JP2018012267A - ガスバリアーフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、ロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することである。【解決手段】本発明のガスバリアーフィルムは、基材上に、第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層をこの順に有するガスバリアーフィルムであって、前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーを含有し、前記基材の表面における凸部最大高さが300nm以下であり、凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の凸部平均幅が100〜300nmの範囲内であり、凸部面積比率が10〜40%の範囲内であり、かつ、前記第1のガスバリアー層の層厚の平均値が、30〜150nmの範囲内であることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、ガスバリアーフィルム及びその製造方法に関し、より詳しくは、高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、ロールtoロール製造においても、巻取りによるバリアー性のダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルム及びその製造方法に関する。
従来、食品、包装材料、医薬品などの分野で、水蒸気や酸素等のガスの透過を防ぐため、樹脂基材の表面に金属や金属酸化物の蒸着膜等の無機膜を設けた比較的簡易な構造を有するガスバリアー性フィルム(以下、ガスバリアーフィルムという。)が用いられてきた。
近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリアーフィルムが、液晶表示素子(LCD)、太陽電池(PV)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの電子デバイスの分野にも利用されつつある。このような電子デバイスに、フレキシブル性と軽くて割れにくいという性質を付与するためには、硬くて割れ易いガラス基板ではなく、高いガスバリアー性を有するガスバリアーフィルムが必要となってくる。
電子デバイスに適用可能なガスバリアーフィルムを得るための方策としては、樹脂基材上にプラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によってガスバリアー層を形成する方法や、ポリシラザンを主成分とする塗布液を基材上に塗布した後、表面処理(改質処理)を施してガスバリアー層を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1には、表面の粗さRa値が12nmより小さい樹脂基材にポリシラザンを層厚250nm以下で積層することが記載されている。通常、基材の表面粗さが小さいほうがガスバリアー性は良くなる。しかしながら、前記特許文献1に記載の方法では、表面粗さが小さいためガスバリアーフィルムの滑り性が十分ではなく、ガスバリアーフィルムを製造した後の巻取り工程や搬送工程で、ガスバリアーフィルムに傷が付きやすくガスバリアー性が著しく劣化してしまうという問題があった。
また、前記有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの電子デバイス用途としては、さらに高いガスバリアー性を有するガスバリアーフィルムが求められており、特に高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、かつロールtoロール製造においても巻取りによるガスバリアー性のダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムが求められている。
特開2009−255040号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、ロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、基材上に、シラザン骨格を有するポリマーを含有する第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層をこの順に有するガスバリアーフィルムであって、前記基材が特定の形状を有し、かつ第1のガスバリアー層が特定の層厚を有する場合に、高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、かつロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムが得られることを見いだした。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.表面に凹凸形状を有する基材上に、第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層をこの順に有するガスバリアーフィルムであって、前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーを含有し、前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さの最大値が300nm以下であり、前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の幅の平均値が、30〜100μmの範囲内であり、前記切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対して10〜40%の範囲内であり、かつ、前記第1のガスバリアー層の層厚の平均値が、30〜150nmの範囲内であることを特徴とするガスバリアーフィルム。
2.前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対して30〜40%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルム。
3.前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーとしてパーヒドロキシポリシラザンを含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載のガスバリアーフィルム。
4.前記第2のガスバリアー層の層厚の平均値が、3〜20nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
5.第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、前記第1のガスバリアー層が、塗布方式により成膜され、前記第2のガスバリアー層が、真空蒸着法により成膜されることを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、かつロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
通常、基材に凹凸があると、ガスバリアー層の一部に薄膜部が発生してしまい、ガスバリアー性の劣化を生じる。したがって、基材を平滑にすると、ガスバリアー性は向上しやすい。
また、ガスバリアー層の層厚を厚くすることで、ガスバリアー性を向上することができる。
しかしながら、基材を平滑にした場合には、ガスバリアーフィルム表面の滑り性が劣化し、ロールtoロール製造などにおいて、巻取りによる傷付きなどのダメージが発生する。また、ガスバリアー層の層厚を厚くすると、屈曲耐性が低下し、クラックが発生しやすくなる。
本発明者は、基材が特定の形状を有し、かつ第1のガスバリアー層が特定の層厚を有する場合に、高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、かつロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムが得られることを見いだした。
本発明に係る基材の基材表面は、凸部ピーク部の高さが低く、長い周期の凹凸であり凹凸のピークの数も少ない、なだらかな凹凸形状を有している。このような形状をしているときに、本発明に係る効果が得られやすい。
すなわち、このような形状をしているときは、基材上の第1のガスバリアー層の層厚が薄くても、層厚のムラがなく均一に基材を覆うことができる。このため、ガスバリアー層の層厚が薄過ぎる部分が生じにくく、ガスバリアー性の劣化が生じにくいと推察している。また第1のガスバリアー層の層厚が薄いため、基材の凹凸形状がガスバリアーファイルム表面に反映されやすく、滑り性が良い。このため、ロールtoロール製造などにおいても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムが得られるものと推察している。
本発明にかかる基材表面の形状を模式的に表した断面図 本発明のガスバリアーフィルムの構成を示す断面図
本発明のガスバリアーフィルムは、表面に凹凸形状を有する基材上に、第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層をこの順に有するガスバリアーフィルムであって、前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーを含有し、前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さの最大値が300nm以下であり、前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の幅の平均値が、30〜100μmの範囲内であり、前記切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対して10〜40%の範囲内であり、かつ、前記第1のガスバリアー層の層厚の平均値が、30〜150nmの範囲内であることを特徴とし、当該構成において、高温高湿環境下でも高い耐久性を有し、かつ滑り性が良いためロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムが得られる。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対して30〜40%の範囲内であることが、本発明の効果の観点から好ましい。
また、本発明の効果発現の観点から、前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーとしてパーヒドロキシポリシラザンを含有することが、耐久性及び耐傷性に優れ、かつガスバリアー性を向上する観点から好ましい。
さらに、前記第2のガスバリアー層の層厚の平均値が、3〜20nmの範囲内であることが、高温高湿環境下でも高い耐久性を有し、ロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムが得られる観点から好ましい。
本発明のガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法は、前記第1のガスバリアー層が、塗布方式により成膜され、前記第2のガスバリアー層が、真空蒸着法により成膜されることを特徴とする。
この製造方法により、高温高湿環境下でも高い耐久性を有し、ロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムを低コストで製造でき、また、膜厚の小さいガスバリアーフィルムを製造できるという観点から好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明のガスバリアーフィルムの概要≫
本発明のガスバリアーフィルムは、表面に凹凸形状を有する基材上に、第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層をこの順に有するガスバリアーフィルムであって、前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーを含有し、前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さの最大値が300nm以下であり、前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の幅の平均値が、30〜100μmの範囲内であり、前記切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対して10〜40%の範囲内であり、かつ、前記第1のガスバリアー層の層厚の平均値が、30〜150nmの範囲内であることを特徴とする。
なお、図1は、本発明にかかる基材表面の形状を模式的に表した断面図であり、測定位置との関係を表した。
ここで、前記基準面とは、非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)を用いて、前記基材の表面の表面粗さを倍率40倍で測定したときに、凹部の最低の高さ(0nm)となる面である。
基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さの最大値(以下、「凸部最大高さ」ともいう。)は、非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)を用いて、前記基材の表面を40倍で表面粗さを測定したときの凸部を二次元に断面解析をとり、最大高さを測定することができる。
前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の幅の平均値(以下、「凸部平均幅」ともいう。)は、非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)を用いて、前記基材の表面を40倍で表面粗さを測定したときの凸部を二次元に断面解析をとり、基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの基準面幅を測定し、平均値を計算することにより測定できる。
なお、幅の平均値は、各凸部を基準面からの高さが30nmの面で切断し、切断面を同面積で円形に換算したときの円の直径をその凸部の幅とする。そのようにして得られた各凸部の幅の平均値を計算する。
前記基材の表面におけるピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対する比率(%)(以下、「凸部面積比率」ともいう。)は、前記基材の表面を非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)を用いて、前記基材の表面を40倍で表面粗さを測定し、測定画像の基準面からの高さが30nm以下と30nm以上とで画像を二値化し、切断面部分の面積を算出し、測定したガスバリアーフィルム表面の面積に対する比率(%)を計算して求めることができる。
これらの基材の表面形状は、基材の製造時に、フィラーの量を増減することにより調整できる。フィラーを含有する層は、樹脂フィルム中、又はアンダーコート層中のどちらでも良い。
本発明に係る基材が上記の特性を有することにより、高温高湿環境下でも高いガスバリアー性を有し、かつ滑り性が良いためロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムが得られる。
本発明のガスバリアーフィルムにおいては、前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーを含有し、前記第2のガスバリアー層が、遷移金属を含有し、かつ、第1のガスバリアー層と前記第2のガスバリアー層との間に、少なくとも厚さ方向において、ケイ素及び遷移金属を含有する領域であって、前記ケイ素(M1)に対する遷移金属(M2)の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有することが、高ガスバリアー性を発現する観点から、より好ましい。
ここで、混合領域とは、ガスバリアーフィルムの少なくとも厚さ方向において構成成分の化学組成が相互に異なる複数の層からなり、少なくとも前記複数の層の一つにはシラザン骨格を有するポリマーを含有する第1のガスバリアー層、及び当該第1のガスバリアー層に直接的若しくは間接的に対向する第2のガスバリアー層には遷移金属を含有する場合、前記第1のガスバリアー層及び前記第2のガスバリアー層に含有される金属又は当該金属に由来する化合物を含有する領域をいう。
ここで、混合領域は、前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の前記構成成分が相互に化学結合することなく混じり合っている状態を含むが、非遷移金属と遷移金属がお互いに化学結合している複合酸化物を形成していることが好ましい。
「複合酸化物」とは、前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の前記構成成分が相互に化学結合をして形成された化合物(酸化物)をいう。例えば、非遷移金属と遷移金属が直接的に又は酸素原子を介して化学結合を形成している化学構造を有する化合物をいう。
また、この混合領域では、非遷移金属と遷移金属、及び酸素が含有されていることが好ましい。さらに、この混合領域は、遷移金属の酸化物と非遷移金属の酸化物との混合物、又は、遷移金属と非遷移金属との複合酸化物の少なくとも一方が含有されていることが好ましい形態であり、遷移金属と非遷移金属との複合酸化物が含有されていることがより好ましい形態である。
本発明のガスバリアーフィルムのガスバリアー性は、基材上に前記ガスバリアー層を形成させた積層体で算出した際、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、25±0.5℃、90±2%RHの環境下の水蒸気透過度が0.01g/m・24h以下のガスバリアー性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−2006に準拠した方法で測定された、85℃・85%RH環境下での酸素透過度が、1×10−3mL/m・24h・atm以下、水蒸気透過度が、1×10−3g/m・24h以下の高ガスバリアー性であることが好ましい。
<本発明のガスバリアーフィルムの構成>
図2は本発明のガスバリアーフィルムの一例の構成を示す断面図である。
本発明のガスバリアーフィルム10は、基材1上に第1のガスバリアー層2及び第2のガスバリアー層3が積層されており、その間に混合領域4が形成される。
また、基材1と第1のガスバリアー層2の間にはアンダーコート層(本発明ではアンカー層ともいう。)、ハードコート層等の機能性層が形成されていてもよく、第2のガスバリアー層3上には、他の機能性層(例えば量子ドット樹脂層など)との密着性を向上する密着層が形成されていてもよい。さらに、基材のガスバリアー層が配置されている側と反対側の面にバックコート層等が形成されていてもよい。
以下、図2の構成に沿って各要素を詳細に説明する。
<基材>
本発明に係る基材としては、具体的には、ガラス又は樹脂フィルムの適用が好ましく、フレキシブル性を要求される場合は、樹脂フィルムであることが好ましい。
好ましい樹脂としては、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。該樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。すなわち、これらの用途に本発明に係るガスバリアー層を用いる場合、基材は、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張及び収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、又は熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
本発明のガスバリアーフィルムは、有機EL素子等の電子デバイスに好適であることから、基材は透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
また、上記に挙げた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。当該基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」の記載された事項を適宜採用することができる。
基材の表面は、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、又はプラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。また、基材には易接着処理を行ってもよい。
該基材は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該基材が2層以上の積層構造である場合、各基材は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。
本発明に係る基材の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
本発明に係る基材は、市販の基材を使用することができ、例えば、東レ株式会社製のPETフィルムであるルミラー(登録商標)U403は、凸部最大高さ100nm、凸部平均幅30μm、凸部面積比率40%である。
<ガスバリアー層>
<ガスバリアー層の概要>
本発明のガスバリアーフィルムは、基材上に少なくとも、第1のガスバリアー層、及び第2のガスバリアー層をこの順に有するガスバリアーフィルムである。前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーを含有し、前記第2のガスバリアー層が、遷移金属を含有することがより好ましい。
前記遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素から選択される金属をいい、これは「遷移金属の化合物」を含み、例えば酸化物、窒化物、酸窒化物、及び酸炭化物をいい、特に酸化物であることが好ましい。
前記長周期型周期表の第3族元素から第11族元素から選択される遷移金属としては特に制限されず、任意の遷移金属が単独で又は組み合わせて用いられうる。遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuなどが挙げられる。
中でも、良好なガスバリアー性が得られる遷移金属としては、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられる。これらの中でも、種々の検討結果から、特に第5族元素であるNb、Ta、及びVが、ガスバリアー層に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。
特に遷移金属が第5族元素(特に、Nb)であって、上述した非遷移金属(M1)がSiであると、著しいガスバリアー性の向上効果が得られる。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属(M2)は、透明性が良好な化合物が得られるNb、及びTaが特に好ましい。
ガスバリアー層の層厚は、特に制限されないが、5〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは55〜100nmである。このような範囲であれば、高いガスバリアー性能、折り曲げ耐性、断裁加工適性に優れる。また、ガスバリアー層は隣接する2層以上から構成されてもよい。
(混合領域)
本発明に係る第1のガスバリアー層と第2のガスバリアー層とは、第1のガスバリアー層のケイ素(非遷移金属(M1))と第2のガスバリアー層の第3族〜第11族の金属から選択される遷移金属(M2)が含有されている領域混合領域を有することが、ガスバリアー性が向上するという観点から好ましい。
前記混合領域は、前記ケイ素(非遷移金属(M1))に対する遷移金属(M2)の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にあり、厚さ方向に連続して5nm以上有することが、ガスバリアー性が向上するという観点からより好ましい。
ここで、混合領域とは、(1)ガスバリアー層の少なくとも厚さ方向において構成成分の化学組成が相互に異なる複数の領域からなり、前記複数の領域の一つには非遷移金属又はその化合物が含有されており、当該一つの領域に直接的若しくは間接的に対向する他の領域には遷移金属が含有されているケースの場合、前記第1のガスバリアー層の主成分及び前記第2のガスバリアー層の主成分に由来する化合物を含有する領域をいう。
<ガスバリアー層の形成方法>
本発明に係る第1のガスバリアー層は、シラザン骨格を有するポリマーを含有する。
本発明に係る第1のガスバリアー層を形成する方法としては、特に制限はないが、ポリシラザンを含む塗布液を公知の湿式塗布法により塗布して改質処理を行い、ガスバリアー層の一部となる層を形成することが、生産性が高く低コストである観点から好ましい。
また、気相成膜法を公知の方法で用いることもできる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。中でも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により、非遷移金属をターゲットとして用いて形成することができる。
第1のガスバリアー層は、ポリシラザン又はポリシラザンの改質体を含有する。
当該ポリシラザンの改質体を、ポリシラザンを含有する塗布液を本発明に係る基材上に塗布して、真空紫外光を照射することにより形成する層であることが、透過率等の光学特性に優れたガスバリアー性の高いガスバリアー層が、生産性が高く低コストで得られることから、より好ましい。形成される層の数は特に限定はなく、少なくとも1層であればよく、複数の層でもよい。
改質処理は、好ましくは真空紫外光の照射処理である。真空紫外光の照射といった改質処理により、ガスバリアー層はガスバリアー性を発現するようになる。
本発明に用いられる「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、下記一般式(1)の構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2018012267
式中、R、R、及びRは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。
本発明では、得られるガスバリアー層の膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。
その他、ポリシラザンの詳細については、従来公知である特開2013−255910号公報の段落「0024」〜「0040」、特開2013−188942号公報の段落「0037」〜「0043」、特開2013−151123号公報の段落「0014」〜「0021」、特開2013−052569号公報の段落「0033」〜「0045」、特開2013−129557号公報の段落「0062」〜「0075」、特開2013−226758号公報の段落「0037」〜「0064」等を参照して採用することができる。
ポリシラザンを含有する塗布液の塗布は、電子デバイスの酸素や水蒸気による劣化を抑制するために、例えば、グローブボックス内といった窒素雰囲気下で行われる。ポリシラザンを含有する塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。形成方法については、従来公知である特開2014−151571号公報の段落「0058」〜「0064」、特開2011−183773号公報の段落「0052」〜「0056」等を参照して採用することができる。
改質処理とは、ポリシラザンの酸化ケイ素又は酸化窒化ケイ素への転化反応をいう。改質処理も、同様に、グローブボックス内といった窒素雰囲気下や減圧下で行われる。
本発明における改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。本発明においては、低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンは従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、ポリシラザン含有液の塗膜を設け、波長200nm以下の真空紫外光(VUVともいう。)を照射して改質処理することにより、非遷移金属(M1)を含有する層を形成することが好ましい。
本発明に係る第1のガスバリアー層は、層厚の平均値が、30〜150nmの範囲内である。この層厚とすることにより、基材の表面形状をガスバリアーフィルム表面に反映させやすくなり、滑り性の劣化が少なくなる。
第1のガスバリアー層の層厚は、30〜50nmの範囲内であることが、本発明の効果の観点から好ましい。
本発明における真空紫外光照射工程において、ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外光の照度は30〜200mW/cmの範囲であることが好ましく、50〜160mW/cmの範囲であることがより好ましい。真空紫外光の照度を30mW/cm以上とすることで、改質効率を十分に向上することができ、200mW/cm以下では、塗膜への損傷発生率を極めて抑え、また、基材への損傷も低減させることができるため、好ましい。
真空紫外光の照射を行う場合は、ポリシラザン層塗膜面における真空紫外光の照射エネルギー量は、0.01〜0.9J/cmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.5J/cmの範囲であることが、素子へのダメージを低減する観点からより好ましい。
なお、真空紫外光光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。真空紫外光は、酸素による吸収があるため真空紫外光照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外光の照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外光照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲、さらに好ましくは80〜4500ppmの範囲、最も好ましくは100〜1000ppmの範囲である。
改質処理は、加熱処理を用いることもできる。加熱条件としては、好ましくは50〜300℃の範囲内、より好ましくは70〜200℃の範囲内の温度で、好ましくは0.005〜60分間、より好ましくは0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、改質体を形成することができる。
加熱処理としては、例えば、ヒートブロック等の発熱体に基材を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターのような赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定されない。また、ケイ素化合物を含有する塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱処理時の塗膜の温度としては、50〜250℃の範囲内に適宜調整することが好ましく、50〜120℃の範囲内であることがより好ましい。
また、加熱時間としては、1秒〜10時間の範囲内が好ましく、10秒〜1時間の範囲内がより好ましい。
これらの改質処理においては、例えば、特開2012−086394号公報の段落「0055」〜「0091」、特開2012−006154号公報の段落「0049」〜「0085」、特開2011−251460号公報の段落「0046」〜「0074」等に記載の内容を参照することができる。
(ガスバリアー層が、ポリシラザン由来であることの判定)
本発明に係るガスバリアー層においては、前駆体としてポリシラザン、特に好ましくはパーヒドロポリシラザンを用いて形成することが好ましい態様であるが、最終完成物であるガスバリアー層が、ポリシラザンにより形成された層であることは、下記の方法により分析することにより実証することができる。
本発明においては、ポリシラザンとしてはパーヒドロポリシラザンを適用した例について説明する。
市販のパーヒドロポリシラザンの一般的な組成をSiNとしたときに、vは0.78〜0.80となる。パーヒドロポリシラザンから形成された前駆体層は、形成雰囲気の水分や酸素を取り込み、アンモニアや水素を放出して、下式(A)及び式(B)で示すように組成が変化していく。
Figure 2018012267
その過程において、窒素が1個放出されるのに対し、酸素が3個取り込まれるという法則におおよそ従う。これは、上述の種々の改質処理を行った場合にもあてはまるものである。したがって、パーヒドロポリシラザンから塗布形成されたガスバリアー層の組成をSiOで示した際に、xとyの関係は下式(C)に従う。
式(C)
y=0.8−x/3、x≧0、y≧0、
元の組成がSiN0.8の場合、パーヒドロポリシラザンから塗布形成された層の厚さ方向の組成分布をXPSにより分析した場合、厚さ方向の各測定点でのいずれの組成も上記式にあてはまることになる(数%の誤差は存在する)。
したがって、Siを含有する層の厚さ方向の組成分布を分析して、SiOで示した際に、その形成したガスバリアー層の厚さに対して、その80%以上となる測定点の組成が、yの値が(0.8−x/3)の±2%の範囲に入っていた場合、その層はパーヒドロポリシラザンから形成されたガスバリアー層であると推定することが可能となる。
(添加元素)
本発明において、シラザン骨格を有する化合物を含有する層を形成するための塗布液には、添加元素(長周期型周期表の第2族〜第14族の元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素)を含有させることができる。添加元素の例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)等が挙げられる。
本発明に係る前記非遷移金属(M1)を含有する層を、特に、ポリシラザンとアルミニウム化合物、又はポリシラザンとホウ素化合物とを含有する塗布液を塗布し、乾燥して形成することが好ましい。
本発明に適用可能なアルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソポロポキシド、アルミニウム−sec−ブチレート、チタンイソプロポキシド、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリtert−ブチレート、アルミニウムトリn−ブチレート、アルミニウムトリsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノアルミニウム−t−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドイソプロポキシドトリマー等を挙げることができる。
また、ホウ素化合物としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリn−プロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリn−ブチル、ホウ酸トリtert−ブチル等を挙げることができる。
これらの中でも、アルミニウム化合物が好ましい。具体的な市販品としては、例えば、AMD(アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート)、ASBD(アルミニウムセカンダリーブチレート)、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、ALCH−TR(アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)、アルミキレートM(アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、アルミキレートD(アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)、アルミキレートA(W)(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、プレンアクト(登録商標)AL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
なお、これらの化合物を用いる場合は、ポリシラザンを含む塗布液と不活性ガス雰囲気下で混合することが好ましい。これらの化合物が大気中の水分や酸素と反応し、激しく酸化が進むことを抑制するためである。また、これらの化合物とポリシラザンとを混合する場合は、30〜100℃に昇温し、撹拌しながら1分〜24時間保持することが好ましい。
第1のガスバリアー層における上記添加元素の含有量は、ケイ素(Si)の含有量100mol%に対して、上記添加元素の含有量が0.1〜20mol%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10mol%である。
本発明に係る第2のガスバリアー層は、シラザン骨格を有するポリマーを含有する層であってもよいし、遷移金属を含有する層であっても良いが、遷移金属を含有する層であることが、高いガスバリアー性が得られる観点からより好ましい。
前記、遷移金属は、良好なガスバリアー性が得られる観点から、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられ、これらの中でも、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、ガスバリアー層に含有される非遷移金属(ケイ素)に対する結合が生じやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。
本発明に係る遷移金属酸化物を含有する層の形成は、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相成膜法を用いることが、混合領域を効率的に形成する観点から好ましい。
これらの気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。中でも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により形成することがより好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、及びRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。
また、金属モードと、酸化物モードとの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、非遷移金属(ケイ素)及び遷移金属の複合酸化物、窒酸化物、酸炭化物等の薄膜を作ることができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、層厚等に応じて適宜選択することができる。
スパッタ法は、遷移金属の単体又はその酸化物とを含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタであってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。そして、共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる薄膜を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を混合領域とすることができる。このため、かような手法によれば、混合領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、混合領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
第2のガスバリアー層は、層厚の平均値が、3〜20nmの範囲内であることが、光学特性と屈曲性の効果の観点から好ましい。より好ましくは3〜10nmの範囲内であることである。
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法としては、第1のガスバリアー層が、塗布方式により成膜され、前記第2のガスバリアー層が、真空蒸着法により成膜されることが、好ましい。
この製造方法により、高温高湿環境下でも高い耐久性を有し、ロールtoロール製造においても、巻取りによるダメージに対する耐性の高いガスバリアーフィルムを低コストで製造でき、また、膜厚の小さいガスバリアーフィルムを製造できる。
<その他の機能性層>
本発明に好ましいその他の機能性層として、下記アンダーコート層及び密着層を説明する。
<アンダーコート層>
本発明においては、基材上に少なくとも1層のアンダーコート層と、前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の積層体とが積層されていることが、基材とガスバリアー層との密着性を向上し、使用環境変動におけるガスバリアー層への機械的又は熱的ストレスによる層の損傷や欠陥を防ぎ、ガスバリアー性の劣化を抑制する観点から、好ましい態様である。
本発明に用いられるアンダーコート層は樹脂を含有する有機ポリマー層であることが好ましく、用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂、及びアルキルチタネート等を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
好ましくは、下記重合性化合物とシランカップリング剤と重合開始剤を含む重合性組成物を層状にした後硬化して形成することもできる。
重合性組成物を層状にする方法としては、本発明では基材上に重合性組成物を塗布して形成することができる。塗布組成物を塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。形成方法については、従来公知である特開2014−151571号公報の段落「0058」〜「0064」、特開2011−183773号公報の段落「0052」〜「0056」等を参照して採用することができる。
上記塗布法の中では、電子デバイスは水分や親水性溶媒によって劣化する懸念があるため、一般的な溶媒塗布は好ましくなく、窒素雰囲気下、無溶媒、若しくは、親水性溶媒の含有量が少ない塗布組成物を用いたインクジェット方式を好ましく適用することができる。当該インクジェット方式は、例えば、国際公開第2014/176365号、国際公開第2015/100375号、国際公開第2015/112454号等に記載の技術内容を参照して採用することができる。具体的には、KATEEVA社製のYIELDjet(登録商標)Platformを用いてアンダーコート層を形成することも好ましい実施態様である。
また、重合性組成物を層状にする別の方法としては、公知のフラッシュ蒸着法といった気相成膜法を用いることができる。
例えば、重合性化合物とシランカップリング剤と重合開始剤を含む重合性組成物を、減圧雰囲気下において、加熱によって揮発させて基材、電極層又は有機機能層上に蒸着膜として形成することが好ましい。
当該蒸着膜を形成する方法は、特開2008−142941号公報、特開2004−314626号公報等に記載されているような公知の方法を用いることができる。
一例として、真空装置内に基材及びその上に形成された有機機能層を設置し、真空装置の中に設置された加熱ボートに前記重合性組成物を入れ、10Pa程度の減圧下、前記重合性組成物を200℃程度に加熱し、基材及び有機機能層を被覆しながら、所望の層厚になるように蒸着膜を形成することができる。
得られた蒸着膜に真空環境下で高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射して、蒸着した重合性組成物を硬化させてアンダーコート層を形成する。
(重合性化合物)
本発明で用いられる重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物、又はエポキシ又はオキセタンを末端又は側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
(シランカップリング剤)
本発明で用いられるシランカップリング剤は、例えば、ハロゲン含有シランカップリング剤(2−クロロエチルトリメトキシシラン,2−クロロエチルトリエトキシシラン,3−クロロプロピルトリメトキシシラン,3−クロロプロピルトリエトキシシランなど)、エポキシ基含有シランカップリング剤[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなど]、アミノ基含有シランカップリング剤(2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピル メチルジメトキシシランなど)、メルカプト基含有シランカップリング剤(2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、ビニル基含有シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)などを挙げることができる。これらの中では、(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤((メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤)が好ましく用いられる。
また、その他の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤としては、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、アクリロイルオキシメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルポリシラザンが好ましく、更に、化合物の合成・同定が容易であるといった観点から、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンが特に好ましい。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、下記に示される化合物が好ましく用いられるが、当該シランカップリング剤の合成方法は、特開2009−67778号公報を参照することができる。
Figure 2018012267
(式中、RはCH=CHCOOCHを表す。)
(重合開始剤)
本発明における重合性組成物は、通常、重合開始剤を含む。重合開始剤を用いる場合、その含有量は、重合に関与する化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはBASFジャパン社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
本発明では、シランカップリング剤と重合性化合物と重合開始剤を含む重合性組成物を、光(例えば、紫外線)、電子線、又は熱線にて、硬化させるが、光によって硬化させることが好ましい。特に、重合性組成物を25℃以上の温度(例えば、30〜130℃)をかけて加熱した後に、硬化させることが好ましい。このような構成とすることにより、シランカップリング剤の加水分解反応を進行させ、重合性組成物を効果的に硬化させかつ、基材や有機機能層等にダメージを与えずに成膜することができる。
照射する光は、通常、高圧水銀灯若しくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm以上が好ましく、0.5J/cm以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度若しくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい
本発明に用いられるアンダーコート層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。アンダーコート層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm未満であることがより好ましいが、本発明に係る基材の表面形状を調整するために、フィラーを添加してもよい。モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基及びメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
アンダーコート層の層厚については特に限定はないが、薄すぎると層厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してガスバリアー性が低下する。かかる観点から、有機層の厚さは50〜2000nmが好ましく、200〜1500nmがより好ましい。
アンダーコート層のアンカーコート層で、基材の表面形状を調整するときには、添加するフィラーの粒径、分布、添加量などを変化させることにより調整することができる。
有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリアー能が向上する。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
<密着層>
本発明のガスバリアー性フィルムのガスバリアー層上には、後述するQDフィルムを構成するQD含有樹脂層との密着性を高めるための密着層を設けることが好ましい。
密着層としては、重合性基を有する有機ケイ素化合物を含有する密着層を形成することが好ましく、前記密着層の厚さが、5nm以下であることが好ましい。
重合性基を有する有機ケイ素化合物は、特に限定されるものではないが、シランカップリング剤であることが好ましく、例えば、ハロゲン含有シランカップリング剤(2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなど)、エポキシ基含有シランカップリング剤[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなど]、アミノ基含有シランカップリング剤(2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピル、チルジメトキシシランなど)、メルカプト基含有シランカップリング剤(2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、ビニル基含有シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)などを挙げることができる。
これらの中では、(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤((メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤)が好ましい。
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤としては、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、アクリロイルオキシメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルポリシラザンが好ましく、更に、化合物の合成・同定が容易であるといった観点から、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンが特に好ましい。
なお、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤の市販品としては、KBM−5103、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KR−513(信越化学工業社製)などが挙げられる。これらの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、前記〔化3〕に表される化合物が好ましく用いられる。
密着層の形成は、重合性組成物を塗布して形成することができ、例えば、上記(メタ)アクリロイル基含有化合物を適当な溶媒に溶解させた溶液をガスバリアー層の表面に塗布し、乾燥させる方法が例示される。この際、上記溶液に適当な光重合開始剤を添加しておき、上記溶液を塗布し、乾燥させて得られた塗膜に、光照射処理を施して(メタ)アクリロイル基含有化合物の一部を重合させて重合性ポリマーとしてもよい。
塗布組成物を塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
また、気相成膜法によって成膜することもでき、気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。中でも、プラズマCVD法が好ましい。
前記密着層の厚さは、密着効果を発現すればよく、薄膜化の観点からは5nm以下であることが好ましい。密着層の厚さは透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)によって測定することができる。
また、前記ガスバリアー層と前記密着層の間に、表面処理工程を加えることが好ましく、さらに前記表面処理工程が、前記ガスバリアー層を形成後、当該ガスバリアー層の形成に用いた装置で行われることが生産性の観点から、好ましい。
表面処理工程は、公知の方法を適用することができ、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理及びフレーム処理等を採用することができるが、中でも酸素プラズマ処理であると、樹脂基材やガスバリアー層へのダメージを小さくでき、かつ当該ガスバリアー層の形成に用いた装置で連続して行うことができるため、生産上も好ましい。
<電子デバイス>
本発明のガスバリアーフィルムは各種電子デバイスに好適に用いられるが、電子デバイスとしては、液晶表示素子(LCD)、太陽電池(PV)、量子ドット含有樹脂層(量子ドットフィルム、量子ドットシートともいう。)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などをいうが、これらに限定されるものではない。中でも本発明のガスバリアーフィルムは優れたガスバリアー性を有するため、量子ドット含有樹脂フィルム及び有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に好適に用いることができる。
<量子ドット含有樹脂層>
以下、量子ドット含有樹脂層の主要な構成要素である量子ドット(一般に、QDと略される。)及び樹脂等について説明する。
(量子ドット)
一般に、ナノメートルサイズの半導体物質で量子閉じ込め(quantum confinement)効果を示す半導体ナノ粒子は、「量子ドット」とも称されている。このような量子ドットは、半導体原子が数百個から数千個集まった10数nm程度以内の小さな塊であるが、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドットのエネルギーバンドギャップに相当するエネルギーを放出する。
したがって、量子ドットは、量子サイズ効果によりユニークな光学特性を有することが知られている。具体的には、(1)粒子のサイズを制御することにより、様々な波長、色を発光させることができる、(2)吸収帯が広く、単一波長の励起光で様々なサイズの微粒子を発光させることができる、(3)蛍光スペクトルが良好な対称形である、(4)有機色素に比べて耐久性、耐退色性に優れる、といった特徴を有する。
量子ドット含有樹脂層が含有する量子ドットは公知のものであってもよく、当業者に既知の任意の方法を使用して生成することができる。例えば、好適なQD及び好適なQDを形成するための方法には、米国特許第6225198号明細書、米国特許出願公開第2002/0066401号明細書、米国特許第6207229号明細書、同第6322901号明細書、同第6949206号明細書、同第7572393号明細書、同第7267865号明細書、同第7374807号明細書、米国特許出願第11/299299号、及び米国特許第6861155号明細書に記載のものが挙げられる。
量子ドットは、任意の好適な材料、好適には無機材料及びより好適には無機導体又は半導体材料から生成される。好適な半導体材料には、II−VI族、III−V族、IV−VI族及びIV族の半導体を含む、任意の種類の半導体が含まれる。
好適な半導体材料には、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイアモンドを含む。)、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si、Ge、Al、(Al、Ga、In)(S、Se、Te)、AlCO、及び二つ以上のこのような半導体の適切な組合せが含まれるが、これらに限定されない。
本発明においては、次のようなコア/シェル型の量子ドット、例えば、CdSe/ZnS、InP/ZnS、PbSe/PbS、CdSe/CdS、CdTe/CdS、CdTe/ZnS等も好ましく使用できる。
〈樹脂〉
量子ドット含有樹脂層には、量子ドットを保持するバインダーとして樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系、ポリアリレート系、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む。)系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、セロ−ファン系、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリビニルアルコール系、エチレンビニルアルコール系、シンジオタクティックポリスチレン系、ノルボルネン系、ポリメチルペンテン系、ポリエーテルケトン系、ポリエーテルケトンイミド系、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂等を挙げることができる。
量子ドット含有樹脂層は、厚さが50〜200μmの範囲内であることが好ましい。
なお、量子ドット含有樹脂層における量子ドットの含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には15〜60体積%の範囲内であることが好ましい。
<有機EL素子>
本発明に係る有機EL素子は、例えば、本発明のガスバリアー層上に、陽極、第1有機機能層群、発光層、第2有機機能層群、陰極が積層されて構成されていることが好ましい。第1有機機能層群は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層等から構成され、第2有機機能層群は、例えば、正孔阻止層、電気輸送層、電子注入層等から構成されている。第1有機機能層群及び第2有機機能層群はそれぞれ1層のみで構成されていても良いし、第1有機機能層群及び第2有機機能層群はそれぞれ設けられていなくても良い。
以下に、有機EL素子の構成の代表例を示す。
(i)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔注入輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔注入輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
更に、有機EL素子は、非発光性の中間層を有していても良い。中間層は電荷発生層であっても良く、マルチフォトンユニット構成であっても良い。
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[実施例1]
<ガスバリアーフィルム101の作製>
〔樹脂基材〕
樹脂基材としては、両面に易接着処理した厚さ100μm、長さ1000mのポリエチレンテレフタレートフィルムロール(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(V5400))を用いた。この樹脂基材のガスバリアー層を形成する面とは反対の面に、ロールtoロール方式により、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥層厚が0.5μmになるように樹脂基材上に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、樹脂基材のガスバリアー層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥層厚が2μmになるように樹脂基材に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、クリアハードコート層付樹脂基材ロールを得た。以降、本実施例及び比較例においては、便宜上、このクリアハードコート層付樹脂基材を単に基材とする。
〔第1のガスバリアー層の形成(塗布改質法)〕
第1のガスバリアー層の形成は、下記の手順にて行い、層厚50nmのシロキサン(東亜合成化学株式会社製 AC−SQ TA−100)由来のシリカ(Si)を含有する第1のガスバリアー層を形成した。
シロキサン(東亜合成化学株式会社製 AC−SQ TA−100)を20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥層厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
前記樹脂基材のクリアハードコート層表面に、スピンコート法により上記塗布液を乾燥層厚が250nmとなるように塗布し、150℃で5分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外光照射装置を用い、照射エネルギー350mJ/cm2、照度1000mW/cm2の条件で真空紫外光照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
〔第2のガスバリアー層の形成〕
第2のガスバリアー層は、塗布方式により形成した。層厚10nmのパーヒドロキシポリシラザン(PHPS)を含有する第2のガスバリアー層を得た。第2のガスバリアー層を形成した後、樹脂基材はロール状に巻取り、ロール体を作製し、ガスバリアーフィルム101を作製した。
<ガスバリアーフィルム102〜120の作製>
ガスバリアーフィルム101の作製において、「基材の種類」、「基材表面の基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さの最大値(「凸部最大高さ」)」、「基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の幅の平均値(「凸部平均幅」)」、「基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の面積の合計値の、ガスバリアーフィルム表面の面積に対しての比率(%)(「凸部面積比率」)」、「第1ガスバリアー層の種類、層厚、作製方法」、「第2のガスバリアー層の種類、層厚、作製方法」を、表1に記載のように変化させた以外は、ガスバリアーフィルム101と同一のガスバリアーフィルム102〜120を作製した。なお、表中「シロキサン」は、シロキサン 東亜合成化学株式会社製 AC−SQ TA−100 を使用したことを表し、「PHPS」はパーヒドロキシポリシラザンを使用したことを表す。また「NbOx」「HMDSO」「SiO」は、それぞれ、酸化ニオブ、ヘキサメチルシロキサン、二酸化ケイ素を使用して定法によりガスバリアー層を形成したことを表す。
なお、第2のガスバリアー層を蒸着法で形成するときは、気相法・スパッタにより形成した。スパッタ装置としては、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ社製:型式EB1100)を用い、下記手順にて、ロールtoロール方式で、層厚5nmの遷移金属:ニオブ(Nb)を含有する第2のガスバリアー層を得た。第2のガスバリアー層を形成した後、樹脂基材はロール状に巻取り、ロール体を作製した。
また、基材の表面形状を変化させるときは、基材の種類や、フィラーを含有するアンダーコートを変化して調整した。なお、実施例で使用した各基材は表1に記載しており、各基材の市販品の入手先は下記のとおりである。
V5400 :SKケミカル株式会社
T7610B :SKケミカル株式会社
S5 :帝人デュポンフィルム株式会社
O321 :三菱樹脂株式会社
U403 :東レ株式会社
0321 VW13 :三菱樹脂株式会社
ZF14 :日本ゼオン株式会社
なお、表1中、PETはポリエチレンテレフタレート、PCはポリカーボネート、COPはシクロオレフィンポリマーを表す。
使用した基材及び作製したガスバリアーフィルムを用いて以下の評価を実施した。
<評価>
(凸部最大高さの測定方法)
非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)を用いて、前記基材の表面を40倍で表面粗さを測定したときの凸部を二次元に断面解析をとり、基準面からの最大高さを測定した。
(凸部平均幅の評価方法)
非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)を用いて、前記基材の表面を40倍で表面粗さを測定したときの凸部を二次元に断面解析をとり、基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの基準面幅を測定し、平均値を計算することにより測定した。
(凸部面積比率(%)の評価方法)
非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)を用いて、前記基材の表面を40倍で表面粗さを測定し、測定画像の基準面からの高さが30nm以下と30nm以上とで画像を二値化し、切断面部分の面積を算出し、測定したガスバリアーフィルム表面の面積に対する比率(%)を計算した。
(滑り性)
(動摩擦係数の測定)
フィルム表面と裏面間の動摩擦係数の測定は、JIS K 7125(1987)の規定に準じ、フィルムの表裏面が接触するように切り出し、200gのおもりを載せ、サンプル移動速度100mm/分、接触面積80mm×200mmの条件でおもりを水平引っ張り、おもりが移動中の平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求めた。
動摩擦係数(μ)=F(gf)/おもりの重さ(gf)
(水蒸気バリアー性(WVTR)の評価)
作製した各ガスバリアーフィルムについて、水蒸気バリアー性を評価した。水蒸気バリアー性の評価は、MOCON社製AQUATRANを用い、38℃、100%RH条件下において数値が安定するのを待って水蒸気透過度(g/(m・day))を測定した。
(高温高湿環境保存後の水蒸気バリアー性(WVTR)の評価)
各ガスバリアーフィルムを60℃、90%RHの環境下で100時間保管後の水蒸気バリアー性を評価した。水蒸気バリアー性の評価は、MOCON社製AQUATRANを用い、38℃、100%RH条件下において数値が安定するのを待って水蒸気透過度(g/(m・day))を測定した。
以上の評価結果を、下記表1に示した。
Figure 2018012267
表1の結果から、本発明の構成のガスバリアーフィルムは、高温高湿環境下で保存しても、比較例に対してガスバリアー性が改善されたガスバリアーフィルムであることが分った。
また、本発明の構成のガスバリアーフィルムは、滑り性が良くロール状に巻取りロール体を形成したり、そこから巻き出したりしてもダメージに対する耐性が高いことが分った。
1 基材
2 第1のガスバリアー層
3 第2のガスバリアー層
4 混合領域
10 ガスバリアーフィルム

Claims (5)

  1. 表面に凹凸形状を有する基材上に、第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層をこの順に有するガスバリアーフィルムであって、
    前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーを含有し、
    前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さの最大値が300nm以下であり、
    前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の幅の平均値が、30〜100μmの範囲内であり、
    前記切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対して10〜40%の範囲内であり、かつ、
    前記第1のガスバリアー層の層厚の平均値が、30〜150nmの範囲内であることを特徴とするガスバリアーフィルム。
  2. 前記基材の表面における凸部ピーク部の基準面からの高さが100〜300nmの範囲内である凸部を、基準面からの高さが30nmの面で切断したときの、切断面部分の面積の合計値が、ガスバリアーフィルム表面の面積に対して30〜40%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアーフィルム。
  3. 前記第1のガスバリアー層が、シラザン骨格を有するポリマーとしてパーヒドロキシポリシラザンを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリアーフィルム。
  4. 前記第2のガスバリアー層の層厚の平均値が、3〜20nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
    前記第1のガスバリアー層が、塗布方式により成膜され、
    前記第2のガスバリアー層が、真空蒸着法により成膜されることを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
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