JP2015042776A - 金属膜及び金属膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明に係る金属膜は、めっき金属からなる板状の析出物が、交錯して重なり合う構造を備える。この金属膜は、めっき浴に添加する添加剤の分量を調節することにより形成することができる。めっき浴に電解銅めっき浴を使用し、電解銅めっき浴に添加するポリアクリル酸の添加量を調節することにより、銅からなる板状の析出物が、交錯して重なり合う構造を備える銅めっき膜からなる金属膜を形成することができる。
【選択図】 図4
Description
リチウムイオン電池の充放電特性を向上させるには、充放電特性の優れた材料を使用することに加えて、集電体表面あるいは活物質の比表面積を大きくする方法が有効である。集電体あるいは活物質の比表面積を大きくすると充放電速度の向上が期待でき、また活物質に隙間が多く形成されることから、充放電時の活物質の体積変化によって生じる応力を緩和できるという利点もある。
集電体の表面を粗面にする方法には、ブラスト処理などの機械的処理、化学的なエッチング処理、フォトリソグラフィー法を利用する方法、微細な金属粒子を電着させる方法等がある。しかしながら、従来、提案されている方法は、集電体表面(銅表面)を活物質の微細構造と同程度にまで微細に粗面化する方法としては実用的ではない。
本発明は、基材等の表面を粗面構造として比表面積を大きくした金属膜、及び比表面積の大きな粗面構造を備える金属膜を形成する方法を提供することを目的とする。
金属膜はめっきにより形成されたものであり、めっき金属としては、たとえば銅を使用することができる。また、金属膜が、カーボンナノチューブあるいはカーボンブラックを含む複合構造とすることもできる。
また、前記析出物に前記めっき金属とは異なるめっき金属を被着させた構造とすることもできる。
前記電解銅めっき浴に添加するポリアクリル酸の濃度cを、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲に設定することにより、めっき金属からなる板状の析出物が、交錯して重なり合う構造を備えるめっき膜を形成することができる。
また、たとえば、銅めっきからなる金属膜を形成する場合、下地材として用意した銅材上に上述した板状の析出物が交錯して重なり合った構造のめっき膜を形成することもできるし、まず、通常の銅めっき条件により円滑な銅めっき膜を形成した後、上記めっき条件により板状の析出物が交錯して析出する銅めっきを施して、下地の銅めっきと比表面積の大きな銅めっきを連続的に形成する、といったことも可能である。
すなわち、本発明において金属膜という場合は、板状の析出物が交錯して析出した比表面積の大きなめっき膜を単体として意味する場合と、下地材あるいは下地めっきと、比表面積の大きなめっき膜を合わせたものを意味する場合の双方を含む。
また、本発明に係る金属膜の形成方法により形成しためっき膜上に、該めっき膜とは異なる金属のめっきを施すことも可能である。たとえば、銅めっきにより比表面積の大きなめっき膜を形成した後、このめっき膜上にスズめっきやニッケルめっき等のめっきを施すことにより、きわめて比表面積の大きなスズめっき膜やニッケルめっき膜を形成することができる。
銅めっき膜上にスズめっきを施しためっき膜は、活物質としてスズを使用したリチウムイオン電池の負極に使用することができ、活物質層の比表面積を大きくすることにより、充放電時間を短縮し、充放電特性の優れた電極として形成することができる。
銅材に電解銅めっきを施し、添加剤として加えたポリアクリル酸の添加量によって銅めっき膜の形態がどのように変化するかを調べた。
1)浴組成
基本浴: CuSO4・5H2O 0.85M
H2SO4 0.55M
添加剤: ポリアクリル酸(分子量5000)
2)電析条件
電流モード:電流規制法
通電量:60C cm-2
電流密度:0.5〜1A dm-2
アノード:Cu板 カソード:Cu板
図1、図2を見ると、(a)、(b)、(d)に示すめっき膜は、表面に若干の凹凸は見られるものの、めっき膜全体として平滑である。
これに対し、(c):ポリアクリル酸の添加量2×10-4 Mのめっき膜は、他のめっき膜と対比して、特異的にめっき膜表面が粗面となっている。
本実験結果から、銅材に電解銅めっきを施して表面が特異的な粗面構造になるポリアクリル酸のモル濃度cは、次の範囲内にあることが推定される。
2×10-5 M<c<2×10-3 M (1)
電池の電極材料を形成する際には、電極の集電体(銅基材)の表面にポリアクリル酸濃度を調整して電解銅めっきを施すことで、簡単に粗面構造の銅めっき膜を形成することができ、この銅表面上にスズ等の活物質を付着させることにより、きわめて比表面積の大きな活物質層を得ることができる。
また、銅配線層と電気的絶縁層である樹脂層とを積層する場合も、まず銅配線層の表面に電解銅めっきを施して銅表面を粗面構造とし、この銅配線層の上に樹脂層を形成することにより、銅配線層上に強固に樹脂層を積層することができる。
銅材に、銅−カーボンナノチューブ複合電解めっきを施し、分散剤として用いるポリアクリル酸の添加量を変えてめっき膜の形態がどのように変化するかを調べた。
1)浴組成
基本浴:CuSO4・5H2O 0.85M
H2SO4 0.55M
カーボンナノチューブ(VGCF:登録商標 昭和電工製):2g/L
分散剤:ポリアクリル酸(分子量5000)
2)電析条件
電流モード:電流規制法
通電量:60C cm-2
電流密度:0.5〜5A dm-2
アノード:Cu板 カソード:Cu板
カーボンナノチューブを用いる電解複合めっきにおいては、分散剤としてポリアクリル酸を利用することが有効であることは既に知られている(特許第4599565号)。本実験はカーボンナノチューブの分散に利用するポリアクリル酸の濃度を変えて実験している。
図3は、めっき膜の表面を観察したもので、カーボンナノチューブ複合めっき膜を形成したことから、めっき膜の表面にカーボンナノチューブが見える。図3(b)のめっき膜には表面の凹凸形状が見られるが、図3(c)のめっき膜の方が、めっき膜の表面の凹凸が微細になっている。
図4(a)、(b)、(c)、(d)の低倍率のSEM像中に、めっき膜に相当する部分(めっき膜の厚さ部分)を矢印で示した。ポリアクリル酸の濃度が増すとともにめっき膜の厚さが厚くなっている。この断面SEM像を見ると、図4(c)のみ、めっき膜の厚さ方向に空隙が形成され、板状体(銅からなる)がランダムな向きに空隙を設けて重なり合った構造に形成されている。板状体の厚さは0.5〜1μm程度である。
一方、図4(a)、(b)、(d)は、めっき膜の膜厚方向には顕著な構造がみられない。
この場合も、ポリアクリル酸濃度を2×10-4 Mとした図5(c)、図6(c)のめっき膜のみが、特異的に板状体が交錯してめっき膜の内部に空隙が形成された構造を呈する。
この実験条件のめっき膜は、めっき膜を表面方向から見た場合も、断面方向から見た場合も、凹凸構造等の顕著な差異が認められない。この実験結果は、電解めっきの際における電流密度が、めっき膜の構造に影響を及ぼすことを示していると考えられる。
2×10-5 M<c<2×10-3 M (1)
銅材に、カーボンブラックと銅との複合めっきを施し、カーボンブラックの添加量を変えたときの、銅材の表面に形成されるめっき膜の形態について調べた。
1)浴組成
基本浴:CuSO4・5H2O 0.85M
H2SO4 0.55M
カーボンブラック(旭#15:旭カーボン製):0.5〜5g/L
分散剤:ポリアクリル酸(分子量5000)
ポリアクリル酸はカーボンブラック1g/Lに対して、2.5×10-5M添加。
2)電析条件
電流モード:電流規制法
通電量:60C cm-2
電流密度:0.5〜1A dm-2
アノード:Cu板 カソード:Cu板
カーボンブラック0.5g/L−1.25×10-5Mポリアクリル酸、1g/L−2.5×10-5M、2g/L−5.0×10-5M、3g/L−7.5×10-5M、4g/L−1.0×10-4M、カーボンブラック5g/L−1.25×10-4Mポリアクリル酸。
本実験においても、ポリアクリル酸はカーボンブラックの分散剤として作用する。
実施例3の実験結果も、銅−カーボンブラック複合めっきにより板状体が交錯した構造の銅表面を形成する方法として、ポリアクリル酸の濃度を調節する方法が有効に利用できることを示している。
なお、図9、10、11において図の破線部分は、カーボンブラックが取り込まれている個所を示す。
実施例1と同様に、銅材に電解銅めっきを施し、ポリアクリル酸の添加量によって銅めっき膜の形態がどのように変化するかを調べた。
1)浴組成
基本浴:CuSO4・5H2O 0.85M
H2SO4 0.55M
添加剤:ポリアクリル酸(分子量5000) 0〜2×10-3M
2)電析条件
電流モード:電流規制法
通電量:14〜54C
電流密度:1A dm-2
温度:室温
攪拌:なし
アノード:Cu板 カソード:Cu板
図12(a)〜(e)の各図より、ポリアクリル酸の添加量が、0M(図12(a))と2×10-3M(図12(e))のサンプルについては、めっき膜が円滑膜に形成され、析出物が交錯した構造が見られないのに対して、ポリアクリル酸の添加量が1×10-4 M、3×10-4M、5×10-4Mである図12(b)、(c)、(d)のサンプルについては、板状の銅析出物がランダムに交錯して重なり合い、内部に空隙が形成された構造となっている。とくに、図12(c)に示す、ポリアクリル酸の添加量が3×10-4 Mであるサンプルについては顕著な粗面構造(板状の析出物が交錯した構造)が認められる。この顕著な粗面構造を示すサンプルのポリアクリル酸の添加量は、実施例1において顕著な粗面構造を示したサンプルの添加量2×10-4 Mと略同一である。
本実験結果は、板状体が交錯した構造のめっき膜を得るための、ポリアクリル酸の添加量として好適な範囲cが、1×10-4 M<c<5×10-4 Mであることを示している。
図13に示すように、通電量を増やしていくと、板状の多数の細片状に析出した電析物が、細片の厚さは変わらず、板状構造を維持して細片の長さ方向に伸びるように成長していることがわかる。細片の面と平行方向に伸びる形態で電析する結果、めっき膜表面に表れる細片間の間隔が大きくなり、めっき膜には徐々に大きな空隙が形成されていくようになる。細片状(板状体状)に析出した電析物の厚さは100nm(0.1μm)以下で、50nm程度のものも見られる。
ポリアクリル酸を加えたときに、細片の電析物の厚さが変わらずに細片の面方向(板状構造の板面方向)にめっきが伸びていく理由は、めっき時にポリアクリル酸がめっき細片の表面を被覆し、ポリアクリル酸がめっき細片の表面を被覆して細片の表面に銅が析出することを抑え、細片の端面(突端面)にのみ銅めっきが析出していくためと考えられる。
このように、めっき浴に添加するポリアクリル酸の量を調節し、めっき時の通電量を調節する方法は、めっき膜を内部に空隙を備えた板状の析出物が交錯した形態のめっき膜構造を得る上で有用な方法である。
この金属膜は、板状体が交錯して内部に空隙を備えた粗面構造を維持したまま、カーボンナノチューブやカーボンブラックといった他の素材を膜内に取り込む複合構造とすることもできる。
このような金属膜の構造は、比表面積をきわめて大きくすることができる構造であること、金属膜の空隙構造によって、金属膜に作用する応力を分散、緩和する作用を有する等の特徴的な作用を有する。
また、上記実施例においては、板状体が交錯した粗面構造を有するめっき膜を形成する例として、基材に銅めっきを施したが、銅めっきに限らずニッケルめっき等であっても粗面構造のめっき膜を形成することができる。また、粗面構造の銅めっき膜の表面にニッケルめっき、スズめっき等の他のめっき膜を形成することにより、粗面構造を備えためっき膜を形成することができる。
Claims (10)
- めっき金属からなる板状の析出物が、交錯して重なり合う構造を備えることを特徴とする金属膜。
- 前記金属膜が、銅からなることを特徴とする請求項1記載の金属膜。
- 前記金属膜が、カーボンナノチューブあるいはカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項1または2記載の金属膜。
- 前記析出物に前記めっき金属とは異なるめっき金属が被着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の金属膜。
- めっき法により金属膜を形成する方法であって、めっき浴に添加する添加剤の分量を調節することにより、めっき金属からなる板状の析出物が、交錯して重なり合う構造を備えるめっき膜を形成することを特徴とする金属膜の形成方法。
- 前記めっき浴として、電解銅めっき浴を使用し、
電解銅めっき浴に添加するポリアクリル酸の添加量を調節することにより、銅からなる板状の析出物が、交錯して重なり合う構造を備える銅めっき膜からなる金属膜を形成することを特徴とする請求項5記載の金属膜の形成方法。 - 前記電解銅めっき浴に添加するポリアクリル酸の濃度cを、
2×10-5 M<c<2×10-3 M
の範囲に設定することを特徴とする請求項6記載の金属膜の形成方法。 - 前記めっき法として、めっき膜中にカーボンナノチューブを含む複合めっきを施すことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項記載の金属膜の形成方法。
- 前記めっき法として、めっき膜中にカーボンブラックを含む複合めっきを施すことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項記載の金属膜の形成方法。
- めっき金属からなる板状の析出物が、交錯して重なり合う構造を備えるめっき膜を形成した後、
前記めっき膜上に、前記めっき金属とは異なる金属のめっきを施すことを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項記載の金属膜の形成方法。
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