JP2020121408A - ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法 - Google Patents

ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルム、および、このガスバリアフィルムの製造方法の提供を課題とする。【解決手段】支持体12と、ケイ素を含む無機層16および無機層16の下地層14の組み合わせの1組以上とを有し、下地層14はアルコキシシランの重合物を含み、下地層14と無機層16との間に、下地層14と無機層16との両方の成分を含む混合層18を有するガスバリアフィルム。前記アルコキシシラン重合物が3〜6官能を有するアルコキシシランの重合物を含み、無機層16が、窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素の1つ以上を含むことが好ましい、ガスバリアフィルム。アルコキシシランを含有する塗布液を塗布、加熱して下地層14を形成する工程、および、支持体12にバイアス電位を印加しつつ、プラズマCVDで下地層14に無機層16を形成する工程、を行う製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルム、および、このガスバリアフィルムを製造する製造方法に関する。
ガスバリアフィルムを用いて、酸素や水に弱い材料を保護する製品は数多くある。
例えば、有機EL(Electro Luminescence)のような自発光体は、水分によって劣化する。このような有機ELを用いる装置では、基板となるガラスをガスバリアフィルムに置き換えることによって、可撓性(フレキシビリティ)を得ることができる。このような可撓性は、製品の付加価値向上にも繋がる。そのため、基板等として用いられるガラスの代替品として、高いガスバアリア性能を発現できるガスバリアフィルムへの期待は高い。
例えば、近年は、特に環境保護などの観点から、太陽電池といったエネルギー分野の研究が盛んであり、例えば、CIGS(Cu−In−Ga−Se)系の太陽電池、有機薄膜太陽電池などの研究が多くなされている。
ガスバリアフィルムは、このような産業機材にも利用が可能である。例えば、従来使用されている太陽電池モジュール(太陽電池パネル)のガラス部分を、ガスバリアフィルムに置き換えることで、軽量化、可撓性や柔軟性の付与を図ることが可能となり、建築材料への適応の自由度、すなわち利用範囲も広くなり、多くの活躍が望まれる。
このような用途に用いられるガスバリアフィルムには、例えば、水蒸気透過率が1×10-3g/(m2・day)以下のような高いガスバリア性が要求される。
このような高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムとして、積層型のガスバリアフィルムが知られている。積層型のガスバリアフィルムとは、主にガスバリア性を発現する無機層と、この無機層の下地層(アンダーコート層)となる下地有機層との組み合わせを、1以上、有するガスバリアフィルムである。
下地有機層を形成した後に、下地有機層の表面にガスバリア性を有する無機層を形成することにより、下地有機層の表面が有する平滑性を利用して、割れや剥離等の欠陥が無い、均一な無機層を形成できる。そのため、このような積層型のガスバリアフィルムによれば、無機層が有するガスバリア性を十分に発揮して、高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
積層型のガスバリアフィルムでは、高いガスバリア性を得るためには、支持体に付着している異物および支持体の凹凸等を、下地有機層が適正に覆うこと、および、下地有機層に損傷等が無いことが重要である。
すなわち、支持体に付着している異物等を平滑層となる下地有機層が覆い切れない場合には、無機層の形成面に凹凸が生じてしまう。その結果、薄い無機層が異物等に起因する凹凸を全面的に覆って着膜できず、凹凸の影となる部分には無機層が形成できない。また、無機層は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成するが、異物による凹凸はプラズマ耐性が不十分であり、これに起因して、凹凸を有する部分には、そもそも無機層を形成できない。
その結果、無機層が形成できない部分を水分が透過してしまい、高いガスバリア性を得ることができない。
また、支持体の異物等を充分に被覆する下地有機層を形成しても、下地有機層を形成した後、無機層を形成する前までの搬送プロセス等で、有機層の表面にササクレの様な小さな損傷(ミクロなスリキズ故障)を生じてしまう場合が有る。
有機層が、このような損傷を有する場合にも、前述の異物等による凹凸と同様、薄い無機層が有機層の損傷部を全面的に覆って着膜できず、同様に、高いガスバリア性を得ることができない。
これに対して、特許文献1には、積層型の機能性フィルムを製造するに際し、ガラス転移温度が100℃以上の有機化合物と有機溶剤とを含有する塗布液を調製し、この塗布液を、5cc/m2以上の塗布量で、下地有機層の厚さが0.05〜3μmとなるように塗布し、塗布液を、減率乾燥状態において粘度が20cP以上で表面張力が34dyn/cm以下となるように乾燥した後、有機化合物を硬化させて下地有機層を形成する、機能性フィルムの製造方法が記載されている。
特許文献1では、このように下地有機層を形成する塗布液の塗布状態を制御することで、効率的に異物を被覆した下地有機層を形成している。
また、特許文献2には、支持体をフィルムロールから連続的に送り出し、支持体上にコーティング膜(下地有機層)を形成した後、コーティング膜の表面にラミネートフィルムを付与してフィルムロールにして巻き取る工程と、巻き取られたフィルムロールを真空成膜装置に装填し、フィルムロールから連続的にラミネートフィルムが付与された支持体を送り出し、ラミネートフィルムを剥離し、コーティング膜上に無機層を形成して、フィルムロールに巻き取る工程と、を備える機能性フィルムの製造方法が記載されている。
特許文献2では、このような構成を有することにより、下地有機層が損傷することを防止し、損傷の無い下地有機層に適正な無機層を形成することを可能にしている。
特許第5709696号公報 特許第5579465号公報
特許文献1および2に記載される機能性フィルムの製造方法によれば、支持体の異物等を全面的に覆い、かつ、損傷の無い、適正な下地有機層に無機層を形成できる。
そのため、無機層が有するガスバリア性を十分に発現して、有機ELを用いる装置や太陽電池のような、水蒸気透過率が1×10-3g/(m2・day)以下のような高いガスバリア性が要求される用途にも、好適に対応できるガスバリアフィルムが得られる。
しかしながら、ガスバリアフィルムの性能に対する要求は、近年、さらに高いものとなっており、より高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムの出現が望まれている。
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決することにあり、高いガスバリア性を有するガスバリアフィルム、および、このガスバリアフィルムの製造方法を提供することにある。
この目的を達成するために、本発明のガスバリアフィルムは、支持体と、支持体の少なくとも一方の面に設けられる、ケイ素を含む無機層および無機層の下地層の組み合わせの1組以上と、を有し、
下地層は、アルコキシシランの重合物を含み、
さらに、下地層と無機層との間に、下地層および無機層の両方の成分を含む混合層を有することを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
このような本発明のガスバリアフィルムにおいて、アルコキシシランの重合物は、3〜6官能のアルコキシシランの重合物を含むのが好ましい。
また、無機層が窒化ケイ素、酸化ケイ素および酸化窒化ケイ素の1以上を含むのが好ましい。
また、下地層の厚さが0.05〜3μmであるのが好ましい。
また、アルコキシシランの重合物は、複数種のアルコキシシランの重合物であるのが好ましい。
また、支持体から最も離間する無機層の表面に、保護有機層を有するのが好ましい。
さらに、無機層および下地層の組み合わせは、支持体の一方の面のみに形成され、支持体の無機層および下地層の組み合わせが形成される面とは逆側の面に、密着層を有するのが好ましい。
また、本発明のガスバリアフィルムの製造方法は、無機層および無機層の下地層の組み合わせを、1組以上、有するガスバリアフィルムの製造方法であって、
アルコキシシランを含有する塗布液を調製する調液工程、
調製した塗布液を下地層の形成面に塗布し、塗布液を加熱してアルコキシシランを重合することによって、下地層を形成する下地層形成工程、および、
下地層にバイアス電位を印加しつつ、プラズマCVDによって下地層の表面にケイ素を含有する無機層を形成する無機層形成工程、を有することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法を提供する。
このような本発明のガスバリアフィルムの製造方法において、アルコキシシランを含有する塗布液は、水を溶剤として調製するのが好ましい。
また、下地層の表面に下地層保護フィルムを貼着する工程、および、下地層保護フィルムを剥離する工程を有するのが好ましい。
さらに、無機層の表面に無機層保護フィルムを貼着する工程、保護有機層の塗布液を調製する調液工程、および、無機層保護フィルムを剥離し、保護有機層の塗布液を無機層の表面に塗布し、保護有機層の塗布液を乾燥、硬化する工程、を有するのが好ましい。
本発明によれば、高いガスバリア性を有するガスバリアフィルム、および、このガスバリアフィルムの製造方法が提供される。
本発明のガスバリアフィルムの一例を概念的に示す図である。 本発明のガスバリアフィルムの別の例を概念的に示す図である。 本発明のガスバリアフィルムの別の例を概念的に示す図である。 本発明のガスバリアフィルムの別の例を概念的に示す図である。 本発明のガスバリアフィルムを製造する塗布成膜装置を概念的に示す図である。 本発明のガスバリアフィルムを製造する無機成膜装置を概念的に示す図である。
以下、本発明のガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法を詳細に説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態であるガスバリアフィルム10を概念的に示す。
ガスバリアフィルム10は、支持体12と、支持体12の一方の表面(図1における上側の表面)に形成される下地層14と、下地層14を下地として、下地層14の表面形成される無機層16と、を有する。また、無機層16と、無機層16の下地となる下地層14との間には、混合層18が形成される。
表面とは、主面のことであり、すなわち、シート状物および層(膜)における最大面である。また、以下の説明では、図中上側を、単に『上』とも言う。
以下、第1の実施態様であるガスバリアフィルム10について、各構成要素の詳細について説明する。
(支持体12)
支持体12は、各種のガスバリアフィルムにおいて支持体として利用される、公知の樹脂製のシート状物(フィルム)を用いることができる。
支持体12の形成材料には、制限は無く、下地層14および無機層16を形成可能であれば、各種の樹脂材料が利用できる。
支持体12の形成材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリトニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、透明ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、環状オレフィン・コポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、および、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。
支持体12の厚さは、用途や形成材料等に応じて、適宜、設定できる。
支持体12の厚さは、ガスバリアフィルム10の機械的強度を十分に確保する観点と、ガスバリアフィルム10の可撓性(フレキシブル性)を確保し、かつ、軽量化および薄手化する観点とから、5〜150μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
支持体12は、透明であるのが好ましい。具体的には、支持体12は、全光線透過率が85%以上であるのが好ましく、88%以上であるのが好ましい。これにより、透明性の高いガスバリアフィルム10が得られる。
本発明において、全光線透過率は、日本電色工業社製のNDH5000およびSH−7000等の市販の測定装置を用いて、JIS K 7361に準拠して測定すればよい。
支持体12は、少なくとも一方の面に、易接着層、保護層、接着層、光反射層、反射防止層、遮光層、平坦化層、緩衝層、および、応力緩和層等を有してもよい。
これらの層は、複数種を有してもよい。
好ましくは、支持体12は、少なくとも一方の表面、好ましくは両面に、易接着層を有する。
易接着層には、制限は無く、各種の樹脂フィルムの表面に形成される、公知の易接着層が、各種、利用可能である。易接着層としては、一例として、ウレタン化合物およびイソシアネート化合物を用いて形成する易接着層等が例示される。
支持体12の表面に設ける易接着層には、コロイダルシリカ、メチル(メタ)アクリレートポリマー、ブチル(メタ)アクリレートポリマー、オレイン酸アミド、および、酸化ケイ素粒子(シリカ粒子)等のマット剤を含有してもよい。
易接着層がマット剤を含有することにより、後述するロール・トゥ・ロールにおける巻取りが容易になる、ロール・トゥ・ロールによるロールの巻き姿が綺麗になる、ロール・トゥ・ロールにおける搬送時のスリップによる傷故障を防止できる等の点で好ましい。
易接着層が含有するマット剤の量には、制限は無く、易接着層の機能を損なわない範囲で、適宜、設定できる。易接着層におけるマット剤の含有量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%が好ましい。
ここで、支持体12が、下地層14の形成面に易接着層を有し、さらに、下地層14の形成面側の易接着層がマット剤を含有する場合には、下地層14の形成等に影響を与えないように、マット剤は、小さい方が好ましい。
具体的には、支持体12において、下地層14の形成面の易接着層が含有すつマット剤を含有する場合には、マット剤の大きさは、0.2μm以下とするのが好ましい。
ガスバリアフィルム10において、下地層14は、支持体12の一方の表面に設けられる。また、下地層14の上には、無機層16が設けられる。
すなわち、図1に示すガスバリアフィルム10は、下地層14と、この下地層14を下地(アンダーコート)とする無機層16との組み合わせを、1組、有するものである。
なお、本発明のガスバリアフィルムは、図1に示すように、下地となる下地層14と無機層16との組み合わせを、1組のみ有するものに限定はされない。
すなわち、本発明のガスバリアフィルムは、図2に概念的に示すガスバリアフィルム20のように、無機層16と、下地となる下地層14との組み合わせを、2組、有するものでもよい。あるいは、本発明のガスバリアフィルムは、無機層16と、下地となる下地層14との組み合わせを、3組以上、有するものでもよい。
下地となる下地層14と無機層16との組み合わせの数が多いほど、高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムを得ることができる。その反面、下地となる下地層14と無機層16との組み合わせの数が多いほど、ガスバリアフィルムの薄手化、軽量化および可撓性の点で不利になる。
さらに、本発明のガスバリアフィルムは、図1および図2に示されるように、支持体12の一方の表面のみに下地層14と無機層16との組み合わせを有するものに限定はされない。すなわち、本発明のガスバリアフィルムは、支持体12の両面に、下地層14と無機層16との組み合わせを、1組以上、有するものでもよい。
(下地層14)
下地層14は、無機層16の下地となる層(アンダーコート層)である。すなわち、下地層14は、支持体12の表面の凹凸および/または表面に付着する異物等を包埋して、無機層16の形成面を平滑にする層である。この点に関しては、図2に示すように下地層14と無機層16との組み合わせを、複数、有する場合において、無機層16の表面に下地層14を形成する場合も同様である。
本発明のガスバリアフィルム10は、このような下地層14を有することにより、ガスバリアフィルム10において、主にガスバリア性を発現する無機層16を全面的に隙間無く、適正に形成することを可能にしている。
ここで、従来の無機層と下地層とを有する、積層型のガスバリアフィルムでは、無機層16の下地層は、(メタ)アクリレート化合物等を重合してなる下地有機層である。
これに対し、本発明のガスバリアフィルム10の下地層14は、アルコキシシランの重合物(縮重合物)を含むものである。加えて、本発明のガスバリアフィルム10において、無機層16は、ケイ素を含有するものである。さらに、本発明のガスバリアフィルム10は、無機層16と、無機層16の下地となる下地層14との間に、下地層14の成分と無機層16の成分との両方の成分を含有する混合層18を有する。
本発明は、このような構成を有することにより、より優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルムを実現している。
特許文献1等にも示されるように、従来の積層型のガスバリアフィルムでは、(メタ)アクリレートモノマーなどの有機層となる有機化合物、光重合開始剤および有機溶剤等を含有する塗布液を調製し、この塗布液を支持体の表面に塗布して、乾燥した後に、塗膜に紫外線を照射することによって、有機化合物を重合(架橋・硬化)することで下地有機層を形成している。
このような下地有機層を有することにより、支持体表面の凹凸や、支持体表面に付着する異物等を包埋して、無機層の形成面を平滑にして、適正な無機層を形成することが可能になる。その結果、積層型のガスバリアフィルムによれば、水蒸気透過率が1×10-3g/(m2・day)以下のような、高いガスバリア性を有するガスバリアフィルムを得られる。
さらに、特許文献2に記載されるように、下地有機層を形成した後に、下地有機層の表面にラミネートフィルムを貼着することによって、無機層を形成するまでに生じる、有機層の損傷を防止できる。
ところが、本発明者らは、検討の結果、下地有機層を有するガスバリアフィルムでは、未反応の有機化合物、残存する重合開始剤、および、残存する有機溶剤に起因して、無機層の欠陥が生じてしまい、これが、さらなるガスバリア性の向上を阻害していることを見出した。
前述のように、下地有機層は、有機溶剤を用いて塗布液を調製して、塗布、乾燥した後、有機化合物を重合することで形成している。ここで、塗布液の溶剤を完全に除去することは困難であり、若干の有機溶剤は、下地有機層に残ってしまう。同様に、塗布液中の有機化合物および重合開始剤を完全に反応させることは困難であり、若干の有機化合物および重合開始剤は、下地有機層に残ってしまう。特に、下地有機層の厚さ方向の中間領域では、未反応の有機化合物が残存しやすい。
下地有機層を下地層とする無機層は、好ましくはプラズマCVDによって形成される。このプラズマCVDによる無機層の形成の際におけるプラズマの照射によって、下地有機層は、少なからずエッチングされる。有機溶剤、有機化合物および重合開始剤は、揮発性が高いため、このエッチングによって気化して、放出される。このような物質の放出は、無機層の着膜の阻害となるため、無機層の成膜不良の原因となり、下地有機層と無機層とを有する積層型のガスバリアフィルムの、さらなる性能向上の妨げになっている。
これに対して、本発明者らは、緻密かつ高硬度で、さらに、未反応物がプラズマCVDによる無機層16の形成に影響を与えない材料で形成される下地層について、鋭意検討を重ねた。
その結果、ケイ素を含有する無機層16の下地として、アルコキシシランの重合物を含む下地層14を形成することにより、緻密かつ高硬度で、さらに、未反応物がプラズマCVDによる無機層16の形成に影響を与えない下地層14を形成して、よりガスバリア性等に優れるガスバリアフィルムが得られることを見出した。
周知のように、アルコキシシランの重合物は、アルコキシシランの加水分解と重合(縮重合)とによって、『−O−Si−O−』の結合を形成する。そのため、アルコキシシランの重合物を含む下地層14は、非常に高密度で、かつ、固い膜が得られるので、下地層14を形成した後、搬送等による下地層14の損傷を大幅に防止できる。
また、アルコキシシランの重合物からなる下地層14は、下地有機層と同様に、アルコキシシランを溶剤に溶解し、必要に応じて、硬化剤および界面活性剤等を添加した下地層14を形成する塗布液を用いて形成する。そのため、支持体12の凹凸および異物等の包埋性が良好で、表面すなわち無機層16の形成面が平滑な下地層14を形成できる。加えて、アルコキシシランは水に溶解可能であるため、塗布液に有機溶剤を使用する必要がなく、防爆性を考慮しない成膜装置での形成が可能であり、さらに環境汚染の防止の点でも有利である。また、塗布液を水で調製することにより、アルコキシシランの加水分解すなわち重合反応も好適に進行する。
さらに、アルコキシシランは、加熱によって加水分解および重合が進行するので、塗布液の塗膜全体を加熱することで、厚さ方向の位置によらず、全域で適正にアルコキシシランの重合(硬化)が進行し、未反応のアルコキシシランの残存量を極めて少なくできる。
下地層14は、アルコキシシランの重合物を含む。
ここで、下地層14は、主成分がアルコキシシランの重合物であればよいが、50質量%以上がアルコキシシランの重合物であるのが好ましく、60質量%以上がアルコキシシランの重合物であるのがより好ましく、70質量%以上がアルコキシシランの重合物であるのがさらに好ましい。
なお、本発明において、主成分とは、層が含有する成分のうち、最も含有質量比が大きい成分をいう。
前述のように、下地層14は、アルコキシシランを含有する、下地層14を形成する塗布液を調製し、この塗布液を支持体12(下地層14の被形成面)に塗布して、塗膜を加熱することで、アルコキシシランを加水分解および重合(縮重合)して(アルコキシシランを硬化して)、形成する。以下の説明では、下地層14を形成する塗布液を『下地層塗布液』とも言う。
ここで、下地層14となるアルコキシシランには、制限は無く、公知の各種のアルコキシシランが、利用可能である。なお、本発明においては、シラザンもアルコキシシランとみなす。
アルコキシシランとしては、具体的には、下記の一般式(1)で示される化合物が例示される、
1 aSi(OR24-a ・・・ 一般式(1)
(一般式(1)において、R1は、それぞれ、炭素数1〜10の有機基であり、R2は、それぞれ、炭素数1〜3のアルキル基であり、aは0または1である。)
アルコキシシランとしては、より具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、および、ヘキサメチルジシラザン等が例示される。
中でも、3〜6官能のアルコキシシランは、好適に利用される。その中でも、テトラエトキシシラン、および、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等は好適に利用される。
また、アルコキシシランは、ラジカル重合性基を有さないものを用いるのが好ましい。ラジカル重合性基を有するアルコキシシランを用い、ラジカル重合性基で硬化を行うと、厚さ方向での硬化の偏在が大きくなる場合がある。その結果、後述する無機層16の形成の際にプラズマによって下地層14がエッチングされた場合に、内部から未重合のラジカル重合性基の部分が露出し、ガスバリア性能を損なう原因の欠陥故障になりうる。
下地層14となるアルコキシシランは、例えば、テトラエトキシシランと3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとの併用等、複数を併用してもよい。
ここで、複数のアルコキシシランを併用する場合には、少なくとも1つのアルコキシシランは、炭素数が3以上の直鎖(側鎖を有してもよい)を有するアルコキシシランを用いるのが好ましい。炭素数が3以上の直鎖を有するアルコキシシランを用いることにより、ガスバリアフィルム10のカールを好適に防止でき、かつ、重合性を充分に確保できる等の点で好ましい。
下地層14すなわち下地層塗布液は、必要に応じて、コロイダルシリカを含有してもよい。
下地層14がコロイダルシリカを含有することにより、滑り性を付与して、搬送および後述するロール・トゥ・ロールにおける巻取りが容易になる、ロール・トゥ・ロールによるロールの巻き姿が綺麗になる、下地層14の硬度を向上できる等の点で好ましい。その反面、下地層14におけるコロイダルシリカの含有量が多くなるほど、ガスガリア性は、低下する傾向にある。
従って、コロイダルシリカは、ガスバリア性よりも、搬送性および巻取り性等を重視する場合に、下地層14に添加するのが好ましい。
下地層14におけるコロイダルシリカの含有量には、制限は無い。以上の点を考慮すると、下地層14におけるコロイダルシリカの含有量は、1〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
下地層14の厚さには、制限は無い。従って、下地層14を形成するアルコキシシラン等に応じて、支持体12の表面の凹凸等を包埋できる厚さを、適宜、設定できる。
下地層14の厚さは、0.03〜3μmが好ましく、0.1〜2.5μmがより好ましく、0.5〜2μmがさらに好ましい。
下地層14の厚さを0.03μm以上とすることにより、支持体12の表面の凹凸や、支持体12の表面に付着した異物を包埋して、下地層14の表面を平坦化できる等の点で好ましい。下地層14の厚さを3μm以下とすることにより、下地層14のクラックを防止できる、ガスバリアフィルム10の可撓性を高くできる、ガスバリアフィルム10の薄手化および軽量化を図れる等の点で好ましい。
下地層14が複数設けられる場合、すなわち、下地層14と無機層16との組み合わせを複数組有する場合には、各下地層14の厚さは、同じでも異なってもよい。
下地層14は、形成材料に応じた公知の方法で形成できる。
例えば、下地層14は、前述のように、下地層14となるアルコキシシランを含有する下地層塗布液(下地層14を形成する塗布液)を調製して、塗布液を支持体12の表面に塗布して、加熱(乾燥)する、いわゆる塗布法で形成できる。前述のように、下地層塗布液は、コロイダルシリカを含有してもよく、また、必要に応じて、硬化剤および/または界面活性剤を含有してもよい。
下地層14は、いわゆるロール・トゥ・ロールによって形成できる。以下、「ロール・トゥ・ロール」を「RtoR」ともいう。RtoRとは、長尺な成膜対象シートを巻回してなるロールから、成膜対象シートを送り出し、成膜対象シートを長手方向に搬送しつつ成膜を行い、成膜済のシートをロール状に巻回する製造方法である。RtoRを利用することで、高い生産性と生産効率が得られる。
(無機層16)
無機層16は、下地層14の表面に設けられる。
無機層16は、ケイ素を含む化合物を主成分とする層であり、好ましくは、不可避的な不純物以外は、ケイ素を含む化合物からなる層である。無機層16は、ガスバリア性を発現する。
無機層16は、下地層14の表面に設けられることにより、適正に成膜される。支持体12には表面の凹凸や異物の影のような、無機化合物が着膜し難い領域がある。支持体12上に下地層14を設けることにより、無機化合物が着膜し難い領域が覆われる。そのため、無機層16を支持体12の表面全面に、隙間無く形成することが可能になる。
無機層16の形成材料には、制限は無く、ケイ素を含有する、ガスバリア性を発現する無機化合物が、各種、利用可能である。
無機層16の形成材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、酸化窒化炭化ケイ素などのケイ素酸化物; 窒化ケイ素、窒化炭化ケイ素などのケイ素窒化物; 炭化ケイ素等のケイ素炭化物; これらの水素化物; これら2種以上の混合物; および、これらの水素含有物等、の無機化合物が挙げられる。また、これらの2種以上の混合物も、利用可能である。
特に、窒化ケイ素、酸化ケイ素、および、酸窒化ケイ素は、透明性が高く、かつ、優れたガスバリア性を発現できる点で、好適に利用される。中でも特に、優れたガスバリア性を発現できる点で、窒化ケイ素は、好適に利用される。
無機層16の厚さには、制限は無く、形成材料に応じて、目的とするガスバリア性を発現できる厚さを、適宜、設定できる。
無機層16の厚さは、10〜200nmが好ましく、15〜100nmがより好ましく、20〜75nmがさらに好ましい。
無機層16の厚さを10nm以上とすることにより、十分なガスバリア性を安定して発現する無機層16が形成できる点で好ましい。また、無機層16は、一般的に脆く、厚過ぎると、割れやヒビ、剥がれ等を生じる可能性が有るが、無機層16の厚さを200nm以下とすることにより、割れが発生することを防止できる。さらに、無機層16の厚さを150nm以下とすることにより、ガスバリアフィルム10を折り曲げた際に、無機層16の割れおよび剥がれ等を防止して、可撓性の高いガスバリアフィルム10を得られる点でも好ましい。
無機層16が複数設けられる場合、すなわち、下地層14と無機層16との組み合わせを複数組有する場合には、各無機層16の厚さは、同じでも異なってもよい。
無機層16は、形成材料に応じた公知の方法で形成できる。
例えば、CCP(Capacitively Coupled Plasma)−CVDおよびICP(Inductively Coupled Plasm)−CVD等のプラズマCVD、原子層堆積法(ALD(Atomic Layer Deposition))、マグネトロンスパッタリングおよび反応性スパッタリング等のスパッタリング、ならびに、真空蒸着などの各種の気相成膜法が好適に挙げられる。中でも、プラズマCVD、その中でも特に支持体12にバイアス電位を印加するプラズマCVDは、好適に利用される。
なお、無機層16も、RtoRで形成するのが好ましい。
(混合層18)
本発明のガスバリアフィルム10は、無機層16と、この無機層16の下地となる下地層14との間に、混合層18を有する。
混合層18とは、下地層14の形成成分すなわちアルコキシシランに由来する成分と、無機層16すなわち窒化ケイ素等に由来する成分との、両方を含有する層である。
後述するが、混合層18は、プラズマCVDによって無機層16を形成し、かつ、プラズマが下地層14を十分にエッチングするような条件で無機層16を形成することで、形成できる。
無機層16は、ケイ素を含有する無機化合物を含有する層であり、下地層14は、アルコキシシランの重合物を主成分とする層であり、混合層18は、無機層16を形成する際の下地層14のエッチングで形成される。
従って、混合層18は、無機層16の形成成分と下地層14の形成成分とで、無機層16と混合層18との間で『−O−Si−O−』の結合を形成し、混合層18と下地層14との間でも『−O−Si−O−』の結合を形成する。すなわち、本発明のガスバリアフィルム10において、混合層18は、単に無機層16と混合層18との成分が混合された層ではなく、無機層16と混合層18とを化学結合によって接合する層となる。
従って、混合層18を有することにより、下地層14と無機層16との密着力を、非常に強くできる。
また、混合層18は、下地層14の成分と無機層16の成分とが混合された層であるので、光学特性、特に屈折率が、下地層14と無機層16との間となる。しかも、混合層18は、無機層16を生成する際の下地層14のエッチングによって形成される。
そのため、混合層18は、無機層16側から下地層14側に向かって、順に、無機層16の成分が多く下地層14の成分が少ない領域と、無機層16の成分と下地層14の成分とが同じ位の領域と、無機層16の成分が少なく下地層14の成分が多い領域とを有し、漸次、成分のバランスが変化し、すなわち光学特性も、漸次、変化する。
その結果、混合層18を有することにより、下地層14と無機層16との屈折率差が大きい場合でも、下地層14と無機層16との間における急激な屈折率の変化を緩衝でき、高い透明性を有する等の光学特性に優れたガスバリアフィルム10が得られる。
前述のように、混合層18は、無機層16と下地層14との間に位置する、無機層16と下地層14との両方の成分を有する領域である。
従って、厚さ方向(各層の積層方向)に無機層16側から下地層14側に向かって元素分析を行うと、無機層16に由来する成分が検出されたのち、下地層14に由来する成分が検出される。元素分析が下地層14側へ進むにつれて、無機層16に由来する成分は次第に検出されなくなり、下地層14に由来する成分のみが検出される。
すなわち、本発明においては、例えば、厚さ方向に無機層16側から下地層14側に向かって元素分析を行い、下地層14のみが含有する成分が検出された始めた位置から、無機層16のみが含有する成分が検出されなくなった位置までが、混合層18となる。例えば、無機層16が窒化ケイ素膜で、下地層14がテトラエトキシシランを重合した膜である場合には、厚さ方向に無機層16側から下地層14側に向かって元素分析を行い、炭素が検出され始めた位置から、窒素が検出されなくなった位置までが混合層18となる。従って、これを利用して、混合層18の膜厚を測定できる。
混合層18の厚さには、制限は無い。
ここで、混合層18を有することによる、密着性および光学特性の向上等の効果を十分に得るためには、混合層18は、ある程度の厚さとするのが好ましい。その反面、混合層18が厚くなるほど無機層16が薄くなるが、混合層18は無機層ほどのガスバリア性を有さないので、混合層18が厚くなるほど、ガスバリア性の点では不利になる。
この点を考慮すると、混合層18の厚さは、1〜30nmが好ましく、3〜15nmがより好ましく、5〜10nmがさらに好ましい。
本発明において、混合層18は、最も厚い部分の厚さが上記の範囲に入ってるのが好ましく、全域の厚さが上記の範囲に入っているのがより好ましい。なお、本発明においては、任意に選択した10点において、混合層18の厚さを測定して、全ての測定点で混合層18の厚さが上記の範囲に入っていれば、混合層18は、全域の厚さが上記の範囲に入っていると見なすことができる。
混合層18の厚さは、例えば、断面TEM(Transmission Electron Microscope(透過型電子顕微鏡))を用いて、前述のように、厚さ方向に元素分析を行って、混合層18の領域を検出して測定すればよい。
このような混合層18は、無機層16をプラズマCVDで形成し、かつ、このプラズマCVDによって無機層16を形成する際に、下地層14を強めにエッチングするような条件で無機層16を形成することで、形成できる。
具体的には、プラズマCVDによる無機層16の形成の際に、支持体12にバイアス電位を印加し、かつ、支持体12に印加するバイアス電位を、プラズマによる下地層14のエッチングが十分に行える高さとすることで、混合層18を形成できる。また、支持体に印加するバイアス電位を高くすることで混合層18を厚くでき、バイアス電位を低くすることで、混合層18を薄くできる。
無機層16および混合層18の厚さは、一例として、予め、支持体12に印加するバイアス電位等の無機層16の形成条件(成膜条件)を変更した実験やシミュレーションによって、成膜開始から無機層16の形成が開始されるまでの時間、形成される混合層18の厚さ、無機層16の成膜レート等を知見しておき、これを用いて制御できる。
このような本発明のガスバリアフィルム10は、全光線透過率が85%以上であるのが好ましく、88%以上であるのが好ましい。
この点に関しては、後述する別の態様のガスバリアフィルムも同様である。
図3に、本発明の第2の実施形態であるガスバリアフィルム24を概念的に示す。
なお、図3に示すガスバリアフィルム24は、保護有機層26を有する以外は、図1に示すガスバリアフィルム10と同じ部材からなるものであるので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部位を主に行う。
(保護有機層26)
保護有機層26は、各層の積層方向に支持体12と最も離間する無機層16の表面に形成される、有機化合物からなる層である。すなわち、保護有機層26は、最も上の無機層16の表面に積層される層である。
このような保護有機層26を有することにより、ガスバリア性を発現する無機層16の割れやヒビ等の損傷を防止して、ガスバリア性の高いガスバリアフィルムを得られる。
保護有機層26は、例えば、有機化合物(モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー等)を含有する塗布液を硬化して形成される。保護有機層26を形成する塗布液は、有機化合物を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。また、この塗布液は、有機化合物に加え、好ましくは、有機溶剤、界面活性剤、および、シランカップリング剤などを含む。
保護有機層26は、例えば、熱可塑性樹脂および有機ケイ素化合物等を含有する。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、および、アクリル化合物等が挙げられる。有機ケイ素化合物は、例えば、ポリシロキサンが挙げられる。
保護有機層26は、強度が優れる観点と、ガラス転移温度の観点とから、好ましくは、ラジカル硬化性化合物および/またはエーテル基を有するカチオン硬化性化合物の重合物を含む。
保護有機層26は、保護有機層26の屈折率を低くする観点から、好ましくは、(メタ)アクリレートのモノマーやオリゴマーの重合体を主成分とする(メタ)アクリル樹脂を含む。
保護有機層26は、より好ましくは、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(DPGDA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)などの、2官能以上の(メタ)アクリレートのモノマーやオリゴマーの重合体を主成分とする(メタ)アクリル樹脂を含み、さらに好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレートのモノマーやオリゴマーの重合体を主成分とする(メタ)アクリル樹脂を含む。また、これらの(メタ)アクリル樹脂を、複数用いてもよい。主成分とは、含有する成分のうち、最も含有質量比が大きい成分をいう。
また、特に好ましい保護有機層26として、アクリルポリマーを主鎖とし、側鎖として、末端がアクリロイル基のウレタンポリマーおよび末端がアクリロイル基のウレタンオリゴマーの少なくとも一方を有するグラフト共重合体の重合物と、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの重合物と、前述のアクリルポリマーを主鎖とし、側鎖として、末端がアクリロイル基のウレタンポリマーおよび末端がアクリロイル基のウレタンオリゴマーの少なくとも一方を有するグラフト共重合体および3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの重合物と、(メタ)アクリレートポリマーと、1以上の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤と、を含有する有機層が例示される。
なお、シランカップリング剤には、シランカップリング剤の加水分解物、シランカップリング剤の水素結合物、および、シランカップリング剤の脱水縮合物等、シランカップリング剤から生成される各種の化合物を含む。この点に関しては、他のシランカップリング剤を含む層も同様である。
より具体的には、保護有機層26は、アクリルポリマーを主鎖とし、側鎖として、末端がアクリロイル基のウレタンポリマーおよび末端がアクリロイル基のウレタンオリゴマーの少なくとも一方を有するグラフト共重合体、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートポリマー、および、シランカップリング剤を含有する塗布液を、無機層16の上に塗布、乾燥し、塗布液を重合(硬化)することによって形成された層であるのが好ましい。
また、この保護有機層26は、ウレタンアクリレートオリゴマーの重合物(硬化物)を有してもよい。すなわち、保護有機層26を形成する塗布液は、必要に応じて、ウレタンアクリレートオリゴマーを含有してもよい。
このような保護有機層26を有することにより、太陽電池モジュールなど、ガスバリアフィルムが製造工程として圧力や熱が加わる工程を有する製品に利用された場合でも、無機層16の損傷を防止できる。
なお、以下の説明では、『アクリルポリマーを主鎖とし、側鎖として、末端がアクリロイル基のウレタンポリマーおよび末端がアクリロイル基のウレタンオリゴマーの少なくとも一方を有するグラフト共重合体』を、単に『グラフト共重合体』とも言う。
<グラフト共重合体>
保護有機層26に用いるグラフト共重合体は、アクリルポリマーを主鎖とし、側鎖に末端がアクリロイル基のウレタンポリマーおよび/または末端がアクリロイル基のウレタンオリゴマーを有するグラフト共重合体である。
このグラフト共重合体は、幹となるアクリル主鎖のモノマー単位の所々にウレタンモノマー単位が側鎖として配列した構造を持つ共重合体であればよく、一般的にグラフト共重合で形成される構造を有していればよい。
グラフト共重合体のアクリル主鎖は、アクリレートモノマー、エチルアクリレートモノマー等がそれぞれ単独で重合して形成されるものでもよく、これらのいずれかの共重合体もしくはこれらのいずれかと他のモノマーとの共重合体のでもよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルおよびエチレンから得られる共重合体であることも好ましい。
アクリル主鎖に結合する側鎖の少なくとも一部は、ウレタンポリマー単位またはウレタンオリゴマー単位を含む側鎖である。グラフト共重合体は、分子量の異なるウレタンポリマー単位および/または分子量の異なるウレタンオリゴマー単位を、それぞれ複数有していてもよい。
グラフト共重合体は、重量平均分子量が10000以上であるのが好ましい。また、グラフト共重合体の重量平均分子量は、10000〜300000であるのが好ましく、グラフト共重合体の分子量は10000〜2500000がより好ましく、12000〜200000がさらに好ましい。
なお、本発明において、各種の重合物(重合体、ポリマー、樹脂、高分子材料)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、ポリスチレン(PS)換算の分子量として測定すればよい。より具体的には、重量平均分子量は、HLC−8220(東ソー社製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM-H(東ソー社製、6.0mmID×15.0cm)を、溶離液として10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリジノン)溶液を用いることによって求めればよい。
ポリマー等の重量平均分子量は、カタログ等に記載された数値を利用してもよい。
グラフト共重合体は、二重結合当量(アクリル当量)が500g/mol以上であるのが好ましく、550g/mol以上であるのがより好ましく、600g/mol以上であるのがさらに好ましい。また、グラフト共重合体の二重結合当量は、2000g/mol以下が好ましい。
二重結合当量とは、グラフト共重合体に含まれる重合性の二重結合(すなわち(メタ)アクリロイル基)1molあたりの重量平均分子量(ポリマー質量)である。
なお、グラフト共重合体の二重結合当量は、公知の方法で測定すればよい。また、グラフト共重合体のウレタンポリマーの二重結合当量は、カタログ等に記載された数値を利用してもよい。
このようなグラフト共重合体は、例えば大成ファインケミカル社製の紫外線硬化型ウレタンアクリルポリマーであるアクリット8BR−930などのアクリット8BRシリーズ等、市販品を用いてもよい。また、グラフト共重合体は、複数を併用してもよい。
<3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー>
3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーも、公知の各種のものが利用可能である。
具体的には、TMPTA、DPHA、エピクロロヒドリン(ECH)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性TMPTA、PO変性TMPTA、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性DPHA、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。
さらに、本発明では、下記の一般式(1)で表される化合物における3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーも好適に利用可能である。
一般式(1)
(一般式(1)中、R1は、置換基を表し、それぞれ、同一でも異なってもよい。nは、0〜5の整数を示し、それぞれ、同一でも異なってもよい。但し、R1の少なくとも1つは重合性基を含む。)
一般式(1)で表される化合物における3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは、市販品として入手できる。
また、一般式(1)で表される化合物における3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーは、公知の方法で合成できる。
<(メタ)アクリレートポリマー>
(メタ)アクリレートポリマーは、アクリレートポリマーでも、メタクリレートポリマーでも、アクリレートポリマーとメタクリレートポリマーとの混合物でもよい。中でも、硬度が高い保護有機層26が得られる等の点で、メタクリレートポリマーは好適に利用される。
(メタ)アクリレートポリマーの分子量には、特に限定はないが、重量平均分子量が10000以上であるのが好ましく、20000以上であるのがより好ましく、40000以上であるのが特に好ましい。
(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量を10000以上、特に、20000以上とすることにより、重合性組成物を重合(硬化)する際の収縮を抑制して、無機層16と保護有機層26との密着性を高くできる等の点で好ましい。
(メタ)アクリレートポリマーは、市販品も好適に利用可能である。
(メタ)アクリレートポリマーの市販品としては、三菱レイヨン社製のダイヤナールBRシリーズ等が例示される。
<1以上の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤>
シランカップリング剤は、1以上の(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、公知の各種のものが利用可能である。具体的には、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
また、1以上の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤は、市販品も好適に利用可能である。1以上の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の市販品としては、信越シリコーン社製のKBM−5103、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503等が例示される。
<ウレタンアクリレートオリゴマー>
ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、紫外線硬化が可能な、末端がアクリレートのウレタンオリゴマーが、各種、利用可能である。本発明において、ウレタンアクリレートオリゴマーとは、分子量が1000〜10000のウレタンアクリレート分子である。なお、ウレタンアクリレートオリゴマーが分子量分布を有さない場合には、分子量は化学構造式から計算した分子量を意図し、ウレタンアクリレートオリゴマーが分子量分布を有する場合には、分子量は前述の重量平均分子量を意図する。
ウレタンアクリレートオリゴマーは、市販品も、好適に利用可能である。
ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品としては、サートマー社製の機能性オリゴマーCNシリーズ、新中村化学社製の光硬化性オリゴマーNKシリーズ等が例示される。
保護有機層26は、必要に応じて、滑り剤を含有してもよい。すなわち、保護有機層26を形成する塗布液は、必要に応じて、滑り剤を含有してもよい。
保護有機層26も、RtoRによって形成するのが好ましい。保護有機層26が滑り剤を含有することにより、RtoRにおける巻取りや巻出しを、安定して円滑に行うことが可能になり、また、ロールの巻き姿も綺麗になる。
保護有機層26の厚さには、制限は無く、保護有機層26の形成材料に応じて、十分に無機層16を保護できる厚さを、適宜、設定すればよい。
保護有機層26の厚さは、3〜30μmが好ましく、5〜15μmがより好ましい。
保護有機層26の厚さを3μm以上とすることにより、外的な力による無機層16の損傷を防止できる、ガスバリアフィルム24に熱や張力が掛かった場合でも支持体12が伸びることを防止でき、これに起因する無機層16の損傷を防止できる等の点で好ましい。
また、保護有機層26の厚さを30μm以下とすることにより、ガスバリアフィルム24が不要に厚くなることを防止できる、可撓性および透明性の良好なガスバリアフィルム24を得ることができる等の点で好ましい。
図4に、本発明の第3の実施形態であるガスバリアフィルム30を概念的に示す。
なお、図3に示すガスバリアフィルム30は、密着層32を有する以外は、図1に示すガスバリアフィルム10と同じ部材からなるものであるので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部位を主に行う。
なお、本発明のガスバリアフィルムは、前述の保護有機層26および密着層32の両方を有するものであってもよい。
(密着層32)
ガスバリアフィルム30は、支持体12の下地層14および無機層16の形成面とは逆側の面に、密着層32を有する。以下の説明では、支持体12に関して、下地層14および無機層16の形成面を『上面』、逆側の面を『裏面』とも言う。
なお、密着層32は、支持体12の裏面に直接形成されてもよく、あるいは、支持体12に形成される前述の易接着層の上に形成されてもよい。
密着層32は、一例として、滑り層も兼ねる密着層である。このような密着層を有することにより、RtoRにおける巻取りが容易になる、RtoRによるロールの巻き姿が綺麗になる、ガスバリアフィルムのハンドリング性を向上できる、裏面の損傷を防止できる、別部材との貼り合わせを容易に行える等の点で好ましい。
密着層32には、制限は無く、各種のシート状物において密着層として利用されている各種の密着層が利用可能である。
一例として、ウレタンおよびポリオレフィンをバインダーとして、前述の易接着層で例示したマット剤を滑り粒子として含有する密着層等が例示される。
密着層32は、塗布法等、密着層の形成材料に応じた公知の方法で形成すればよい。ここで、また、密着層32(後述する滑り層)は、水を溶剤とする塗布液を用いて形成するのが好ましい。これにより、溶剤として水を用いて下地層14を形成する際に、同じ成膜装置で下地層14と密着層32とを形成することが可能になる。また、環境汚染の防止の点でも有利である。
支持体12の裏面に形成する層は、密着層32に限定はされない。
一例として、滑り層が例示される。滑り層としては、公知の各種の滑り層が利用可能であり、例えば、ウレタン、アクリレートおよびエポキシ樹脂等からなるバインダーに、シリカおよびポリメチルメタクリレート等の有機物および無機物等のいずれでも良い粒子を含有するマット化された層等が例示される。
以下、図4および図5の概念図を参照して、本発明のガスバリアフィルム10の製造方法の一例を説明する。
図2に示す装置は、下地層14を形成する塗布成膜装置36である。塗布成膜装置36は、RtoRによって有機層を形成するものであり、長尺な支持体12を長手方向に搬送しつつ、下地層塗布液(下地層14を形成する塗布液(重合性組成物))を塗布した後、加熱によって下地層塗布液に含まれるアルコキシシランを加水分解および重合させて、下地層14を形成する。
図示例の塗布成膜装置36は、一例として、塗布部37と、加熱部38と、回転軸40と、巻取り軸42と、搬送ローラ対46aおよび46bとを有する。
他方、図3に示す装置は、無機層16を形成する無機成膜装置50である。無機成膜装置50も、RtoRによって無機層16を形成するものであり、下地層14を形成された長尺な支持体12を長手方向に搬送しつつ、支持体12に形成された下地層14の上に、無機層16を形成する。
図示例の無機成膜装置50は、供給室51、成膜室52および巻取り室54を有する。供給室51と成膜室52とは開口76aを有する隔壁76によって、成膜室52と巻取り室54とは開口78aを有する隔壁78によって、それぞれ、分離されている。
ガスバリアフィルム10を作製する際には、まず、長尺な支持体12を巻回してなる支持体ロール12Raが塗布成膜装置36の回転軸40に装填され、支持体12の表面への、下地層14の形成(下地層形成工程)、が行われる。なお、下地層14の形成(下地層形成工程)に先立ち、下地層14を形成するための、アルコキシシランを含有する塗布液(下地層塗布液)を調製する(調液工程)。
回転軸40に支持体ロール12Raが装填されると、支持体12は、支持体ロール12Raから引き出され、搬送ローラ対46aを経て、塗布部37および加熱部38を通過して、搬送ローラ対46bを経て、巻取り軸42に至る、所定の搬送経路を通される。
支持体ロール12Raから引き出された支持体12は、搬送ローラ対46aによって塗布部37に搬送され、表面に、下地層塗布液を塗布される。
前述のように、下地層塗布液は、アルコキシシランを溶剤に溶解したものである。なお、この塗布液には、必要に応じて、使用するアルコキシシランに応じて、公知の硬化剤および界面活性剤等を添加してもよい。
下地層塗布液の溶剤には制限はなく、アルコキシシランを溶解可能なものであれば、各種の溶剤が利用可能である。
ここで、下地層塗布液は、有機溶剤ではなく、水を溶剤として用いるのが好ましい。下地層14は、アルコキシシランを加水分解および重合(縮重合)させて、形成する。従って、水を溶剤として用いることにより、アルコキシシランの加水分解および重合反応を、より好適に進行させることができる。また、水を溶剤として用いることにより、成膜装置の防爆対策も不要で装置を簡易にでき、さらに、環境汚染の防止の点でも有利である。
なお、溶剤としての水は、純水、蒸留水、および、イオン交換水等を用いるのが好ましい。
塗布部37における下地層塗布液の塗布は、ダイコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、バーコート法、グラビアコート法等、公知の方法が、各種、利用可能である。
下地層塗布液が塗布された支持体12は、次いで、加熱部38によって加熱(乾燥)される。この加熱により、下地層塗布液のアルコキシシランが加水分解および重合して、下地層14が形成される。
加熱部38は、支持体12の上面側(下地層塗布液の塗布面側)の加熱して乾燥を行う上面側加熱部38aと、支持体12の裏面側から加熱して乾燥を行う裏面側加熱部38bを有し、上面側と裏面側の両方から、下地層塗布液の加熱を行う。
加熱部38における加熱は、シート状物を加熱する公知の方法で行えばよい。例えば、上面側の上面側加熱部38aは、温風加熱部であり、裏面側の裏面側加熱部38bはヒートローラ(加熱機構を有するパスローラ)である。
下地層14が形成された支持体12は、搬送ローラ対46bによって搬送されて、巻取り軸42によってロール状に巻回される。ここで、塗布成膜装置36においては、好ましい態様として、搬送ローラ対46bにおいて、供給ロール47から送り出した保護フィルムGaを下地層14の表面に積層(貼着)し、下地層14を保護する。
下地層14を保護する保護フィルムGa、および、後述する無機層16を保護する保護フィルムGbには、制限は無く、ポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム等、シート状物の保護に用いられる公知の保護フィルム(ラミネートフィルム)が、各種、利用可能である。
所定長の下地層14の形成が終了すると、必要に応じて切断した後、下地層14を形成された支持体12を巻回してなるロール12Rbとして、図3に示す無機成膜装置50に供給され、無機層16の形成(無機層形成工程)に供される。
無機成膜装置50において、ロール12Rbは供給室51の回転軸56に装填される。
ロール12Rbが回転軸56に装填されると、支持体12(下地層14を形成された支持体12)が引き出され、供給室51から、成膜室52を経て巻取り室54の巻取り軸58に至る所定の経路を通される。
支持体12を所定の経路に通したら、供給室51の真空排気手段61、成膜室52の真空排気手段74、および、巻取り室54の真空排気手段82を駆動して、無機成膜装置50の内部を所定の圧力にする。
ロール12Rbから送り出された支持体12は、パスローラ60によって案内されて成膜室52に搬送される。
成膜室52に搬送された、支持体12は、パスローラ68に案内されてドラム62に巻き掛けられ、ドラム62に支持されて所定の経路を搬送されつつ、成膜手段64によって無機層16を形成される。
成膜手段64は、例えば、ドラム62を電極として用いるCCP−CVDによって無機層16を成膜する、公知の成膜手段である。成膜手段64は、ドラム62と電極対を構成するシャワー電極64a(シャワープレート64a)、シャワー電極64aにプラズマ励起電力を供給する高周波電源64b、および、シャワー電極64aに成膜ガスを供給するガス供給手段64cを有する。
ここで、本発明の製造方法においては、支持体12にバイアス電位を印加しつつ、CCP−CVDによる無機層16の形成を行う。図5に示す例においては、ドラム62にバイアス電源64dが接続されており、シャワー電極64aと電極対を構成するドラム62にバイアス電力を供給することで、支持体12にバイアス電位を印加しつつ、CCP−CVDによる無機層16の形成を行う。また、支持体12に印加するバイアス電位、すなわち、ドラム62に供給するバイアス電力は、CCP−CVDによるプラズマが、十分に下地層14をエッチングする電位とする。これにより、下地層14と無機層16との間に、下地層14の形成成分と無機層16の形成成分とを含有する混合層18を形成できる。
バイアス電源64dには制限はなく、高周波電源、交流もしくは直流のパルス電源等、プラズマCVD装置等で利用される公知のバイアス電源が、各種、利用可能である。
無機層16は、CCP−CVDやICP−CVD等のプラズマCVD、マグネトロンスパッタリングや反応性スパッタリング等のスパッタリング、真空蒸着など、形成する無機層16に応じて、公知の気相堆積法による成膜方法で行えばよいのは、前述のとおりである。従って、使用する原料ガス(成膜ガス・プロセスガス)や成膜条件等は、形成する無機層16や膜厚等に応じて、適宜、設定および選択すればよい。
例えば、無機層16としてCCP−CVDによって窒化ケイ素膜を形成する際には、原料ガスは、一例として、シランガス、窒素ガス、アンモニアガスおよび水素ガスを用いればよい。
なお、無機層16を形成する際には、無機層16の形成に先立ち、パスローラ68において、下地層14の上に積層された保護フィルムGaを剥離して、回収ロール70で回収する。
無機層16を形成された支持体12、すなわちガスバリアフィルム10は、パスローラ72に案内されて、巻取り室54に搬送される。ここで、無機成膜装置50においては、好ましい態様として、無機層16を形成した後、最初に無機層16に接触するパスローラ72において、供給ロール73から送り出した保護フィルムGbを無機層16の表面に積層(貼着)し、無機層16を保護する。
巻取り室54に搬送されたガスバリアフィルム10は、巻取り軸58によって巻き取られて、ガスバリアフィルム10を巻回してなるバリアフィルムロール10Rとされる。
なお、図2に示されるガスバリアフィルム20のように、無機層16と下地層14との組み合わせを、複数、有するガスバリアフィルムを作製する場合には、同様の下地層14の形成(下地層形成工程)と、無機層16との形成(無機層形成工程)とを、形成する無機層16と下地層14との組み合わせの数に応じて、繰り返し、行えばよい。
ここで、2層目以降の下地層14の形成においては、塗布部37における下地層塗布液の塗布に先立ち、搬送ローラ対46aにおいて、無機層16に積層した保護フィルムGbを剥離し、回収ロール48に巻き取る。
このような本発明の製造方法において、図4に示すガスバリアフィルム30のように、支持体12の裏面に密着層32を形成する場合には、その形成タイミングには、制限は無い。
従って、例えば、支持体12の裏面となる面に密着層32を形成した後、支持体12の逆側の面に、下地層14および無機層16を形成してもよく、あるいは、支持体12の一方の面に下地層14を形成した後に、支持体12の裏面に密着層32を形成して、その後、無機層16を形成してもよく、あるいは、支持体12の一方の面に下地層14および無機層16を形成した後、支持体12の裏面に密着層32を形成してもよい。
以上、本発明のガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記の態様に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々、改良または変更を行ってもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明は、以下に示す具体例に限定されない。
[実施例1]
<支持体の作製>
アンチモン化合物を触媒として重縮合した固有粘度0.66のPET樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が280〜300℃に設定された押し出し機内で融解させた。融解させたPET樹脂をダイ部より静電印加されたチルロール上に吐出させ、非結晶PETフィルムを得た。得られた非結晶PETフィルムをフィルム走行方向に3.1倍に延伸した。
その後、延伸して得られたPETフィルムの一方の面に下記の易接着層用塗布液Aを、その逆側の面に下記の易接着層用塗布液Bを、それぞれ、塗布(インラインコート)し、塗布液を乾燥した後、幅方向に3.8倍延伸して、インラインコートを施した易接着層付きのPET製の支持体12を得た。この支持体12の厚さは、100μmであった。
なお、易接着層用塗布液Aおよび易接着層用塗布液Bは、共に、乾燥、延伸後の厚さが75nmになるように塗布した。
<<易接着層用塗布液A>>
下記の成分を含有する組成物を調製した。
・自己架橋性ウレタン(第一工業製薬社製、エラストロンH−3−DF) 164.9質量部
・触媒(第一工業製薬社製、エラストロンCAT−21) 3.3質量部
・ブロックポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートWM44−L70G) 7.7質量部
・アニオン界面活性剤(日油社製、ラピゾールA−90) 0.4質量部
・含水非晶質二酸化ケイ素(マット剤)(東ソー・シリカ社製、NIPGEL AZ−204、粒径0.1μm) 0.1質量部
・コロイダルシリカ(扶桑化学工業社製、PL−3−D) 7.4質量部
・カルナバワックス分散物(中京油脂社製、セロゾール524DK) 4.9質量部
上記成分を含有する組成物のpHを5.1に調節した後、全体が1000質量部になるように量を調節して蒸留水を加えて、易接着層用塗布液Aを調製した。
<<易接着層用塗布液B>>
下記の成分を含有する組成物を調製した。
・自己架橋性ウレタン(第一工業製薬社製、エラストロンH−3−DF) 164.9質量部
・触媒(第一工業製薬社製、エラストロンCAT−21) 3.3質量部
・ブロックポリイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートWM44−L70G) 7.7質量部
・アニオン界面活性剤(日油社製、ラピゾールA−90) 0.4質量部
・コロイダルシリカ(扶桑化学工業社製、PL−3−D) 7.4質量部
・カルナバワックス分散物(中京油脂社製、セロゾール524DK) 4.9質量部
上記成分を含有する組成物のpHを5.1に調節した後、全体が1000質量部になるように量を調節して蒸留水を加えて、易接着層用塗布液Bを調製した。
<下地層の形成>
<<下地層塗布液の調製>>
アルコキシシランとして、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、KBE−403)と、テトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE−04)とを用いた。
まず、酸性水としての酢酸水溶液を40℃で激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを、この酢酸水溶液中に3分間かけて滴下した。なお、酢酸水溶液は、酢酸濃度が1質量%の酢酸水溶液である。
次に、テトラエトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら5分かけて添加し、その後、40℃で、3時間攪拌を続けて、シラノール水溶液を調製した。
次に、このシラノール水溶液に硬化剤(アルミキレート(川研ファインケミカル社製、アルミキレートD))と、界面活性剤(日油社製、ラピゾールa90、および、三洋化成工業社製、ナロアクティcl−95)とを、順次、添加して、水性の下地層塗布液(下地層14を形成する塗布液)を調製した。
なお、この下地層塗布液において、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの添加量は67.5質量部、テトラエトキシシランの添加量は22.5質量部、硬化剤の添加量は9質量部、界面活性剤の添加量は1質量部(0.5質量部ずつ添加)、とした。
下地層塗布液中の加水分解により生成したエタノール濃度をガスクロマトグラフィー法により定量した結果、アルコキシシランの加水分解率は、99.4%であった。
<<下地層の形成>>
調製した下地層塗布液を用い、図5に示すような、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な塗布成膜装置によって、支持体12の一方の表面に、下地層塗布液を塗布して、加熱乾燥することで、厚さ1μmの下地層14を形成した。
下地層塗布液の塗布はバーコーターを用いた。また、下地層塗布液の加熱温度は175℃で、加熱時間は2分とした。
なお、下地層14は、支持体12の、易接着層用塗布液B(含水非晶質二酸化ケイ素(マット剤)を含まない塗布液)によって易接着層を形成した面に形成した。従って、この下地層14の形成面が、支持体12の上面となる。
<無機層の形成=ガスバリアフィルムの作製>
図6に示すような、RtoRによってCCP−CVDで成膜を行う一般的な無機成膜装置を用いて、下地層の表面に無機層として窒化ケイ素膜(SiN)を形成して、図1に示すようなガスバリアフィルム10を作製した。
無機層16を形成する原料ガスは、シランガス(流量160sccm)、アンモニアガス(流量370sccm)、水素ガス(流量590sccm)および窒素ガス(流量240sccm)を用いた。高周波電源64bは、周波数13.56MHzの高周波電源を用い、プラズマ励起電力は2kWとした。成膜圧力は40Paとした。バイアス電源64dは、0.4MHzの高周波電源を用い、支持体12に0.2kWのバイアス電力を供給して、支持体12にバイアス電位を印加した。
断面TEM(日立ハイテクノロジーズ社製、H−9500)によって、前述のように、厚さ方向に窒素と炭素とを検出する元素分析を行った。その結果、無機層16の厚さは20nm、混合層18の厚さは10nm、下地層14の厚さは0.99μm(990nm)であった。
[実施例2]
下地層14の形成において、塗布する下地層塗布液の塗布量を変更して、形成する下地層14の膜厚を3μmとした以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルム10を作製した。
実施例1と同様に測定したところ、無機層16の厚さは20nm、混合層18の厚さは10nm、下地層14の厚さは2.99μm(2990nm)であった。
[実施例3]
下地層14の形成において、塗布する下地層塗布液の塗布量を変更して、形成する下地層14の膜厚を0.2μmとした以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルム10を作製した。
実施例1と同様に測定したところ、無機層16の厚さは20nm、混合層18の厚さは10nm、下地層14の厚さは0.19μm(190nm)であった。
[実施例4]
図5に示す塗布成膜装置と同様に、下地層14を形成した後、下地層14の表面にポリエチレン(PE)性の保護フィルムを積層し、図6に示す無機成膜装置と同様に、無機層16の形成前に保護フィルムを剥離した以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルム10を作製した。
[実施例5]
図6に示す無機成膜装置と同様に、無機層16を形成した後に、無機層16の表面にポリエチレン製の保護フィルムを積層した以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルム10を作製した。
[実施例6]
下地層14を形成した後、図5に示す成膜装置と同様に下地層14の表面にポリエチレン製の保護フィルムを積層し、図6に示す無機成膜装置と同様に、無機層16の形成前に保護フィルムを剥離し、さらに、無機層16を形成した後に、無機層16の表面にポリエチレン製の保護フィルムを積層した以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルム10を作製した。
[実施例7]
<保護有機層26を形成する塗布液の調製>
グラフト共重合体として、大成ファインケミカル社製のアクリット8BR−930(重量平均分子量16000のUV硬化型ウレタンアクリルポリマー)を用意した。
(メタ)アクリレートポリマーとして、三菱レイヨン社製のダイヤナールBR83(重量平均分子量40000のポリメチルメタクリレート(PMMA))を用意した。
3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとして、新中村化学社製のA−DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA))を用意した。
1以上の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤として、信越シリコーン社製のKBM5103を用意した。
さらに、光重合開始剤として、ランベルティ社製のESACURE KTO46を用意した。
これらの材料を、グラフト共重合体:PMMA:アクリレートモノマー:シランカップリング剤:光重合開始剤の質量比で35:22:30:10:3となるように秤量し、これらをメチルエチルケトンに溶解させ、固形分濃度30%の保護有機層26を形成する塗布液を調製した。
<保護有機層の形成およびガスバリアフィルムの形成>
実施例6と同様にガスバリアフィルムを作製した。
その後、RtoRによって塗布法で紫外線硬化型の有機層を形成する一般的な成膜装置を用い、調製した保護有機層26を形成する塗布液で、無機層16の表面に保護有機層26を形成した。これにより、図3に示すような、保護有機層26を有するガスバリアフィルム24を作製した。なお、保護有機層26の形成における塗布液の塗布に先立ち、無機層16に積層した保護フィルムは剥離した。
保護有機層26を形成する塗布液の塗布は、ダイコータを用いた。塗布液の乾燥温度は130℃で、乾燥時間は3分間とした。その後、支持体12の裏面側から80℃に加熱しつつ、塗布液に紫外線を照射(積算照射量約600mJ/cm2)して塗布液を硬化させて保護有機層26を形成して、ガスバリアフィルム24を作製した。保護有機層26の厚さは、5μmであった。
[実施例8]
支持体12の両面に、易接着層用塗布液Aを用いて易接着層を形成した。
この支持体12を用いた以外は、実施例1と同様に、ガスバリアフィルム10を作製した。すなわち、このガスバリアフィルム10は、支持体12の上面(下地層14形成面)の易接着層も含水非晶質二酸化ケイ素(マット剤)を含む。
[実施例9]
<密着層の形成>
易接着層を形成した支持体12の、易接着層用塗布液Aによって易接着層を形成した面に、以下に示す密着層を形成する塗布液を、バーコーターによって厚さ10cc/m2で塗布し、150℃で2分間乾燥して、厚さ1.5μmの密着層32を形成した。
密着層32の形成は、図5に示すような、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な塗布成膜装置によって行った。
−密着層を形成する塗布液−
架橋剤として、水溶性オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製、エポクロスWS−700)を15.07質量%、
バインダーとして、ポリオレフィン樹脂(ユニチカ社製、アローベースSE−1013N)を59.27質量%、および、ポリウレタン樹脂(三井化学社製、タケラックS−5100)を24.79質量%、
界面活性剤として、フッ素系界面活性剤(富士フイルムファインケミカル社製、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)スルホスクシナートナトリウム塩、固形分2質量%)を0.09質量%、および、ノニオン系界面活性剤(三洋化成工業社製、ナロアクティーCL95、固形分1質量%)を0.18質量%、ならびに、
マット剤として、シリカ粒子(東ソー・シリカ社製、AZ−204、一次粒子1.5〜1.9μm)を0.6質量%、混合した。
混合物に蒸留水を加えて、固形分濃度が10質量%になるように調節して、密着層32を形成する塗布液を調製した。
密着層32を形成した支持体12の密着層32を形成していない面に、実施例1と同様に下地層14および無機層16を形成して、図4に示すような、密着層32を有するガスバリアフィルム30を作製した。
[実施例10]
下地層塗布液の調製において、溶剤として、水に変えてアセトンを用いた。
アセトンを溶剤とする下地層塗布液を用いて下地層14を形成した以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルム10を作製した。
実施例1と同様に測定したところ、無機層16の厚さは12nm、混合層18の厚さは18nm、下地層14の厚さは0.982μm(982nm)であった。
[実施例11]
無機層16の形成において、支持体12に供給するバイアス電力を0.2kWから0.02kWに変更した以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルム10を作製した。
実施例1と同様に測定したところ、無機層16の厚さは29.5nm、混合層18の厚さは0.5nm、下地層14の厚さは0.9995μm(999.5nm)であった。
[比較例1]
TMPTA(ダイセルサイテック社製)および光重合開始剤(ランベルティ社製、ESACURE KTO46)を用意し、質量比率として95:5となるように秤量し、これらを固形分濃度が15質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、下地有機層を形成する塗布液を調製した。
RtoRによって塗布法で紫外線硬化型の有機層を形成する一般的な塗布成膜装置を用い、調製した下地有機層を形成する塗布液によって、下地層14に変えて、下地有機層を形成した。これ以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルムを作製した。
下地有機層を形成する塗布液の塗布は、ダイコータを用いた。塗布液の乾燥温度は50℃で、乾燥時間は3分間とした。その後、紫外線を照射(積算照射量約600mJ/cm2)して塗布液(TMPTA)を硬化させて下地有機層を形成した。形成した下地有機層の厚さは、1μmであった。
実施例1と同様に測定したところ、無機層16の厚さは15nm、混合層18の厚さは15nm、下地層14の厚さは0.985μm(985nm)であった。
[比較例2]
無機層16の形成において、ドラムにバイアス電力を供給しなかった以外、すなわち、支持体12にバイアス電位を印加しなかった以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルムを作製した。
実施例1と同様に測定したところ、無機層16の厚さは30nm、下地層14の厚さは1μmで、混合層18は形成されていなかった。
[比較例3]
無機層として、反応性スパッタリングによって酸化アルミニウム膜(アルミナ)を形成した以外は、実施例1と同様にガスバリアフィルムを作製した。
ターゲットは、アルミニウムを用いた。プロセスガスは酸素およびアルゴンを用いた。成膜装置は、RtoRによってスパッタリングで成膜を行う、一般的なスパッタリング装置を用いた。
真空排気手段を駆動して、成膜室の排気を開始し、成膜室内の圧力が5×10−4Paとなった時点で、成膜室へプロセスガスの導入を開始し、成膜室内の圧力を1×10−3Paとした。
成膜室へのガス導入開始と同時に、支持体12の搬送を開始し、各室の圧力が5×10−4Paで安定した時点で、成膜カソードへの電力供給を開始して、下地層14の表面に、反応性スパッタリングによる酸化アルミニウム膜の成膜を行なった。
実施例1と同様に測定したところ、無機層の厚さは30nm、下地層14の厚さは1μmで、混合層18は形成されていなかった。
[評価]
このようにして作製したガスバリアフィルムについて、ガスバリア性、光学特性および密着性を評価した。なお、以下の試験は、無機層16を保護する保護フィルムは剥離して行った。
<ガスバリア性>
カルシウム腐食法(特開2005−283561号公報に記載される方法)によって、温度40℃、相対湿度90%RHの条件で、ガスバリアフィルムの水蒸気透過率(WVTR)[g/(m2・day)]を測定した。
<光学特性>
ガスバリアフィルムの全光線透過率を、日本電色工業社製のNDH5000を用いて、JIS K 7361に準拠して測定した。
<密着性>
下地層14と無機層16との密着性を、JIS K5400に準拠したクロスカット剥離試験で評価した。
各ガスバリアフィルムの無機層16の形成面に、カッターナイフを用いて、膜面に対して90°の切り込みを1mm間隔で入れ、1mm間隔の碁盤目を100個作成した。この上に2cm幅のマイラーテープ(日東電工製、ポリエステルテープ、No.31B)で貼り付けたテープを剥がした。無機層16が残存したマスの数で密着性を評価した(最大100)。
結果を下記の表に示す。
表1に示すように、ケイ素を含有する無機層16と、アルコキシシランの重合物からなる下地層14とを有し、かつ、無機層16と下地層14との間に混合層18を有する本発明のガスバリアフィルムは、ガスバリア性および透明性に優れ、無機層16と下地層14との密着性も高い。
また、実施例4〜7に示されるように、下地層14および無機層16を形成した後に、保護フィルムを貼着することにより、より高いガスバリア性を得られる。加えて、実施例10と実施例1〜9とに示されるように、下地層14を形成する下地層塗布液の溶剤として水を用いることにより、より優れたガスバリア性が得られる。さらに、実施例11と実施例1〜9とに示されるように、混合層18の厚さを1nm以上とすることにより、より優れたガスバリア性および無機層16と下地層14との密着性が得られる。
これに対し、下地層として有機層を形成した比較例1は、実施例に比して、若干、ガスバリア性および下地層と無機層との密着性が劣る。また、混合層18を有さない比較例2および比較例3は、ガスバリア性および透明性は良好であるが、下地層と無機層との密着性が悪い。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
太陽電池および有機ELディスプレイ等に、好適に利用可能である。
10,20,24,30 ガスバリアフィルム
10R バリアフィルムロール
12 支持体
12Ra 支持体ロール
12Rb ロール
14 下地層
16 無機層
18 混合層
26 保護有機層
32 密着層
36 塗布成膜装置
37 塗布部
38 加熱部
38a 上面側加熱部
38b 裏面側加熱部
40,56 回転軸
42,58 巻取り軸
46a,46b 搬送ローラ対
47,73 供給ロール
48,70 回収ロール
50 無機成膜装置
51 供給室
52 成膜室
54 巻取り室
60,68,72,80 パスローラ
61,74,82 真空排気手段
62 ドラム
64 成膜手段
64a シャワー電極
64b 高周波電源
64c ガス供給手段
64d バイアス電源
76,78 隔壁
76a,76b 開口
Ga,Gb 保護フィルム

Claims (11)

  1. 支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面に設けられる、ケイ素を含む無機層および前記無機層の下地層の組み合わせの1組以上と、を有し、
    前記下地層は、アルコキシシランの重合物を含み、
    さらに、前記下地層と前記無機層との間に、前記下地層および前記無機層の両方の成分を含む混合層を有することを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記アルコキシシランの重合物は、3〜6官能のアルコキシシランの重合物を含む、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 前記無機層が窒化ケイ素、酸化ケイ素および酸化窒化ケイ素の1以上を含む、請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 前記下地層の厚さが0.05〜3μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  5. 前記アルコキシシランの重合物は、複数種のアルコキシシランの重合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  6. 前記支持体から最も離間する前記無機層の表面に、保護有機層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  7. 前記無機層および前記下地層の組み合わせは、前記支持体の一方の面のみに形成され、前記支持体の前記無機層および前記下地層の組み合わせが形成される面とは逆側の面に、密着層を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  8. 無機層および前記無機層の下地層の組み合わせを、1組以上、有するガスバリアフィルムの製造方法であって、
    アルコキシシランを含有する塗布液を調製する調液工程と、
    調製した前記塗布液を前記下地層の形成面に塗布し、前記塗布液を加熱して前記アルコキシシランを重合することによって、前記下地層を形成する下地層形成工程と、
    前記下地層にバイアス電位を印加しつつ、プラズマCVDによって前記下地層の表面にケイ素を含有する前記無機層を形成する無機層形成工程と、を有することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  9. 前記アルコキシシランを含有する塗布液は、水を溶剤として調製する、請求項8に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  10. 前記下地層の表面に下地層保護フィルムを貼着する工程と、
    前記下地層保護フィルムを剥離する工程と、を有する、請求項8または9に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  11. 前記無機層の表面に無機層保護フィルムを貼着する工程と、
    保護有機層の塗布液を調製する調液工程と、
    前記無機層保護フィルムを剥離し、前記保護有機層の塗布液を前記無機層の表面に塗布し、前記保護有機層の塗布液を乾燥、硬化する工程と、を有する、請求項8〜10のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
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