JP2014082083A - 絶縁電線及びコイル - Google Patents
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Abstract
Description
導体と、前記導体の外周上に形成された絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位Aを分子構造の一部に有するポリイミド樹脂からなり、温度40℃、湿度95%の条件下における24時間後の吸水率が2.8%以下である、絶縁電線が提供される。
前記ポリイミド樹脂中の前記繰り返し単位Aと前記繰り返し単位Bとのモル比A:Bが90:10〜30:70である、第2の態様の絶縁電線が提供される。
第1〜第3の態様のいずれかの絶縁電線を用いて形成されているコイルが提供される。
以下に、本発明の一実施形態について説明をする。
ポリイミド塗料は、ポリアミック酸を含有している。ポリアミック酸は、カルボン酸無水物及びジアミンから合成され、分子内にアミド結合を有している。このポリアミック酸は、加熱により重合することで、所定の繰り返し単位を有するポリイミド樹脂となる。
ポリアミック酸Aは、カルボン酸無水物であるピロメリット酸無水物(PMDA)と、ジアミンである4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とから生成される。ポリアミック酸Aは、下記一般式(3)に示す構造を有している。
上記ポリイミド塗料は、イミド化してポリイミド樹脂となる際には温度40℃、湿度95%の条件下における24時間後の吸水率が2.8%以下となるように、上記ポリアミック酸Aとは異なる他のポリアミック酸をさらに含有することが好ましい。他のポリアミック酸は、加熱により、繰り返し単位Aとは異なる他の繰り返し単位となるポリアミック酸である。他のポリアミック酸としては、繰り返し単位Aと比較して極性が小さく、吸水率が低い繰り返し単位となるようなものであれば限定されず、例えば、以下に示すカルボン酸無水物とジアミンとから適宜選択されて合成されるものが挙げられる。
このようなポリアミック酸としては、s−BPDAとODAとから合成されるポリアミック酸Bとは異なるものであって、s−BPDAなどを除くカルボン酸無水物と、ジアミンであるODAとから合成されるものが挙げられる。具体的には、カルボン酸無水物として、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4´−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4´−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)などが例示され、また必要に応じ、ブタンテトラカルボン酸二無水物や5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、或いは上記例示したテトラカルボン酸無水物を水添した脂環式テトラカルボン酸二無水物類等を併用しても良い。
ポリイミド塗料は、カルボン酸無水物とジアミンとを溶剤に溶解し、ポリアミック酸を合成して製造する。ポリアミック酸A及びポリアミック酸Bを含有するポリイミド塗料を製造する場合、カルボン酸無水物としてポリアミック酸Aを構成するPMDA、及びポリアミック酸Bを構成するs−BPDAと、ジアミンとしてODAとを溶剤に溶解し、ポリアミック酸A及びポリアミック酸Bをそれぞれ合成して製造する。
次に、上記ポリイミド塗料を用いて形成される絶縁層を導体の外周上に備える絶縁電線について図1を参照しながら説明をする。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面を示す図である。
導体10としては、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線の他、銀等の他の金属線等が用いられる。導体10の断面形状は、特に限定されず、例えば図1に示すような円形状とすることができる。導体の導体径は特に限定されず、用途に応じて最適な数値が適宜選択される。
絶縁層11は、導体10を被覆して、絶縁電線1に所定の電気特性、機械的特性、耐熱性などを付与する。
絶縁層11は、導体10の外周上にポリイミド塗料を塗装し、例えば350〜500℃の炉で1〜2分焼付けすることを10〜20回程度繰り返して被膜厚を大きくすることで形成される。焼付けの際に、ポリイミド塗料に含有されるポリアミック酸がイミド化してポリイミド樹脂となる。本実施形態において、絶縁層11は、ポリアミック酸Aを含有するポリイミド塗料により形成されており、ポリアミック酸Aに由来する繰り返し単位Aを分子構造の一部に有するポリイミド樹脂からなる。また、絶縁層11は、温度40℃、湿度95%の条件下における24時間後の吸水率が2.8%以下となっている。これにより、絶縁層11は比誘電率が小さく、高いPDIVを示す。
本発明の一実施形態に係るコイルは、上記絶縁電線を用いて形成されている。絶縁電線は細径化することができるため、絶縁電線をより密に配線することで占積率の高いコイルとすることができる。また、絶縁電線は部分放電開始電圧が高いため、コイルには高電圧を印加して高出力化することができる。したがって、本実施形態のコイルは、高電圧で駆動される小型モータなどに用いることができる。
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
上記実施形態においては、導体10の外周上に絶縁層11を備える絶縁電線1について説明をしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、特定のポリイミド樹脂で構成される絶縁層11を第一の絶縁層11としたとき、図2に示すように、導体10と第一の絶縁層11との間に第二の絶縁層12を介在させてもよい。すなわち、導体10と第二の絶縁層12と第一の絶縁層11とを備える絶縁電線1と構成することもできる。導体10と第一の絶縁層11との間に第二の絶縁層12を介在させることにより、例えば密着性の高い第二の絶縁層12を介在させることで第一の絶縁層11のみでは不十分であった導体10との密着性を向上できる。
絶縁電線を製造するにあたり、以下に示す方法によって、ポリイミド樹脂からなる絶縁層の形成に用いるポリイミド塗料を調整した。
まず、溶剤のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3697.2gに、ジアミンである4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)437.5gを溶解させた。その後、溶剤のNMPに、カルボン酸無水物であるピロメリット酸無水物(PMDA)393.2gと、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)93.6gとを溶解させた。そして、窒素環境下において、室温で12時間撹拌しながら合成することにより、ポリアミック酸A及びポリアミック酸Bを含むポリイミド塗料を調整した。なお、ポリイミド塗料の塗装作業性を向上するため、塗料に溶剤を添加して希釈調整を行った。
実施例1では、PMDA、s−BPDA、及びODAのモル比を85:15:103として、ポリイミド樹脂における繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとのモル比が85:15となるようなポリイミド塗料を調整した。ポリイミド塗料の調整条件を以下の表1に示す。
次に、調整されたポリイミド塗料を用いて絶縁電線を製造した。
実施例1のポリイミド塗料を銅線(直径0.8mm)の外周に塗装して、450℃の塗装炉で90秒間焼き付けることを15回繰り返すことによって、厚さ40μmの絶縁層を備える実施例1の絶縁電線を得た。
次に、実施例1の絶縁電線について、部分放電開始電圧(PDIV)、吸水率、及び可撓性を評価した。以下、それぞれの評価方法について説明をする。
部分放電開始電圧(PDIV)は、25℃の恒温恒湿槽中で検出感度10pC、50Hzで測定した。
実施例1の絶縁電線のPDIVを測定したところ、920Vpであって、900Vp以上の高いPDIVを有することがわかった。
吸水率は、得られた絶縁電線を、温度40℃、湿度95%の環境下に24時間保管した後、絶縁層の吸水により増加した重量から算出した。
実施例1の絶縁電線の吸水率を測定したところ、吸水率は2.3%以下であって、吸水性が低いことがわかった。
可撓性は、製造した絶縁電線をJISC3003に準拠した方法によって伸張した後、この伸長した絶縁電線を、絶縁電線の導体径と同じ直径を有する巻き付け棒へJISC3003に準拠した方法で巻き付けを行い、光学顕微鏡を用いて絶縁層に亀裂、割れなどの欠陥の有無を観察した。評価は、絶縁電線を40%伸長したときに絶縁層に欠陥が確認されない場合を「◎」、絶縁電線を20%伸長したときに絶縁層に欠陥が確認されない場合を「○」とし、絶縁電線を20%伸長したときに絶縁層に欠陥が確認された場合を「×」として評価した。
実施例1の絶縁電線の可撓性を評価したところ、絶縁電線を40%伸長した場合であっても絶縁層に亀裂や割れ等の欠陥が確認されず、優れた可撓性を有することがわかった。
評価結果を以下の表2に示す。
実施例2〜5では、表1に示すように、カルボン酸無水物であるPMDA及びs−BPDAの添加量を適宜変更してポリイミド塗料を調整し、実施例1と同様に絶縁電線を製造した。
実施例2では、カルボン酸無水物であるPMDAを277.6g、s−BPDAを249.6g用いてポリイミド塗料を調整した。つまり、実施例2では、PMDA、s−BPDA、及びODAのモル比を60:40:103として、ポリイミド樹脂における繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとのモル比が60:40となるようなポリイミド塗料を調整した。
実施例3では、カルボン酸無水物であるPMDAを185.1g、s−BPDAを374.4g用いてポリイミド塗料を調整した。つまり、実施例3では、PMDA、s−BPDA、及びODAのモル比を40:60:103として、ポリイミド樹脂における繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとのモル比が40:60となるようなポリイミド塗料を調整した。
実施例4では、カルボン酸無水物であるPMDAを138.8g、s−BPDAを436.8g用いてポリイミド塗料を調整した。つまり、実施例4では、PMDA、s−BPDA、及びODAのモル比を30:70:103として、ポリイミド樹脂における繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとのモル比が30:70となるようなポリイミド塗料を調整した。
実施例5では、カルボン酸無水物であるPMDAを416.4g、s−BPDAを62.4g用いてポリイミド塗料を調整した。つまり、実施例5では、PMDA、s−BPDA、及びODAのモル比を90:10:103として、ポリイミド樹脂における繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとのモル比が90:10となるようなポリイミド塗料を調整した。
比較例1では、表1に示すように、カルボン酸無水物であるs−BPDAを用いずに、PMDAのみを用いてポリイミド塗料を調整した。具体的には、溶剤のNMP3600.4gに、ジアミンであるODA437.5gを溶解した後、カルボン酸無水物であるPMDA462.6gを溶解させて、窒素環境下において、室温で12時間撹拝しながら合成することにより、ポリイミド塗料を調整した。
比較例1では、PMDA及びODAのモル比を100:103として、繰り返し単位Aのみを含むポリイミド樹脂となるようなポリイミド塗料を調整した。
10 導体
11 絶縁層(第一の絶縁層)
12 第二の絶縁層
13 潤滑層
Claims (4)
- 前記ポリイミド樹脂中の前記繰り返し単位Aと前記繰り返し単位Bとのモル比A:Bが30:70〜90:10である
ことを特徴とする請求項2に記載の絶縁電線。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁電線を用いて形成されている
ことを特徴とするコイル。
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