JP2013028018A - ガスバリアフィルム及びデバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を有するフィルム及びこのフィルムを用いたデバイスを提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも一方の面にアンカー層2を介して、厚み方向の少なくとも一部の領域において、下記(1)及び/又は(2)の特性を有する酸化アルミニウムの蒸着層3を形成する。(1)酸化アルミニウム(AlxOy)の組成比(y/x)のピークが2.1〜3.0にある(2)酸化アルミニウムの密度が3.4g/cm以上である
【選択図】図1

Description

本発明は、優れたガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を有するフィルム及びこのフィルムをガスバリア性部材として含むデバイス(例えば、液晶素子、薄膜太陽電池素子、有機EL素子、電子ペーパーなどの電子デバイス)に関する。
基材フィルムを金属又は金属化合物の薄膜で被覆することにより、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性を改善させる試みが従来から行われている。例えば、特開2005−178137号公報(特許文献1)には、基材フィルムの少なくとも一方の面に、平滑な表面を有するバリア性蒸着層が積層され、このバリア性蒸着層上に、平滑な表面を有する耐酸性の保護層が積層されたガスバリアフィルムが開示されている。この文献には、蒸着層の上に保護層としてアクリレート樹脂を積層することが記載されている。しかし、この技術で達成できる水蒸気透過度としては0.1g/m/day程度であり、有機EL素子、電子ペーパーなどの電子デバイスに用いるには水蒸気バリア性が不足していた。
また、特表2005−528250号公報(特許文献2)には、(i)フレキシブル基板と、(ii)フレキシブル基板上に堆積された基礎バリア層、及び基礎バリア層上に堆積された有機層を備える基礎スタックと、(iii)基礎スタック上に堆積され、かつバリアスタックバリア層、及びバリアスタックバリア層上に堆積された有機層を備えるバリアスタックと、(iv)バリアスタック上に堆積された最上分離層とを含む多層バリアコーティングが開示されている。この文献には、有機層はアクリレート系有機材料を含んでいてもよいことが記載されている。この技術では、基礎バリア層、及び基礎バリア層上に堆積された有機層を備える基礎スタックと、基礎スタック上に堆積され、かつバリアスタックバリア層、及びバリアスタックバリア層上に堆積された有機層というように蒸着層と有機層を積層することにより高いバリア性を得ている。しかし、工程が非常に煩雑であり、1×10−4g/m/day程度の水蒸気透過度を得るためには10層以上の層を構成する必要があり、実用的ではなかった。
さらに、特開2004−9395号公報(特許文献3)には、樹脂基材上に、少なくとも無機物層/有機物層/無機物層で構成されたバリア膜を有する透明水蒸気バリアフィルムにおいて、有機物層がアクリロイル基以外に少なくとも1つ以上の極性基を有するジアクリレートを架橋させてなる樹脂を主成分とする透明水蒸気バリアフィルムが開示されている。しかし、このフィルムは、水蒸気バリア性が未だ不充分である。また、このフィルムは、無機材料層を蒸着で形成し、その無機材料層の上に有機材料層を蒸着で形成することにより、透明性を向上できるものの、生産性が低い。
一方、金属又は金属化合物を含む蒸着層が、アクリル樹脂層を介して、基材フィルムに積層されたガスバリアフィルムも知られている。例えば、特開平10−278167号公報(特許文献4)には、樹脂フィルムの片面に、真空紫外線硬化法により形成されたアクリル樹脂層、及び金属または金属化合物の蒸着薄膜が順次積層されたバリアー性積層体が開示されている。この文献には、アクリル系モノマー又はオリゴマーが広範に記載されており、ウレタンアクリレートやシリコーンアクリレートも例示されている。しかし、このバリアー性積層体は、水蒸気透過度を未だ十分に低減できず、ガスバリア性を大きく改善できない。例えば、この文献の実施例では、バリアー性積層体の水蒸気透過度(40℃、90%RH)は0.4g/m/dayであり、近年デバイス部材として要求されるガスバリア性に対して充分ではない。
また、特開2005−313560号公報(特許文献5)には、可撓性基材の片面又は両面に、前記基材に近い側から重合成分としてアクリル系モノマー及び/又はアクリル系重合性プレポリマーのみを含むUV硬化性樹脂の硬化物からなる厚さ0.1〜10μmのアクリル系樹脂層、及び厚さ20〜100nmの無機バリア層が順次積層した積層構造が、前記基材に対して直接、1回のみ又は2回以上繰り返し積層されているガスバリア性フィルムが開示されている。この文献には、アクリル系モノマー又はアクリル系重合性プレポリマーが広範に記載され、ウレタンアクリレートやシリコーンアクリレートも例示されている。しかし、このガスバリア性フィルムも水蒸気バリア性が充分ではない。例えば、この文献の実施例でも、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度(40℃、100%RH)は0.49g/m/dayである。特に、基材フィルムの両面に、アクリル系樹脂層を介して無機バリア層が形成されたガスバリア性フィルムであっても、水蒸気透過度(40℃、100%RH)は、0.09g/m/dayである。
特開2005−7741号公報(特許文献6)には、少なくとも基材上に、無機酸化物層(A)と、分子内に三個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物(B)及び分子内にアルコキシシリル基を持つ(メタ)アクリル化合物(C)を含む(メタ)アクリル樹脂層(D)とが積層された積層体が開示されている。この文献の実施例では、ポリエーテルスルホン(PES)フィルムの上に、2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含む(メタ)アクリル化合物をフラッシュ蒸着させた(メタ)アクリル樹脂層(D)と、酸化アルミニウムを蒸着させた無機酸化物層(A)とを順次交互に連続して3層ずつ積層した積層体を得ている。この積層体の水蒸気透過度(40℃、90%RH)は、0.01g/m/day未満である。しかし、未だガスバリア性は充分でない。
他方、無機物であれば高いバリア性(特に、水蒸気バリア性)を有することも知られており、例えば、20μm以上の厚みを有しているアルミニウム箔であれば、水蒸気透過度は事実上0となる。しかし、このような金属そのものは不透明であり、有機EL素子、電子ペーパーなどの視認性を有する電子デバイスの表面素材としては用いることができない。
ガラスも非常に高いバリア性を有する。このため、現状では有機EL素子、電子ペーパーなどの電子デバイスに用いるには水蒸気バリア性の要求を満たし、かつ透明である唯一の素材となっている。しかし、ガラスは硬く、曲げ難く、かつ割れやすいという欠点があり、電子デバイスの加工においてロール状に巻いて保管や工程での使用ができない。このため、電子デバイスの製造においてガラスを用いることは、一枚一枚切り出されたガラスを、平面状態を保持したまま、運搬、加工する必要があり、電子デバイスの生産性を低くしている一つの要因である。
単結晶酸化アルミニウム(単結晶サファイア)は、3.97g/cm程度の密度を有し、透明で、1×10−4g/m/day程度の水蒸気透過度を実現できる。従って、単結晶酸化アルミニウムを汎用合成樹脂フィルム上に形成することができれば、理論的には透明であり、柔軟でかつ、高いバリア性を備えたフィルムとすることができる。単結晶サファイアの代表的な製造方法としては、Edge-defined Film-fed Growth法が知られている。この方法では、結晶形状を規定する型(ダイ)のスリットを毛細管現象によって上昇した原料融液を、ダイの上端部で結晶化させる。しかし、酸化アルミニウムの溶融温度が2000℃を超えるため、このような高温に耐えられる合成樹脂は存在しない。従って、単結晶酸化アルミニウムを合成樹脂フィルム上に形成することはできないと考えられていた。
上記の通り、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの汎用合成樹脂フィルム上に蒸着層を形成して透明で、1×10−4g/m/day程度の水蒸気透過度を有するフィルムがあれば、電子デバイスの製造における生産性を革新的に高めることができ、このようなフィルムは電子デバイス業界から切望されている。
特開2005−178137号公報(請求項1及び10、段落[0037]、実施例) 特表2005−528250号公報(請求項1、段落[0035]) 特開2004−9395号公報(請求項1及び2、段落[0007]) 特開平10−278167号公報(請求項1、段落[0036]、実施例) 特開2005−313560号公報(請求項1、段落[0033]、実施例) 特開2005−7741号公報(請求項1、実施例)
従って、本発明の目的は、優れたガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を有するフィルム及びこのフィルムを用いたデバイスを提供することにある。
本発明の他の目的は、ガスバリア性と透明性とを両立できるフィルム及びこのフィルムを用いたデバイスを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、柔軟性に優れ、割れやクラックの生成を防止できるフィルム及びこのフィルムを用いたデバイスを提供することにある。
本発明の別の目的は、厚み方向の少なくとも一部の領域において、特定の組成比及び/又は密度を有する酸化アルミニウムの蒸着層を備えたフィルムを簡便に製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、電子デバイスのガスバリア性部材として好適に利用できるフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、太陽電池封止剤との密着性にも優れ、太陽電池バックシートとして好適に利用できるフィルムを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、基材フィルムの少なくとも一方の面に特定のアンカー層を介して酸化アルミニウムの蒸着層が形成されたフィルムであって、前記蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウムが特定の組成比及び/又は密度を有する新規なフィルムが、ガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を著しく向上できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、ビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたアンカー層が積層され、このアンカー層に酸化アルミニウムからなる特定の蒸着層が積層されている。この蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域(例えば、アンカー層との界面近傍)において、酸化アルミニウムは、下記(1)及び/又は(2)の特性を有している。
(1)酸化アルミニウム(AlxOy)の組成比(y/x)のピークが2.1〜3.0(例えば、2.2〜2.8)にある
(2)酸化アルミニウムの密度が、3.4g/cm以上(例えば、3.45〜3.7g/cm、好ましくは3.5〜3.6g/cm)である。
このような特定の組成比及び/又は密度を有する酸化アルミニウムの構造は、サファイア結晶構造の密度が3.97g/cmであるので、厳密にはサファイア構造といえないものの、ある意味ではサファイアライク構造ということができる。しかし、一般的な酸化アルミニウムの密度が3.1〜3.2g/cmであるのに対して、3.4g/cm以上(例えば3.5g/cm以上)の密度を有しているので、上記酸化アルミニウムの構造は、通常の酸化アルミニウムの結晶構造とは明らかに異なる構造である。
フィルムの水蒸気透過度は1×10−3g/m/day以下であってもよい。基材フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。ビニル系化合物は、シリコーンウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。アンカー層の算術平均粗さ(Ra)は、0.1〜2.0nm程度であってもよい。アンカー層にケイ素原子が存在していてもよい。酸化アルミニウムからなる蒸着層の厚みは、5〜100nm程度であってもよい。
本発明は、酸化アルミニウムからなる蒸着層のアンカー層が形成されていない面が、コロナ処理又はプラズマ処理されたフィルムも包含する。また、本発明は、酸化アルミニウムからなる蒸着層の上に、酸化ケイ素からなる蒸着層が形成されたフィルムも包含する。これらのフィルムは、太陽電池封止剤との密着性に優れ、太陽電池バックシートとして好適に利用できる。
なお、本明細書において、アクリレートとメタクリレートとを(メタ)アクリレートと総称し、アクリル系とメタクリル系とを(メタ)アクリル系と総称する。また、本明細書中、用語「ビニル系」とは、α,β−エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の総称の意味で用いる。さらに、本明細書中、数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
本発明では、蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウムが特定の組成比及び/又は密度を有するため、ガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を著しく向上できる。特に、蒸着層の厚みが小さくても、又は複数の蒸着層を形成しなくても、ガスバリア性を向上できる。また、本発明では、ガスバリア性と透明性とを両立できる。さらに本発明では、柔軟性に優れ、割れやクラックの生成を有効に防止できる。また、本発明では、特定領域において、酸化アルミニウムが特定の組成比及び/又は密度を有する蒸着層を備えたフィルムを簡便に製造することができる。本発明のフィルムは、ガスバリア性部材として電子デバイスに好適に利用でき、外部からの水蒸気による電子デバイスの素子性能の劣化を有効に防止できる。例えば、酸化アルミニウムの蒸着層が特定の表面処理されたフィルムや、酸化アルミニウムの蒸着層に酸化ケイ素の蒸着層を積層したフィルムは、太陽電池封止剤との密着性に優れ、太陽電池バックシートなどとして好適に利用できる。
図1は本発明のフィルムにおいて、酸化アルミニウムが特定の組成比及び/又は密度を有する領域を説明するための模式断面図である。 図2はX線光電子分光スペクトルにおいて、蒸着層とアンカー層との界面を説明するための模式図である。 図3は本発明のフィルムをガスバリア性部材として含む有機EL素子を示す概略断面図である。 図4は実施例3のフィルムのX線光電子分光分析(XPS分析)結果を示すグラフである。 図5は比較例4のフィルムのX線光電子分光分析(XPS分析)結果を示すグラフである。 図6は比較例5のフィルムのX線光電子分光分析(XPS分析)結果を示すグラフである。 図7は実施例3並びに比較例4及び5のフィルムのX線反射率分析(XRR分析)結果を示すグラフである。
本発明のフィルム(ガスバリアフィルム又は積層フィルム)は、厚み方向の少なくとも一部の領域において、特定の組成比及び/又は密度を有する酸化アルミニウムの蒸着層を含んでいる。この蒸着層は、通常、基材フィルムの少なくとも一方の面に積層されたアンカー層上に形成されている。
[基材フィルム]
基材フィルムは、プラスチック(特に、融点又は軟化温度が300℃以下のプラスチック)で構成される。本発明では、基材フィルムの融点又は軟化温度が、酸化アルミニウムの溶融温度2000℃より低いにも拘わらず、基材フィルム上にサファイアライク構造の蒸着膜を形成できる。
プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂(ノルボルネンなどの環状オレフィン系単量体の単独又は共重合体など)、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロヘキサンジメタノールをジオール成分として含むPET系共重合体(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂などが例示できる。
これらのプラスチックは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのプラスチックのうち、(メタ)アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂などのポリアルキレンアリレート系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種が好ましく、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂が特に好ましい。
基材フィルムを構成するプラスチックのガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、例えば、40〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは60〜150℃程度であってもよい。
基材フィルムを構成するプラスチックの融点又は軟化温度は、例えば、300℃以下(例えば、100〜280℃)、好ましくは120〜270℃、さらに好ましくは150〜260℃程度である。
基材フィルムには、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、着色剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸(一軸又は二軸)フィルムであってもよい。また、基材フィルムの表面には、接着性を向上させるため、コロナ放電やグロー放電などの放電処理、酸処理、焔処理などの表面処理を施してもよい。
基材フィルムの全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、80%以上(例えば80〜99.9%程度)、好ましくは85%以上(例えば85〜99%程度)、さらに好ましくは90%以上(例えば90〜98%程度)であってもよい。
基材フィルムの厚みは、例えば、1〜500μm(例えば10〜500μm)、好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm程度であってもよい。
[アンカー層]
アンカー層は、特に制限されず、高密度の酸化アルミニウムの蒸着薄膜を容易に形成できる点から、通常、ビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されている。
ビニル系化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート[例えば、C1−24アルキル(メタ)アクリレート;C5−10シクロアルキル(メタ)アクリレート;橋架け環式(メタ)アクリレート;C6−10アリール(メタ)アクリレート;C6−10アリールC1−4アルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート;ポリC2−4アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;フルオロC1−6アルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなど]、2官能(メタ)アクリレート[例えば、C2−10アルカンジオールジ(メタ)アクリレート;アルカントリ乃至テトラオールジ(メタ)アクリレート;ポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなど]、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート[例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;グリセリントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ乃至テトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート;アルカンポリオールC2−4アルキレンオキサイド付加体のポリ(メタ)アクリレート;トリアジン環を有するトリ(メタ)アクリレートなど]、重合性基を有するオリゴマー(又はプレポリマー)[例えば、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。これらのビニル系化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのビニル系化合物のうち、アンカー層の表面平滑性やフィルムの柔軟性を向上する点などから、少なくともウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート成分[又はポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応により生成し、遊離のイソシアネート基を有するプレポリマー]に活性水素原子を有する(メタ)アクリレートを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。
ポリイソシアネート成分としては、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する限り、特に制限されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、複素環式ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの誘導体(例えば、上記ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体との重合物、カルボジイミド、ウレットジオンなど)などであってもよい。
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)など)、分子中に3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートメチルオクタンなどのトリイソシアネートなど)などが挙げられる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタン、ノルボルナンジイソシアネートなど)、分子中に3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサンなどのトリイソシアネートなど)などが挙げられる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート(例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなど)、分子中に3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどのトリイソシアネート;テトライソシアネートなど)などが挙げられる。
これらのポリイソシアネート成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリイソシアネート成分のうち、HDI、TMDI、IPDI、TDI、MDI、XDI、これらのポリイソシアネートの3量体(トリマー)が好ましい。ポリイソシアネート成分は、酸化アルミニウムが特定の結晶構造を形成するように結晶成長を促進できる点から、嵩高い骨格を有するポリイソシアネート(例えば、IPDIなどの脂環式又は橋架け環式ポリイソシアネート)が好ましく、特に、HDI、IPDIなどの脂肪族性ポリイソシアネートのトリマーなどのイソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネートが好ましい。
ポリオール成分としては、特に限定されず、低分子量ポリオール[例えば、脂肪族ポリオール(C2−10アルカンジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのC3−12脂肪族ポリオールなど)、脂環族ポリオール(シクロアルカンジオール類、水添ビスフェノール類など)、芳香族ポリオール(キシリレングリコールなどの芳香脂肪族ジオール、ビスフェノール類など)]、ポリマーポリオール類[例えば、ポリエーテルポリオール(ポリC2−4アルキレングリコールなど)、ポリエステルポリオール(脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ケイ素含有ポリオールなど]などが挙げられる。
上記ケイ素含有ポリオールとしては、例えば、下記式(1)で表されるシリコーンジオールなどが例示できる。
Figure 2013028018
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、アルキル基を示し、X及びXは、同一又は異なって、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を示し、nは1以上の整数であり、m1及びm2は、同一又は異なって、1以上の整数であり、p1及びp2は、同一又は異なって、0又は1である)
式(1)において、R〜Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基はメチル基である。
及びXで表されるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキレン基などが例示できる。
係数nは1以上の整数であればよく、例えば、1〜50、好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜30程度である。係数m1及びm2は、1以上の整数であればよく、例えば、1〜6、好ましくは1〜5、さらに好ましくは2〜4程度である。
これらのポリオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリオール成分のうち、アンカー層の表面平滑性を向上し、緻密な膜構造を有する蒸着層を容易に形成できる点から、シリコーンジオールが好ましい。
活性水素原子を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ乃至ペンタ(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらの活性水素原子を有する(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。活性水素原子を有する(メタ)アクリレートは、1つのヒドロキシル基と、複数(例えば、2〜4、好ましくは2〜3程度)の(メタ)アクリロイル基とを有するのが好ましい。
ポリイソシアネート成分(又はプレポリマー)と活性水素原子を有する(メタ)アクリレートとは、通常、略当量モルの割合(例えば、イソシアネート基/活性水素原子=0.8/1〜1.2/1程度)で用いられる。なお、プレポリマーは、例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを略当量モルの割合(例えば、イソシアネート基/ヒドロキシル基=0.8/1〜1.2/1程度)で反応させて得られる。
これらのウレタン(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのウレタン(メタ)アクリレートのうち、酸化アルミニウムの特定の結晶構造を形成し易い点から、嵩高い分子骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどが好ましく、アンカー層の表面平滑性を向上し、高密度の酸化アルミニウム層を容易に形成できる点から、少なくともシリコーンウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。シリコーンウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、(A)ポリイソシアネート成分とケイ素含有ポリオール成分との反応により生成し、遊離のイソシアネート基を有するプレポリマーに活性水素原子を有する(メタ)アクリレートを反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレートであってもよく、(B)ポリイソシアネート成分と活性水素原子を有する(メタ)アクリレートとの反応により生成し、遊離のイソシアネート基を有するプレポリマーにケイ素含有ポリオール成分を反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。本発明では、シリコーンウレタン(メタ)アクリレートと珪素非含有ウレタン(メタ)アクリレートとを組み合わせるのが特に好ましい。
シリコーンウレタン(メタ)アクリレートと珪素非含有ウレタン(メタ)アクリレートとの割合(重量比)は、特に制限されず、前者/後者=0.01/99.99〜50/50、好ましくは0.05/99.95〜40/60、さらに好ましくは0.1/99.9〜30/70程度であってもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の数は、1分子中、1〜20程度の範囲から選択でき、例えば、2〜18、好ましくは3〜16、さらに好ましくは4〜14(例えば、6〜12)程度であってもよい。ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量は、例えば、50〜800、好ましくは70〜700、さらに好ましくは100〜600程度であってもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、500〜10000(例えば、600〜9000)、好ましくは700〜8000、さらに好ましくは1000〜7000(例えば、2000〜6500)程度であってもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートの粘度は、25℃において、B型粘度計で測定したとき、100〜5000mPa・s、好ましくは200〜4000mPa・s、さらに好ましくは300〜3000mPa・s程度であってもよい。なお、ケイ素原子を含まないウレタン(メタ)アクリレートの場合、上記粘度は60℃で測定したときの粘度を意味する。
ウレタン(メタ)アクリレートは、市販品(例えば、ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYLシリーズ」など)を利用してもよく、慣用の方法(例えば、特開2008−74891号公報など)により調製してもよい。
重合性組成物は、ビニル系化合物に加えて、任意の成分[例えば、重合開始剤(例えば、ベンゾイン類などの光重合開始剤など)、光増感剤、溶媒(例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭素類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類、アミド類など)、基材フィルムの項で例示した添加剤(例えば、安定化剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤など)など]を含んでいてもよい。
重合性組成物は、前記任意の成分のうち、重合開始剤及び/又は溶媒を含んでいる場合が多い。重合開始剤の割合は、ビニル系化合物100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜2.5重量部程度であってもよい。溶媒の割合は、ビニル系化合物100重量部に対して、例えば、1〜500重量部、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは50〜150重量部程度であってもよい。
アンカー層は、前記重合性組成物の硬化物で構成されていれば、特に制限されないが、蒸着層のガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を向上させる点から、ケイ素原子を含んでいるのが好ましい。
アンカー層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜8μm、さらに好ましくは1〜5μm(例えば、2〜3μm)程度であってもよい。
アンカー層の算術平均粗さ(Ra)は、2.0nm以下(例えば、0.1〜2.0nm)、好ましくは0.2〜1.8nm、さらに好ましくは0.3〜1.7nm(例えば、0.4〜1.6nm)、特に0.5〜1.5nm(例えば、0.5〜1.4nm)程度である。アンカー層のRaが2.0nmを超えると、アンカー層の微細な凹凸により緊密な蒸着層の形成が妨げられるためか、蒸着層の厚み方向に、酸化アルミニウムが特定の組成比及び/又は密度を有する領域を形成することが困難になる。Raの下限は、特に制限されないが、現実的にはRaを0.1nm未満にすることは難しい。本発明では、アンカー層のRaを低減し、表面を平滑化することにより、ガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を向上できる。Raの小さなアンカー層は、特別な表面処理を施すことなく、例えば、特定のビニル系化合物(例えば、シリコーンウレタン(メタ)アクリレートなど)を含む組成物を用いると、コーティングなどにより簡便に形成できる。なお、アンカー層のRaは、例えば、フィルムを10Nの水酸化ナトリウム液に浸漬して、酸化アルミニウムの蒸着層を除去した後、慣用の方法(JIS B 0601に準拠した方法など)により測定できる。
これらのアンカー層は基材フィルムの少なくとも一部の領域にあればよい。例えば、本発明のフィルムが用いられる用途で、バリア性が求められる領域において、アンカー層が存在していればよい。例えば、電子デバイスでは、水分に敏感な部分があれば、少なくともその部分に対応する領域にアンカー層を形成すればよい。このような部分的なアンカー層は、通常用いられるパートコートなどの方法により形成してもよい。部分的に本発明のアンカー層を形成する場合は、本発明のアンカー層を形成していない部分については、他のアンカー層を形成してもよい。また、他のアンカー層を形成した上で、本発明のアンカー層を部分的に形成してもよい。
上記のように、本発明のアンカー層を部分的に形成した場合には、本発明の特徴の高いバリア性を発現するフィルム部分は、本発明のアンカー層を形成した部分となる。このため、フィルム全体に高いバリア性を所望する場合には、本発明のアンカー層を基材フィルムの少なくとも片面の全面に形成することが望ましい。
[蒸着層]
蒸着層(バリア層)は酸化アルミニウムからなり、透明性が高い。本発明の蒸着層は、従来の酸化アルミニウムの蒸着層とは異なり、厚み方向の少なくとも一部の領域において、特定の組成比及び/又は密度を有している。本発明では、従来の酸化アルミニウムの組成比とは異なる特定の組成比を有することで、気体(特に水蒸気)の蒸着層内の移送に影響を与えて、高いバリア性を発現するものと思われる。また、酸化アルミニウムの密度の高い領域が、緻密な構造を有しており、高いバリア性を発現するものと思われる。このように、本発明では、特許文献2のように複数の蒸着層を有していなくても、高いバリア性を発現する。
蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域としては、蒸着層の一方の面(アンカー層が形成されていない面)から他方の面(アンカー層との界面)に至るまでの領域であれば、特に制限されないが、アンカー層の構成成分との相互作用により、酸化アルミニウムの結晶構造を調整できるため、アンカー層との界面近傍であってもよい。
図1は、本発明のフィルムにおいて、酸化アルミニウムが特定の組成比及び/又は密度を有する領域を説明するための模式断面図である。この図では、フィルム1は、アンカー層2の上に酸化アルミニウムからなる蒸着層3が形成されており、蒸着層3のうち、表面側の領域3aでは、通常の酸化アルミニウムの組成比及び/又は密度を有し、アンカー層との界面側の領域3bでは、通常の酸化アルミニウムとは異なり、特定の組成比及び/又は密度を有している。なお、フィルムの厚み方向をZ軸とし、アンカー層2と蒸着層3との界面をZ=0とし、組成比の高い領域をZ=Zとするとき、領域3bは、Z=0〜Zの領域である。Zは、3〜10nm程度の範囲から選択でき、例えば、3.5〜8.5nm(例えば、3.5〜6.5nm)、好ましくは4〜6nm(例えば、4.5〜5.5nm)程度であってもよく、通常、5nm程度である。
なお、領域3bは面方向に一様に形成されるため、領域3bの断面形状は略矩形状である場合が多い。また、蒸着層3内に1又は複数の領域3bが形成されていてもよい。例えば、複数の領域3bが、面方向に所定の間隔をおいて形成されていてもよい。
図2は、XPSスペクトルにおいて、蒸着層とアンカー層との界面を説明するための模式図である。図2において、縦軸は蒸着層に存在する元素の比率を示し、横軸はエッチング時間に対応する深さを示す。蒸着層とアンカー層との界面は、アンカー層の表面粗さにより変動し、Al、Oの元素比率は変動する場合が多いが、次のような厚み位置を界面としてもよい。すなわち、炭素原子の増加率を示す直線(変曲点における接線など)の切片Zを界面としてもよく、酸素原子の減少率を示す直線(変曲点における接線など)の切片Zを界面としてもよく、ZとZの中間値を界面としてもよい。また、アルミニウム原子に対する酸素原子の組成比が減少から増大へと変化する変曲点Zを界面としてもよい。さらに、炭素原子の比率を示す曲線と酸素原子の比率を示す曲線との交点Zを界面としてもよい。
本発明では、厚み方向の少なくとも一部の領域(図1の領域3bなど)において、酸化アルミニウムは、下記(1)及び(2)のうち、少なくとも一方の特性(好ましくは、両方の特性)を有している。
(1)酸化アルミニウム(AlxOy)の組成比(y/x)のピーク(最大値又は極大値)が、例えば、2.1〜3.0、好ましくは2.2〜2.9、さらに好ましくは2.2〜2.8、特に2.3〜2.7(例えば、2.4〜2.6)程度にある。
なお、アンカー層との界面から厚み方向に3〜7nm(好ましくは4〜6nm)程度離れた位置(図2のZなど)で上記ピークを示す場合が多い。また、上記ピークは、蒸着層の表面(アンカー層が形成されていない面)から厚み方向に従って組成比の挙動をみたとき、最初に現れるピークを意味する場合が多い。
(2)酸化アルミニウムの密度が、例えば、3.4g/cm以上(例えば、3.4〜3.9g/cm)、好ましくは3.45g/cm以上(例えば、3.45〜3.8g/cm)、さらに好ましくは3.5g/cm以上(例えば、3.5〜3.7g/cm)、通常3.45〜3.7g/cm(例えば、3.5〜3.6g/cm)程度である。
酸化アルミニウムの組成比は、上記(1)の条件を充足する限り、特に制限されない。蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウムの組成比(アルミニウム原子に対する酸素原子の割合)又はその平均値は、例えば、1.8〜3.0(例えば、1.9〜2.9)、好ましくは2.0〜2.8(例えば、2.1〜2.7)、さらに好ましくは2.2〜2.6(例えば、2.3〜2.5)程度であってもよい。なお、蒸着層の特定領域における酸化アルミニウムの組成比又はその平均値は、慣用の方法、例えば、XPS分析により算出できる。
なお、酸化アルミニウム(AlxOy)において、xは1〜3(例えば、1〜2)程度であり、yは1〜4(例えば、1〜3)程度であってもよい。
蒸着層の酸素原子濃度は、蒸着層の厚み方向に従って、次のような挙動を示してもよい。蒸着層の厚みをZnmとしたとき、XPSスペクトル(スパッタ条件:導入ガスAr、印加電圧2.0kV)において、スパッタ時間(又はエッチング時間)が(0.2〜0.4)×Z分[深さ(0.4〜0.8)×Znm]、好ましくは(0.25〜0.35)×Z分[深さ(0.5〜0.7)×Znm]程度で、酸素原子濃度が蒸着層の厚み方向の中央域(又は中間域)よりも増大し始める。また、スパッタ時間が(0.3〜0.45)×Z分[深さ(0.6〜0.9)×Znm]、好ましくは(0.35〜0.4)×Z分[深さ(0.7〜0.8)×Znm]程度で酸素原子濃度がピークを示す。さらに、スパッタ時間が(0.35〜0.5)×Z分[深さ(0.7〜1.0)×Znm]、好ましくは(0.4〜0.45)×Z分[深さ(0.8〜0.9)×Znm]程度で蒸着層の厚み方向の中央域の酸素原子濃度と略等しくなり、漸次減少する。
なお、蒸着層のアルミニウム原子濃度は、上記XPSスペクトルにおいて、スパッタ時間(又はエッチング時間)が(0.2〜0.4)×Z分[深さ(0.4〜0.8)×Znm]、好ましくは(0.25〜0.35)×Z分[深さ(0.5〜0.7)×Znm]程度で減少し始め、緩やかに減少して0に収束する。
酸化アルミニウムの密度は、上記(2)の条件を充足する限り、特に制限されない。酸化アルミニウムの密度と組成比とは所定の関係を有しており、酸化アルミニウムの組成比において、酸素原子の比率が大きければ、密度が高くなる傾向にある。従って、蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域では、上記(1)及び(2)の特性を同時に満たす場合が多い。
酸化アルミニウムの密度は、慣用の方法、例えば、XRR法により測定できる。XRR法とは、薄膜にX線を浅い角度で入射させると、薄膜の表面と薄膜/基板界面及び各界面で反射したX線が互いに干渉し、入射角度を連続的に変化させることにより得られる反射率のプロファイルが、その物質の膜厚、密度、界面のラフネスに応じて、特有の振動構造を示すため、このプロファイルを積層構造モデルのフィッティング法を用いて解析することにより、薄膜の膜厚、密度を測定する方法である。なお、上記フィッティング法としては、「X線反射率入門(KS物理専門書)、桜井健次 編集、2009年、株式会社講談社」などを参照できる。
より具体的には、酸化アルミニウムの密度は、慣用の装置(例えば、リガク社製「ATX−G」など)を用いて、対陰極:Cu、波長:1.5405Å、出力:50kV、300mAの条件で、X線強度プロファイルを測定し、このX線強度プロファイルに一致するように、シミュレーションパラメータを最適化することにより、算出できる。なお、X線強度プロファイルの振動構造の周期から層厚みを算出でき、振幅から密度を算出できる。シミュレーションソフトとしては、慣用のソフトウェア、例えば、(株)リガク製「DX−RR3」などを利用できる。
蒸着層の厚み(又は平均厚み)は、酸化アルミニウムの密度が高い領域又は特定の組成比を有する領域を形成できればよく、5〜100nm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜80nm(例えば、15〜70nm)、好ましくは20〜50nm程度である。また、蒸着層の厚みが小さくても、ガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)を向上できるため、蒸着層の厚みは、50nm未満であってもよく、例えば、20〜45nm、好ましくは25〜40nm程度であってもよい。蒸着層の厚みが5nm未満であると、基材フィルム又はアンカー層の表面の影響を受けて、特定の密度及び/又は組成比を有する酸化アルミニウムの蒸着層を形成するのが困難になる。また、特定の密度及び/又は組成比を有する酸化アルミニウムの領域は、従来の酸化アルミニウムの蒸着層と異なるため、蒸着層の表面に露出していた場合には、従来、酸化アルミニウムの蒸着層に適用できていた様々なコート剤、接着剤などがそのまま適用できない場合がある。そのため、蒸着層の厚みを5nm以上として、酸化アルミニウムの蒸着層の表面(フィルムの露出表面)が、通常の酸化アルミニウムの蒸着層と同様の密度及び/又は組成比を有するのが好ましい。蒸着層の厚みが100nmを超えると、割れやクラックが生成し易い。
本発明のフィルムは、基材フィルムとアンカー層と蒸着層とを備えていればよい。なお、蒸着層はアンカー層との接触部位を有しているのが好ましく、蒸着層の一方の面の少なくとも一部(一部又は全部)が、アンカー層と接触しているのが好ましい。本発明においては、他のコート層は本質的に不要である。しかし、公知の様々なコート層(ハードコート層など)を形成してもよい。また、本発明のフィルムには、用途に応じて、種々の機能層を積層してもよい。例えば、電子デバイスの用途では、フィルムの最外層に透明導電層を積層してもよい。また、太陽電池バックシートなどの用途では、太陽電池封止剤(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)との接着性を向上させる点から、(a)酸化アルミニウムからなる蒸着層に表面処理(コロナ処理、プラズマ処理など)を行ってもよく、(b)酸化アルミニウムからなる第1の蒸着層の上に、酸化珪素からなる第2の蒸着層を積層してもよい。
後者の積層フィルム(b)について、第2の蒸着層の厚みは、例えば、1〜100nm、好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは3〜30nm(例えば、5〜10nm)程度である。第1の蒸着層と第2の蒸着層との厚み比は、例えば、第1の蒸着層/第2の蒸着層=1/1〜20/1、好ましくは2/1〜15/1、さらに好ましくは5/1〜10/1程度である。なお、第2の蒸着層は、第1の蒸着層と同様の方法により形成できる。
本発明のフィルムは、ガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)に優れる。例えば、温度40℃、湿度90%RH雰囲気下での水蒸気透過度は、1×10−3g/m/day以下、好ましくは8×10−4g/m/day以下(例えば、1×10−4〜5×10−4g/m/day)程度であってもよい。上記水蒸気透過度は、蒸着層の厚みを20nmとしたときの換算値であってもよい。なお、水蒸気透過度は、高バリア性を測定可能な慣用の方法、例えば、MOCON法、カルシウム法などにより測定できる。これらの測定方法のうち、MOCON法、すなわち、試料(フィルム)の一方の面に水蒸気を通過させ、他方の面に乾燥窒素(キャリアガス)を通過させ、乾燥窒素側の高感度センサー(クーロメトリックセンサーなど)により、試料を通過する水蒸気を測定する方法が汎用される。また、水蒸気透過度は、高バリア性を測定可能な慣用の装置、例えば、「AQUATRAN」(mocon社製)、「スーパーディテクトSKTWV−6S」(株式会社TI製)などにより測定できる。なお、「AQUATRAN」は、測定下限値が5×10−4g/m/dayであり、分解能が1×10−4g/m/dayである。「スーパーディテクトSKTWV−6S」は、測定下限値が1×10−7g/m/dayである。本発明のフィルムは、測定装置の種類によっては実質的に検出限界以下を示す場合があり、極めて小さいバリア性を示す。
本発明のフィルムは、透明性にも優れており、全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、80%以上(例えば80〜99.9%程度)、好ましくは85%以上(例えば85〜99%程度)、さらに好ましくは90%以上(例えば90〜98%程度)であってもよい。また、本発明のフィルムは、柔軟性に優れ、割れやクラックの生成を有効に防止できる。
[フィルムの製造方法]
本発明のフィルムは、厚み方向の特定領域において酸素比率が大きく、密度が高い酸化アルミニウム薄膜を形成できる限り、特に制限されず、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の面に、ビニル系化合物を含む重合性組成物を塗布した後、硬化させることによりアンカー層を形成し、このアンカー層に酸化アルミニウムを蒸着することにより調製できる。この方法では、アンカー層の表面を平滑化できるとともに、アンカー層の構成成分と蒸着種とが相互作用するためか、アンカー層側の蒸着層が特定の結晶構造を形成するように結晶成長を促進できる。例えば、ビニル系化合物として、少なくともシリコーンウレタン(メタ)アクリレートを用いると、特に表面平滑性の高いアンカー層が得られ、アンカー層のケイ素原子と蒸着種とが相互作用するためか、蒸着条件を厳密に調整しなくても、通常の酸化アルミニウムの蒸着膜では得られないような密度及び/又は組成比を有する領域を簡便に形成できる。
アンカー層を形成する方法において、重合性組成物の塗布方法は特に限定されず、慣用の塗布方法、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ディップコート法、スプレー法、スピンコート法、パートコート法などが例示できる。これらの塗布方法のうち、パートコート法は、面方向の少なくとも一部の領域において(例えば、面方向に所定の間隔をおいて)、高密度の酸化アルミニウム薄膜を形成する場合に有利である。塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃程度の温度で行ってもよい。
重合性組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線として、熱及び/又は光エネルギー線を利用でき、特に光エネルギー線を利用するのが有用である。光エネルギー線としては、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線などが利用でき、通常、紫外線である場合が多い。光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm、好ましくは70〜7000mJ/cm、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm程度であってもよい。
蒸着層は、慣用の成膜方法、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、プラズマスパッタリング(マグネトロン法など)など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法が好ましく、スパッタリング法、真空蒸着法などが汎用される。
特に、スパッタリング法を用いると、酸化アルミニウムが特定の組成比及び/又は密度を有する領域を形成し易い。スパッタリング法において、真空度(又は初期真空度)は、0.1×10−4〜100×10−4Pa、好ましくは1×10−4〜10×10−4Pa程度である。導入ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンなどの不活性ガス;空気、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化硫黄などが利用できる。導入ガスは、不活性ガスに対して酸素を、例えば、1〜50%(好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜20%)程度の割合で含む混合ガスなどであってもよい。本発明では、導入ガス中の酸素の割合を大きくすると、特定の組成比及び/又は密度を有する領域を比較的容易に形成できる。印加電圧は、例えば、0.1〜100kV、好ましくは1〜50kV程度である。温度は、通常、50〜250℃程度である。本発明では、印加電圧及び/又は温度を調節して、比較的大きなエネルギーを付与すると、特定の組成比及び/又は密度を有する領域を容易に形成できる。なお、スパッタリングは、慣用の装置(例えば、PHI社製「QuanteraSXM」など)を用いて行ってもよい。
[デバイス]
本発明のデバイス(電子デバイスなど)は、前記フィルムをガスバリア性部材として含んでいる。このようなデバイスは、例えば、液晶素子、薄膜太陽電池素子、有機EL素子、電子ペーパーなどであってもよい。図3は、本発明のフィルムをガスバリア性部材として含む有機EL素子を示す概略断面図である。この例では、有機EL素子の両面に、基材フィルム11(21)とアンカー層12(22)と蒸着層13(23)とが順次積層されたガスバリアフィルム10(20)が配設され、各ガスバリアフィルムの基材フィルム側が有機EL素子と接触している。具体的には、基材フィルム側を互いに対向させた一対のガスバリアフィルムにおいて、対向面の中央部に、透明電極35aと有機発光層36(電子輸送層と正孔輸送層と、必要により発光層とを備える積層体)と金属電極35bとが順次積層された有機EL素子30を設け、この有機EL素子の両端部の接着剤層37を介して、一対のガスバリアフィルムが接着されている。
このような有機EL素子では、両面にガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)と透明性に優れるガスバリアフィルムが配設されているため、光の透過性を妨げることなく、外部から水蒸気が透過して有機EL素子と接触することを防止でき、素子性能の劣化を有効に防止できる。
なお、一対のガスバリアフィルムは、基材フィルム側で対向してもよく、蒸着層側で対向してもよい。また、有機EL素子の周囲の一部又は全部がガスバリアフィルムで被覆されている限り、1又は複数(例えば、2〜4)のガスバリアフィルムを利用してもよい。
なお、他の電子デバイスとして、例えば、電子ペーパーは、通常、薄膜トランジスタ(TFT)基板にマイクロカプセルやシリカビーズなどで構成された表示層が積層され、この表示層に透明電極が積層された構造を有する。また、薄膜太陽電池素子は、通常、透明電極に、蒸着膜(フタロシアニン蒸着膜、フラーレン蒸着膜など)が積層され、この蒸着膜に、導電極(アルミニウム電極など)が積層され、この電極に封止膜(LiFなど)が積層された構造を有する。本発明のガスバリアフィルムは、これらの電子デバイスの構成要素としても利用でき、例えば、前記透明電極に積層してもよい。なお、透明電極に接触する面は、基材フィルム側であってもよく、蒸着層側であってもよい。これらの電子デバイスに本発明のガスバリアフィルムを利用することで、光の透過性を妨げることなく、外部からの水蒸気を遮断して素子性能の劣化を長期間に亘り防止できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例のフィルムを用いて、下記の特性試験を行った。
[水蒸気透過度]
水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定装置(mocon社製「AQUATRAN」)を用いて測定した。なお、測定条件は40℃、相対湿度90%RHである。
[全光線透過率]
全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、NDH−300A)を用いて測定した。
[酸化アルミニウムの組成比]
酸化アルミニウムの組成比(蒸着層の厚み方向)は、X線光電子(XPS)スペクトルにより測定した。なお、XPS分析は、PHI社製「QuanteraSXM」[X線源:単色化Al(1486.6eV)、検出領域:100μmφ、検出深さ:約4〜5nm(取出角45°)、測定スペクトル:Al2p、O1s、Si2s、C1s、スパッタ条件:Ar,2.0kV、スパッタ速度:約2nm/分]を用いて行った。
[酸化アルミニウムの密度]
酸化アルミニウムの密度は、リガク社製「ATX−G」を用いて、対陰極:Cu、波長:1.5405Å、出力:50kV、300mAの条件で、X線強度プロファイルを測定し、このX線強度プロファイルに一致するように、シミュレーションパラメータを最適化することにより、算出した。なお、シミュレーションソフトとしては、(株)リガク社製「DX−RR3」を用いた。
[濡れ性]
濡れ性は、JIS K6768に準拠して測定した。
[接触角]
接触角は、JIS K2396に準拠し、自動・動的接触角計(協和界面科学(株)製、DCA−VZ型)を用いて測定した。
[テープ剥離強度]
テープ剥離強度は、JIS Z0237に準拠し、無機膜表面に粘着テープを貼り付けて、30mm/分の速度で180°剥離試験を行った。
実施例1
4つ口フラスコ内でイソホロンジイソシアネートの3量体(パーストープ社製、IPDIトリマー、Tolonate IDT 70)320重量部と、ジブチル錫ジラウレート1重量部とをアセトン1重量部に溶解し、40℃の温度に保持した。この溶液に、平均組成が下記式
Figure 2013028018
で表されるポリジメチルシロキサン550重量部を窒素雰囲気下、3時間かけて滴下して反応させ、イソシアネート濃度5.37%のプレポリマーを調製した。
このプレポリマーを含む溶液に、同反応温度で重合禁止剤としてハイドロキノン−モノメチルエーテル0.66重量部を添加し、ペンタエリスリトールトリアクリレート1.33重量部を3時間かけて滴下し、赤外吸収スペクトルによりイソシアネート基による吸収ピークが消失するまで反応を継続し、シリコーンウレタンアクリレートを得た。
得られたシリコーンウレタンアクリレートと、ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、「EBECRYL1290」、2000mPa・s(60℃)、6官能、分子量1000)と、重合開始剤(チバジャパン(株)製、「イルガキュア184」)と、メチルエチルケトンとを、2/47/1/50(重量比)の割合で混合したコーティング液を、グラビアコーティング法により、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4300」、厚み188μm)ロールから巻き出したPETフィルム上にウエット(WET)膜厚が10μmになるように塗布し、70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥させた後、メタルハライドランプにより300mJ/cmで紫外線を照射して硬化させることにより、厚みが5μmのアンカー層を形成した後、ロールに巻き取って、アンカー層を有するロールフィルムを作製した。
得られたアンカー層を有するフィルムのアンカー層が形成された側と反対の面に、ウレタンアクリレート(EBECRYL1290)と、重合開始剤(イルガキュア184)と、メチルエチルケトンとを、50/1/50(重量比)の割合で混合したコーティング液を、グラビアコーティング法により塗工し、70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥させた後、メタルハライドランプにより300mJ/cmで紫外線を照射して硬化させることにより、厚みが5μmのハードコート層を形成した後に、ロールに巻き取って、アンカー層及びハードコート層を有するロールフィルムを作製した。
得られたハードコート層及びアンカー層を有するフィルムのアンカー層の上に、ロールからまき出しながら、スパッタリング法[真空度:5×10−4Pa、導入ガス:Ar及びOの混合ガス(Arに対するOの割合15%)]により、酸化アルミニウム[組成AlO]薄膜(厚み50nmの蒸着層)を形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取ってロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例2
厚み25nmの蒸着層を形成した以外は、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例3
厚み20nmの蒸着層を形成した以外は、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。また、得られたフィルムの蒸着層のXPS分析及びXRR分析結果をそれぞれ図4及び7に示す。
比較例1
シリコーンウレタンアクリレートの代わりに、シリコーンジアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、「EBECRYL350」)を用いる以外、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例2
シリコーンウレタンアクリレートの代わりに、シリコーンジアクリレート(EBECRYL350)を用いる以外、実施例3と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例3
特開2005−7741号公報に記載の実施例3の方法に準じて、基材フィルム(ポリエーテルスルホンフィルム、厚さ100μm)上に、分子内に3個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物(共栄社化学(株)製、エポキシエステル80MFA)20重量部及び2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン80重量部の混合物をフラッシュ蒸着させて(メタ)アクリル樹脂層(厚み2μm)を形成し、この(メタ)アクリル樹脂層にAlを実施例1と同様のスパッタリング法により蒸着して無機酸化物層(厚み20μm)を形成してフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例4
珪素非含有ビニル系成分としてのウレタンアクリレート(EBECRYL1290)と、重合開始剤(イルガキュア184)と、メチルエチルケトンとを、50/1/50(重量比)の割合で混合したコーティング液を、グラビアコーティング法により、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4300」、厚み188μm)ロールから巻き出したPETフィルムの両面にウエット(WET)膜厚が10μmになるように塗布し、70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥させた後、メタルハライドランプにより300mJ/cmで紫外線を照射して硬化させることにより、厚みが5μmのアンカー層及び厚みが5μmのハードコート層を形成した後、ロールに巻き取って、アンカー層及びハードコート層を有するロールフィルムを作製した。
得られたフィルムのアンカー層の上に、ロールから巻き出しながら、スパッタリング法[真空度:5×10−4Pa、導入ガス:Ar及びOの混合ガス(Arに対するOの割合15%)]により、酸化アルミニウム[組成AlO]薄膜(厚み20nmの蒸着層)を形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取ってロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。また、得られたフィルムの蒸着層のXPS分析及びXRR分析結果をそれぞれ図5及び7に示す。
比較例5
基材フィルム(PETフィルム、三菱樹脂(株)製、厚み188μm)の一方の面に、ロールから巻き出しながら、スパッタリング法[真空度:5×10−4Pa、導入ガス:Ar及びOの混合ガス(Arに対するOの割合15%)]により、酸化アルミニウム[組成AlO]薄膜(厚み20nmの蒸着層)を形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取ってロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。また、得られたフィルムの蒸着層のXPS分析及びXRR分析結果をそれぞれ図6及び7に示す。
なお、図4〜6において、縦軸は元素の存在割合を示し、横軸はスパッタ時間にスパッタ速度(2nm/分)を乗じて、フィルムの厚み方向の距離(表面からの深さ)に換算した値を示す。なお、横軸の0nmが酸化アルミニウム蒸着層の表面を示す。なお、蒸着層の表面では、汚染により炭素の存在が示される場合があるが、蒸着層の中に入ると当然炭素は消失する。図7において、縦軸はX線反射強度の相対値を示し、横軸はX線の散乱角度を示す。
Figure 2013028018
表1及び図4〜7から明らかなように、A領域及びB領域では、実施例及び比較例において、酸化アルミニウムの組成比及び密度に差が認められない。しかし、C領域(アンカー層の界面近傍)では、実施例は、比較例に比べて、酸化アルミニウムの密度が高く、組成比も大きい。実施例のC領域では、酸化アルミニウムは、Al及びAlOの混合物、アルミケイ酸[Al(OH)n(SiOx)m]などの状態で存在していると推測され、結晶構造が変化し、緻密な膜構造を形成している。そのため、実施例のフィルムは、比較例のフィルムに比べて、水蒸気透過度が著しく低く、かつ透明性が高い。
実施例4
平均組成が下記式
Figure 2013028018
で表されるポリジメチルシロキサンを240重量部用いる以外、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムは、実施例1と同様の組成比及び密度を有する蒸着層が形成されており、実施例1と同様の水蒸気透過度及び全光線透過率を示した。
実施例5
平均組成が下記式
Figure 2013028018
で表されるポリジメチルシロキサンを430重量部用いる以外、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムは、実施例1と同様の組成比及び密度を有する蒸着層が形成されており、実施例1と同様の水蒸気透過度及び全光線透過率を示した。
実施例6
平均組成が下記式
Figure 2013028018
で表されるポリジメチルシロキサンを240重量部用いる以外、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムは、実施例1と同様の組成比及び密度を有する蒸着層が形成されており、実施例1と同様の水蒸気透過度及び全光線透過率を示した。
実施例7
平均組成が下記式
Figure 2013028018
で表されるポリジメチルシロキサンを430重量部用いる以外、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムは、実施例1と同様の組成比及び密度を有する蒸着層が形成されており、実施例1と同様の水蒸気透過度及び全光線透過率を示した。
実施例8
平均組成が下記式
Figure 2013028018
で表されるポリジメチルシロキサンを用いる以外、実施例1と同様にロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例9
実施例1と同様にアンカー層及びハードコート層を有するロールフィルムを作製した。得られたハードコート層及びアンカー層を有するフィルムのアンカー層の上に、ロールからまき出しながら、スパッタリング法[真空度:5×10−4Pa、導入ガス:Ar及びOの混合ガス(Arに対するOの割合15%)]により、酸化アルミニウム[組成AlO]薄膜(厚み50nmの蒸着層)を形成した後に、チャンバーから出さずに連続で酸化珪素[組成SiO]薄膜(厚み10nm以下の蒸着層)を形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取ってロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
実施例10
実施例1と同様にアンカー層及びハードコート層を有するロールフィルムを作製した。得られたハードコート層及びアンカー層を有するフィルムのアンカー層の上に、ロールからまき出しながら、スパッタリング法[真空度:5×10−4Pa、導入ガス:Ar及びOの混合ガス(Arに対するOの割合15%)]により、酸化アルミニウム[組成AlO]薄膜(厚み50nmの蒸着層)を形成した後に、酸化アルミニウム薄膜の表面をコロナ処理し、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取ってロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
実施例11
コロナ処理の代わりにプラズマ処理を行う以外、実施例5と同様にして、ロールフィルムを作製した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
Figure 2013028018
表2から明らかなように、実施例5〜7のフィルムは、実施例1のフィルムに比較して、濡れ性が大きく、接触角が小さく、テープ剥離強度が大きい。実施例5〜7のフィルムは、例えば、太陽電池バックシートなどの用途に適している。
本発明のフィルムは、ガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)に優れ、透明性も高いため、例えば、ガスバリア性部材として電子デバイス(例えば、液晶素子、薄膜太陽電池素子、有機EL素子、電子ペーパー、タッチパネルなど)に好適に利用できる。
1…フィルム
2…アンカー層
3…蒸着層
10、20…ガスバリアフィルム
11、21…基材フィルム
12、22…アンカー層
13、23…蒸着層
30…有機EL素子
35a…透明電極
35b…金属電極
36…有機発光層
37…接着剤層

Claims (13)

  1. 基材フィルムの少なくとも一方の面に、ビニル系化合物を含む重合性組成物の硬化物で形成されたアンカー層が積層され、このアンカー層に酸化アルミニウムからなる蒸着層が積層されたフィルムであって、
    前記蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウム(AlxOy)の組成比(y/x)のピークが2.1〜3.0にあるフィルム。
  2. 酸化アルミニウムからなる蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウムの密度が3.4g/cm以上である請求項1記載のフィルム。
  3. 酸化アルミニウムからなる蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウムの密度が3.45〜3.7g/cmである請求項1又は2記載のフィルム。
  4. 酸化アルミニウムからなる蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウムの密度が3.5〜3.6g/cmである請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
  5. 酸化アルミニウムからなる蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域において、酸化アルミニウム(AlxOy)の平均組成比(y/x)のピークが2.2〜2.8にある請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
  6. 酸化アルミニウムからなる蒸着層の厚み方向の少なくとも一部の領域が、アンカー層との界面近傍にある請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
  7. 水蒸気透過度が1×10−3g/m/day以下である請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
  8. 酸化アルミニウムからなる蒸着層の厚みが5〜100nmである請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
  9. アンカー層の算術平均粗さが0.1〜2.0nmである請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム。
  10. アンカー層にケイ素原子が存在する請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム。
  11. 基材フィルムが、(メタ)アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種で構成されたフィルムである請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム。
  12. 酸化アルミニウムからなる蒸着層のアンカー層が形成されていない面が、コロナ処理又はプラズマ処理されている請求項1〜11のいずれかに記載のフィルム。
  13. 酸化アルミニウムからなる蒸着層の上に、酸化ケイ素からなる蒸着層が積層されている請求項1〜12のいずれかに記載のフィルム。
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