JP4777525B2 - 孔版印刷用w/oエマルションインキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版印刷用W/Oエマルションインキに関し、特に、裏移りや手こすれの防止性に優れ、温度依存性が小さく、油分離防止性に優れる孔版印刷用W/Oエマルションインキに関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷方法は、周知のように孔版印刷原紙を用い、この原紙の穿孔部を介して原紙の一方の側より他方の側へインキを移動させることにより、紙などの被印刷物面に印刷を行なうものである。
【0003】
従来から用いられているインキは、油中水型のエマルションインキであるが、揮発性溶剤、不揮発性溶剤、樹脂、着色剤、界面活性剤、水、凍結防止剤、電解質、防腐剤等により構成されている。
【0004】
近年、輪転孔版印刷機もマイクロコンピューター等による自動化が進み、操作も簡単になり、これに伴って孔版印刷の利用が増加してきており、印刷品質に対する要求も高いレベルになってきている。
【0005】
これに対し、これまでインキの乾燥に関しては、裏移りや手こすれの防止性に対処するために、芳香族成分の少ない溶剤とアルキド樹脂を用いる方法が提案されている《特開平6−107998号公報(東洋インキ)や特開平8−100142号公報(理想科学)》。
【0006】
しかしながら前記の両発明とも、ある条件下での裏移りや手こすれの防止性に対しては有効であるものの、溶剤としてナフテン成分を多く含む材料を用いていることから、印刷時の環境温度からの影響を受けやすく、低温環境ではインキ吐出量が不足し、画像のベタ埋りが悪化する等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術の欠点を除去し、輪転孔版印刷機に適用したときに、裏移りや手こすれの防止性に優れ、温度依存性が小さく、油分離防止性に優れる孔版印刷用W/Oエマルションインキを容易に提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため種々研究を行い、以下の各手段を採用することにより、前記技術課題を解決した孔版印刷用W/Oエマルションインキを容易に提供することができることを見出し、本発明に到達することができた。
【0009】
本発明の第1は、孔版印刷用W/Oエマルションインキにおいて、油相10〜90重量%及び水相90〜10重量%によって構成され、かつ油相中に少なくとも2500mPa・s(25℃)以上の高分子材料と、粘度10mm2/s(40℃)以下であり且つ環分析によるパラフィン成分(Cp)比90%以上である溶剤とを併用して用いることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、前記第1の手段を採用することにより、裏移りや手こすれの防止性の効果に優れることに加え、印刷時、温度の影響を受けにくい孔版印刷用W/Oエマルションインキを得ることができた。
これらの効果は、粘度2500mPa・s(25℃)以上の高分子材料と、粘度10mm2/s(40℃)以下の溶剤を併用することで、樹脂が顔料と紙との固着性を向上させて手こすれの防止性を向上させていることと、それに対して樹脂のみを用いるとエマルションの油相が高粘度になりすぎて浸透速度が遅くなることを抑え、裏移り防止に効果があるものと思われる。
また、その時用いる溶剤にナフテン成分が多いと、エマルション界面に吸着している乳化剤の分子鎖を広げ、その為にインキ自体の温度依存性が悪くなると推測できることから、パラフィン成分(Cp)比90%以上である溶剤を使用することで、温度依存性にも優れた効果を有するものと思われる。
【0011】
本発明の第2は、上記第1の孔版印刷用W/Oエマルションインキにおいて、前記の粘度2500mPa・s(25℃)以上の高分子材料が、分子中にカルボキシル基を有する高分子材料であることを特徴とする。
本発明においては、前記第2の手段を採用することにより、さらに油分離に対する安定性に優れる孔版印刷用W/Oエマルションインキを得ることができた。
粘度2500mPa・s(25℃)以上、好ましくは5000〜50000mPa・s(25℃)の高分子材料が、分子中にカルボキシル基を有することで、前述の第1の発明の効果に加え、カルボキシル基を有する高分子材料は顔料表面に容易に吸着することができ、そのことで顔料表面でのオイル包油力が増加することから、油分離防止性が優れる効果をさらに付与できるものと思われる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
前記孔版印刷用W/Oエマルションインキのエマルションの水相は、水、電解質、防黴剤、水蒸発防止剤、凍結防止剤、水溶性高分子、水中油型樹脂エマルション、着色剤、着色剤分散剤など、また前記油相は、油成分、着色剤分散剤、着色剤、体質顔料、樹脂、乳化剤等から構成される。これらの構成成分は、エマルションの形成を阻害しない公知のものが使用される。
【0013】
本発明で用いられる高分子材料としては、粘度2500mPa・s(25℃)以上である一般的な油溶性高分子を用いることができ、具体的には、ロジン;重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、ロジンポリエステル樹脂、水素化ロジンエステル等のロジン系樹脂;ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂;ロジン変性フェノール樹脂、等のロジン変性樹脂;マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;石油樹脂;環化ゴムなどのゴム誘導体樹脂;テルペン樹脂;アルキド樹脂;重合ひまし油、高分子のポリグリセリン脂肪酸エステル、等を1種又は2種以上を混合して添加して良い。これらの代表的な樹脂としては荒川化学社製のタマノル353、タマノル403、タマノル361、タマノル387、タマノル340、タマノル400、タマノル396、タマノル354、KG836、KG846、KG1834、KG1801等のロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0014】
本発明で用いられる粘度10mm2/s(40℃)以下、好ましくは2〜6mm2/s(40℃)であり且つ環分析によるパラフィン成分(Cp)比90%以上である溶剤としては、エクソン化学社のアイソパーシリーズ(C、E、G、H、L、M)等が挙げられる。
これらの油成分は安定性を考慮した場合、3環以上の縮合芳香族環を含む芳香族炭化水素である多環芳香族成分が3質量%未満のものを使用することが望ましい。
【0015】
本発明で採用する環分析については、例えば潤滑ハンドブック、日本潤滑学会編、養賢堂版、p.344に説明があり、その試験方法はn−d−M法による。
また、環分析は構造グループ分析(structural group analysis)で化学大辞典にも記載されている。
%はオイル全体(パラフィン、ナフテン、アロマー)の炭素に対するパラフィン成分に由来する炭素の割合を示す。
環分析の単位は通常、%CA、%CN、%CPが使用され、これら各記号の意味は次のとおりである。
%CA=芳香族炭素数の全炭素数に対する100分率
%CN=ナフテン炭素数の全炭素数に対する100分率
%CP=パラフィン炭素数の全炭素数に対する100分率
【0016】
本発明で用いられる着色剤は各種色調の公知の顔料、分散染料等が用いることができ、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類、アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉、弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料などのアゾ系顔料、無金属フタロシアニン顔料や銅フタロシアニン顔料などのフタロシアニン系顔料、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサンジン系、スレン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系、金属錯体などの縮合多環系顔料、酸性又は塩基性染料のレーキ等の有機顔料、ジアゾ染料、アントラキノン系染料等の油溶性染料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0017】
蛍光顔料としては、合成樹脂を塊状重合する際又は重合した後に、様々な色相を発色する蛍光染料を溶解又は染着し、得られた着色塊状樹脂を粉砕して微細化した、所謂、合成樹脂固溶体タイプのもので、染料を坦持する合成樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を染料に坦持する蛍光顔料等が挙げられる。
【0018】
これらの染顔料類は油相、又は油相と水相の両相に添加しても良く、単独でも2種以上混合して添加しても良い。
油相、水相に分散された不溶性着色剤の平均粒径は10〜0.1μm、好ましくは1〜0.1μmであることが望ましい。
その使用量は必要量に応じて添加することが可能であるが、通常2〜15重量%である。
【0019】
カーボンブラックに関しては油相に添加する場合にはpH5未満、好ましくは2〜4の酸性のカーボンブラックが、水相に添加する場合にはpH5以上、好ましくはpH6〜10、より好ましくはpH7〜9のアルカリ性のカーボンブラックを使用することが均一で微細な良好な分散状態を示す為、画像の均一性が良く、かつ、インキ安定性にも良いので望ましい。
【0020】
代表的なカーボンブラックとしては、MA−100、MA−7、MA−77、MA−11、#40、#44(三菱化学社製)Raven1100、Ravenl080、Raven1255、Raven760、Raven410(コロンビヤンカーボン社製)などが挙げられる。
【0021】
本発明では、溶剤のほかに以下のような油を揮発の程度や物性を制御する目的で用いることも可能である。
前記の油としては、石油系溶剤、流動パラフィン、スピンドル油、マシン油、潤滑油、鉱物油;あまに油、トール油、とうもろこし油、オリーブ油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、やし油等の植物油等があり、具体的には、例えば、モービル石油社のガーゴオイルアークティックシリーズ(1010、1022、1032、1046、1068、1100、3032、3046、3068など)、日本三菱社の日石スパーオイルシリーズ(B、C、D、Eなど)、出光興産社のダイアナプロセスオイル(PX−32、PX−90、PW−32、PW−90、PW−380、PS−32、PS−90、PS−430など)、ダイアナフレシアシリーズ(S−32、S−90、P−32、P−90、P−150、P−180、P−430など)等が挙げられる。
【0022】
さらに、変異原性指数MIが1.0未満、好ましくは0〜0.7、アロマー分(%CA)が20〜55%、アニリン点が100℃以下であって、かつオイル全重量基準でベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a、j]アクリジン等の多環芳香族の含有量がそれぞれ個々に10重量ppm以下であり、含有量の合計量が50重量ppm以下、好ましくは0〜30重量ppmである、安全性の高いアロマー系オイル(特開平11−80640号公報)も必要であれば着色剤の分散性を向上させるの目的で使用しても良い。
前記の変異原性指数MIとはASTM-E-1687-95に規定する「Standard Test for Determining Carcinogenic Potential of Virgin Base Oils in Metalworking Fluids」に準拠して規定される。
【0023】
本発明で用いられる乳化剤は、油中水型のエマルションを形成する目的で使用され、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれでも良く、安定性に効果が有れば低分子でも高分子でもまた併用しても良い。
この中でも好ましくは非イオン系界面活性剤であり、たとえば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、デカグリセリルトリオレート、ヘキサグリセリンポリリシノレートなどの(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン植物油脂肪酸エステルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油及び高級アルコール等が挙げられ、単独あるいは2種類以上あわせて保存安定性の高いエマルションを調製する。添加量は通常インキ重量の0.5〜15重量%、好ましくは1〜3重量%とすれば良い。
【0024】
以上のほか、油相にはエマルションの形成を妨害しない範囲で樹脂、着色剤の分散剤、体質顔料、ゲル化剤及び酸化防止剤等を添加することができる。なお、前記の乳化剤も油相に含まれる。
また、水相にはエマルションの形成を妨害しない範囲で不溶性着色剤分散剤、水溶性高分子、防腐・防かび剤、水の蒸発抑制剤、凍結防止剤、pH調整剤、電解質、体質顔料等を添加できる。
【0025】
油相に分散する着色剤の着色剤分散剤としてはエマルションの形成を阻害しない物が使用でき、前記の乳化剤用非イオン性界面活性剤及び水溶性高分子も使用することができる。
分散剤としてはソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ヘキサグリセリンポリリシノレートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、などの非イオン性界面活性剤、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート系化合物、スチレン−無水マレイン酸系共重合高分子化合物、ポリカルボン酸エステル型高分子化合物、脂肪族系多価カルボン酸、高分子ポリエステルのアミン塩類、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩類、長鎖ポリアミノアミドと高分子酸ポリエステルの塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸塩類、ポリエチレンイミン、アルキロールアミン塩、及びアルキド樹脂などの不溶性着色剤、分散能を有する樹脂なども挙げられる。この他にもインキの保存安定性を阻害しない範囲であればイオン性界面活性剤、両性界面活性剤なども挙げられる。
【0026】
これらの分散剤は単独又は2種類以上混合して添加すれば良く、高分子及び樹脂以外の着色剤分散剤の添加量は着色剤重量の40重量%以下、好ましくは2〜35重量%とすれば良い。アルキド樹脂は高分子量の樹脂を添加するときに不溶性着色剤の分散安定性に特に効果があるが、アルキド樹脂を単独又は他の分散剤と併用して使用する場合の樹脂の添加量は不溶性着色剤1に対して0.05以上であることが好ましい。
【0027】
ゲル化剤は、油相に含まれる樹脂をゲル化してインキの保存安定性、定着性、流動性を向上させる役割をもち、本発明のインキに添加されるゲル化剤としては油相中の樹脂と配位結合する化合物が好ましい。このような化合物を例示すると、Li、Na、K、Al、Ca、Co、Fe、Mn、Mg、Pb、Zn、Zr等の金属を含む有機酸塩、有機キレート化合物、金属石鹸オリゴマー等であり、具体的にはオクチル酸アルミニウム等のオクチル酸金属塩、ナフテン酸マンガン等のナフテン酸金属塩、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等の有機キレート化合物等が挙げられる。
これらのゲル化剤は、1種又は2種類以上を油相に添加すれば良く、その添加量は油相中の樹脂の15%以下、好ましくは5〜10重量%である。
【0028】
油相に添加される酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール等であり、これらの添加によって油相中のバインダー樹脂等の酸化を防ぎ、これによってインキの粘度の上昇等が防止される。
また、その添加量はインキ中の油の2重量%以下、好ましくは0.1〜1.0重量%である。なお酸化防止剤は単独でも2種類以上を混合して使っても良い。
【0029】
インキ中には粘度調整のために体質顔料も添加できる。インキ中に添加される体質顔料としては白土、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナホワイト、ケイソウ土、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム等の無機微粒子及びポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の有機微粒子又はこれらの共重合体からなる微粒子が挙げられる。具体的な例としてはアエロジル200、アエロジルR972等(日本アエロジル社)、NEW D ORBEN(白石工業社)、BEN−GEL、S−BEN、ORGANITEなど(豊順洋行社)、TIXOGELシリーズ(VP、DS、GB、VG、EZ−100など)、OPTIGEL(日産ガードラー触媒社)などが挙げられる。
これらは油相、水相また両相に添加しても良く。添加量はインキに対して0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
【0030】
エマルションインキの水相には保湿や増粘及び不溶性着色剤、体質顔料の分散及び固着のために水溶性高分子O/W樹脂エマルションを添加しても良い。
水溶性高分子としては具体的には下記の天然又は合成高分子が添加される。
例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、ブルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等の天然高分子;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等の半合成高分子;アクリル酸樹脂及びポリアクリル酸ナトリウムなどの中和物、ポリビニルイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリN−アクリロイルピロリジンやポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのポリN−アルキル置換アクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体及びこれらをアルキル基で部分的に疎水した高分子、またアクリルアミド系ポリマー及びアクリル系のポリマーに関しては置換基を部分的にアルキル基で疎水化した共重合タイプのポリマーでも良い。またポリエチレンとポリプロピレン又はポリブチレンのブロックコポリマーを用いることができる。
これらの水溶性高分子は単独でも2種類以上混合しても良く、インキに含まれる水の25重量%以下、好ましくは0.5〜15重量%が添加される。
【0031】
O/W樹脂エマルションとしては合成高分子でも天然高分子でもよい。高分子としては酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン等が挙げられる。天然のものとしては油相に添加できる高分子等が挙げられる。これらは油中水型エマルションインキの安定性を阻害しない範囲であれば2種類以上を併用してもよく、また分散方法も分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成したものでも良い。これらのO/W樹脂エマルションの最低造膜温度は40℃以下であることが望ましい。
【0032】
水相に添加される防腐、防かび剤は、エマルション内で細菌やかびが繁殖するのを防ぐために添加され、エマルションを長期保存する場合は防腐防かび剤を添加するのが望ましい。その添加量は、インキ中に含まれ水の3重量%以下、好ましくは0.1〜1.2重量%とするのが良い。また防腐、防かび剤としてはサリチル酸、フェノール類、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル等の芳香族ヒドロキシ化合物及びその塩素化合物のほか、ソルビン酸やデヒドロ酢酸等が使用され、これらは単独でも2種類以上混合して使っても良い。
【0033】
水の蒸発防止剤と凍結防止剤は兼用可能であり、これらの目的で添加される薬品はエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコルーメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブイタノール、イソブタノール等の低級飽和一価アルコール;グリセリンやソルビトール等の多価アルコール;等である。
これらの薬品は1種類又は2種類を添加すれば良く、その添加量はインキ中の水重量の15重量%以下、好ましくは4〜12重量%である。
【0034】
水相に添加されるpH調整剤は、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、トリアミルアミン等であり、必要時にはこれらのpH調整剤を添加して水相のpHを6〜8に保つことができる。水相のpHが前記範囲からはずれると、増粘剤用水溶性高分子が添加されている場合にはその効果が損なわれる等の問題がある。
水相に添加される場合にはエマルションの保存安定性を高めるために添加されるものである。従って、電解質により影響を受ける材料が水相に存在しない場合に使用するのが望ましい。
【0035】
電解質はクエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等の陰イオンあるいはアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンなどを含む電解質であることが好ましい。従ってここで添加される電解質としては、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が好ましく、その添加量は水相の0.1〜2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0036】
上記の他、本発明の孔版印刷用油中水型エマルションインキには、印刷時に印刷用紙と印刷ドラムとの分離を良くするため、或いは印刷用紙の巻き上がり防止のために油相にワックスを添加することができる。また、水相にはトリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等を添加して、水溶性高分子添加による高粘度化を更に増進させることができる。さらに、水相に防錆剤や消泡剤を添加して印刷の際に印刷機がインキによって錆びたり、インキが泡立つことを防止することができる。これらの添加剤は、孔版印刷用インキに添加されている公知品を必要に応じて添加すれば良く、その添加量は従来品の場合と同程度でよい。
【0037】
本発明のエマルションインキは、従来のエマルションインキ製造時と同様にして油相及び水相液を調整し、この両方を公知の乳化機内で乳化させてインキとすればよい。すなわち、着色剤、乳化剤及び必要に応じて添加される樹脂等の添加物を良く分散させた油相を調整し、これに着色剤、防腐、防かび剤や水溶性高分子等が必要に応じて添加されている水溶液を徐々に添加して乳化すれば良い。
【0038】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に記す部は重量部である。
【0039】
実施例1〜2及び比較例1〜2
O/Wエマルションインキは着色剤、オイル又は溶剤、不溶性着色剤分散剤、乳化用界面活性剤、高分子材料等を加え、3本ロールで練肉することで油相とし、これに水、凍結防止剤、電解質などからなる水相を加え乳化することにより孔版印刷機用エマルジョンインキとした。必要に応じ体質顔料などの他の成分を加えても良い。
インキの粘度はインキの粘度は攪拌条件によっても調節可能であり、システムにあった粘度であれば良く特に規定はないが、ずり速度20s-1の時の粘度が3〜40Pa・sが望ましく、好ましくは10〜30Pa・sであることが望ましい。
【0040】
実施例及び比較例で使用している材量として、カーボンブラックはコロンビヤンカーボン社製RAVEN1100、顔料分散剤は味の素社製プレーンアクトAL−M、乳化剤(ソルビタンセスキオレート)は日光ケミカルズ社製SO−15、溶剤としてはエクソン化学社のアイソパーM(粘度2.3,Cp99%)、日石AFソルベント4号(粘度2.4、Cp22%)、三油化学工業社製40モーターオイル(粘度141.3、Cp68%)、高分子材料は味の素社製アジスパーPN411、ハリマ化成製大豆油変性アルキド樹脂、エチレングリコール、硫酸マグネシウムは市販品、水は水道水を使用した。
尚、実施例1〜2及び比較例1〜2の処方を表1に示した。
(エマルションインキの評価)
これらのインキを用い、市販のリコー製孔版印刷機(VT3920)で十分印刷を行ってインキを印刷機内にいきわたらせた後、印刷した。
【0041】
裏移りは、印刷されたべた部分の裏面側を目視にて評価し、一枚前の印刷物からオフセットしている汚れ具合がひどいものを×、比較的少ないものを◎とし、×△○◎の4段階で評価した。
手こすれは、印刷後30分の画像表面を指で擦り、汚れの多いものを×、汚れの比較的少ないもの◎とし、×△○◎の4段階で評価した。
ベタ埋りは、10℃と30℃の環境で印刷された画像のベタ部分を、マクベス濃度計を用いてベタ埋り率を測定した。ベタ埋り率は0%〜100%の数値が存在し、数値が大きいほどベタ埋りが良いことを示す。
油分離は、60℃にて3ケ月放置したインキパック内のインキを目視で観察し、油分離の度合いがひどいものを×、比較的少ないものを◎とし、×△○◎の4段階で評価した。
尚、実施例1〜2及び比較例1〜2の評価結果を表2に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
表2の実施例1と比較例1から、油相中に少なくとも粘度2500mPa・s(25℃)以上の高分子材料と粘度10mm2/s(40℃)以下であり且つ環分析によるパラフィン成分(Cp)比90%以上である溶剤とを併用して用いることで裏移りや手こすれの防止性の効果に優れることに加え、印刷時、温度の影響を受けにくいこと効果が、粘度2500mPa・s(25℃)以上の高分子材料が分子にカルボキシル基を有することでさらに油分離防止性に優れる効果が明らかになった。
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、裏移りと手擦れの防止性に優れ、且つ環境温度の影響を受けにくい孔版印刷用W/Oエマルションインキが提供される。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明による効果に加え、油分離防止性にも優れる効果が加わる孔版印刷用W/Oエマルションインキが提供される。
Claims (2)
- 油相10〜90重量%及び水相90〜10重量%によって構成され、かつ油相中に少なくとも粘度2500mPa・s(25℃)以上の高分子材料と、粘度2.3mm 2 /s(40℃)であり且つ環分析によるパラフィン成分(Cp)比が99%である溶剤とを併用して用いることを特徴とする孔版印刷用W/Oエマルションインキ。
- 粘度2500mPa・s(25℃)以上の高分子材料が、分子中にカルボキシル基を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の孔版印刷用W/Oエマルションインキ。
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