JP3022717B2 - 印刷機用湿し水ローラ - Google Patents

印刷機用湿し水ローラ

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JP3022717B2
JP3022717B2 JP5329227A JP32922793A JP3022717B2 JP 3022717 B2 JP3022717 B2 JP 3022717B2 JP 5329227 A JP5329227 A JP 5329227A JP 32922793 A JP32922793 A JP 32922793A JP 3022717 B2 JP3022717 B2 JP 3022717B2
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三郎 薗部
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、オフセット印刷機の
湿し水装置に組み込まれる印刷機用湿し水ローラの改良
に関する。
【0002】
【従来の技術】周知の如く、オフセット印刷は油(イン
キ)と水が反発する性質を利用した印刷法で、現在の主
流をなす印刷技術であり、新聞,雑誌,教科書,チラシ
などの印刷に多用されている。
【0003】上記オフセット印刷は、予め版の上に画像
部(親インキ樹脂層)と非画像部(親水性アルミニウム
層)を形成させておき、まず湿し水装置によって非画像
部に水を与え、しかる後にインキ装置によって画像部に
インキを与え、この版と接触回転するゴムブランケット
にインキ画像を移す。更に、ゴムブランケットと接触回
転している圧胴の間に紙等の被印刷物を通し、ゴムブラ
ンケット上のインキ画像を転写して印刷されるようにな
っている。
【0004】図1は、印刷装置の構成の一部を示す図で
ある。
【0005】まず、水舟1中の湿し水2はゴム製の水元
ローラ3によって汲み上げられ、接触回転している表面
にクロームメッキを施した水ならしローラ4に移され
る。ここで、水ならしローラ4は、湿し水膜を均一に広
げるために軸方向に往復運動をするようになっている。
次に、湿し水はゴム製の水つけローラ5に移され、同じ
く接触回転している版銅6上に取付けられている版の非
画像部に供給され、版面を湿す。この後、インキ装置7
によって画像部にインキが供給され、基本的な印刷画像
が形成される。この工程の後、画像はゴムブランケット
から紙へと転写され、版上への画像形成が正確であるこ
とが不可欠であることが理解される。もし、版の非画像
部にインキが付着してしまうと、非印刷体にも印刷され
てしまい、汚れて不良品となる。また、湿し水が過剰で
あると、被画像部にも付着してしまい、その後のインキ
転移が不足し、印刷物のインキ濃度不足となる。
【0006】版上の適正湿し水膜の厚さは、0.1μm
程度と言われている。実際には、この5倍程度の湿し水
が使われている。湿し水を少なくすると、(1) 印刷物の
濃度が上がる、(2) コントラスト(ベタ濃度とアミ点の
バランス)が良くなる、(3) ゴーストが減少する、等の
効果があるので、湿し水は均一、薄膜が望ましい。しか
し、現状は湿し水を均一化、薄膜化できないため、過剰
の湿し水が使われ、色々なトラブルが発生している。湿
し水の均一化、薄膜化できない理由は、まず水ならしロ
ーラ4の親水性不良が挙げられる。現在は親水性を向上
させるために芯金の上にクロムメッキを施しているが、
水の接触角は84度程度であり、水濡れは良くない。と
ころで、親水性が不足すると、水元ローラ3から汲み上
げられた湿し水2が水ならしローラ4を均一に濡らすこ
とができず、均一な水膜とならず部分的なムラや、ひど
いときには水玉となる。その結果、水つけローラ5を経
由して版に供給される湿し水膜もムラとなり水の不足す
る箇所の非画像部にはインキが付着してしまい、印刷物
の汚れを生じる。また、水玉状のまま転写された過剰の
湿し水は画像部に供給されると、その後のインキ受理が
妨げられ、部分的なインキ濃度不足をきたす。
【0007】ところで、こうした問題を解決するため
に、湿し水の中にイソプロピルアルコ−ルを5〜25%
程度添加する方法が試みられ、現在では広範囲に実施さ
れている。また、イソプロピルアルコ−ルは表面張力を
下げ、湿し水ならしローラの濡れを良くし、ロ−ラ上の
湿し水膜の均一、薄膜化を狙ったものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、イソプ
ロピルアルコールは蒸発するため、印刷所の作業環境を
悪化し、作業者の健康を害する問題点が発生している。
また、イソプロピルアルコールの使用は製品のコストア
ップを伴う。
【0009】一方、水ならしローラ4の材質を改良し、
湿し水の濡れや保水性を向上させようとする提案もあ
る。例えば、実公昭55ー14518 号公報では、水ならしロ
ーラの芯金の上にセラミックを溶射して多孔質層を設け
る方法が提案されている。しかしながら、この方法によ
るローラは多孔質であるため、水の量が多すぎる傾向が
ある。そのために全体的に版へのインキの受理が劣化
し、印刷物のインキ濃度の低下や、コントラストの低
下、ゴーストの発生の問題がある。通常、湿し水装置の
ローラ群は接触回転しているため、版上の一部のインキ
が水舟の湿し水の中に戻り、小さなインキ粒子として存
在している。多孔質の水ならしローラではこの孔の中に
インキが入り込んでしまうため、今度は湿し水をはじい
てしまい、ムラを発生する原因となる。
【0010】特開昭62-71649号公報には、樹脂中に親水
性無機粉末を多量に混入し、硬化,研磨して水ならしロ
ーラとする方法を提案している。この水ならしローラは
長期に使用すると、樹脂の親油化によってインキを受け
つけ易くなり、その結果、湿し水を反発し、水ムラが発
生しやすいという問題がある。
【0011】この発明はこうした事情を考慮してなされ
たもので、湿し水との濡れが極めて良好で、かつ水なら
しローラ上に湿し水膜を均一化,薄膜化しえる印刷機用
湿し水ローラを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、オフセット
印刷の湿し水装置に使用されるローラにおいて、芯金
面が親水性を有する金属薄膜層で覆われるとともに平滑
で気孔がなく、かつ前記金属層が亜鉛、アルミニウム、
金、銀、白金、チタン、ニッケル、カドミウムの単独
層、あるいはこれらの金属の混合層であることを特徴と
する印刷機用湿し水ローラである。
【0013】本発明者等は、湿し水中の有害なイソプロ
ピルアルコール添加を零にするために湿し水との濡れの
極めて良好な、そして水ならしローラ上で均一化,薄膜
化できる材質の検討を鋭意進めた結果、親水性金属がこ
の目的に完全に合致することを発明した。
【0014】この発明において、親水性金属としては、
チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、カドミウム(C
d)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(AI)、金(A
u)、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)等が挙げ
られる。ここで、前記Ti,Ni,Cdの室温における
水に対する接触角は0度、Znのそれは5度52分、AI
のそれは8度11分、Auのそれは4度26分、Agのそれ
は11度32分、Pbのそれは2度36分、Ptのそれ
は10度43分である(“化学便覧”基礎編、改定2
版、丸善発行、p.375,p.625参照)。
【0015】この発明において、最も一般的な湿し水ロ
−ラとして使用されるのはクロムメッキロ−ルであり、
このものの水に対する接触角は84度である。また、比
較的水濡れの良いとされるセラミック被覆ロ−ラでも4
3度である(“印刷雑誌”1990.voI .73,2月号)。
【0016】この発明による湿し水用水ならしローラの
製法は、芯金の表面層に電気メッキ法、溶融メッキ法、
真空蒸着法、金属浸透法、キセ金法等によって親水性金
属層を形成させる。この他、無電解メッキ法、イオン蒸
着法、CVD法などでも可能である。これらの製法は、
親水性金属に合った方法が選ばれる。
【0017】この発明において、芯金の材質としては、
軟鉄、鋳鉄、ステンレススチール、真鍮等が挙げられ
る。また、表面層の耐摩耗性を向上するために、例えば
ニッケルと金の合金等にしてもよい。本発明方法におい
ては、芯金の表面状態が重要である。具体的には、ま
ず、“す”などの空洞のないことが重要である。また、
芯金の表面の粗さをできるだけ細かく仕上げることが重
要である。この理由は、下記イ,ロに述べる通りであ
る。
【0018】イ.芯金の表面に形成する親水性金属層は
非常に薄いため(例えば金や白金では数ミクロン)、も
し芯金に空洞があると、親水性金属層が埋まりきらな
い。そのため、水が親水性金属層に入り込んで芯金が腐
食し、親水性金属層が剥離する。 ロ.芯金の表面粗さ
が粗すぎると、形成された親水性金属層が凹凸となり、
水膜の厚さにムラが生じる。
【0019】この発明において、上記親水性金属が金で
ある場合には、陽極として金あるいは白金を用いる。シ
アン化金浴中で芯金を陰極にして直流で金メッキする
と、表面に金の皮膜層を有する湿しローラが得られる。
この場合、液温は60〜70℃程度、電気密度は0.1
〜0.5A/dm2 がよい。
【0020】
【作用】この発明による親水性金属は極めて水濡れが良
いため、水と接触すると極めて短時間に金属上に拡が
り、均一な薄膜が形成される。従って、芯金の上に上記
親水性金属を形成した湿し水装置用ならしロールは極め
て水濡れが良好である。その結果、有害なイソプロピル
アルコールの使用を完全に止めることができる。
【0021】また、この発明による水ならしローラは気
孔がないため、非常に平滑でインキの染み込む恐れは全
くない。従って、湿し水の均一,薄膜化が可能となり、
インキ濃度の向上,コントラストの向上、ゴーストの減
少、コストダウンなど非常に効果がある。
【0022】この発明による水ならしロールは図2に示
した機構の湿し水装置11においては極めて効果的でもあ
ることが解った。即ち、この機構の湿し水装置では水舟
1から湿し水2を汲み上げるのではなく、ブラシローラ
12に水をつけ、ブレード13で水滴を水ならしローラ4上
にはねかける様になっている。そのため、湿し水は水玉
のまま版に供給され易く、その結果印刷物のムラが生じ
易い。本発明による水ならしローラを使用することによ
り、有害なイソプロピルアルコールの完全除去が可能と
なり、印刷品質の向上が図れる。なお、図2中、5a,5b
は水つけローラを示す。
【0023】
【実施例】まず、直径120mm の軟鉄製の芯金の表面をR
a0.06μmまで研磨する。つづいて、この芯金を脱脂洗
浄した後、銅メッキ,ニッケルメッキを順次施して下地
処理を済ませる。
【0024】陽極として金を使用し、シアン化金浴を6
0℃に調節しておく。準備した芯金の軸受の部分は予め
マスキングしておき、浴中につけ、電気密度は0.5A
/dm2 で金メッキを施す。この結果、芯金の表面に厚
み0.03μmの金層をもった湿し水用ローラが得られ
た。
【0025】本ローラを充分水洗し、乾燥した後、協和
化学(株)製のP型接触角メータで直水の接触角を測定
したところ、3度であった。
【0026】本ローラをオフセット印刷機を図1の如く
水ならしローラ4として取り付け、イソプロピルアルコ
ール添加を零としてコート紙に印刷を行った。印刷直後
から水ならしローラの表面は極めて水濡れが良く、なお
かつ水膜は均一であった。事実、13000枚/Hのス
ピードで8時間連続印刷したが、印刷の初期から終了ま
で湿し水膜が均一であるため、水元ローラの回転を落と
し水量を下げることができた。そのため、薄膜が得ら
れ、印刷物の濃度が上り、コントラストの高い印刷物が
得られた。
【0027】また、金は耐食性に優れるため、湿し水中
に若干量添加される酸性物質にも全く安定であり、2年
後も変化すること無く安定的に使用されている。
【0028】
【発明の効果】以上詳述した如くこの発明によれば、浸
し水との濡れが極めて良好で、かつ水ならしローラ上に
浸し水膜を均一化,薄膜化しえる高信頼性の印刷機用浸
し水ローラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】オフセット印刷機の説明図。
【図2】新聞オフセット輪転機の説明図。
【符号の説明】
1…水舟、 2…湿し水、
3…水元ロ−ラ、 4…水ならしロ−ラ、 5,5a,5b…水つけロ−ラ、
6…版胴、 7…インキ装置、 8,11…湿し水装置、
12…ブラシロ−ラ、 13…ブレ−ド。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41N 7/04 B41F 7/24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オフセット印刷の湿し水装置に使用され
    るローラにおいて、芯金表面が親水性を有する金属薄膜
    層で覆われるとともに平滑で気孔がなく、かつ前記金属
    層が亜鉛、アルミニウム、金、銀、白金、チタン、ニッ
    ケル、カドミウムの単独層、あるいはこれらの金属の混
    合層であることを特徴とする印刷機用湿し水ローラ。
  2. 【請求項2】 前記金属層の水に対する接触角が10度
    以下である請求項1記載の印刷機用湿し水ローラ。
  3. 【請求項3】 前記金属層が、電気めっき法、溶融めっ
    き法、真空蒸着法、金属浸透法あるいはキセ金法のいず
    れかにより形成される請求項1記載の印刷機用湿し水ロ
    ーラ。
JP5329227A 1993-12-27 1993-12-27 印刷機用湿し水ローラ Expired - Lifetime JP3022717B2 (ja)

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