JP2010189510A - 絶縁塗料及び絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、絶縁塗料及び絶縁電線に関する。特に、本発明は、ポリイミド樹脂からなる絶縁塗料及びポリイミド樹脂からなる絶縁塗料を用いた絶縁電線に関する。
近年、電気機器の小型化、高性能化に伴い、高電圧のインバータ制御を用いる電気機器が開発されている。電気機器をインバータ制御する場合、インバータ制御により発生するインバータサージ電圧が高いので、発生したインバータサージ電圧が電気機器に侵入する。この場合、電気機器に用いられている絶縁電線に部分放電が発生して、絶縁被膜が劣化することがある。
そこで、従来、導体表面に塗布焼付けして形成される絶縁被膜用の絶縁塗料であって、フッ素系ポリイミド樹脂からなる絶縁塗料が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の絶縁塗料によれば、特定のフッ素系ポリイミド樹脂から絶縁塗料を形成することにより比誘電率を低くできるので、大きな高周波電圧が印加された場合であっても絶縁被膜の耐劣化性を向上させることができる。
しかし、特許文献1に記載の絶縁塗料は、フッ素系ポリイミド樹脂から形成されるので絶縁被膜の誘電率を低くすることができるが、フッ素系ポリイミド樹脂から形成した絶縁被膜の導体への密着性が低いので、絶縁被膜が導体から剥離して導体と絶縁被膜との間で被膜浮きが発生することがあり、この場合、絶縁破壊が発生する。
したがって、本発明の目的は、耐熱性を有すると共に導体への密着性が高く、誘電率が低い絶縁被膜を形成できる絶縁塗料、及び当該絶縁塗料からなる絶縁電線を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、導体を被覆する絶縁被膜を形成する絶縁塗料であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有するポリイミド樹脂からなる絶縁塗料が提供される。
[一般式(1)において、X1は下記式(3)で表される芳香族エーテル構造を有する4価の芳香族基であり、Y1は芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基であり、一般式(2)において、X2は4価の脂環式基であり、Y2は脂環式構造を含む2価の脂環式基であり、一般式(1)及び一般式(2)において、m、nは繰り返し数であって、それぞれ正の整数である。]
また、上記絶縁塗料は、一般式(2)において、X2は下記式(4)、下記式(5)、及び下記式(6)からなる群から選択される4価の脂環式基であり、一般式(1)において、Y1は下記式(7)で表され、1≦p≦5である芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基であり、一般式(2)において、Y2は下記式(8)又は下記式(9)で表される脂環式構造を有する2価の脂環式基であってもよい。
また、上記絶縁塗料は、ポリイミド樹脂は、一般式(2)で表される繰り返し単位の数nに対する一般式(1)で表される繰り返し単位の数mの比が、1/3≦m/n≦3であってもよい。
また、本発明は、上記目的を達成するため、導体と、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂からなる絶縁塗料を前記導体上に塗布焼付けして形成される絶縁被膜とを備える絶縁電線が提供される。
[一般式(1)において、X1は下記式(3)で表される芳香族エーテル構造を有する4価の芳香族基であり、Y1は芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基であり、一般式(2)において、X2は4価の脂環式基であり、Y2は脂環式構造を含む2価の脂環式基であり、一般式(1)及び一般式(2)において、m、nは繰り返し数であって、それぞれ正の整数である。]
また、上記絶縁電線は、一般式(2)において、X2は下記式(4)、下記式(5)、及び下記式(6)からなる群から選択される4価の脂環式基であり、一般式(1)において、Y1は下記式(7)で表され、1≦p≦5である芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基であり、一般式(2)において、Y2は下記式(8)又は下記式(9)で表される脂環式構造を有する2価の脂環式基であってもよい。
また、上記絶縁電線は、導体と絶縁被膜との間に中間絶縁被膜を更に備えてもよい。
また、上記絶縁電線は、中間絶縁被膜は、導体の表面にシランカップリング剤を塗布焼付けすることにより形成されてもよい。
本発明に係る絶縁塗料及び絶縁電線によれば、耐熱性を有すると共に導体への密着性が高く、誘電率が低い絶縁被膜を形成できる絶縁塗料、及び当該絶縁塗料からなる絶縁電線を提供できる。
[実施の形態]
(絶縁塗料)
本発明の実施の形態に係る絶縁塗料は、無酸素銅、銅等の金属材料からなる導体を被覆する絶縁被膜を形成する絶縁塗料であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有するポリイミド樹脂から形成される。
(絶縁塗料)
本発明の実施の形態に係る絶縁塗料は、無酸素銅、銅等の金属材料からなる導体を被覆する絶縁被膜を形成する絶縁塗料であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有するポリイミド樹脂から形成される。
一般式(10)は、一般式(1)からなる繰り返し単位と一般式(2)からなる繰り返し単位とがブロック共重合体として含まれるポリイミド樹脂である。なお、本発明の実施の形態に係る絶縁塗料は、一般式(1)からなる繰り返し単位と一般式(2)からなる繰り返し単位とが交互共重合体、又はランダム共重合体として含まれるポリイミド樹脂とすることもできる。
ここで、一般式(1)において、X1は芳香族エーテル構造を有する4価の芳香族基である。また、一般式(1)のY1は芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基である。更に、一般式(2)において、X2は4価の脂環式基である。そして、一般式(2)においてY2は、脂環式構造を1つ以上含む2価の脂環式基である。なお、一般式(1)において、m、nは繰り返し数であって、それぞれ正の整数である。
具体的に、X1は下記式(3)で表される基を用いることができる。芳香族エーテル構造を有する4価の芳香族基X1としては、例えば、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)等に由来する基を用いることができる。
そして、一般式(1)において、Y1は下記式(7)で表され、1≦p≦5である芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基を用いることができる。芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基Y1としては、例えば、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(m−DDE)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(p−DDE)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシベンゼン)(APB)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等に由来する基を用いることができる。
そして、一般式(2)において、Y2は下記式(8)で表される脂環式構造を有する2価の脂環式基、又は下記式(9)で表される脂環式構造を有する2価の脂環式基を用いることができる。なお、下記式(8)においては、他の骨格との結合部位が2か所である基を用いる。
(一般式(1)について)
一般式(1)中の一般式(3)で表される基X1は、芳香族基が架橋員により相互に連結した非縮合多環式芳香族基である芳香族エーテル構造を有する4価の芳香族基である。したがって、共役系のπ電子の存在確率が酸素原子の部分で低いので電子の流れが遮断されやすい。これにより、一般式(3)で表される基を一般式(1)のX1に導入することにより、一般式(1)及び一般式(2)からなる化合物(例えば、一般式(10)で表される化合物)における電荷の偏りが低減され、本実施の形態に係る絶縁被膜の誘電率を低下させることができる。
一般式(1)中の一般式(3)で表される基X1は、芳香族基が架橋員により相互に連結した非縮合多環式芳香族基である芳香族エーテル構造を有する4価の芳香族基である。したがって、共役系のπ電子の存在確率が酸素原子の部分で低いので電子の流れが遮断されやすい。これにより、一般式(3)で表される基を一般式(1)のX1に導入することにより、一般式(1)及び一般式(2)からなる化合物(例えば、一般式(10)で表される化合物)における電荷の偏りが低減され、本実施の形態に係る絶縁被膜の誘電率を低下させることができる。
なお、本実施の形態に係る絶縁塗料からなる絶縁被膜を250℃以上の高温に曝すと、絶縁被膜の弾性率が低下する。そして、弾性率の低下に伴い、絶縁被膜の耐熱性が低下する。このような耐熱性の低下を抑制すべく、一般式(1)及び一般式(2)からなる化合物中に導入する芳香族エーテル構造(すなわち、一般式(3)で表される基)の量は、所定量以下にすることが好ましい。
一方、一般式(1)からなる化合物中に導入される一般式(7)で表される芳香族エーテル構造を有する2価の芳香族基Y1は、構造中に芳香族エーテル構造を有することに起因して、一般式(3)の場合と同様に、電子の流れが遮断されやすい。したがって、一般式(1)及び一般式(2)からなる化合物中における一般式(7)で表される基の量が増加すると、電荷の偏りが低減され、本実施の形態に係る絶縁被膜の誘電率を低下させることができる。特に、一般式(7)の繰り返し単位pを1≦p≦5の範囲に設定した場合、絶縁被膜の耐熱性と低誘電率特性とを両立できる絶縁塗料を提供できる。なお、一般式(1)からなる化合物において芳香族エーテル構造を有さない基を一般式(7)で表される基の代わりに用いた絶縁塗料の場合、十分な低誘電率特性を有する絶縁被膜が得られない。また、繰り返し単位pが5を超える基を有する絶縁被膜の場合、250℃領域での弾性率が極端に低下することに伴い流動性のある熱可塑性樹脂として振る舞うため、十分な耐熱性を有する絶縁塗料が得られない場合がある。
(一般式(2)について)
一般式(2)中の4価の脂環式基X2としては、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BCD)、ビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA−H)等に由来する基を用いることができる。具体的に、一般式(4)で表される基がCBDAに由来する基であり、一般式(5)で表される基がCPDAに由来する基であり、一般式(6)で表される基がBCD又はBTA−Hに由来する基である。
一般式(2)中の4価の脂環式基X2としては、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BCD)、ビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA−H)等に由来する基を用いることができる。具体的に、一般式(4)で表される基がCBDAに由来する基であり、一般式(5)で表される基がCPDAに由来する基であり、一般式(6)で表される基がBCD又はBTA−Hに由来する基である。
また、一般式(2)中の脂環式構造を1つ以上含む2価の脂環式基Y2としては、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DMHM)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DAHM)等に由来する基を用いることができる。具体的に、一般式(8)で表される基がDMHMに由来する基であり、一般式(9)で表される基がDAHMに由来する基である。
ここで、一般式(4)乃至一般式(6)で表される基X2と、一般式(8)又は一般式(9)で表される基Y2とを用いることで、一般式(1)と一般式(2)とからなる化合物の誘電率を低くすることができる。
具体的に、基X2について説明する。基X2は4価の脂環式基であるので、基X2を含む絶縁塗料中において、例えば、一般式(10)で表されるような高分子鎖間におけるπ−π電子の積み重なり等の高分子相互作用を減少させることができる。また、基X2の化学構造上、基X2においては電荷移動が発生しない。更に、基X2には芳香環が含まれていないので、分子分極率も芳香環を有した基に比べて小さくできると共に、屈折率も小さくできる。これにより、材料の誘電率をε、屈折率をnとした場合のマクスウエルの式が「ε=n2」であることから、本実施の形態に係る絶縁塗料中に基X2を含ませることにより、当該絶縁塗料の誘電率を低下させることができる。
なお、ポリイミド樹脂からなる絶縁塗料中に不飽和炭化水素の成分が所定量以上になると、絶縁塗料の極性が低下する。この場合、当該絶縁塗料を、例えば、銅からなる導体に塗布することにより絶縁被膜を形成すると、当該絶縁被膜の誘電率は低いものの極性の高い銅に対する絶縁被膜の密着性の向上に限度がある。したがって、本実施の形態においては、一般式(4)乃至一般式(6)で表される基X2、及び一般式(8)又は一般式(9)で表される基Y2の一般式(2)中に占める割合は、所定の割合以下にすることが好ましい。
(一般式(1)の繰り返し単位と一般式(2)の繰り返し単位との関係)
一般式(1)及び一般式(2)からなる絶縁塗料を用いて形成された絶縁被膜の耐熱性と低誘電率特性との両立を図るべく、一般式(2)で表される繰り返し単位の数nに対する一般式(1)で表される繰り返し単位の数mの比は、1/3≦m/n≦3にすることが好ましい。
一般式(1)及び一般式(2)からなる絶縁塗料を用いて形成された絶縁被膜の耐熱性と低誘電率特性との両立を図るべく、一般式(2)で表される繰り返し単位の数nに対する一般式(1)で表される繰り返し単位の数mの比は、1/3≦m/n≦3にすることが好ましい。
(絶縁塗料の製造方法)
本実施の形態に係る絶縁塗料は、溶剤中に複数の出発物質を添加して、所定の条件下で出発物質を反応させて合成することができる。なお、樹脂塗料は、樹脂と溶剤とから構成される。
本実施の形態に係る絶縁塗料は、溶剤中に複数の出発物質を添加して、所定の条件下で出発物質を反応させて合成することができる。なお、樹脂塗料は、樹脂と溶剤とから構成される。
溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、スルホラン、アニソール、ジオキソラン、ブチルセルソルブアセテート、ラクトン系等の有機溶剤を単独で用いるか、又は2種類以上の混合溶剤として用いることができる。
(絶縁電線)
図1Aは、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の断面を示す。
図1Aは、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の断面を示す。
本実施の形態に係る絶縁電線1は、無酸素銅、銅等の金属材料からなる導体10と、導体10を被覆する絶縁被膜20とを備える。絶縁被膜20は、本実施の形態に係る絶縁塗料から形成される。具体的には、合成した樹脂塗料を導体10の周囲に塗布、焼付けすることにより、本実施の形態に係る絶縁塗料からなる絶縁被膜20を形成して、絶縁被膜20を備える絶縁電線1を製造することができる。なお、絶縁電線1は、その最外層に自己潤滑性絶縁被膜を更に備えることもできる。自己潤滑性絶縁被膜は、例えば、ポリアミドイミド樹脂に、カルナバロウ等の潤滑剤を添加した絶縁塗料から形成することができる。
図1Bは、本発明の実施の形態の変形例に係る絶縁電線の断面を示す。
本実施の形態の変形例に係る絶縁電線1aは、図1Aに示す絶縁電線1の外周に、更に他の絶縁被膜を1層又は複数層形成することにより構成される。例えば、絶縁被膜の耐熱性を向上させることを目的として、絶縁被膜20の外周にポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等からなる絶縁被膜を、1層、又は2層以上形成することができる。例えば、図1Bに示す絶縁電線1aは、絶縁被膜20の外周に第1の外部絶縁被膜22が形成され、第1の外部絶縁被膜22の外周に第2の外部絶縁被膜24が形成されて構成される。なお、第1の外部絶縁被膜22及び第2の外部絶縁被膜24はそれぞれ、1層又は複数層の絶縁被膜を含んで形成することもできる。
また、図示は省略するが、潤滑性を向上させることを目的として、絶縁被膜20の外周に潤滑性を有する絶縁被膜を更に形成することもできる。また、絶縁電線1aの最外周に、潤滑性を有する絶縁被膜を更に形成することもできる。
図2は、本発明の実施の形態の他の変形例に係る絶縁電線の断面を示す。
実施の形態の他の変形例に係る絶縁電線2を製造する場合において、導体10と絶縁被膜20との密着性を更に向上させることを目的として、導体10と絶縁被膜20との間にシランカップリング剤からなる中間絶縁被膜30を設けることもできる。例えば、導体10表面にシランカップリング剤を塗布後、加熱することで、導体10表面にシランカップリング剤から形成される中間絶縁被膜30を形成できる。そして、中間絶縁被膜30上に本実施の形態に係る絶縁塗料を塗布、焼付けすることにより、絶縁電線2を製造することができる。また、絶縁電線1と同様に絶縁電線2は、その最外層に自己潤滑性絶縁被膜を更に備えることもできる。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。
なお、本実施の形態に係る絶縁電線1、1a、2は、モータ、変圧器等の電気機器に用いられるコイルに適用できる。例えば、絶縁電線1、1a、2は、複数の絶縁電線の端末同士を溶接等によって接合してつなぎ合わせることによって形成されるコイルに適用できる。
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る絶縁塗料によれば、一般式(1)及び一般式(2)を有すると共に、一般式(3)乃至(9)で表される基を有する絶縁塗料を提供できるので、ポリイミド樹脂の耐熱性を維持しつつ、導体に対する密着性が高く、誘電率が低い絶縁被膜を形成することができる。したがって、本実施の形態に係る絶縁塗料によれば、絶縁被膜の部分放電開始電圧の高い絶縁被膜を形成できるので、部分放電の発生の抑制、部分放電による絶縁被膜の劣化の抑制をすることができ、例えば、インバータ制御される電気機器(一例として、モータのコイル等)の寿命を長くすることができる。
本実施の形態に係る絶縁塗料によれば、一般式(1)及び一般式(2)を有すると共に、一般式(3)乃至(9)で表される基を有する絶縁塗料を提供できるので、ポリイミド樹脂の耐熱性を維持しつつ、導体に対する密着性が高く、誘電率が低い絶縁被膜を形成することができる。したがって、本実施の形態に係る絶縁塗料によれば、絶縁被膜の部分放電開始電圧の高い絶縁被膜を形成できるので、部分放電の発生の抑制、部分放電による絶縁被膜の劣化の抑制をすることができ、例えば、インバータ制御される電気機器(一例として、モータのコイル等)の寿命を長くすることができる。
以下、実施例により本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
実施例1に係る絶縁塗料は、以下の手順により合成した。まず、攪拌機を取り付けた5lのセパラブル3つ口フラスコに、シリコンコック付きトラップを備えた玉付冷却管を装着した。続いて、ビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA−H、分子量:250.2)125.1gと、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DMHM、分子量:238.42)119.2gと、N−メチル−2−ピロリドン(分子量:99.1)1466gとを秤量した。そして、秤量した各材料をフラスコ中に添加した。その後、攪拌機の回転数を180rpmに設定して、180℃下で8時間反応させた(第1の反応工程)。続いて、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA、分子量:310.21)155.1gと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(p−DDE、分子量:200.2)100.1gと、N−メチル−2−ピロリドン2041gとを秤量して、フラスコ中に更に添加した。そして、攪拌機の回転数を180rpmに設定して、室温下で5時間反応させた(第2の反応工程)。その後、無水マレイン酸20gを更にフラスコ中に添加して、室温下で5時間反応させることにより(第3の反応工程)、実施例1に係る絶縁塗料としてのポリイミド前駆体樹脂を合成した。
次に、断面が丸形状の銅からなる導体の表面に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、品番:KBE−903)の1%水溶液を塗布した(シランカップリング剤塗布工程)。次に、当該導体を遠赤外加熱炉に設置して、100℃、5分間の加熱を施した(シランカップリング剤加熱工程)。これにより、導体の表面に1μm厚の中間絶縁被膜を形成した。
続いて、中間絶縁被膜の周囲に実施例1に係るポリイミド前駆体樹脂を塗布した。具体的には、中間絶縁被膜が設けられた導体を塗出ダイスに通すことにより実施例1に係るポリイミド前駆体樹脂を塗布した(塗布工程)。続いて、240℃の温度で1分間の焼成処理(第1の焼成工程)と、340℃の温度で1分間の焼成処理(第2の焼成工程)とを続けて実施することにより、導体の表面にポリイミド樹脂からなる被膜を形成した。更に、塗布工程、第1の焼成工程、及び第2の焼成工程を14回繰り返した。これにより、導体の表面に厚さが31μmの絶縁被膜が設けられた実施例1に係るエナメル線としての絶縁電線を作製した。
実施例2に係る絶縁塗料は、実施例1に係る絶縁塗料とは、第1の反応工程において3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの代わりに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DAHM、分子量:210.4)を105.2g添加した点を除き、実施例1と同様にして合成した。また、実施例2に係る絶縁電線は、実施例2に係る絶縁塗料を用いて実施例1に係る絶縁電線の工程と同一の工程により作製した。
実施例3に係る絶縁塗料は、実施例1に係る絶縁塗料とは、第1の反応工程においてビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の添加量を187.7gにして、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの添加量を59.6gにすると共に、第2の反応工程において4,4’−オキシジフタル酸二無水物の添加量を77.6gにして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの添加量を150.2gにした点を除き、実施例1と同様にして合成した。また、実施例3に係る絶縁電線は、実施例3に係る絶縁塗料を用いて実施例1に係る絶縁電線の工程と同一の工程により作製した。
実施例4に係る絶縁塗料は、実施例1に係る絶縁塗料とは、第1の反応工程においてビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の添加量を62.6gにして、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの添加量を178.9gにすると共に、第2の反応工程において4,4’−オキシジフタル酸二無水物の添加量を232.7gにして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの添加量を50.05gにした点を除き、実施例1と同様にして合成した。また、実施例4に係る絶縁電線は、実施例4に係る絶縁塗料を用いて実施例1に係る絶縁電線の工程と同一の工程により作製した。
実施例5に係る絶縁塗料は、実施例1に係る絶縁塗料とは、第1の反応工程においてビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の添加量を62.6gにして、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの代わりに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンを157.8g添加すると共に、第2の反応工程において4,4’−オキシジフタル酸二無水物の添加量を232.7gにして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの添加量を50.05gにした点を除き、実施例1と同様にして合成した。また、実施例5に係る絶縁電線は、実施例5に係る絶縁塗料を用いて実施例1に係る絶縁電線の工程と同一の工程により作製した。
実施例6に係る絶縁塗料は、実施例1に係る絶縁塗料とは、第1の反応工程においてビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の添加量を62.6gにして、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの添加量を178.9gにすると共に、第2の反応工程において4,4’−オキシジフタル酸二無水物の添加量を232.7gにして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの添加量を73.1gにした点を除き、実施例1と同様にして合成した。また、実施例6に係る絶縁電線は、実施例6に係る絶縁塗料を用いて実施例1に係る絶縁電線の工程と同一の工程により作製した。
(比較例1)
比較例1に係る絶縁塗料は、以下の手順により合成した。まず、攪拌機を取り付けた5lのセパラブル3つ口フラスコに、シリコンコック付きトラップを備えた玉付冷却管を装着した。続いて、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量:310.21)310.2gと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(p−DDE、分子量:200.2)200.2gと、N−メチル−2−ピロリドン(分子量:99.1)2041gとをそれぞれ秤量した。そして、秤量した各材料をフラスコ中に添加した。その後、攪拌機の回転数を180rpmに設定して、室温下で5時間反応させた。続いて、無水マレイン酸20gを更にフラスコ中に添加して、室温下で5時間反応させることにより、比較例1に係る絶縁塗料としてのポリイミド前駆体樹脂を合成した。
比較例1に係る絶縁塗料は、以下の手順により合成した。まず、攪拌機を取り付けた5lのセパラブル3つ口フラスコに、シリコンコック付きトラップを備えた玉付冷却管を装着した。続いて、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量:310.21)310.2gと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(p−DDE、分子量:200.2)200.2gと、N−メチル−2−ピロリドン(分子量:99.1)2041gとをそれぞれ秤量した。そして、秤量した各材料をフラスコ中に添加した。その後、攪拌機の回転数を180rpmに設定して、室温下で5時間反応させた。続いて、無水マレイン酸20gを更にフラスコ中に添加して、室温下で5時間反応させることにより、比較例1に係る絶縁塗料としてのポリイミド前駆体樹脂を合成した。
次に、実施例1の場合と同様にして、厚さが31μmであり、比較例1に係る絶縁塗料からなる絶縁被膜が設けられた比較例1に係る絶縁電線を作成した。
(比較例2)
比較例2に係る絶縁塗料は、比較例1に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DMHM、分子量:238.42)を238.4g添加した点を除き、比較例1と同様にして合成した。また、比較例2に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例2に係る絶縁電線を作成した。
比較例2に係る絶縁塗料は、比較例1に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DMHM、分子量:238.42)を238.4g添加した点を除き、比較例1と同様にして合成した。また、比較例2に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例2に係る絶縁電線を作成した。
(比較例3)
比較例3に係る絶縁塗料は、比較例1に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに1,4−フェニレンジアミン(p−PPD、分子量:108.12)を108.1g添加した点を除き、比較例1と同様にして合成した。また、比較例3に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例3に係る絶縁電線を作成した。
比較例3に係る絶縁塗料は、比較例1に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに1,4−フェニレンジアミン(p−PPD、分子量:108.12)を108.1g添加した点を除き、比較例1と同様にして合成した。また、比較例3に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例3に係る絶縁電線を作成した。
(比較例4)
比較例4に係る絶縁塗料は、以下の手順により合成した。まず、攪拌機を取り付けた5lのセパラブル3つ口フラスコに、シリコンコック付きトラップを備えた玉付冷却管を装着した。続いて、ビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA−H、分子量:250.2)250.2gと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2gと、N−メチル−2−ピロリドン(分子量:99.1)2041gとをそれぞれ秤量した。そして、秤量した各材料をフラスコ中に添加した。その後、攪拌機の回転数を180rpmに設定して、室温下で5時間反応させた。続いて、無水マレイン酸20gを更にフラスコ中に添加して、室温下で5時間反応させることにより、比較例4に係る絶縁塗料としてのポリイミド前駆体樹脂を合成した。また、比較例4に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例4に係る絶縁電線を作成した。
比較例4に係る絶縁塗料は、以下の手順により合成した。まず、攪拌機を取り付けた5lのセパラブル3つ口フラスコに、シリコンコック付きトラップを備えた玉付冷却管を装着した。続いて、ビシクロ(2,2,2)オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA−H、分子量:250.2)250.2gと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2gと、N−メチル−2−ピロリドン(分子量:99.1)2041gとをそれぞれ秤量した。そして、秤量した各材料をフラスコ中に添加した。その後、攪拌機の回転数を180rpmに設定して、室温下で5時間反応させた。続いて、無水マレイン酸20gを更にフラスコ中に添加して、室温下で5時間反応させることにより、比較例4に係る絶縁塗料としてのポリイミド前駆体樹脂を合成した。また、比較例4に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例4に係る絶縁電線を作成した。
(比較例5)
比較例5に係る絶縁塗料は、比較例4に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DMHM、分子量:238.42)を238.4g添加した点を除き、比較例4と同様にして合成した。また、比較例5に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例5に係る絶縁電線を作成した。
比較例5に係る絶縁塗料は、比較例4に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DMHM、分子量:238.42)を238.4g添加した点を除き、比較例4と同様にして合成した。また、比較例5に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例5に係る絶縁電線を作成した。
(比較例6)
比較例6に係る絶縁塗料は、比較例4に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DAHM、分子量210.4)を210.4g添加した点を除き、比較例4と同様にして合成した。また、比較例6に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例6に係る絶縁電線を作成した。
比較例6に係る絶縁塗料は、比較例4に係る絶縁塗料とは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DAHM、分子量210.4)を210.4g添加した点を除き、比較例4と同様にして合成した。また、比較例6に係る絶縁塗料を用いて、実施例1と同様にして比較例6に係る絶縁電線を作成した。
(特性評価)
実施例1〜6、及び比較例1〜6に係る絶縁電線用の絶縁塗料の特性を、以下の各項目について評価した。なお、比較例5及び6に係る絶縁塗料については、フィルム状に加工することができなかった。したがって、以下の特性評価は、実施例1〜6、及び比較例1〜4のそれぞれに係る絶縁塗料について実施した。なお、下記表1及び表2においてフィルム状に加工できた絶縁塗料については「可」、加工できなかった絶縁塗料については「不可」とした。
実施例1〜6、及び比較例1〜6に係る絶縁電線用の絶縁塗料の特性を、以下の各項目について評価した。なお、比較例5及び6に係る絶縁塗料については、フィルム状に加工することができなかった。したがって、以下の特性評価は、実施例1〜6、及び比較例1〜4のそれぞれに係る絶縁塗料について実施した。なお、下記表1及び表2においてフィルム状に加工できた絶縁塗料については「可」、加工できなかった絶縁塗料については「不可」とした。
(1)可撓性評価(180°耐折性)
実施例1〜6、及び比較例1〜6に係る絶縁塗料を用いてフィルム状の試験短冊片をそれぞれ作成した(なお、比較例5及び6については作成を試みたが、作成できなかった)。試験短冊片のサイズは、2mm×100mmとした。そして、試験短冊片を180°折り曲げ、10回の折り曲げを繰り返した後の割れの発生の有無を評価した。割れの発生がある場合を「割れ発生」(不合格)、割れの発生がない場合を「良好」(合格)とした。
実施例1〜6、及び比較例1〜6に係る絶縁塗料を用いてフィルム状の試験短冊片をそれぞれ作成した(なお、比較例5及び6については作成を試みたが、作成できなかった)。試験短冊片のサイズは、2mm×100mmとした。そして、試験短冊片を180°折り曲げ、10回の折り曲げを繰り返した後の割れの発生の有無を評価した。割れの発生がある場合を「割れ発生」(不合格)、割れの発生がない場合を「良好」(合格)とした。
(2)ガラス転移温度の評価
実施例1〜6、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料から30mm×5mmサイズのフィルムをそれぞれ作成した。そして、作成した各フィルムについて、動的粘弾性装置(アイティー計測制御(株)製DVA−200)を用い、周波数10Hz、昇温速度3℃/分の条件で室温から400℃までの温度領域において弾性率を測定した。そして、測定した弾性率の変曲点をガラス転移温度とした。
実施例1〜6、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料から30mm×5mmサイズのフィルムをそれぞれ作成した。そして、作成した各フィルムについて、動的粘弾性装置(アイティー計測制御(株)製DVA−200)を用い、周波数10Hz、昇温速度3℃/分の条件で室温から400℃までの温度領域において弾性率を測定した。そして、測定した弾性率の変曲点をガラス転移温度とした。
(3)銅密着力評価
密着力評価用の銅基板を準備した。そして、準備した銅基板に実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料をそれぞれ塗布、焼き付けて、幅10mmの短冊状試験片を作成した。そして、各短冊状試験片についてテンシロン測定機を用いて引張強さを測定することにより密着力を評価した。
密着力評価用の銅基板を準備した。そして、準備した銅基板に実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料をそれぞれ塗布、焼き付けて、幅10mmの短冊状試験片を作成した。そして、各短冊状試験片についてテンシロン測定機を用いて引張強さを測定することにより密着力を評価した。
(4)誘電率評価
実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料のそれぞれからフィルム状に成型した2mm×100mmの試験短冊片を空洞共振器摂動法(アジレント社製、S−パラメータネットワークアナライザ8720ES)を用い、周波数10GHzの誘電率を測定した。
実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料のそれぞれからフィルム状に成型した2mm×100mmの試験短冊片を空洞共振器摂動法(アジレント社製、S−パラメータネットワークアナライザ8720ES)を用い、周波数10GHzの誘電率を測定した。
(5)絶縁破壊電圧評価
実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料のそれぞれから作成した絶縁電線用被膜を黄銅製の平行平板電極30mmφで挟み、初期1kV荷電から0.5kV/minで昇圧して課電し、絶縁破壊時の電圧を測定した。
実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料のそれぞれから作成した絶縁電線用被膜を黄銅製の平行平板電極30mmφで挟み、初期1kV荷電から0.5kV/minで昇圧して課電し、絶縁破壊時の電圧を測定した。
(6)400kV/m課電後の外観評価
実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料を用いて製造した絶縁電線のそれぞれを黄銅製の平行平板電極30mmφで挟み、初期1kV荷電から0.5kV/minの割合で12.4kVの電圧まで昇圧させた後、絶縁被膜の外観を走査型電子顕微鏡で観察して、亀裂の有無を観察することにより評価した。なお、絶縁被膜の厚さは31μmとした。亀裂がある場合を「不良(荒れ)」(不合格)、亀裂がない場合を「良好」(合格)とした。
実施例1〜3、及び比較例1〜4に係る絶縁塗料を用いて製造した絶縁電線のそれぞれを黄銅製の平行平板電極30mmφで挟み、初期1kV荷電から0.5kV/minの割合で12.4kVの電圧まで昇圧させた後、絶縁被膜の外観を走査型電子顕微鏡で観察して、亀裂の有無を観察することにより評価した。なお、絶縁被膜の厚さは31μmとした。亀裂がある場合を「不良(荒れ)」(不合格)、亀裂がない場合を「良好」(合格)とした。
以上の各評価の結果を、表1及び表2に示す。具体的に、表1には、実施例1〜6に係る絶縁塗料及び絶縁電線の特性評価の結果を示す。なお、表1及び表2において各基の添加量は、各絶縁塗料の製造において秤量した各基を含む各材料のモル数を示した。
また、表2には、比較例1〜6に係る絶縁塗料及び絶縁電線の特性評価の結果を示す。
以上、実施例1〜6によれば、各特性評価の全てにおいて良好な絶縁被膜が得られることが示された。また、実施例1〜6に係る絶縁被膜は、耐熱性の向上、密着力の向上と共に、誘電率を低くすることができるので、部分放電開始電圧を高くすることができる。したがって、高いインバータサージ電圧が実施例1〜6に係る絶縁被膜を備える絶縁電線に侵入したとしても、部分放電の発生を抑制できるので、絶縁被膜の劣化を抑制できる。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
1、2 絶縁電線
10 導体
20 絶縁被膜
22 第1の外部絶縁被膜
24 第2の外部絶縁被膜
30 中間絶縁被膜
10 導体
20 絶縁被膜
22 第1の外部絶縁被膜
24 第2の外部絶縁被膜
30 中間絶縁被膜
Claims (7)
- 前記ポリイミド樹脂は、前記一般式(2)で表される繰り返し単位の数nに対する前記一般式(1)で表される繰り返し単位の数mの比が、1/3≦m/n≦3である請求項2に記載の絶縁塗料。
- 前記導体と前記絶縁被膜との間に中間絶縁被膜を更に備える請求項5に記載の絶縁電線。
- 前記中間絶縁被膜は、前記導体の表面にシランカップリング剤を塗布焼付けすることにより形成される請求項6に記載の絶縁電線。
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