本発明は、家屋に設置される太陽電池アレイを構成するための太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールにより構成される太陽電池アレイに関する。
近年、太陽電池パネルを有する太陽電池モジュールを建物の屋根等に敷設してその建物で消費する電力をまかなうと共に、余剰電力を電力会社に売却する太陽光発電システムが増加している。太陽電池パネルは、集積型太陽電池であり、ガラス基板に導電膜や半導体膜が積層され、これに複数の溝を設けて所定数の単体電池(太陽電池セル)を形成し、各太陽電池セルを電気的に直列接続させたものであり、100[V]以上の電圧を得ることができるものも知られている。以下の特許文献1には、このような太陽電池パネルの製造方法が開示されている。
上記したような太陽電池モジュールは、直列接続される太陽電池セルの数量を調整することにより所望の電圧を得ることができる。しかし、敷設や製造の利便性を考慮すると、太陽電池モジュールの大きさに制限があり、単一の太陽電池モジュールにおいて直列接続可能な太陽電池セルの数量や、出力電圧にも一定の制限が加わる。また、太陽電池モジュールは、単一では出力電流がさほど大きくない。そのため、従来技術では、複数の太陽電池モジュールを電気的に並列に接続した太陽電池ブロックを複数形成し、この太陽電池ブロックを互いに直列接続して太陽電池アレイを形成することにより、出力電圧および出力電流が実用的なレベルになるように調整している。
上記したように、太陽電池モジュールを電気的に並列に接続して太陽電池ブロックを形成すると共に、このようにして形成された太陽電池ブロックを用いて太陽電池アレイを構成した場合、直列接続されている各太陽電池モジュールの出力が同程度であれば、仮に一部の太陽電池モジュールが陰に設置される等して出力が低下しても、太陽電池アレイ全体の出力はさほど低下しない。
ここで、上記したような接続構造で太陽電池アレイを構成した場合は、一部の太陽電池モジュールが陰に設置されるなどして出力低下する場合と同様に、各太陽電池モジュールの出力性能に個体差があっても、太陽電池ブロック毎の出力が同程度であれば太陽電池アレイ全体としてはさほど大きな出力低下にはならない。しかし、太陽電池モジュールの出力性能のバラツキや、設置場所の日照条件などの種々の条件が複合的に作用すると、各太陽電池ブロック間の出力特性にバラツキが生じ、正常に作動している太陽電池モジュールの出力を有効利用できず、太陽電池アレイ全体としての出力も期待される程度に至らなくなってしまうという問題があった。そのため、太陽電池モジュールが陰に設置されるなどして一時的に予期せぬ出力低下が起こることを考慮すると、太陽電池モジュールの出力性能についての個体差を最小限に抑制しておきたいという要望があった。その一方で、建物への敷設や製造の容易さを考慮すると、各太陽電池モジュール毎に構造や大きさを変化させるなどして出力性能を微調整することは現実的ではなく、構造が画一的であり、敷設時に容易に取り回し可能な大きさの太陽電池モジュールの提供が望まれていた。
そこで、本発明は、画一的な構成でありながら、安定した出力特性を発揮可能であり、敷設時に容易に取り回し可能な大きさの太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールを採用することで安定した出力特性を発現可能な太陽電池アレイの提供を目的とした。
上記した課題を解決すべく提供される本発明は、複数の太陽電池モジュールを電気的に並列接続することにより形成された太陽電池ブロックを複数、電気的に直列接続することにより形成される太陽電池アレイ構成用の太陽電池モジュールである。本発明の太陽電池モジュールは、長手方向の長さが900〜1100[mm]であり、略長方形の面状に形成された太陽電池パネルを備え、当該太陽電池パネルの長手方向が家屋の桁行方向に向き、前記太陽電池パネルの短手方向が家屋の棟行方向に向くように設置されるものである。また、本発明の太陽電池は、前記太陽電池パネルが、複数の太陽電池セルを有し、開放電圧が100〜180[V]となるように前記太陽電池セルを電気的に直列接続したものであり、前記太陽電池セルが、帯状で短辺の長さが7〜12[mm]のものであり、前記太陽電池パネルの短手方向に長辺が向き、前記太陽電池パネルの長手方向に短辺が向いた状態で、前記太陽電池パネルの長手方向に並ぶように設けられていることを特徴としている(請求項1)。
本発明の太陽電池モジュールは、長手方向の長さが900〜1100[mm]であり、建物の屋根などのような敷設作業の作業性が悪い場所にも容易に搬入し、施工することができる。また、本発明の太陽電池モジュールは、長手方向の長さが、一般的に使用されている瓦の2倍程度の大きさであるため、瓦を葺くのとさほど大差ない作業効率で家屋に設置することができる。
本発明の太陽電池モジュールを構成する太陽電池パネルは、幅が7〜12[mm]で帯状の太陽電池セルを複数、電気的に直列接続したものであると共に、前記太陽電池セルが前記太陽電池パネルの長手方向に並ぶように設けられており、構成が画一的である。また、本発明の太陽電池モジュールは、上記したような画一的な構成を採用することにより、出力のバラツキを最小限に抑制できる。さらに、本発明の太陽電池モジュールを構成する太陽電池パネルは、開放電圧が100〜180[V]であるため、これを電気的に並列接続して太陽電池ブロックを形成すると共に、太陽電池ブロック同士を直列接続することで、従来公知のACパワーコンディショナ(AC power conditioner)のような機器類に入力するのに適した電圧で出力可能な太陽電池アレイを構築することができる。
本発明の太陽電池モジュールでは、太陽電池パネルの短手方向に前記太陽電池セルの長辺が向き、前記太陽電池パネルの長手方向に前記太陽電池セルの短辺が向いた状態で、前記太陽電池セルが前記太陽電池パネルの長手方向に並ぶように設けられている。また、本発明の太陽電池モジュールは、前記太陽電池パネルの長手方向が家屋の桁行方向に向き、前記太陽電池パネルの短手方向が家屋の棟行方向に向く姿勢とされ、設置される。ここで、瓦を葺くのと同様にして家屋に太陽電池モジュールを設置する場合、日照条件によっては棟行方向上方側に他の太陽電池モジュールの陰ができたり、棟行方向下方側の部分が他の太陽電池モジュールと重なるなどして、発電しない部分ができたり、出力が大幅に低下する部分が形成され、電気抵抗となる可能性がある。しかし、このような部分ができたとしても、他の部分においては各太陽電池セルが通常に機能し、全ての太陽電池セルが電気的に導通した状態を維持することができる。従って、本発明の太陽電池モジュールによれば、日照条件などの影響により出力が低下することがあっても、これにより太陽電池アレイ全体の出力低下に及ぼす影響を最小限に抑制することができる。
上述した本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルの開放電圧が、1.2〜1.5[V]であることが望ましい(請求項2)。
かかる構成によれば、太陽電池アレイの構築にあたり必要とされる開放電圧を出力可能な太陽電池モジュールを提供できる。
また、上述した本発明の太陽電池モジュールは、短手方向の長さが、240〜480[mm]であることが望ましい(請求項3)。
かかる構成によれば、従来より家屋に葺かれている瓦に代えて設置可能な太陽電池モジュールを提供できる。
上述した本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルが、タンデム型であってもよい(請求項4)。
かかる構成によれば、入射光が持つエネルギーを最大限有効利用可能であり、エネルギー変換効率の高い太陽電池モジュールを提供できる。
上述した本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池パネルの短絡電流値が、9〜15[mA/cm2]であるものであることが好ましい(請求項5)。
ここで、上述したように多数の太陽電池セルを直列接続した太陽電池モジュールでは、陰に差し掛かるなどして特定の太陽電池セルの一部分が発電しなくなると、当該部位の電気抵抗が大きくなって熱を発生する現象(ホットスポット現象)が起こることがある。ホットスポット現象が起こると、太陽電池モジュールが劣化したり破損するといった不具合が起こる可能性がある。このような現象が起こると、太陽電池モジュール固有の出力が後発的に低下し、太陽電池アレイや太陽電池ブロックを構成する各太陽電池モジュールの出力にバラツキが生じることとなり、他の太陽電池モジュールで発生した電気エネルギーの一部を有効利用できなくなる可能性がある。
そこで、かかる知見に基づくと、上述した本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルが、受光により発電する有効発電領域を有し、太陽電池モジュールの長手方向に伸び、前記太陽電池セルの有効発電領域を分割する分割線が一又は複数設けられていることが望ましい(請求項6)。
かかる構成によれば、仮に特定の太陽電池セルの一部分が陰に差し掛かるなどして発電しなくなったとしても、当該部位に極度に大きな電力が作用せず、ホットスポット現象による太陽電池モジュールの劣化や破損を回避できる。従って、上述した構成によれば、太陽電池アレイの敷設後にホットスポット現象によって各太陽電池モジュールの出力性能に個体差が生じるのを最小限に抑制することができる。
本発明の太陽電池アレイは、上述した本発明の太陽電池モジュールを複数、電気的に並列接続することにより形成された太陽電池ブロックを2つ、直列接続することにより形成されたものである(請求項7)。
本発明では、上述した本発明の太陽電池モジュールを採用しているため、各太陽電池モジュール毎の出力特性についての個体差が小さい。また、本発明の太陽電池アレイは、太陽電池モジュールを並列接続することで太陽電池ブロックを複数形成し、これらを直列接続したものであるため、仮に一部の太陽電池モジュールにおいて出力低下があったとしても、これによるエネルギーロスを最小限に抑制し、安定した出力特性を発揮することができる。
上述した本発明の太陽電池アレイは、太陽電池ブロックが、太陽電池モジュールを20以上、電気的に並列接続して形成されたものであることが望ましい(請求項8)。
また、略長方形状であって内部に複数の太陽電池セルが形成され全体として一つの太陽電池を構成する太陽電池モジュールを使用し、当該太陽電池モジュールを構造物に敷設する太陽電池モジュールの敷設構造において、太陽電池モジュールは、二組のコネクタを有し、前記二組のコネクタはいずれも独立した二以上の端子を備え、前記二組のコネクタはいずれも太陽電池モジュールの長手方向中央から延出された2系統以上の導線を有するケーブルに接続されており、各コネクタの一つの端子は太陽電池の正極に接続され、各コネクタの他の一つの端子は太陽電池の負極に接続され、前記二組のコネクタの内の一方のコネクタに接続されたケーブルは、他方のコネクタに接続されたケーブルよりも短く、前記ケーブルの長さの関係は太陽電池モジュールを列状に並べたとき短いケーブルが接続されたコネクタ同士は長さ不足の状態であって接続させることが不能となるものであり、前記太陽電池モジュールは構造物に列状に並べて設置され、隣接する太陽電池モジュールのコネクタは長いケーブルが接続されたコネクタと短いケーブルが接続されたコネクタが接合され、両者が接合された状態において両コネクタの正極側端子同士と、負極側端子同士が接続された状態となり、複数の太陽電池モジュールが電気的に並列に接続された構成とすることも可能である。
上記した太陽電池モジュールの敷設構造では、隣接する太陽電池モジュールのコネクタは、長いケーブルが接続されたコネクタと短いケーブルが接続されたコネクタが接合される。上記した太陽電池モジュールの敷設構造は、この様に長いケーブルが接続されたコネクタと短いケーブルが接続されたコネクタが接合された状態が正規の接合状態である。上記した敷設構造では、この様に隣接する太陽電池モジュールの長いケーブルのコネクタと短いケーブルのコネクタとを接合すると、両コネクタの正極側端子同士と、負極側端子同士が接続された状態となり、複数の太陽電池モジュールが電気的に並列に接続されることとなる。
また上記した太陽電池モジュールの敷設構造では、作業者がコネクタを誤接続することはない。すなわち上記した太陽電池モジュールの敷設構造では、この様にケーブルの長さに長短があるので、太陽電池モジュールを列状に並べたとき、短いケーブルが接続されたコネクタ同士は長さ不足の状態であって接続させることができない。そのため屋根の上等に太陽電池モジュールを敷設した際に、隣接する太陽電池モジュールの短いケーブル同士を接続することは物理的にできず、作業者がコネクタを誤接続することはない。
本発明によれば、構造が画一的でありつつ、安定した出力特性を発揮可能であり、敷設時に容易に取り回し可能な大きさの太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールを採用することで安定した出力特性を発現可能な太陽電池アレイを提供できる。
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールを示す斜視図である。
図1の太陽電池モジュールの裏面側の構造を示す斜視図である。
図1に示す太陽電池モジュールで採用されている太陽電池パネルの断面図である。
図1の太陽電池モジュールのコネクタの断面図である。
太陽電池モジュールの敷設構造の作業手順を示すフローチャートである。
太陽電池モジュールを建物の屋根に敷設した状態を示す説明図である。
太陽電池モジュールが正しく配線されたモジュール段を示す概念図である。
太陽電池モジュールが誤って配線されたモジュール段を示す概念図である。
太陽電池モジュールが正しく配線された場合の回路図である。
太陽電池アレイを示す概念図である。
(a)は、引込ケーブルの正面図であり、(b)は、引込ケーブルのモールド部の断面図である。
端子保護部材の平面図である。
(a)は、両極が雄片であるコネクタの平面図であり、(b)は、両極が雌片であるコネクタの平面図である。
図1に示す太陽電池モジュールの変形例を示す斜視図である。
続いて、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール10、並びに、太陽電池アレイ1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。太陽電池モジュール10(以下、単に電池モジュール10とも称す)は、新築又は既築の建物の屋根Rにおいて瓦に代替して敷設されるものである。図1や図2に示すように、電池モジュール10は、太陽電池パネル12(以下、単に電池パネル12とも称す)と、電池パネル12の裏面に取り付けられる端子ボックス14と、端子ボックス14から延設される二本の第一ケーブル16、第二ケーブル18と、これらのそれぞれに接続される第一コネクタ20(以下、コネクタ20とも称す)および第二コネクタ22(以下、コネクタ22とも称す)とを備えている。
電池モジュール10は、図1や図2に示すようにほぼ長方形の面状に形成されている。電池モジュール10は、敷設時に外部に露出する部分の大半の面積を電池パネル12が占めている。そのため、電池モジュール10の大きさは、電池パネル12とほぼ同等あるいは電池パネル12よりも一回り大きい程度である。本実施形態の電池モジュール10は、出力を確保しつつ、家屋への設置作業の作業性を確保することを考慮し、長手方向の長さL1が1200[mm]より小さいものとされている。本実施形態では、電池モジュール10の敷設施工時に設置される一般的な足場の間隔や、施工作業者の取り回しやすさ等を考慮し、長さL1が、900〜1100[mm]の範囲とされている。また、電池モジュール10は、一般的な平板瓦のサイズなどを考慮し、短手方向の長さL2が240〜480[mm]の範囲とされている。本実施形態では、一般的な平板瓦の働き幅と同程度としつつ、日照条件によって陰になる部分を最小限に抑制することで光電変換効率を向上させることに配慮し、長さL2が280〜360[mm]の範囲内に調整されている。
電池パネル12は、図1や図2に示すようにほぼ長方形の面状に形成されている。電池パネル12は、長手方向が家屋の桁行方向に向き、短手方向が家屋の棟行方向に向く姿勢で敷設される。電池パネル12は、長手方向に短冊状の太陽電池セル100(以下、単に電池セル100とも称す)を多数、電気的に直列接続した状態になるように並べて形成したものであり、一枚で約100[V]の電圧を得ることができる。
電池パネル12は、2種類以上の光電変換層を組み合わせた、いわゆるタンデム型の太陽電池であり、光電変換効率が高い。本実施形態では、タンデム型の一体系であるハイブリッド型の太陽電池を電池パネル12として採用している。さらに具体的には、図3に示すように、電池パネル12は、透明基板102上に、透明前面電極層104、第1,2の薄膜光電変換ユニット106a,106b(以下、それぞれを非晶質光変換ユニット106a、結晶質光変換ユニット106bとも称す)、金属裏面電極層108、封止樹脂層110、有機保護層112を順次積層した構造の、いわゆるハイブリッド型の太陽電池である。透明基板102は、例えば、ガラス板や透明樹脂フィルムなどのような透光性を有する素材によって形成されており、電池モジュール10の設置時に最も光の入射側に位置する面を構成する。
また、透明前面電極層104は、透明基板102に隣接する位置に形成された単層構造あるいは多層構造の層である。透明前面電極層104は、ITO膜や、SnO2膜、ZnO膜のような透明で導電性を有する酸化物等を透明基板102に対して層状に積層することで形成されている。透明前面電極層104は、従来公知の蒸着法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、EVD(Electrochemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法に代表される気相堆積法等を用いて形成される。
薄膜光電変換ユニット106aは、非晶質光電変換層を備えたものであり、上述した透明前面電極層104に対して光の入射方向(図3では上方)に隣接する位置に設けられている。薄膜光電変換ユニット106aは、例えば透明前面電極層104側からp型シリコン系半導体層、i型シリコン系非晶質光電変換層、及びn型シリコン系半導体層を順次積層した構造とすることができる。これらのp型シリコン系半導体層、i型シリコン系非晶質光電変換層、及びn型シリコン系半導体層についても、上述した透明前面電極層104と同様にプラズマCVD法等、適宜の方法により形成することができる。薄膜光電変換ユニット106aは、0.01μm〜0.5μmの厚さであることが好ましく、0.1μm〜0.3μmの厚さであることがより好ましい。
薄膜光電変換ユニット106bは、結晶質光電変換層を備えたものであり、上述した薄膜光電変換ユニット106aに対して光の入射方向に隣接している。薄膜光電変換ユニット106bは、例えば薄膜光電変換ユニット106a側からp型シリコン系半導体層、i型シリコン系結晶質光電変換層、及びn型シリコン系半導体層を順次積層した構造とすることができる。薄膜光電変換ユニット106bを構成するp型シリコン系半導体層や、i型シリコン系結晶質光電変換層、n型シリコン系半導体層についても、薄膜光電変換ユニット106aのものと同様に、いずれもプラズマCVD法などによって形成することができる。
ここで、薄膜光電変換ユニット106bを構成する結晶質光電変換層は、上述した薄膜光電変換ユニット106aを構成する非晶質光電変換層に比べて光吸収系数が小さい。そのため、結晶質薄膜光電変換ユニット106bの厚さは、非晶質薄膜光電変換ユニット106aの厚さの数倍から10倍程度であることが好ましい。より具体的には、薄膜光電変換ユニット106bは、0.1μm〜10μmの厚さであることが好ましく、0.1μm〜5μmの厚さであることがより好ましい。
上述した光電変換ユニット106a,106bを構成するp型半導体層は、例えば、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、ボロンやアルミニウム等のp導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。また、非晶質光電変換層及び結晶質光電変換層は、非晶質シリコン系半導体材料及び結晶質シリコン系半導体材料でそれぞれ形成することができる。具体的には、非晶質光電変換層や結晶質光電変換層は、真性半導体のシリコン(水素化シリコン等)やシリコンカーバイド及びシリコンゲルマニウム等のシリコン合金等によって構成することができる。また、非晶質光電変換層や結晶質光電変換層は、光電変換機能を備えているものであればよく、例えば微量の導電型決定不純物を含む弱p型もしくは弱n型のシリコン系半導体材料を用いて構成することも可能である。非晶質光電変換層や結晶質光電変換層のn型半導体層は、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、燐や窒素等のn導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。
また、上述した薄膜光電変換ユニット106a,106bは、互いに吸収波長域が異なっている。具体的には、薄膜光電変換ユニット106aの光電変換層を非晶質シリコンで構成した場合は、550nm程度の光成分を最も効率的に吸収させることができるのに対し、薄膜光電変換ユニット106bの光電変換層を結晶質シリコンで構成した場合には、900nm程度の光成分を最も効率的に吸収させることができる。
金属裏面電極層108は、薄膜光電変換ユニット106bに対して、入射光の進行方向に隣接した位置に設けられている。金属裏面電極層108は、銀やアルミニウム等により構成され、従来公知の蒸着法やスパッタリング法等によって200nm〜400nm程度の厚さに形成された層である。金属裏面電極層108と薄膜光電変換ユニット106bとの間には、両者の間の接着性の向上などを考慮し、ZnOのような非金属材料からなる透明電導性薄膜(図示せず)を適宜設けることができる。金属裏面電極層108は、電池パネル12の電極としての機能に加え、透明基板102から入射し、薄膜光電変換ユニット106a,106bを通過してきた光を反射し、薄膜光電変換ユニット106a,106b内に再入射させるための反射層としての機能も有する。
電池モジュール10は、上述した金属裏面電極層108に対して入射光の進行方向に隣接した位置、すなわち家屋等への設置時に裏側となる位置において、封止樹脂層110を介して有機保護層112が形成されている。封止樹脂層110は、有機保護層112と金属裏面電極層108とを接着する層であり、例えば、EVA(エチレン・ビニルアセテート共重合体)や、PVB(ポリビニルブチラール)、PIB(ポリイソブチレン)、及びシリコーン樹脂等によって構成されている。また、有機保護層112は、電池モジュール10の裏面側を封止する層である。有機保護層112には、例えばポリフッ化ビニルフィルムなどのフッ素樹脂系フィルムや、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルムのように、耐湿性や耐水性に優れた絶縁フィルムや、これらを積層したもの。アルミニウム等からなる金属箔をこれらのフィルムで挟持した構造のものなどを好適に採用することができる。
図3に示すように、電池モジュール10には、上述したようにして積層して形成された薄膜を第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116で分割することにより、複数の電池セル100が形成されている。すなわち、第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116は、隣接する電池セル100同士の間において、透明前面電極層104や薄膜光電変換ユニット106a,106b、金属裏面電極層108などを構成する薄膜を分割するように設けられている。第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116は、それぞれ直線状であり、図3において紙面に対して垂直な方向、すなわち電池モジュール10の短手方向に沿って伸びるように形成されている。また、第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116は、互いにほぼ平行になるように形成されている。
第1の分割溝114aは、透明前面電極層104を各電池セル100毎に分割するように設けられている。第1の分割溝114aは、透明前面電極層104と薄膜光電変換ユニット106aとの界面に開口を有し、基板2の表面を底面とする溝である。第1の分割溝114aには、非晶質のシリコンなどの薄膜光電変換ユニット106aを構成するものが埋め込まれている。そのため、電池セル100の透明前面電極層104は、第1分割溝114aに埋め込まれた非晶質のシリコンなどによって、電池モジュール10の長手方向に隣接する位置に設けられた他の電池セル100の透明前面電極層104と電気的に絶縁されている。
第2の分割溝114bは、隣り合う電池セル100間の境界を規定する溝である。第2の分割溝114bは、第1の分割溝114aに対して電池モジュール10の長手方向に外れた位置に設けられている。第2の分割溝114bは、薄膜光電変換ユニット106a,106b、及び金属裏面電極層108をそれぞれの電池セル100毎に分割するように形成されている。第2の分割溝114bは、金属裏面電極層108と樹脂封止層6との界面に開口を有し、透明前面電極層104の表面を底面としている。第2の分割溝114bには、上述したEVA(エチレン・ビニルアセテート共重合体)などのような封止樹脂層110を構成する樹脂が埋め込まれている。そのため、電池セル100の金属裏面電極層108は、第2の分割溝114bに埋め込まれた樹脂により、隣接する位置に設けられた他の電池セル100の金属裏面電極層108と電気的に絶縁されている。
接続溝116は、第1,2の分割溝114a,114bの間に設けられている。接続溝116は、薄膜光電変換ユニット106a,106bを各電池セル100毎に分割する溝である。接続溝116は、薄膜光電変換ユニット106bと金属裏面電極層108との界面に開口を有し、透明前面電極層104の表面を底面としている。接続溝116には、銀やアルミニウムのような金属裏面電極層108を構成する金属材料が埋め込まれており、隣り合う電池セル100の一方の金属裏面電極層108と他方の透明前面電極層104とを電気的に接続している。すなわち、電池モジュール10に多数形成された電池セル100は、接続溝116に埋め込まれた金属材料により、隣接する電池セル100に対して電気的に直列接続されている。
各電池セル100は、製造時の精度や容易さ、出力のバラツキを最小限に抑制する等の観点から、幅(短辺)L3が7〜12[mm]となるように形成することが望ましく、幅L3が8〜10[mm]となるように形成することがより一層望ましい。また、各電池セル100は、長辺の長さL4が電池パネル12の短手方向の長さよりもやや短く、長さL4の3/4程度とされている。そのため、各電池セル100は、透明基板102側から見て帯状の外観形状を有する。また、各電池セル100は、薄膜光電変換ユニット106a,106bを備えたタンデム型(ハイブリッド型)の太陽電池であり、二つのユニットの開放電圧が加算されることで、一つのユニットで構成される太陽電池より電圧が高くなり、開放電圧が1.2〜1.5[V]の範囲にある。電池パネル12は、50〜150個程度の電池セル100を直列接続したものであり、全体として100〜180[V]の開放電圧を出力できる構成とされている。本実施形態の電池パネル12は、全体として約100[V]の開放電圧を出力可能なように電池セル100が多数、直列接続されている。また、電池パネル12は、短絡電流値が、9〜15[mA/cm2]の範囲となるように形成することが望ましく、10〜13[mA/cm2]の範囲となるように形成することがより一層望ましい。
また、各電池セル100の長辺は電池パネル12の短手方向に向き、各電池セル100の短辺は電池パネル12の長手方向に向いている。そのため、電池パネル12において、各電池セル100の接続部として機能する部分、具体的には第1,2の分割溝114a,114bや接続溝116の部分の面積を抑制することができる。また、電池パネル12における各電池セル100を前述したような配置とすることにより、電池パネル12の一部が陰に差し掛かったり、電池パネル12の下辺(軒側の辺)等にホコリやゴミが堆積したとしても、いわゆるホットスポット現象が発生するのを防止できる。
図2に示すように、電池モジュール10は、上述した電池パネル12の裏面側に、端子ボックス14と、この端子ボックス14から取り出された第一,第二ケーブル16,18とを有する。端子ボックス14は、電池パネル12の正極が接続されるプラス側電極接続端子(図示せず)と、電池パネル12の負極が接続されるマイナス側電極接続端子(図示せず)とが内部に設けられている。端子ボックス14内において、プラス側電極接続端子には、黒色の被覆導線であるプラス側芯線24が二本接続されており、マイナス側電極接続端子には、白色の被覆導線であるマイナス側芯線26が二本接続されている。
第一,第二ケーブル16,18は、それぞれ電池モジュール10を敷設して太陽電池アレイ1を構築する際に、他の電池モジュール10と電気的に接続するために使用されるものである。図1に示すように、第一ケーブル16は、二本のプラス側芯線24,24のうちの一方のプラス側芯線24と、二本のマイナス側芯線26,26のうちの一方のマイナス側芯線26とを束ねて形成されたものである。また第二ケーブル18は、二本のプラス側芯線24,24のうちの他方のプラス側芯線24と、二本のマイナス側芯線26,26のうちの他方のマイナス側芯線26とを束ねて形成されたものである。
図1に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18は色彩が相違しており、第一ケーブル16は、白色の絶縁チューブ16a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されており、第二ケーブル18は、黒色の絶縁チューブ18a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されている。
また、第一ケーブル16および第二ケーブル18は、長さに長短があり、一方が長く、他方が短い。具体的には、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短い。第一ケーブル16の全長は、長方形状の電池パネル12の長辺の長さの50パーセント未満の長さであり、第二ケーブル18の全長は、電池パネル12の長辺の長さの50パーセント以上である。
図1に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18のそれぞれの端部には、第一コネクタ20および第二コネクタ22が設けられている。第一コネクタ20および第二コネクタの色彩は相違しているが、構造は同一である。本実施形態において、第一コネクタ20は白色であり、第二コネクタ22は黒色である。
図4に示すように、第一コネクタ20および第二コネクタ22は、ピン状端子28およびソケット状端子30を備えている。また第一コネクタ20および第二コネクタ22は、雌片32と雄片34とを有し、前記したピン状端子28は、雌片32内にあり、ソケット状端子30は、雄片34内にある。
図1に示すように、本実施形態において、第一コネクタ20のピン状端子28にはプラス側芯線24が接合されており、第一コネクタ20のソケット状端子30にはマイナス側芯線26が接合されている。また、第二コネクタ22のピン状端子28にはマイナス側芯線26が接合されており、第二コネクタ22のソケット状端子30にはプラス側芯線24が接合されている。すなわち、第一コネクタ20では、ピン状端子28が正極であり、ソケット状端子30が負極である。これに対し、第二コネクタ22では、ピン状端子28が負極であり、ソケット状端子30が正極である。そのため、第一コネクタ20と第二コネクタ22とは、一方の雌片32と他方の雄片34とを嵌合させて一方のピン状端子28を他方のソケット状端子30に接続させることにより、同極同士を電気的に並列接続することが可能である。
次に、上記した電池モジュール10を用いて構成される太陽電池アレイ1について、図5に示す建物の屋根Rに敷設する際の作業手順に言及しつつ説明する。電池モジュール10を敷設する場合、まず敷設対象である建物の屋根Rに軒先水切りや所定のルーフィング材が取り付けられ、ステップ1において、作業の進行に必要な線や形、寸法を屋根Rに表示する墨出しが行われる。その後のステップ2では、縦桟木(流し桟)が所定の間隔で取り付けられ、ステップ3において広小舞(瓦座)や横桟木(瓦桟)が取り付けられる。横桟木は、所定の登り間隔で取り付けられる。次にステップ4において、電池モジュール10が吹き上がるのを防止する吹上防止金具を所定の位置に取り付けた後、作業はステップ5に移行する。
ステップ5では、電池モジュール10が屋根Rの軒先側から棟側にかけて順次取り付けられ、隣接する電池モジュール10,10が第一ケーブル16および第二ケーブル18によって接続される。詳しく説明すると、電池モジュール10の取り付けは、図6に示すように、複数の電池モジュール10の短辺同士を隣り合わせて列状に配置することでモジュール段36を形成すると共に、ビス等で各電池モジュール10を屋根Rに固定することで行われる。本実施形態において、モジュール段36は、偶数段(図6では14段)が屋根Rに設置される。
図7に示すように、モジュール段36の形成中、隣接する電池モジュール10,10において、一方の電池モジュール10の第一コネクタ20と、隣接する他方の電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させると、隣接する二つの電池モジュール10,10を電気的に並列接続させることができる。すなわち、白色の第一ケーブル16に取り付けられた白色の第一コネクタ20と、黒色の第二ケーブル18に取り付けられた黒色の第二コネクタ22とを接続させることで、隣接する電池モジュール10,10の並列接続が可能になる。従って、本実施形態の電池モジュール10は、左右の隣接する電池モジュール10,10を、第一ケーブル16および第二ケーブル18を用いて接続させることにより、モジュール段36に含まれる全ての電池モジュール10を順次並列に接続させることができる(図9)。
ここで、上記したように、本実施形態の電池モジュール10では、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短く形成されている。そのため、電池モジュール10は、作業者が第一ケーブル16および第二ケーブル18の長さを確認することによって、これらに取り付けられたコネクタ20,22が第一コネクタ20であるのか、あるいは第二コネクタ22であるのかを瞬時に判断することができる。
また、本実施形態の電池モジュール10において、第一ケーブル16の全長は、長方形状の電池パネル12の長辺の長さの50パーセント未満の長さであり、第二ケーブル18の全長は、電池パネル12の長辺の長さの50パーセント以上である。そのため、図7に示すように、短辺同士を突き合わせて隣接する電池モジュール10,10間においては、第一ケーブル16に取り付けられたコネクタ20,20同士を接続させることができない。従って、本実施形態の電池モジュール10は、隣接する電池モジュール10,10間における、第一コネクタ20,20同士の誤接続を確実に防止することができる。
また、本実施形態の電池モジュール10は、第一ケーブル16を白色とし、第二ケーブル18を黒色としている。そのため電池モジュール10は、作業者が第一ケーブル16および第二ケーブル18の色彩を確認することで容易にこれらに取り付けられたコネクタ20,22の種類を判別することが可能である。
電池モジュール10は、第一コネクタ20が白色、第二コネクタ22が黒色に形成されており、第一コネクタ20と第二コネクタ22とで色彩が相違している。従って、本実施形態の電池モジュール10は、作業者が電池モジュール10のコネクタ20,22の色彩を確認することによって、そのコネクタ20,22の種類を迅速に判別することができる。従って本実施形態の電池モジュール10は、作業者による迅速で適切なコネクタの選択が可能であり、配線の誤接続が少なく、作業効率が高い。
図10に示すように、電池モジュール10を多数敷設して形成される太陽電池アレイ1は、軒側(下側)から奇数段目のモジュール段36a,36cと、偶数段目のモジュール段36b,36dとで第一ケーブル16および第二ケーブル18の接続順序が左右逆転している。すなわち、奇数段目のモジュール段36a,36cは、右側の電池モジュール10の第二コネクタ22と、左側の電池モジュール10の第一コネクタ20とを接続させて、第二ケーブル18と第一ケーブル16とを接続させている。これに対し、偶数段目のモジュール段36b,36dは、右側の電池モジュール10の第一コネクタ20と、左側の電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させて、第一ケーブル16と第二ケーブル18とを接続させている。
また、モジュール段36を構成する電池モジュール10が全て第一ケーブル16および第二ケーブル18で接続されると、図7に示すように、モジュール段36を構成する複数の電池モジュール10の両端部に配置された電池モジュール10,10のうち、一方の電池モジュール10の第一コネクタ20が未使用(未接続)の状態になり、他方の電池モジュール10の第二コネクタ22が未使用の状態になる。これらの未使用の第一コネクタ20および第二コネクタ22は、上下に配されたモジュール段36,36の電気的接続に用いられる。
例えば、図10に示す太陽電池アレイ1では、奇数段目のモジュール段36a,36cと、偶数段目のモジュール段36b,36dとが接続され、太陽電池ブロック38a,38b(以下、単に電池ブロック38a,38bとも称す)が形成されている。具体的には、奇数段目のモジュール段36a,36cの左端に配された電池モジュール10a,10cの第二ケーブル18が、偶数段目のモジュール段36b,36dの左端に配された電池モジュール10b,10dの電池パネル12の裏面を通され、電池モジュール10a,10cの第二コネクタ22と、電池モジュール10b,10dの第一コネクタ20とが接続される。
これにより、モジュール段36aおよびモジュール段36bに含まれる全ての電池モジュール10が並列に接続され、電池ブロック38aが形成される。また、モジュール段36cおよびモジュール段36dに含まれる全ての電池モジュール10についても並列に接続され、電池ブロック38bが形成される。電池ブロック38a,38bは、それぞれ電池モジュール10を20以上、電気的に並列接続して形成されたものである。また、電池ブロック38a,38bは、それぞれ構成する電池モジュール10の数量が同一とされている。以上のように形成された電池ブロック38a,38bは、引込ケーブル40によって電気的に直列に接続される。これにより、太陽電池アレイ1が構築される。
図11(a)に示すように、引込ケーブル40は、第一直列コネクタ42と、第二直列コネクタ44と、出力コネクタ46と、第一屋外ケーブル48と、第二屋外ケーブル50と、屋内側ケーブル52と、モールド部54と、を備えている。第一直列コネクタ42は、電池モジュール10の第一コネクタ20に接続されるものであり、第二直列コネクタ44は、電池モジュール10の第二コネクタ22に接続されるものである。出力コネクタ46は、屋内のパワーコンダクター(図示せず)に接続されて電池モジュール10の電池パネル12で変換された電力を出力するものである。第一屋外ケーブル48は、第一直列コネクタ42に接続されるものであり、第二屋外ケーブル50は、第二直列コネクタ44に接続されるものである。屋内側ケーブル52は、出力コネクタ46に接続されるものである。
第一直列コネクタ42、第二直列コネクタ44、および出力コネクタ46は、電池モジュール10の第一コネクタ20および第二コネクタ22と同一の構造である。また第一直列コネクタ42および出力コネクタ46は黒色であり、第二直列コネクタ44は白色である。
第一屋外ケーブル48、第二屋外ケーブル50、および屋内側ケーブル52は、電池モジュール10の第一ケーブル16および第二ケーブル18と同様に、絶縁チューブ48a,50a,52a内にプラス側芯線24とマイナス側芯線26が一本ずつ配されている。第一屋外ケーブル48および屋内側ケーブル52の絶縁チューブ48a,52aは黒色であり、第二屋外ケーブル50の絶縁チューブ50aは白色である。また、屋内側ケーブル52の出力コネクタ46近傍には、白色のビニールテープ56が巻き付けられている。これにより、屋内側ケーブル52および出力コネクタ46を瞬時に判別することが可能になる。
図11(b)に示すように、モールド部54においては、第一屋外ケーブル48、第二屋外ケーブル50、および屋内側ケーブル52が接続されている。さらに説明すると、第一屋外ケーブル48のプラス側芯線24と、第二屋外ケーブル50のマイナス側芯線26とが電気的に接続され、第一屋外ケーブル48のマイナス側芯線26と、屋内側ケーブル52のマイナス側芯線26とが電気的に接続され、第二屋外ケーブル50のプラス側芯線24と、屋内側ケーブル52のプラス側芯線24とが電気的に接続されている。
図10に示すように、引込ケーブル40を用いて、電池ブロック38aと電池ブロック38bとを直列に接続させる場合、引込ケーブル40の白色の第二直列コネクタ44は、電池ブロック38aを構成するモジュール段36bの右端の電池モジュール10fの黒色の第二コネクタ22に接続される。また引込ケーブル40の黒色の第一直列コネクタ42は、電池ブロック38bを構成するモジュール段36cの右端の電池モジュール10gの白色の第一コネクタ20に接続される。
すなわち、引込ケーブル40と、電池ブロック38a,38bとの接続は、隣接する電池モジュール10,10の接続と同様に、色彩の異なるコネクタ同士を接続させればよく、配線の誤接続が生じにくい。また上記のように、引込ケーブル40の電池ブロック38a,38bへの接続は、所定のコネクタ44,22,42,20を所定の組み合わせで接続させるだけであり、屋根Rの上で容易に作業を行うことができる。
ここで、本実施形態の電池ブロック38a,38bは、一枚で約100[V]の電圧を得ることができる電池モジュール10を複数、並列に接続したものである。そのため、電池ブロック38a,38b全体から得られる電圧も約100[V]である。太陽電池アレイ1は、2つの電池ブロック38a,38bを引込ケーブル40を用いて直列接続したものであり、様々な機器の定格電圧である約200[V]の電圧を出力可能である。
図10に示すように、電池ブロック38a,38bが直列に接続された状態で、モジュール段36aの右端の電池モジュール10eの第一コネクタ20、およびモジュール段36dの右端の電池モジュール10hの第二コネクタ22は、未使用(未接続)の状態である。本実施形態の電池モジュール10の太陽電池アレイ1では、これらの第一コネクタ20や第二コネクタ22に図11に示す端子保護部材58が取り付けられている。端子保護部材58は、ケーブルが接続されていない点を除き、電池モジュール10の第一コネクタ20や第二コネクタ22と略同一の構造である。本実施形態の電池モジュール10の太陽電池アレイ1は、端子保護部材58を未使用のコネクタ20,22に取り付けることで、未使用の第一コネクタ20や第二コネクタ22の端子28,30にゴミや水が付着するのを防止することができる。
また、上記したようにして実施される太陽電池アレイ1の敷設作業が中断した場合にも、未接続の第一コネクタ20又は第二コネクタ22に端子保護部材58を取り付けることにより、コネクタ20,22の端子28,30にゴミや水が付着するのを防止することが可能である。
以上のようにして図5に示すステップ5の作業が完了すると、作業者は、ステップ6において、引き込みケーブル40の屋内側ケーブル52を建物の屋内に引き込む。その後、周辺役物瓦の施工を行い(ステップ7)、屋根Rの掃除(ステップ8)を終えると、点検(ステップ9)を行った後、屋内で引込ケーブル40の結束を行い(ステップ10)、出力コネクタ46を図示しないパワーコンダクターの接続箱に接続させて(ステップ11)、一連の作業が終了する。
上記したように、本実施形態の電池モジュール10は、長手方向の長さが900〜1100[mm]であり、短手方向の長さが、240〜480[mm]である。そのため、電池モジュール10は、建物の屋根などのような敷設作業の作業性が悪い場所にも容易に搬入し、施工することができる。また、本実施形態の電池モジュール10は、長手方向の長さが、一般的な瓦の2倍程度の大きさであり、短手方向の長さが瓦と同程度である。そのため、上記した電池モジュール10は、横長(桁行方向に長い)の姿勢で屋根に配置することにより、瓦を横方向に順次並べて葺くのと同様の作業で設置でき、屋根への施工に適している。
上記したように、電池パネル12は、幅が7〜12[mm]で帯状の電池セル100を複数、並べて形成し、電気的に直列接続したものであり、構成が画一的である。また、このように形成することにより、電池パネル12は、その出力の個体差が少ない。そのため、上述したようにして太陽電池アレイ1を構築した場合に、各電池パネル12の出力の個体差に起因する太陽電池アレイ1全体の出力低下を最小限に抑制することができる。
上述したように、太陽電池パネル12を構成する各電池セル100は、幅が7〜12[mm]であり、その開放電圧が1.2〜1.5[V]とされている。そのため、電池パネル12や電池モジュール10の大きさを上述したような大きさとした場合に、その出力電圧を太陽電池アレイ1を構成するのに適した電圧とすることができる。
上記した太陽電池セル100は、薄膜光電変換ユニット106a,106bを積層したタンデム型のものであるため、入射光が持つエネルギーを最大限有効利用することができる。なお、上記実施形態では、太陽電池セル100として、薄膜光電変換ユニット106a,106bを積層した2段タンデム型(ハイブリッド型)のものを採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多段のn段タンデム型(n=3以上の整数)としてもよい。また、太陽電池セル100は、タンデム型のものに限らず、薄膜光電変換ユニット106a,106bのいずれか一方のみを備えた単層のものであってもよい。
上記実施形態では、9〜15[mA/cm2]の範囲で短絡電流を出力可能なものを太陽電池パネル12に採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該範囲を外れた短絡電流を出力可能なものであってもよい。
上記したように、本実施形態では、電池ブロック38a,38bのそれぞれが電池モジュール10を20以上、電気的に並列接続して構成されているため、仮に一部の電池モジュール10の出力が低下したとしても、太陽電池アレイ1全体の出力低下に及ぼす影響が小さい。そのため、上述した太陽電池アレイ1は、一部の電池モジュール10において出力低下があってもその影響を殆ど受けることなく、安定した出力性能を示すことができる。なお、上記実施形態では、電池モジュール10を20以上並列接続して電池ブロック38a,38bを構成した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電池ブロック38a,38bを構成する電池モジュール10の数は20よりも少なくてもよい。
上記した太陽電池アレイ1は、2つの電池ブロック38を直列接続することにより形成されたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多数の電池ブロック38を構成し、これらを直列接続したものであってもよい。
上記した電池モジュール10には、電池セル100において受光により発電する領域(有効発電領域)を電気的に絶縁するように分割する分割線が設けられていないが、本発明はこれに限定されるものではなく、図14に示すように電池モジュール10の長手方向に伸びる分割線118を一又は複数設けた構成としてもよい。かかる構成によれば、仮に特定の電池セル100の一部分が陰に差し掛かるなどして発電しなくなったとしても、ホットスポット現象によって電池モジュール10が劣化したり破損するのを回避できる。また、分割線118を設ければ、太陽電池アレイ1の敷設後にホットスポット現象によって各電池モジュール10の出力性能に個体差が生じ、これに起因して太陽電池ブロック38a,38bの出力バランスが崩れるのを防止し、正常に機能している電池モジュール10における出力を有効利用可能とすることができる。
分割線118は、電池セル100のいかなる場所を通過するように設けられてもよいが、家屋への設置状態において電池モジュール10の上端側(棟側)となる部分や、下端側(軒側)となる部分、すなわち電池モジュール10の短手方向一端側および下端側に偏在した位置に設けることが好ましい。かかる構成によれば、上方に配された他の電池モジュール10や瓦などによって陰になる棟側の部分や、ホコリやゴミが溜まりやすい軒側の部分においてホットスポット現象が発生するのを防止することができる。
以下さらに本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の実施形態で採用する瓦型太陽電池モジュールの斜視図である。図4は、図1の太陽電池モジュールのコネクタの断面図である。
瓦型太陽電池モジュール10は、集積型太陽電池であり、内部に複数の太陽電池セルが形成され全体として一つの太陽電池を構成するものである。
すなわち瓦型太陽電池モジュール10は、ガラス基板に導電膜や半導体膜が積層され、さらにこれに複数の溝を設けて多数の単体電池(セル)に分割し、各セルを電気的に直列に接続したものである。
瓦型太陽電池モジュール10は、図の様に長方形をしており、長手方向の中心部から二本のケーブル16,18が延設されている。
またケーブル16,18にはそれぞれコネクタ20,22が接続されている。
ケーブル16,18は長さに長短があり、一方が長く、他方が短い。具体的には、長い方のケーブル18は、その全長が瓦型太陽電池モジュール10の全長の50パーセント以上であり、短い方のケーブル16は、その全長が瓦型太陽電池モジュール10の全長の50パーセント未満である。
またケーブル16,18は色が違う。ケーブル16,18はいずれも電気的に絶縁された2系統の導線24,26(プラス側芯線24,マイナス側芯線26)を有するものである。より具体的には、2条の被覆導線24,26が同一の絶縁チューブ内に配されたケーブルである。
二本のケーブル16,18にはそれぞれコネクタ20,22が接続されている。コネクタ20,22は、色違いであるが構造は同一であり、図4の様に2本の端子28,30(ピン状端子28,ソケット状端子30)を持っている。
2本の端子28,30の内、一方のピン状端子28は、ピンであり、他方のソケット状端子30は、ソケットである。
またコネクタ20,22は、雌片32と雄片34とを有し、前記したピン状端子28は、雌片32内にあり、ソケット状端子30は雄片34にある。
コネクタ20,22は、互いに接続可能であり、一方の雌片32と他方の雄片34とが接合される。そのとき、各雌片32と雄片34の内部では、一方のピン状端子28と他方のソケット状端子30とが接続される。
そして本実施形態では、二本のケーブル16,18の2条の被覆導線24,26は、それぞれ瓦型太陽電池モジュール10内の太陽電池(以下端に太陽電池)の正極と負極に接続されている。すなわちケーブル18内の一方の被覆導線24は太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線26は太陽電池の負極に接続されている。同様にケーブル16内の一方の被覆導線24は太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線26は太陽電池の負極に接続されている。
したがって、コネクタ22の2本の端子28,30の一方は、太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線は太陽電池の負極に接続されている。同様にコネクタ20の2本の端子28,30の一方は、太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線は太陽電池の負極に接続されている。
ただしコネクタ20,22の2本の端子28,30の極性を比較すると、両者は反対極となっている。すなわち一方のコネクタ22では、ピン状端子28が正極であり、ソケット状端子30が負極であるのに対し、他方のコネクタ20では、ピン状端子28が負極であり、ソケット状端子30が正極である。
次に、上記した瓦型太陽電池モジュール10の敷設構造について説明する。
図7は、瓦型太陽電池モジュールを正確に配線した場合の概念図である。図8は、瓦型太陽電池モジュールを誤って配線した場合の概念図である。図9は、瓦型太陽電池モジュールを正確に配線した場合の回路図である。
上記した瓦型太陽電池モジュール10は、図7,8に示すように、横に並べて屋根等の構造物に敷設する。
そして隣接する瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ20,22を接続する。一つの瓦型太陽電池モジュール10に注目すると、当該瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ22と左隣の瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ20とを接続する。また瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ20と右隣の瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ22とを接続する。
ケーブルの長短に注目して説明すると、当該瓦型太陽電池モジュール10の長いケーブル18のコネクタ22と左隣の瓦型太陽電池モジュール10の短いケーブル16のコネクタ20とを接続する。また瓦型太陽電池モジュール10の短いケーブル16のコネクタ20と右隣の瓦型太陽電池モジュール10の長いケーブル18のコネクタ22とを接続する。
その結果、図9に示すように、太陽電池が並列に接続される。
これに対して、接続方法を誤り、図8に示すように、長いケーブル18のコネクタ22同士を接続すると、他のコネクタ20が物理的に接続できなくなるので、作業者は接続の誤りに気づくこととなる。すなわち他方のコネクタ20は、短いケーブル16に接続されており、短いケーブル16は、瓦型太陽電池モジュール10の全長の半分に満たない。またケーブル16,18は、瓦型太陽電池モジュール10の中心部分から延びているので、短いケーブル16同士を接続しようとしても長さが足りず、両者を接続することができない。
したがって本実施形態の瓦型太陽電池モジュール10は、配線の誤りが起きえない。
次に本発明の瓦型太陽電池モジュール10を実際に屋根に敷設する際の手順について説明する。本発明の瓦型太陽電池モジュール10は、以下のマニュアルに則って屋根に敷設することが望ましい。
1 太陽電池アレイ
10 太陽電池モジュール
12 太陽電池パネル
38 太陽電池ブロック
100 太陽電池セル(電池セル)
118 分割線
本発明は、家屋に設置される太陽電池アレイを構成するための太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールにより構成される太陽電池アレイに関する。
近年、太陽電池パネルを有する太陽電池モジュールを建物の屋根等に敷設してその建物で消費する電力をまかなうと共に、余剰電力を電力会社に売却する太陽光発電システムが増加している。太陽電池パネルは、集積型太陽電池であり、ガラス基板に導電膜や半導体膜が積層され、これに複数の溝を設けて所定数の単体電池(太陽電池セル)を形成し、各太陽電池セルを電気的に直列接続させたものであり、100[V]以上の電圧を得ることができるものも知られている。以下の特許文献1には、このような太陽電池パネルの製造方法が開示されている。
上記したような太陽電池モジュールは、直列接続される太陽電池セルの数量を調整することにより所望の電圧を得ることができる。しかし、敷設や製造の利便性を考慮すると、太陽電池モジュールの大きさに制限があり、単一の太陽電池モジュールにおいて直列接続可能な太陽電池セルの数量や、出力電圧にも一定の制限が加わる。また、太陽電池モジュールは、単一では出力電流がさほど大きくない。そのため、従来技術では、複数の太陽電池モジュールを電気的に並列に接続した太陽電池ブロックを複数形成し、この太陽電池ブロックを互いに直列接続して太陽電池アレイを形成することにより、出力電圧および出力電流が実用的なレベルになるように調整している。
上記したように、太陽電池モジュールを電気的に並列に接続して太陽電池ブロックを形成すると共に、このようにして形成された太陽電池ブロックを用いて太陽電池アレイを構成した場合、直列接続されている各太陽電池モジュールの出力が同程度であれば、仮に一部の太陽電池モジュールが陰に設置される等して出力が低下しても、太陽電池アレイ全体の出力はさほど低下しない。
ここで、上記したような接続構造で太陽電池アレイを構成した場合は、一部の太陽電池モジュールが陰に設置されるなどして出力低下する場合と同様に、各太陽電池モジュールの出力性能に個体差があっても、太陽電池ブロック毎の出力が同程度であれば太陽電池アレイ全体としてはさほど大きな出力低下にはならない。しかし、太陽電池モジュールの出力性能のバラツキや、設置場所の日照条件などの種々の条件が複合的に作用すると、各太陽電池ブロック間の出力特性にバラツキが生じ、正常に作動している太陽電池モジュールの出力を有効利用できず、太陽電池アレイ全体としての出力も期待される程度に至らなくなってしまうという問題があった。そのため、太陽電池モジュールが陰に設置されるなどして一時的に予期せぬ出力低下が起こることを考慮すると、太陽電池モジュールの出力性能についての個体差を最小限に抑制しておきたいという要望があった。
また上述したように多数の太陽電池セルを直列接続した太陽電池モジュールでは、陰に差し掛かるなどして特定の太陽電池セルの一部分が発電しなくなると、当該部位の電気抵抗が大きくなって熱を発生する現象(ホットスポット現象)が起こることがある。ホットスポット現象が起こると、太陽電池モジュールが劣化したり破損するといった不具合が起こる可能性がある。このような現象が起こると、太陽電池モジュール固有の出力が後発的に低下し、太陽電池アレイや太陽電池ブロックを構成する各太陽電池モジュールの出力にバラツキが生じることとなり、他の太陽電池モジュールで発生した電気エネルギーの一部を有効利用できなくなる可能性がある。
そこで、本発明は、仮に特定の電池セルの一部分が陰に差し掛かるなどして発電しなくなったとしても、ホットスポット現象によって電池モジュールが劣化したり破損するのを回避できる太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールを採用することで安定した出力特性を発現可能な太陽電池アレイの提供を目的とした。
上記した課題を解決すべく提供される本発明は、複数の太陽電池モジュールを電気的に並列接続することにより形成された太陽電池ブロックを複数、電気的に直列接続することにより形成される太陽電池アレイ構成用の太陽電池モジュールであって、略長方形の面状に形成された太陽電池パネルを備え、前記太陽電池モジュールの大きさは、前記太陽電池パネルとほぼ同等あるいは太陽電池パネルよりも一回り大きい程度であり、当該太陽電池パネルの長手方向が家屋の桁行方向に向き、前記太陽電池パネルの短手方向が家屋の棟行方向に向くように設置されるものであり、前記太陽電池パネルが、複数の太陽電池セルを有し、前記太陽電池セルを電気的に直列接続したものであり、前記太陽電池セルは帯状のものであり、前記太陽電池パネルの短手方向に長辺が向き、前記太陽電池パネルの長手方向に短辺が向いた状態で、前記太陽電池パネルの長手方向に並ぶように設けられ、前記太陽電池パネルには太陽電池モジュールの長手方向に伸び、前記太陽電池セルの有効発電領域を分割する分割線が一又は複数設けられており、前記分割線は、太陽電池モジュールの短手方向の一端側に偏在した位置に設けられていて分割線から前記一端側に至る太陽電池セルの面積が反対側の面積よりも小さいものとなっていることを特徴とする太陽電池モジュールである。
太陽電池モジュールは全体として一つの太陽電池を構成し、二組のコネクタを有し、前記二組のコネクタはいずれも独立した二以上の端子を備え、各コネクタの一つの端子は太陽電池の正極に接続され、各コネクタの他の一つの端子は太陽電池の負極に接続されていることが望ましい。
隣接する太陽電池モジュールのコネクタが接合された状態において両コネクタの正極側端子同士と、負極側端子同士が接続された状態となることが望ましい。
太陽電池モジュールは全体として一つの太陽電池を構成し、二組のコネクタを有し、前記二組のコネクタはいずれも太陽電池モジュールの長手方向中央から延出された2系統以上の導線を有するケーブルに接続されており、前記二組のコネクタの内の一方のコネクタに接続されたケーブルは、他方のコネクタに接続されたケーブルよりも短く、前記ケーブルの長さの関係は太陽電池モジュールを列状に並べたとき短いケーブルが接続されたコネクタ同士は長さ不足の状態であって接続させることが不能となるものであることが望ましい。
複数の太陽電池モジュールを電気的に並列接続することにより形成された太陽電池ブロックを複数、電気的に直列接続することにより形成される太陽電池アレイ構成用の太陽電池モジュールである。本発明の太陽電池モジュールは、長手方向の長さが900〜1100[mm]であり、略長方形の面状に形成された太陽電池パネルを備え、当該太陽電池パネルの長手方向が家屋の桁行方向に向き、前記太陽電池パネルの短手方向が家屋の棟行方向に向くように設置されるものである。また、本発明の太陽電池は、前記太陽電池パネルが、複数の太陽電池セルを有し、開放電圧が100〜180[V]となるように前記太陽電池セルを電気的に直列接続したものであり、前記太陽電池セルが、帯状で短辺の長さが7〜12[mm]のものであり、前記太陽電池パネルの短手方向に長辺が向き、前記太陽電池パネルの長手方向に短辺が向いた状態で、前記太陽電池パネルの長手方向に並ぶように設けられていることが望ましい。
本態様の太陽電池モジュールは、長手方向の長さが900〜1100[mm]であり、建物の屋根などのような敷設作業の作業性が悪い場所にも容易に搬入し、施工することができる。また、本発明の太陽電池モジュールは、長手方向の長さが、一般的に使用されている瓦の2倍程度の大きさであるため、瓦を葺くのとさほど大差ない作業効率で家屋に設置することができる。
本態様の太陽電池モジュールを構成する太陽電池パネルは、幅が7〜12[mm]で帯状の太陽電池セルを複数、電気的に直列接続したものであると共に、前記太陽電池セルが前記太陽電池パネルの長手方向に並ぶように設けられており、構成が画一的である。また、本発明の太陽電池モジュールは、上記したような画一的な構成を採用することにより、出力のバラツキを最小限に抑制できる。さらに、本発明の太陽電池モジュールを構成する太陽電池パネルは、開放電圧が100〜180[V]であるため、これを電気的に並列接続して太陽電池ブロックを形成すると共に、太陽電池ブロック同士を直列接続することで、従来公知のACパワーコンディショナ(AC power conditioner)のような機器類に入力するのに適した電圧で出力可能な太陽電池アレイを構築することができる。
本態様の太陽電池モジュールでは、太陽電池パネルの短手方向に前記太陽電池セルの長辺が向き、前記太陽電池パネルの長手方向に前記太陽電池セルの短辺が向いた状態で、前記太陽電池セルが前記太陽電池パネルの長手方向に並ぶように設けられている。また、本発明の太陽電池モジュールは、前記太陽電池パネルの長手方向が家屋の桁行方向に向き、前記太陽電池パネルの短手方向が家屋の棟行方向に向く姿勢とされ、設置される。ここで、瓦を葺くのと同様にして家屋に太陽電池モジュールを設置する場合、日照条件によっては棟行方向上方側に他の太陽電池モジュールの陰ができたり、棟行方向下方側の部分が他の太陽電池モジュールと重なるなどして、発電しない部分ができたり、出力が大幅に低下する部分が形成され、電気抵抗となる可能性がある。しかし、このような部分ができたとしても、他の部分においては各太陽電池セルが通常に機能し、全ての太陽電池セルが電気的に導通した状態を維持することができる。従って、本発明の太陽電池モジュールによれば、日照条件などの影響により出力が低下することがあっても、これにより太陽電池アレイ全体の出力低下に及ぼす影響を最小限に抑制することができる。
上述した本態様の太陽電池モジュールは、太陽電池セルの開放電圧が、1.2〜1.5[V]であることが望ましい。
かかる構成によれば、太陽電池アレイの構築にあたり必要とされる開放電圧を出力可能な太陽電池モジュールを提供できる。
また、上述した本態様の太陽電池モジュールは、短手方向の長さが、240〜480[mm]であることが望ましい。
かかる構成によれば、従来より家屋に葺かれている瓦に代えて設置可能な太陽電池モジュールを提供できる。
上述した態様の太陽電池モジュールは、太陽電池セルが、タンデム型であってもよい。
かかる構成によれば、入射光が持つエネルギーを最大限有効利用可能であり、エネルギー変換効率の高い太陽電池モジュールを提供できる。
上述した態様の太陽電池モジュールは、太陽電池パネルの短絡電流値が、9〜15[mA/cm2 ]であるものであることが好ましい。
ここで、上述したように多数の太陽電池セルを直列接続した太陽電池モジュールでは、陰に差し掛かるなどして特定の太陽電池セルの一部分が発電しなくなると、当該部位の電気抵抗が大きくなって熱を発生する現象(ホットスポット現象)が起こることがある。ホットスポット現象が起こると、太陽電池モジュールが劣化したり破損するといった不具合が起こる可能性がある。このような現象が起こると、太陽電池モジュール固有の出力が後発的に低下し、太陽電池アレイや太陽電池ブロックを構成する各太陽電池モジュールの出力にバラツキが生じることとなり、他の太陽電池モジュールで発生した電気エネルギーの一部を有効利用できなくなる可能性がある。
そこで、かかる知見に基づくと、上述した本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルが、受光により発電する有効発電領域を有し、太陽電池モジュールの長手方向に伸び、前記太陽電池セルの有効発電領域を分割する分割線が一又は複数設けられていることが望ましい。
かかる構成によれば、仮に特定の太陽電池セルの一部分が陰に差し掛かるなどして発電しなくなったとしても、当該部位に極度に大きな電力が作用せず、ホットスポット現象による太陽電池モジュールの劣化や破損を回避できる。従って、上述した構成によれば、太陽電池アレイの敷設後にホットスポット現象によって各太陽電池モジュールの出力性能に個体差が生じるのを最小限に抑制することができる。
本発明の太陽電池アレイは、上述した本発明の太陽電池モジュールを複数、電気的に並列接続することにより形成された太陽電池ブロックを2つ、直列接続することにより形成されたものである。
本発明では、上述した本発明の太陽電池モジュールを採用しているため、各太陽電池モジュール毎の出力特性についての個体差が小さい。また、本発明の太陽電池アレイは、太陽電池モジュールを並列接続することで太陽電池ブロックを複数形成し、これらを直列接続したものであるため、仮に一部の太陽電池モジュールにおいて出力低下があったとしても、これによるエネルギーロスを最小限に抑制し、安定した出力特性を発揮することができる。
上述した本発明の太陽電池アレイは、太陽電池ブロックが、太陽電池モジュールを20以上、電気的に並列接続して形成されたものであることが望ましい。
また、略長方形状であって内部に複数の太陽電池セルが形成され全体として一つの太陽電池を構成する太陽電池モジュールを使用し、当該太陽電池モジュールを構造物に敷設する太陽電池モジュールの敷設構造において、太陽電池モジュールは、二組のコネクタを有し、前記二組のコネクタはいずれも独立した二以上の端子を備え、前記二組のコネクタはいずれも太陽電池モジュールの長手方向中央から延出された2系統以上の導線を有するケーブルに接続されており、各コネクタの一つの端子は太陽電池の正極に接続され、各コネクタの他の一つの端子は太陽電池の負極に接続され、前記二組のコネクタの内の一方のコネクタに接続されたケーブルは、他方のコネクタに接続されたケーブルよりも短く、前記ケーブルの長さの関係は太陽電池モジュールを列状に並べたとき短いケーブルが接続されたコネクタ同士は長さ不足の状態であって接続させることが不能となるものであり、前記太陽電池モジュールは構造物に列状に並べて設置され、隣接する太陽電池モジュールのコネクタは長いケーブルが接続されたコネクタと短いケーブルが接続されたコネクタが接合され、両者が接合された状態において両コネクタの正極側端子同士と、負極側端子同士が接続された状態となり、複数の太陽電池モジュールが電気的に並列に接続された構成とすることも可能である。
上記した太陽電池モジュールの敷設構造では、隣接する太陽電池モジュールのコネクタは、長いケーブルが接続されたコネクタと短いケーブルが接続されたコネクタが接合される。上記した太陽電池モジュールの敷設構造は、この様に長いケーブルが接続されたコネクタと短いケーブルが接続されたコネクタが接合された状態が正規の接合状態である。上記した敷設構造では、この様に隣接する太陽電池モジュールの長いケーブルのコネクタと短いケーブルのコネクタとを接合すると、両コネクタの正極側端子同士と、負極側端子同士が接続された状態となり、複数の太陽電池モジュールが電気的に並列に接続されることとなる。
また上記した太陽電池モジュールの敷設構造では、作業者がコネクタを誤接続することはない。すなわち上記した太陽電池モジュールの敷設構造では、この様にケーブルの長さに長短があるので、太陽電池モジュールを列状に並べたとき、短いケーブルが接続されたコネクタ同士は長さ不足の状態であって接続させることができない。そのため屋根の上等に太陽電池モジュールを敷設した際に、隣接する太陽電池モジュールの短いケーブル同士を接続することは物理的にできず、作業者がコネクタを誤接続することはない。
上記した態様によれば、構造が画一的でありつつ、安定した出力特性を発揮可能であり、敷設時に容易に取り回し可能な大きさの太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールを採用することで安定した出力特性を発現可能な太陽電池アレイを提供できる。
本発明によれば、仮に特定の太陽電池セルの一部分が陰に差し掛かるなどして発電しなくなったとしても、当該部位に極度に大きな電力が作用せず、ホットスポット現象による太陽電池モジュールの劣化や破損を回避できる。従って、上述した構成によれば、太陽電池アレイの敷設後にホットスポット現象によって各太陽電池モジュールの出力性能に個体差が生じるのを最小限に抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールを示す斜視図である。
図1の太陽電池モジュールの裏面側の構造を示す斜視図である。
図1に示す太陽電池モジュールで採用されている太陽電池パネルの断面図である。
図1の太陽電池モジュールのコネクタの断面図である。
太陽電池モジュールの敷設構造の作業手順を示すフローチャートである。
太陽電池モジュールを建物の屋根に敷設した状態を示す説明図である。
太陽電池モジュールが正しく配線されたモジュール段を示す概念図である。
太陽電池モジュールが誤って配線されたモジュール段を示す概念図である。
太陽電池モジュールが正しく配線された場合の回路図である。
太陽電池アレイを示す概念図である。
(a)は、引込ケーブルの正面図であり、(b)は、引込ケーブルのモールド部の断面図である。
端子保護部材の平面図である。
(a)は、両極が雄片であるコネクタの平面図であり、(b)は、両極が雌片であるコネクタの平面図である。
図1に示す太陽電池モジュールの変形例を示す斜視図である。
続いて、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール10、並びに、太陽電池アレイ1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。太陽電池モジュール10(以下、単に電池モジュール10とも称す)は、新築又は既築の建物の屋根Rにおいて瓦に代替して敷設されるものである。図1や図2に示すように、電池モジュール10は、太陽電池パネル12(以下、単に電池パネル12とも称す)と、電池パネル12の裏面に取り付けられる端子ボックス14と、端子ボックス14から延設される二本の第一ケーブル16、第二ケーブル18と、これらのそれぞれに接続される第一コネクタ20(以下、コネクタ20とも称す)および第二コネクタ22(以下、コネクタ22とも称す)とを備えている。
電池モジュール10は、図1や図2に示すようにほぼ長方形の面状に形成されている。電池モジュール10は、敷設時に外部に露出する部分の大半の面積を電池パネル12が占めている。そのため、電池モジュール10の大きさは、電池パネル12とほぼ同等あるいは電池パネル12よりも一回り大きい程度である。本実施形態の電池モジュール10は、出力を確保しつつ、家屋への設置作業の作業性を確保することを考慮し、長手方向の長さL1が1200[mm]より小さいものとされている。本実施形態では、電池モジュール10の敷設施工時に設置される一般的な足場の間隔や、施工作業者の取り回しやすさ等を考慮し、長さL1が、900〜1100[mm]の範囲とされている。また、電池モジュール10は、一般的な平板瓦のサイズなどを考慮し、短手方向の長さL2が240〜480[mm]の範囲とされている。本実施形態では、一般的な平板瓦の働き幅と同程度としつつ、日照条件によって陰になる部分を最小限に抑制することで光電変換効率を向上させることに配慮し、長さL2が280〜360[mm]の範囲内に調整されている。
電池パネル12は、図1や図2に示すようにほぼ長方形の面状に形成されている。電池パネル12は、長手方向が家屋の桁行方向に向き、短手方向が家屋の棟行方向に向く姿勢で敷設される。電池パネル12は、長手方向に短冊状の太陽電池セル100(以下、単に電池セル100とも称す)を多数、電気的に直列接続した状態になるように並べて形成したものであり、一枚で約100[V]の電圧を得ることができる。
電池パネル12は、2種類以上の光電変換層を組み合わせた、いわゆるタンデム型の太陽電池であり、光電変換効率が高い。本実施形態では、タンデム型の一体系であるハイブリッド型の太陽電池を電池パネル12として採用している。さらに具体的には、図3に示すように、電池パネル12は、透明基板102上に、透明前面電極層104、第1,2の薄膜光電変換ユニット106a,106b(以下、それぞれを非晶質光変換ユニット106a、結晶質光変換ユニット106bとも称す)、金属裏面電極層108、封止樹脂層110、有機保護層112を順次積層した構造の、いわゆるハイブリッド型の太陽電池である。透明基板102は、例えば、ガラス板や透明樹脂フィルムなどのような透光性を有する素材によって形成されており、電池モジュール10の設置時に最も光の入射側に位置する面を構成する。
また、透明前面電極層104は、透明基板102に隣接する位置に形成された単層構造あるいは多層構造の層である。透明前面電極層104は、ITO膜や、SnO2 膜、ZnO膜のような透明で導電性を有する酸化物等を透明基板102に対して層状に積層することで形成されている。透明前面電極層104は、従来公知の蒸着法や、CVD(Chemical Vapor Deposition )法、EVD(Electrochemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法に代表される気相堆積法等を用いて形成される。
薄膜光電変換ユニット106aは、非晶質光電変換層を備えたものであり、上述した透明前面電極層104に対して光の入射方向(図3では上方)に隣接する位置に設けられている。薄膜光電変換ユニット106aは、例えば透明前面電極層104側からp型シリコン系半導体層、i型シリコン系非晶質光電変換層、及びn型シリコン系半導体層を順次積層した構造とすることができる。これらのp型シリコン系半導体層、i型シリコン系非晶質光電変換層、及びn型シリコン系半導体層についても、上述した透明前面電極層104と同様にプラズマCVD法等、適宜の方法により形成することができる。薄膜光電変換ユニット106aは、0.01μm〜0.5μmの厚さであることが好ましく、0.1μm〜0.3μmの厚さであることがより好ましい。
薄膜光電変換ユニット106bは、結晶質光電変換層を備えたものであり、上述した薄膜光電変換ユニット106aに対して光の入射方向に隣接している。薄膜光電変換ユニット106bは、例えば薄膜光電変換ユニット106a側からp型シリコン系半導体層、i型シリコン系結晶質光電変換層、及びn型シリコン系半導体層を順次積層した構造とすることができる。薄膜光電変換ユニット106bを構成するp型シリコン系半導体層や、i型シリコン系結晶質光電変換層、n型シリコン系半導体層についても、薄膜光電変換ユニット106aのものと同様に、いずれもプラズマCVD法などによって形成することができる。
ここで、薄膜光電変換ユニット106bを構成する結晶質光電変換層は、上述した薄膜光電変換ユニット106aを構成する非晶質光電変換層に比べて光吸収系数が小さい。そのため、結晶質薄膜光電変換ユニット106bの厚さは、非晶質薄膜光電変換ユニット106aの厚さの数倍から10倍程度であることが好ましい。より具体的には、薄膜光電変換ユニット106bは、0.1μm〜10μmの厚さであることが好ましく、0.1μm〜5μmの厚さであることがより好ましい。
上述した光電変換ユニット106a,106bを構成するp型半導体層は、例えば、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、ボロンやアルミニウム等のp導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。また、非晶質光電変換層及び結晶質光電変換層は、非晶質シリコン系半導体材料及び結晶質シリコン系半導体材料でそれぞれ形成することができる。具体的には、非晶質光電変換層や結晶質光電変換層は、真性半導体のシリコン(水素化シリコン等)やシリコンカーバイド及びシリコンゲルマニウム等のシリコン合金等によって構成することができる。また、非晶質光電変換層や結晶質光電変換層は、光電変換機能を備えているものであればよく、例えば微量の導電型決定不純物を含む弱p型もしくは弱n型のシリコン系半導体材料を用いて構成することも可能である。非晶質光電変換層や結晶質光電変換層のn型半導体層は、シリコンまたはシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等のシリコン合金に、燐や窒素等のn導電型決定不純物原子をドープすることにより形成することができる。
また、上述した薄膜光電変換ユニット106a,106bは、互いに吸収波長域が異なっている。具体的には、薄膜光電変換ユニット106aの光電変換層を非晶質シリコンで構成した場合は、550nm程度の光成分を最も効率的に吸収させることができるのに対し、薄膜光電変換ユニット106bの光電変換層を結晶質シリコンで構成した場合には、900nm程度の光成分を最も効率的に吸収させることができる。
金属裏面電極層108は、薄膜光電変換ユニット106bに対して、入射光の進行方向に隣接した位置に設けられている。金属裏面電極層108は、銀やアルミニウム等により構成され、従来公知の蒸着法やスパッタリング法等によって200nm〜400nm程度の厚さに形成された層である。金属裏面電極層108と薄膜光電変換ユニット106bとの間には、両者の間の接着性の向上などを考慮し、ZnOのような非金属材料からなる透明電導性薄膜(図示せず)を適宜設けることができる。金属裏面電極層108は、電池パネル12の電極としての機能に加え、透明基板102から入射し、薄膜光電変換ユニット106a,106bを通過してきた光を反射し、薄膜光電変換ユニット106a,106b内に再入射させるための反射層としての機能も有する。
電池モジュール10は、上述した金属裏面電極層108に対して入射光の進行方向に隣接した位置、すなわち家屋等への設置時に裏側となる位置において、封止樹脂層110を介して有機保護層112が形成されている。封止樹脂層110は、有機保護層112と金属裏面電極層108とを接着する層であり、例えば、EVA(エチレン・ビニルアセテート共重合体)や、PVB(ポリビニルブチラール)、PIB(ポリイソブチレン)、及びシリコーン樹脂等によって構成されている。また、有機保護層112は、電池モジュール10の裏面側を封止する層である。有機保護層112には、例えばポリフッ化ビニルフィルムなどのフッ素樹脂系フィルムや、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルムのように、耐湿性や耐水性に優れた絶縁フィルムや、これらを積層したもの。アルミニウム等からなる金属箔をこれらのフィルムで挟持した構造のものなどを好適に採用することができる。
図3に示すように、電池モジュール10には、上述したようにして積層して形成された薄膜を第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116で分割することにより、複数の電池セル100が形成されている。すなわち、第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116は、隣接する電池セル100同士の間において、透明前面電極層104や薄膜光電変換ユニット106a,106b、金属裏面電極層108などを構成する薄膜を分割するように設けられている。第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116は、それぞれ直線状であり、図3において紙面に対して垂直な方向、すなわち電池モジュール10の短手方向に沿って伸びるように形成されている。また、第1,2の分割溝114a,114bや、接続溝116は、互いにほぼ平行になるように形成されている。
第1の分割溝114aは、透明前面電極層104を各電池セル100毎に分割するように設けられている。第1の分割溝114aは、透明前面電極層104と薄膜光電変換ユニット106aとの界面に開口を有し、基板2の表面を底面とする溝である。第1の分割溝114aには、非晶質のシリコンなどの薄膜光電変換ユニット106aを構成するものが埋め込まれている。そのため、電池セル100の透明前面電極層104は、第1分割溝114aに埋め込まれた非晶質のシリコンなどによって、電池モジュール10の長手方向に隣接する位置に設けられた他の電池セル100の透明前面電極層104と電気的に絶縁されている。
第2の分割溝114bは、隣り合う電池セル100間の境界を規定する溝である。第2の分割溝114bは、第1の分割溝114aに対して電池モジュール10の長手方向に外れた位置に設けられている。第2の分割溝114bは、薄膜光電変換ユニット106a,106b、及び金属裏面電極層108をそれぞれの電池セル100毎に分割するように形成されている。第2の分割溝114bは、金属裏面電極層108と樹脂封止層6との界面に開口を有し、透明前面電極層104の表面を底面としている。第2の分割溝114bには、上述したEVA(エチレン・ビニルアセテート共重合体)などのような封止樹脂層110を構成する樹脂が埋め込まれている。そのため、電池セル100の金属裏面電極層108は、第2の分割溝114bに埋め込まれた樹脂により、隣接する位置に設けられた他の電池セル100の金属裏面電極層108と電気的に絶縁されている。
接続溝116は、第1,2の分割溝114a,114bの間に設けられている。接続溝116は、薄膜光電変換ユニット106a,106bを各電池セル100毎に分割する溝である。接続溝116は、薄膜光電変換ユニット106bと金属裏面電極層108との界面に開口を有し、透明前面電極層104の表面を底面としている。接続溝116には、銀やアルミニウムのような金属裏面電極層108を構成する金属材料が埋め込まれており、隣り合う電池セル100の一方の金属裏面電極層108と他方の透明前面電極層104とを電気的に接続している。すなわち、電池モジュール10に多数形成された電池セル100は、接続溝116に埋め込まれた金属材料により、隣接する電池セル100に対して電気的に直列接続されている。
各電池セル100は、製造時の精度や容易さ、出力のバラツキを最小限に抑制する等の観点から、幅(短辺)L3が7〜12[mm]となるように形成することが望ましく、幅L3が8〜10[mm]となるように形成することがより一層望ましい。また、各電池セル100は、長辺の長さL4が電池パネル12の短手方向の長さよりもやや短く、長さL4の3/4程度とされている。そのため、各電池セル100は、透明基板102側から見て帯状の外観形状を有する。また、各電池セル100は、薄膜光電変換ユニット106a,106bを備えたタンデム型(ハイブリッド型)の太陽電池であり、二つのユニットの開放電圧が加算されることで、一つのユニットで構成される太陽電池より電圧が高くなり、開放電圧が1.2〜1.5[V]の範囲にある。電池パネル12は、50〜150個程度の電池セル100を直列接続したものであり、全体として100〜180[V]の開放電圧を出力できる構成とされている。本実施形態の電池パネル12は、全体として約100[V]の開放電圧を出力可能なように電池セル100が多数、直列接続されている。また、電池パネル12は、短絡電流値が、9〜15[mA/cm2 ]の範囲となるように形成することが望ましく、10〜13[mA/cm2 ]の範囲となるように形成することがより一層望ましい。
また、各電池セル100の長辺は電池パネル12の短手方向に向き、各電池セル100の短辺は電池パネル12の長手方向に向いている。そのため、電池パネル12において、各電池セル100の接続部として機能する部分、具体的には第1,2の分割溝114a,114bや接続溝116の部分の面積を抑制することができる。また、電池パネル12における各電池セル100を前述したような配置とすることにより、電池パネル12の一部が陰に差し掛かったり、電池パネル12の下辺(軒側の辺)等にホコリやゴミが堆積したとしても、いわゆるホットスポット現象が発生するのを防止できる。
図2に示すように、電池モジュール10は、上述した電池パネル12の裏面側に、端子ボックス14と、この端子ボックス14から取り出された第一,第二ケーブル16,18とを有する。端子ボックス14は、電池パネル12の正極が接続されるプラス側電極接続端子(図示せず)と、電池パネル12の負極が接続されるマイナス側電極接続端子(図示せず)とが内部に設けられている。端子ボックス14内において、プラス側電極接続端子には、黒色の被覆導線であるプラス側芯線24が二本接続されており、マイナス側電極接続端子には、白色の被覆導線であるマイナス側芯線26が二本接続されている。
第一,第二ケーブル16,18は、それぞれ電池モジュール10を敷設して太陽電池アレイ1を構築する際に、他の電池モジュール10と電気的に接続するために使用されるものである。図1に示すように、第一ケーブル16は、二本のプラス側芯線24,24のうちの一方のプラス側芯線24と、二本のマイナス側芯線26,26のうちの一方のマイナス側芯線26とを束ねて形成されたものである。また第二ケーブル18は、二本のプラス側芯線24,24のうちの他方のプラス側芯線24と、二本のマイナス側芯線26,26のうちの他方のマイナス側芯線26とを束ねて形成されたものである。
図1に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18は色彩が相違しており、第一ケーブル16は、白色の絶縁チューブ16a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されており、第二ケーブル18は、黒色の絶縁チューブ18a内にプラス側芯線24およびマイナス側芯線26が配されている。
また、第一ケーブル16および第二ケーブル18は、長さに長短があり、一方が長く、他方が短い。具体的には、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短い。第一ケーブル16の全長は、長方形状の電池パネル12の長辺の長さの50パーセント未満の長さであり、第二ケーブル18の全長は、電池パネル12の長辺の長さの50パーセント以上である。
図1に示すように、第一ケーブル16および第二ケーブル18のそれぞれの端部には、第一コネクタ20および第二コネクタ22が設けられている。第一コネクタ20および第二コネクタの色彩は相違しているが、構造は同一である。本実施形態において、第一コネクタ20は白色であり、第二コネクタ22は黒色である。
図4に示すように、第一コネクタ20および第二コネクタ22は、ピン状端子28およびソケット状端子30を備えている。また第一コネクタ20および第二コネクタ22は、雌片32と雄片34とを有し、前記したピン状端子28は、雌片32内にあり、ソケット状端子30は、雄片34内にある。
図1に示すように、本実施形態において、第一コネクタ20のピン状端子28にはプラス側芯線24が接合されており、第一コネクタ20のソケット状端子30にはマイナス側芯線26が接合されている。また、第二コネクタ22のピン状端子28にはマイナス側芯線26が接合されており、第二コネクタ22のソケット状端子30にはプラス側芯線24が接合されている。すなわち、第一コネクタ20では、ピン状端子28が正極であり、ソケット状端子30が負極である。これに対し、第二コネクタ22では、ピン状端子28が負極であり、ソケット状端子30が正極である。そのため、第一コネクタ20と第二コネクタ22とは、一方の雌片32と他方の雄片34とを嵌合させて一方のピン状端子28を他方のソケット状端子30に接続させることにより、同極同士を電気的に並列接続することが可能である。
次に、上記した電池モジュール10を用いて構成される太陽電池アレイ1について、図5に示す建物の屋根Rに敷設する際の作業手順に言及しつつ説明する。電池モジュール10を敷設する場合、まず敷設対象である建物の屋根Rに軒先水切りや所定のルーフィング材が取り付けられ、ステップ1において、作業の進行に必要な線や形、寸法を屋根Rに表示する墨出しが行われる。その後のステップ2では、縦桟木(流し桟)が所定の間隔で取り付けられ、ステップ3において広小舞(瓦座)や横桟木(瓦桟)が取り付けられる。横桟木は、所定の登り間隔で取り付けられる。次にステップ4において、電池モジュール10が吹き上がるのを防止する吹上防止金具を所定の位置に取り付けた後、作業はステップ5に移行する。
ステップ5では、電池モジュール10が屋根Rの軒先側から棟側にかけて順次取り付けられ、隣接する電池モジュール10,10が第一ケーブル16および第二ケーブル18によって接続される。詳しく説明すると、電池モジュール10の取り付けは、図6に示すように、複数の電池モジュール10の短辺同士を隣り合わせて列状に配置することでモジュール段36を形成すると共に、ビス等で各電池モジュール10を屋根Rに固定することで行われる。本実施形態において、モジュール段36は、偶数段(図6では14段)が屋根Rに設置される。
図7に示すように、モジュール段36の形成中、隣接する電池モジュール10,10において、一方の電池モジュール10の第一コネクタ20と、隣接する他方の電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させると、隣接する二つの電池モジュール10,10を電気的に並列接続させることができる。すなわち、白色の第一ケーブル16に取り付けられた白色の第一コネクタ20と、黒色の第二ケーブル18に取り付けられた黒色の第二コネクタ22とを接続させることで、隣接する電池モジュール10,10の並列接続が可能になる。従って、本実施形態の電池モジュール10は、左右の隣接する電池モジュール10,10を、第一ケーブル16および第二ケーブル18を用いて接続させることにより、モジュール段36に含まれる全ての電池モジュール10を順次並列に接続させることができる(図9)。
ここで、上記したように、本実施形態の電池モジュール10では、第一ケーブル16が第二ケーブル18よりも短く形成されている。そのため、電池モジュール10は、作業者が第一ケーブル16および第二ケーブル18の長さを確認することによって、これらに取り付けられたコネクタ20,22が第一コネクタ20であるのか、あるいは第二コネクタ22であるのかを瞬時に判断することができる。
また、本実施形態の電池モジュール10において、第一ケーブル16の全長は、長方形状の電池パネル12の長辺の長さの50パーセント未満の長さであり、第二ケーブル18の全長は、電池パネル12の長辺の長さの50パーセント以上である。そのため、図7に示すように、短辺同士を突き合わせて隣接する電池モジュール10,10間においては、第一ケーブル16に取り付けられたコネクタ20,20同士を接続させることができない。従って、本実施形態の電池モジュール10は、隣接する電池モジュール10,10間における、第一コネクタ20,20同士の誤接続を確実に防止することができる。
また、本実施形態の電池モジュール10は、第一ケーブル16を白色とし、第二ケーブル18を黒色としている。そのため電池モジュール10は、作業者が第一ケーブル16および第二ケーブル18の色彩を確認することで容易にこれらに取り付けられたコネクタ20,22の種類を判別することが可能である。
電池モジュール10は、第一コネクタ20が白色、第二コネクタ22が黒色に形成されており、第一コネクタ20と第二コネクタ22とで色彩が相違している。従って、本実施形態の電池モジュール10は、作業者が電池モジュール10のコネクタ20,22の色彩を確認することによって、そのコネクタ20,22の種類を迅速に判別することができる。従って本実施形態の電池モジュール10は、作業者による迅速で適切なコネクタの選択が可能であり、配線の誤接続が少なく、作業効率が高い。
図10に示すように、電池モジュール10を多数敷設して形成される太陽電池アレイ1は、軒側(下側)から奇数段目のモジュール段36a,36cと、偶数段目のモジュール段36b,36dとで第一ケーブル16および第二ケーブル18の接続順序が左右逆転している。すなわち、奇数段目のモジュール段36a,36cは、右側の電池モジュール10の第二コネクタ22と、左側の電池モジュール10の第一コネクタ20とを接続させて、第二ケーブル18と第一ケーブル16とを接続させている。これに対し、偶数段目のモジュール段36b,36dは、右側の電池モジュール10の第一コネクタ20と、左側の電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させて、第一ケーブル16と第二ケーブル18とを接続させている。
また、モジュール段36を構成する電池モジュール10が全て第一ケーブル16および第二ケーブル18で接続されると、図7に示すように、モジュール段36を構成する複数の電池モジュール10の両端部に配置された電池モジュール10,10のうち、一方の電池モジュール10の第一コネクタ20が未使用(未接続)の状態になり、他方の電池モジュール10の第二コネクタ22が未使用の状態になる。これらの未使用の第一コネクタ20および第二コネクタ22は、上下に配されたモジュール段36,36の電気的接続に用いられる。
例えば、図10に示す太陽電池アレイ1では、奇数段目のモジュール段36a,36cと、偶数段目のモジュール段36b,36dとが接続され、太陽電池ブロック38a,38b(以下、単に電池ブロック38a,38bとも称す)が形成されている。具体的には、奇数段目のモジュール段36a,36cの左端に配された電池モジュール10a,10cの第二ケーブル18が、偶数段目のモジュール段36b,36dの左端に配された電池モジュール10b,10dの電池パネル12の裏面を通され、電池モジュール10a,10cの第二コネクタ22と、電池モジュール10b,10dの第一コネクタ20とが接続される。
これにより、モジュール段36aおよびモジュール段36bに含まれる全ての電池モジュール10が並列に接続され、電池ブロック38aが形成される。また、モジュール段36cおよびモジュール段36dに含まれる全ての電池モジュール10についても並列に接続され、電池ブロック38bが形成される。電池ブロック38a,38bは、それぞれ電池モジュール10を20以上、電気的に並列接続して形成されたものである。また、電池ブロック38a,38bは、それぞれ構成する電池モジュール10の数量が同一とされている。以上のように形成された電池ブロック38a,38bは、引込ケーブル40によって電気的に直列に接続される。これにより、太陽電池アレイ1が構築される。
図11(a)に示すように、引込ケーブル40は、第一直列コネクタ42と、第二直列コネクタ44と、出力コネクタ46と、第一屋外ケーブル48と、第二屋外ケーブル50と、屋内側ケーブル52と、モールド部54と、を備えている。第一直列コネクタ42は、電池モジュール10の第一コネクタ20に接続されるものであり、第二直列コネクタ44は、電池モジュール10の第二コネクタ22に接続されるものである。出力コネクタ46は、屋内のパワーコンダクター(図示せず)に接続されて電池モジュール10の電池パネル12で変換された電力を出力するものである。第一屋外ケーブル48は、第一直列コネクタ42に接続されるものであり、第二屋外ケーブル50は、第二直列コネクタ44に接続されるものである。屋内側ケーブル52は、出力コネクタ46に接続されるものである。
第一直列コネクタ42、第二直列コネクタ44、および出力コネクタ46は、電池モジュール10の第一コネクタ20および第二コネクタ22と同一の構造である。また第一直列コネクタ42および出力コネクタ46は黒色であり、第二直列コネクタ44は白色である。
第一屋外ケーブル48、第二屋外ケーブル50、および屋内側ケーブル52は、電池モジュール10の第一ケーブル16および第二ケーブル18と同様に、絶縁チューブ48a,50a,52a内にプラス側芯線24とマイナス側芯線26が一本ずつ配されている。第一屋外ケーブル48および屋内側ケーブル52の絶縁チューブ48a,52aは黒色であり、第二屋外ケーブル50の絶縁チューブ50aは白色である。また、屋内側ケーブル52の出力コネクタ46近傍には、白色のビニールテープ56が巻き付けられている。これにより、屋内側ケーブル52および出力コネクタ46を瞬時に判別することが可能になる。
図11(b)に示すように、モールド部54においては、第一屋外ケーブル48、第二屋外ケーブル50、および屋内側ケーブル52が接続されている。さらに説明すると、第一屋外ケーブル48のプラス側芯線24と、第二屋外ケーブル50のマイナス側芯線26とが電気的に接続され、第一屋外ケーブル48のマイナス側芯線26と、屋内側ケーブル52のマイナス側芯線26とが電気的に接続され、第二屋外ケーブル50のプラス側芯線24と、屋内側ケーブル52のプラス側芯線24とが電気的に接続されている。
図10に示すように、引込ケーブル40を用いて、電池ブロック38aと電池ブロック38bとを直列に接続させる場合、引込ケーブル40の白色の第二直列コネクタ44は、電池ブロック38aを構成するモジュール段36bの右端の電池モジュール10fの黒色の第二コネクタ22に接続される。また引込ケーブル40の黒色の第一直列コネクタ42は、電池ブロック38bを構成するモジュール段36cの右端の電池モジュール10gの白色の第一コネクタ20に接続される。
すなわち、引込ケーブル40と、電池ブロック38a,38bとの接続は、隣接する電池モジュール10,10の接続と同様に、色彩の異なるコネクタ同士を接続させればよく、配線の誤接続が生じにくい。また上記のように、引込ケーブル40の電池ブロック38a,38bへの接続は、所定のコネクタ44,22,42,20を所定の組み合わせで接続させるだけであり、屋根Rの上で容易に作業を行うことができる。
ここで、本実施形態の電池ブロック38a,38bは、一枚で約100[V]の電圧を得ることができる電池モジュール10を複数、並列に接続したものである。そのため、電池ブロック38a,38b全体から得られる電圧も約100[V]である。太陽電池アレイ1は、2つの電池ブロック38a,38bを引込ケーブル40を用いて直列接続したものであり、様々な機器の定格電圧である約200[V]の電圧を出力可能である。
図10に示すように、電池ブロック38a,38bが直列に接続された状態で、モジュール段36aの右端の電池モジュール10eの第一コネクタ20、およびモジュール段36dの右端の電池モジュール10hの第二コネクタ22は、未使用(未接続)の状態である。本実施形態の電池モジュール10の太陽電池アレイ1では、これらの第一コネクタ20や第二コネクタ22に図11に示す端子保護部材58が取り付けられている。端子保護部材58は、ケーブルが接続されていない点を除き、電池モジュール10の第一コネクタ20や第二コネクタ22と略同一の構造である。本実施形態の電池モジュール10の太陽電池アレイ1は、端子保護部材58を未使用のコネクタ20,22に取り付けることで、未使用の第一コネクタ20や第二コネクタ22の端子28,30にゴミや水が付着するのを防止することができる。
また、上記したようにして実施される太陽電池アレイ1の敷設作業が中断した場合にも、未接続の第一コネクタ20又は第二コネクタ22に端子保護部材58を取り付けることにより、コネクタ20,22の端子28,30にゴミや水が付着するのを防止することが可能である。
以上のようにして図5に示すステップ5の作業が完了すると、作業者は、ステップ6において、引き込みケーブル40の屋内側ケーブル52を建物の屋内に引き込む。その後、周辺役物瓦の施工を行い(ステップ7)、屋根Rの掃除(ステップ8)を終えると、点検(ステップ9)を行った後、屋内で引込ケーブル40の結束を行い(ステップ10)、出力コネクタ46を図示しないパワーコンダクターの接続箱に接続させて(ステップ11)、一連の作業が終了する。
上記したように、本実施形態の電池モジュール10は、長手方向の長さが900〜1100[mm]であり、短手方向の長さが、240〜480[mm]である。そのため、電池モジュール10は、建物の屋根などのような敷設作業の作業性が悪い場所にも容易に搬入し、施工することができる。また、本実施形態の電池モジュール10は、長手方向の長さが、一般的な瓦の2倍程度の大きさであり、短手方向の長さが瓦と同程度である。そのため、上記した電池モジュール10は、横長(桁行方向に長い)の姿勢で屋根に配置することにより、瓦を横方向に順次並べて葺くのと同様の作業で設置でき、屋根への施工に適している。
上記したように、電池パネル12は、幅が7〜12[mm]で帯状の電池セル100を複数、並べて形成し、電気的に直列接続したものであり、構成が画一的である。また、このように形成することにより、電池パネル12は、その出力の個体差が少ない。そのため、上述したようにして太陽電池アレイ1を構築した場合に、各電池パネル12の出力の個体差に起因する太陽電池アレイ1全体の出力低下を最小限に抑制することができる。
上述したように、太陽電池パネル12を構成する各電池セル100は、幅が7〜12[mm]であり、その開放電圧が1.2〜1.5[V]とされている。そのため、電池パネル12や電池モジュール10の大きさを上述したような大きさとした場合に、その出力電圧を太陽電池アレイ1を構成するのに適した電圧とすることができる。
上記した太陽電池セル100は、薄膜光電変換ユニット106a,106bを積層したタンデム型のものであるため、入射光が持つエネルギーを最大限有効利用することができる。なお、上記実施形態では、太陽電池セル100として、薄膜光電変換ユニット106a,106bを積層した2段タンデム型(ハイブリッド型)のものを採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多段のn段タンデム型(n=3以上の整数)としてもよい。また、太陽電池セル100は、タンデム型のものに限らず、薄膜光電変換ユニット106a,106bのいずれか一方のみを備えた単層のものであってもよい。
上記実施形態では、9〜15[mA/cm2 ]の範囲で短絡電流を出力可能なものを太陽電池パネル12に採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該範囲を外れた短絡電流を出力可能なものであってもよい。
上記したように、本実施形態では、電池ブロック38a,38bのそれぞれが電池モジュール10を20以上、電気的に並列接続して構成されているため、仮に一部の電池モジュール10の出力が低下したとしても、太陽電池アレイ1全体の出力低下に及ぼす影響が小さい。そのため、上述した太陽電池アレイ1は、一部の電池モジュール10において出力低下があってもその影響を殆ど受けることなく、安定した出力性能を示すことができる。なお、上記実施形態では、電池モジュール10を20以上並列接続して電池ブロック38a,38bを構成した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電池ブロック38a,38bを構成する電池モジュール10の数は20よりも少なくてもよい。
上記した太陽電池アレイ1は、2つの電池ブロック38を直列接続することにより形成されたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多数の電池ブロック38を構成し、これらを直列接続したものであってもよい。
上記した電池モジュール10には、電池セル100において受光により発電する領域(有効発電領域)を電気的に絶縁するように分割する分割線が設けられていないが、本発明はこれに限定されるものではなく、図14に示すように電池モジュール10の長手方向に伸びる分割線118を一又は複数設けた構成としてもよい。かかる構成によれば、仮に特定の電池セル100の一部分が陰に差し掛かるなどして発電しなくなったとしても、ホットスポット現象によって電池モジュール10が劣化したり破損するのを回避できる。また、分割線118を設ければ、太陽電池アレイ1の敷設後にホットスポット現象によって各電池モジュール10の出力性能に個体差が生じ、これに起因して太陽電池ブロック38a,38bの出力バランスが崩れるのを防止し、正常に機能している電池モジュール10における出力を有効利用可能とすることができる。
分割線118は、電池セル100のいかなる場所を通過するように設けられてもよいが、家屋への設置状態において電池モジュール10の上端側(棟側)となる部分や、下端側(軒側)となる部分、すなわち電池モジュール10の短手方向一端側および下端側に偏在した位置に設けることが好ましい。かかる構成によれば、上方に配された他の電池モジュール10や瓦などによって陰になる棟側の部分や、ホコリやゴミが溜まりやすい軒側の部分においてホットスポット現象が発生するのを防止することができる。
以下さらに本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の実施形態で採用する瓦型太陽電池モジュールの斜視図である。図4は、図1の太陽電池モジュールのコネクタの断面図である。
瓦型太陽電池モジュール10は、集積型太陽電池であり、内部に複数の太陽電池セルが形成され全体として一つの太陽電池を構成するものである。
すなわち瓦型太陽電池モジュール10は、ガラス基板に導電膜や半導体膜が積層され、さらにこれに複数の溝を設けて多数の単体電池(セル)に分割し、各セルを電気的に直列に接続したものである。
瓦型太陽電池モジュール10は、図の様に長方形をしており、長手方向の中心部から二本のケーブル16,18が延設されている。
またケーブル16,18にはそれぞれコネクタ20,22が接続されている。
ケーブル16,18は長さに長短があり、一方が長く、他方が短い。具体的には、長い方のケーブル18は、その全長が瓦型太陽電池モジュール10の全長の50パーセント以上であり、短い方のケーブル16は、その全長が瓦型太陽電池モジュール10の全長の50パーセント未満である。
またケーブル16,18は色が違う。ケーブル16,18はいずれも電気的に絶縁された2系統の導線24,26(プラス側芯線24,マイナス側芯線26)を有するものである。より具体的には、2条の被覆導線24,26が同一の絶縁チューブ内に配されたケーブルである。
二本のケーブル16,18にはそれぞれコネクタ20,22が接続されている。コネクタ20,22は、色違いであるが構造は同一であり、図4の様に2本の端子28,30(ピン状端子28,ソケット状端子30)を持っている。
2本の端子28,30の内、一方のピン状端子28は、ピンであり、他方のソケット状端子30は、ソケットである。
またコネクタ20,22は、雌片32と雄片34とを有し、前記したピン状端子28は、雌片32内にあり、ソケット状端子30は雄片34にある。
コネクタ20,22は、互いに接続可能であり、一方の雌片32と他方の雄片34とが接合される。そのとき、各雌片32と雄片34の内部では、一方のピン状端子28と他方のソケット状端子30とが接続される。
そして本実施形態では、二本のケーブル16,18の2条の被覆導線24,26は、それぞれ瓦型太陽電池モジュール10内の太陽電池(以下端に太陽電池)の正極と負極に接続されている。すなわちケーブル18内の一方の被覆導線24は太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線26は太陽電池の負極に接続されている。同様にケーブル16内の一方の被覆導線24は太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線26は太陽電池の負極に接続されている。
したがって、コネクタ22の2本の端子28,30の一方は、太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線は太陽電池の負極に接続されている。同様にコネクタ20の2本の端子28,30の一方は、太陽電池の正極に接続され、他方の被覆導線は太陽電池の負極に接続されている。
ただしコネクタ20,22の2本の端子28,30の極性を比較すると、両者は反対極となっている。すなわち一方のコネクタ22では、ピン状端子28が正極であり、ソケット状端子30が負極であるのに対し、他方のコネクタ20では、ピン状端子28が負極であり、ソケット状端子30が正極である。
次に、上記した瓦型太陽電池モジュール10の敷設構造について説明する。
図7は、瓦型太陽電池モジュールを正確に配線した場合の概念図である。図8は、瓦型太陽電池モジュールを誤って配線した場合の概念図である。図9は、瓦型太陽電池モジュールを正確に配線した場合の回路図である。
上記した瓦型太陽電池モジュール10は、図7,8に示すように、横に並べて屋根等の構造物に敷設する。
そして隣接する瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ20,22を接続する。一つの瓦型太陽電池モジュール10に注目すると、当該瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ22と左隣の瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ20とを接続する。また瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ20と右隣の瓦型太陽電池モジュール10のコネクタ22とを接続する。
ケーブルの長短に注目して説明すると、当該瓦型太陽電池モジュール10の長いケーブル18のコネクタ22と左隣の瓦型太陽電池モジュール10の短いケーブル16のコネクタ20とを接続する。また瓦型太陽電池モジュール10の短いケーブル16のコネクタ20と右隣の瓦型太陽電池モジュール10の長いケーブル18のコネクタ22とを接続する。
その結果、図9に示すように、太陽電池が並列に接続される。
これに対して、接続方法を誤り、図8に示すように、長いケーブル18のコネクタ22同士を接続すると、他のコネクタ20が物理的に接続できなくなるので、作業者は接続の誤りに気づくこととなる。すなわち他方のコネクタ20は、短いケーブル16に接続されており、短いケーブル16は、瓦型太陽電池モジュール10の全長の半分に満たない。またケーブル16,18は、瓦型太陽電池モジュール10の中心部分から延びているので、短いケーブル16同士を接続しようとしても長さが足りず、両者を接続することができない。
したがって本実施形態の瓦型太陽電池モジュール10は、配線の誤りが起きえない。
次に本発明の瓦型太陽電池モジュール10を実際に屋根に敷設する際の手順について説明する。本発明の瓦型太陽電池モジュール10は、以下のマニュアルに則って屋根に敷設することが望ましい。
1 太陽電池アレイ
10 太陽電池モジュール
12 太陽電池パネル
38 太陽電池ブロック
100 太陽電池セル(電池セル)
118 分割線