JP2017001219A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Kazuo Suzuki
一生 鈴木
河村 朋紀
Tomonori Kawamura
朋紀 河村
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Abstract

【課題】各層間での密着性を十分に確保しつつ、高温高湿環境下での耐久性に優れるガスバリア性フィルムを提供する。【解決手段】基材11の少なくとも一方の面に、多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる有機層(A)14を配置し、有機層(A)14と同じ側の面に、窒化ケイ素を主成分とするガスバリア層(B)12を配置し、更に、ガスバリア層(B)12の少なくとも一方の面に隣接するように、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(C)13を配置するガスバリア性フィルム10。好ましくは、多官能芳香族(メタ)アクリレートが、下記化学式1で表わされるガスバリア性フィルム10。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。
フレキシブル電子デバイス、特にフレキシブル有機ELデバイスには、基板フィルムや封止フィルムとしてガスバリア性フィルムが用いられている。これらに用いられるガスバリア性フィルムには高いバリア性が求められている。
従来、ガスバリア性フィルムは、例えば、基材フィルム上に蒸着法、スパッタ法、CVD法等の気相成膜法によって無機物からなる層(ガスバリア層)を形成することにより製造されている。
ここで、無機物からなるガスバリア層(無機層)に、有機化合物からなる層(有機層)を積層してガスバリア性フィルムを構成する技術が知られている。かような無機層および有機層を備えたガスバリア性フィルムは、ガスバリア性とともに高い耐屈曲性を発現することができる。例えば特許文献1には、所定の化学構造を有する多官能芳香族(メタ)アクリレートおよび低アクリル当量の多官能(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる、膜厚300〜900nmの有機層を、ガスバリア性の無機層と積層してガスバリア性の積層体を得る技術が開示されている。
特開2010−30290号公報
上記特許文献1の開示によれば、上述したような構成とすることで、高いガスバリア性が達成され、積層体の密着性にも優れるとされている。しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載された技術についてさらに検討を行ったところ、特許文献1に記載の所定の化学構造を有する多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む有機層を備えたガスバリア性フィルムにおいて、無機層の構成材料として窒化ケイ素(SiN)を主成分とする材料を用いると、40℃程度までの低温におけるガスバリア性は良好であるものの、80℃85%RHといった高温高湿の非常に過酷な環境下では、経時でガスバリア性が低下することが判明した。
そこで本発明は、各層間での密着性を十分に確保しつつ、高温高湿環境下での耐久性に優れるガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、基材の少なくとも一方の同じ面に、多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる有機層(本明細書中、「(有機)層(A)」とも称する)と、窒化ケイ素を主成分とするガスバリア層(本明細書中、「(ガスバリア)層(B)」とも称する)とを配置し、さらに、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(本明細書中、「層(C)」とも称する)を上記層(B)の少なくとも一方の面に隣接するように配置することで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置された、多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる有機層(A)と、前記基材の、前記有機層(A)と同じ側の面に配置された、窒化ケイ素を主成分とするガスバリア層(B)と、前記ガスバリア層(B)の少なくとも一方の面に隣接するように配置された、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(C)とを有する、ガスバリア性フィルムが提供される。
本発明によれば、各層間の密着性を十分に確保しつつ、高温高湿環境下での耐久性に優れるガスバリア性フィルムが提供される。
本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。 本発明に係るガスバリア性フィルムにおけるガスバリア層(B)の形成に用いられうる真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
本発明の一形態は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置された、多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる有機層(A)と、前記基材の、前記有機層(A)と同じ側の面に配置された、窒化ケイ素を主成分とするガスバリア層(B)と、前記ガスバリア層(B)の少なくとも一方の面に隣接するように配置された、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(C)とを有する、ガスバリア性フィルムである。このような構成を有する本発明に係るガスバリア性フィルムは、各層間での密着性を十分に確保しつつ、高温高湿環境下での耐久性に優れる。
本発明のガスバリア性フィルムにより上記効果が得られるメカニズムの詳細は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
上述したように、従来、無機物からなるガスバリア層(無機層)に、有機化合物からなる層(有機層)を積層してガスバリア性フィルムを構成する技術が知られている。かような無機層および有機層を備えたガスバリア性フィルムは、ガスバリア性とともに高い耐屈曲性を発現することができる。そして、特許文献1に記載の技術のように、多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化させて得られる有機層をガスバリア層としての無機層と併用すると、積層体の密着性にも優れるとされていた。しかしながら、本発明者らの検討により、特許文献1に記載の所定の化学構造を有する多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む有機層を備えたガスバリア性フィルムにおいて、無機層の構成材料として窒化ケイ素(SiN)を主成分とする材料を用いると、40℃程度までの低温におけるガスバリア性は良好であるものの、80℃85%RHといった高温高湿の非常に過酷な環境下では、経時でガスバリア性が低下することが判明したのである。
これは、窒化ケイ素(SiN)を主成分とするガスバリア層(無機層)に隣接する有機層から侵入する水蒸気によって当該ガスバリア層(SiN層)が酸化されることで密度が低下し、これが高温高湿環境下におけるガスバリア性の悪化をもたらしているものと推測されている。
これに対し、本発明に係るガスバリア性フィルムは、SiNを主成分とするガスバリア層(B)に隣接するように設けられた遷移金属化合物を含む層(C)が層(B)よりも酸化されやすいことで層(B)よりも優先的に酸化され、その結果として層(B)の酸化が抑制され、高温高湿環境下での耐久性の向上という効果が発現しているものと考えられる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。図1に示すガスバリア性フィルム10は、基材11、ガスバリア層(B)12、遷移金属化合物(例えば、酸化ニオブ)を含む層(C)13、および多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる有機層(A)14がこの順に積層されてなる構成を有する。このように、図1に示すガスバリア性フィルム10においては、基材上に、ガスバリア層(B)/層(C)/有機層(A)がこの順に積層されているが、層(A)〜層(C)の積層順序はかような形態のみに限定されない。本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、層(A)および層(B)が基材の同じ側の少なくとも一方の表面に形成されており、かつ、層(C)が層(B)の少なくとも一方の面に隣接するように配置されていればよい。よって例えば、以下のような積層順序が同様に採用されうる。
・基材/層(B)/層(C)/層(A)(図1に示す構成;後述の実施例1)
・基材/層(C)/層(B)/層(A)(後述の実施例2)
・基材/層(A)/層(C)/層(B)(後述の実施例3)
・基材/層(A)/層(B)/層(C)(後述の実施例4)。
また、基材と上記各層との間、上記各層の層間(ただし、層(B)と層(C)との層間を除く)、または上記各層のうち最も基材から遠い層の上には他の層が配置されていてもよい。なかでも、基材との接着性および光透過性に優れるという理由から、基材、層(B)、層(C)および層(A)がこの順に配置されてなる構成(図1に示す構成)が好ましく採用される。また、層(A)、層(B)および層(C)が積層されてなるユニットを2つ以上有することで、本発明の効果をよりいっそう顕著に発現させることが可能である。なお、ガスバリア性フィルムが上記ユニットを2つ以上有する場合、当該2つ以上のユニットは基材の一方の面に存在してもよいし、基材の両側に分かれて存在してもよいが、本発明の効果をよりいっそう顕著に発現させるという観点からは、上記2つ以上のユニットは基材の一方の面に存在することがより好ましい。なお、ユニット数の上限に特に制限はないが、好ましくは3ユニット以下である。
[ガスバリア層(B)]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、ガスバリア層(B)を有する。このガスバリア層(B)は、窒化ケイ素(SiN)を主成分とするものである。製膜方法にもよるが、窒化ケイ素は酸化ケイ素に比べて緻密な構造を有していることから、ガスバリア層(B)が窒化ケイ素(SiN)を主成分とすることで、より高いガスバリア性が達成されうる。また、窒化ケイ素はセラミックコーティングに用いられる例があるように、耐摩耗性および耐屈曲性にも優れるという利点がある。なお、本明細書において、「ガスバリア層(B)が窒化ケイ素(SiN)を主成分とする」とは、ガスバリア層(B)の構成成分に占める窒化ケイ素(SiN)の含有割合が50質量%以上であることを意味し、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。ガスバリア層(B)における窒化ケイ素(SiN)の含有割合が100質量%ではない場合、ガスバリア層(B)は副次的な成分として窒化ケイ素を構成するSiおよびN以外の他の元素を含有することになる。
ガスバリア層(B)の1層当たりの膜厚は特に限定されないが、ガスバリア性能および欠陥の生じやすさという観点から、通常、5〜300nmの範囲内であり、好ましくは5〜100nmである。ガスバリア層(B)は、各層が例えばプラズマCVD法により形成される複数のサブレイヤーからなる積層構造であってもよく、この場合、サブレイヤーの層数は2〜10層であることが好ましい。また、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
ガスバリア層(B)は、窒化ケイ素を主成分とすることで、ガスバリア性を有する。ここで、ガスバリア層(B)のガスバリア性は、基材上に当該ガスバリア層(B)を形成させた積層体で算出した際に、後述の実施例に記載の方法により測定された水蒸気透過率が0.1g/(m・day)以下であることが好ましく、0.01g/(m・day)以下であることがより好ましい。
ガスバリア層(B)の形成方法については特に制限はないが、例えば化学蒸着法(CVD法)で形成される。化学蒸着法(化学気相成長法、Chemical Vapor Deposition)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面或いは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられる。特に限定されるものではないが、製膜速度や処理面積の観点から、プラズマCVD法を適用することが好ましい。化学蒸着法によりガスバリア層(B)を形成すると、ガスバリア性の点で有利である。また、真空プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法によりガスバリア層(B)を形成すると、原材料(原料ともいう)である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、目的の組成からなるガスバリア層(B)を形成できることから、好ましい。
以下、図2を参照しつつ、CVD法のなかでも好適な形態である真空プラズマCVD法について具体的に説明する。図2は、本発明に係るガスバリア層(B)の形成に用いられうる真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
図2において、真空プラズマCVD装置101は、真空槽102を有しており、真空槽102の内部の底面側には、サセプタ105が配置されている。また、真空槽102の内部の天井側には、サセプタ105と対向する位置にカソード電極103が配置されている。真空槽102の外部には、熱媒体循環系106と、真空排気系107と、ガス導入系108と、高周波電源109が配置されている。熱媒体循環系106内には熱媒体が配置されている。熱媒体循環系106には、熱媒体を移動させるポンプと、熱媒体を加熱する加熱装置と、冷却する冷却装置と、熱媒体の温度を測定する温度センサと、熱媒体の設定温度を記憶する記憶装置とを有する加熱冷却装置160が設けられている。
加熱冷却装置160は、熱媒体の温度を測定し、熱媒体を記憶された設定温度まで加熱又は冷却し、サセプタ105に供給するように構成されている。供給された熱媒体はサセプタ105の内部を流れ、サセプタ105を加熱又は冷却して加熱冷却装置160に戻る。このとき、熱媒体の温度は、設定温度よりも高温又は低温になっており、加熱冷却装置160は熱媒体を設定温度まで加熱または冷却し、サセプタ105に供給する。このようにして冷却媒体はサセプタと加熱冷却装置160との間を循環し、サセプタ105は、供給された設定温度の熱媒体によって加熱または冷却される。
真空槽102は真空排気系107に接続されており、この真空プラズマCVD装置101によって成膜処理を開始する前に、予め真空槽102の内部を真空排気するとともに、熱媒体を加熱して室温から設定温度まで昇温させておき、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。サセプタ105は使用開始時には室温であり、設定温度の熱媒体が供給されると、サセプタ105は昇温される。
一定時間、設定温度の熱媒体を循環させた後、真空槽102内の真空雰囲気を維持しながら真空槽102内に成膜対象の基板110を搬入し、サセプタ105上に配置する。
カソード電極103のサセプタ105に対向する面には多数のノズル(孔)が形成されている。カソード電極103はガス導入系108に接続されており、ガス導入系108からカソード電極103にCVDガスを導入すると、カソード電極103のノズルから真空雰囲気の真空槽102内にCVDガスが噴出される。カソード電極103は高周波電源109に接続されており、サセプタ105および真空槽102は接地電位に接続されている。
ガス導入系108から真空槽102内にCVDガスを供給し、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体をサセプタ105に供給しながら高周波電源109を起動し、カソード電極103に高周波電圧を印加すると、導入されたCVDガスのプラズマが形成される。プラズマ中で活性化されたCVDガスがサセプタ105上の基板110の表面に到達すると、基板110の表面に薄膜であるガスバリア層(B)が成長する。この際のサセプタ105とカソード電極103との距離は適宜設定される。
また、原料ガスおよび分解ガスの流量は、原料ガスおよび分解ガス種等を考慮して適宜設定される。一実施形態として、原料ガスの流量は、30〜300sccmであり、分解ガスの流量は100〜1000sccmである。
薄膜成長中は、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体がサセプタ105に供給されており、サセプタ105は、熱媒体によって加熱または冷却され、一定温度に維持された状態で薄膜が形成される。一般に、薄膜を形成する際の成長温度の下限温度は、薄膜の膜質により決まっており、上限温度は、基板110上に既に形成されている薄膜のダメージの許容範囲により決まっている。下限温度や上限温度は形成する薄膜の材質や、既に形成されている薄膜の材質等によって異なるが、ガスバリア性の高い膜質を確保するために下限温度は50℃以上であり、上限温度は基材の耐熱温度以下であることが好ましい。
真空プラズマCVD法で形成される薄膜の膜質と成膜温度の相関関係と、成膜対象物(基板110)が受けるダメージと成膜温度の相関関係とを予め求め、下限温度・上限温度が決定される。例えば、真空プラズマCVDプロセス中の基板110の温度は50〜250℃であることが好ましい。
さらに、カソード電極103に13.56MHz以上の高周波電圧を印加してプラズマを形成した場合の、サセプタ105に供給する熱媒体の温度と基板110の温度の関係が予め測定されており、真空プラズマCVDプロセス中に基板110の温度を、下限温度以上、上限温度以下に維持するために、サセプタ105に供給する熱媒体の温度が求められる。例えば、下限温度(ここでは50℃)が記憶され、下限温度以上の温度に温度制御された熱媒体がサセプタ105に供給されるように設定されている。サセプタ105から還流された熱媒体は、加熱または冷却され、50℃の設定温度の熱媒体がサセプタ105に供給される。ここで、例えば、CVDガスとしてシランガスとアンモニアガスと窒素ガスとの混合ガスを供給し、基板110を下限温度以上上限温度以下の温度条件に維持することで、窒化ケイ素(SiN)からなるガスバリア層(B)が形成される。
真空プラズマCVD装置101の起動直後は、サセプタ105は室温であり、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流された熱媒体の温度は設定温度よりも低い。したがって、起動直後は、加熱冷却装置160は還流された熱媒体を加熱して設定温度に昇温させ、サセプタ105に供給することになる。この場合、サセプタ105および基板110は熱媒体によって加熱、昇温され、基板110は、下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持される。
複数枚の基板110に連続して薄膜を形成すると、プラズマから流入する熱によってサセプタ105が昇温する。この場合、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流される熱媒体は下限温度(50℃)よりも高温になっているため、加熱冷却装置160は熱媒体を冷却し、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。これにより、基板110を下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持しながら薄膜を形成することができる。このように、加熱冷却装置160は、還流された熱媒体の温度が設定温度よりも低温の場合には熱媒体を加熱し、設定温度よりも高温の場合は熱媒体を冷却し、いずれの場合も設定温度の熱媒体をサセプタに供給しており、その結果、基板110は下限温度以上、上限温度以下の温度範囲が維持される。薄膜が所定膜厚に形成されたら、基板110を真空槽102の外部に搬出し、未成膜の基板110を真空槽102内に搬入し、上記と同様に、設定温度の熱媒体を供給しながら薄膜を形成する。
[有機層(A)]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機層(A)を有する。この有機層(A)は、硬化性成分として多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる層であり、基材の層(B)が形成されたのと同じ側の面に形成される層である。
多官能芳香族(メタ)アクリレートの具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、特開2013−43384号公報の段落「0035」〜「0047」に記載されている多官能(メタ)アクリレートのうち、芳香族環を有するものが用いられうる。また、本発明の一実施形態において、多官能芳香族(メタ)アクリレートは、下記化学式1で表されるものであることが好ましい。
上記化学式1において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、RとRとは互いに結合して環を形成してもよい。RおよびRは、水素原子、アルキル基、アリール基のいずれも好ましいが、アルキル基としてはメチル基がより好ましく、アリール基としては、フェニル基がより好ましい。RおよびRは、水素原子またはアルキル基であることがさらに好ましい。RおよびRがともにアルキル基であって互いに結合して環を形成する場合、1,1−シクロヘキシリデン基を形成することが特に好ましい。RおよびRがともにアリール基であって互いに結合して環を形成する場合、付け根の炭素も含めてフルオレン環を形成することが特に好ましい。
また、RおよびRは置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、スルフィニル基(メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含み、脂肪族ヘテロ環基であってもヘテロアリール基であってもよく、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基等)、ヒドロキシ基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換されていてもよい。ただし、これらの置換基がさらに置換される場合、さらに置換された構造がさらに置換される前の定義に含まれるような置換の形態は除外される。例えば、置換基がアルキル基である場合、置換基としてのこのアルキル基はさらにアルキル基で置換されることはない(以下同様)。
上記化学式1において、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を表す。RおよびRの例としては、上述したRおよびRに対する置換基と同様のものが挙げられる。
上記化学式1において、mおよびnは、それぞれ独立して、0〜5の整数であり、m≧2のとき、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、n≧2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよい。そして、RおよびRのうち少なくとも2つは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、好ましくはRおよびRがすべて(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。(メタ)アクリロイルオキシ基を含む基の好ましい例としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、2−アクリロイルオキシエトキシ基、2−メタクリロイルオキシエトキシ基、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ基、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ基、2−オクタノイルオキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ基、2−ヘプタノイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ基、2、3−ビス(アクリロイルオキシ)プロポキシ基、2、3−ビス(メタクリロイルオキシ)プロポキシ基等が挙げられる。なお、m=n=1であることが最も好ましい。
ここで、上記化学式1で表される多官能芳香族(メタ)アクリレートは、下記化学式2で表されるものであることが好ましい。
上記化学式2において、R’およびR’は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基である。ここで、R’およびR’を構成するアルキル基およびアリール基の定義および好ましい形態は、化学式1について上述したRおよびRと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
上記化学式2において、LおよびLは、それぞれ独立して、2価の連結基である。かような2価の連結基の例として、アルキレン基(例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、2,2−プロピレン基(2,2−プロピリデン基、1,1−ジメチルメチレン基とも呼ばれる)、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、スルホニル基、およびこれらの2価の基が複数個直列に結合した2価残基(例えば、ポリエチレンオキシエチレン基、ポリプロピレンオキシプロピレン基、2,2−プロピレンフェニレン基等)が挙げられる。ここで、LおよびLは置換基を有していてもよく、LおよびLを置換することのできる置換基の例としては、化学式1について上述したRおよびRに対する置換基と同様のものが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されていてもよい。なかでも、LおよびLとしては、ヒドロキシ基で置換されていてもよい(好ましくは炭素数1〜3の)アルキレン基、アリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基が好ましく、無置換の(好ましくは炭素数1〜3の)アルキレン基、無置換のアリーレン基およびこれらが複数直列に結合した2価の基がより好ましい。
上記化学式2について、AcおよびAcは、それぞれ独立して、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
本発明において用いられる多官能芳香族(メタ)アクリレートの分子量は特に制限されないが、300〜1000であることが好ましく、400〜800であることがより好ましい。また、多官能芳香族(メタ)アクリレートは、重合性組成物中に2種以上含まれていてもよい。また、多官能芳香族(メタ)アクリレートのアクリル当量は、180〜360であることが好ましく、180より大きく360以下であることがより好ましく、210〜330であることがさらに好ましい。
以下に、上記化学式1で表される多官能芳香族(メタ)アクリレートの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
有機層(A)を形成するための重合性組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、多官能芳香族(メタ)アクリレート以外の硬化性成分(例えば、単官能芳香族(メタ)アクリレートや単官能または多官能の脂肪族または脂環式(メタ)アクリレート、スチレン誘導体、無水マレイン酸誘導体、エポキシ化合物、オキセタン誘導体など)や、各種のポリマー(例えば、ポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等)を含んでもよい。
重合性組成物における多官能芳香族(メタ)アクリレートの配合比率は、樹脂成分中、30〜99質量%であることが好ましく、50〜95質量%であることがより好ましく、60〜90質量%であることがさらに好ましく、70〜90質量%であることが特に好ましい。また、重合性組成物において、その他の硬化性成分、ポリマーの混合比率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはBASFジャパン社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
有機層(A)の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布してもよいし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
通常、硬化性成分を含む重合性組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm以上が好ましく、0.5J/cm以上がより好ましい。硬化性成分として、(メタ)アクリレート系化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2体積%以下が好ましく、0.5体積%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
有機層(A)の膜厚(1層あたり)は、好ましくは1000nm以上であり、より好ましくは1〜1.5μmであり、さらに好ましくは1.2〜1.4μmである。有機層(A)の膜厚がこのような範囲内の値であれば、ガスバリア性が向上し、さらに、密着性が高くなる。
有機層(A)の表面は、平滑であることが好ましい。有機層(A)の表面の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。有機層(A)の表面にはパーティクル等の異物、突起がないことが要求される。このため、有機層(A)の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
[遷移金属化合物を含む層(C)]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(C)を有する。層(C)は、電気化学的にガスバリア層(B)よりも酸化されやすく、層(C)の酸化を抑制する。これにより、ガスバリア層(B)の酸化による劣化とこれに伴う(特に高温高湿環境下での)ガスバリア性・耐屈曲性の低下を抑制する。
層(C)に含まれる遷移金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、遷移金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、または酸炭化物が挙げられる。なかでも、ガスバリア層(B)の酸化をより効果的に抑制するという観点からは、遷移金属化合物が遷移金属酸化物であることが好ましい。遷移金属化合物は1種単独であっても2種以上併用してもよい。
また、層(C)は、遷移金属をM、化学量論的に得られる遷移金属酸化物をMOx2とした場合に、x1<x2である金属酸化物MOx1を含むことが好ましい。かような金属酸化物を含むことで、ガスバリア性フィルムのガスバリア性能が向上し、高温高湿環境下であっても高いガスバリア性が維持される。x1<x2である金属酸化物MOx1を含むことによって、化学量論的な酸化度よりも低い酸化度である領域、つまりはさらなる酸化の余地がある領域が存在することとなるため、より高いガスバリア性が発揮されると考えられる。
例えば、Nb(ニオブ)の酸化物を例に挙げると、Nbの化学量論的に得られる酸化物は五酸化二ニオブであり、これはNbO2.5であるため、x2=2.5である。Nbは三酸化二ニオブの組成も取りうるが、本発明におけるx2は、酸化度の最も大きい化学量論的な化合物のx2を意味する。x1<x2である金属酸化物MOx1を含むとは、XPS等の組成分析方法で厚さ方向の組成プロファイルを測定した際に、x1<x2である測定点が得られるということ、Nbの場合は、x1<2.5である測定点が得られることを意味する。層(C)が複数種の金属を含有する場合であっても、それぞれの金属の比率とその合計から化学量論的なx2を計算して用いることができる。
x1<x2の関係を酸化度の指標としてx1/x2比で表すと、x1/x2比は、高温高湿下でのガスバリア性能がより向上することから、0.99以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。x1/x2比が小さくなるほど酸化抑制効果は高くなるが、それにつれて可視光での吸収も高くなるため、透明性が望まれる用途に使用する場合は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
x1/x2である領域の層(C)における厚さ方向の割合は、ガスバリア性の観点から、領域(C)の厚さに対して、1〜100%であることが好ましく、10〜100%であることがより好ましく、50〜100%であることがさらに好ましい。
x1/x2比の調整は、層(C)の形成をスパッタで行う場合を例に挙げると、ターゲットとして金属、もしくは、化学量論的に酸素が欠損した遷移金属酸化物を用い、スパッタの際に導入する酸素の量を適宜調整することで行うことができる。
x1は、厚さ方向のXPS分析を用いてMに対するOの原子比により求めることができる。x1の最小値がx1<x2となれば、x1<x2である金属酸化物MOx1を含むと言える。
《XPS分析条件》
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s、その他測定する金属に応じて定法により設定
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:一定時間スパッタ後、測定を繰り返す。1回の測定は、SiO換算で、約2.5nmの厚さ分となるようにスパッタ時間を調整する
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。
遷移金属とは、第3族元素から第12族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuなどが挙げられる。
なかでも、遷移金属化合物中の遷移金属は、ケイ素よりも酸化還元電位が低い金属であることが好ましい。ケイ素よりも酸化還元電位の低い遷移金属の化合物を含む層とすることで、より良好なバリア性が得られる。ケイ素よりも酸化還元電位が低い金属の具体例としては、例えば、ニオブ、タンタル、バリウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウム、ランタン、セリウム等が挙げられる。これら金属は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも特に第5族元素であるニオブ、タンタル、バナジウムがポリシラザン改質バリア層の酸化抑制効果が高いため、好ましく用いることができる。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、遷移金属がバナジウム、ニオブおよびタンタルからなる群より選択される少なくとも1種の金属である、ガスバリア性フィルムである。さらに、光学特性の観点から、遷移金属化合物中の遷移金属は、透明性が良好な化合物が得られるニオブ、タンタルが特に好ましい。
主要な金属の標準酸化還元電位およびx2を下表に示す。
層(C)中における遷移金属化合物の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、遷移金属化合物の含有量が、層(C)の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%である(すなわち、層(C)は遷移金属化合物からなる)ことが最も好ましい。
層(C)の形成方法は、金属元素と酸素との組成比を調整しやすいという観点から、気相成膜法である。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)などの化学気相成長法が挙げられる。中でも、下層へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、スパッタ法により形成することが好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタリング、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、およびRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。また、金属モードと、酸化物モードの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。DCスパッタリングやDMSスパッタリングを行なう際には、そのターゲットに遷移金属を用い、さらに、プロセスガス中に酸素を導入することで、遷移金属酸化物の薄膜を形成することができる。また、RF(高周波)スパッタリングで成膜する場合は、遷移金属の酸化物のターゲットを用いることができる。プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、遷移金属の酸化物、窒化物、窒酸化物、炭酸化物等の遷移金属化合物薄膜を作ることができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、膜厚等に応じて適宜選択することができる。
なかでも、成膜レートがより高く、より高い生産性を有することから、遷移金属の酸化物をターゲットとして用いるスパッタ法が好ましい。
層(C)は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。層(C)が2層以上の積層構造である場合、それぞれの層(C)に含まれる遷移金属化合物は同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
層(C)は、層(B)の酸化を抑制してガスバリア性を維持する機能を有する層であると考えられるため、必ずしもガスバリア性は必要ではない。したがって、層(C)は比較的薄い層でも効果を発揮しうる。具体的には、層(C)の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ガスバリア性の面内均一性の観点から、0.5〜50nmであることが好ましく、5〜30nmであることがより好ましく、5〜10nmであることがさらに好ましい。
[基材]
本発明に係る基材としては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。該基材は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。即ち、これらの用途に本発明に係るガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルムにおける基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、ガスバリア性フィルムを前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、あるいは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、基材は透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明に係るガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
また、上記に挙げた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。当該基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」の記載された事項を適宜採用することができる。
基材の表面は、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。また、基材には易接着処理を行ってもよい。
該基材は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該基材が2層以上の積層構造である場合、各基材は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。
本発明に係る基材の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
[種々の機能を有する層]
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、種々の機能を有する層を設けることができる。
(アンカーコート層)
本発明に係る層(A)〜層(C)を形成する側の基材の表面には、基材と層(A)〜層(C)のいずれかとの密着性の向上を目的として、アンカーコート層を形成してもよい。
アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5.0g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
また、アンカーコート層は、物理蒸着法または化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化ケイ素を主体とした無機膜を形成することもできる。あるいは、特開2004−314626号公報に記載されているようなアンカーコート層を形成することで、その上に気相法により無機薄膜を形成する際に、基材側から発生するガスをある程度遮断して、無機薄膜の組成を制御するといった目的でアンカーコート層を形成することもできる。
また、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
(ハードコート層)
基材の表面(片面または両面)には、ハードコート層を有していてもよい。ハードコート層に含まれる材料の例としては、例えば、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含む層、すなわちハードコート層が形成される。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。予めハードコート層が形成されている市販の基材を用いてもよい。
ハードコート層の厚さは、平滑性および屈曲耐性の観点から、0.1〜15μmが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。
(平滑層)
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、基材と層(A)〜層(C)のいずれかとの間に、平滑層を有してもよい。本発明に用いられる平滑層は、突起等が存在する基材の粗面を平坦化し、あるいは、基材に存在する突起により凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性材料、または、熱硬化性材料を硬化させて作製される。
平滑層の感光性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズを用いることができる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
熱硬化性材料として具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、株式会社アデカ製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製の各種シリコン樹脂、日東紡株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。この中でも特に耐熱性を有するエポキシ樹脂ベースの材料であることが好ましい。
平滑層の形成方法は、特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑層の厚さとしては、フィルムの耐熱性を向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にする観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、十点平均粗さRzが、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲であれば、バリア層を塗布形式で塗布した場合であっても、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合であっても塗布性が損なわれることが少なく、また、塗布後の凹凸を平滑化することも容易である。
[電子デバイス]
本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく適用できる。すなわち、本発明は、本発明のガスバリア性フィルムと、電子デバイス本体と、を含む電子デバイスを提供する。
本発明の電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL素子または太陽電池が好ましく、有機EL素子がより好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
≪ガスバリア性フィルムの作製≫
〔実施例1:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
(基材)
基材としては、両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))を用いた。この基材のガスバリア層(B)を形成する面とは反対の面に、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように基材に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、基材のガスバリア層(B)を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように基材に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、クリアハードコート層付基材を得た。以降、本実施例および比較例においては、便宜上、このクリアハードコート層付基材を単に基材とする。
(真空プラズマCVD法によるガスバリア層(B)(SiN層)の形成)
上記で準備した基材を図2に示す真空プラズマCVD装置101にセットし、真空排気した後、当該基材の一方の面上に、SiNからなるガスバリア層(B)を形成した。この際に使用した高周波電源は27.12MHzの高周波電源であり、電極間距離は20mmとした。また、原料ガスとしては、シランガス流量を7.5sccm、アンモニアガス流量を50sccm、水素ガス流量を200sccm(sccmは、133.322Paにおける、cm/minである)として真空チャンバー内へ導入した。さらに、成膜開始時に基材温度を100℃とし、成膜時のガス圧を4Paに設定して、窒化ケイ素(SiN)を主成分とするガスバリア層(B)(SiN層)を膜厚30nmで形成した。
(遷移金属化合物を含む層(C)の形成)
上記で形成したガスバリア層(B)(SiN層)の面上に、マグネトロンスパッタ装置を用いたマグネトロンスパッタ法により、酸化ニオブからなる層(C)を形成した。この際、ターゲットとしては酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArおよびOを用いたDCスパッタにより、膜厚10nmの層(C)を形成した。なお、事前にガラス基板を用いた製膜により、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がNbO1.5となる条件を見出した。
(有機層(A)の形成)
上記で形成した遷移金属化合物を含む層(C)の面上に、以下の手法により有機層(A)を形成した。
すなわち、硬化性成分であるEBECRYL−600(ダイセルサイテック社製)15質量部、重合開始剤(BASFジャパン社製、IRGACURE907)1質量部、および2−ブタノン300質量部からなる重合性組成物をワイヤーバーにて塗布し、得られた塗膜に酸素濃度100ppmの大気雰囲気下で紫外線を照射(照射量=0.5J/cm)して当該塗膜を硬化させて、膜厚1.2μmの有機層(A)を形成した。このようにして、ガスバリア性フィルム1を作製した。なお、EBECRYL−600の化学構造式を以下に示す。
〔実施例2:基材−層(C)−層(B)−層(A)〕
基材上に、層(C)、層(B)および層(A)をこの順に形成したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム2を作製した。
〔実施例3:基材−層(A)−層(C)−層(B)〕
基材上に、層(A)、層(C)および層(B)をこの順に形成したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム3を作製した。
〔実施例4:基材−層(A)−層(B)−層(C)〕
基材上に、層(A)、層(B)および層(C)をこの順に形成したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム4を作製した。
〔比較例1:基材−層(A)−層(B)〕
基材上に、層(A)および層(B)をこの順に形成し、層(C)を形成しなかったこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム5を作製した。
〔比較例2:基材−SiO層−層(C)−層(A)〕
ガスバリア層(B)(SiN層)に代えてSiO層を形成したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム6を作製した。この際に使用した高周波電源は27.12MHzの高周波電源であり、電極間距離は20mmとした。また、原料ガスとしては、シランガス流量を7.5sccm、酸素ガス流量を50sccm(sccmは、133.322Paにおける、cm/minである)として真空チャンバー内へ導入した。さらに、成膜開始時に基材温度を100℃とし、成膜時のガス圧を4Paに設定して、酸化ケイ素(SiO)を主成分とするガスバリア層(B)(SiO層)を膜厚30nmで形成した。
〔比較例3:基材−層(B)−層(C)−他の有機層〕
有機層(A)を形成するのに用いた重合性組成物に含まれる硬化性成分として、EBECRYL−600に代えてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(ダイセルサイテック社製)を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム7を作製した。なお、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)の化学構造式を以下に示す。
〔比較例4:基材−層(B)〕
基材上に層(B)を形成し、層(A)および層(C)を形成しなかったこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム8を作製した。
〔比較例5:基材−層(C)〕
基材上に層(C)を形成し、層(A)および層(B)を形成しなかったこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム9を作製した。
〔実施例5:基材−層(B)−層(C)−層(A)−層(B)−層(C)−層(A)〕
基材上に、層(B)、層(C)および層(A)をこの順に形成するプロセスを2回繰り返したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム10を作製した。
〔実施例6:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
有機層(A)の膜厚を0.8μmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム11を作製した。
〔実施例7:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
有機層(A)の膜厚を1.5μmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム12を作製した。
〔実施例8:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
ガスバリア層(B)の膜厚を5nmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム13を作製した。
〔実施例9:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
ガスバリア層(B)の膜厚を60nmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム14を作製した。
〔実施例10:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
層(C)の膜厚を0.5nmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム15を作製した。
〔実施例11:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
層(C)の膜厚を30nmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム16を作製した。
〔実施例12:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
層(C)の構成材料として、酸化ニオブに代えて酸化タンタルを用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム17を作製した。なお、酸化タンタルからなる層(C)の形成は、マグネトロンスパッタ装置を用いたマグネトロンスパッタ法により行った。この際、ターゲットとしてはTaターゲットを用い、プロセスガスにはArおよびOを用いたDCスパッタにより、膜厚10nmの層(C)を形成した。
〔実施例13:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
層(C)の構成材料として、酸化ニオブに代えて酸化チタンを用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム18を作製した。なお、酸化チタンからなる層(C)の形成は、マグネトロンスパッタ装置を用いたマグネトロンスパッタ法により行った。この際、ターゲットとしては酸素欠損型TiOターゲットを用い、プロセスガスにはArおよびOを用いたDCスパッタにより、膜厚10nmの層(C)を形成した。なお、事前にガラス基板を用いた製膜により、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がTiO1.8となる条件を見出した。
〔実施例14:基材−層(B)−層(C)−層(A)〕
層(C)の構成材料として、酸化ニオブに代えて酸化ジルコニウムを用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、ガスバリア性フィルム19を作製した。なお、酸化ジルコニウムからなる層(C)の形成は、マグネトロンスパッタ装置を用いたマグネトロンスパッタ法により行った。この際、ターゲットとしてはZrターゲットを用い、プロセスガスにはArおよびOを用いたDCスパッタにより、膜厚10nmの層(C)を形成した。
≪ガスバリア性フィルムの評価≫
〔水蒸気透過率1の測定〕
上記で作製したガスバリア性フィルム1〜19について、以下の方法に従って水蒸気透過率を測定した。結果を下記の表2に示す。
(装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気透過率評価用セルの作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム蒸着後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を介してアルミニウム蒸着側と対面させ、紫外線を照射することで、水蒸気透過率評価用セルを作製した。
上記で得られた両面を封止した試料を40℃90%RHの高湿環境下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算し、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率(単位:g/m・day)を算出した(水蒸気透過率1)。
なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、85℃85%RHの高温高湿環境下で保存し、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
〔水蒸気透過率2の測定〕
上記水蒸気透過率1の測定において、測定環境を40℃90%RHから85℃85%RHの高温高湿環境に変更したこと以外は同様にして、高温高湿条件下でのガスバリア性フィルムの水蒸気透過率(単位:g/m・day)を測定した(水蒸気透過率2)。結果を下記の表2に示す。
〔耐屈曲性の評価〕
ガスバリア性フィルム試料を、23℃55%RHの環境下、半径が10mmの曲率となるように180度の角度で、ガスバリア性フィルム試料の基材が内側になるように折り曲げ、その後開放を行い、この操作を1000回繰り返した後、上記水蒸気透過率2の測定と同様にして、85℃85%RHの高温高湿環境における水蒸気透過率(単位:g/m・day)を測定した(水蒸気透過率3)。結果を下記の表2に示す。
〔密着性試験〕
密着性の評価は、JIS K5400にあるクロスカット(碁盤の目)法により、ガスバリア性フィルムの基材とは反対の側をカットして、下記基準で評価した。
5:剥離マス数0〜5/100
4:剥離マス数6〜10/100
3:剥離マス数11〜30/100
2:剥離マス数31〜50/100
1:剥離マス数51以上/100
なお、実用に耐えうるのはランク3以上である。
上記結果より、実施例に係るガスバリア性フィルム1〜4および10〜19では、密着性が十分に確保されており、しかも高温高湿環境下での耐久性に優れることがわかる。
ここで、実施例1と比較例1との比較から、ガスバリア層(B)としてSiN層を設け、これに芳香族(メタ)アクリレートを含む有機層(A)を積層すると、低温(40℃)条件下でのガスバリア性や各層間での密着性が確保されるが、遷移金属化合物を含む層(C)が存在しなければ高温高湿(85℃85%RH)環境下でのガスバリア性や耐屈曲性に劣ることがわかる。
また、ガスバリア層(B)としてSiO層を設けた比較例2では、層(C)を設けたとしてもやはり高温高湿(85℃85%RH)環境下でのガスバリア性や耐屈曲性に劣ることから、層(C)を設けることによる高温高湿(85℃85%RH)環境下でのガスバリア性や耐屈曲性という効果は、ガスバリア層(B)が窒化ケイ素(SiN)を主成分とする場合に特有のものであることがわかる。
さらに、有機層(A)として芳香族(メタ)アクリレート以外の硬化性成分を用いた場合(比較例3)にもやはり、層(C)を設けたとしても高温高湿(85℃85%RH)環境下でのガスバリア性や耐屈曲性が低下してしまい、密着性も十分に得られていない。
10 ガスバリア性フィルム、
11 基材、
12 ガスバリア層(B)、
13 遷移金属化合物を含む層(C)、
14 有機層(A)、
101 プラズマCVD装置、
102 真空槽、
103 カソード電極、
105 サセプタ、
106 熱媒体循環系、
107 真空排気系、
108 ガス導入系、
109 高周波電源、
110 基板、
160 加熱冷却装置。

Claims (9)

  1. 基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に配置された、多官能芳香族(メタ)アクリレートを含む重合性組成物の硬化物からなる有機層(A)と、
    前記基材の、前記有機層(A)と同じ側の面に配置された、窒化ケイ素を主成分とするガスバリア層(B)と、
    前記ガスバリア層(B)の少なくとも一方の面に隣接するように配置された、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(C)と、
    を有する、ガスバリア性フィルム。
  2. 前記多官能芳香族(メタ)アクリレートが、下記化学式1で表されるものである、請求項1に記載のガスバリア性フィルム:
    式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、RとRとは互いに結合して環を形成してもよく、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を表し、mおよびnは、それぞれ独立して、0〜5の整数であり、m≧2のとき、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、n≧2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、RおよびRのうち少なくとも2つは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。
  3. 前記多官能芳香族(メタ)アクリレートが、下記化学式2で表されるものである、請求項2に記載のガスバリア性フィルム:
    式中、R’およびR’は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、LおよびLは、それぞれ独立して、2価の連結基であり、AcおよびAcは、それぞれ独立して、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
  4. 前記有機層(A)の膜厚が1000nm以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記遷移金属化合物中の遷移金属がケイ素よりも酸化還元電位が低い金属である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記層(C)が、前記遷移金属化合物中の遷移金属をM、化学量論的に得られる遷移金属酸化物をMOx2とした場合に、x1<x2である金属酸化物MOx1を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  7. 前記遷移金属化合物中の遷移金属がバナジウム、ニオブおよびタンタルからなる群より選択される少なくとも1種の金属である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  8. 基材、層(B)、層(C)および層(A)がこの順に配置されてなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  9. 層(A)、層(B)および層(C)が積層されてなるユニットを2つ以上有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112724444A (zh) * 2020-12-14 2021-04-30 兰州空间技术物理研究所 一种工业封装用超高阻隔薄膜及其制备方法

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