JP2019010736A - ガスバリアー性フィルム及びこれを備えた電子デバイス - Google Patents

ガスバリアー性フィルム及びこれを備えた電子デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高いガスバリアー性を有しつつ、生産性にも優れたガスバリアー性フィルムを提供することである。【解決手段】本発明のガスバリアー性フィルム(1)は、基材(2)上に、ガスバリアー層(3)を有し、ガスバリアー層(3)が、少なくとも厚さ方向において、5族の遷移金属(M2)及び12〜14族の非遷移金属(M1)が含有されている混合領域を有し、基材(2)の構成材料のガラス転移温度が、150℃以上であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリアー性フィルム及びこれを備えた電子デバイスに関し、より詳しくは、高いガスバリアー性を有しつつ、生産性にも優れたガスバリアー性フィルム及びこれを備えた電子デバイスに関する。
各種プラスチック基材の特性、特に、ガスバリアー性を改善するための手段として、プラスチック基材の表面に、ケイ素酸化物などからなる無機ガスバリアー層を形成することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ところで、近年開発され、実用化されている各種の電子デバイス、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパーなどでは電荷のリークを嫌うため、その回路基板などを形成するプラスチック基材あるいは回路基板を封止するフィルムなどのプラスチック基材に対して、高い水分バリアー性が要求されている。上記無機ガスバリアー層は、いわゆるガスバリアー性樹脂などによって形成される有機膜に比して高いガスバリアー性を示すが、膜の性質上、どうしてもピンホールやクラック等の構造的欠陥や、膜を構成するM−O−Mネットワーク(Mは金属元素)中にガスの通り道となる結合欠陥(M−OH結合)が存在しており、この結果、これ単独では、有機EL素子等の分野で要求されている高いガスバリアー性を満足させることができず、ガスバリアー性の更なる向上が求められている。
以上のように、従来の技術では、近年要求されている、薄膜でありながらも高度なガスバリアー性を実現するには至っていないのが現状である。
一方で、基材上にガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムは、高温高湿保存下で熱による基材の収縮を原因として、ガスバリアー層にクラックが発生し、これがガスバリアー性を低下させるといった問題も有していた。
特開2000−255579号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高いガスバリアー性を有しつつ、生産性にも優れたガスバリアー性フィルム及びこれを備えた電子デバイスを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、特定材料が含有されている混合領域を有し、基材の構成材料のガラス転移温度を特定の温度以上とすることにより、高いガスバリアー性を有しつつ、生産性にも優れたガスバリアー性フィルム及び電子デバイスを提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材上に、ガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、
前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、5族の遷移金属(M2)及び12〜14族の非遷移金属(M1)が含有されている混合領域を有し、
前記基材の構成材料のガラス転移温度が、150℃以上であることを特徴とするガスバリアー性フィルム。
2.前記基材の構成材料のガラス転移温度が、180℃以上であることを特徴とする第1項に記載のガスバリアー性フィルム。
3.前記基材の構成材料が、ポリイミドであることを特徴とする第2項に記載のガスバリアー性フィルム。
4.前記ガスバリアー層が、前記遷移金属(M2)又はその化合物が主成分aとして含有されている領域(以下、「A領域」という。)と前記非遷移金属(M1)又はその化合物が主成分bとして含有されている領域(以下、「B領域」という。)とを有し、
前記混合領域が前記A領域と前記B領域との間に介在し、かつ、前記混合領域に前記主成分a及び前記主成分bに由来する化合物が含有されていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
5.前記混合領域の組成を下記化学組成式(1)で表したとき、前記混合領域の少なくとも一部が下記関係式(2)を満たすことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
化学組成式(1):(M1)(M2)
関係式(2):(2y+3z)/(a+bx)<1.0
(ただし、式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、x,y,z:化学量論係数、a:M1の最大価数、b:M2の最大価数を表す。)
6.前記非遷移金属(M1)が、ケイ素であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
7.第1項から第6項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムを具備していることを特徴とする電子デバイス。
8.量子ドット含有樹脂層を有することを特徴とする第7項に記載の電子デバイス。
9.有機エレクトロルミネッセンス素子を具備していることを特徴とする第7項に記載の電子デバイス。
本発明の上記手段により、高いガスバリアー性を有しつつ、生産性にも優れたガスバリアー性フィルム及びこれを備えた電子デバイスを提供することができる。
本発明のガスバリアー性フィルムは、水分バリアー性等のガスバリアー性が著しく向上しているばかりか、生産性にも優れているため、各種電子デバイスの基板や封止層として有用であり、特に有機EL素子への実用化が期待できる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明者らの検討によれば、非遷移金属(M1)の化合物(例えば、酸化物)を含有する酸素欠損組成膜を単独で用いてガスバリアー層を形成したり、遷移金属(M2)の化合物(例えば、酸化物)の酸素欠損組成膜を単独で用いてガスバリアー層を形成したりすると、酸素欠損の程度が大きくなるにつれてガスバリアー性が向上する傾向は観察されたものの、著しいガスバリアー性の向上にはつながらなかった。
この結果を受けて、非遷移金属(M1)を主成分とする化合物(例えば、酸化物)を含むB領域と、遷移金属(M2)を主成分とする化合物(例えば、酸化物)を含むA領域とを積層し、当該A領域とB領域との間に、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とを含有する混合領域を介在させ、更に、当該混合領域を酸素欠損組成とすると、酸素欠損の程度が大きくなるにつれてガスバリアー性が著しく向上することを見出した。
これは、上述したように、非遷移金属(M1)同士の結合や遷移金属(M2)同士の結合よりも、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との結合が生じやすいことに起因して、混合領域を酸素欠損組成とすることで、金属化合物の高密度な構造が混合領域において形成されたためであると考えられる。
本発明のガスバリアー性フィルムの一例としての概略構成を示す断面図 ガスバリアー層の厚さ方向の深さに対する原子数比率を示すグラフ 本発明のガスバリアー性フィルムを具備した有機EL素子の一例としての概略構成を示す断面図 真空紫外線照射装置の一例としての模式図
本発明のガスバリアー性フィルムは、ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、5族の遷移金属(M2)及び12〜14族の非遷移金属(M1)が含有されている混合領域を有し、基材の構成材料のガラス転移温度が150℃以上であることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、高温での保存性の観点から、基材の構成材料のガラス転移温度が180℃以上であることが好ましく、基材の構成材料がポリイミドであることがより好ましい。
また、ガスバリアー性能の観点から、ガスバリアー層が、遷移金属(M2)又はその化合物が主成分aとして含有されているA領域と非遷移金属(M1)又はその化合物が主成分bとして含有されているB領域とを有し、混合領域が、A領域とB領域との間に介在し、かつ、当該混合領域に主成分a及び主成分bに由来する化合物が含有されていることが好ましい。
また、ガス(水、酸素等)分子の侵入遮断の観点から、混合領域の組成を上記化学組成式(1)で表したとき、前記混合領域の少なくとも一部が上記関係式(2)を満たすことが好ましい。
また、上記の同様の観点から、非遷移金属(M1)が、ケイ素であることが好ましい。
本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイスに好適に具備され得る。また、当該電子デバイスは、量子ドット含有樹脂層を有することが好ましい。また、当該電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンス素子を具備していることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《ガスバリアー性フィルム》
図1には、一例として、本発明のガスバリアー性フィルム1の概略断面図を示している。
ガスバリアー性フィルム1は、基材2上に、ガスバリアー層3を有している。
ガスバリアー層3は、少なくとも厚さ方向において、5族の遷移金属(M2)及び12〜14族の非遷移金属(M1)が含有された混合領域を有している。
なお、本発明において、「領域」とは、ガスバリアー層の厚さ方向(積層方向)に対して垂直な面で当該ガスバリアー層を一定又は任意の厚さで分割したときに形成される対向する二つの面の間の三次元的空間(領域)をいい、当該領域内の構成成分の組成は厚さ方向において一定であっても、徐々に変化するものであってもよい。
図1では、基材2の一方の面のみにガスバリアー層3を有する例を示したが、基材2の両面にそれぞれガスバリアー層3を有していてもよいし、基材2の一方の面上に複数層からなるガスバリアー層3を有していてもよい。
ガスバリアー層3は、遷移金属(M2)又はその化合物が主成分aとして含有されている領域(以下、「A領域」という。)と、12〜14族の非遷移金属(M1)又はその化合物が主成分bとして含有されている領域(以下、「B領域」という。)とを有し、当該A領域とB領域との間に、混合領域が介在していることが好ましい。このとき、混合領域には、主成分a及び主成分bに由来する化合物が含有されている。
ガスバリアー層3は、A領域とB領域とを有さずに、混合領域のみから構成されていてもよい。
ここで、「主成分a及び主成分bに由来する化合物」とは、主成分a及び主成分bそれら自体、並びに主成分aと主成分bとが反応して形成された複合化合物をいう。
複合化合物の具体例として「複合酸化物」を挙げて説明すると、「複合酸化物」とは、A領域及びB領域の構成成分が相互に化学結合をして形成された化合物(酸化物)をいう。例えば、ニオブ原子とケイ素原子が直接的に、又は酸素原子を介して化学結合を形成している化学構造を有する化合物をいう。
なお、本発明においては、A領域及びB領域の構成成分が相互に分子間相互作用などにより物理的結合をして形成された複合体も「複合化合物」に含まれるものとする。
また、「主成分」とは、原子組成比として含有量が最大である構成成分をいう。例えば、「金属の主成分」といえば、構成成分の中の金属成分の中で、原子数比率として含有量が最大である金属成分をいう。
また、「構成成分」とは、ガスバリアー層の特定領域を構成する化合物又は金属若しくは非金属の単体をいう。
以下、本発明のガスバリアー性フィルムを構成する各部材について詳細に説明する。
〈基材〉
本発明に係る基材は、その構成材料のガラス転移温度Tgが150℃以上である。
また、基材としては、フレキシブル性及び光透過性を得ることができることから樹脂基材であることが好ましく、更には、樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明に適用可能な基材の構成材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:155℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製のネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:例えば特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:例えば、特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(例えば、特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる。なお、括弧内の温度は、ガラス転移温度Tgを示している。
中でも、構成材料としては、ガラス転移温度が180℃以上のものが好ましく、ポリイミドであることがより好ましい。
基材のガラス転移温度Tgは、添加剤等を使用することにより、適宜調整することができる。
基材の厚さは、5〜500μmの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは15〜250μmの範囲内である。
本発明に適用可能な基材のその他の種類、基材の製造方法等については、例えば、特開2013−226758号公報の段落0125〜0136に開示されている技術を適宜採用することができる。
〈ガスバリアー層〉
本発明に係るガスバリアー層は、上述したように、少なくとも厚さ方向において、5族の遷移金属(M2)及び12〜14族の非遷移金属(M1)が含有されている混合領域を有している。当該混合領域は、遷移金属(M2)又はその化合物が主成分aとして含有されているA領域と、非遷移金属(M1)又はその化合物が主成分bとして含有されているB領域との間に介在していてもよい。
また、ガスバリアー層は、混合領域において、非遷移金属(M1)に対する遷移金属(M2)の原子数比率の比の値(遷移金属(M2)の原子数/非遷移金属(M1)の原子数)が、0.02〜49の範囲内にある領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有していることが好ましい態様である。
なお、A領域、B領域及び混合領域、並びにガスバリアー層について、「厚さ」あるいは「層厚」とは、後述するようにガスバリアー層の厚さ方向への深さを意味し、XPS分析におけるスパッタ深さをSiO換算で表したものである。ガスバリアー層の「層厚」は、ガスバリアー層の最表面側から基材との界面までであり、「基材との界面」は、XPSによる組成分析において、ガスバリアー層(本発明では、B領域)の主成分の元素の分布曲線と、基材の主成分の元素の分布曲線の交差点となる位置とする。
混合領域では、遷移金属(M2)及び非遷移金属(M1)に加えて、酸素が含有されていることが好ましい。また、この混合領域は、遷移金属(M2)の酸化物と非遷移金属(M1)の酸化物との混合物、又は、遷移金属(M2)と非遷移金属(M1)との複合酸化物の少なくとも一方が含有されていることが好ましい形態であり、遷移金属(M2)と非遷移金属(M1)との複合酸化物が含有されていることがより好ましい形態である。
ここで、「混合物」とは、A領域及びB領域の構成成分が相互に化学結合することなく混じり合っている状態の物をいう。例えば、酸化ニオブと酸化ケイ素がお互いに化学結合することなく混じり合っている状態をいう。
ガスバリアー層のガスバリアー性としては、基材上にガスバリアー層を形成させて積層体として算出した際、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3cm/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が1×10−3g/(m・24h)以下の高ガスバリアー性であることが好ましい。
(A領域)
本発明に係るA領域とは、長周期型周期表の第5族元素の遷移金属(M2)又はその化合物が主成分aとして含有されている領域である。ここで、「その化合物」、すなわち「遷移金属(M2)の化合物」とは、遷移金属(M2)を含む化合物をいい、例えば、遷移金属酸化物が挙げられる。
長周期型周期表の第5族元素の遷移金属(M2)としては、Nb、Ta、V等が挙げられる。
遷移金属(M2)が第5族元素(特に、Nb)であるとき、後述する非遷移金属(M1)がSiであると、著しいガスバリアー性の向上効果が得られる。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属(M2)は、透明性が良好な化合物が得られるNb又はTaであることが特に好ましい。
A領域の厚さとしては、ガスバリアー性と光学特性との両立の観点から、2〜50nmの範囲内であることが好ましく、4〜25nmの範囲内であることがより好ましく、5〜15nmの範囲内であることが更に好ましい。
(B領域)
本発明に係るB領域とは、長周期型周期表の第12〜14族元素の非遷移金属(M1)又はその化合物が主成分bとして含有されている領域である。ここでいう「その化合物」すなわち「非遷移金属(M1)の化合物」とは、非遷移金属(M1)を含む化合物をいい、例えば、非遷移金属酸化物をいう。
非遷移金属(M1)としては、特に制限されず、第12〜14族の任意の金属が単独で又は組み合わせて用いることができるが、例えば、Si、Al、Zn、In、Snなどが挙げられる。中でも、非遷移金属(M1)として、Si、Sn又はZnを含むことが好ましく、Siを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。
B領域の厚さとしては、ガスバリアー性と生産性との両立の観点から、10〜1000nmの範囲内であることが好ましく、20〜500nmの範囲内であることがより好ましく、50〜300nmの範囲内であることが更に好ましい。
(混合領域)
本発明に係る混合領域とは、
(1)ガスバリアー層の少なくとも厚さ方向において構成成分の化学組成が相互に異なる複数の領域からなり、その中の一つの領域(A領域)には、遷移金属(M2)又はその化合物(例えば、遷移金属酸化物(酸化ニオブ)等)が含有されており、当該一つの領域に直接的又は間接的に対向する他の領域(B領域)に非遷移金属(M1)又はその化合物が含有されている場合、A領域の遷移金属(M2)及びB領域の非遷移金属(M1)に由来する化合物を含有する領域、
又は、
(2)ガスバリアー層内の全域にわたって遷移金属(M2)及び非遷移金属(M1)に由来する化合物が含有されている場合、当該全域、
をいう。
混合領域は、ガスバリアー層の厚さ方向に、連続して所定値以上(具体的には、5nm以上)の厚さで存在することが好ましい態様である。
混合領域が少なくとも5nm程度の厚さを有していれば、高いガスバリアー性能を発揮できるため、非常に薄いガスバリアー性フィルムとした場合であっても、高いガスバリアー性能を得ることができる。すなわち、本発明のガスバリアー性フィルムは、ガスバリアー性能が高い状態で、ガスバリアー層を非常に薄くできるため、耐屈曲性に優れたガスバリアー性フィルムとすることができる。
ガスバリアー層の混合領域以外の領域は、非遷移金属(M1)の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物等の領域であってもよいし、遷移金属の酸化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物等の領域であってもよい。
(酸素欠損組成)
本発明において、混合領域に含有される一部の組成が、酸素が欠損した非化学量論的組成(酸素欠損組成)であることが好ましい。
本発明において、酸素欠損組成とは、当該混合領域の組成を、下記化学組成式(1)で表したとき、当該混合領域の少なくとも一部の組成が、下記関係式(2)で規定する条件を満たすことと定義する。また、当該混合領域における酸素欠損程度を表す酸素欠損度指標としては、後述する混合領域における(2y+3z)/(a+bx)を算出して得られる値の最小値を用いるものとする。
化学組成式(1):(M1)(M2)
関係式(2):(2y+3z)/(a+bx)<1.0
(ただし、式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、x,y,z:化学量論係数、a:M1の最大価数、b:M2の最大価数を表す。)
以下、特別の区別が必要ない場合、上記化学組成式(1)で表す組成を、単に複合領域の組成という。
上述したように、本発明に係る遷移金属(M2)と非遷移金属(M1)との複合領域の組成は、化学組成式(1)で示される。この組成からも明らかなように、上記複合領域の組成は、一部窒化物の構造を含んでいてもよく、窒化物の構造を含む組成であることがガスバリアー性の観点から好ましい。
ここでは、非遷移金属(M1)の最大価数をa、遷移金属(M2)の最大価数をb、Oの価数を2、Nの価数を3とする。そして、上記複合領域の組成(一部窒化物となっているものを含む。)が化学量論的組成になっている場合は、(2y+3z)/(a+bx)=1.0となる。この式は、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計と、O、Nの結合手の合計とが同数であることを意味し、この場合、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)ともに、O及びNのいずれか一方と結合していることになる。なお、本発明において、非遷移金属(M1)として2種以上が併用される場合や、遷移金属(M2)として2種以上が併用される場合には、各元素の最大価数を各元素の存在比率によって加重平均することにより算出される複合価数を、それぞれの「最大価数」のa及びbの値として採用するものとする。
一方、本発明に係る混合領域において、関係式(2)で示す(2y+3z)/(a+bx)<1.0となる場合には、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計に対して、O及びNの結合手の合計が不足していることを意味し、このような状態が上記の「酸素欠損」である。
酸素欠損状態においては、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の余った結合手は互いに結合する可能性を有しており、非遷移金属(M1)や遷移金属(M2)の金属同士が直接結合すると、金属の間にOやNを介して結合した場合よりも緻密で高密度な構造が形成され、その結果として、ガスバリアー性が向上すると考えられる。
また、本発明において、混合領域は、xの値が、0.02≦x≦49(0<y、0≦z)を満たす領域である。これは、先に、遷移金属(M2)と非遷移金属(M1)との原子数比率の比の値(遷移金属(M2)の原子数/非遷移金属(M1)の原子数)が、0.02〜49の範囲内にあり、厚さが5nm以上である領域と定義する、としたことと同一の定義である。
この領域では、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与することから、この条件を満たす混合領域が所定値以上(5nm)の厚さで存在することで、ガスバリアー性の向上に寄与すると考えられる。なお、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の存在比率が近いほどガスバリアー性の向上に寄与しうると考えられることから、混合領域は、0.1≦x≦10を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが好ましく、0.2≦x≦5を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことがより好ましく、0.3≦x≦4を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが更に好ましい。
上述したように、混合領域の範囲内に、関係式(2)で示す(2y+3z)/(a+bx)<1.0の関係を満たす領域が存在すれば、ガスバリアー性の向上効果が発揮されることが確認されたが、混合領域は、その組成の少なくとも一部が(2y+3z)/(a+bx)≦0.9を満たすことが好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.85を満たすことがより好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.8を満たすことが更に好ましい。ここで、混合領域における(2y+3z)/(a+bx)の値が小さくなるほど、ガスバリアー性の向上効果は高くなるものの可視光での吸収も大きくなる。したがって、透明性が望まれる用途に使用するガスバリアー層の場合には、0.2≦(2y+3z)/(a+bx)であることが好ましく、0.3≦(2y+3z)/(a+bx)であることがより好ましく、0.4≦(2y+3z)/(a+bx)であることが更に好ましい。
なお、本発明において良好なガスバリアー性が得られる混合領域の厚さは、後述するXPS分析法におけるSiO換算のスパッタ厚さとして、5nm以上であり、この厚さは、8nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが更に好ましい。混合領域の厚さは、ガスバリアー性の観点からは特に上限はないが、光学特性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。
上述したような特定構成の混合領域を有するガスバリアー層は、例えば、有機EL素子等の電子デバイス用のガスバリアー層として使用可能なレベルの非常に高いガスバリアー性を示す。
(XPSによる組成分析と混合領域の厚さの測定)
本発明に係るガスバリアー層の混合領域やA領域及びB領域における組成分布や各領域の厚さ等については、以下に詳述するX線光電分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)により測定することにより求めることができる。
以下、XPS分析法による混合領域及びA領域、B領域の測定方法について説明する。
本発明に係るガスバリアー層の厚さ方向における元素濃度分布曲線(以下、「デプスプロファイル」という。)は、具体的には、非遷移金属(M1)(例えば、ケイ素)の元素濃度、遷移金属(M2)(例えば、ニオブ)の元素濃度、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)元素濃度等を、X線光電子分光法の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、ガスバリアー層の表面より内部を露出させつつ順次表面組成分析を行うことにより作成することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子数比率(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は層厚方向におけるガスバリアー層の厚さ方向におけるガスバリアー層の表面からの距離におおむね相関することから、「ガスバリアー層の厚さ方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
以下に、本発明に係るガスバリアー層の組成分析に適用可能なXPS分析の具体的な条件の一例を示す。
・分析装置:アルバックファイ社製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを求める。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量する。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。なお、分析した元素は、非遷移金属(M1)(例えば、ケイ素(Si))、遷移金属(M2)(例えば、ニオブ(Nb))、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)である。
得られたデータから、組成比を計算し、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とが共存し、かつ、遷移金属(M2)と非遷移金属(M1)との原子数比率の比の値(遷移金属(M2)の原子数比率/非遷移金属(M1)の原子数比率)が、0.02〜49になる範囲を求め、これを混合領域と定義し、その厚さを求める。混合領域の厚さは、XPS分析におけるスパッタ深さをSiO換算で表したものである。
以下に、本発明に係るガスバリアー層における混合領域の具体例について、図を用いて説明する。
図2は、ガスバリアー層の厚さ方向における非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の組成分布をXPS法により分析したときの元素プロファイルと混合領域を説明するためのグラフである。
図2において、ガスバリアー層の表面(基材とは反対側の面)より深さ方向に、非遷移金属(M1)、遷移金属(M2)、O、N、Cの元素分析を行い、横軸にスパッタの深さ(nm:SiO換算)を、縦軸に非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との含有率(at%)を示したグラフである。
基材側より、金属として非遷移金属(M1)(例えば、Si)を主成分とする元素組成であるB領域が示され、これに接してガスバリアー層表面側に向かって金属として遷移金属(M2)(例えば、ニオブ)を主成分とする元素組成であるA領域が示されている。混合領域は、遷移金属(M2)と非遷移金属(M1)との原子数比率の比の値(遷移金属(M2)の原子数比率/非遷移金属(M1)の原子数比率)が、0.02〜49の範囲内の元素組成で示される領域であり、A領域の一部とB領域の一部とに重なって示される領域であって、かつ、厚さ5nm以上の領域である。
〈各領域の形成方法〉
(A領域の形成方法)
遷移金属(M2)を含有するA領域の形成方法としては、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相成膜法を用いることが、混合領域を効率的に形成する観点から好ましい。
これらの気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。中でも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により形成することがより好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング又はRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。
また、金属モードと酸化物モードとの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。
プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物、酸窒化物、酸炭化物等の薄膜を形成することができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、厚さ等に応じて適宜選択することができる。
スパッタ法は、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物を含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタ方式であってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などに記載の方法や条件を適宜参照することができる。
共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる混合領域を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を混合領域とすることができる。このような方法によれば、混合領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、混合領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
(B領域の形成方法)
非遷移金属(M1)を含有するB領域の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD法、ALD法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により、非遷移金属(M1)をターゲットとして用いて形成することができる。
また、他の方法としては、非遷移金属(M1)としてSiを含むポリシラザン含有塗布液を用いて、湿式塗布法により形成する方法も、好ましい方法の一つである。
本発明において、B領域の形成に適用可能な「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
上述した基材の平面性等を損なわないように、ポリシラザンを用いてガスバリアー層を構成するB領域を形成するためには、特開平8−112879号公報に記載されているような、比較的低温で酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素に変性することが可能なポリシラザンが好ましい。
このようなポリシラザンとしては、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2019010736
一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。
本発明においては、B領域の薄膜としての緻密性の観点から、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPS)が特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより、隣接する基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、よりB領域を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる点で好ましい。
用途に応じて、適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンとを選択して用いることができ、混合して使用することもできる。
なお、パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6又は8員環を中心とする環構造とが共存した構造を有していると推定されている。
ポリシラザンの分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質で分子量により異なる。
これらのポリシラザン化合物は、有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン化合物含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
また、その他、ポリシラザンの詳細については、例えば、特開2013−255910号公報の段落0024〜0040、特開2013−188942号公報の段落0037〜0043、特開2013−151123号公報の段落0014〜0021、特開2013−052569号公報の段落0033〜0045、特開2013−129557号公報の段落0062〜0075、特開2013−226758号公報の段落0037〜0064等に記載されている内容を参照して適用することができる。
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。好適な有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、あるいは脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等、目的にあわせて選択し、複数の有機溶剤を混合してもよい。
ポリシラザンを含有する塗布液におけるポリシラザンの濃度は、目的とするガスバリアー層の層厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。
また、ポリシラザンを含有する塗布液には、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素への変性を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。例えば、市販品としてのAZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNAX120−20、NN120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140のような触媒が含まれるポリシラザン溶液を用いることができる。また、これらの市販品は、単独で使用されてもよく、2種以上混合して使用されてもよい。
なお、ポリシラザンを含有する塗布液中において、触媒の添加量は、触媒による過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けるため、ポリシラザンに対して、2質量%以下に調整することが好ましい。
ポリシラザンを含有する塗布液には、ポリシラザン以外にも無機前駆体化合物を含有させることができる。ポリシラザン以外の無機前駆体化合物としては、塗布液の調製が可能であれば特に限定はされない。例えば、特開2011−143577号公報の段落0110〜0114に記載のポリシラザン以外の化合物を適宜採用することができる。
(添加元素)
ポリシラザンを含有する塗布液には、Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することができる。Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することで、塗布乾燥過程において、ポリシラザンのN原子とO原子との置き換わりが促進され、塗布乾燥後にSiOに近い安定した組成へと変化させることができる。
Si以外の金属元素の例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、タリウム(Tl)等が挙げられる。
特に、Al、B、Ti及びZrが好ましく、中でもAlを含む有機金属化合物が好ましい。
本発明に適用可能なアルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソポロポキシド、アルミニウム−sec−ブチレート、チタンイソプロポキシド、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリtert−ブチレート、アルミニウムトリn−ブチレート、アルミニウムトリsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノアルミニウム−t−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドイソプロポキシドトリマー等を挙げることができる。
具体的な市販品としては、例えば、AMD(アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート)、ASBD(アルミニウムセカンダリーブチレート)、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、ALCH−TR(アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)、アルミキレートM(アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、アルミキレートD(アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)、アルミキレートA(W)(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、プレンアクト(登録商標)AL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
なお、これらの化合物を用いる場合は、ポリシラザンを含む塗布液と不活性ガス雰囲気下で混合することが好ましい。これらの化合物が大気中の水分や酸素と反応し、激しく酸化が進むことを抑制するためである。
また、これらの化合物とポリシラザンとを混合する場合は、30〜100℃に昇温し、撹拌しながら1分〜24時間保持することが好ましい。
本発明に係るガスバリアー層を構成するポリシラザン含有層における上記添加金属元素の含有量は、ケイ素(Si)の含有量100mol%に対して0.05〜10mol%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5mol%の範囲内である。
(改質処理)
ポリシラザンを用いたB領域の形成においては、ポリシラザン含有層を形成した後、改質処理を施すことが好ましい。
改質処理とは、ポリシラザンにエネルギーを付与して、その一部又は全てを酸化ケイ素又は酸化窒化ケイ素への転化する処理である。
本発明における改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができ、例えば、公知のプラズマ処理、プラズマイオン注入処理、紫外線照射処理、真空紫外線照射処理等を挙げることができる。本発明においては、低温で転化反応が可能なプラズマ、オゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンによる転化反応としては、従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、基材上に塗布方式のポリシラザン含有塗布液の塗膜を設け、波長200nm以下の真空紫外線(VUV)を照射して改質処理する真空紫外線照射処理を適用してガスバリアー層を形成する方法が好ましい。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられ、例えば、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム製など)等を挙げることができる。
真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸化ケイ素膜の形成を行う方法である。
これらの改質処理の詳細については、例えば、特開2012−086394号公報の段落0055〜0091、特開2012−006154号公報の段落0049〜0085、特開2011−251460号公報の段落0046〜0074等に記載の内容を参照することができる。
(混合領域の形成方法)
混合領域の形成方法としては、上記説明したようにA領域及びB領域を形成する際に、それぞれの形成条件を適宜調整して、A領域とB領域との間に混合領域を形成する方法が好ましい。
B領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における非遷移金属(M1)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力及び成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調整することで混合領域を形成することができる。
B領域を上述した塗布成膜法により形成する場合は、例えば、非遷移金属(M1)を含有する成膜原料種(ポリシラザン種等)、触媒種、触媒含有量、塗布膜厚、乾燥温度・時間、改質方法及び改質条件からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調整することで混合領域を形成することができる。
A領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力及び成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調整することで混合領域を形成することができる。
なお、上記した方法によって、混合領域の厚さを制御するには、A領域及びB領域を形成する方法の形成条件を適宜調整して、制御することができる。例えば、A領域を気相成膜法で形成する際には、成膜時間を制御することにより所望の厚さにすることができる。
また、これに加えて、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との混合領域を直接形成する方法も好ましい。
混合領域を直接形成する方法としては、公知の共蒸着法を用いることが好ましい。このような共蒸着法として、好ましくは、共スパッタ法が挙げられる。本発明において採用される共スパッタ法は、例えば、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方を含む合金からなる複合ターゲットや、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物からなる複合ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた1元スパッタでありうる。
また、本発明における共スパッタ法は、非遷移金属(M1)の単体又はその酸化物と、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物とを含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタであってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。
そして、共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度及び成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調整することによって、酸素欠損組成を有する薄膜を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を混合領域とすることができる。このため、このような手法によれば、混合領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、混合領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調整すればよい。
〈その他の機能層〉
本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、上記説明した構成層の他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、他の機能層を設けることができる。
(アンカーコート層)
本発明に係るガスバリアー層を形成する側の基材の表面には、基材とガスバリアー層との密着性の向上を目的として、アンカーコート層が配置されてもよい。
アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、アルキルチタネート等を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5.0g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
また、アンカーコート層は、物理蒸着法又は化学蒸着法といった気相成膜法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化ケイ素を主体とした無機膜を形成することもできる。また、特開2004−314626号公報に記載されているようなアンカーコート層を形成することで、その上に気相成膜法により無機薄膜を形成する際に、基材側から発生するガスをある程度遮断して、無機薄膜の組成を制御するといった目的でアンカーコート層を形成することもできる。
アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
(クリアハードコート層)
基材の表面(片面又は両面)には、クリアハードコート層が配置されてもよい。クリアハードコート層に含まれる材料の例としては、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含む層、すなわちクリアハードコート層が形成される。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。あらかじめクリアハードコート層が形成されている市販の基材を用いてもよい。
クリアハードコート層の厚さは、平滑性及び屈曲耐性の観点から、0.1〜15μmの範囲内が好ましく、1〜5μmの範囲内であることがより好ましい。
クリアハードコート層の形成材料に適用可能な活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズを用いることができる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
熱硬化性材料として具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、株式会社アデカ製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製の各種シリコン樹脂、日東紡株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。この中でも、特に耐熱性を有するエポキシ樹脂ベースの材料であることが好ましい。
クリアハードコート層の形成方法は、特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、又は蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
クリアハードコート層の形成では、上述の活性エネルギー線硬化性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、クリアハードコート層の積層位置に関係なく、いずれのクリアハードコート層においても、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
クリアハードコート層の厚さとしては、フィルムの耐熱性を向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にする観点から、1〜10μmの範囲内が好ましく、更に好ましくは、2〜7μmの範囲内にすることが好ましい。
《電子デバイス》
本発明のガスバリアー性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化する電子デバイスに好ましく適用できる。
本発明のガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、量子ドット(QD)含有樹脂層を有するQDフィルム、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は、有機EL素子又は太陽電池が好ましく、有機EL素子がより好ましい。
〈量子ドット(QD)フィルム〉
本発明のガスバリアー性フィルムは、量子ドットを含有するQDフィルムに適用することができる。
以下、QD含有樹脂層の主要な構成要素である量子ドット(QD)及び樹脂等について説明する。
(量子ドット)
一般に、ナノメートルサイズの半導体物質で量子閉じ込め(quantum confinement)効果を示す半導体ナノ粒子は、「量子ドット」とも称されている。このような量子ドットは、半導体原子が数百個から数千個集まった10数nm程度以内の小さな塊であるが、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドットのエネルギーバンドギャップに相当するエネルギーを放出する。
したがって、量子ドットは、量子サイズ効果によりユニークな光学特性を有することが知られている。具体的には、(1)粒子のサイズを制御することにより、様々な波長、色を発光させることができる、(2)吸収帯が広く、単一波長の励起光で様々なサイズの微粒子を発光させることができる、(3)蛍光スペクトルが良好な対称形である、(4)有機色素に比べて耐久性、耐退色性に優れる、といった特徴を有する。
QD含有樹脂層が含有する量子ドットは公知のものであってもよく、公知の任意の方法を使用して生成することができる。例えば、好適なQD及びその形成方法としては、米国特許第6225198号明細書、米国特許出願公開第2002/0066401号明細書、米国特許第6207229号明細書、同第6322901号明細書、同第6949206号明細書、同第7572393号明細書、同第7267865号明細書、同第7374807号明細書、米国特許出願第11/299299号、及び米国特許第6861155号明細書に記載のものが挙げられる。
QDは、任意の好適な材料、好ましくは無機材料、より好ましくは無機導体又は半導体材料から生成される。好適な半導体材料には、II−VI族、III−V族、IV−VI族及びIV族の半導体を含む、任意の種類の半導体が含まれる。
好適な半導体材料には、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイアモンドを含む。)、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si、Ge、Al、(Al、Ga、In)(S、Se、Te)、AlCO、及び二つ以上のこのような半導体の適切な組合せが含まれるが、これらに限定されない。
本発明においては、次のようなコア/シェル型の量子ドット、例えば、CdSe/ZnS、InP/ZnS、PbSe/PbS、CdSe/CdS、CdTe/CdS、CdTe/ZnS等も好ましく使用できる。
(量子ドット(QD)含有樹脂層)
QD含有樹脂層には、量子ドットを保持するバインダーとして樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系、ポリアリレート系、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む。)系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、セロファン系、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリビニルアルコール系、エチレンビニルアルコール系、シンジオタクティックポリスチレン系、ノルボルネン系、ポリメチルペンテン系、ポリエーテルケトン系、ポリエーテルケトンイミド系、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂等を挙げることができる。
QD含有樹脂層は、厚さが50〜200μmの範囲内であることが好ましい。
なお、QD含有樹脂層における量子ドットの含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には15〜60体積%の範囲内であることが好ましい。
《有機EL素子》
本発明のガスバリアー性フィルムを適用する電子デバイスの代表例としては、図3に示すような有機EL素子が挙げられる。図3に示すとおり、有機EL素子10は、支持体11上に、一対の電極12及び14と、当該一対の電極12及び14の間に位置する有機機能層13と、有機機能層13を被覆する封止材15と、を備えている。支持体11として、本発明のガスバリアー性フィルム1を適用することができる。
有機機能層13は、少なくとも発光層を備え、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を備えている。
発光層は、発光性の有機化合物や有機金属錯体等を含有し、一方の電極(陽極)から直接注入されるか、又は陽極から正孔輸送層等を介して注入される正孔と、他方の電極(陰極)から直接注入されるか、又は電子輸送層等を介して注入される電子とが、再結合することにより発光する。
有機機能層13や電極12及び14は、大気中の酸素や水等のガスの浸入によって劣化しやすい。このような有機機能層13等の劣化による発光性能の低下を抑えるため、有機EL素子10は、上述したガスバリアー性フィルム1を支持体11として具備しているが、封止材15としてガスバリアー性フィルム1を具備することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
《ガスバリアー性フィルムの作製》
下記の方法に従って、ガスバリアー性フィルム101〜109を作製した。
〈ガスバリアー性フィルム101の作製〉
(1)基材の準備
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)U48、略称:PETフィルム)の両面に、クリアハードコート層1(裏面側)及びクリアハードコート層2(ガスバリアー層形成面側)を下記の方法により形成した。
(クリアハードコート層の形成)
上記PETフィルムの裏面側(ガスバリアー層を形成する面とは反対側の面)に、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥層厚が0.5μmになるように湿式塗布方式により塗布した後、形成した塗膜を80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行い、裏面側のクリアハードコート層1を形成した。
次いで、PETフィルムの表面側(ガスバリアー層を形成する面)に、JSR株式会社製のUV硬化型樹脂「オプスター(登録商標)Z7527」を用い、乾燥層厚が2μmになるように、湿式塗布方式で塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行い、表面側に厚さ2μmのクリアハードコート層2を形成した。
(2)ガスバリアー層の形成
(非遷移金属(M1)を含有する膜の形成)
基材のクリアハードコート層2を形成した面側に、気相法・スパッタ(キャノンアネルバ社製のマグネトロンスパッタ装置、型式EB1100)により、非遷移金属(M1)を含有する膜を形成した。用いたスパッタ装置は、2元同時スパッタが可能なものである。
ここで、ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、プロセスガスとしてArとOとの混合ガスを用いて、DCスパッタにより、厚さ55nmとなるように成膜した。スパッタ電源パワーは5.0W/cmとし、成膜圧力は0.4Paとした。成膜は、組成がSiOとなるように酸素分圧を調整することにより行った。なお、事前にガラス基板を用いた成膜を行い、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がSiOとなる条件を見出し、その条件を適用した。また、厚さに関しては、100〜300nmの範囲内で成膜時間に対する厚さ変化のデータを取り、単位時間当たりに成膜される厚さを算出した後、設定する厚さとなるように成膜時間を設定した。
上記方法により、基材の一方の面側に、組成が非遷移金属酸化物SiOである膜を、厚さ55nmで形成した。
(遷移金属(M2)を含有する膜の形成)
上記形成した非遷移金属(M1)を含有する膜の上に、気相法・スパッタ(キャノンアネルバ社製のマグネトロンスパッタ装置、型式EB1100)により、遷移金属(M2)を含有する膜を形成した。
ターゲットとしては、市販の金属Nbターゲットを用い、プロセスガスとしてArとOの混合ガスを用いて、DCスパッタにより、厚さ10nmとなるように成膜した。スパッタ電源パワーは5.0W/cmとし、成膜圧力は0.4Paとした。また、成膜条件において、酸素分圧を12%とした。なお、事前にガラス基板材を用いた成膜により、成膜条件において、成膜時間に対する厚さ変化のデータを取り、単位時間当たりに成膜される厚さを算出した後、設定する厚さとなるように成膜時間を設定した。
以上によって、層厚65nmのガスバリアー層を形成した。
(3)ガスバリアー層のXPS分析
XPS分析により、ガスバリアー層の表面側から厚さ方向の組成分布プロファイルを測定した。なお、XPS分析条件は以下のとおりである。なお、分析に用いた試料は、試料作製後、20℃・50%RHの環境下で保管した試料を用いた。
(XPS分析条件)
・装置:アルバック・ファイ社製QUANTERA SXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを得た。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる。)。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバック・ファイ社製のMultiPakを用いた。なお、分析した元素は、非遷移金属(Si)、遷移金属(Nb)、O、N、Cである。
(4)混合領域の酸素欠損指標(2y+3z)/(a+bx)の算出
混合領域における厚さ方向の(2y+3z)/(a+bx)の値を算出した。ここで、aはSi(M1)の最大価数4、bはNb(M2)の最大価数5である。また、x、y及びzは、XPS分析から求めた、Si(M1)の原子数比率を1としたときの、Nb(M2)、O及びNのそれぞれの原子数比率の値である。そして、混合領域における(2y+3z)/(a+bx)の最小値を酸素欠損度指標として求め、当該最小値が1.0未満の場合、混合領域が酸素欠損状態にあると判断した。
〈ガスバリアー性フィルム102〜104の作製〉
ガスバリアー性フィルム101の作製において、基材を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム102〜104を作製した。
PEN:帝人株式会社製 テオネックス
PES:住友化学株式会社製 スミカエクセル4010GL30
PI:三菱瓦斯化学株式会社製 ネオプリム
〈ガスバリアー性フィルム105の作製〉
ガスバリアー性フィルム104の作製において、非遷移金属(M1)を含有する膜を形成する際のターゲットを酸化アルミニウム(屈折率1.63)に変更し、厚さ70nmとなるように成膜した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム105を作製した。
〈ガスバリアー性フィルム106〜108の作製〉
ガスバリアー性フィルム102〜104の作製において、遷移金属を含有する膜を形成する際のターゲットを金属Taターゲットに変更し、厚さ10nmとなるように成膜した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム106〜108をそれぞれ作製した。
〈ガスバリアー性フィルム109の作製〉
ガスバリアー性フィルム104の作製において、以下のようにしてガスバリアー層を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム109を作製した。
(ガスバリアー層の形成)
基材のクリアハードコート層2を形成した面側に、ターゲットとして多結晶Siターゲット及び金属Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、DC方式により共スパッタ法である2元同時スパッタを行うことにより、ガスバリアー層を形成した。酸素分圧は18%とし、膜中のSiとNbの原子比率が同量となるように、多結晶Siターゲットにおける電源パワーと、金属Nbターゲットにおける電源パワーとを調整した。また、層厚が50nmとなるように成膜時間を設定した。
《評価》
作製した各ガスバリアー性フィルムについて、以下のようにして水蒸気透過度及び保存性を評価した。
評価結果を表1に示す。
〈水蒸気透過度の測定〉
以下の測定方法に従って、作製した各ガスバリアー性フィルムの透過水分量(水蒸気透過度)を測定し、水蒸気バリアー性を評価した。
なお、本発明のガスバリアー性フィルムに関し、水蒸気透過度の測定方法は特に限定するところではないが、本実施例では水蒸気透過度測定方法として、Ca法を採用した。
(使用装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(評価材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリアー性評価用セルの作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、試料のガスバリアー層の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移して、アルミニウム蒸着面に封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスを張り合わせ、紫外線を照射して樹脂を硬化接着させて本封止することで、水蒸気バリアー性評価用セルを作製した。
そして、恒温恒湿度オーブンを用い、得られた評価用セルを60℃・90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量(g/(m・24h))を計算した。
なお、ガスバリアー性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリアー性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板に金属カルシウムを蒸着した試料を用いたセルで、同様に60℃・90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウムの腐食が発生しないことを確認した。
〈保存性の評価(クラック評価)〉
作製したガスバリアー性フィルムについて、サイズ300mm×300mmのサンプルを85℃・85%RH環境下に14日保存後、上記と同様の方法で透過水分量(水蒸気透過度)を測定し、保存前後での透過水分量の変化より、下式に従って耐劣化度を算出し、下記の基準に従って保存性を評価した。
耐劣化度=(保存後の透過水分量/保存前の透過水分量)×100(%)
5:耐劣化度が、98%以上である。
4:耐劣化度が、95%以上、98%未満である。
3:耐劣化度が、90%以上、95%未満である。
2:耐劣化度が、80%以上、90%未満である。
1:耐劣化度が、80%未満である。
Figure 2019010736
〈まとめ〉
表1から明らかなように、本発明のガスバリアー性フィルムは、比較例のガスバリアー性フィルムと比較して、水蒸気透過度及び保存性に優れていることが確認された。
以上から、ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、5族の遷移金属及び12〜14族の非遷移金属(M1)が含有されている混合領域を有し、基材の構成材料のガラス転移温度が150℃以上であることが、高いガスバリアー性を有しつつ、生産性にも優れたガスバリアー性フィルムを提供することに有用であることがわかる。
[実施例2]
《ガスバリアー性フィルムの作製》
下記の方法に従って、ガスバリアー性フィルム201〜205を作製した。
〈ガスバリアー性フィルム201の作製〉
(1)基材の準備
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)U48、略称:PETフィルム)の両面に、クリアハードコート層1(裏面側)及びクリアハードコート層2(ガスバリアー層形成面側)を下記の方法により形成した。
(クリアハードコート層の形成)
上記PETフィルムの裏面側(ガスバリアー層を形成する面とは反対側の面)に、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥層厚が0.5μmになるように湿式塗布方式により塗布した後、形成した塗膜を80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行い、裏面側のクリアハードコート層1を形成した。
次いで、PETフィルムの表面側(ガスバリアー層を形成する面)に、JSR株式会社製のUV硬化型樹脂「オプスター(登録商標)Z7527」を用い、乾燥層厚が2μmになるように、湿式塗布方式で塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行い、表面側に厚さ2μmのクリアハードコート層2を形成した。
(2)ガスバリアー層の形成
(非遷移金属(M1)を含有する膜の形成)
非遷移金属(M1)として、Siを含有するポリシラザンを用い、以下のようにして、塗布・改質方式により非遷移金属(M1)を含有する膜を形成した。
まず、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、更に乾燥膜厚調整のため脱水ジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
次いで、グローブボックス内の窒素雰囲気下で、スピンコート法により上記塗布液を乾燥膜厚が55nmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥した。
次いで、非遷移金属(M1)を含有する膜を形成した試料を、波長172nmのXeエキシマランプを有する図4に示す真空紫外線照射装置に設置し、照射エネルギー5.0J/cmの条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、チャンバー内に窒素と酸素とを供給し、照射雰囲気の酸素濃度を0.1体積%に調整した。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
図4に示す真空紫外光照射装置100において、符号101は装置チャンバーであり、図示しないガス供給口から内部に窒素と酸素とを適量供給し、図示しないガス排出口から排気することで、チャンバー内部から実質的に水蒸気を除去し、酸素濃度を所定の濃度に維持することができる。符号102は172nmの真空紫外光を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプ(エキシマランプ光強度:130mW/cm)、符号103は外部電極を兼ねるエキシマランプのホルダーである。符号104は、試料ステージである。試料ステージ104は、図示しない移動手段により装置チャンバー101内を水平に所定の速度で往復移動することができる。また、試料ステージ104は図示しない加熱手段により、所定の温度に維持することができる。符号105は、ポリシラザン化合物塗布層が形成された試料である。試料ステージが水平移動する際、試料の塗布層表面と、エキシマランプ管面との最短距離が3mmとなるように試料ステージの高さが調整されている。符号106は遮光板であり、Xeエキシマランプ102のエージング中に試料の塗布層に真空紫外線が照射されないようにしている。
真空紫外光照射工程で試料塗布層表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサヘッドを用いて測定した。測定に際しては、Xeエキシマランプ管面とセンサヘッドの測定面との最短距離が、3mmとなるようにセンサヘッドを試料ステージ104中央に設置し、かつ、装置チャンバー101内の雰囲気が、真空紫外光照射工程と同一の酸素濃度となるように窒素と酸素とを供給し、試料ステージ104を0.5m/minの速度で移動させて測定を行った。測定に先立ち、Xeエキシマランプ102の照度を安定させるため、Xeエキシマランプ点灯後に10分間のエージング時間を設け、その後試料ステージを移動させて測定を開始した。
この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整することで、5.0J/cmの照射エネルギー量となるように調整した。なお、真空紫外光照射は、10分間のエージング後に行った。
(遷移金属を含有する膜の形成)
上記形成した非遷移金属(M1)を含有する膜の上に、気相法・スパッタ(キャノンアネルバ社製のマグネトロンスパッタ装置、型式EB1100)により、遷移金属を含有する膜を形成した。
ターゲットとしては、市販の金属Nbターゲットを用い、プロセスガスとしてArとOの混合ガスを用いて、DCスパッタにより、厚さ9nmとなるように成膜した。スパッタ電源パワーは5.0W/cmとし、成膜圧力は0.4Paとした。また、成膜条件において、酸素分圧を12%とした。なお、事前にガラス基板材を用いた成膜により、成膜条件において、成膜時間に対する厚さ変化のデータを取り、単位時間当たりに成膜される厚さを算出した後、設定する厚さとなるように成膜時間を設定した。
以上によって、層厚64nmのガスバリアー層を形成した。
(3)ガスバリアー層のXPS分析
上記方法により形成したガスバリアー層について、XPS分析を実施例1と同様にして行った。
(4)混合領域の酸素欠損指標(2y+3z)/(a+bx)の算出
混合領域における厚さ方向の(2y+3z)/(a+bx)の値を実施例1と同様にして算出した。
〈ガスバリアー性フィルム202〜204の作製〉
ガスバリアー性フィルム201の作製において、基材を表2に記載のとおりに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム202〜204を作製した。
PEN:帝人株式会社製 テオネックス
PES:住友化学株式会社製 スミカエクセル4010GL30
PI:三菱瓦斯化学株式会社製 ネオプリム
〈ガスバリアー性フィルム205の作製〉
ガスバリアー性フィルム204の作製において、遷移金属を含有する膜を形成する際のターゲットを金属Taターゲットに変更し、厚さ10nmとなるように成膜した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム205を作製した。
《評価》
作製した各ガスバリアー性フィルムについて、実施例1と同様にして、水蒸気透過度及び保存性を評価した。
評価結果を表2に示す。
Figure 2019010736
〈まとめ〉
表2から明らかなように、本発明のガスバリアー性フィルムは、比較例のガスバリアー性フィルムと比較して、水蒸気透過度及び保存性に優れていることが確認された。
1 ガスバリアー性フィルム
2 基材
3 ガスバリアー層
10 有機EL素子
11 支持体
12、14 電極
13 有機機能層
15 封止材
100 真空紫外光照射装置
101 装置チャンバー
102 Xeエキシマランプ
103 ホルダー
104 試料ステージ
105 試料
106 遮光板

Claims (9)

  1. 基材上に、ガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、
    前記ガスバリアー層が、少なくとも厚さ方向において、5族の遷移金属(M2)及び12〜14族の非遷移金属(M1)が含有されている混合領域を有し、
    前記基材の構成材料のガラス転移温度が、150℃以上であることを特徴とするガスバリアー性フィルム。
  2. 前記基材の構成材料のガラス転移温度が、180℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアー性フィルム。
  3. 前記基材の構成材料が、ポリイミドであることを特徴とする請求項2に記載のガスバリアー性フィルム。
  4. 前記ガスバリアー層が、5族の遷移金属(M2)又はその化合物が主成分aとして含有されている領域(以下、「A領域」という。)と12〜14族の非遷移金属(M1)又はその化合物が主成分bとして含有されている領域(以下、「B領域」という。)とを有し、
    前記混合領域が前記A領域と前記B領域との間に介在し、かつ、前記混合領域に前記主成分a及び前記主成分bに由来する化合物が含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
  5. 前記混合領域の組成を下記化学組成式(1)で表したとき、前記混合領域の少なくとも一部が下記関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
    化学組成式(1):(M1)(M2)
    関係式(2):(2y+3z)/(a+bx)<1.0
    (ただし、式中、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、x,y,z:化学量論係数、a:M1の最大価数、b:M2の最大価数を表す。)
  6. 前記非遷移金属(M1)が、ケイ素であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムを具備していることを特徴とする電子デバイス。
  8. 量子ドット含有樹脂層を有することを特徴とする請求項7に記載の電子デバイス。
  9. 有機エレクトロルミネッセンス素子を具備していることを特徴とする請求項7に記載の電子デバイス。
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