JP4520765B2 - 孔版印刷用エマルションインキ - Google Patents
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Description
しかし、これらの提案では、高温での保存安定性は比較的良好であるものの、過酷な環境変化を伴うインキ輸送や長期保存において十分なインキの安定性が得られないという問題がある。
<1> 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含み、該油相中に少なくとも植物油及びリモネンを含有することを特徴とする孔版印刷用エマルションインキである。該<1>に記載の孔版印刷用エマルションインキにおいては、前記油相中に天然植物系材料である植物油及びリモネンを含有する。リモネンを添加することにより植物油を含めた油溶性の材料を複数混合した場合であっても相溶性を向上させることができ、長期間に亘って安定なインキが得られる。また、インキ中に含まれるオイル成分による不快な臭気が存在するが、リモネンの柑橘臭によりオイルによるインキ臭気を緩和することができる。
<2> 植物油及びリモネンの合計含有量が、油相の総質量に対し40質量%以上である前記<1>に記載の孔版印刷用エマルションインキである。該<3>に記載の孔版印刷用エマルションインキにおいては、天然植物系材料である植物油及びリモネンが油相成分の総質量の40質量%以上を占めるので、安全でありかつ環境性に優れたものである。
を提供する。
前記油相の混合割合が10質量%未満であると、W/Oエマルジョンとしての状態を保つことが困難になることがあり、90質量%を超えると、印刷機に対する粘度特性とコスト面でのW/Oエマルションのメリットが失われることがある。
−リモネン−
前記リモネンは、下記構造式で表されるモノテルペン炭化水素の一つであり、柑橘類などの皮に含まれる天然の植物材料である。前記リモネンには、d−リモネン、l−リモネン、及びdl−リモネンの異性体が存在するが、本発明においては、これらのいずれも用いることができる。
前記リモネンは、ミカン果皮様の快香のある無色の液体であり、食品香料や芳香性の食品添加物、家庭用の洗浄剤、香料等に用いられている。
前記リモネンの添加量が1質量%未満であると、本発明の目的及び作用効果を達成できないことがあり、10質量%を超えて添加しても効果に差異はなく、却ってコスト高を招いてしまうことがある。
前記植物油としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、なたね油、サフラワー油、ごま油、ひまし油、脱水ひまし油、つばき油、オリーブ油、やし油、米油、綿実油、パーム油、あまに油、パーム核油、桐油、カメリアオイル、グレープシード油、スイートアルモンド油、ピスタチオナッツ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、メドウホーム油、などが挙げられ、これらの中でも、ひまし油、大豆油が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記植物油の添加量が1質量%未満であると、安全性及び環境面でのメリットに乏しくなることがあり、40質量%を超えると、他の成分により物性等をコントロールすることが困難となることがある。
前記鉱物油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤、スピンドル油、流動パラフィン、軽油、灯油、マシン油、ギヤー油、潤滑油、モーター油、等が挙げられ、これらの中でも、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、石油系溶剤が特に好ましい。
前記パラフィン系オイルとしては、市販品を用いることができ、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックシリーズ、日本石油株式会社製の日石スーパーオイルシリーズ、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ等が挙げられる。
前記ナフテン系オイルとしては、環分析によるナフテン成分の炭素含有量(CN)が30%以上であり、芳香族成分の炭素の含有量(CA)が20%以下であり、かつパラフィン成分の炭素含有量(CP)が55%以下であるものが好適であり、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックオイル155及び300ID、ガーゴオイルアークティックオイルライト、ガーゴオイルアークティックオイルCヘビー;出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ;日本サン石油株式会社製のサンセンオイルシリーズなどが挙げられる。
前記石油系溶剤としては、市販品を用いることができ、例えば、エクソン化学社製のアイソパーシリーズ及びエクソール;日本石油株式会社製のAFソルベントシリーズなどが挙げられる。
なお、必要に応じて安全性の高いアロマ系オイル(例えば、特開平11−80640号公報)を使用することもできる。
前記鉱物油の添加量が1質量%未満であると、印刷直後のこすれ汚れ性が多少悪くなることがあり、40質量%を超えると、他の成分により物性等をコントロールすることが困難となることがある。
前記樹脂としては、重量平均分子量が10000以上であれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロジン;重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、ロジンポリエステル樹脂、水素化ロジンエステル等のロジン系樹脂;ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のロジン変性樹脂;マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;石油樹脂;環化ゴム等のゴム誘導体樹脂;テルペン樹脂;アルキド樹脂;重合ひまし油、などが挙げられ、これらの中でも、アルキド樹脂、ロジン変性樹脂が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂の重量平均分子量は10000以上が好ましく、2万〜8万がより好ましい。前記重量平均分子量が10000未満であると、インキ定着性が低下することがある。一方、重量平均分子量が大きすぎると、インキの塑性粘度が高くなり、ドラム後端からのインキ漏れなどが生じ、印刷適正に問題が生じることがある。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、マンニット、ソルビットなどが挙げられる。
前記アルキド樹脂の油長は、前記油脂中の脂肪酸がトリグリセライドで存在したときの樹脂中の質量%で表され、通常60〜90質量%程度である。
前記アルキド樹脂は、分散安定性及び皮膜形成による版銅スクリーンの目詰まり等の問題から、ヨウ素価80以下であることが好ましい。
前記着色剤としては、各種色調の公知の顔料、分散染料などを用いることができ、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉;弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料;無金属フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料等のフタロシアニン系顔料;アントラキノン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、イソインドリン系色素、ジオキサンジン系色素、スレン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジゴ系色素、キノフタロン系色素、金属錯体等の縮合多環系顔料;酸性又は塩基性染料のレーキ等の有機顔料;ジアゾ染料、アントラキノン系染料等の油溶性染料;蛍光顔料、などが挙げられ、これらの中でも、カーボンブラック、アゾレーキ顔料、フタロシアニン系顔料などが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤の孔版印刷用エマルションインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常2〜15質量%が好ましい。
前記体質顔料の孔版印刷用エマルションインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜50質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
前記酸化防止剤の添加によって油相中のバインダー樹脂等の酸化を防ぎ、これによってインキ粘度の上昇等が防止される。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中の油相の総量に対し2質量%以下が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。
前記水相は、エマルションの形成を妨害しない範囲で、水、電解質、水溶性高分子化合物、O/W樹脂エマルション、防腐・防かび剤、水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤、pH調整剤などを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電解質の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水相の0.1〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。
前記天然高分子化合物としては、例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、プルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、等が挙げられる。
前記半合成高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等が挙げられる。
前記合成高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のアクリル酸樹脂誘導体;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル等の合成高分子などが挙げられる。
前記水溶性高分子化合物の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキに含まれる水の25質量%以下が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
また、前記水中油型樹脂エマルションの分散方法についても特に制限はなく、分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成したものでもよい。前記水中油型樹脂エマルションの最低造膜温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、40℃以下が好ましい。
前記防腐・防かび剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中に含まれる水の総質量に対し3質量%以下が好ましく、0.1〜1.2質量%がより好ましい。
前記低級飽和一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール等が挙げられる。
前記水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中の水の総質量に対し15質量%以下が好ましく、4〜12質量%がより好ましい。
以上説明したように、本発明の孔版印刷用エマルジョンインキは、環境性に優れ、インキの分離に対する安定性が向上し、長期にわたって安定なインキを提供できる。更にインキの臭気を緩和することができる。本発明の孔版印刷用エマルジョンインキは、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
カーボンブラック(コロンビヤンカーボン社製、RAVEN1080)5.0質量%、顔料分散剤(味の素株式会社製、プレーンアクトAL−M)0.5質量%、乳化剤としてのソルビタンセスキオレート(日光ケミカルズ株式会社製、SO−15)4.5質量%及び植物油としての精製ひまし油(日光ケミカルズ株式会社製)5質量%を3本ロールで練肉することで顔料分散体を調製した。この顔料分散体にd−リモネン(ヤスハラケミカル株式会社製)4.0質量%、及び植物油としての精製ひまし油(日光ケミカルズ株式会社製)11.0質量%を加えて混合し、油相を調製した。
一方、エチレングリコール10.0質量%、硫酸マグネシウム1.0質量%、及び水道水59.0質量%を混合して水相を調製した。
次に、前記油相に前記水相を徐々に添加し、ディスパーミキサーで乳化させて、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、油相における精製ひまし油16.0質量%を8.0質量%に変更し、鉱物油としてのガーゴイルアークティックライト(エクソンモービル社製)8.0質量%を添加した以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、油相における精製ひまし油16.0質量%を8.0質量%に変更し、鉱物油としてのAFソルベント5号(日石三菱株式会社製)4.0質量%、重量平均分子量10000以上の樹脂としてロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社製、T−361、重量平均分子量=約3万)4.0質量%を添加した以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、d−リモネン4.0質量%を添加せず、精製ひまし油16.0質量%を20.0質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、d−リモネン4.0質量%を添加せず、精製ひまし油16.0質量%を10.0質量%に変え、鉱物油としてのガーゴイルアークティックライト(エクソンモービル社製)10.0質量%を添加した以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、d−リモネン4.0質量%を添加せず、精製ひまし油16.0質量%を10.0質量%に変え、鉱物油としてのAFソルベント5号(日石三菱株式会社製)5.0質量%、重量平均分子量10000以上の樹脂としてロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社製、T−361、重量平均分子量=約3万)5.0質量%を添加した以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
各孔版印刷用エマルションインキを密閉したパックに充填し、1週間のサイクルで60℃と−10℃を交互に繰り返して保存した。該試験を2ヶ月間継続して実施し、インキの分離状態を目視観察により以下の基準に基づき評価した。
〔評価基準〕
○:2ヶ月間でインキに分離なし。
△:部分的にインキに分離が見られる。
×:全体的にインキが分離した状態である。
孔版印刷機(東北リコー株式会社製、プリポートN−500)のドラム内に、各孔版印刷用エマルションインキを十分に行き渡らせた後、印刷を行い、印刷直後の画像表面を指で擦り、下記基準に基づき評価した。
〔評価基準〕
◎:汚れがごくわずか生じた。
○:汚れが少し生じた。
△:汚れがやや多く生じた。
×:汚れが多く生じた。
孔版印刷機(東北リコー株式会社製、プリポートN−500)のドラム内に、各孔版印刷用エマルションインキを十分に行き渡らせた後、印刷を行い、印刷後1日放置後の画像表面を指で擦り、下記基準に基づき評価した。
〔評価基準〕
◎:汚れがごくわずか生じた。
○:汚れが少し生じた。
△:汚れがやや多く生じた。
×:汚れが多く生じた。
孔版印刷機(東北リコー株式会社製、プリポートN−500)のドラム内に、各孔版印刷用エマルションインキを十分に行き渡らせた後、印刷を行い、印刷物の臭気を官能評価した。
実施例1〜3と比較例1〜3を対比した結果から、インキの分離に対する安定性に優れ、リモネンの独特の柑橘臭によりインキの臭気を緩和できることが認められる。
実施例1及び2と比較例1及び2を対比した結果から、リモネンと植物油と鉱物油を添加することにより、インキの分離に対する安定性に優れ、印刷直後の手こすれ汚れの防止が図れることが認められる。
実施例1及び3と比較例1及び3を対比した結果から、リモネンと植物油と分子量10000以上の樹脂を添加することにより、インキの分離に対する安定性に優れ、印刷1日後の手こすれ汚れの防止が図れることが認められる。
Claims (4)
- 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含み、該油相中に少なくとも植物油及びリモネンを含有することを特徴とする孔版印刷用エマルションインキ。
- 植物油及びリモネンの合計含有量が、油相成分の総質量に対し40質量%以上である請求項1に記載の孔版印刷用エマルションインキ。
- 油相中に更に鉱物油を含有する請求項1から2のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキ。
- 油相中に更に重量平均分子量が10,000以上の樹脂を含有する請求項1から3のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキ。
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