6は、乳化剤として本発明の要件をすべて満たす非イオン界面活性剤のみ、又は本発明の要件を満たさない他の種類の乳化と本発明の要件を満たさないポリグリセリン脂肪酸エステルとを用いているので、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いていないので、吐出性能は良好(比較例1乃至3の場合よりも性能が低下している)であるが、保存安定性は悪化した。
また、比較例7は、乳化剤として本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルと非イオン界面活性剤とを併用せず、本発明の要件を満たさないポリグリセリン脂肪酸エステルを用いているので、吐出性能及び保存安定性はともに十分ではなかった。
また、表3の結果から、実施例20乃至31のインキの場合、乳化剤として本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステル及びアルキルグリセリルエーテルからなる非イオン界面活性剤を併用することにより、吐出性能を維持しつつ、保存安定性が改善した。特に保存安定性については、実施例13乃至18における結果と同等、非常に優れていた。
これに対し、表4の結果から、比較例8乃至10は,本発明の要件を満たすアルキルグリセリルエーテルのみを用いるか、これと本発明の要件を満たさないポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用し、本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを用いていないことから、吐出性能は十分ではなく、保存安定性も悪化した。
また、表5の結果から、実施例32乃至41のインキの場合、乳化剤として本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステル及びジテルペンアルコールからなる非イオン界面活性剤を併用することにより、吐出性能を維持しつつ、保存安定性が改善した。
これに対し、表6の結果から、比較例11乃至13は,本発明の要件を満たすジテルペンアルコールのみを用いるか、又はこれと本発明の要件を満たさないポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用し、本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを用いていないことから、吐出性能は十分ではなく、保存安定性も悪化した。
さらに、表7の結果から、実施例42乃至48のインキの場合、乳化剤として本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを併用することにより、吐出性能を維持しつつ、保存安定性が改善した。
これに対し、表8の結果から、比較例14は,乳化剤として本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステル及び本発明の要件を満たさないショ糖脂肪酸エステルを用いていることから、吐出性能は良好であるが、保存安定性は悪化した。
比較例15及び16は、本発明の要件を満たすショ糖脂肪酸エステルを単独、または、本発明の要件を満たさないポリグリセリン脂肪酸エステルを併用するものであり、本発明の要件をすべて満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを用いていないことから、吐出性能は十分ではなく、保存安定性も悪化した。
本発明のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキは、吐出性能と保存安定性に優れているので、インクジェット印刷の分野、特に、ラインヘッド型インクジェット方式を採用したビジネスプリンタのインキとして利用できる。

Claims (11)

  1. 乳化剤として(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル及び(B)非イオン界面活性剤を用いて油相中に水相を分散させたインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキであって、前記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分がオレイン酸またはイソステアリン酸であって、前記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが7〜14で、かつそのグリセリン重合度が4以上であり、前記(B)非イオン界面活性剤は、
    (a)水酸基を3〜5個有する有機化合物と炭素数が18である脂肪酸のエステル化合物(b)アルキルグリセリルエーテル
    (c)ジテルペンアルコール
    (d)ショ糖脂肪酸エステル
    の群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  2. 前記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの重合度が4〜20である、請求項1に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  3. 前記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステル1分子当たり1〜3個の脂肪酸が付加している請求項1又は2に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  4. 前記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルの有機性値が550〜2300であり、かつ、無機性値が600〜2500である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  5. 前記(a)水酸基を3〜5個持つ有機化合物と炭素数が18である脂肪酸のエステル化合物としては、グリセリン重合度が3以下のモノグリセリンまたはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  6. 前記(b)アルキルグリセリルエーテルは、そのアルキル基の炭素数が16〜18である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  7. 前記(c)ジテルペンアルコールは、環状構造を持たないものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  8. 前記(c)ジテルペンアルコールは、フィタントリオール、イソフィトール又はフィトールである請求項7に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  9. 前記(d)ショ糖脂肪酸エステルは、HLB値が13以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  10. 前記(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルと前記(B)非イオン界面活性剤との配合比率は、質量比にて(A):(B)=50〜95:50〜5である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
  11. 前記乳化剤をインキ全量に対して0.5〜40質量%含有する請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水(W/O)型エマルションインキ。
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