JPWO2016190284A6 - ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

有機ELデバイス等の電子デバイス用の基板として使用可能なレベルの非常に高いガスバリア性を示すガスバリア性フィルムを提供する。
遷移金属を除く金属の酸化物を含むガスバリア層と遷移金属の酸化物を含む遷移金属酸化物含有層とを互いに隣接するように基材の一方の面に配置したうえで層の構成材料の酸化物が化学量論的な組成に対して高度に酸素欠損の組成となる領域が存在するように構成するか、遷移金属を除く金属および遷移金属を含有するガスバリア層を基材の一方の面に配置したうえで遷移金属を除く金属および遷移金属の複合酸化物の酸素欠損領域が前記ガスバリア層の厚さ方向に連続して所定値以上の厚さで存在するように構成する。

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムおよびその製造方法に関する。
フレキシブル電子デバイス、特にフレキシブル有機ELデバイスには、基板フィルムや封止フィルムとしてガスバリア性フィルムが用いられている。これらに用いられるガスバリア性フィルムには高いバリア性が求められている。
一般に、ガスバリア性フィルムは、基材フィルム上に蒸着法、スパッタ法、CVD法等の気相成膜法によって無機ガスバリア層を形成することにより製造されている。一方、近年、基材上に溶液を塗布して形成された前駆体層にエネルギーを印加して、ガスバリア層を形成する製造方法も検討されてきている。特に、前駆体としてポリシラザン化合物を用いた検討が広く行われており、塗布による高生産性とバリア性とを両立する技術として検討が進められている。特に波長172nmのエキシマ光を用いたポリシラザン層の改質が注目されている。
また、生産性向上の観点から、ロールトゥロール方式を用いてガスバリア性フィルムを製造する技術として、例えば、スパッタ等の物理蒸着(PVD)製膜装置を用い、ロールトゥロール方式によりガスバリア性フィルムを製造する検討もなされてきている(例えば、特開2005−035128号公報を参照)。しかしながら、従来の技術では、例えば有機ELデバイス等の電子デバイス用の基板として用いることが可能なレベル(WVTRとして10−5〜10−6台)のガスバリア性を得ることは困難であるという問題があった。
また、従来、スパッタ等のPVD法による無機膜の製膜は、レンズコーティングといった光学薄膜の領域でも広く検討されている(例えば、特開2005−298833号公報および特許第4178190号公報を参照)。しかしながら、これらの技術は光学性能の向上に特化したものであることから、ガスバリア性フィルムに転用できる技術に乏しく、特に、PVD製膜の積層構成で高いガスバリア性を発現させる技術の検討は全くなされていない。
さらに、従来、スパッタ等のPVD法による無機膜の製膜について、多種金属の複合化合物を用いたハイバリア化が広く検討されている。例えば特表2010−524732号公報では、透明な熱可塑性フィルム上に透過バリア層を含む透明バリアフィルムにおいて、透過バリア層を亜鉛、スズおよび酸素の元素の化合物から構成し、かつ亜鉛の質量割合を所定の範囲内の値に制御する技術が開示されている。特表2010−524732号公報の実施例では、Zn−Sn合金ターゲットを使用したスパッタ法により厚さ200nmのZnSnO層を形成しているが、ガスバリア性(WVTR)としては2×10−2(g/m/day)レベルであり、十分なガスバリア性は得られていない。
また、特開2011−213102号公報には、所定の表面粗さを有する高分子フィルム基材の片面または両面に、ZnSおよびSiOを含有してなる混合物を主成分とした混合薄膜層を形成し、ZnSをM、酸化物をLとして表記したときに混合薄膜層の組成を「M(1−X)(0.7≦X≦0.9)」とする技術が開示されている。特開2011−213102号公報の実施例では、ZnS−SiO混合焼結材ターゲットを使用したスパッタ法により厚さ50nmのZnS−SiO層を形成しているが、ガスバリア性(WVTR)としては4×10−2(g/m/day)(40℃90%RH)レベルであり、やはり十分なガスバリア性は得られていない。
このように、従来、気相製膜法を用いてガスバリア性フィルムを作製する技術は種々提案されているものの、有機ELデバイス等の電子デバイス用の基板として使用可能なレベルの非常に高いガスバリア性を示すフィルムは実現できていないのが現状である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機ELデバイス等の電子デバイス用の基板として使用可能なレベルの非常に高いガスバリア性を示すガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、遷移金属を除く金属の酸化物を含むガスバリア層と遷移金属の酸化物を含む遷移金属酸化物含有層とを互いに隣接するように基材の一方の面に配置したうえで層の構成材料の酸化物が化学量論的な組成に対して高度に酸素欠損の組成となる領域が存在するように構成するか、遷移金属を除く金属および遷移金属を含有するガスバリア層を基材の一方の面に配置したうえで遷移金属を除く金属および遷移金属の複合酸化物の酸素欠損領域が前記ガスバリア層の厚さ方向に連続して所定値以上の厚さで存在するように構成することで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態は、遷移金属を除く金属の酸化物を含むガスバリア層と遷移金属の酸化物を含む遷移金属酸化物含有層とが互いに隣接するように基材の一方の面に配置された層構成を有するガスバリア性フィルムに関する(以下、このような層構成を有するガスバリア性フィルムを「第1の形態」とも称する)。この第1の形態の一実施形態によれば、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置された、遷移金属を除く金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリア層と、前記第1のガスバリア層に隣接するように配置された、遷移金属(M2)の酸化物を含有する遷移金属酸化物含有層とを有するガスバリア性フィルムが提供される。そして、当該ガスバリア性フィルムは、下記(1)、(2)または(3)の少なくともいずれかを満たす点に特徴がある:
(1)前記第1のガスバリア層において、前記遷移金属を除く金属(M1)の最大価数をa、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記金属(M1)の酸化物の組成を(M1)Oとしたときに、前記ガスバリア層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域が存在する、
u>0、かつ、v≧0、かつ、w≧0、かつ、(2u+3v+2w)/a<0.85;
(2)前記遷移金属酸化物含有層において、前記遷移金属(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、前記遷移金属の酸化物の組成を(M2)Oとしたときに、前記遷移金属酸化物層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域が存在する、
x>0、かつ、y≧0、かつ、(2x+3y)/b<0.85;
(3)前記第1のガスバリア層および前記遷移金属酸化物含有層のそれぞれに含有される前記酸化物を、それぞれ前記(1)および前記(2)に示した組成で表したときに、前記第1のガスバリア層の厚さ方向の少なくとも一部、および、前記遷移金属酸化物含有層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域の組み合わせが存在する、
(2u+3v+2w)/a+(2x+3y)/b<1.85。
本発明の第1の形態の他の実施形態によれば、上記と同様の層構成を有するガスバリア性フィルムであって、前記第1のガスバリア層と前記遷移金属酸化物含有層との積層体が、下記(4)を満たすことを特徴とするものもまた、提供される:
(4)前記金属(M1)と前記遷移金属(M2)とが同時に存在する混合領域を有し、前記(M1)の最大価数をa、前記(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記混合領域の組成を(M1)(M2)としたときに、前記混合領域の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域を有する:
0.02≦p≦98、かつ、q>0、かつ、r≧0、かつ、s≧0、かつ、
(2q+3r+2s)/(a+bp)<0.85。
本発明の他の形態によれば、遷移金属を除く金属および遷移金属を含有するガスバリア層が基材の一方の面に配置された層構成を有するガスバリア性フィルムに関する(以下、このような層構成を有するガスバリア性フィルムを「第2の形態」とも称する)。当該形態によれば、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置された、遷移金属を除く金属(M1)および遷移金属(M2)を含有する第1のガスバリア層とを有するガスバリア性フィルムが提供される。そして、当該ガスバリア性フィルムは、上記第1のガスバリア層が、下記(5)を満たす点に特徴がある:
(5)前記金属(M1)の最大価数をa、前記遷移金属(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記第1のガスバリア層の組成を(M1)(M2) としたときに、前記第1のガスバリア層の厚さ方向に連続して5nm以上の領域が、下記数式を満足する領域[a]である。
0.02≦p≦98、かつ、q>0、かつ、r≧0、かつ、s≧0、かつ、
(2q+3r+2s)/(a+bp)<1。
なお、本発明のさらに他の形態によれば、上記の各形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法もまた、提供される。ここで、第1の形態に係る製造方法は、前記基材と前記第1のガスバリア層との積層体の、前記第1のガスバリア層の前記基材とは反対側の面に、前記遷移金属酸化物含有層を気相成膜法により形成する工程を含み、前記遷移金属酸化物含有層を形成する工程において、上記(2)を満たすように、製膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、製膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、製膜時のガスの供給量、製膜時の真空度、および、製膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節する点に特徴がある。
また、第2の形態に係る製造方法は、前記基材の少なくとも一方の面に前記第1のガスバリア層を形成する工程を含み、前記第1のガスバリア層を形成する工程は、形成される第1のガスバリア層が上記(5)を満たすように、前記金属(M1)および前記遷移金属(M2)を含む複合酸化物を前記基材の少なくとも一方の面に共蒸着させることを含む点に特徴がある。
本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。図1において、10はガスバリア性フィルムであり、11は基材であり、12は第1のガスバリア層であり、13は遷移金属酸化物含有層である。 本発明の第2の形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。図2において、10はガスバリア性フィルムであり、11は基材であり、12は第1のガスバリア層である。 真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。図3において、101はプラズマCVD装置であり、102は真空槽であり、103はカソード電極であり、105はサセプタであり、106は熱媒体循環系であり、107は真空排気系であり、108はガス導入系であり、109は高周波電源であり、110は基板であり、160は加熱冷却装置である。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
≪第1の形態≫
本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムは、その基本構成として、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置された、遷移金属を除く金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリア層と、前記第1のガスバリア層に隣接するように配置された、遷移金属(M2)の酸化物を含有する遷移金属酸化物含有層とを有している。なお、本発明に係るガスバリア性フィルムの特徴的な構成の詳細については、後述する。
図1は、本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。図1に示すガスバリア性フィルム10は、基材11、第1のガスバリア層12、および遷移金属酸化物含有層13がこの順に配置されてなる。なお、本発明の第1の形態において、第1のガスバリア層12および遷移金属酸化物含有層13は隣接して配置される限り、基材側から第1のガスバリア層12および遷移金属酸化物含有層13の順(図1)に配置されてもよいし、基材側から遷移金属酸化物含有層13および第1のガスバリア層12の順に配置されてもよい。また、基材の一方の面に第1のガスバリア層12および遷移金属酸化物含有層13が配置される形態だけではなく、基材の両面にガスバリア層12および遷移金属酸化物含有層13が配置されていてもよい。さらに、基材と各層との間、または、各層上には他の層が配置されていてもよい。
ただし、より高いガスバリア性を発揮させるという観点からは、図1に示すように、基材側から第1のガスバリア層12および遷移金属酸化物含有層13の順に配置される形態が好ましい。そしてこの際、ガスバリア性フィルムは上記(2)を満たすものであることが特に好ましい。
[基材]
本発明(第1の形態および第2の形態に共通である)に係る基材11としては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。該基材は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。すなわち、これらの用途に本発明に係るガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルムにおける基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、ガスバリア性フィルムを前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、あるいは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスに用いられることから、基材は透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明に係るガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
また、上記に挙げた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。当該基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」の記載された事項を適宜採用することができる。
基材の表面は、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。また、基材には易接着処理を行ってもよい。
該基材は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該基材が2層以上の積層構造である場合、各基材は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。
本発明に係る基材の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
[第1のガスバリア層]
本発明において、第1のガスバリア層12は、遷移金属を除く金属(M1)(好ましくは、当該金属(M1)の酸化物)を必須に含有する。これにより、第1のガスバリア層は、ガスバリア性を示す。第1のガスバリア層のガスバリア性は、基材上に当該第1のガスバリア層を形成させた積層体で算出した際、水蒸気透過率(WVTR)が0.1g/(m ・day)以下であることが好ましい。ここで、第1の形態において、第1のガスバリア層12は遷移金属を除く金属(M1)の酸化物を必須に含有する。
遷移金属を除く金属(M1)としては特に制限されず、遷移金属以外の任意の金属が単独でまたは組み合わせて用いられうるが、遷移金属を除く金属(M1)は、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属からなる群から選択される金属を含むことが好ましい。遷移金属を除く金属(M1)としては、例えば、Si、Al、In、Sn、Znなどが挙げられる。また、第1の形態において、第1のガスバリア層は、金属(M1)の酸化物以外にも、当該金属(M1)の窒化物、炭化物を含んでもよい(すなわち、酸窒化物または酸炭化物の形態であってもよい)。なかでも、M1はSi、SnまたはZnを含むことが好ましく、Siを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。また、第1の形態においてM1がSiを含む場合、第1のガスバリア層はSiの酸化物および/またはSiの窒化物を主成分として含むことが好ましい。なお、「第1のガスバリア層がSiの酸化物および/またはSiの窒化物を主成分として含む」とは、第1のガスバリア層におけるSiの酸化物および/またはSiの窒化物の量(双方を含む場合はその合計量)が50質量%以上であることを意味し、この値は好ましくは80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。また、第1の形態に係るガスバリア性フィルムを構成する第1のガスバリア層における遷移金属の含有量について特に制限はないが、後述する遷移金属酸化物含有層を別途設けることによる意義を損なわないという観点からは、第1の形態に係るガスバリア性フィルムを構成する第1のガスバリア層に含まれる金属元素の全体に対して2原子%未満であることが好ましい。
第1のガスバリア層の膜厚は、特に制限されないが、5〜1000nmであることが好ましい。このような範囲であれば、高いガスバリア性能、折り曲げ耐性、断裁加工適性に優れる。また、第1のガスバリア層は隣接する2層以上から構成されてもよい。
第1の形態において第1のガスバリア層を形成するための方法としては、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相製膜法が用いられうる。一例として、従来公知の蒸着法、反応性蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD法)などの気相製膜法が用いられうる。これらの気相製膜法は公知の方法で用いることができる。
ここで、例えば、CVD法は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基材表面または気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマを励起源としたプラズマCVD法(PECVD法)である真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられる。特に、PECVD法が好ましい方法である。以下、この手法について詳しく説明する。
(真空プラズマCVD法)
真空プラズマCVD法は、プラズマ源を搭載した真空容器に材料ガスを流入させ、電源からプラズマ源に電力供給することで真空容器内に放電プラズマを発生させ、プラズマで材料ガスを分解反応させ、生成された反応種を基材に堆積させる方法である。真空プラズマCVD法により得られる気相成膜バリア層は、原材料である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、目的の化合物を製造できるため好ましく用いられる。
原材料の化合物としては、ケイ素化合物、アルミニウム化合物等の遷移金属を除く金属(M1)を含む化合物を用いることが好ましい。これら原材料の化合物は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの、ケイ素化合物、アルミニウム化合物としては、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、公知の化合物としては特開2013−063658号公報の段落「0028」〜「0031」、特開2013−047002号公報の段落「0078」〜「0081」等に記載された化合物を挙げることができる。好ましくは、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して酸化物等の無機物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気などが挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスと混合してもよい。原材料の化合物を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望の気相成膜バリア層を得ることができる。以下、好適な形態である真空プラズマCVD法について具体的に説明する。
図3は、真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。図3において、真空プラズマCVD装置101は、真空槽102を有しており、真空槽102の内部の底面側には、サセプタ105が配置されている。また、真空槽102の内部の天井側には、サセプタ105と対向する位置にカソード電極103が配置されている。真空槽102の外部には、熱媒体循環系106と、真空排気系107と、ガス導入系108と、高周波電源109が配置されている。熱媒体循環系106内には熱媒体が配置されている。熱媒体循環系106には、熱媒体を移動させるポンプと、熱媒体を加熱する加熱装置と、冷却する冷却装置と、熱媒体の温度を測定する温度センサと、熱媒体の設定温度を記憶する記憶装置とを有する加熱冷却装置160が設けられている。加熱冷却装置160は、熱媒体の温度を測定し、熱媒体を記憶された設定温度まで加熱または冷却し、サセプタ105に供給するように構成されている。図3に記載の装置の詳細は、国際公開第2012/090644号の段落「0080」〜「0098」等を参照することができる。
[遷移金属酸化物含有層]
遷移金属酸化物含有層13は、本発明の第1の形態において必須に設けられる層であり、遷移金属(M2)の酸化物を必須に含有し、かつ、遷移金属を除く金属(M1)を実質的に含有しない層である(ただし、混合領域を除く)。遷移金属酸化物含有層は、上述した第1のガスバリア層と接して形成された際に、両者の界面において、第1のガスバリア層に含有される金属(M1)と、遷移金属(M2)との複合酸化物を形成する。その際に、酸素や窒素の比率を本発明の範囲とすることで、金属(M1)と遷移金属(M2)とが直接結合した緻密な構造を形成することによって、バリア性が向上すると考えられる。なお、第1の形態においては、上述したような複合酸化物が形成される領域を「混合領域」とも称する。
遷移金属(M2)としては特に制限されず、任意の遷移金属が単独でまたは組み合わせて用いられうる。ここで、遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuなどが挙げられる。
なかでも、良好なバリア性が得られる遷移金属(M2)としては、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられる。これらのなかでも、種々の検討結果から、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、第1のガスバリア層に含有される金属(M1)に対する結合が生じやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。遷移金属(M2)が第5族元素(特に、Nb)であって、上述した金属(M1)がSiであると、著しいガスバリア性の向上効果が得られる。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属(M2)は、透明性が良好な化合物が得られるNb、Taが特に好ましい。
また、遷移金属酸化物含有層は、遷移金属(M2)の酸化物以外にも、当該遷移金属(M2)の窒化物を含んでもよい(すなわち、酸窒化物の形態であってもよい)。
遷移金属酸化物含有層における遷移金属酸化物の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、遷移金属酸化物の含有量が、遷移金属酸化物含有層の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%である(すなわち、遷移金属酸化物含有層は遷移金属酸化物からなる)ことが最も好ましい。また、遷移金属酸化物含有層における遷移金属以外の金属の含有量について特に制限はないが、上述した第1のガスバリア層を別途設けることによる意義を損なわないという観点からは、遷移金属酸化物含有層に含まれる金属元素の全体に対して2原子%未満であることが好ましい。
遷移金属酸化物含有層は、金属元素と酸素との組成比を調整しやすいという観点から、気相成膜法により形成されることが好ましい。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、下層へのダメージを与えることなく製膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により形成することがより好ましい。
スパッタ法による製膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタリング、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、およびRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。また、金属モードと、酸化物モードとの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い製膜スピードで金属酸化物を製膜することが可能となるため好ましい。DCスパッタリングやDMSスパッタリングを行う際には、そのターゲットに遷移金属を用い、さらに、プロセスガス中に酸素を導入することで、遷移金属酸化物の薄膜を形成することができる。また、RF(高周波)スパッタリングで製膜する場合は、遷移金属の酸化物のターゲットを用いることができる。プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、遷移金属の酸化物、窒酸化物、酸炭化物等の遷移金属化合物薄膜を作ることができる。スパッタ法における製膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、膜厚等に応じて適宜選択することができる。
なかでも、製膜レートがより高く、より高い生産性を有することから、遷移金属の酸化物をターゲットとして用いるスパッタ法が好ましい。
遷移金属酸化物含有層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。遷移金属酸化物含有層が2層以上の積層構造である場合、遷移金属酸化物含有層に含まれる遷移金属酸化物は同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
遷移金属酸化物含有層は、第1のガスバリア層の酸化を抑制してガスバリア性を維持する機能を有する層であると考えられるため、必ずしもガスバリア性は必要ではない。したがって、遷移金属酸化物含有層は比較的薄い層でも効果を発揮しうる。具体的には、遷移金属酸化物含有層の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ガスバリア性の面内均一性の観点から、1〜200nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましく、3〜50nmであることがさらに好ましい。特に50nm以下であれば、遷移金属酸化物含有層の製膜の生産性がより向上する。
[酸素欠損領域]
上述した基本構成を有する、本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムは、下記(1)、(2)または(3)の少なくともいずれかを満たすことを特徴としている:
(1)前記第1のガスバリア層において、前記遷移金属を除く金属(M1)の最大価数をa、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記金属(M1)の酸化物の組成を(M1)Oとしたときに、前記ガスバリア層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域が存在する、
u>0、かつ、v≧0、かつ、w≧0、かつ、(2u+3v+2w)/a<0.85;
(2)前記遷移金属酸化物含有層において、前記遷移金属(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、前記遷移金属の酸化物の組成を(M2)Oとしたときに、前記遷移金属酸化物層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域が存在する、
x>0、かつ、y≧0、かつ、(2x+3y)/b<0.85;
(3)前記第1のガスバリア層および前記遷移金属酸化物含有層のそれぞれに含有される前記酸化物を、それぞれ前記(1)および前記(2)に示した組成で表したときに、前記第1のガスバリア層の厚さ方向の少なくとも一部、および、前記遷移金属酸化物含有層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域の組み合わせが存在する、
(2u+3v+2w)/a+(2x+3y)/b<1.85。
本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムの特徴である(1)〜(3)はいずれも、第1のガスバリア層および/または遷移金属酸化物含有層において所定のレベル以上の酸素欠損組成を少なくとも一部に含んでいることを表しているという点で同じ技術的特徴を共有している。
ここで、第1のガスバリア層および遷移金属酸化物含有層を、上記(1)〜(3)の少なくともいずれかを満たすように(すなわち、これらの層の少なくとも一部に所定のレベル以上の酸素欠損組成が存在するように)配置すると、金属(M1)と遷移金属(M2)とが同時に存在し、かつ、後述するように、金属(M1)と遷移金属(M2)との直接結合が存在すると推定される領域(すなわち、混合領域)が形成される。この混合領域の組成は、(M1)(M2)で示される。ここでは、金属(M1)の最大価数をa、遷移金属(M2)の最大価数をb、Oの価数を2、Nの価数を3とし、Cの価数は本来4であるが、本発明において形成される上記層においてCは−CH−のように水素原子を含んだ状態で結合していると考えられるため、Cの価数は2とする。そして、混合領域が化学量論的組成になっている場合は、(2q+3r+2s)/(a+bp)=1.0となる。この式は、金属(M1)および遷移金属(M2)の結合手の合計と、O、N、Cの結合手の合計とが同数であることを意味し、この場合、金属(M1)および遷移金属(M2)ともに、O、N、Cのいずれかと結合していることになる。なお、本発明において、金属(M1)として2種以上が併用される場合や、遷移金属(M2)として2種以上が併用される場合には、各元素の最大価数を各元素の存在比率によって加重平均することにより算出される複合価数を「最大価数」のaおよびbの値として採用するものとする(後述するガスバリア性フィルム3−16の作製の欄を参照)。
一方、(2q+3r+2s)/(a+bp)<1.0となる場合には、金属(M1)および遷移金属(M2)の結合手の合計に対して、O、N、Cの結合手の合計が不足していることを意味し、この状態が混合領域の「酸素欠損」である。酸素欠損状態においては、金属(M1)および遷移金属(M2)の余った結合手は互いに結合する可能性を有しており、金属(M1)や遷移金属(M2)の金属同士が直接結合すると、金属の間にOやNやCを介して結合した場合よりも緻密で高密度な構造が形成され、その結果として、ガスバリア性が向上すると考えられる。
以上では、第1のガスバリア層および遷移金属酸化物含有層が所定の酸素欠損組成を有する場合に、混合領域もまた酸素欠損状態となり、これがガスバリア性の向上をもたらすことを説明した。ここで、本発明者が検討を進めたところ、本発明の第1の形態に係る層構成を有するガスバリア性フィルムでは、第1のガスバリア層および遷移金属酸化物含有層が所定の酸素欠損組成を有していること(すなわち、上記(1)〜(3)の少なくともいずれかを満たすこと)を規定することなく、ガスバリア性が向上する構成を特定できることが判明した。かような観点から規定される本発明の第1の形態の他の実施形態に係るガスバリア性フィルムは、上述した基本構成を有し、かつ、第1のガスバリア層と遷移金属酸化物含有層との積層体が下記(4)を満たすことを特徴としている:
(4)前記金属(M1)と前記遷移金属(M2)とが同時に存在する混合領域を有し、前記(M1)の最大価数をa、前記(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記混合領域の組成を(M1)(M2)としたときに、前記混合領域の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域を有する:
0.02≦p≦98、かつ、q>0、かつ、r≧0、かつ、s≧0、かつ、
(2q+3r+2s)/(a+bp)<0.85。
混合領域において、0.02≦p≦98を満たすと、金属(M1)および遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与することでガスバリア性の向上に寄与すると考えられる。ここで、pは、好ましくは0.05≦p≦95であり、より好ましくは0.10≦p≦90であり、さらに好ましくは0.20≦p≦80である。このように、本発明の第1の形態に係る(4)もまた、金属(M1)および/または遷移金属(M2)が共存する領域において所定のレベル以上の酸素欠損組成を少なくとも一部に含んでいることを表しているという点で、上述した(1)〜(3)と同じ技術的特徴を共有している。
また、上述したように、(2q+3r+2s)/(a+bp)<0.85を満たす混合領域が存在すれば、ガスバリア性の向上効果が発揮されることが確認されたが、好ましくは(2q+3r+2s)/(a+bp)<0.80であり、より好ましくは(2q+3r+2s)/(a+bp)<0.70であり、さらに好ましくは(2q+3r+2s)/(a+bp)<0.65である。一方、透明性等の光学特性の観点から、好ましくは(2q+3r+2s)/(a+bp)>0.40であり、より好ましくは(2q+3r+2s)/(a+bp)>0.50である。
なお、本発明において良好なガスバリア性が得られる上記(4)に記載の関係を満たす組成を有する混合領域の厚さは、後述するXPS分析により検出可能である厚さであればよく、特に制限されないが、具体的にはSiO換算のスパッタ厚さとして、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは2nm以上であり、さらに好ましくは4nm以上である。また、透明性等の光学特性の観点から、第1のガスバリア層と遷移金属酸化物含有層との積層体が上記(4)を満たす場合において、当該積層体が有するp>98である領域の厚さは、好ましくは5nm以下である。
上述したような構成を有するガスバリア性フィルムは、有機ELデバイス等の電子デバイス用の基板として使用可能なレベルの非常に高いガスバリア性を示す。
ここで、本発明者が種々検討を行った結果、遷移金属を除く金属(M1)の化合物(酸化物)の酸素欠損組成膜を単独で用いてガスバリア層を形成したり、遷移金属(M2)の化合物(酸化物)の酸素欠損組成膜を単独で用いてガスバリア層を形成したりすると、酸素欠損の程度が大きくなるにつれてガスバリア性が向上する傾向は観察されたものの、著しいガスバリア性の向上にはつながらなかった。これに対し、上述した本発明の第1の形態に係る構成のように、遷移金属を除く金属(M1)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層と、遷移金属(M2)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層とを積層し、遷移金属を除く金属(M1)と遷移金属(M2)とが同時に存在する混合領域を形成し、さらに、混合領域を酸素欠損組成とした場合に、酸素欠損の程度が大きくなるにつれてガスバリア性が著しく向上することが判明したのである。これは、上述したように、遷移金属を除く金属(M1)同士の結合や、遷移金属(M2)同士の結合よりも、遷移金属を除く金属(M1)と遷移金属(M2)との結合が生じやすいことに起因して、本発明に係る構成とすることにより緻密で高密度な構造が混合領域において形成されているためであると推定している。
本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムを製造すべく、第1のガスバリア層および遷移金属酸化物含有層を、上記(1)〜(3)の少なくともいずれかを満たすように(ひいては、上記(4)に規定されるような酸素欠損状態の混合領域が存在するように)形成するには、各層を形成する際の条件を適宜調節すればよい。
例えば、第1のガスバリア層を、上記(1)を満たすように形成する方法としては、第1のガスバリア層を気相製膜法によって製膜する場合には、製膜原料における金属(M1)と酸素との比率、製膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、製膜時のガスの供給量、製膜時の真空度、および、製膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節することで、酸化度(第1のガスバリア層における金属(M1)の酸化物の組成を(M1)Ow-としたときのuの値)を制御することが可能である。
同様に、遷移金属酸化物含有層を、上記(2)を満たすように形成する方法としては、遷移金属酸化物含有層を気相製膜法によって製膜する場合には、製膜原料における遷移金属(M2)と酸素との比率、製膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、製膜時のガスの供給量、製膜時の真空度、および、製膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節することで、酸化度(遷移金属酸化物含有層における遷移金属(M2)の酸化物の組成を(M2)Oとしたときのxの値)を制御することが可能である。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上述した本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法もまた、提供される。当該製造方法は、上記基材と上記第1のガスバリア層との積層体の、第1のガスバリア層の基材とは反対側の面に、遷移金属酸化物含有層を気相製膜法により形成する工程を含む。そして、遷移金属酸化物含有層を形成する工程において、上記(2)を満たすように、製膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、製膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、製膜時のガスの供給量、製膜時の真空度、および、製膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節することを特徴とするものである。なお、第1のガスバリア層および遷移金属酸化物含有層の双方を気相製膜法によって製膜する際に、上述した各条件を調節することによって、上記(1)および(2)のいずれをも満たさず、かつ、上記(3)を満たすように制御することも可能である。
上述した本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法において、基材上に、第1の形態において必須の層である第1のガスバリア層および遷移金属酸化物含有層をこの順に形成する際には、バッチ式で行ってもよいが、連続的に行うことが好ましい。これらの層の形成を連続的に行う方法としては、ロールトゥロール方式を利用する方法が挙げられる。ロールトゥロール方式を用いて連続的に製膜を行うことで、ある層の形成後から次の層の形成までの間にロールに巻き取る必要がないことから、生産性が向上し、さらにはロールに巻き取った際の層の表面への傷の発生などに起因するガスバリア層等の劣化を防止することができる。すなわち、上述した本発明の第1の形態に係る製造方法の好ましい実施形態は、基材の少なくとも一方の面に、第1のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程、および、第1のガスバリア層の基材とは反対側の面に、遷移金属酸化物含有層をロールトゥロール方式で形成する工程をさらに含み、この際、第1のガスバリア層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく遷移金属酸化物含有層を形成する工程を行うものである。
また、上述した本発明の第1の形態に係る製造方法が第2のガスバリア層(詳細は後述する)を形成する工程を含む場合、当該第2のガスバリア層の下層である遷移金属酸化物含有層の形成と、当該第2のガスバリア層との形成を連続的に行うことが好ましい。すなわち、上述した本発明の第1の形態に係る製造方法の好ましい実施形態は、第1のガスバリア層の基材とは反対側の面に、遷移金属酸化物含有層をロールトゥロール方式で形成する工程、および、遷移金属酸化物含有層の第1のガスバリア層とは反対側の面に、金属酸化物を含有する第2のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程をさらに含み、この際、遷移金属酸化物含有層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく第2のガスバリア層を形成する工程を行うものである。
さらに、上述した本発明の第1の形態に係る製造方法が上述した第2のガスバリア層を形成する工程を含む場合、第1のガスバリア層の形成、遷移金属酸化物含有層の形成、第2のガスバリア層の形成を、すべてロールトゥロール方式により連続的に行うことで、ガスバリア性フィルムの生産性をよりいっそう向上させることが可能となる。すなわち、上述した本発明の第1の形態に係る製造方法の好ましい実施形態は、基材の少なくとも一方の面に、第1のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程、第1のガスバリア層の基材とは反対側の面に、遷移金属酸化物含有層をロールトゥロール方式で形成する工程、および、遷移金属酸化物含有層の第1のガスバリア層とは反対側の面に、金属酸化物を含有する第2のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程をさらに含み、この際、第1のガスバリア層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく遷移金属酸化物含有層を形成する工程を行い、かつ、遷移金属酸化物含有層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく第2のガスバリア層を形成する工程を行うものである。
なお、上述したロールトゥロール方式を用いた連続製膜において、連続製膜装置の具体的な構成について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、連続製膜装置において隣接する製膜装置の雰囲気は、大気圧製膜→真空製膜であってもよいし、逆に真空製膜→大気圧製膜であってもよい。
例えば、第1のガスバリア層の形成、遷移金属酸化物含有層の形成、第2のガスバリア層の形成、さらに、遷移金属酸化物含有層の形成、金属酸化物を含有する第3のガスバリア層の形成すべてロールトゥロール方式により連続的に行ってもよいし、さらに、同様の積層構成の形成を繰り返してすべてロールトゥロール方式により連続的に行ってもよい。また、第1のガスバリア層の形成、遷移金属酸化物含有層の形成、第2のガスバリア層の形成を、すべてロールトゥロール方式により連続的に行って巻き取った後に、これを巻き出して、この上にさらに、第1のガスバリア層の形成、遷移金属酸化物含有層の形成、第2のガスバリア層の形成を、すべてロールトゥロール方式により連続的に行って巻き取ることを繰り返して、多層積層構成とすることもできる。
≪第2の形態≫
本発明の第2の形態に係るガスバリア性フィルムは、その基本構成として、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置されたガスバリア層とを有している。第2の形態に係るガスバリア層は、遷移金属を除く金属(M1)および遷移金属(M2)を必須に含有するものである点で、上述の第1の形態のガスバリア層とは異なる。ただし、説明の便宜のため、第2の形態に係るガスバリア性フィルムにおけるガスバリア層についても「第1のガスバリア層」と称することとし、特記しない限り、第1の形態と第2の形態とを区別しない文脈における「第1のガスバリア層」の概念には、第2の形態に係る「(第1の)ガスバリア層」も含まれるものとする。
図2は、本発明の第2の形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。図2に示すガスバリア性フィルム10は、基材11上に第1のガスバリア層12が配置されてなる。なお、基材の一方の面に第1のガスバリア層12が配置される形態だけではなく、基材の両面に第1のガスバリア層12が配置されていてもよい。さらに、基材と第1のガスバリア層との間、または、第1のガスバリア層上には他の層が配置されていてもよい。
[第1のガスバリア層]
上述したように、第1のガスバリア層12は、ガスバリア性を発揮する層であって、基材11の少なくとも一方の面に設けられ、遷移金属を除く金属(M1)(好ましくは、当該金属(M1)の酸化物)を必須に含有する層である。ここで、第2の形態において、第1のガスバリア層は遷移金属を除く金属(M1)および遷移金属(M2)を必須に含有する。
後述するように、第2の形態に係るガスバリア層は、遷移金属を除く金属(M1)および遷移金属(M2)の複合酸化物の酸素欠損領域がガスバリア層の厚さ方向に連続して所定値以上(具体的には、5nm以上)の厚さで存在する(このことを、本明細書では「ガスバリア層が領域[a]を有する」と表現している)ように構成されている点に特徴がある。この特徴の詳細については後述するが、この特徴を満たす限り、ガスバリア層の領域[a]以外の領域は、例えば、領域[a]には該当しない金属(M1)および遷移金属(M2)の複合酸化物(酸素欠損領域であっても、化学量論的な組成の領域であってもよい)の領域でありうる。また、ガスバリア層の領域[a]以外の領域は、金属(M1)の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物(酸素欠損領域であっても、化学量論的な組成の領域であってもよい)等の領域であってもよいし、遷移金属(M2)の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物(酸素欠損領域であっても、化学量論的な組成の領域であってもよい)等の領域であってもよい。
遷移金属を除く金属(M1)としては特に制限されない。当該金属(M1)の具体例、好ましい種類などについては、上述した第1の形態と同様であることから、ここでは詳細な説明を省略する。
遷移金属(M2)についても特に制限されない。当該遷移金属(M2)の具体例、好ましい種類などについても、上述した第1の形態と同様であることから、ここでは詳細な説明を省略する。
第2の形態においても上記と同様に、第1のガスバリア層の膜厚は特に制限されず、5〜1000nmであることが好ましい。このような範囲であれば、高いガスバリア性能、折り曲げ耐性、断裁加工適性に優れる。また、ガスバリア層は隣接する2層以上から構成されてもよい。
[酸素欠損領域]
第2の形態に係るガスバリア性フィルムにおいて、第1のガスバリア層は、下記(5)を満たす点に特徴がある。
(5)前記金属(M1)の最大価数をa、前記遷移金属(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記第1のガスバリア層の組成を(M1)(M2) としたときに、前記ガスバリア層の厚さ方向に連続して5nm以上の領域が、下記数式を満足する領域[a]である。
0.02≦p≦98、かつ、q>0、かつ、r≧0、かつ、s≧0、かつ、
(2q+3r+2s)/(a+bp)<1
上記(5)は、ガスバリア層が、金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の酸素欠損組成を、所定の厚さ以上にわたって含んでいることを表している。
上述したように、本発明に係る金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の組成は、(M1)(M2)で示される。この組成からも明らかなように、上記複合酸化物は、一部窒化物や炭化物の構造を含んでいてもよい。ここでは、金属(M1)の最大価数をa、遷移金属(M2)の最大価数をb、Oの価数を2、Nの価数を3とし、Cの価数は本来4であるが、本発明において形成される上記層においてCは−CH−のように水素原子を含んだ状態で結合していると考えられるため、Cの価数は2とする。そして、上記複合酸化物(一部窒化物または炭化物となっているものを含む)が化学量論的組成になっている場合は、(2q+3r+2s)/(a+bp)=1.0となる。この式は、金属(M1)および遷移金属(M2)の結合手の合計と、O、N、Cの結合手の合計とが同数であることを意味し、この場合、金属(M1)および遷移金属(M2)ともに、O、N、Cのいずれかと結合していることになる。なお、本発明において、金属(M1)として2種以上が併用される場合や、遷移金属(M2)として2種以上が併用される場合には、各元素の最大価数を各元素の存在比率によって加重平均することにより算出される複合価数を「最大価数」のaおよびbの値として採用するものとする(後述する実施例の欄を参照)。
一方、第2の形態における領域[a]のように(2q+3r+2s)/(a+bp)<1.0となる場合には、金属(M1)および遷移金属(M2)の結合手の合計に対して、O、N、Cの結合手の合計が不足していることを意味し、この状態が上記複合酸化物の「酸素欠損」である。酸素欠損状態においては、金属(M1)および遷移金属(M2)の余った結合手は互いに結合する可能性を有しており、金属(M1)や遷移金属(M2)の金属同士が直接結合すると、金属の間にOやNやCを介して結合した場合よりも緻密で高密度な構造が形成され、その結果として、ガスバリア性が向上すると考えられる。
また、本発明において、領域[a]は、0.02≦x≦98を満たす領域である。この領域では、金属(M1)および遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与することから、この条件を満たす領域[a]が所定値以上(5nm)の厚さで存在することで、ガスバリア性の向上に寄与すると考えられる。なお、金属(M1)および遷移金属(M2)の存在比率が近いほどガスバリア性の向上に寄与しうると考えられることから、領域[a]は、0.1<x<90を満たす領域を5nmの厚さで含むことが好ましく、0.2<x<80を満たす領域を5nmの厚さで含むことがより好ましく、0.3<x<70を満たす領域を5nmの厚さで含むことがさらに好ましい。
ここで、上述したように、(2q+3r+2s)/(a+bp)<1.0を満たす領域[a]が存在すれば、ガスバリア性の向上効果が発揮されることが確認されたが、領域[a]は、(2q+3r+2s)/(a+bp)≦0.9を満たすことが好ましく、(2q+3r+2s)/(a+bp)≦0.85を満たすことがより好ましく、(2q+3r+2s)/(a+bp)≦0.8を満たすことがさらに好ましい。ここで、領域[a]における(2q+3r+2s)/(a+bp)の値が小さくなるほど、ガスバリア性の向上効果は高くなるものの可視光での吸収も大きくなる。したがって、透明性が望まれる用途に使用するガスバリア性フィルムの場合には、(2q+3r+2s)/(a+bp)≧0.2であることが好ましく、(2q+3r+2s)/(a+bp)≧0.3であることがより好ましく、(2q+3r+2s)/(a+bp)≧0.4であることがさらに好ましい。
なお、本発明において良好なガスバリア性が得られる領域[a]の厚さは、SiO換算のスパッタ厚さとして、5nm以上である。この厚さは、8nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。
上述したような構成を有するガスバリア性フィルムは、第1の形態に係るガスバリア性フィルムと同様に、有機ELデバイス等の電子デバイス用の基板として使用可能なレベルの非常に高いガスバリア性を示す。
ここで、第1の形態の欄において上述したように、本発明者が種々検討を行った結果、遷移金属以外の金属(M1)の化合物(酸化物)の酸素欠損組成膜を単独で用いてガスバリア層を形成したり、遷移金属(M2)の化合物(酸化物)の酸素欠損組成膜を単独で用いてガスバリア層を形成したりしても、著しいガスバリア性の向上にはつながらなかった。これを受けて、遷移金属以外の金属(M1)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層と、遷移金属(M2)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層とを積層し、遷移金属以外の金属(M1)と遷移金属(M2)とが同時に存在する混合領域を形成し、さらに、当該混合領域を酸素欠損組成とすると、酸素欠損の程度が大きくなるにつれてガスバリア性がいっそう向上することを見出した。これは、上述したように、遷移金属以外の金属(M1)同士の結合や遷移金属(M2)同士の結合よりも、遷移金属を除く金属(M1)と遷移金属(M2)との結合が生じやすいことに起因して、混合領域を酸素欠損組成とすることで、緻密で高密度な構造が混合領域において形成されているためであると考えられる(これが、上述した「第1の形態」の有する技術的意義である)。
ここで、上述したような遷移金属以外の金属(M1)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層と、遷移金属(M2)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層との積層構成では、積層界面には複合酸化物からなる混合領域が形成される(第1の形態における(4))。しかしながら、当該混合領域に含まれる金属元素に占める各金属元素(M1またはM2)の存在比率は、混合領域の厚さ方向に対してある程度大きい傾きをもって傾斜している。したがって、上述した混合領域において金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の酸素欠損組成が形成されたとしても、その酸素欠損領域のガスバリア層の厚さ方向の厚さは限定されたものとなることが、さらなる検討の結果判明した。特に、ガスバリア性の向上効果の高い、(M1)/{(M1)+(M2)}が0.1〜0.9の範囲に含まれる領域の厚さはせいぜい10nm程度までしか形成されないことが判明した。その結果、上述した第1の形態の(4)のように(2q+3r+2s)/(a+bp)<0.85を満たす場合には優れたガスバリア性が発揮されうるものの、この条件を満たさないときには上記積層構成によって到達可能なガスバリア性は限定されたものとなっており、また、上記積層構成における各層の製膜厚さを増加させたとしても上記厚さにほとんど変化は見られなかった。
上述したような知見に基づき、本発明者は、金属(M1)および遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与するための条件である0.02≦x≦98を満たす、金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の酸素欠損組成の厚さを変化させて、ガスバリア性の向上効果が見られる臨界厚さについての検討を進めた。その結果、上述したように、上記厚さが5nm以上であれば、ガスバリア性の非常に著しい向上効果が見られることを確認し、本発明を完成させるに至ったのである。このように、本発明の第2の形態に係る(5)もまた、金属(M1)および/または遷移金属(M2)が共存する領域において酸素欠損の程度(ここでは酸素欠損領域の存在厚さ(=存在体積))を高めることによってガスバリア性の著しい向上を図っているという点で、上述した第1の形態に係る(1)〜(3)および(4)と同じ技術的特徴を共有している。
また、上述したように、遷移金属以外の金属(M1)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層と、遷移金属(M2)を主要成分とする化合物(酸化物)を含む層との積層界面における混合領域では、金属元素の全体に占める各金属元素(M1またはM2)の存在比率が、混合領域の厚さ方向に対してある程度大きい傾きをもって傾斜している。この点に関して本発明者がさらに検討を進めたところ、上記傾きの絶対値を小さい値に制御することで、金属元素の全体に占める各金属元素(M1またはM2)の存在比率の変動を抑え、金属(M1)および遷移金属(M2)が共存する領域[a]の厚さをより大きいものとすることが可能となることを見出した。ここで、金属元素の全体に占める遷移金属元素(M2)の存在比率は(M2)/{(M1)+(M2)}で表されるが、この分数表記の分子および分母を(M1)で除し、x=(M2)/(M1)の関係を用いて書き換えると、上記遷移金属元素(M2)の存在比率はx/(1+x)で表すことができる。そして、本発明に係るガスバリア層は、下記(6)をさらに満たすことで、より高いガスバリア性の向上効果を発揮しうることが見出されたのである:
(6)前記領域[a]において、x/(1+x)値(ここで、xは、金属(M1)に対する遷移金属(M2)の存在比率(原子比)である)の、前記ガスバリア層の厚さ方向の変化の傾きの絶対値が、厚さ1nmあたり0以上0.015[1/nm]以下である。
ここで、上記変化の傾きの絶対値は、好ましくは0.010[1/nm]以下であり、より好ましくは0.007[1/nm]以下であり、さらに好ましくは0.005[1/nm]以下である。なお、上記変化の傾きの絶対値としては、後述する実施例の欄に記載のように、XPS分析によって得られるガスバリア層の厚さ方向の組成分布プロファイルから、領域[a]に相当する分析測定点(2点以上の測定点が必要であり、3点以上の測定点が得られる条件で測定することが好ましい)を一次式で近似した場合の、当該一次式の傾きの絶対値を採用するものとする。
第2の形態においても、ガスバリア層を形成するための方法としては、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相製膜法が用いられうる。一例として、従来公知の気相製膜法が用いられうる。これらの気相製膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、上述した第1の形態における遷移金属酸化物含有層を形成する方法として例示した各種の気相製膜法が同様に用いられ、上記と同様の理由から、物理気相成長(PVD)法が好ましく、スパッタ法がより好ましい。
特に、上述した領域[a]を作製する方法としては、後述する実施例の欄に記載されているように、共蒸着法を用いることが好ましい。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上述した本発明の第2の形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法もまた、提供される。当該製造方法において、第1のガスバリア層を形成する工程は、形成されるガスバリア層が上述した条件(5)を満たすように、金属(M1)および前記遷移金属(M2)を含む複合酸化物を基材の少なくとも一方の面に共蒸着させることを含むことを特徴とするものである。このような共蒸着法として、好ましくは、共スパッタ法が挙げられる。本発明において採用される共スパッタ法は、例えば、金属(M1)および遷移金属(M2)の双方を含む合金からなる複合ターゲットや、金属(M1)および遷移金属(M2)の複合酸化物からなる複合ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた1元スパッタでありうる。また、本発明における共スパッタ法は、金属(M1)の単体またはその酸化物と、遷移金属(M2)の単体またはその酸化物とを含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタであってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。そして、共蒸着法を実施する際の製膜条件としては、製膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、製膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、製膜時のガスの供給量、製膜時の真空度、および、製膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件が例示され、これらの製膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる薄膜を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリア層を形成することで、形成されるガスバリア層の厚さ方向のほとんどの領域を領域[a]とすることができる。このため、かような手法によれば、領域[a]の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリア性を実現することができる。なお、領域[a]の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の製膜時間を調節すればよい。
[第2のガスバリア層]
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、遷移金属(M2)を含有する層の、基材とは反対側の面には、金属酸化物を含有するガスバリア層(本明細書では、「第2のガスバリア層」とも称する)がさらに配置されていることが好ましい。かような構成とすることにより、よりいっそう高いガスバリア性を発現することが可能となる。
なお、第1の形態に係るガスバリア性フィルムにおいて、基材、遷移金属酸化物含有層、および第1のガスバリア層がこの順に配置されている場合、当該第2のガスバリア層は、遷移金属酸化物含有層と第1のガスバリア層との間に配置されることはない。換言すれば、第1の形態においては、図1に示すように基材11と第1のガスバリア層12と遷移金属酸化物含有層13とがこの順に配置される場合に、遷移金属(M2)を含有する層(すなわち、遷移金属酸化物含有層)の第1のガスバリア層12とは反対側の面(すなわち、遷移金属酸化物含有層13の露出表面)に、第2のガスバリア層13が配置されることが好ましい。なお、第2のガスバリア層は、上記所定の酸素欠損領域を有していない。すなわち、第2のガスバリア層は、本発明の第1の形態に係るガスバリア性フィルムが上記(2)のみを満たす場合の第1のガスバリア層と同様の構成でありうる。
また、第2の形態に係るガスバリア性フィルムにおいて、第2のガスバリア層は、図2に示すガスバリア層12の基材11とは反対側の面(すなわち、ガスバリア層12の露出表面)に、上述した第1のガスバリア層とは異なる、金属酸化物を含有するガスバリア層として配置されうる。
第2のガスバリア層は、金属酸化物を含有し、ガスバリア性を発揮する層である限り、その具体的な構成や形成方法に制限はない。ここで、第2のガスバリア層のガスバリア性もまた、上述した第1のガスバリア層と同様に、基材上に当該第2のガスバリア層を形成させた積層体で算出した際、水蒸気透過率(WVTR)が0.1g/(m・day)以下であることが好ましい。なお、第2のガスバリア層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。
第2のガスバリア層は、好ましくは、ポリシラザンといったケイ素化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥して得られる塗膜に改質処理を施すことにより形成される層(すなわち、「ポリシラザン改質層」)である。かような構成とすることにより、透過率等の光学特性に優れたガスバリア性フィルムが得られる。改質処理は、好ましくは真空紫外線の照射処理である。真空紫外線の照射といった改質処理により、第2のガスバリア層はガスバリア性を発現するようになる。すなわち、第2のガスバリア層は、ポリシラザン真空紫外線照射改質層であることが好ましい。
第2のガスバリア層の1層あたりの厚さは、ガスバリア性能の観点から、10〜300nmであることが好ましい。2層以上の積層構造である場合はその総厚は、クラック抑制の観点から、10〜1000nmであることが好ましい。
ここではまず、ケイ素化合物がポリシラザンである場合を例に挙げて、第2のガスバリア層の形成方法の一例を説明する。
ポリシラザンを含む塗布液を公知の湿式塗布法により塗布して改質処理を行い、第2のガスバリア層を形成することができる。
本発明に用いられる「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、下記一般式(1)の構造を有するものが好ましく用いられる。
式中、R、R、およびRは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、またはアルコキシ基を表す。
本発明では、得られるガスバリア層の膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、メルク社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。
その他、ポリシラザンの詳細については、従来公知である特開2013−255910号公報の段落「0024」〜「0040」、特開2013−188942号公報の段落「0037」〜「0043」、特開2013−151123号公報の段落「0014」〜「0021」、特開2013−052569号公報の段落「0033」〜「0045」、特開2013−129557号公報の段落「0062」〜「0075」、特開2013−226758号公報の段落「0037」〜「0064」等を参照して採用することができる。
ポリシラザンを含有する塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。形成方法については、従来公知である特開2014−151571号公報の段落「0058」〜「0064」、特開2011−183773号公報の段落「0052」〜「0056」等を参照して採用することができる。
改質処理とは、ポリシラザンの酸化ケイ素または酸化窒化ケイ素への転化反応をいう。本発明における改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。本発明においては、低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンは従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、ポリシラザン含有液の塗膜を設け、波長200nm以下の真空紫外線(VUV)を照射して改質処理することにより、第2のガスバリア層を形成することが好ましい。
第2のガスバリア層の厚さは、1〜500nmの範囲が好ましい、より好ましくは10〜300nmの範囲である。第2のガスバリア層のうち、第2のガスバリア層全体が改質層であってもよいが、改質処理された改質層の厚さは、1〜50nmが好ましく、1〜10nmがさらに好ましい。
本発明に係る第2のガスバリア層は、ポリシラザンを含む層にVUVを照射する工程で、ポリシラザンの少なくとも一部が酸窒化ケイ素へと改質されることが好ましい。本発明におけるVUV照射工程において、ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での該VUVの照度は30〜200mW/cmの範囲であることが好ましく、50〜160mW/cmの範囲であることがより好ましい。VUVの照度を30mW/cm以上とすることで、改質効率を十分に向上することができ、200mW/cm以下では、塗膜への損傷発生率を極めて抑え、また、基材への損傷も低減させることができるため、好ましい。
ポリシラザン層塗膜面におけるVUVの照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cmの範囲であることが好ましく、500〜5000mJ/cmの範囲であることがより好ましい。VUVの照射エネルギー量を200mJ/cm以上とすることで、ポリシラザン層の改質を十分に行うことができ、10000mJ/cm以下では過剰改質を抑え、ポリシラザン層のクラックや、基材の熱変形の発生を極力抑えることができる。
なお、真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、VUVの照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、VUV照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲、さらに好ましくは80〜4500ppmの範囲、最も好ましくは100〜1000ppmの範囲である。
VUV照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
これらの改質処理においては、例えば、特開2012−086394号公報の段落「0055」〜「0091」、特開2012−006154号公報の段落「0049」〜「0085」、特開2011−251460号公報の段落「0046」〜「0074」等に記載の内容を参照することができる。
さらに、第2のガスバリア層は、気相製膜法により形成されたもの(すなわち、「気相製膜ガスバリア層」)であってもよい。かような形態において、第2のガスバリア層は、上述した第1のガスバリア層の欄において説明したのと同様の気相製膜法によって形成されうる。
[保護層]
本発明に係るガスバリア性フィルムの、基材に対してガスバリア層が形成された側の最表層には、ポリシロキサン改質層などからなる保護層が形成されてもよい。ポリシロキサン改質層は、ポリシロキサンを含有する塗布液を湿式塗布法により塗布して乾燥した後、その乾燥した塗膜に加熱による改質処理や、紫外光の照射、真空紫外光の照射等の改質処理を施すことによって形成することができる。真空紫外光としては、上述したポリシラザンの改質処理に用いたVUVを用いることが好ましい。
その他、ポリシロキサンの詳細については、従来公知である特開2013−151123号公報の段落「0028」〜「0032」、特開2013−086501号公報の段落「0050」〜「0064」、特開2013−059927号公報の段落「0063」〜「0081」、特開2013−226673号公報の段落「0119」〜「0139」等を参照して採用することができる。
[種々の機能を有する層]
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、上述した第2のガスバリア層のほかにも、種々の機能を有する層を設けることができる。
(アンカーコート層)
本発明に係る第1のガスバリア層(第1の形態においてはさらに遷移金属酸化物含有層)を形成する側の基材の表面には、基材と第1のガスバリア層(または遷移金属酸化物含有層)との密着性の向上を目的として、アンカーコート層が配置されてもよい。
アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5.0g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
また、アンカーコート層は、物理蒸着法または化学蒸着法といった気相製膜法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化珪素を主体とした無機膜を形成することもできる。あるいは、特開2004−314626号公報に記載されているようなアンカーコート層を形成することで、その上に気相製膜法により無機薄膜を形成する際に、基材側から発生するガスをある程度遮断して、無機薄膜の組成を制御するといった目的でアンカーコート層を形成することもできる。
また、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
(ハードコート層)
基材の表面(片面または両面)には、ハードコート層が配置されてもよい。ハードコート層に含まれる材料の例としては、例えば、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含む層、すなわちハードコート層が形成される。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。予めハードコート層が形成されている市販の基材を用いてもよい。
ハードコート層の厚さは、平滑性および屈曲耐性の観点から、0.1〜15μmが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。
(平滑層)
本発明に係る第1のガスバリア層(第1の形態においてはさらに遷移金属酸化物含有層)を形成する側の基材の表面には、平滑層が配置されてもよい。本発明に用いられる平滑層は、突起等が存在する基材の粗面を平坦化し、あるいは、基材に存在する突起により上層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性材料、または、熱硬化性材料を硬化させて作製される。
平滑層の感光性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズを用いることができる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
熱硬化性材料として具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、株式会社アデカ製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製の各種シリコン樹脂、日東紡株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。この中でも特に耐熱性を有するエポキシ樹脂ベースの材料であることが好ましい。
平滑層の形成方法は、特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑層の厚さとしては、フィルムの耐熱性を向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にする観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、十点平均粗さRzが、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲であれば、バリア層を塗布形式で塗布した場合であっても、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合であっても塗布性が損なわれることが少なく、また、塗布後の凹凸を平滑化することも容易である。
[電子デバイス]
本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく適用できる。すなわち、本発明は、本発明のガスバリア性フィルムと、電子デバイス本体と、を含む電子デバイスを提供する。
本発明の電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL素子または太陽電池が好ましく、有機EL素子がより好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
≪ガスバリア性フィルムの作製≫
[実施例1]
以下の手法により、実施例1のガスバリア性フィルムを作製した。実施例1で作製した各フィルムの構成および作製条件を、それぞれ下記の表1に示す。
〈ガスバリア性フィルム1−1の作製〉
〔基材の作製〕
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に、アンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。具体的には、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、ガスバリア層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を形成した。具体的には、JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、基材を作製した(以下、全ての作製例について、同一の基材を用いている)。
〔第1のガスバリア層の形成〕
基材の一方の面に、気相法・スパッタ(マグネトロンスパッタ装置・キャノンアネルバ社製:型式EB1100(以下、スパッタには同じ装置を用いた。))により、第1のガスバリア層を製膜した。用いたスパッタ装置は、複数種のターゲットを設置でき、所定の真空状態を維持したまま、連続して金属種の異なる複数の層を製膜できるものである。
ここでは、ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、プロセスガスにはArとO とを用いて、DCスパッタにより、膜厚30nmの層を形成した。製膜は、層の組成がSiOとなるように酸素分圧を調整することにより行った。なお、事前にガラス基板を用いた製膜により、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がSiOとなる条件を見出し、その条件を適用した。また、膜厚に関しては、100nm〜300nmの範囲で製膜時間に対する膜厚変化のデータを取り、単位時間当たりに製膜される膜厚を算出した後、設定膜厚となるように製膜時間を設定することで膜厚を調整した。以下、スパッタでの製膜は、同様に、表層から深さ10nm近傍の組成が所望の組成になるような条件を見出し、さらに単位時間当たりに製膜される膜厚を算出し、その条件を適用している。
上述した手法により、基材の一方の面に第1のガスバリア層(組成:SiO、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム1−1を作製した。
〈ガスバリア性フィルム1−3の作製〉
第1のガスバリア層の組成がSiO1.7となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム1−3を作製した。
〈ガスバリア性フィルム1−5の作製〉
第1のガスバリア層の組成がSiO1.6となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム1−5を作製した。
〈ガスバリア性フィルム1−2の作製〉
上記ガスバリア性フィルム1−1の第1のガスバリア層の露出表面に、以下の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム1−2を作製した。
〔遷移金属酸化物含有層の形成(スパッタ)〕
ここでは、ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DCスパッタにより、遷移金属酸化物含有層(組成:NbO .5、膜厚:15nm)を形成した。
〈ガスバリア性フィルム1−4の作製〉
ガスバリア性フィルム1−1に代えて、ガスバリア性フィルム1−3を用いたこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−2の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム1−4を作製した。
〈ガスバリア性フィルム1−6の作製〉
ガスバリア性フィルム1−1に代えて、ガスバリア性フィルム1−5を用いたこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−2の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム1−6を作製した。
〈ガスバリア性フィルム1−7の作製〉
遷移金属酸化物含有層の組成がNbO2.2となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−2の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム1−7を作製した。
〈ガスバリア性フィルム1−8の作製〉
第1のガスバリア層の組成がSiO1.9となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−7の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム1−8を作製した。
[実施例2]
以下の手法により、実施例2のガスバリア性フィルムを作製した。実施例2で作製した各フィルムの構成および作製条件を、それぞれ下記の表2に示す。
〈ガスバリア性フィルム2−1の作製〉
第1のガスバリア層を形成しなかったこと以外は、ガスバリア性フィルム1−2の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム2−1を作製した。
〈ガスバリア性フィルム2−2の作製〉
上記ガスバリア性フィルム2−1の遷移金属酸化物含有層の露出表面に、ガスバリア性フィルム1−3におけるのと同様の手法により第1のガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム2−2を作製した。
〈ガスバリア性フィルム2−3の作製〉
上記ガスバリア性フィルム2−1の遷移金属酸化物含有層の露出表面に、ガスバリア性フィルム1−5におけるのと同様の手法により第1のガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム2−3を作製した。
〈ガスバリア性フィルム2−4の作製〉
遷移金属酸化物含有層の組成がNbO1.5となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム2−1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム2−4を作製した。
〈ガスバリア性フィルム2−5の作製〉
上記ガスバリア性フィルム2−4の遷移金属酸化物含有層の露出表面に、ガスバリア性フィルム1−1におけるのと同様の手法により第1のガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム2−5を作製した。
〈ガスバリア性フィルム2−6の作製〉
上記ガスバリア性フィルム2−4の遷移金属酸化物含有層の露出表面に、ガスバリア性フィルム2−4におけるのと同様の手法により遷移金属酸化物含有層をもう1層製膜して、ガスバリア性フィルム2−6を作製した。
[実施例3]
以下の手法により、実施例3のガスバリア性フィルムを作製した。実施例3で作製した各フィルムの構成および作製条件を、それぞれ下記の表3に示す。
〈ガスバリア性フィルム3−1の作製〉
基材の一方の面に、真空プラズマCVD法により、第1のガスバリア層を製膜した。具体的には、図3に記載の真空プラズマCVD装置を用いて、基材の一方の面上へ第1のガスバリア層の形成を行った。この際、使用した高周波電源は27.12MHzの高周波電源であり、電極間距離は20mmとした。また、原料ガスとしては、ヘキサメチルジシロキサンガスを流量として10sccm、酸素ガスを流量として100sccmの条件で真空チャンバー内へ導入した。製膜開始時に、基材の温度を100℃とし、成膜時のガス圧を30Paに設定することにより、炭素を含有する酸化ケイ素を主成分とする無機層を形成した。
上述した手法により、基材の一方の面に第1のガスバリア層(組成:SiO1.6 .4、膜厚:200nm)を形成して、ガスバリア性フィルム3−1を作製した。
〈ガスバリア性フィルム3−2の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−1の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム2−2におけるのと同様の気相法・スパッタによりガスバリア層をもう1層形成して、ガスバリア性フィルム3−2を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−3の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−1の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム1−2におけるのと同様の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム3−3を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−4の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−1の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム2−6におけるのと同様の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム3−4を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−5の作製〉
第1のガスバリア層の膜厚が200nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム3−5を作製した。
〈ガスバリア性フィルム3−6の作製〉
第1のガスバリア層の組成がSiO1.8となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム3−5の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム3−6を作製した。
〈ガスバリア性フィルム3−7の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−5の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム3−3におけるのと同様の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム3−7を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−8の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−5の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム3−4におけるのと同様の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム3−8を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−9の作製〉
2つの層の形成を、同一のマグネトロンスパッタ装置の内部において連続的に行い、2つの層の形成の間に大気に曝露しなかったこと以外は、上述したガスバリア性フィルム3−8の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム3−9を作製した。
〈ガスバリア性フィルム3−10の作製〉
遷移金属酸化物含有層の組成がNbO2.1となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム3−9の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム3−10を作製した。
〈ガスバリア性フィルム3−11の作製〉
遷移金属酸化物含有層の組成がTaO1.5となるように、DCスパッタの際のターゲットとしてTaターゲットを用いたこと以外は、上述したガスバリア性フィルム3−8の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム3−11を作製した。
〈ガスバリア性フィルム3−12の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−5の第1のガスバリア層の露出表面に、以下のイオンアシスト蒸着法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム3−12を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〔遷移金属酸化物含有層の形成(イオンアシスト蒸着)〕
特開2011−39218号公報の段落「0035」以降に記載の装置により、アルゴンガスと酸素ガスとを電離放電させるイオンアシスト(イオンビームアシスト)法を用いて、金属ニオブを膜厚15nmで堆積させる条件で製膜した。なお、事前検討により、蒸着膜の組成がNbO1.8となるように酸素分圧を調整した。また、イオンビームアシストの条件は、以下の通りである:
加速電圧:1000V
加速電流:200mA。
〈ガスバリア性フィルム3−13の作製〉
基材の一方の面に、真空プラズマCVD法により、第1のガスバリア層を製膜した。具体的には、図3に記載の真空プラズマCVD装置を用いて、基材の一方の面上へ第1のガスバリア層の形成を行った。この際、使用した高周波電源は27.12MHzの高周波電源であり、電極間距離は20mmとした。また、原料ガスとしては、シランガスを流量として7.5sccm、アンモニアガスを流量として50sccm、水素ガスを流量として200sccmの条件で真空チャンバー内へ導入した。製膜開始時に、基材の温度を100℃とし、成膜時のガス圧を30Paに設定することにより、窒化ケイ素を主成分とする無機層を形成した。
上述した手法により、基材の一方の面に第1のガスバリア層(組成:SiO0.05 0.8、膜厚:100nm)を形成して、ガスバリア性フィルム3−13を作製した。
〈ガスバリア性フィルム3−14の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−13の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム3−2におけるのと同様の気相法・スパッタによりガスバリア層をもう1層形成して、ガスバリア性フィルム3−14を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−15の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−13の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム3−4におけるのと同様の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム3−15を作製した。なお、これら2つの層の形成は連続的に行わず、1層目の形成後にいったん大気に曝露した後、2層目の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−16の作製〉
基材の一方の面に、気相法・スパッタにより、以下の製膜条件で、第1のガスバリア層(組成:ZnSn0.71.82、膜厚:200nm)を形成して、ガスバリア性フィルム3−16を作製した。なお、表3に記載の「(M1)の最大価数」は、Znの最大価数2およびSnの最大価数6と、Zn:Snのモル比(1:0.7)とから、ZnおよびSnが合計で1モルの場合の理論上の最大価数として、(2×1+6×0.7)/(1+0.7)=3.65と算出した。
〔製膜条件〕
ターゲットとしてZnSn合金ターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DCスパッタにより、第1のガスバリア層を形成した。
〈ガスバリア性フィルム3−17の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−16の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム3−2におけるのと同様の気相法・スパッタによりガスバリア層をもう1層形成して、ガスバリア性フィルム3−17を作製した。なお、これら2つの層の形成は、同一のマグネトロンスパッタ装置の内部において連続的に、2つの層の形成の間に大気に曝露することなく行った。
〈ガスバリア性フィルム3−18の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−16の第1のガスバリア層の露出表面に、ガスバリア性フィルム3−4におけるのと同様の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム3−18を作製した。なお、これら2つの層の形成は、同一のマグネトロンスパッタ装置の内部において連続的に、2つの層の形成の間に大気に曝露することなく行った。
〈ガスバリア性フィルム3−19の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−6の第1のガスバリア層の露出表面に、以下の塗布改質法によりポリシロキサン改質層からなる保護層を形成して、ガスバリア性フィルム3−19を作製した。
〔保護層の形成(塗布改質法)〕
ポリメチルシルセスキオキサン(SR−13、小西化学工業社製)をメチルエチルケトンに溶解し、ろ過して、5質量%の塗布液を得た。これをスピンコートにより乾燥膜厚が100nmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射装置を用い、照射エネルギー4J/cmの条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
〈ガスバリア性フィルム3−20の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−9の遷移金属酸化物含有層の露出表面に、以下の塗布改質法により第2のガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム3−20を作製した。なお、遷移金属酸化物含有層の形成と第2のガスバリア層の形成とは連続的に行わず、遷移金属酸化物含有層の形成後にいったん大気に曝露した後、第2のガスバリア層の形成を行った。
〔第2のガスバリア層の形成(塗布改質法)〕
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(メルク社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(メルク社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
上記遷移金属酸化物含有層の露出表面に、スピンコート法により上記塗布液を乾燥膜厚が100nmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射装置を用い、照射エネルギー4J/cmの条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
〈ガスバリア性フィルム3−21の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−9の遷移金属酸化物含有層の露出表面に、ガスバリア性フィルム3−19の作製におけるのと同様の手法により第2のガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム3−21を作製した。なお、遷移金属酸化物含有層の形成と第2のガスバリア層の形成とは連続的に行わず、遷移金属酸化物含有層の形成後にいったん大気に曝露した後、第2のガスバリア層の形成を行った。
〈ガスバリア性フィルム3−22の作製〉
上記ガスバリア性フィルム3−9の遷移金属酸化物含有層の露出表面に、ガスバリア性フィルム1−1の作製における第1のガスバリア層の形成と同様の手法により第2のガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム3−22を作製した。この際、第2のガスバリア層の膜厚が100nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整した。なお、遷移金属酸化物含有層の形成と第2のガスバリア層の形成についても、同一のマグネトロンスパッタ装置の内部において連続的に、2つの層の形成の間に大気に曝露することなく行った。
[実施例4]
以下の手法により、実施例4のガスバリア性フィルムを作製した。実施例4で作製した各フィルムの構成および作製条件を、それぞれ下記の表4に示す。
〈ガスバリア性フィルム4−1の作製〉
第1のガスバリア層の膜厚が150nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1−1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム4−1を作製した。
〈ガスバリア性フィルム4−2の作製〉
上記ガスバリア性フィルム4−1の第1のガスバリア層の露出表面に、以下の手法により遷移金属酸化物含有層を形成して、ガスバリア性フィルム4−2を作製した。
〔遷移金属酸化物含有層の形成(スパッタ)〕
ここでは、ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DCスパッタにより、遷移金属酸化物含有層(組成:NbO .2、膜厚:15nm)を形成した。
〈ガスバリア性フィルム4−3の作製〉
遷移金属酸化物含有層の組成がNbO2.1となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム4−2の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム4−3を作製した。
〈ガスバリア性フィルム4−4の作製〉
遷移金属酸化物含有層の組成がNbO1.5となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム4−2の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム4−4を作製した。
〈ガスバリア性フィルム4−5の作製〉
遷移金属酸化物含有層の膜厚が9nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム4−4の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム4−5を作製した。
〈ガスバリア性フィルム4−6の作製〉
遷移金属酸化物含有層の膜厚が5nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム4−4の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム4−6を作製した。
〈ガスバリア性フィルム4−7の作製〉
遷移金属酸化物含有層の膜厚が3nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム4−4の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム4−7を作製した。
[実施例5]
以下の手法により、ガスバリア性フィルムを作製した。作製した各フィルムの構成(厚さ、ガスバリア層の平均組成(ガスバリア層が領域[a]を有する場合には領域[a]の平均組成))を、下記の表5に示す。
〈ガスバリア性フィルム5−1の作製〉
〔基材の作製〕
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に、アンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。具体的には、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、ガスバリア層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を形成した。具体的には、JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、基材を作製した(以下、全ての作製例について、同一の基材を用いている)。
〔ガスバリア層(SiO層)の形成〕
基材の一方の面に、気相法・スパッタ(マグネトロンスパッタ装置・キャノンアネルバ社製:型式EB1100(以下、スパッタには同じ装置を用いた。))により、ガスバリア層を製膜した。用いたスパッタ装置は、2元同時スパッタが可能なものである。
ここでは、ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、プロセスガスにはArとO とを用いて、DCスパッタにより、膜厚30nmの層を形成した。製膜は、層の組成がSiOとなるように酸素分圧を調整することにより行った。なお、事前にガラス基板を用いた製膜により、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がSiOとなる条件を見出し、その条件を適用した。また、膜厚に関しては、100nm〜300nmの範囲で製膜時間に対する膜厚変化のデータを取り、単位時間当たりに製膜される膜厚を算出した後、設定膜厚となるように製膜時間を設定することで膜厚を調整した。以下、スパッタでの製膜は、同様に、表層から深さ10nm近傍の組成が所望の組成になるような条件を見出し、さらに単位時間当たりに製膜される膜厚を算出し、その条件を適用している。
上述した手法により、基材の一方の面にガスバリア層(組成:SiO、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−1を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−2の作製〉
ガスバリア層の組成がSiO1.8となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−2を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−3の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム5−3を作製した。
〔ガスバリア層(NbO2.5層)の形成〕
ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとO とを用いて、DCスパッタにより、Nb含有ガスバリア層(組成:NbO2.5、膜厚:30nm)を形成した。
〈ガスバリア性フィルム5−4の作製〉
ガスバリア層の組成がNbO1.7となるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−3の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−4を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−5の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表5に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−5を作製した。
〔ガスバリア層(Si−Nb複合酸化物層)の形成〕
Siが80原子%、Nbが20原子%となるように粉砕したSiおよびNb粉末を混合し、Ar雰囲気下にてホットプレスを行い、焼結を行った。焼結した混合材料を機械成型した後、銅製の背板上にボンディングを行ってターゲットとした。得られたターゲットを用いて、上記と同様のスパッタにより製膜を行い、ガスバリア層を形成した。
〈ガスバリア性フィルム5−6の作製〉
スパッタターゲットとしてSiが50原子%、Nbが50原子%の組成のものを用い、ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−6を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−7の作製〉
ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−6の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−7を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−8の作製〉
ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際の酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−6の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−8を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−9の作製〉
ガスバリア層の膜厚が20nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム8の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム9を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−10の作製〉
ガスバリア層の膜厚が10nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−8の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−10を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−11の作製〉
ガスバリア層の膜厚が4nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−8の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム11を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−12の作製〉
ガスバリア層の膜厚が100nmとなるように、DCスパッタの際の製膜時間を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−8の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−12を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−13の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表5に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−13を作製した。
〔ガスバリア層(Si−Nb複合酸化物層)の形成〕
Nb粉末を50質量%およびSiO粉末を50質量%の割合で、蒸留水を分散剤としてボールミルで混合し、得られたスラリーをスプレードライヤーを用いて造粒し、二次粒子の粒径が20〜100μmの酸化物混合粉末を得た。
一方、ターゲットホルダーとして、直径6インチの銅製のバッキングプレートを用いた。そして、上記酸化物混合粉末が溶射されるべきバッキングプレート表面部分を、Al砥粒を用いたサンドブラストにより荒らして、粗面の状態にした。
次に、Ni−Al(質量比8:2)の合金粉末を還元雰囲気下でプラズマ溶射(メトコ溶射機を使用)し、膜厚50μmのNi−Al(質量比8:2)からなるアンダーコートを形成した後、上記酸化物混合粉末をアンダーコートの上に還元雰囲気下でプラズマ溶射して、ターゲットを作製した。得られたターゲットは、Siを40原子%、Nbを60原子%の比率で含む、酸素欠損型のターゲットである。得られたターゲットを用いて、上記と同様のスパッタにより製膜を行い、ガスバリア層を形成した。
〈ガスバリア性フィルム5−14の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表5に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−14を作製した。
〔ガスバリア層(Si−Nb複合酸化物層)の形成〕
ターゲットとして、多結晶Siターゲットおよび金属Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DC方式により2元同時スパッタを行って、ガスバリア層を形成した。また、ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際の多結晶Siターゲットにおけるスパッタ条件、金属Nbターゲットにおけるスパッタ条件、酸素分圧を調整した。
〈ガスバリア性フィルム5−15の作製〉
ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際の多結晶Siターゲットにおけるスパッタ条件、金属Nbターゲットにおけるスパッタ条件、酸素分圧を調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム5−14の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5−15を作製した。
〈ガスバリア性フィルム5−16の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表51に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−16を作製した。
〔ガスバリア層(Si−Ta複合酸化物層)の形成〕
ターゲットとして、多結晶Siターゲットおよび金属Taターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DC方式により2元同時スパッタを行って、ガスバリア層を形成した。また、ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際の多結晶Siターゲットにおけるスパッタ条件、金属Taターゲットにおけるスパッタ条件、酸素分圧を調整した。
〈ガスバリア性フィルム5−17の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表5に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−17を作製した。
〔ガスバリア層(Zn−Sn複合酸化物層)の形成〕
高純度ZnO粉末、高純度SnO粉末、バインダとしてPVB樹脂、有機溶媒としてエタノールおよびアセトンをそれぞれ用意した。
次いで、ZnO粉末、SnO粉末、バインダおよび有機溶媒をボールミルによる湿式混合により所定の割合で混合して、濃度が40質量%のスラリーを調製した。また、ZnO粉末およびSnO粉末の混合量は、形成後のスパッタリングターゲットに含まれるZnが50原子%、Snが50原子%となるように調整した。
次に、調製したスラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、平均粒径が200μmの混合造粒粉末を得た後、この造粒粉末を所定の型に入れて一軸プレス装置によりプレス成形した。脱型後、得られた成形体を、大気雰囲気中1000℃の温度で5時間焼結させて、ZnO−SnOターゲットを得た。得られたターゲットを用いて、上記と同様のスパッタにより製膜を行い、ガスバリア層を形成した。
〈ガスバリア性フィルム5−18の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表5に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−18を作製した。
〔ガスバリア層(Zn−Sn−Nb複合酸化物層)の形成〕
ターゲットとして、ガスバリア性フィルム5−17の作製に用いたZnO−SnOターゲットおよび金属Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DC方式により2元同時スパッタを行って、ガスバリア層を形成した。なお、ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際のZnO−SnOターゲットにおけるスパッタ条件、金属Nbターゲットにおけるスパッタ条件、酸素分圧を調整した。
〈ガスバリア性フィルム5−19の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表5に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−19を作製した。
〔ガスバリア層(Zn−Si複合酸化物層)の形成〕
純度99.99%以上のSiO系粉末とZnSとを、Znが80原子%、Siが20原子%の比率となるように混合し、さらにこの混合粉100質量%に対して0.1質量%のNaOを添加して混合した。この混合粉をグラファイトダイスに充填し、Ar雰囲気、面圧150kg/cm、温度1000℃の条件でホットプレスを行って、ZnS−SiOターゲットを得た。得られたターゲットを用いて、上記と同様のスパッタにより製膜を行い、ガスバリア層を形成した。
〈ガスバリア性フィルム5−20の作製〉
基材の一方の面に、以下の手法によりガスバリア層(組成:表5に示す、膜厚:30nm)を形成して、ガスバリア性フィルム5−20を作製した。
〔ガスバリア層(Zn−Si−Nb複合酸化物層)の形成〕
ターゲットとして、ガスバリア性フィルム5−19の作製に用いたZnS−SiOターゲットおよび金属Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DC方式により2元同時スパッタを行って、ガスバリア層を形成した。なお、ガスバリア層の組成が表5に示すものとなるように、DCスパッタの際のZnS−SiOターゲットにおけるスパッタ条件、金属Nbターゲットにおけるスパッタ条件、酸素分圧を調整した。
≪ガスバリア性フィルムの評価≫
上記の実施例1〜5で作製したガスバリア性フィルムについて、以下の評価を行った。結果を下記の表1〜表5に示す。なお、表1〜表5のセルにおける斜線表記は、該当する構成が存在しないか、または対応する評価を行っていないことを意味する。
〈ガスバリア層および遷移金属酸化物含有層の組成・酸化度の測定〉
XPS分析により、ガスバリア層および遷移金属酸化物含有層の厚さ方向の組成分布プロファイルを測定した。なお、XPS分析条件は以下の通りである。
〔XPS分析条件〕
・装置:アルバック・ファイ株式会社製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを得た。この厚さ間隔は、実施例1〜3で作製したフィルムの測定の際には2nmとし(深さ方向に2nmごとのデータが得られる)、実施例4で作製したフィルムの測定の際には1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバック・ファイ株式会社製のMultiPakを用いた。
〈モコン法によるガスバリア性の評価〉
モコン社製水蒸気透過率測定装置 AQUATRANを用い、38℃100%RHの条件で、水蒸気透過率(単位:g/m/day)を測定した。
〈Ca法によるガスバリア性の評価〉
下記のようにして作製したCa法評価試料を40℃90%RH環境に500時間保存した。この際、保存の前後において透過濃度(任意の4点の平均)を測定し、その変化から、保存後の水蒸気透過率(単位:g/m/day)を算出した。
〔Ca法評価試料の作成〕
ガスバリア性フィルムのガスバリア層が形成された側の表面をUV洗浄した後、同じ面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した。これを50mm×50mmのサイズに打ち抜いた後、グローブボックス内に入れて、24時間乾燥処理を行った。
次いで、50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)の片面をUV洗浄した。株式会社エイエルエステクノロジー製の真空蒸着装置を用い、ガラス板の中央に、マスクを介して20mm×20mmのサイズでCaを蒸着した。Caの厚さは80nmとした。Ca蒸着済のガラス板をグローブボックス内に取出し、封止樹脂層を貼合したガスバリア性フィルムの封止樹脂層面とガラス板のCa蒸着面とが接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。この際、110℃の加熱を行った。さらに、接着した試料を110℃に設定したホットプレート上にガラス板を下にして置き、30分間硬化させて、Ca法評価試料を作製した。
〈有機ELデバイスにおけるダークスポットの評価〉
下記のようにして作製した有機ELデバイスを用いて、ダークスポットの評価を行った。
〔有機ELデバイスの作製〕
実施例3で作製したガスバリア性フィルムのガスバリア層が形成された側の表面に、以下の塗布改質法によりガスバリア層をさらに2層形成して、対応するデバイス評価用ガスバリア性フィルムを作製した。
〔ガスバリア層の形成(塗布改質法)〕
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(メルク社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(メルク社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
ガスバリア性フィルムのガスバリア層が形成された側の表面に、スピンコート法により上記塗布液を乾燥膜厚が250nmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射装置を用い、照射エネルギー6J/cmの条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。この操作をもう一度繰り返し、塗布改質法によるガスバリア層を2層形成した。
このようにして作製したデバイス評価用ガスバリア性フィルムを基材として用い、下記に示すような方法で、発光領域の面積が5cm×5cmとなるように、ボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
(下地層、第1電極の形成)
デバイス評価用ガスバリア性フィルムを、市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、下記の化合物118をタングステン製の抵抗加熱ボートに入れ、これら基材ホルダーと抵抗加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空蒸着装置の第2真空槽内に取り付けた。
次に、真空蒸着装置の第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、化合物118の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で第1電極の下地層を厚さ10nmで設けた。
次に、下地層まで形成した基材を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10 −4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で厚さ8nmの銀からなる第1電極を形成した。
(有機機能層〜第2電極)
引き続き、市販の真空蒸着装置を用い、真空度1×10−4Paまで減圧した後、基材を移動させながら化合物HT−1を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、20nmの正孔輸送層(HTL)を設けた。
次に、下記の化合物A−3(青色発光ドーパント)、および下記の化合物H−1(ホスト化合物)を、化合物A−3が膜厚に対し線形に35質量%から5質量%になるように場所により蒸着速度を変化させ、化合物H−1は65質量%から95質量%になるように場所により蒸着速度を変化させて、厚さ70nmになるように共蒸着して発光層を形成した。
その後、下記の化合物ET−1を膜厚30nmに蒸着して電子輸送層を形成し、さらにフッ化カリウム(KF)を厚さ2nmで形成した。さらに、アルミニウム110nmを蒸着して第2電極を形成した。
(固体封止)
次に、封止部材として厚さ25μmのアルミ箔を使用し、このアルミ箔の片面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した封止部材を用いて、第2電極までを作製した試料に重ね合わせた。このとき、第1電極および第2電極の引き出し電極の端部が外に出るように、封止部材の接着剤形成面と、素子の有機機能層面とを連続的に重ね合わせた。
次いで、試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、重ね合わせた基材と封止部材とに押圧をかけて5分間保持した。続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに120℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920:2002に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。なお、陽極、陰極からの引き出し配線等の形成に関する記載は省略してある。
このようにして、発光領域の面積が5cm×5cmサイズの有機ELデバイスを作製した。
〔有機ELデバイスのダークスポット評価〕
上記で作製した有機ELデバイスを85℃85%RHの環境下で300時間保存した後、発光させて、円換算直径が200μm以上のダークスポットの数を求め、下記のランクで評価した:
5:0〜4個
4:5〜9個
3:10〜19個
2:20〜49個
1:50個以上。
〈光学特性の評価〉
実施例3および実施例4で作製したガスバリア性フィルムについて、波長450nmの光の透過率を測定し、光学特性の指標とした。
〈巻き取り想定評価〉
ガスバリア性フィルムがロールへ巻き取られた際の劣化に対する耐性の指標として、ロールへの巻き取り処理を模した下記の表面接触・摺動処理を施した後に、上述した「Ca法によるガスバリア性の評価」と同様の手法により、水蒸気透過率を算出した。
上記結果より、本発明によれば、有機ELデバイス等の電子デバイス用の基板として使用可能なレベルの非常に高いガスバリア性を示すガスバリア性フィルムが提供されうることがわかる。
本出願は、2015年5月22日に出願された日本特許出願番号2015−104904号および日本特許出願番号2015−104908号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。

Claims (22)

  1. 基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に配置された、遷移金属を除く金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリア層と、
    前記第1のガスバリア層に隣接するように配置された、遷移金属(M2)の酸化物を含有する遷移金属酸化物含有層と、
    を有し、かつ、下記(1)、(2)または(3)の少なくともいずれかを満たすことを特徴とする、ガスバリア性フィルム:
    (1)前記第1のガスバリア層において、前記遷移金属を除く金属(M1)の最大価数をa、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記金属(M1)の酸化物の組成を(M1)Oとしたときに、前記ガスバリア層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域が存在する、
    u>0、かつ、v≧0、かつ、w≧0、かつ、(2u+3v+2w)/a<0.85;
    (2)前記遷移金属酸化物含有層において、前記遷移金属(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、前記遷移金属の酸化物の組成を(M2)Oとしたときに、前記遷移金属酸化物層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域が存在する、
    x>0、かつ、y≧0、かつ、(2x+3y)/b<0.85;
    (3)前記第1のガスバリア層および前記遷移金属酸化物含有層のそれぞれに含有される前記酸化物を、それぞれ前記(1)および前記(2)に示した組成で表したときに、前記第1のガスバリア層の厚さ方向の少なくとも一部、および、前記遷移金属酸化物含有層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域の組み合わせが存在する、
    (2u+3v+2w)/a+(2x+3y)/b<1.85。
  2. 前記基材の少なくとも一方の面に、前記第1のガスバリア層と、前記遷移金属酸化物含有層とがこの順に配置されてなり、かつ、前記(2)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に配置された、遷移金属を除く金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリア層と、
    前記第1のガスバリア層の前記基材とは反対側の面に隣接するように配置された、遷移金属(M2)の酸化物を含有する遷移金属酸化物含有層と、
    を有し、かつ、前記第1のガスバリア層と前記遷移金属酸化物含有層との積層体が、下記(4)を満たすことを特徴とする、ガスバリア性フィルム:
    (4)前記金属(M1)と前記遷移金属(M2)とが同時に存在する混合領域を有し、前記(M1)の最大価数をa、前記(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記混合領域の組成を(M1)(M2)としたときに、前記混合領域の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域を有する:
    0.02≦p≦98、かつ、q>0、かつ、r≧0、かつ、s≧0、かつ、
    (2q+3r+2s)/(a+bp)<0.85。
  4. 前記積層体が有するp>98である領域の厚さが、5nm以下であることを特徴とする、請求項3に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記遷移金属酸化物含有層が物理気相成長(PVD)法により形成されたものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  6. 基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に配置された、遷移金属を除く金属(M1)および遷移金属(M2)を含有する第1のガスバリア層と、
    を有し、かつ、前記第1のガスバリア層が、下記(5)を満たすことを特徴とする、ガスバリア性フィルム:
    (5)前記金属(M1)の最大価数をa、前記遷移金属(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、炭素をC、前記第1のガスバリア層の組成を(M1)(M2) としたときに、前記第1のガスバリア層の厚さ方向に連続して5nm以上の領域が、下記数式を満足する領域[a]である。
    0.02≦p≦98、かつ、q>0、かつ、r≧0、かつ、s≧0、かつ、
    (2q+3r+2s)/(a+bp)<1
  7. 前記第1のガスバリア層が、下記(6)をさらに満たすことを特徴とする、請求項6に記載のガスバリア性フィルム:
    (6)前記領域[a]において、x/(1+x)値(ここで、xは、金属(M1)に対する遷移金属(M2)の存在比率(原子比)である)の、前記ガスバリア層の厚さ方向の変化の傾きの絶対値が、厚さ1nmあたり0以上0.015[1/nm]以下である。
  8. 前記領域[a]が(2q+3r+2s)/(a+bp)≦0.9を満たすことを特徴とする、請求項6または7に記載のガスバリア性フィルム。
  9. 前記金属(M1)が、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属からなる群から選択される金属を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  10. 前記金属(M1)が、Si、Al、Zn、InおよびSnからなる群から選択される金属を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  11. 前記金属(M1)がSiを主成分として含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  12. 前記遷移金属(M2)が、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、LaおよびCeからなる群から選択される金属を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  13. 前記遷移金属(M2)が長周期型周期表の第5族の金属元素であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  14. 前記遷移金属(M2)を含有する層の前記基材とは反対側の面(ただし、前記基材、前記遷移金属酸化物含有層、および前記第1のガスバリア層がこの順に配置されている場合の前記遷移金属酸化物含有層と前記第1のガスバリア層との間を除く)に配置された、金属酸化物を含有する第2のガスバリア層をさらに有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  15. 前記第2のガスバリア層が、ポリシラザン改質層である、請求項14に記載のガスバリア性フィルム。
  16. 前記ポリシラザン改質層が、ポリシラザン真空紫外線照射改質層である、請求項15に記載のガスバリア性フィルム。
  17. 前記第2のガスバリア層が、気相製膜ガスバリア層である、請求項14に記載のガスバリア性フィルム。
  18. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法であって、
    前記基材と前記第1のガスバリア層との積層体の、前記第1のガスバリア層の前記基材とは反対側の面に、前記遷移金属酸化物含有層を気相製膜法により形成する工程を含み、
    前記遷移金属酸化物含有層を形成する工程において、下記(2)を満たすように、製膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、製膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、製膜時のガスの供給量、製膜時の真空度、および、製膜時の電力からなる群から選択される1種または2種以上の条件を調節することを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法:
    (2)前記遷移金属酸化物含有層において、前記遷移金属(M2)の最大価数をb、酸素をO、窒素をN、前記遷移金属の酸化物の組成を(M2)Oとしたときに、前記遷移金属酸化物層の厚さ方向の少なくとも一部において、下記数式を満足する領域が存在する、
    x>0、かつ、y≧0、かつ、(2x+3y)/b<0.85。
  19. 前記基材の少なくとも一方の面に、前記第1のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程、および、
    前記第1のガスバリア層の前記基材とは反対側の面に、前記遷移金属酸化物含有層をロールトゥロール方式で形成する工程をさらに含み、
    この際、前記第1のガスバリア層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく前記遷移金属酸化物含有層を形成する工程を行う、請求項18に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  20. 前記第1のガスバリア層の前記基材とは反対側の面に、前記遷移金属酸化物含有層をロールトゥロール方式で形成する工程、および、
    前記遷移金属酸化物含有層の前記第1のガスバリア層とは反対側の面に、金属酸化物を含有する第2のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程をさらに含み、
    この際、前記遷移金属酸化物含有層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく前記第2のガスバリア層を形成する工程を行う、請求項18に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  21. 前記基材の少なくとも一方の面に、前記第1のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程、
    前記第1のガスバリア層の前記基材とは反対側の面に、前記遷移金属酸化物含有層をロールトゥロール方式で形成する工程、および、
    前記遷移金属酸化物含有層の前記第1のガスバリア層とは反対側の面に、金属酸化物を含有する第2のガスバリア層をロールトゥロール方式で形成する工程をさらに含み、
    この際、前記第1のガスバリア層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく前記遷移金属酸化物含有層を形成する工程を行い、かつ、前記遷移金属酸化物含有層を形成する工程の後にフィルムを巻き取ることなく前記第2のガスバリア層を形成する工程を行う、請求項18に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  22. 請求項6〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法であって、
    前記基材の少なくとも一方の面に前記第1のガスバリア層を形成する工程を含み、
    前記第1のガスバリア層を形成する工程は、形成される第1のガスバリア層が前記(5)を満たすように、前記金属(M1)および前記遷移金属(M2)を含む複合酸化物を前記基材の少なくとも一方の面に共蒸着させることを含むことを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法。
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