JP4520767B2 - 孔版印刷用エマルションインキ - Google Patents
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このため、コロ跡汚れの発生を防止する対処法として、例えば、油相にアルミニウムキレート類を添加する方法(特許文献1参照)、ヨウ素価80以下のアルキド樹脂とアルミニウムキレート化合物を使用する方法(特許文献2参照)、などが提案されている。
しかし、前記特許文献1によれば、顔料分散向上により浸透性を向上させている効果のみであるため、コロ跡汚れに対する効果としては不十分であった。また、前記特許文献2によれば、アルキド樹脂は使用しているものの、ヨウ素価が80以下であり、この場合もコロ跡汚れに対する効果は不十分であった。
<1> 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含み、該油相中に酸価が15以下であり、かつヨウ素価が80以上であるアルキド樹脂を含有することを特徴とする孔版印刷用エマルションインキである。本発明の孔版印刷用エマルションインキにおいては、該油相中に酸価が15以下であり、かつヨウ素価が80以上であるアルキド樹脂を含有する。ヨウ素価が高いということは、該分子構造中に2重結合を多く有することを意味する。ヨウ素価の高いアルキド樹脂を用いると、空気中の酸素と2重結合部分が酸化反応することにより樹脂分子同士が重合し、樹脂成分が高粘度化して紙に固着することによって、コロ跡汚れの発生防止に有効である。しかしながら、ヨウ素価の高いアルキド樹脂を含有したインキは、酸化重合しやすいことから、ドラム内で長期間放置されると、樹脂成分の高粘度化によりインキが吐出しにくくなることが知られているが、上記ヨウ素価範囲であっても、酸価(水酸基やカルボキシル基が多いと高い傾向)の低い領域のアルキド樹脂であれば、インキのエマルション安定性が良く、インキの経時劣化が遅く、そのため、両面印刷時のコロによる汚れ(コロ跡汚れ)の発生が少なく、更にインキがドラム内で長期間放置された時の立ち上がりが良好な孔版印刷用エマルションインキを提供できる。
前記油相の混合割合が10質量%未満であると、W/Oエマルションとしての形態をとれなくなることがあり、90質量%を超えると、物性的にW/Oエマルションとすることの効果が不足してしまうことがある。
−アルキド樹脂−
前記アルキド樹脂は、酸価が15以下であり、10以下がより好ましい。また、ヨウ素価が80以上であり、80〜110がより好ましい。
前記酸価が15を超えると、印刷機のドラム内でのインキの変質により、インキが吐出し難くなることがある。また、前記ヨウ素価が80未満であると、両面印刷におけるコロによる汚れが悪くなることがある。
ここで、前記アルキド樹脂の酸価は、例えば、JIS K0070により測定することができる。前記アルキド樹脂のヨウ素価は、例えば、JIS K0070により測定することができる。
ここで、前記アルキド樹脂の粘度は、例えば、コーンプレート型回転粘度計により測定することができる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、マンニット、ソルビットなどが挙げられる。
前記添加量が少なすぎると、コロ跡汚れに対する効果が小さくなることがあり、多すぎると、効果は大差がなく、却ってコスト高を招いてしまうことがある。
前記着色剤としては、各種色調の公知の顔料、分散染料などを用いることができ、これらの中でも、顔料が特に好ましい。前記着色剤としては、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉;弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料;無金属フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料等のフタロシアニン系顔料;アントラキノン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、イソインドリン系色素、ジオキサンジン系色素、スレン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジゴ系色素、キノフタロン系色素、金属錯体等の縮合多環系顔料;酸性又は塩基性染料のレーキ等の有機顔料;ジアゾ染料、アントラキノン系染料等の油溶性染料;蛍光顔料、などが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤の孔版印刷用エマルションインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常2〜15質量%が好ましい。
前記着色剤分散剤としては、エマルションの形成を阻害しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する乳化剤用非イオン界面活性剤、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート化合物、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、脂肪族多価カルボン酸、ポリエーテル、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ポリエチレンイミン、アルキロールアミン塩、インキの保存安定性を阻害しない範囲であればイオン性界面活性剤、両性界面活性剤なども使用可能であり、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、顔料の分散効果(アルミニウムキレート化合物の吸着効果とポリグリセリン脂肪酸エステル化合物の立体障害効果の相乗効果)による顔料の浸透性向上によって、更にコロ跡汚れに効果がある点からアルミニウムキレート化合物及びポリグリセリン脂肪酸エステル化合物から選択される少なくともいずれかが好ましい。
前記酸化防止剤は、アルキド樹脂等の酸化を防ぎ、ドラム内での長期間放置でのインキの変質を防止でき、油相及び水相の少なくともいずれかに添加することができる。該酸化防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、グアヤク脂、クエン酸エステル、抽出トコフェロール、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ総量に対し2質量%以下が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。
前記乳化剤としては、油中水型のエマルションを形成することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該非イオン系界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、などが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記パラフィン系オイルとしては、市販品を用いることができ、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックシリーズ、新日本石油株式会社製の日石スーパーオイルシリーズ、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ等が挙げられる。
前記ナフテン系オイルとしては、環分析によるナフテン成分の炭素含有量(CN)が30%以上であり、芳香族成分の炭素の含有量(CA)が20%以下であり、かつパラフィン成分の炭素含有量(CP)が55%以下であるものが好適であり、例えば、モービル石油社製のガーゴオイルアークティックオイル155及び300ID、ガーゴオイルアークティックオイルライト、ガーゴオイルアークティックオイルCヘビー;出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイル、ダイアナフレシアシリーズ;日本サン石油株式会社製のサンセンオイルシリーズなどが挙げられる。
前記石油系溶剤としては、市販品を用いることができ、例えば、エクソン化学社製のアイソパーシリーズ及びエクソール;新日本石油株式会社製のAFソルベントシリーズなどが挙げられる。
なお、必要に応じて安全性の高いアロマ系オイル(例えば、特開平11−80640号公報)を使用することもできる。
前記体質顔料の孔版印刷用エマルションインキにおける添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜50質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
前記水相は、エマルションの形成を妨害しない範囲で、水、水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤、電解質、水溶性高分子化合物、O/W樹脂エマルション、防腐・防かび剤、pH調整剤などを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記低級飽和一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。
これらの中でも、水相の揮発等によるインキの経時劣化を抑える効果及びエマルションの安定化の作用により、アルキド樹脂のコロ跡汚れに対する効果を維持したまま、ドラム内での長期間放置でのインキの変質を小さくさせることが可能となる点でグリセリンが特に好ましい。
前記水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中の水の総質量に対し15質量%以下が好ましく、4〜12質量%がより好ましい。
前記電解質の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水相の0.1〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。
前記天然高分子化合物としては、例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、プルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、等が挙げられる。
前記半合成高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等が挙げられる。
前記合成高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のアクリル酸樹脂誘導体;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル等の合成高分子などが挙げられる。
前記水溶性高分子化合物の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキに含まれる水の25質量%以下が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
また、前記水中油型樹脂エマルションの分散方法についても特に制限はなく、分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成したものでもよい。前記水中油型樹脂エマルションの最低造膜温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、40℃以下が好ましい。
前記防腐・防かび剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中に含まれる水の総質量に対し3質量%以下が好ましく、0.1〜1.2質量%がより好ましい。
以上説明したように、本発明の孔版印刷用エマルションインキは、両面印刷時のコロによる汚れの発生防止効果に優れ、インキがドラム内で長期間放置された時の立ち上がりが優れ、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
フタロシアニンブルー(東洋インキ製造株式会社製)5.0質量%、顔料分散剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル(味の素ファインテクノ株式会社製)1.0質量%、鉱物油としてのスピンドル油(コスモ石油株式会社製)5.0質量%、及び表1に示すアルキド樹脂5質量%を3本ロールで練肉することで顔料分散体を調製した。この顔料分散体に、鉱物油としてのAFソルベント4号(新日本石油株式会社製)10.0質量%、及びソルビタン系乳化剤3.0質量%を加え混合し、油相を調製した。
一方、硫酸マグネシウム1.0質量%、及び水道水70.0質量%を混合して水相を調製した。
次に、前記油相に前記水相を徐々に添加し、ディスパーミキサーで乳化させて、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、油相における鉱物油としてのAFソルベント4号(新日本石油株式会社製)10.0質量%を12.0質量%に変更し、表1に示すアルキド樹脂に変更し、水相における水道水70質量%を68質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例2において、油相にアルミニウムキレート化合物1.0質量%を添加し、鉱物油としてのスピンドル油5.0質量%を4.0質量%に変えた以外は、実施例2と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例3において、水相にグリセリン10.0質量%を添加し、水道水68.0質量%を58.0質量%に変えた以外は、実施例3と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例3において、油相に酸化防止剤としてのジブチルヒドロキシトルエン0.1質量%を添加し、水道水68質量%を67.9質量%に変えた以外は、実施例3と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、油相に表1に示すアルキド樹脂に変えた以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
−孔版印刷用エマルションインキの調製−
実施例1において、油相に表1に示すアルキド樹脂に変えた以外は、実施例1と同様にして、孔版印刷用エマルションインキを調製した。
孔版印刷機(東北リコー株式会社製、プリポートN−500)のドラム内に、各インキを十分いきわたらせた後にベタ画像印刷を行い、印刷後24時間放置後に画像の裏面を、白紙製版で再度印刷した。その100枚目の画像における用紙白部と汚れ部のマクベス濃度計による濃度差を測定した。濃度差が小さいほどコロ跡汚れの発生防止効果に優れる。
孔版印刷機(東北リコー株式会社製、プリポートN−500)のドラム内に、各インキを十分いきわたらせた後に、その印刷ドラムを60℃のオーブン内で1週間放置した後、再び印刷を行い、画像が全面に出ているかどうかを目視により評価した。画像復帰が早い(画像が全面に出ている)ものから順に、5、4、3、2、1と、5段階でランク評価を行った。ランク1は、完全に復帰しない目詰まり部分があることを示す。
また、酸価が15以下であり、かつヨウ素価が80以上であるアルキド樹脂を含有する実施例1は、アルキド樹脂の酸価が15を超える比較例2に比べてインキがドラム内で長期間放置された時の立ち上がりに優れることが認められ、グリセリンを添加した実施例4、及び酸化防止剤を添加した実施例5では、更に効果が大きいことが認められる。
Claims (5)
- 油相10〜90質量%及び水相90〜10質量%を含み、該油相中に酸価が15以下であり、かつヨウ素価が80以上であるアルキド樹脂を含有することを特徴とする孔版印刷用エマルションインキ。
- アルキド樹脂の20℃における粘度が、3Pa・s以上である請求項1に記載の孔版印刷用エマルションインキ。
- 油相中に着色剤及び着色剤分散剤を含有し、該着色剤が顔料であり、該着色剤分散剤がアルミニウムキレート化合物及びポリグリセリン脂肪酸エステル化合物から選択される少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキ。
- 水相中にグリセリンを含有する請求項1から3のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキ。
- 水相中及び油相中の少なくともいずれかに酸化防止剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載の孔版印刷用エマルションインキ。
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